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特開2023-160030多層基板、モジュールおよび通信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160030
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】多層基板、モジュールおよび通信装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20231026BHJP
   H05K 1/16 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
H05K3/46 B
H05K1/16 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070043
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】堀内 雅史
【テーマコード(参考)】
4E351
5E316
【Fターム(参考)】
4E351AA09
4E351BB03
4E351BB35
4E351BB49
4E351DD04
4E351DD05
4E351DD17
4E351DD18
4E351DD19
4E351DD20
4E351GG09
5E316AA02
5E316AA04
5E316AA13
5E316AA15
5E316AA33
5E316AA43
5E316BB01
5E316CC17
5E316CC19
5E316CC32
5E316CC35
5E316CC36
5E316CC37
5E316CC39
5E316EE01
5E316HH01
5E316HH22
5E316JJ01
5E316JJ03
(57)【要約】
【課題】電気特性のばらつきを低減した、高精度な多層基板およびモジュールを提供する。
【解決手段】 誘電体層を介して積層された複数の導体層を有するキャパシタパターンと、前記キャパシタパターンの積層方向上に位置する、1以上の導体と、を有し、前記キャパシタパターン及び前記導体を、前記積層方向に平面透視したとき、前記導体は、前記キャパシタパターンの面積の2倍以下の面積を有し、前記キャパシタパターンの面積の80%以上が、前記導体と重なる、多層基板。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層を介して積層された複数の導体層を有するキャパシタパターンと、
前記キャパシタパターンの積層方向上に位置する、1以上の導体と、
を有し、
前記キャパシタパターン及び前記導体を、前記積層方向に平面透視したとき、
前記導体は、前記キャパシタパターンの面積の2倍以下の面積を有し、
前記キャパシタパターンの面積の80%以上が、前記導体と重なる、
多層基板。
【請求項2】
前記積層方向に平面透視したときの、前記キャパシタパターンのアスペクト比と、前記導体のアスペクト比が同じである、
請求項1に記載の多層基板。
【請求項3】
前記積層方向に平面透視したときに、前記キャパシタパターンの重心点と前記導体の重心点が一致する、
請求項1に記載の多層基板。
【請求項4】
前記積層方向に平面透視したときの、前記キャパシタパターンの形状と、前記導体の形状が同一である、
請求項1に記載の多層基板。
【請求項5】
前記キャパシタパターンは、前記導体に最も近い第1導体層を備え、
前記導体と前記キャパシタパターンの前記第1導体層間の距離をL12とし、前記キャパシタパターンの前記導体層間の距離をL22とすると、
0<L12≦2.0×L22 が成り立つ、
請求項1に記載の多層基板。
【請求項6】
前記1以上の導体は、導体パターンを含む、
請求項1に記載の多層基板。
【請求項7】
前記1以上の導体は、導体ビアを含む、
請求項1に記載の多層基板。
【請求項8】
前記1以上の導体は、前記キャパシタパターンの積層方向において、前記キャパシタパターンの上層側と下層側にそれぞれ設けられる、
請求項1に記載の多層基板。
【請求項9】
前記導体は、
前記キャパシタパターンおよび、その他のパターンと接続せず、
前記その他のパターンと、電気的に結合していない、
請求項1に記載の多層基板。
【請求項10】
前記キャパシタパターンと、前記導体は同じ材料を含む、
請求項1に記載の多層基板。
【請求項11】
前記キャパシタパターンが有する前記導体層は反っていない、
請求項1に記載の多層基板。
【請求項12】
請求項1に記載の多層基板と、
前記多層基板上に位置する電子部品を有する、
モジュール。
【請求項13】
請求項12に記載のモジュールを有する、
通信装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多層基板、および当該多層基板を含むモジュール、および通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用端末等の電子機器の小型化や使用される周波数帯域の高周波化に伴い、電子機器に組み込まれる配線基板にも小型化・高周波化が要求されている。
【0003】
これまで配線基板の表面に実装されていたコンデンサを、配線基板内部に形成することで、実装面積を削減し、電子機器を小型化しつつ、低インダクタンスで実装し、高周波特性を向上させることのできるコンデンサを内蔵した配線基板が提案されている。
【0004】
特許文献1には、コンデンサを内蔵したセラミック配線基板が開示されている。特許文献1に開示されたセラミック配線基板によれば、絶縁層(誘電体層)の厚みばらつきを有効に抑さえることにより、高精度なコンデンサを内蔵したセラミック配線基板を提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-319527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電気特性のばらつきを低減した、高精度な多層基板、モジュールおよび通信装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態に係る多層基板は、誘電体層を介して積層された複数の導体層を有するキャパシタパターンと、前記キャパシタパターンの積層方向上に位置する、1以上の導体と、を有し、前記キャパシタパターン及び前記導体を、前記積層方向に平面透視したとき、前記導体は、前記キャパシタパターンの面積の2倍以下の面積を有し、前記キャパシタパターンの面積の80%以上が、前記導体と重なる。
【0008】
本開示の他の実施形態に係る多層基板は、上記の実施形態に加え、前記積層方向に平面透視したときの、前記キャパシタパターンのアスペクト比と、前記導体のアスペクト比が同じである。
【0009】
本開示の他の実施形態に係る多層基板は、上記のいずれかの実施形態に加え、前記積層方向に平面透視したときに、前記キャパシタパターンの重心点と前記導体の重心点が一致する。
【0010】
本開示の他の実施形態に係る多層基板は、上記のいずれかの実施形態に加え、前記積層方向に平面透視したときの、前記キャパシタパターンの形状と、前記導体の形状が同一である。
【0011】
本開示の他の実施形態に係る多層基板は、上記のいずれかの実施形態に加え、前記キャパシタパターンは、前記導体に最も近い第1導体層を備え、前記導体と前記キャパシタパ
ターンの前記第1導体層間の距離をL12とし、前記キャパシタパターンの前記導体層間の距離をL22とすると、0<L12≦2.0×L22 が成り立つ。
【0012】
本開示の他の実施形態に係る多層基板は、上記のいずれかの実施形態に加え、前記1以上の導体は、導体パターンを含む。
【0013】
本開示の他の実施形態に係る多層基板は、上記のいずれかの実施形態に加え、前記1以上の導体は、導体ビアを含む。
【0014】
本開示の他の実施形態に係る多層基板は、上記のいずれかの実施形態に加え、前記1以上の導体は、前記キャパシタパターンの積層方向において、前記キャパシタパターンの上層側と下層側にそれぞれ設けられる。
【0015】
本開示の他の実施形態に係る多層基板は、上記のいずれかの実施形態に加え、前記導体は、前記キャパシタパターンおよび、その他のパターンと接続せず、前記その他のパターンと、電気的に結合していない。
【0016】
本開示の他の実施形態に係る多層基板は、上記のいずれかの実施形態に加え、前記キャパシタパターンと、前記導体は同じ材料を含む。
【0017】
本開示の他の実施形態に係る多層基板は、上記のいずれかの実施形態に加え、前記キャパシタパターンが有する前記導体層は反っていない。
【0018】
本開示の一実施形態に係るモジュールは、上記のいずれかの実施形態に係る多層基板と、前記多層基板上に位置する電子部品を有する。
【0019】
本開示の一実施形態に係る通信装置は、上記モジュールを有する。
【発明の効果】
【0020】
上記構成によれば、電気特性のばらつきを低減した、高精度な多層基板、当該多層基板を含むモジュールおよび通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の一実施形態に係る多層基板の模式的な断面図である。
図2】本開示の一実施形態に係る多層基板における一部を平面透視した図である。
図3】本開示の一実施形態に係る多層基板における一部の模式的な断面図である。
図4】本開示の一実施形態に係る多層基板における一部の模式的な断面図である。
図5】本開示の一実施形態に係る多層基板における一部の模式的な断面図である。
図6】本開示の一変形例に係る多層基板の模式的な断面図である。
図7】本開示の一変形例に係る多層基板の模式的な断面図である。
図8】本開示の一実施形態に係るモジュールの模式的な断面図である。
図9】本開示の一実施形態に係る通信装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示に係る実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の説明で用いられる図は模式的なものであり、図面上の寸法比率等は現実のものとは必ずしも一致していない。
【0023】
図面には、便宜上、X軸、Y軸およびZ軸からなる直交座標系を付すことがある。本開示に係る多層基板は、いずれの方向が上方または下方とされてもよい。ただし、便宜上、
Z軸方向を上下方向として上面または下面の語を用いることがある。なお、X軸およびY軸は、Z軸に直交するように定義される。
【0024】
なお、本明細書に記載する各実施形態は例示的なものであり、異なる実施形態および変形例間において部分的に置換してもよい。また、異なる実施形態および変形例を部分的に組み合わせてもよい。
【0025】
図1は、本開示の一実施形態に係る多層基板1の断面を模式的に表した図である。図1に示すように、多層基板1は、誘電体層21を複数積層して成る誘電基体2と、キャパシタパターン3と、導体4を有する。なお、図1に示す断面図は、多層基板1の所定の位置における断面を示すものであり、多層基板1における全ての断面が図1の態様に限定されるものではない。
【0026】
誘電体層21は、ホウケイ酸系ガラスやホウケイ酸鉛系ガラスにアルミナ等の無機セラミックフィラーを添加したガラスセラミックのような低温焼成に適したセラミックの焼結体であってもよい。これらのセラミックの焼結体を使用した場合、静電容量の大きなセラミックコンデンサを実現しやすくなる。
【0027】
また、誘電体層21は上記の例に限定されない。例えば誘電体層21は、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ストロンチウムなどのセラミックの焼結体であってもよいし、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化珪素、窒化珪素などといった高温焼成に適したセラミックの焼結体であってもよい。また、誘電体層21は、樹脂であってもよい。
【0028】
誘電体層21の厚さおよび積層数は特に限定されず、求められる容量値などに応じて、適宜設定されてもよい。
【0029】
キャパシタパターン3は、複数の導体層31が、誘電体層21を介してZ軸方向に積層されて構成される。キャパシタパターン3は、導体層31どうしが誘電体層21を介して対向しているため、容量が発生する。
【0030】
導体層31の材料として、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)およびこれらの合金等の金属材料が例示できる。導体層31の材料は、適宜設定されるが、例えば、誘電体層21の焼成温度よりも高融点となる材料を設定してもよい。
【0031】
図1において、キャパシタパターン3が有する導体層31の積層数は6であるが、この例に限定されない。導体層31の積層数は、求められる容量値などに応じて、適宜設定されてもよい。
【0032】
導体層31の厚さは特に限定されず、適宜設定されてもよい。
【0033】
また、キャパシタパターン3は、不図示のビア導体層32を有していてもよい。ビア導体層32は、導体層31どうしを電気的に接続している。また、ビア導体層32は、キャパシタパターン3とは異なる、その他のパターンと電気的に接続してもよい。ビア導体層32の構成は、適宜設計可能であるが、例えば図1のZ軸方向に、誘電体層21を貫通する構成であってもよい。
【0034】
本開示の一実施形態に係る多層基板1は、図1に示すように、キャパシタパターン3の積層方向に、1以上の導体4を有する。なお図1において、導体4は、パターン形成され
た4つの導体パターン41が、誘電体層21を介してZ軸方向に積層されて構成されている。
【0035】
キャパシタパターン3の積層方向とは、複数の導体層31の積層方向のことを言う。例えば、図1において、キャパシタパターン3の積層方向は、Z軸方向である。
【0036】
導体4の材料は適宜設定されてもよく、例えば、導体層31が含む材料と同じ材料を含んでいてもよい。なお、導体4の材料はこの例に限定されず、例えば導体層31が含む材料とは異なる材料を含んでいてよい。
【0037】
本開示の一実施形態のようにキャパシタパターン3の積層方向に導体4が位置することによって、誘電体の膨張による導体層31の変形を低減し、電気特性のばらつきが低減された高精度な多層基板を提供することができる。
【0038】
以下、メカニズムの一例を説明する。キャパシタパターン3の積層方向に導体4が位置しない場合、誘電体層21のうち、導体層31で挟まれた部分の誘電体が、導体層31に挟まれない部分よりも膨張するため、導体層31が反った形状となってしまう。一方で、キャパシタパターン3の積層方向に導体4が位置する場合、導体層31で挟まれた部分の誘電体の膨張が、導体4によって低減されるため、導体層31の反りを低減、もしくは反らない導体層31とすることができる。したがって、導体層31の変形によって容量値が変化してしまう等の要因による電気特性のばらつきが低減され、高精度な多層基板を提供することができる。
【0039】
また、導体4どうしの間もしくは導体4とキャパシタパターン3の間の誘電体が膨張し、キャパシタパターン3の誘電体の膨張を低減することで、導体層31の反りを低減、もしくは反らない導体層31とすることができる。したがって、導体層31の変形によって容量値が変化してしまう等の要因による電気特性のばらつきが低減され、高精度な多層基板を提供することができる。
【0040】
本開示の一実施形態において、導体4は、キャパシタパターン3および、他のパターンと電気的に接続されていない。このように、導体4がキャパシタパターン3および他のパターン等と電気的に接続されず、電気的に浮遊状態にある場合、導体4による電気特性への影響を小さくすることができる。
【0041】
また、導体4は、キャパシタパターン3以外の他のパターンと電気的に結合していなくてもよい。このように、導体4がキャパシタパターン3以外の他のパターンと結合しないことで、不測の容量が形成される可能性を低減することができる。
【0042】
図2は、本開示の一実施形態に係る多層基板1における、キャパシタパターン3および導体4を、Z軸方向から平面透視した時の模式図である。なお、図2では、キャパシタパターン3および導体4以外の部分については省略している。
【0043】
平面透視した時の導体4の面積は、キャパシタパターン3の面積よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。図2Aには、平面透視における導体4の面積が、キャパシタパターン3の面積よりも小さい場合を示し、図2Bには、平面透視における導体4の面積が、キャパシタパターン3の面積よりも大きい場合を示している。例えば、本開示の一実施形態における、導体4の面積は、キャパシタパターンの面積の2倍以下である。このような構成とすることで、導体4が、キャパシタパターン3以外の他のパターン等と不要な容量を形成することを防ぎ、導体4による電気特性への影響を小さくすることができる。
【0044】
本開示の一実施形態において、平面透視で導体4はキャパシタパターン3と重なる。重なる面積は適宜設定されてもよい。例えば、本開示の一実施形態においては、平面透視した時のキャパシタパターン3の面積の80%以上が、導体4と重なる。このように、平面透視した時に、キャパシタパターン3の面積の大部分に導体4が重なることにより、効果的に誘電体の膨張を低減することができる。
【0045】
なお、平面透視した時の導体4およびキャパシタパターン3の形状は、適宜設計されてもよい。一例として、平面透視したときの、キャパシタパターン3のアスペクト比と、導体4のアスペクト比が同じであってもよい。例えば、図2のように、キャパシタパターン3および導体4が長方形である場合を考える。キャパシタパターン3の長手方向の辺の長さをL3、短手方向の辺の長さをW3とし、導体4の長手方向の辺の長さL4、短手方向の辺の長さをW4とする。アスペクト比が同じであるということは、例えばL3/W3とL4/W4が同じ場合のことを言う。このような構成とすることで、平面透視した時に、キャパシタパターン3と導体4が重なる面積を大きくし、誘電体の膨張を、より効果的に低減することができる。
【0046】
また、平面透視した時の、キャパシタパターン3の重心点と導体4の重心点が一致していてもよい。また、平面透視した時のキャパシタパターン3と導体4の形状が同一であってもよい。なお、キャパシタパターン3と導体4の形状が、正確に同一である必要はなく、製造誤差の範囲において、いずれかが小さくてもよいし、大きくてもよい。このような構成とすることで、平面透視した時に、キャパシタパターン3と導体4が重なる面積を大きくし、誘電体の膨張を、より効果的に低減することができる。
【0047】
平面透視した時のキャパシタパターン3の面積とは、キャパシタパターン3の有する複数の導体層31の面積を平均したものであってもよい。ただし、キャパシタパターン3の面積の算出方法はこの例に限定されない。例えば、キャパシタパターン3の面積は、複数の導体層31うち、平面透視での面積が最も大きい導体層31の面積を基準としてもよいし、複数の導体層31うち、最も導体4の近くに位置する導体層31の面積を基準としてもよい。
【0048】
キャパシタパターン3が有する導体層31のうち、最も導体4に近いものを第1導体層311とする。多層基板1をX軸方向から断面視した時に、導体4と第1導体層311との距離をL12とする。また、導体層31どうしの距離をL22とする。
【0049】
導体4と第1導体層311との距離L12は、導体層31どうしの距離L22よりも大きくてもよいし、小さくてもよい。図3Aには、距離L12が距離L22よりも小さい場合を示している。また、図3Bには、距離L12が距離L22よりも大きい場合を示している。例えば、距離L12は、0<L12≦2.0×L22の範囲内にあればよい。距離L12が、距離L22の2倍以下であることによって、導体4が、キャパシタパターン3に近い場所に位置し、効果的に誘電体の膨張を低減することができる。
【0050】
導体層31どうしの距離L22とは、各層における導体層31どうしの距離を平均したものであってもよい。ただし、導体層31どうしの距離L22の算出方法はこの例に限定されない。例えば、距離L22は、複数ある導体層31どうしの距離のうち、最も距離が大きいもの基準としてもよいし、複数の導体層31うち、最も導体4の近くに位置する第1導体層311と、その隣の導体層31との距離を基準としてもよい。
【0051】
導体4が複数存在する場合、導体4どうしの距離をL11とする。導体層31どうしの距離L22と、導体4どうしの距離L11を比較すると、距離L11は、距離L22よりも大きくてもよいし、小さくてもよいし、同一であってもよい。図4Aには、距離L11
が距離L22よりも小さい場合を示している。また、図4Bには、距離L11が距離L22よりも大きい場合を示している。例えば、距離L11は、0.8×L22≦L11≦1.2×L22の範囲内にあればよい。
【0052】
距離L11と距離L22が、0.8×L22≦L11≦1.2×L22の範囲内において、おおよそ同一に近づくように設定することで、キャパシタパターン3内の誘電体層21の膨張と、導体4内の誘電体層21の膨張を同程度にすることで、誘電体層21の膨張によるパターンの変形などを効果的に低減することができる。したがって電気特性のばらつきを低減することができ、より高精度な多層基板を提供することができる。
【0053】
導体4どうしの距離L11とは、各層における導体4どうしの距離を平均したものであってもよい。ただし、導体4どうしの距離L11の算出方法はこの例に限定されない。例えば、距離L11は、複数ある導体4どうしの距離のうち、最も距離が大きいもの基準としてもよいし、複数の導体4うち、最もキャパシタパターン3の近くに位置する導体4と、その隣の導体4との距離を基準としてもよい。
【0054】
導体4の積層方向における厚みをT1とする。キャパシタパターン3の導体層31の積層方向における厚みをT2とする。厚みT1と厚みT2を比較すると、厚みT1は、厚みT2よりも大きくてもよいし、小さくてもよいし、同一であってもよい。図5Aには、厚みT1が厚みT2よりも小さい場合を示している。また、図5Bには、厚みT1が厚みT2よりも大きい場合を示している。例えば、厚みT1は、0.8×T2≦T1≦1.2×T2の範囲内にあればよい。
【0055】
導体層31の積層方向における厚みT2とは、複数ある導体層31の厚みを平均したものであってもよい。ただし、厚みT2の算出方法はこの例に限定されない。例えば、厚みT2は、複数ある導体層31のうち、最も厚みが大きいもの基準としてもよいし、複数ある導体層31のうち、最も導体4の近くに位置する第1導体層311の厚みを基準としてもよい。
【0056】
本開示の一実施形態では、1以上の導体4は、キャパシタパターン3および他のパターンと電気的に接続されていない場合を示したが、この例に限定されない。例えば、本開示の変形例として、1以上の導体4のうち一部あるいは全部が、キャパシタパターン3と電気的に接続されていてもよいし、他のパターンと電気的に接続されていてもよい。図6に、変形例として、導体4のうちの一部が他のパターンと電気的に接続された多層基板11の例を示す。
【0057】
本開示の一実施形態では、1以上の導体4は、キャパシタパターン3以外の他のパターンと電気的に結合していない場合を示したが、この例に限定されない。例えば、本開示の変形例として、1以上の導体4のうち一部あるいは全部が、他のパターンと電気的に結合していてもよい。
【0058】
本開示の一実施形態では、1以上の導体4はすべてパターン形成された導体パターン401である場合を示したが、導体4の態様はこの例に限定されない。例えば、導体4は誘電体層21を貫通する導体ビア402であってもよい。また、図7に変形例として示すように、導体4は導体パターン401と導体ビア402を両方含んでいてもよい。例えば、導体4が複数の導体パターン401と導体ビア402を含む場合、導体パターン401が導体ビア402を介して互いに接続される構成となる。
【0059】
本開示の一実施形態では、1以上の導体4はキャパシタパターン3の積層方向における一方側にのみ設けられていたが、この例に限定されない。例えば、図8に変形例として示
すように、導体4はキャパシタパターン3の積層方向における、上層側と下層側にそれぞれ設けられていてもよい。このような構成の場合、導体4がキャパシタパターン3の積層方向の一方側にのみ設けられる場合に比べて、より効果的に誘電体層21の膨張による導体層31の変形を効果的に低減することができ、より高精度な多層基板を提供することができる。
【0060】
本開示の一実施形態に係る導体4は、ベタパターンであってもよい。
【0061】
次に、本開示の一実施形態に係る多層基板1を有するモジュール10について、図8を参照して説明する。なお、図8はモジュール10の断面図である。また、図8において、多層基板1の内部に設けられた、キャパシタパターン3および導体4以外のパターンについては、一部図示省略している。
【0062】
モジュール10は、多層基板1と、多層基板1上に設けられた電子部品11とを有し、外部の回路基板に接続されるものである。なお、多層基板1は、電子部品11と接続される接続端子が存在する。
【0063】
電子部品11は、例えば、SiやGaAs等で形成された半導体素子であり、その回路形成面には、それぞれ多層基板1の各接続端子のうちのいずれかに対応する複数の外部端子が設けられ、これらの各外部端子それぞれが、フリップチップ実装方式により対応する多層基板1の接続端子に直接接続される。
【0064】
電子部品11は、半導体素子などの能動部品である例に限定されない。例えば、電子部品11は、チップコンデンサ、チップインダクタ等の受動部品であってもよいし、弾性波フィルタなどの部品であってもよい。
【0065】
また、電子部品11は、封止部材12によって封止されていてもよい。封止部材12の材料として、例えば樹脂などが挙げられる。
【0066】
図9に示すように、本開示の一実施形態に係るモジュール10は、通信装置100に搭載される。
【符号の説明】
【0067】
1:多層基板
2:誘電基体
21:誘電体層
3:キャパシタパターン
31:導体
311:第1導体層
32:ビア導体層
4:導体
41:第1導体
401:導体パターン
402:導体ビア
10:モジュール
11:電子部品
100:通信装置

図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9