(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160034
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】貯蔵用緩衝構造体
(51)【国際特許分類】
G21F 5/08 20060101AFI20231026BHJP
G21F 9/36 20060101ALI20231026BHJP
G21C 19/32 20060101ALI20231026BHJP
G21F 5/10 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
G21F5/08
G21F9/36 501J
G21C19/32 100
G21C19/32 110
G21F5/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070051
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】392009353
【氏名又は名称】株式会社オー・シー・エル
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】森田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】岡田 潤
(72)【発明者】
【氏名】樋口 晃
(72)【発明者】
【氏名】塩津 英男
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 達哉
(57)【要約】
【課題】貯蔵用緩衝構造体の除熱性能を向上させる。
【解決手段】緩衝構造体2のスペーサ24は、第1緩衝部21およびに第2緩衝部22に固定される。スペーサ24は、第1緩衝部21とキャスク端面11との間に配置され、第1緩衝部21とキャスク端面11との間に、ガスが通過可能な第1流路34を形成する。また、スペーサ24は、第2緩衝部22とキャスク側面12との間に配置され、第2緩衝部22とキャスク側面12との間に、ガスが通過可能な第2流路35を形成する。第2流路35は、第1流路34と連通する。これにより、緩衝構造体2の除熱性能を向上させることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料集合体が収容される円柱状のキャスクの貯蔵時に前記キャスクの端部に外装される貯蔵用緩衝構造体であって、
キャスクの長手方向の端面であるキャスク端面と長手方向にて離間しつつ対向するとともに前記キャスク端面の外周縁よりも径方向外側へと延在する第1緩衝部と、
前記キャスク端面の前記外周縁よりも径方向外側において前記第1緩衝部から前記キャスクの側面であるキャスク側面に沿って長手方向に延びて前記キャスク側面と径方向にて離間しつつ対向する円筒状の第2緩衝部と、
前記第1緩衝部と前記キャスク端面との間に配置され、前記第1緩衝部と前記キャスク端面との間にガスが通過可能な第1流路を形成するとともに、前記第2緩衝部と前記キャスク側面との間に配置され、前記第2緩衝部と前記キャスク側面との間に前記第1流路と連通するガスが通過可能な第2流路を形成するスペーサと、
を備えることを特徴とする貯蔵用緩衝構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の貯蔵用緩衝構造体であって、
前記スペーサは、周方向に放射状に配列される複数のリブを備え、
前記複数のリブのそれぞれは、
前記第1緩衝部と前記キャスク端面との間において径方向に沿って延びるとともに前記キャスク端面に垂直な板状の第1リブ部と、
前記第1リブ部の径方向外端部に連続するとともに前記第2緩衝部と前記キャスク側面との間において長手方向に沿って延びる板状の第2リブ部と、
を備え、
前記複数のリブのうち周方向に隣接する各2枚のリブにおいて、前記各2枚のリブの前記第1リブ部間の間隙は前記第1流路であり、前記各2枚のリブの前記第2リブ部間の間隙は前記第2流路であることを特徴とする貯蔵用緩衝構造体。
【請求項3】
請求項2に記載の貯蔵用緩衝構造体であって、
前記複数のリブのそれぞれにおいて、厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられ、または、前記キャスクと接触する辺に切り欠きが設けられることを特徴とする貯蔵用緩衝構造体。
【請求項4】
請求項1に記載の貯蔵用緩衝構造体であって、
前記キャスクは、長手方向が水平方向となるように載置され、
前記スペーサは、水平方向に配列される複数のリブを備え、
前記複数のリブのそれぞれは、
前記第1緩衝部と前記キャスク端面との間において重力方向に沿って延びるとともに前記キャスク端面に垂直な板状の第1リブ部と、
前記第1リブ部の重力方向の一方の端部に連続するとともに前記第2緩衝部と前記キャスク側面との間において長手方向に沿って延びる板状の第2リブ部と、
を備え、
前記複数のリブのうち水平方向に隣接する各2枚のリブにおいて、前記各2枚のリブの前記第1リブ部間の間隙は前記第1流路であり、前記各2枚のリブの前記第2リブ部間の間隙は前記第2流路であることを特徴とする貯蔵用緩衝構造体。
【請求項5】
請求項4に記載の貯蔵用緩衝構造体であって、
前記第2緩衝部のうち重力方向および長手方向に垂直な左右方向の両側部のそれぞれにおいて、前記第2緩衝部と前記キャスク側面との間にて長手方向の一方側から他方側へと向かうに従って重力方向の上側に向かうとともに、前記第2緩衝部に固定されて前記キャスク側面に接触する複数の側部リブをさらに備え、
前記複数の側部リブ間の間隙は、前記第1緩衝部と前記キャスク端面との間の空間に連通する側部流路であることを特徴とする貯蔵用緩衝構造体。
【請求項6】
請求項4に記載の貯蔵用緩衝構造体であって、
前記複数のリブのそれぞれにおいて、厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられ、または、前記キャスクと接触する辺に切り欠きが設けられることを特徴とする貯蔵用緩衝構造体。
【請求項7】
請求項1に記載の貯蔵用緩衝構造体であって、
前記第1緩衝部の前記キャスク端面と対向する面、および、前記第2緩衝部の前記キャスク側面と対向する面のうち、少なくとも一方の面から前記キャスクに向かって突出する板状のフィンをさらに備えることを特徴とする貯蔵用緩衝構造体。
【請求項8】
請求項1に記載の貯蔵用緩衝構造体であって、
前記スペーサは、
前記第1緩衝部の前記キャスク端面と対向する面である第1緩衝部内面全体において互いに離間して分散配置されるとともに前記キャスク端面に向かって突出する複数の第1凸部と、
前記第2緩衝部の前記キャスク側面と対向する面である第2緩衝部内面全体において互いに離間して分散配置されるとともに前記キャスク側面に向かって突出する複数の第2凸部と、
を備え、
前記複数の第1凸部の間の空間が前記第1流路であり、前記複数の第2凸部の間の空間が前記第2流路であることを特徴とする貯蔵用緩衝構造体。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1つに記載の貯蔵用緩衝構造体であって、
前記第1流路または前記第2流路から延びて前記第1緩衝部または前記第2緩衝部を貫通する第3流路が設けられることを特徴とする貯蔵用緩衝構造体。
【請求項10】
燃料集合体が収容される円柱状のキャスクの貯蔵時に前記キャスクの端部に外装される貯蔵用緩衝構造体であって、
キャスクの長手方向の端面であるキャスク端面と長手方向にて対向するとともに前記キャスク端面の外周縁よりも径方向外側へと延在する第1緩衝部と、
前記キャスク端面の前記外周縁よりも径方向外側において前記第1緩衝部から前記キャスクの側面であるキャスク側面に沿って長手方向に延びて前記キャスク側面と径方向にて対向する円筒状の第2緩衝部と、
を備え、
前記第1緩衝部と前記キャスク端面との間にガスが通過可能な第1流路が形成され、
前記第2緩衝部と前記キャスク側面との間にガスが通過可能な第2流路が形成され、
前記第1流路または前記第2流路から延びて前記第1緩衝部または前記第2緩衝部を貫通する第3流路が設けられることを特徴とする貯蔵用緩衝構造体。
【請求項11】
請求項1または10に記載の貯蔵用緩衝構造体であって、
前記第1緩衝部および前記第2緩衝部のうち少なくとも一方は、
緩衝材と、
前記緩衝材の外面を被覆する外壁と、
前記キャスクと対向する位置において前記外壁と前記緩衝材との間に配置されるとともに前記外壁よりも熱伝導率が低い断熱材と、
を備えることを特徴とする貯蔵用緩衝構造体。
【請求項12】
請求項1または10に記載の貯蔵用緩衝構造体であって、
前記第1緩衝部は、径方向中央部に貫通孔が設けられた筒状部位であり、
前記貯蔵用緩衝構造体は、前記貫通孔の内部に取り付けられて前記貫通孔を閉塞するとともに、前記第1緩衝部の前記キャスク端面と対向する面と長手方向の同じ位置にて前記キャスク端面と長手方向に対向する蓋部材をさらに備えることを特徴とする貯蔵用緩衝構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスクの貯蔵時に当該キャスクの端部に外装される貯蔵用緩衝構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、原子炉等で使用された使用済燃料は、放射線量が所定のレベル以下となるまで、原子力発電所内に設けられた冷却プールにて保管された後、遮蔽機能および密封機能等を有するキャスクに収容され、中間貯蔵施設または燃料再処理施設等へと輸送される。キャスクの輸送時には、万一の落下事故等の際にキャスクの遮蔽機能および密封機能等を維持するために、キャスクの上下端部に緩衝構造体が取り付けられる。
【0003】
例えば、特許文献1のキャスクでは、キャスクの端部に取り付けられた一次蓋および二次蓋の外側に、輸送用三次蓋および輸送用緩衝体が取り付けられることにより、輸送時におけるキャスクのシール性および耐衝撃性が保持される。また、当該キャスクでは、放射性物質の貯蔵時には、輸送用三次蓋および輸送用緩衝体に代えて、貯蔵用三次蓋がキャスク端部に取り付けられる。貯蔵用三次蓋は、航空機事故等の際の飛来物が二次蓋に直接的に衝突することを防止する。また、貯蔵用三次蓋と二次蓋との間には、円板状の閉鎖された空間が設けられており、飛来物が貯蔵用三次蓋に衝突して貯蔵用三次蓋が変形した場合であっても、貯蔵用三次蓋が二次蓋に接触することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の輸送用三次蓋および輸送用緩衝体は、キャスクに一時的に取り付けられるものであるため、キャスクからの熱影響はあまり受けない。一方、貯蔵用三次蓋は、キャスクに長期間に亘って取り付けられるため、高温のキャスクからの熱影響が大きくなり、緩衝性能の劣化等のおそれがある。なお、上述のように、貯蔵用三次蓋と二次蓋との間には円板状の閉鎖空間が存在するが、当該空間によって熱伝達の初期遅延は生じるものの、長期間の熱影響はほとんど軽減されない。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、貯蔵用緩衝構造体の除熱性能を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様1の発明は、燃料集合体が収容される円柱状のキャスクの貯蔵時に前記キャスクの端部に外装される貯蔵用緩衝構造体であって、キャスクの長手方向の端面であるキャスク端面と長手方向にて離間しつつ対向するとともに前記キャスク端面の外周縁よりも径方向外側へと延在する第1緩衝部と、前記キャスク端面の前記外周縁よりも径方向外側において前記第1緩衝部から前記キャスクの側面であるキャスク側面に沿って長手方向に延びて前記キャスク側面と径方向にて離間しつつ対向する円筒状の第2緩衝部と、前記第1緩衝部と前記キャスク端面との間に配置され、前記第1緩衝部と前記キャスク端面との間にガスが通過可能な第1流路を形成するとともに、前記第2緩衝部と前記キャスク側面との間に配置され、前記第2緩衝部と前記キャスク側面との間に前記第1流路と連通するガスが通過可能な第2流路を形成するスペーサとを備える。
【0008】
態様2の発明は、態様1の貯蔵用緩衝構造体であって、前記スペーサは、周方向に放射状に配列される複数のリブを備え、前記複数のリブのそれぞれは、前記第1緩衝部と前記キャスク端面との間において径方向に沿って延びるとともに前記キャスク端面に垂直な板状の第1リブ部と、前記第1リブ部の径方向外端部に連続するとともに前記第2緩衝部と前記キャスク側面との間において長手方向に沿って延びる板状の第2リブ部とを備え、前記複数のリブのうち周方向に隣接する各2枚のリブにおいて、前記各2枚のリブの前記第1リブ部間の間隙は前記第1流路であり、前記各2枚のリブの前記第2リブ部間の間隙は前記第2流路である。
【0009】
態様3の発明は、態様2の貯蔵用緩衝構造体であって、前記複数のリブのそれぞれにおいて、厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられ、または、前記キャスクと接触する辺に切り欠きが設けられる。
【0010】
態様4の発明は、態様1の貯蔵用緩衝構造体であって、前記キャスクは、長手方向が水平方向となるように載置され、前記スペーサは、水平方向に配列される複数のリブを備え、前記複数のリブのそれぞれは、前記第1緩衝部と前記キャスク端面との間において重力方向に沿って延びるとともに前記キャスク端面に垂直な板状の第1リブ部と、前記第1リブ部の重力方向の一方の端部に連続するとともに前記第2緩衝部と前記キャスク側面との間において長手方向に沿って延びる板状の第2リブ部とを備え、前記複数のリブのうち水平方向に隣接する各2枚のリブにおいて、前記各2枚のリブの前記第1リブ部間の間隙は前記第1流路であり、前記各2枚のリブの前記第2リブ部間の間隙は前記第2流路である。
【0011】
態様5の発明は、態様4の貯蔵用緩衝構造体であって、前記第2緩衝部のうち重力方向および長手方向に垂直な左右方向の両側部のそれぞれにおいて、前記第2緩衝部と前記キャスク側面との間にて長手方向の一方側から他方側へと向かうに従って重力方向の上側に向かうとともに、前記第2緩衝部に固定されて前記キャスク側面に接触する複数の側部リブをさらに備え、前記複数の側部リブ間の間隙は、前記第1緩衝部と前記キャスク端面との間の空間に連通する側部流路である。
【0012】
態様6の発明は、態様4(態様4または5、であってもよい。)の貯蔵用緩衝構造体であって、前記複数のリブのそれぞれにおいて、厚さ方向に貫通する貫通孔が設けられ、または、前記キャスクと接触する辺に切り欠きが設けられる。
【0013】
態様7の発明は、態様1(態様1ないし6のいずれか1つ、であってもよい。)の貯蔵用緩衝構造体であって、前記第1緩衝部の前記キャスク端面と対向する面、および、前記第2緩衝部の前記キャスク側面と対向する面のうち、少なくとも一方の面から前記キャスクに向かって突出する板状のフィンをさらに備える。
【0014】
態様8の発明は、態様1の貯蔵用緩衝構造体であって、前記スペーサは、前記第1緩衝部の前記キャスク端面と対向する面である第1緩衝部内面全体において互いに離間して分散配置されるとともに前記キャスク端面に向かって突出する複数の第1凸部と、前記第2緩衝部の前記キャスク側面と対向する面である第2緩衝部内面全体において互いに離間して分散配置されるとともに前記キャスク側面に向かって突出する複数の第2凸部とを備え、前記複数の第1凸部の間の空間が前記第1流路であり、前記複数の第2凸部の間の空間が前記第2流路である。
【0015】
態様9の発明は、態様1ないし8のいずれか1つの貯蔵用緩衝構造体であって、前記第1流路または前記第2流路から延びて前記第1緩衝部または前記第2緩衝部を貫通する第3流路が設けられる。
【0016】
態様10の発明は、燃料集合体が収容される円柱状のキャスクの貯蔵時に前記キャスクの端部に外装される貯蔵用緩衝構造体であって、キャスクの長手方向の端面であるキャスク端面と長手方向にて対向するとともに前記キャスク端面の外周縁よりも径方向外側へと延在する第1緩衝部と、前記キャスク端面の前記外周縁よりも径方向外側において前記第1緩衝部から前記キャスクの側面であるキャスク側面に沿って長手方向に延びて前記キャスク側面と径方向にて対向する円筒状の第2緩衝部とを備え、前記第1緩衝部と前記キャスク端面との間にガスが通過可能な第1流路が形成され、前記第2緩衝部と前記キャスク側面との間にガスが通過可能な第2流路が形成され、前記第1流路または前記第2流路から延びて前記第1緩衝部または前記第2緩衝部を貫通する第3流路が設けられる。
【0017】
態様11の発明は、態様1または10(態様1ないし10のいずれか1つ、であってもよい。)の貯蔵用緩衝構造体であって、前記第1緩衝部および前記第2緩衝部のうち少なくとも一方は、緩衝材と、前記緩衝材の外面を被覆する外壁と、前記キャスクと対向する位置において前記外壁と前記緩衝材との間に配置されるとともに前記外壁よりも熱伝導率が低い断熱材とを備える。
【0018】
態様12の発明は、態様1または10(態様1ないし11のいずれか1つ、であってもよい。)の貯蔵用緩衝構造体であって、前記第1緩衝部は、径方向中央部に貫通孔が設けられた筒状部位であり、前記貯蔵用緩衝構造体は、前記貫通孔の内部に取り付けられて前記貫通孔を閉塞するとともに、前記第1緩衝部の前記キャスク端面と対向する面と長手方向の同じ位置にて前記キャスク端面と長手方向に対向する蓋部材をさらに備える。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、貯蔵用緩衝構造体の除熱性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施の形態に係る緩衝構造体の平面図である。
【
図8】第2の実施の形態に係る緩衝構造体の正面図である。
【
図10】第3の実施の形態に係る緩衝構造体の平面図である。
【
図12】第4の実施の形態に係る緩衝構造体の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る貯蔵用緩衝構造体2を示す平面図である。
図2は、貯蔵用緩衝構造体2を
図1中のII-IIの位置にて切断した縦断面図である。
図1および
図2では、緩衝構造体2が取り付けられるキャスク1の一部も併せて示す。緩衝構造体2は、キャスク1の貯蔵時における転倒等の衝撃荷重を低減する。
【0022】
キャスク1は、使用済燃料集合体(以下、単に「燃料集合体」という。)を収容可能な柱状の容器である。キャスク1は、
図2中の上下方向に延びる中心軸J1を中心とする略円柱状である。キャスク1は、放射線を遮蔽する遮蔽機能、放射性物質を密封する密封機能、燃料集合体を未臨界状態にて維持する未臨界維持機能、および、燃料集合体の熱を放散する除熱機能等を有する。
【0023】
キャスク1が中間貯蔵施設等において貯蔵される際には、キャスク1は、中心軸J1が重力方向を向く起立状態(いわゆる縦置き)、または、中心軸J1が水平方向を向く倒伏状態(いわゆる横置き)にて貯蔵される。本実施の形態では、キャスク1が起立状態にて貯蔵される場合について説明する。キャスク1の中心軸J1が延びる方向を「長手方向」と呼ぶと、
図2では、長手方向が重力方向と略一致する。
【0024】
図1および
図2では、起立状態のキャスク1の上端部近傍を併せて示す。貯蔵用緩衝構造体2(以下、単に「緩衝構造体2」とも呼ぶ。)は、キャスク1の貯蔵時に、起立状態のキャスク1の上端部に外装される。なお、キャスク1の下端部には緩衝構造体2は取り付けられない。
【0025】
緩衝構造体2は、緩衝材31の外面を外壁32(すなわち、ケーシング)により被覆した構造体である。緩衝材31は、例えば、硬質ポリウレタンフォーム等の硬質発泡樹脂製または木製である。緩衝材31は、他の材料(例えば、発泡金属)により形成されてもよい。外壁32は、例えば、ステンレス鋼等の金属製の板材である。
図2に示す例では、外壁32は、緩衝材31の外面全体を被覆しているが、これには限定されない。外壁32は、緩衝材31の外面の一部(例えば、緩衝材31のうちキャスク1と対抗する部位)のみを被覆していてもよい。
図2では、外壁32を太い実線にて示す。後述する
図3、
図4、
図6、
図7、
図9および
図11においても同様である。
【0026】
図2に示す例では、緩衝構造体2のうちキャスク1と対向する部位において、外壁32と緩衝材31との間に断熱材33が設けられる。断熱材33は、外壁32よりも熱伝導率が低い部材である。断熱材33としては、例えば、セラミックス系の断熱材が利用可能である。なお、断熱材33は、必ずしも、緩衝構造体2のうちキャスク1と対向する部位全体に設けられる必要はなく、当該部位の一部のみに設けられてもよい。あるいは、断熱材33は、緩衝構造体2のうちキャスク1と対向しない部位にも設けられてよい。
【0027】
緩衝構造体2は、第1緩衝部21と、第2緩衝部22と、スペーサ24とを備える。第1緩衝部21と第2緩衝部22とは一繋がりの部材である。以下の説明では、第1緩衝部21と第2緩衝部22とをまとめて「緩衝本体20」とも呼ぶ。
図2では、緩衝本体20における第1緩衝部21と第2緩衝部22との境界を二点鎖線にて示す。当該境界は、中心軸J1を中心とする略円環状である。緩衝本体20は、中心軸J1を中心とする略円筒状の部材である。第1緩衝部21および第2緩衝部22もそれぞれ、中心軸J1を中心とする略円筒状の部位である。以下の説明では、第1緩衝部21の径方向(すなわち、中心軸J1を中心とする径方向)の中央部に設けられた貫通孔を「中央空間211」とも呼ぶ。平面視において、中央空間211の直径は、例えば、第1緩衝部21の外径の40%~60%である。
【0028】
第1緩衝部21は、キャスク1よりも上側に位置し、第1緩衝部21の下面は、キャスク1の長手方向の一方の端面であるキャスク端面11(すなわち、上端面)と長手方向に離間しつつ対向する。平面視において、第1緩衝部21の内径はキャスク端面11の直径よりも小さく、第1緩衝部21の外径はキャスク端面11の直径よりも大きい。換言すれば、平面視において、第1緩衝部21はキャスク端面11と部分的に重なるとともに、キャスク端面11の外周縁よりも径方向外側へと延在する。
【0029】
第2緩衝部22は、キャスク端面11の外周縁よりも径方向外側において、第1緩衝部21の外周縁部から下方へと(すなわち、長手方向の下側へと)延びる。第2緩衝部22は、キャスク端面11よりも下側まで、キャスク1の側面であるキャスク側面12に沿って延びる。第2緩衝部22は、キャスク1の周囲を周方向(すなわち、中心軸J1を中心とする周方向)の全周に亘って囲み、第2緩衝部22の内側面は、キャスク側面12と径方向にて離間しつつ対向する。第2緩衝部22の長手方向の長さは、例えば、第1緩衝部21の長手方向の長さの30%~70%である。
【0030】
第2緩衝部22の内側面近傍では、外壁32と緩衝材31との間に略円筒状の断熱材33が設けられる。また、第1緩衝部21では、第2緩衝部22の内側面よりも径方向内側に位置する部位の下面近傍において、外壁32と緩衝材31との間に略円環板状の断熱材33が設けられる。
図2に示す例では、第1緩衝部21に設けられる断熱材33の外周縁部と、第2緩衝部22に設けられる断熱材33の上端部とは連続する。
【0031】
スペーサ24は、キャスク1と第1緩衝部21および第2緩衝部22との間に配置され、キャスク1と第1緩衝部21および第2緩衝部22とを離間させる。スペーサ24は、第1緩衝部21の下面、および、第2緩衝部22の内側面に固定される。スペーサ24は、第2緩衝部22の内側面よりも径方向内側において、第1緩衝部21の下面と平面視にて部分的に重なり、当該下面全体とは重ならない。また、スペーサ24は、第2緩衝部22の内側面全体とは重ならず、当該内側面上に部分的に設けられる。
【0032】
本実施の形態では、スペーサ24は、周方向に放射状に配列される複数のリブ241を備える。
図1に示す例では、16枚のリブ241が、周方向に略等角度間隔(すなわち、約22.5°間隔)にて互いに離間した状態で配置される。各リブ241は、平面視において径方向に略直線状に延びる略略平板状の部材である。リブ241は、例えば、ステンレス鋼、アルミニウムまたは銅クラッドアルミニウム等の金属により形成される。リブ241の材質は、緩衝本体20の外壁32の材質と同じであってもよく、異なっていてもよい。なお、リブ241の数は適宜変更されてよく、リブ241の材質は金属以外であってもよい。また、複数のリブ241は、必ずしも略等角度間隔にて配列される必要はなく、不等角度間隔にて周方向に配列されてもよい。
【0033】
図3は、
図1中のIII-IIIの位置にて緩衝構造体2を切断した縦断面図である。
図3に示すリブ241は、第1リブ部41と、第2リブ部42とを備える。第1リブ部41は、キャスク端面11に略垂直な略平板状の部位であり、第1緩衝部21の下面とキャスク端面11との間において、径方向に沿って略直線状に延びる。第1リブ部41は、第1緩衝部21の下面に固定されており、第1リブ部41の下端部はキャスク端面11に接触する。第1リブ部41は、キャスク端面11上において緩衝本体20の重量を支持する。長手方向における第1リブ部41の高さは、例えば、30mm~70mmである。
【0034】
第1リブ部41は、第1緩衝部21の下面とキャスク端面11との間から、第1緩衝部21の内側面よりも径方向内側まで延びる。換言すれば、第1リブ部41の径方向内端部は、平面視において、第1緩衝部21の内側面から中央空間211へと径方向内方に突出している。第1リブ部41の径方向外端は、キャスク側面12と径方向の略同じ位置に位置する。なお、第1リブ部41は、第1緩衝部21の下面とキャスク端面11との間から、キャスク端面11の外周縁よりも径方向外側まで延びていてもよい。
【0035】
第2リブ部42は、キャスク側面12に略垂直な(すなわち、キャスク側面12との接触部におけるキャスク側面12の接線に垂直な)略平板状の部位であり、第2緩衝部22の内側面とキャスク側面12との間において、長手方向に沿って略直線状に延びる。第2リブ部42は、第2緩衝部22の内側面に固定されており、第2リブ部42の径方向内端部はキャスク側面12に接触する。径方向における第2リブ部42の幅は、例えば、30mm~70mmである。径方向における第2リブ部42の幅は、例えば、長手方向における第1リブ部41の高さと略同じである。
【0036】
第2リブ部42の下端は、第2緩衝部22の下端と長手方向の略同じ位置に位置する。なお、第2リブ部42は、第2緩衝部22の内側面とキャスク側面12との間から、第2緩衝部22の下端よりも下側まで延びていてもよい。第2リブ部42は、第2緩衝部22の内側面とキャスク側面12との間から、キャスク端面11よりも上側まで延びており、第2リブ部42の上端部は、第1リブ部41の径方向外端部と連続する。すなわち、リブ241は、側面視において略L字状の部材である。
【0037】
図1に示す例では、16枚のリブ241のうち、約45°間隔にて配置される8本のリブ241の形状は、
図3に示すものと略同じである。また、残りの8本のリブ241の形状は、第1リブ部41の内端が第1緩衝部21の内側面と径方向の略同じ位置に位置する点を除き、
図3に示すものと略同じである。換言すれば、上記残りの8本のリブ241では、第1リブ部41の径方向内端部は、第1緩衝部21の内側面から径方向内方に突出していない。
【0038】
複数のリブ241のうち周方向に隣接する2枚のリブ241に注目すると、当該2枚のリブ241の第1リブ部41と、第1緩衝部21の下面と、キャスク端面11とに囲まれる空間は、ガスが通過可能な第1流路34である。第1流路34は、当該2枚のリブ241の第1リブ部41間の間隙であり、第1緩衝部21の下面とキャスク端面11との間において、中央空間211から径方向外方へと延びて第2緩衝部22の内側面に至る。
【0039】
また、上記2枚のリブ241の第2リブ部42と、第2緩衝部22の内側面と、キャスク側面12とに囲まれる空間は、ガスが通過可能な第2流路35である。第2流路35は、当該2枚のリブ241の第2リブ部42間の間隙であり、第2緩衝部22の内側面とキャスク側面12との間において、第2緩衝部22の下端から上方に延びて第1緩衝部21の下面に至る。第2流路35の上端部は、第1流路34の径方向外端部に接続される。これにより、第1流路34と第2流路35とは連通して1つの流路(以下、「連通流路30」とも呼ぶ。)を構成する。連通流路30は、キャスク側面12に沿って上方へと延び、キャスク端面11に沿って径方向内方へと延びて中央空間211に至る。
【0040】
図1および
図2に示す例では、16枚のリブ241のうち、周方向に隣接する各2枚のリブ241において、当該各2枚のリブ241の第1リブ部41間の間隙が第1流路34となり、当該各2枚のリブ241の第2リブ部42間の間隙が、第1流路34と連通する第2流路35となる。これにより、キャスク1と緩衝構造体2の緩衝本体20との間に、周方向に配列される16本の連通流路30が設けられる。
【0041】
キャスク1の上端部のうち緩衝構造体2により覆われる部位から放散される熱は、緩衝構造体2とキャスク1との間に存在するガス(例えば、空気)に付与され、当該ガスが昇温する。第2緩衝部22とキャスク側面12との間において加熱されたガスは、密度が低下するため第2流路35内を上方へと移動する。これにより、連通流路30において、第2流路35内を上昇して第1流路34内を中央空間211に向かって径方向内方へと流れる気流が形成される。したがって、第1緩衝部21とキャスク端面11との間において加熱されたガスも、当該気流と共に第1流路34内を径方向内方へと移動し、中央空間211を介して緩衝構造体2の上方の空間へと放散される。これにより、キャスク1と緩衝構造体2との間に高温ガスが滞留することが抑制され、緩衝構造体2の除熱性能(すなわち、キャスク1から熱を奪って周囲へ放散させる性能)が向上される。その結果、緩衝構造体2の温度上昇が抑制され、緩衝材31等に対する熱影響による緩衝構造体2の緩衝性能の低下が抑制される。
【0042】
なお、緩衝構造体2において、複数のリブ241の数は適宜変更されてよい。各リブ241において、第1リブ部41は、必ずしも径方向に延びる必要はなく、径方向に対して傾斜しつつ(例えば、傾斜角度30°以下で傾斜しつつ)径方向に沿って延びていてもよい。また、第2リブ部42は、必ずしも長手方向に延びる必要はなく、長手方向に対して傾斜しつつ(例えば、傾斜角度30°以下で傾斜しつつ)長手方向に沿って延びていてもよい。第1リブ部41および第2リブ部42はそれぞれ、必ずしも略直線状に延びる必要はなく、湾曲しつつ延びていてもよい。
【0043】
図3に示すように、リブ241では、キャスク1と接触する辺に切り欠き242が設けられる。
図3に示す例では、第1リブ部41の下端縁に、径方向に互いに離間しつつ並ぶ複数の切り欠き242が設けられる。また、第2リブ部42の内端縁に、長手方向に互いに離間しつつ並ぶ複数の切り欠き242が設けられる。これにより、周方向に隣接する各2つの連通流路30が、複数の切り欠き242を介して連通される。このため、緩衝構造体2とキャスク1との間の高温ガスの周方向における温度均一性が向上する。その結果、キャスク1からの熱が周方向において略均等に効率良く放散されるため、緩衝構造体2の除熱性能がさらに向上される。
【0044】
図3に示す例では、周方向に沿って見た場合の切り欠き242の形状は略半円状であるが、当該形状は様々に変更されてよい。また、複数の切り欠き242の大きさは略同じであるが、異なっていてもよい。なお、リブ241に設けられる切り欠き242の数および配置も、様々に変更されてよい。例えば、第1リブ部41または第2リブ部42のみに切り欠き242が設けられてもよい。また、各リブ241に設けられる切り欠き242の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0045】
リブ241では、切り欠き242に代えて、あるいは、切り欠き242に加えて、リブ241を周方向(すなわち、リブ241の厚さ方向)に貫通する貫通孔が設けられてもよい。
図4に示す例では、
図3に示す複数の切り欠き242と同数の複数の貫通孔243が、当該複数の切り欠き242に代えて、リブ241の第1リブ部41および第2リブ部42に設けられる。この場合も、切り欠き242が設けられる場合と略同様に、周方向に隣接する各2つの連通流路30が貫通孔243を介して連通されるため、緩衝構造体2とキャスク1との間のガスの周方向における温度均一性が向上する。その結果、緩衝構造体2の除熱性能がさらに向上される。
【0046】
図4に示す例では、周方向に沿って見た場合の貫通孔243の形状は略円状であるが、当該形状は様々に変更されてよい。また、複数の貫通孔243の大きさは略同じであるが、異なっていてもよい。なお、リブ241に設けられる貫通孔243の数および配置も、様々に変更されてよい。例えば、第1リブ部41または第2リブ部42のみに貫通孔243が設けられてもよい。また、各リブ241に設けられる貫通孔243の数は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。
【0047】
図1および
図2に示すように、緩衝構造体2には、複数の第3流路36が設けられる。
図1に示す例では、複数の連通流路30と同数(すなわち、16本)の第3流路36が、周方向に略等角度間隔にて配置される。各第3流路36は、周方向に隣接する2枚のリブ241の第1リブ部41の間に配置される。
【0048】
図2に示す例では、第3流路36は、第1流路34の上端から重力方向(すなわち、長手方向)に沿って上方へと略直線状に延び、第1緩衝部21を貫通する。第3流路36は、第1流路34内の高温ガスを上方へと導き、緩衝構造体2の上方の空間へと放散する。これにより、緩衝構造体2とキャスク1との間の高温ガスの外部への放出が促進され、緩衝構造体2の除熱性能がさらに向上される。
図1に示す例では、第3流路36の長手方向に垂直な断面の形状は、例えば略円形である。当該断面の形状は様々に変更されてよい。
【0049】
緩衝構造体2では、第3流路36の数および配置は、様々に変更されてよい。例えば、第3流路36は、第2流路35の鉛直上方に配置され、第1流路34と第2流路35との接続部の上端から、重力方向に沿って上方へと略直線状に延び、第1緩衝部21を貫通してもよい。この場合、第3流路36は、第1流路34および第2流路35内の高温ガスを上方へと導き、緩衝構造体2の上方の空間へと放散する。これにより、緩衝構造体2とキャスク1との間の高温ガスの外部への放出が促進され、緩衝構造体2の除熱性能がさらに向上される。
【0050】
また、第3流路36は、必ずしも重力方向に沿って延びる必要はなく、第1流路34から斜め上方に延びて第1緩衝部21を貫通してもよい。あるいは、第3流路36は、第2流路35から略水平または斜め上方に延びて第2緩衝部22を貫通してもよい。緩衝構造体2では、複数の第3流路36は、必ずしも略等角度間隔にて配列される必要はなく、不等角度間隔にて周方向に配列されてもよい。緩衝構造体2に設けられる第3流路36の数は、1本であってもよく、2枚以上であってもよい。後述する第3流路36aについても同様である。
【0051】
以上に説明したように、貯蔵用緩衝構造体2(すなわち、緩衝構造体2)は、燃料集合体が収容される円柱状のキャスク1の貯蔵時に、キャスク1の端部に外装される。緩衝構造体2は、第1緩衝部21と、第2緩衝部22と、スペーサ24とを備える。第1緩衝部21は、キャスク1の長手方向の端面であるキャスク端面11と、長手方向にて離間しつつ対向する。第1緩衝部21は、キャスク端面11の外周縁よりも径方向外側へと延在する。第2緩衝部22は、キャスク端面11の外周縁よりも径方向外側において、第1緩衝部21からキャスク1の側面であるキャスク側面12に沿って長手方向に延びる。第2緩衝部22は、キャスク側面12と径方向にて離間しつつ対向する円筒状の部位である。
【0052】
スペーサ24は、第1緩衝部21とキャスク端面11との間に配置され、第1緩衝部21とキャスク端面11との間に、ガスが通過可能な第1流路34を形成する。また、スペーサ24は、第2緩衝部22とキャスク側面12との間に配置され、第2緩衝部22とキャスク側面12との間に、ガスが通過可能な第2流路35を形成する。第2流路35は、第1流路34と連通する。
【0053】
これにより、上述のように、キャスク1により加熱された高温ガスを、緩衝構造体2とキャスク1との間から、互いに連通する第1流路34および第2流路35を介して外部へと放散させることができるため、緩衝構造体2の除熱性能を向上させることができる。したがって、緩衝構造体2の温度上昇を抑制して、緩衝材31等に対する熱影響を低減することができる。その結果、当該熱影響による緩衝構造体2の緩衝性能の低下を抑制することができる。また、キャスク1の温度上昇を抑制して、キャスク1のガスケットおよび中性子遮蔽体の劣化を抑制することができる。その結果、キャスク1の密封性能および遮蔽性能の低下を抑制することもできる。
【0054】
上述のように、スペーサ24は、周方向に放射状に配列される複数のリブ241を備えることが好ましい。複数のリブ241のそれぞれは、第1緩衝部21とキャスク端面11との間において径方向に沿って延びる第1リブ部41と、第2緩衝部22とキャスク側面12との間において長手方向に沿って延びる第2リブ部42と、を備える。第1リブ部41は、キャスク端面11に垂直な板状の部位である。第2リブ部42は、第1リブ部41の径方向外端部に連続する板状の部位である。複数のリブ241のうち、周方向に隣接する各2枚のリブ241において、当該各2枚のリブ241の第1リブ部41間の間隙は第1流路34であり、当該各2枚のリブ241の第2リブ部42間の間隙は第2流路35である。
【0055】
このように、複数の板状のリブ241により、緩衝構造体2とキャスク1との間の空間を複数の連通流路30に区画することにより、各連通流路30の容積(すなわち、各第1流路34および各第2流路35の容積)を大きくすることができる。その結果、緩衝構造体2とキャスク1との間を流れる高温ガスの流量を増大することができ、緩衝構造体2の除熱性能をさらに向上させることができる。
【0056】
上述のように、リブ241は金属製であることが好ましい。これにより、リブ241が放熱フィンとして好適に働き、キャスク1からリブ241に伝達された熱を、リブ241の表面から周囲のガス中に効率良く放散することができる。したがって、リブ241を介して緩衝本体20(すなわち、第1緩衝部21および第2緩衝部22)に伝達される熱を低減することができる。その結果、緩衝構造体2の除熱性能をさらに向上することができ、熱影響による緩衝構造体2の緩衝性能の低下をさらに抑制することができる。リブ241のフィン効率を向上し、緩衝構造体2の除熱性能をより一層向上するという観点からは、リブ241の材質は、放熱性が高いアルミニウムまたは銅クラッドアルミニウムであることが好ましい。
【0057】
上述のように、好ましくは、複数のリブ241のそれぞれにおいて、キャスク1と接触する辺に切り欠き242が設けられ、または、厚さ方向に貫通する貫通孔243が設けられる。これにより、緩衝構造体2とキャスク1との間の高温ガスの周方向における温度均一性が向上する。その結果、緩衝構造体2の除熱性能をさらに向上させることができる。
【0058】
上述のように、緩衝構造体2では、第1流路34または第2流路35から延びて第1緩衝部21を貫通する第3流路36が設けられることが好ましい。これにより、緩衝構造体2とキャスク1との間の高温ガスの外部への放出を促進させることができ、緩衝構造体2の除熱性能をさらに向上させることができる。
【0059】
上述のように、第1緩衝部21および第2緩衝部22は、緩衝材31と、外壁32と、断熱材33とを備えることが好ましい。外壁32は、緩衝材31の外面を被覆する。断熱材33は、外壁32よりも熱伝導率が低く、キャスク1と対向する位置において外壁32と緩衝材31との間に配置される。これにより、緩衝構造体2とキャスク1との間を流れる高温ガスの熱、および、キャスク1からの輻射熱が、緩衝材31に伝達されることを抑制することができる。その結果、緩衝材31等に対する熱影響をさらに低減することができるため、当該熱影響による緩衝構造体2の緩衝性能の低下をさらに抑制することができる。
【0060】
なお、断熱材33は、必ずしも第1緩衝部21および第2緩衝部22の双方に設けられる必要はなく、第1緩衝部21および第2緩衝部22の少なくとも一方に設けられていればよい。この場合であっても、緩衝材31等に対する熱影響を低減することができるため、当該熱影響による緩衝構造体2の緩衝性能の低下を抑制することができる。
【0061】
上述のように、緩衝構造体2では、緩衝材31等に対する熱影響を低減することができるため、緩衝構造体2の構造は、熱影響を比較的受けやすい硬質発泡樹脂製または木製の緩衝材31を備える場合に特に適している。
【0062】
上述の緩衝構造体2では、リブ241によるフィン効率を向上するために、例えば、周方向に配列される複数のリブ241の数を増やしてもよい。この場合、各リブ241の厚さ(すなわち、周方向の厚さ)を薄くすることにより、複数の連通流路30の合計容積を比較的大きく維持することができる。
【0063】
また、緩衝構造体2は、第1緩衝部21のキャスク端面11と対向する面(すなわち、下面)、および、第2緩衝部22のキャスク側面12と対向する面(すなわち、内側面)のうち、少なくとも一方の面からキャスク1に向かって突出する板状のフィンをさらに備えてもよい。これにより、緩衝構造体2の表面からの放熱を促進することができる。その結果、緩衝構造体2の除熱性能をさらに向上することができる。緩衝構造体2に設けられるフィンの数は、1枚であってもよく、複数であってもよい。
【0064】
図5に示す例では、第2緩衝部22の内側面からキャスク側面12に向かって突出する複数のフィン244が、周方向に配列される。具体的には、周方向にて隣接する各2枚のリブ241の第2リブ部42の間に、2枚のフィン244が周方向に離間しつつ配置される。複数のフィン244の径方向内端部は、キャスク側面12に接触していてもよく、キャスク側面12から径方向外方に離間していてもよい。複数のフィン244がキャスク1に接触している場合、キャスク1の表面からの放熱も促進することができる。
【0065】
また、
図5に示す例では、第1緩衝部21の下面からキャスク端面11に向かって突出する複数のフィン245が、周方向に配列される。具体的には、周方向にて隣接する各2枚のリブ241の第1リブ部41の間に、1枚のフィン245が中央空間211に近接して配置される。複数のフィン245の下端部は、キャスク端面11に接触していてもよく、キャスク端面11から上方に離間していてもよい。複数のフィン245がキャスク1に接触している場合、キャスク1の表面からの放熱も促進することができる。
【0066】
なお、緩衝構造体2に設けられるフィン244,245の数および配置は、様々に変更されてよい。例えば、複数のフィン245が省略され、フィン244のみが設けられてもよい。あるいは、複数のフィン244が省略され、フィン245のみが設けられてもよい。
【0067】
上述の緩衝構造体2は、キャスク1が倒伏状態(すなわち、長手方向が重力方向に略垂直となるように載置された状態)で貯蔵される場合、
図6に示すように、キャスク1の長手方向の両端部に取り付けられる。
図6は、キャスク1の両端部に取り付けられる2つの緩衝構造体2の縦断面図である。
図6中の左側の緩衝構造体2については、リブ241を含む断面を示す。
図6中の右側の緩衝構造体2については、左側の緩衝構造体2から断面の位置を周方向にずらし、連通流路30を含む断面を示す。
【0068】
倒伏状態のキャスク1に取り付けられた緩衝構造体2では、キャスク1の周囲にて周方向に配列される複数の第2流路35のうち、重力方向の下側(すなわち、
図6中の下側)に位置する複数の第2流路35にて昇温された高温ガスが、連通する第1流路34を通過して中央空間211へと流出する。当該高温ガスの一部は、中央空間211内を長手方向に流れ、中央空間211の長手方向端部(すなわち、キャスク端面11とは反対側の端部)の開口から、緩衝構造体2の側方の空間へと放散される。また、中央空間211に流入した上記高温ガスの他の一部は、周方向に配列される複数の第1流路34のうち、重力方向の上側(すなわち、
図6中の上側)に位置する複数の第1流路34および複数の第2流路35を通過して、緩衝構造体2の上方の空間へと放散される。
【0069】
このように、倒伏状態のキャスク1に取り付けられた緩衝構造体2では、重力方向の下側の連通流路30から重力方向の上側の連通流路30へと向かう高温ガスの気流が形成される。これにより、キャスク1と緩衝構造体2との間に高温ガスが滞留することを抑制することができ、緩衝構造体2の除熱性能を向上させることができる。その結果、熱影響による緩衝構造体2の緩衝性能の低下を抑制することができる。
【0070】
図6に示す例では、緩衝構造体2において、重力方向の上側の第2流路35から重力方向に沿って上方へと延びて第2緩衝部22を貫通する第3流路36が設けられる。これにより、緩衝構造体2とキャスク1との間の高温ガスの外部への放出を促進させることができ、緩衝構造体2の除熱性能をさらに向上させることができる。
【0071】
倒伏状態のキャスク1に取り付けられた緩衝構造体2では、
図7に示すように、中央空間211(すなわち、第1緩衝部21の径方向中央部の貫通孔)の内部に取り付けられて中央空間211を閉塞する蓋部材246が設けられてもよい。蓋部材246は、第1緩衝部21のキャスク端面11と対向する面と長手方向の略同じ位置にて、キャスク端面11と長手方向に対向する。これにより、重力方向の下側の連通流路30から重力方向の上側の連通流路30へと向かう高温ガスの気流が、上下の連通流路30の間において(すなわち、中央空間211と対応する位置において)整流される。その結果、緩衝構造体2とキャスク1との間の高温ガスの外部への放出を促進させることができ、緩衝構造体2の除熱性能をさらに向上させることができる。
【0072】
上述の蓋部材246は、中央空間211の内部に着脱自在に取り付けられることが好ましい。これにより、キャスク端面11に設けられた装置等の点検の際に、蓋部材246を取り外すことにより、当該点検を中央空間211を介して容易に行うことができる。また、蓋部材246は、中央空間211を実質的に閉塞することができるのであれば、ケーブル等を通過させるための孔等が設けられてもよい。
【0073】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る緩衝構造体2aについて説明する。緩衝構造体2aは、倒伏状態の(すなわち、長手方向が水平方向となるように載置された)キャスク1の長手方向の両端部に取り付けられる。
図8は、キャスク1に取り付けられた緩衝構造体2aを長手方向の一方側から見た正面図である。
図9は、
図8に示す緩衝構造体2aの右側の側部に設けられる複数の側部リブ247aを示す側面図である。
図9では、緩衝本体20は中心軸J1を含む縦断面にて示す。
【0074】
緩衝構造体2aでは、スペーサ24aは、径方向に延びる複数のリブ241(
図1参照)に代えて、キャスク1に取り付けられた状態で重力方向に略平行に延びる複数のリブ241aを備える。緩衝構造体2aの他の構成は、上述の緩衝構造体2と略同様であり、以下の説明では、緩衝構造体2aの各構成に、対応する緩衝構造体2の構成と同符号を付す。
【0075】
図8に示すように、複数のリブ241aは、水平方向に互いに離間しつつ配列される。各リブ241aは、第1リブ部41aと、第2リブ部42aとを備える。第1リブ部41aは、キャスク端面11に略垂直な略平板状の部位であり、第1緩衝部21とキャスク端面11との間において、重力方向に沿って略直線状に延びる。第1リブ部41aは、第1緩衝部21に固定されており、第1リブ部41aの第1緩衝部21とは反対側の端部はキャスク端面11に接触する。長手方向における第1リブ部41aの幅は、例えば、30mm~70mmである。中心軸J1よりも上側では、第1リブ部41aの上端は、キャスク側面12と径方向の略同じ位置に位置する。中心軸J1よりも下側では、第1リブ部41aの下端は、キャスク側面12と径方向の略同じ位置に位置する。
【0076】
第2リブ部42aは、キャスク側面12に略垂直な(すなわち、キャスク側面12との接触部におけるキャスク側面12の接線に垂直な)略平板状の部位であり、第2緩衝部22とキャスク側面12との間において、長手方向に沿って略直線状に延びる。第2リブ部42aは、第2緩衝部22の内側面に固定されており、第2リブ部42aの径方向内端部はキャスク側面12に接触する。重力方向の下側の第2リブ部42aは、キャスク1の重量を支持する。径方向における第2リブ部42aの高さは、例えば、30mm~70mmである。径方向における第2リブ部42aの高さは、例えば、長手方向における第1リブ部41aの幅と同じである。
【0077】
第2リブ部42aは、第2緩衝部22の内側面とキャスク側面12との間から、キャスク端面11よりも長手方向の外側まで延びており、第2リブ部42aの長手方向の一方の端部は、第1リブ部41aの径方向外端部と連続する。すなわち、リブ241aは略L字状の部材である。第2リブ部42aの長手方向の他方の端縁は、第2緩衝部22の長手方向の端縁と略同じ位置に位置する。なお、第2リブ部42aは、第2緩衝部22の内側面とキャスク側面12との間から長手方向に突出していてもよい。
【0078】
緩衝構造体2aでは、複数のリブ241aのうち、水平方向に隣接する各2つのリブ241aにおいて、当該各2つのリブ241aの第1リブ部41a間の間隙が、ガスが通過可能な第1流路34aとなる。また、当該各2つのリブ241aの第2リブ部42a間の間隙が、ガスが通過可能な第2流路35aとなる。
【0079】
緩衝構造体2aでは、第2緩衝部22のうち
図8中の左右方向(すなわち、重力方向および長手方向に垂直な方向)の両側部にそれぞれ、複数の側部リブ247aが設けられる。
図8および
図9に示す例では、第2緩衝部22の各側部には、5枚の側部リブ247aが設けられる。第2緩衝部22の左側の側部に設けられる5枚の側部リブ247aと、右側の側部に設けられる5間の側部リブ247aとは、正面視において、中心軸J1を通って重力方向に延びる仮想的な直線に対して略線対称である。
【0080】
第2緩衝部22の各側部に設けられる複数の側部リブ247aは、重力方向に沿って互いに離間しつつ配列される。各側部リブ247aは、第2緩衝部22の内側面に固定され、当該内側面からキャスク側面12に向かって突出する略平板状の部材である。各側部リブ247aの径方向内端部は、キャスク側面12に接触する。
【0081】
各側部リブ247aは、第2緩衝部22の内側面とキャスク側面12との間にて、長手方向の一方側から他方側へと向かうに従って重力方向(すなわち、
図9中の上下方向)の上側に向かう。
図9に示す例では、各側部リブ247aは、長手方向に関して第2緩衝部22から第1緩衝部21へと向かうに従って上方へと向かって斜めに延びる。各側部リブ247aは、
図9に示す例とは反対に、長手方向に関して第1緩衝部21から第2緩衝部22へと向かうに従って上方へと向かって斜めに延びていてもよい。第2緩衝部22の各側部に設けられる複数の側部リブ247aは、互いに略平行に配置される。
【0082】
第2緩衝部22の各側部に設けられる複数の側部リブ247a間の間隙は、当該各側部における第1緩衝部21とキャスク端面11との間の空間に連通する側部流路37aとなる。
図9に示す例では、第2緩衝部22の各側部とキャスク側面12との間の高温ガスは、側部流路37aによって斜め上方に移動し、第1緩衝部21とキャスク端面11との間の第1流路34aに導かれ、当該第1流路34aの上側の第2流路35aを介して、緩衝構造体2aの上方の空間へと放散される。また、複数の側部リブ247aが
図9とは反対向きに傾斜している場合、第2緩衝部22の各側部とキャスク側面12との間の高温ガスは、側部流路37aによってキャスク端面11から離れる方向へと斜め上方に移動し、第2緩衝部22の第1緩衝部21とは反対側の端部から、緩衝構造体2aの周囲へと放散される。
【0083】
以上に説明したように、長手方向が水平方向となるように載置された(すなわち、倒伏状態で載置された)キャスク1の端部に外装される緩衝構造体2aでは、スペーサ24aは、水平方向に配列される複数のリブ241aを備えることが好ましい。複数のリブ241aのそれぞれは、第1緩衝部21とキャスク端面11との間において重力方向に沿って延びる第1リブ部41aと、第2緩衝部22とキャスク側面12との間において長手方向に沿って延びる第2リブ部42aとを備える。第1リブ部41aは、キャスク端面11に垂直な板状の部位である。第2リブ部42aは、第1リブ部41aの重力方向の一方の端部に連続する板状の部位である。複数のリブ241aのうち水平方向に隣接する各2枚のリブ241aにおいて、当該各2枚のリブ241aの第1リブ部41a間の間隙は第1流路34aであり、当該各2枚のリブ241aの第2リブ部42a間の間隙は第2流路35aである。
【0084】
このように、複数の板状のリブ241aにより、緩衝構造体2aとキャスク1との間の空間を複数の連通流路30aに区画することにより、各連通流路30aの容積(すなわち、各第1流路34aおよび各第2流路35aの容積)を大きくすることができる。したがって、緩衝構造体2aとキャスク1との間を流れる高温ガスの流量を増大することができ、緩衝構造体2aの除熱性能を向上させることができる。その結果、熱影響による緩衝構造体2の緩衝性能の低下を抑制することができる。
【0085】
また、各リブ241aにおいて第1リブ部41aは重力方向に沿って延びるため、第1緩衝部21とキャスク端面11との間の空間を上昇する高温ガスの流れが、第1リブ部41aによって遮られることを防止することができる。したがって、緩衝構造体2aとキャスク1との間を流れる高温ガスの流速を増大することができ、緩衝構造体2aの除熱性能をさらに向上させることができる。
【0086】
リブ241aでは、上述のリブ241と同様に、複数のリブ241aのそれぞれにおいて、キャスク1と接触する辺に切り欠き242aが設けられ、または、厚さ方向に貫通する貫通孔243(
図4参照)が設けられることが好ましい。これにより、緩衝構造体2aとキャスク1との間の高温ガスの水平方向および/または周方向における温度均一性が向上する。その結果、緩衝構造体2aの除熱性能をさらに向上させることができる。
【0087】
上述のように、緩衝構造体2aは、第2緩衝部22のうち左右方向(すなわち、重力方向および長手方向に垂直な方向)の両側部のそれぞれにおいて、第2緩衝部22に固定されてキャスク側面12に接触する複数の側部リブ247aをさらに備えることが好ましい。複数の側部リブ247aは、第2緩衝部22とキャスク側面12との間にて長手方向の一方側から他方側へと向かうに従って重力方向の上側に向かう。複数の側部リブ247a間の間隙は、第1緩衝部21とキャスク端面11との間の空間に連通する側部流路37aである。
【0088】
このように、キャスク1の左右両側に斜め上方へと向かう側部流路37aが設けられることにより、第2緩衝部22とキャスク側面12との間における高温ガスの滞留を抑制し、当該高温ガスの外部への放散を促進することができる。その結果、緩衝構造体2aの除熱性能を向上させることができる。
【0089】
緩衝構造体2aでは、緩衝構造体2と同様に、第1流路34aまたは第2流路35aから重力方向に沿って延びて第1緩衝部21または第2緩衝部22を貫通する第3流路36aが設けられることが好ましい。これにより、緩衝構造体2aとキャスク1との間の高温ガスの外部への放出を促進させることができ、緩衝構造体2aの除熱性能をさらに向上させることができる。
【0090】
緩衝構造体2aでは、緩衝構造体2と同様に、上述の蓋部材246(
図7参照)が中央空間211に取り付けられてもよい。これにより、上述のように、中央空間211と対応する位置において上昇する高温ガスの気流が整流されるため、緩衝構造体2aの除熱性能をさらに向上させることができる。また、蓋部材246を取り外すことにより、キャスク端面11に設けられた装置等の点検を容易に行うことができる。
【0091】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る緩衝構造体2bについて説明する。緩衝構造体2bは、起立状態または倒伏状態のキャスク1の端部に取り付けられる。
図10は、起立状態のキャスク1の上端部に取り付けられた緩衝構造体2bの平面図である。
図11は、緩衝構造体2bを
図10中のXI-XIの位置にて切断した縦断面図である。緩衝構造体2bでは、スペーサ24bは、複数のリブ241(
図1参照)に代えて、複数の第1凸部248bおよび複数の第2凸部249bを備える。緩衝構造体2bの他の構成は、上述の緩衝構造体2と略同様であり、以下の説明では、緩衝構造体2bの各構成に、対応する緩衝構造体2の構成と同符号を付す。
【0092】
複数の第1凸部248bは、第1緩衝部21のキャスク端面11と対向する面(以下、「第1緩衝部内面212」とも呼ぶ。)に固定される。複数の第1凸部248bは、第1緩衝部内面212全体において互いに離間して分散配置される。複数の第1凸部248bは、例えば千鳥状に配置される。複数の第1凸部248bは、第1緩衝部内面212からキャスク端面11に向かって突出し、キャスク端面11に接触する。各第1凸部248bは、例えば、重力方向に略垂直な主面を有する略平板状であり、ボルト等により第1緩衝部21に固定される。各第1凸部248bは、好ましくは、キャスク端面11に対して面接触する。
図10に示す例では、各第1凸部248bの平面視における形状は略円形であるが、当該形状は様々に変更されてよい。緩衝構造体2bの第1緩衝部内面212とキャスク端面11との間において、複数の第1凸部248bの間の空間が第1流路34bとなる。
【0093】
複数の第2凸部249bは、第2緩衝部22のキャスク側面12と対向する内側面(以下、「第2緩衝部内面222」とも呼ぶ。)に固定される。複数の第2凸部249bは、第2緩衝部内面222全体において互いに離間して分散配置される。複数の第2凸部249bは、例えば千鳥状に配置される。複数の第2凸部249bは、第2緩衝部内面222からキャスク側面12に向かって突出し、キャスク側面12に接触する。各第2凸部249bは、例えば、キャスク側面12に沿って湾曲する略板状であり、ボルト等により第2緩衝部22に固定される。各第2凸部249bは、好ましくは、キャスク側面12に対して面接触する。各第2凸部249bの側面視における形状は、例えば略円形であるが、当該形状は様々に変更されてよい。緩衝構造体2bの第2緩衝部内面222とキャスク側面12との間において、複数の第2凸部249bの間の空間が第2流路35bとなる。第2流路35bは、キャスク端面11の外周縁の外側において第1流路34bと連通する。
【0094】
緩衝構造体2bが起立状態のキャスク1に取り付けられている場合、第2緩衝部22とキャスク側面12との間の高熱ガスが、第2流路35bを介して上昇し、第1緩衝部21とキャスク端面11との間の高温ガスと共に第1流路34bを介して径方向内方へと流れ、中央空間211から緩衝構造体2bの上方の空間へと放散される。
【0095】
緩衝構造体2bが倒伏状態のキャスク1に取り付けられている場合、第2流路35bのうち重力方向の下側に位置する領域の高温ガスの一部は、連通する第1流路34b、および、第2流路35bのうち重力方向の上側に位置する領域を通過して、緩衝構造体2bの上方の空間へと放散される。また、第2流路35bのうち重力方向の下側に位置する領域の高温ガスの他の一部は、連通する第1流路34bを通過して中央空間211へと流出する。中央空間211へと流出した高温ガスの一部は、中央空間211の長手方向端部の開口から、緩衝構造体2bの側方の空間へと放散される。また、中央空間211に流入した高温ガスの他の一部は、第1流路34bのうち重力方向の上側に位置する領域、および、第2流路35bのうち重力方向の上側に位置する領域を通過して、緩衝構造体2bの上方の空間へと放散される。
【0096】
以上に説明したように、緩衝構造体2bでは、スペーサ24bは、複数の第1凸部248bと、複数の第2凸部249bとを備える。複数の第1凸部248bは、第1緩衝部21のキャスク端面11と対向する面である第1緩衝部内面212全体において互いに離間して分散配置されるとともに、キャスク端面11に向かって突出する。複数の第2凸部249bは、第2緩衝部22のキャスク側面12と対向する面である第2緩衝部内面222全体において互いに離間して分散配置されるとともに、キャスク側面12に向かって突出する。複数の第1凸部248bの間の空間は第1流路34bであり、複数の第2凸部249bの間の空間は第2流路35bである。
【0097】
これにより、キャスク1と緩衝構造体2bとの間に高温ガスが滞留することを抑制することができ、緩衝構造体2bの除熱性能を向上させることができる。その結果、熱影響による緩衝構造体2bの緩衝性能の低下を抑制することができる。また、キャスク1の転倒時等にキャスク1に加わる衝撃荷重を、複数の第1凸部248bおよび/または複数の第2凸部249bにて分散させることができるため、当該衝撃荷重を低減することができる。複数の第1凸部248bおよび複数の第2凸部249bは、例えば、ステンレス鋼等により形成される。
【0098】
緩衝構造体2bでは、第1緩衝部内面212のうち複数の第1凸部248bと接触する領域を第1接触領域とし、第2緩衝部内面222のうち複数の第2凸部249bと接触する領域を第2接触領域として、第1緩衝部内面212および第2緩衝部内面222の合計面積に対する第1接触領域および第2接触領域の合計面積の割合は、5%以上であることが好ましく、25%以上であることがより好ましい。これにより、キャスク1を好適に支持することができ、キャスク1の転倒時等における衝撃荷重を好適に低減することができる。また、当該割合は、60%以下であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。これにより、第1流路34bおよび第2流路35bの容積を比較的大きくし、緩衝構造体2bの除熱性能を好適に向上することができる。
【0099】
緩衝構造体2bでは、緩衝構造体2と同様に、第1流路34bまたは第2流路35bから重力方向に沿って延びて第1緩衝部21または第2緩衝部22を貫通する第3流路36bが設けられることが好ましい。これにより、緩衝構造体2bとキャスク1との間の高温ガスの外部への放出を促進させることができ、緩衝構造体2bの除熱性能をさらに向上させることができる。
【0100】
緩衝構造体2bでは、緩衝構造体2と同様に、上述の蓋部材246(
図7参照)が中央空間211に取り付けられてもよい。これにより、上述のように、中央空間211と対応する位置において上昇する高温ガスの気流が整流されるため、緩衝構造体2bの除熱性能をさらに向上させることができる。また、蓋部材246を取り外すことにより、キャスク端面11に設けられた装置等の点検を容易に行うことができる。
【0101】
次に、本発明の第4の実施の形態に係る緩衝構造体2cについて、
図12を参照しつつ説明する。
図12は、緩衝構造体2cの縦断面図であり、上述の
図2に対応する。緩衝構造体2cは、起立状態または倒伏状態のキャスク1cの端部に取り付けられる。
図12に示す例では、緩衝構造体2cは、起立状態のキャスク1cの上端部に取り付けられている。キャスク1cは、キャスク端面11c(すなわち、長手方向の端面)の外周部が、当該外周部の径方向内側の部位よりも長手方向に突出している点を除き、上述のキャスク1と略同様の構造を有する。以下の説明では、キャスク端面11cの外周部(すなわち、長手方向に突出している略円筒状の部位)を、「キャスク凸部13c」とも呼ぶ。
【0102】
緩衝構造体2cでは、第1緩衝部21cの下面の外周部が、当該外周部の径方向内側の部位よりも上方に凹んだ第1緩衝凹部213cとなっている。第1緩衝凹部213cの下面は、キャスク凸部13cの上面と略全周に亘って接触する。第1緩衝凹部213cの下面とキャスク凸部13cの上面との接触領域の形状は、略円環面である。第1緩衝部21cの下面は、キャスク凸部13cよりも径方向内側において、キャスク端面11cと上下方向に離間しつつ対向する。
【0103】
緩衝構造体2cでは、緩衝本体20のうちキャスク凸部13cと接触する領域を除いて、上述のリブ241と略同様の構造を有するとともにリブ241と略同様に配置された複数のリブ241cを有するスペーサ24cが設けられる。また、緩衝構造体2cでは、
図2に示す第3流路36に代えて、キャスク凸部13cの径方向内側に隣接する第3流路36cと、キャスク凸部13cの径方向外側に隣接する第3流路36dとが設けられる。本実施の形態では、複数の第3流路36c、および、複数の第3流路36dがそれぞれ、中心軸J1を中心とする周方向に略等角度間隔にて配列される。緩衝構造体2cの他の構成は、上述の緩衝構造体2と略同様であり、以下の説明では、緩衝構造体2cの各構成に、対応する緩衝構造体2の構成と同符号を付す。
【0104】
リブ241cは、第1リブ部41cと、第2リブ部42cとを備える。第1リブ部41cは、キャスク端面11cに略垂直な略平板状の部材であり、キャスク凸部13cの径方向内側に配置され、第1緩衝部21cの下面とキャスク端面11cとの間において、径方向に沿って略直線状に延びる。第1リブ部41cは、第1緩衝部21cの下面に固定されており、第1リブ部41cの下端部はキャスク端面11cに接触する。第1リブ部41cの径方向内端部は、平面視において、第1緩衝部21cの内側面から中央空間211へと径方向内方に突出していてもよく、突出していなくてもよい。第1リブ部41cの径方向外端部は、例えば、キャスク凸部13cの内側面に接触する。第1リブ部41cでは、キャスク1cと接触する辺に切り欠き242が設けられる。あるいは、切り欠き242に代えて貫通孔243(
図4参照)が第1リブ部41cに設けられてもよい。
【0105】
第2リブ部42cは、上述の第2リブ部42と略同様に、キャスク側面12に略垂直な略平板状の部材であり、第2緩衝部22の内側面とキャスク側面12との間において、長手方向に沿って略直線状に延びる。第2リブ部42cは、第2緩衝部22の内側面に固定されており、第2リブ部42cの径方向内端部はキャスク側面12に接触する。第2リブ部42cは、第2緩衝部22の下端から下方に突出していてもよく、突出していなくてもよい。第2リブ部42cの上端部は、例えば、第1緩衝凹部213cの下面に接触する。第1リブ部41cと第2リブ部42cとは連続していない。第2リブ部42cでは、キャスク1cと接触する辺に切り欠き242が設けられる。あるいは、切り欠き242に代えて貫通孔243(
図4参照)が第2リブ部42cに設けられてもよい。
【0106】
緩衝構造体2cでは、複数の第1リブ部41cが周方向に略等角度間隔に配置される。周方向に隣接する各2枚の第1リブ部41cと、第1緩衝部21cの下面と、キャスク端面11cとに囲まれる空間は、ガスが通過可能な第1流路34cである。上述の第3流路36cは、第1流路34cの径方向外端部において、第1流路34の上端から重力方向(すなわち、長手方向)に沿って上方へと略直線状に延び、第1緩衝部21cを貫通する。第3流路36cの長手方向に垂直な断面の形状は、例えば略円形である。当該断面の形状は様々に変更されてよい。また、第3流路36cは、必ずしも重力方向に沿って延びる必要はなく、第1流路34cから斜め上方に延びて第1緩衝部21cを貫通してもよい。第3流路36cは、第1流路34c内の高温ガスを緩衝構造体2cの上方の空間へと放散する。これにより、緩衝構造体2cとキャスク1cとの間の高温ガスの外部への放出が促進され、緩衝構造体2cの除熱性能が向上される。
【0107】
緩衝構造体2cでは、複数の第2リブ部42cが周方向に略等角度間隔に配置される。周方向に隣接する各2枚の第2リブ部42cと、第2緩衝部22の内側面と、キャスク側面12とに囲まれる空間は、ガスが通過可能な第2流路35cである。第2流路35cは、キャスク凸部13cによって第1流路34cと隔絶されており、第1流路34cとは実質的に連通していない。
【0108】
上述の第3流路36dは、第2流路35cの上端から重力方向に沿って上方へと略直線状に延び、第1緩衝部21cを貫通する。第3流路36dの長手方向に垂直な断面の形状は、例えば略円形である。当該断面の形状は様々に変更されてよい。また、第3流路36dは、必ずしも重力方向に沿って延びる必要はなく、第2流路35cの上端から斜め上方に延びて第1緩衝部21cを貫通してもよい。あるいは、第3流路36dは、第2流路35の上端部から斜め上方または径方向外方に延びて第2緩衝部22を貫通してもよい。第3流路36dは、第2流路35c内の高温ガスを緩衝構造体2cの周囲の空間へと放散する。これにより、緩衝構造体2cの除熱性能がさらに向上される。なお、緩衝構造体2cでは、第3流路36cおよび第3流路36dのうちいずれか一方のみが設けられてもよい。
【0109】
図12に示す例では、緩衝構造体2cの第1緩衝部21cの下面の一部がキャスク端面11cと略全周に亘って接触することにより、第1流路34cと第2流路35cとが隔絶されているが、当該接触に代えて、または、当該接触に加えて、第2緩衝部22の内側面の一部がキャスク側面12と全周に亘って接触することにより、第1流路34cと第2流路35cとが隔絶されてもよい。また、緩衝構造体2cでは、第1緩衝凹部213cは設けられず、第1緩衝部21cの下面は、略全面に亘って上下方向の略同じ位置に位置する略平坦な面であってもよい。
【0110】
図12に例示する緩衝構造体2cでは、緩衝本体20のうちキャスク凸部13cと接触する領域を除いて、リブ241と略同様の構造を有するとともにリブ241と略同様に配置されたリブ241cが設けられるが、これには限定されない。例えば、スペーサ24aのリブ241aと略同構造かつ略同様の配置のリブが、緩衝本体20のうちキャスク凸部13cと接触する領域を除いて設けられてもよい。換言すれば、上述の緩衝構造体2aは、キャスク1cに取り付けられてもよい。この場合、緩衝構造体2aの緩衝本体20のうちキャスク凸部13cと接触する領域では、リブ241aは省略される。あるいは、スペーサ24bの第1凸部248bおよび第2凸部249bと略同構造かつ略同様の配置の凸部が、緩衝本体20のうちキャスク凸部13cと接触する領域を除いて設けられてもよい。換言すれば、上述の緩衝構造体2bは、キャスク1cに取り付けられてもよい。この場合、緩衝構造体2bの緩衝本体20のうちキャスク凸部13cと接触する領域では、スペーサ24bは省略される。
【0111】
緩衝構造体2cでは、上述のスペーサは設けられなくてもよい。この場合、例えば、キャスク端面11cおよび/またはキャスク側面12に設けられた複数のリブや凸部が緩衝構造体2cの緩衝本体20に接触することにより、第1流路34cおよび第2流路35cが形成されてもよい。
【0112】
以上に説明したように、緩衝構造体2cは、第1緩衝部21cと、第2緩衝部22とを備える。第1緩衝部21cは、キャスク1cの長手方向の端面であるキャスク端面11cと長手方向にて対向する。第1緩衝部21cは、キャスク端面11cの外周縁よりも径方向外側へと延在する。第2緩衝部22は、キャスク端面11cの外周縁よりも径方向外側において、第1緩衝部21cからキャスク1cの側面であるキャスク側面12に沿って長手方向に延びる。第2緩衝部22は、キャスク側面12と径方向にて対向する円筒状の部位である。
【0113】
緩衝構造体2cでは、第1緩衝部21cとキャスク端面11cとの間にガスが通過可能な第1流路34cが形成される。また、第2緩衝部22とキャスク側面12との間にガスが通過可能な第2流路35cが形成される。緩衝構造体2cでは、第1流路34cまたは第2流路35cから延びて第1緩衝部21cまたは第2緩衝部22を貫通する第3流路36cまたは第3流路36dが設けられる。
【0114】
これにより、上述のように、キャスク1cにより加熱された高温ガスを、緩衝構造体2cとキャスク1cとの間から、第3流路36cまたは第3流路36dを介して外部へと放散させることができるため、緩衝構造体2cの除熱性能を向上させることができる。したがって、緩衝構造体2cの温度上昇を抑制して、緩衝材31等に対する熱影響を低減することができる。その結果、当該熱影響による緩衝構造体2cの緩衝性能の低下を抑制することができる。また、キャスク1cの温度上昇を抑制して、キャスク1cのガスケットおよび中性子遮蔽体の劣化を抑制することができる。その結果、キャスク1cの密封性能および遮蔽性能の低下を抑制することもできる。
【0115】
緩衝構造体2cでは、スペーサ24cは、上述のスペーサ24と略同様に、周方向に放射状に配列される複数のリブ241cを備えることが好ましい。複数のリブ241cのそれぞれは、第1緩衝部21cとキャスク端面11cとの間において径方向に沿って延びる第1リブ部41cと、第2緩衝部22とキャスク側面12との間において長手方向に沿って延びる第2リブ部42cと、を備える。第1リブ部41cは、キャスク端面11に垂直な板状の部位である。複数の第1リブ部41cのうち、周方向に隣接する各2枚の第1リブ部41c間の間隙は第1流路34cであり、周方向に隣接する各2枚の第2リブ部42c間の間隙は第2流路35cである。
【0116】
このように、複数の板状のリブ241cにより、緩衝構造体2cとキャスク1cとの間の空間を複数の第1流路34cおよび複数の第2流路35cに区画することにより、各第1流路34cおよび各第2流路35cの容積を大きくすることができる。その結果、緩衝構造体2cとキャスク1cとの間を流れる高温ガスの流量を増大することができ、緩衝構造体2cの除熱性能をさらに向上させることができる。
【0117】
上述のように、好ましくは、複数のリブ241cのそれぞれにおいて、キャスク1cと接触する辺に切り欠き242が設けられ、または、厚さ方向に貫通する貫通孔243(
図4参照)が設けられる。これにより、緩衝構造体2cとキャスク1cとの間の高温ガスの周方向における温度均一性が向上する。その結果、緩衝構造体2cの除熱性能をさらに向上させることができる。
【0118】
緩衝構造体2cでは、緩衝構造体2と同様に、第1緩衝部21cおよび第2緩衝部22は、緩衝材31と、外壁32と、断熱材33とを備えることが好ましい。外壁32は、緩衝材31の外面を被覆する。断熱材33は、外壁32よりも熱伝導率が低く、キャスク1cと対向する位置において外壁32と緩衝材31との間に配置される。これにより、緩衝構造体2cとキャスク1cとの間を流れる高温ガスの熱、および、キャスク1cからの輻射熱が、緩衝材31に伝達されることを抑制することができる。その結果、緩衝材31等に対する熱影響をさらに低減することができるため、当該熱影響による緩衝構造体2cの緩衝性能の低下をさらに抑制することができる。
【0119】
上述の緩衝構造体2cは、キャスク1cが倒伏状態(すなわち、長手方向が水平方向となるように載置された状態)で貯蔵される場合、
図13に示すように、キャスク1cの長手方向の両端部に取り付けられる。
図13は、キャスク1cの当該両端部に取り付けられる2つの緩衝構造体2cの縦断面図である。
図13中の左側の緩衝構造体2cについては、リブ241cを含む断面を示す。
図13中の右側の緩衝構造体2cについては、左側の緩衝構造体2cから断面の位置を周方向にずらし、第1流路34cおよび第2流路35cを含む断面を示す。
【0120】
倒伏状態のキャスク1cに取り付けられた緩衝構造体2cでは、キャスク1cの周囲にて周方向に配列される複数の第2流路35cのうち、重力方向の下側(すなわち、
図13中の下側)に位置する第2流路35cにて昇温された高温ガスが、第2リブ部42cの切り欠き242を通過して、重力方向の上側に位置する第2流路35cへと周方向に移動する。当該高温ガスは、緩衝構造体2cの上端部に位置する第2流路35cから、第3流路36d、および、第2流路35cの第3流路36dとは反対側の端部開口を介して、外部へと放散される。なお、
図13に示す例では、緩衝構造体2cから第3流路36dが省略されてもよい。この場合、重力方向の上側に位置する第2流路35c内の高温ガスは、第2流路35cの第1緩衝部21cとは反対側の端部開口を介して、外部へと放散される。
【0121】
また、重力方向の下側に位置する第1流路34cにて昇温された高温ガスは、第1流路34cの径方向内端部の開口を介して中央空間211へと流入する。第1流路34cから中央空間211に流出した高温ガスの一部は、中央空間211の長手方向端部の開口から外部へと放散される。また、当該高温ガスの他の一部は、重力方向の上側に位置する第1流路34cに流入し、当該第1流路34cにて昇温された高温ガスと共に、第3流路36cを介して外部へと放散される。これにより、緩衝構造体2cの除熱性能を向上させることができる。その結果、熱影響による緩衝構造体2cの緩衝性能の低下を抑制することができる。
【0122】
倒伏状態のキャスク1cに取り付けられた緩衝構造体2cでは、中央空間211の内部に取り付けられて中央空間211を閉塞する蓋部材246(
図7参照)が設けられてもよい。蓋部材246は、第1緩衝部21cのキャスク端面11cと対向する面と長手方向の略同じ位置にて、キャスク端面11cと長手方向に対向する。これにより、重力方向の下側の第1流路34cから重力方向の上側の第1流路34cへと向かう高温ガスの気流が、上下の第1流路34cの間において(すなわち、中央空間211と対応する位置において)整流される。その結果、緩衝構造体2cとキャスク1cとの間の高温ガスの外部への放出を促進させることができ、緩衝構造体2cの除熱性能をさらに向上させることができる。
【0123】
上述の蓋部材246は、中央空間211の内部に着脱自在に取り付けられることが好ましい。これにより、キャスク端面11cに設けられた装置等の点検の際に、蓋部材246を取り外すことにより、当該点検を中央空間211を介して容易に行うことができる。また、蓋部材246は、中央空間211を実質的に閉塞することができるのであれば、ケーブル等を通過させるための孔等が設けられてもよい。
【0124】
上述の緩衝構造体2,2a,2b,2cでは、様々な変更が可能である。
【0125】
例えば、緩衝構造体2では、中央空間211が省略され、第1緩衝部21が略円柱状とされてもよい。緩衝構造体2a,2b,2cにおいても同様である。
【0126】
緩衝構造体2では、緩衝本体20の構造は、必ずしも緩衝材31と外壁32と断熱材33とを有する上述のものには限定されず、様々に変更されてよい。例えば、緩衝本体20から断熱材33が省略されてもよい。緩衝構造体2a,2b,2cにおいても同様である。
【0127】
緩衝構造体2のリブ241では、上述の切り欠き242および貫通孔243は必ずしも設けられる必要はない。緩衝構造体2aのリブ241a、および、緩衝構造体2cのリブ241cについても同様である。
【0128】
第1リブ部41は、必ずしも第1緩衝部21に固定される必要はなく、また、必ずしも第1緩衝部21と接触する必要もない。第2リブ部42は、必ずしも第2緩衝部22に固定される必要はなく、また、必ずしも第2緩衝部22と接触する必要もない。リブ241は、必ずしも第1緩衝部21および第2緩衝部22に固定される必要はないが、緩衝本体20に固定されていることが好ましい。なお、リブ241は、緩衝本体20に固定されることなく、緩衝本体20とキャスク1との間に配置されてもよい。第1リブ部41a,41c、第2リブ部42a,42c、および、リブ241a,241cについても同様である。
【0129】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0130】
1,1c キャスク
2,2a,2b,2c 緩衝構造体
11,11c キャスク端面
12 キャスク側面
20 緩衝本体
21,21c 第1緩衝部
22 第2緩衝部
24,24a,24b,24c スペーサ
31 緩衝材
32 外壁
33 断熱材
34,34a,34b,34c 第1流路
35,35a,35b,35c 第2流路
36,36a,36b,36c,36d 第3流路
37a 側部流路
41,41a,41c 第1リブ部
42,42a,42c 第2リブ部
211 中央空間
212 第1緩衝部内面
222 第2緩衝部内面
241,241a,241c リブ
242 切り欠き
243 貫通孔
244,245 フィン
246 蓋部材
247a 側部リブ
248b 第1凸部
249b 第2凸部