(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160035
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】ヘアードライヤーおよびそのノズルプレート
(51)【国際特許分類】
A45D 20/12 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
A45D20/12 Z
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070052
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】520443859
【氏名又は名称】ホン-イン エンバイロメンタル テクノロジー カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】500076767
【氏名又は名称】株式会社万雄
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 智成
(72)【発明者】
【氏名】大野 良雄
【テーマコード(参考)】
3B040
【Fターム(参考)】
3B040CK00
(57)【要約】
【課題】遠赤外線の放射率を高めることが可能なヘアードライヤーおよびそのノズルプレートを提供すること。
【解決手段】ヘアードライヤー(1)は、吹出口(21)近傍に配置されるものであり、吸込口に面する内面(51)と、吹出口(21)側に面する外面(52)と、ヒーターユニットによって温められた空気が内面(51)から外面(52)に向かって通過する複数の貫通孔(54)とを有するノズルプレート(5)を備える。ノズルプレート(5)の内面(51)、外面(52)、および貫通孔(54)の穴壁面は、トルマリン、陶土、ムライト、コージライトのうち少なくともいずれかの粉末を含む遠赤外線塗料(6)によって覆われており、貫通孔(54)の最大径をDとし、貫通孔(54)の板厚方向の長さをLとした場合に、D/Lの値が1/5~4/5の範囲である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口と吹出口とを連通する通気路を内部に形成したドライヤー本体と、
前記ドライヤー本体内に設けられるヒーターユニットと、
前記ヒーターユニットで温めた空気を前記吹出口に向かって送り出す送風ファンと、
前記吹出口近傍に配置されるものであり、前記吸込口に面する内面と、前記吹出口側に面する外面と、前記ヒーターユニットによって温められた空気が前記内面から前記外面に向かって通過する複数の貫通孔とを有するノズルプレートとを備え、
前記ノズルプレートの内面、外面、および前記貫通孔の穴壁面は、トルマリン、陶土、ムライト、コージライトのうち少なくともいずれかの粉末を含む遠赤外線塗料によって覆われており、
前記貫通孔の最大径をDとし、前記貫通孔の板厚方向の長さをLとした場合に、D/Lの値が1/5~4/5の範囲である、ヘアードライヤー。
【請求項2】
前記貫通孔の最大径は、6mm以下であり、
前記貫通孔の板厚方向の長さは、8mm以上12mm以下である、請求項1に記載のヘアードライヤー。
【請求項3】
前記複数の貫通孔の平面視における開口形状は、多角形状または円形状である、請求項1または2に記載のヘアードライヤー。
【請求項4】
前記貫通孔は、その全面に亘って均等に分散されている、請求項3に記載のヘアードライヤー。
【請求項5】
前記ノズルプレートの材質は、アルミニウム、ステンレス、炭素鋼のいずれかである、請求項1または2に記載のヘアードライヤー。
【請求項6】
前記遠赤外線塗料は、80℃の動作温度において、波長6~14μmの領域における平均放射率が0.91~0.97である、請求項1または2に記載のヘアードライヤー。
【請求項7】
前記遠赤外線塗料は、40℃の動作温度において、波長6~14μmの領域における平均放射率が0.90~0.97である、請求項1または2に記載のヘアードライヤー。
【請求項8】
ヘアードライヤーの吹出口近傍に配置されるものであり、
前記吸込口に面する内面と、前記吹出口側に面する外面と、前記内面から前記外面に貫通する複数の貫通孔とを備え、
前記内面、前記外面、および前記貫通孔の穴壁面は、トルマリン、陶土、ムライト、コージライトのうち少なくともいずれかの粉末を含む赤外線塗料によって覆われており、
前記貫通孔の最大径をDとし、前記貫通孔の板圧方向の長さをLとした場合に、D/Lの値が1/5~4/5の範囲である、ヘアードライヤーのノズルプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ヘアードライヤーおよびそのノズルプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ヘアードライヤーは、モータが稼働することにより回転するファンにより、外部から空気を吸入し、吹出口から温風または冷風を外部に排出することによって、濡れた髪の毛を乾燥させたり手入れしたりするために用いられるものである。
【0003】
一方で、遠赤外線(Far Infrared、略称FIR)は、スペクトルにおいて15~1000μmの領域にある電磁波であり、赤外線の波長範囲に属する。また、4μm~14μmの領域にある遠赤外線は、人体の分子と共振することによって、毛細血管を拡張し、血液循環をスムーズにすることができ、新陳代謝を促進して体の免疫力を高めることができる。
【0004】
このような遠赤外線に着目したヘアードライヤーとして、たとえば特許文献1(韓国登録特許第10-2086954号公報)などが知られている。特許文献1には、金属製のフロントグリルに遠赤外線を放出するための粉末を塗布して焼結することで、遠赤外線の放射率を向上させたヘアードライヤーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国登録特許第10-2086954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているヘアードライヤーは、従来のヘアードライヤーと比較すると遠赤外線の放射効率を向上させることができるものの、本願発明者はさらに遠赤外線の放射率を向上させたヘアードライヤーを提供したいと考えた。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、遠赤外線の放射率を高めることが可能なヘアードライヤーおよびそのノズルプレートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある局面によるヘアードライヤーは、吸込口と吹出口とを連通する通気路を内部に形成したドライヤー本体と、ドライヤー本体内に設けられるヒーターユニットと、ヒーターユニットで温めた空気を吹出口に向かって送り出す送風ファンと、吹出口近傍に配置されるものであり、吸込口に面する内面と、吹出口側に面する外面と、ヒーターユニットによって温められた空気が内面から外面に向かって通過する複数の貫通孔とを有するノズルプレートとを備え、ノズルプレートの内面、外面、および貫通孔の穴壁面は、トルマリン、陶土、ムライト、コージライトのうち少なくともいずれかの粉末を含む遠赤外線塗料によって覆われており、貫通孔の最大径をDとし、貫通孔の板厚方向の長さをLとした場合に、D/Lの値が1/5~4/5の範囲である。
【0009】
好ましくは、貫通孔の最大径は、6mm以下であり、貫通孔の板厚方向の長さは、8mm以上12mm以下である。
【0010】
好ましくは、複数の貫通孔の平面視における開口形状は、多角形状または円形状である。
【0011】
好ましくは、貫通孔は、その全面に亘って均等に分散されている。
【0012】
好ましくは、ノズルプレートの材質は、アルミニウム、ステンレス、炭素鋼のいずれかである。
【0013】
好ましくは、遠赤外線塗料は、80℃の動作温度において、波長6~14μmの領域における平均放射率が0.91~0.97である。
【0014】
好ましくは、遠赤外線塗料は、40℃の動作温度において、波長6~14μmの領域における平均放射率が0.90~0.97である。
【0015】
本発明のある局面によるヘアードライヤーのノズルプレートは、ヘアードライヤーの吹出口近傍に配置されるものであり、吸込口に面する内面と、吹出口側に面する外面と、内面から外面に貫通する複数の貫通孔とを備え、内面、外面、および貫通孔の穴壁面は、トルマリン、陶土、ムライト、コージライトのうち少なくともいずれかの粉末を含む遠赤外線塗料によって覆われており、貫通孔の最大径をDとし、貫通孔の板圧方向の長さをLとした場合に、D/Lの値が1/5~4/5の範囲である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のヘアードライヤーおよびそのノズルプレートによれば、遠赤外線の放射率を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係るヘアードライヤーを示す模式断面図である。
【
図2】ヘアードライヤーのノズルプレートを取り出して示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は貫通孔を拡大して示す拡大図であり、(C)は
図2(A)のII-II線に沿って切断した断面図である。
【
図3】貫通孔の開口形状の一例を示した図であり、(A)は円形であり、(B)は三角形であり、(C)は四角形であり、(D)は変形した楕円形である。
【
図4】遠赤外線の放射率を示すグラフであり、(A)はノズルプレートの材質がアルミニウムであり、(B)はノズルプレートの材質がセラミックである。
【
図5】電磁波測定器を用いて、電磁波を測定する方法を示す写真である。
【
図6】電磁波の測定に用いたノズルプレートの形状を示す写真であり、(A)はノズルプレートの材質がアルミニウムであり、(B)はノズルプレートの材質がセラミックである。
【
図7】電磁波の測定に用いた他のノズルプレートの形状を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0019】
(ヘアードライヤーの概要について)
図1を参照して、本実施の形態に係るヘアードライヤー1について説明する。本実施の形態に係るヘアードライヤー1は、概略として、ドライヤー本体2と、ヒーターユニット3と、送風ファン4と、ノズルプレート5とを備える。
【0020】
ドライヤー本体2は、たとえば、筒状であり、前端に吹出口21を有し、後端に吸込口22を有する。ドライヤー本体2は、吹出口21と吸込口22とを連通する通気路23を内部に形成する。通気路23には、ヒーターユニット3と送風ファン4が内蔵されている。
【0021】
ヒーターユニット3は、通気路23内の空気を温めるものである。ヒーターユニット3は、たとえば、絶縁耐火性支持体と、その支持体に巻回されている電熱線とを含む。電熱線は、たとえば、コイル状にしたニクロム線によって形成されていてもよい。
【0022】
送風ファン4は、吸込口22で吸い込んだ空気をヒーターユニット3で温めて吹出口21に向かって送り出すものである。送風ファン4は、たとえば、送風ファンモーターと送風ファンとを含む。送風ファンモーターとして、たとえば、ブラシレスモーターが用いられていてもよい。
【0023】
ドライヤー本体2の下部には、ハンドル11が設けられている。ハンドル11は、ドライヤー本体2に対して折りたたみ可能に設けられていてもよい。ハンドル11には、スイッチ12が設けられている。スイッチ12の切り換えにより、温度変更可能であり、たとえば80℃~120℃程度の高温と、30℃~40℃程度の低温とに切り換え可能に設けられていてもよい。なお、ハンドル11の下端部からは、電源コード13が延出していてもよい。
【0024】
ヘアードライヤー1の吹出口21近傍には、ノズルプレート5が配置される。以下、
図2(A)~(C)を参照して、ノズルプレート5について詳細に説明する。
【0025】
(ノズルプレートについて)
本実施の形態のノズルプレート5は、ヒーターユニット3によって温められた空気が通過するものである。
図2(A)および
図2(C)に示すように、本実施の形態のノズルプレート5の外径形状は、たとえば円柱形状である。ノズルプレート5の直径W1は、直径が40mm以上60mm以下であり、45mm以上55mm以下であることが好ましい。また、ノズルプレート5の厚み寸法W2は、8mm以上12mm以下であり、9mm以上11mm以下であることが好ましい。ノズルプレート5の厚み寸法W2は、全面に亘って均一であることが好ましい。
【0026】
ノズルプレート5の材質は、たとえば金属であり、具体的には、アルミニウム、ステンレス、炭素鋼のいずれかである。本実施の形態のノズルプレート5は、中実形状であるが、中空形状であってもよい。
【0027】
特に
図2(C)を参照して、ノズルプレート5は、吸込口22に面する内面51と、吹出口21側に面する外面52と、内面51と外面52とをつなぐ側面53と、ヒーターユニット3によって温められた空気が内面51から外面52に向かって通過する複数の貫通孔54とを有する。
【0028】
貫通孔54は、送風方向(吸込口22から吹出口21に向かう方向)に沿って延在している。換言すると、貫通孔54の穴壁面が送風方向に沿って平行に配置されている。貫通孔54は、ノズルプレート5の全面に亘って均等に分散されていることが好ましい。
【0029】
図2(A)および
図2(B)に示すように、本実施の形態の貫通孔54の平面視における開口形状は、ハニカム構造(正六角形)であるが、様々な形状を採用することができる。たとえば、
図3(A)に示すように、貫通孔54Aは円形であってもよい。また、貫通孔54Aは多角形であってもよく、
図3(B)に示すように三角形であってもよいし、
図3(C)に示すように四角形であってもよい。さらに、
図3(D)に示すように、貫通孔54Dは変形した略楕円形などであってもよい。ただし、遠赤外線の反射率を向上させる観点からは、貫通孔の開口形状は、ハニカム構造であることが好ましい。
【0030】
また、内面51または外面52の表面積全体に対する貫通孔54の開口面積は、20%以上98%以下であり、50%以上90%以下であることが好ましく、60%以上80%以下であることがより好ましい。これにより、温風が通過する面積を十分に確保することができるとともに、遠赤外線の反射率を向上させることができる。
【0031】
図2(B)に示すように、貫通孔54の最大径Dの上限値は、6mmであり、5mmであることが好ましい。また、貫通孔54の最大径Dの下限値は、1mmであり、2mmであることが好ましい。つまり、貫通孔54の最大径Dは、1mm以上6mm以下であり、2mm以上5mm以下であることが好ましい。最大径とは、貫通孔54の外周上の距離が最大となるように取った2点間の距離をいう。具体例を示すと、
図3(A)~(D)の貫通孔54A~54Dにおいて、最大径はL1~L4である。
【0032】
また、貫通孔54の穴側壁の厚さTは、0.1mm以上3mm以下であり、好ましくは、0.5mm以上1.5mm以下である。貫通孔54の最大径よりも小さく、好ましくは貫通孔54の最小径よりも小さい。これにより、温風が通過する面積を確保することができる。
【0033】
図2(C)に示すように、貫通孔54の板厚方向の長さLは、8mm以上12mm以下であり、9mm以上11mm以下であることが好ましい。なお、貫通孔54の板厚方向の長さLは、上述したノズルプレート5の厚み寸法W2と同寸法となる。以上から、D/Lの値が1/5~4/5の範囲であり、2/5~4/5の範囲であることが好ましい。
【0034】
ノズルプレート5の内面51、外面52、および貫通孔54の穴壁面は、遠赤外線塗料6によって覆われている。ノズルプレート5の側面53も遠赤外線塗料6によって覆われていてもよい。このように、ノズルプレート5は、その全表面が遠赤外線塗料6によって覆われていることが好ましい。遠赤外線塗料6は、トルマリン、陶土、ムライト、コージライトのうち少なくともいずれかの粉末を含む。
【0035】
遠赤外線塗料6は、80℃の動作温度において、波長6~14μmの領域における平均放射率が0.91~0.97である。また、遠赤外線塗料6は、40℃の動作温度において、波長6~14μmの領域における平均放射率が0.90~0.97である。このように、従来のヘアードライヤーよりも高い平均放射率とすることができる。遠赤外線塗料6をノズルプレート5の外表面に付着させる方法については、後述する。
【0036】
本実施の形態のノズルプレート5は、その内面51、外面52、および貫通孔54の穴壁面の表面すべてが遠赤外線塗料6で覆われており、温風が通過する貫通孔54のD/Lの値が1/5~4/5の範囲であるため、温風が遠赤外線塗料6に接触する面積を大きくすることができ、遠赤外線の放射率を高めることができる。さらに、本実施の形態のノズルプレート5は、温風が接触する遠赤外線塗料6の面積が大きいため、電磁波の遮断効率を向上させることができる。
【0037】
従来のヘアードライヤーの吹出口には、金網状のグリルが取り付けられていることが多い。このようなグリルは、厚みが数ミリであり、ヘアードライヤー1の通気路23から外方へ向かって通過する温風が接触する面積が小さく、温風がグリルに接触する時間が短かった。
【0038】
それに対し、本実施の形態のノズルプレート5は、貫通孔の板厚方向の長さ(厚み)が8mm以上12mm以下であり、貫通孔の最大径が6mm以下であり、その結果として、貫通孔54のD/Lの値を1/5~4/5の範囲にすることができるため、従来使用されているグリルと比較して、温風が接触する遠赤外線塗料6の面積を大きくすることができ、温風がグリルに接触する時間を長くすることができる。これにより、遠赤外線の放射率を高めることができ、さらに電磁波の遮断効率を向上させることができる。
【0039】
また、ノズルプレート5の材質が金属であるため、強度を向上させることができる。さらに、遠赤外線塗料6は、80℃の動作温度において、波長6~14μmの領域における平均放射率が0.91~0.97であるため、ヘアードライヤー1を高温で使用する場合でも、遠赤外線の放射率を向上させることができる。さらに、40℃の動作温度において、波長6~14μmの領域における平均放射率が0.90~0.97であるため、ヘアードライヤー1を低温で使用する場合でも、遠赤外線の放射率を向上させることができる。
【0040】
(変形例について)
なお、本実施の形態のノズルプレート5は、ヘアードライヤー1に用いられるものであったが、個別に提供されるものであってもよい。
【0041】
また、本実施の形態のノズルプレート5の外径形状は円柱形状であったが、ドライヤーの吹出口21の形状に合わせて適宜変更され、たとえば楕円柱、四角柱、または他の多角柱などであってもよい。たとえば吹出口21の形状が正面視矩形形状である場合は、四角柱となる。また、ノズルプレート5の厚み寸法W2は、均一でなくてもよく、たとえば中央部が凹んでいてもよい。
【0042】
また、上記実施の形態では、ノズルプレート5の材質が金属であるとして説明したが、SiC、SiO2、B4C、AlN、Al2O3、MgOなどの公知のセラミック材料により形成してもよい。
【0043】
(遠赤外線塗料の付着方法について)
次に、遠赤外線塗料6をノズルプレート5の外表面に付着させる方法について説明する。
【0044】
第1の方法は、以下の通りである。すなわち、トルマリン、陶土、ムライト、コージライトのいずれか1つ、または、それらの組み合わせを含む天然遠赤外線鉱物を用意し、研磨して濾過した後に加工処理し、遠赤外線粉末を得る。その遠赤外線粉末と接着剤とを8対2の比率で混合し、遠赤外線塗料とする。なお、接着剤は、たとえば、高温に耐えられる合成樹脂、シリコンガム、油性塗料などである。
【0045】
さらに、遠赤外線塗料を霧吹き状にして、ノズルプレート本体に吹きかけて乾燥させる。または、遠赤外線塗料を容器に入れて、ノズルプレート本体を浸漬させて乾燥させる。これにより、ノズルプレート本体の内面51、外面52、および貫通孔54の穴壁面の表面すべてを遠赤外線塗料6で覆うことができる。
【0046】
第2の方法は、以下の通りである。すなわち、遠赤外線材料を含む無機金属塩溶液を第1材料として合成する。無機金属塩は、たとえば、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、アルコキシ化合物またはオルトケイ酸テトラエチルなどである。第1材料と、水と、酸性溶液とを混合させて、pH値を3未満に調整する。酸性溶液は、たとえば塩酸、酢酸または硝酸などである。その後、ゾルゲル法で形成したゲルをノズルプレート本体の内面51、外面52、および貫通孔54の穴壁面の表面すべてに塗布し、500℃~900℃の間の温度で焼結させる。これにより、ノズルプレート本体の内面51、外面52、および貫通孔54の穴壁面の表面すべてを遠赤外線塗料6で覆うことができる。
【0047】
(遠赤外線の放射率に関する実験)
ヘアードライヤーの遠赤外線の放射率に関する比較実験について説明する。
図4(A)および
図4(B)は、ノズルプレートをヘアードライヤーの吹出口に取り付けて、ヘアードライヤーを40℃または80℃で稼働させた場合の遠赤外線の放射率を測定したグラフ(曲線図)である。
【0048】
図4(B)に示すノズルプレートは、材質がアルミニウムであり、その外表面がすべて遠赤外線塗料に覆われているものを用いた。ノズルプレートは、円柱形状であり、直径が50mm、厚みが10mm、貫通孔の形状はハニカム形状であり、貫通孔の最大径は4mmであり、貫通孔の板厚方向の長さは10mmのものを用いた。
【0049】
図4(A)に示すように、設定温度が40℃である場合は、細線で示されており、波長が6μmから14μmの間で、放射率は0.948から0.998の間で変位していることがわかり、平均放射率は0.966137であることがわかった。さらに、設定温度が80℃である場合は、太線で示されており、波長が6μmから14μmの間で、放射率は0.956から0.985の間で変位していることがわかり、平均放射率は0.969378であることがわかった。
【0050】
図4(B)に示すノズルプレートとして、材質がセラミックであり、その外表面が遠赤外線塗料に覆われているものを用いた。ノズルプレートは、セラミックの外表面がすべて遠赤外線塗料により覆われてるものを用いた。
図4(A)のノズルプレートとの違いは、材質だけであり、その他の形状、および赤外線塗料は、
図4(A)のノズルプレートと同一である。
【0051】
図4(B)に示すように、設定温度が40℃である場合は、細線で示されており、波長が6μmから14μmの間で、放射率は0.860から0.913の間で変位していることがわかり、平均放射率は0.890947であることがわかった。さらに、設定温度が80℃である場合は、太線で示されており、波長が6μmから14μmの間で、放射率は0.975から0.925の間で変位していることがわかり、平均放射率は0.905726であることがわかった。
【0052】
図4(A)と
図4(B)とを比較すると、温風が40℃の場合、80℃の場合のいずれにおいても、ノズルプレートの材質をアルミニウムにした
図4(A)の方が遠赤外線の放射率が高い。アルミニウムは、遠赤外線を完全に反射するが、セラミックは、遠赤外線の一部を吸収するからである。これにより、ノズルプレートの材質として、セラミックではなくアルミニウムなどの金属を用いた方が、遠赤外線の放射率を向上できることがわかった。
【0053】
(電磁波の遮断効果に関する実験)
ヘアードライヤーの電磁波の遮断効果に関する比較実験について説明する。
図5は、電磁波測定器を用いて、電磁波を測定する方法を示す写真である。
図6は、電磁波の測定に用いたノズルプレートを示す写真であり、
図6(A)のノズルプレートはアルミニウムであり、
図6(B)のノズルプレートはセラミックであることを示す写真である。
【0054】
図5には、ノズルプレートを吹出口に取り付けたヘアードライヤーの吹出口近傍に電磁波測定器を置いて、電磁波を測定する方法が示されている。外部からの影響を排除するために、電磁波測定器の三包囲を覆う板状の覆い部材が設けられている。覆い部材は、ヘアードライヤーの吹出口に対応する位置に貫通孔が設けられている。
【0055】
図6(A)に示すノズルプレートは、材質がアルミニウムであり、その外表面が遠赤外線塗料に覆われているものを用いた。ノズルプレートは、円柱形状であり、直径が50mm、厚みが10mm、貫通孔の形状はハニカム形状であり、貫通孔の最大径は4mmであり、貫通孔の板厚方向の長さは10mmのものを用いた。
図6(A)に示すノズルプレートでは、測定された電磁波は1.21μTであった。
【0056】
図6(B)に示すノズルプレートは、材質がセラミックであり、その外表面が遠赤外線塗料によって覆われているものを用いた。ノズルプレートは、円柱形状であり、直径が50mm、厚みが10mm、貫通孔の形状はハニカム形状であり、貫通孔の最大径は4mmであり、貫通孔の板厚方向の長さは10mmのものを用いた。
図6(B)に示すノズルプレートでは、測定された電磁波は1.38μTであった。なお、ヘアードライヤーに何も取り付けていない場合は、熱気通路の出口において測定された電磁波は、1.93μTであった。
【0057】
図6(A)と
図6(B)とを比較すると、ノズルプレートの材質をアルミニウムにした
図6(A)の方が、電磁波が低いことがわかった。これにより、ノズルプレートの材質として、セラミックではなくアルミニウムなどの金属を用いた方が、電磁波の発生を抑制させることができることがわかった。
【0058】
(貫通孔の形状を変更した場合の遠赤外線の放射率および電磁波の遮断効果の実験)
ノズルプレートの貫通孔の形状を変更した場合の遠赤外線の放射率および電磁波の遮断効果の比較実験について説明する。
図7は、電磁波の測定に用いた他のノズルプレートの形状を示す写真である。
【0059】
図示は省略するが、実施例として、ノズルプレートの材質がアルミニウムであり、その外表面が遠赤外線塗料に覆われているものを用いた。ノズルプレートは、円柱形状であり、直径が50mm、厚みが10mm、貫通孔の形状はハニカム形状であり、貫通孔の最大径は4mmであり、貫通孔の板厚方向の長さは10mmのものを用いた。
【0060】
比較例として、
図7に示すノズルプレートを用いた。
図7に示すノズルプレートは、実施例よりも貫通孔の大きさを大きくしたものである。
図7の貫通孔は、ガラリのように直線状に延びており、貫通孔の最大径が48mmである。実施例との違いは、貫通孔の形状だけあり、その他の形状、および赤外線塗料は、実施例と同一である。
【0061】
実施例および
図7に示す比較例のノズルプレートを用いて、上述した、遠赤外線の放射率を比較する実験、および、電磁波の遮断効果を比較する実験をそれぞれ行った。実施例ノズルプレートの方が遠赤外線の放射率を向上させることができ、電磁波の発生を抑制させることができることがわかった。このように、赤外線放射率および電磁波の向上には、貫通孔の形状が大きく関与することがわかった。また、実施例のノズルプレートの方が、貫通孔の最大径の大きい比較例のノズルプレートと比較して、強度を向上できることがわかった。
【0062】
今回開示した上記各実施の形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本発明の技術的範囲は、上記した各実施の形態のみによって解釈されるのではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲の記載と均等な意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1 ヘアードライヤー、2 ドライヤー本体、3 ヒーターユニット、4 送風ファン
5 ノズルプレート、6 赤外線塗料、21 吹出口、22 吸込口、51 内面、52 外面、54,54A,54B,54C,54D 貫通孔、D 最大径、L 板厚方向の長さ。
【手続補正書】
【提出日】2023-09-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸込口と吹出口とを連通する通気路を内部に形成したドライヤー本体と、
前記ドライヤー本体内に設けられるヒーターユニットと、
前記ヒーターユニットで温めた空気を前記吹出口に向かって送り出す送風ファンと、
前記吹出口近傍に配置されるものであり、前記吸込口に面する内面と、前記吹出口側に面する外面と、前記ヒーターユニットによって温められた空気が前記内面から前記外面に向かって通過する複数の貫通孔とを有するノズルプレートとを備え、
前記ノズルプレートの内面、外面、および前記貫通孔の穴壁面は、トルマリン、陶土、ムライト、コージライトのうち少なくともいずれかの粉末を含む遠赤外線塗料によって覆われており、
前記貫通孔の最大径をDとし、前記貫通孔の板厚方向の長さをLとした場合に、D/Lの値が1/5~4/5の範囲である、ヘアードライヤー。
【請求項2】
前記貫通孔の最大径は、6mm以下であり、
前記貫通孔の板厚方向の長さは、8mm以上12mm以下である、請求項1に記載のヘアードライヤー。
【請求項3】
前記複数の貫通孔の平面視における開口形状は、多角形状または円形状である、請求項1または2に記載のヘアードライヤー。
【請求項4】
前記貫通孔は、その全面に亘って均等に分散されている、請求項3に記載のヘアードライヤー。
【請求項5】
前記ノズルプレートの材質は、アルミニウム、ステンレス、炭素鋼のいずれかである、請求項1または2に記載のヘアードライヤー。
【請求項6】
前記遠赤外線塗料は、80℃の動作温度において、波長6~14μmの領域における平均放射率が0.91~0.97である、請求項1または2に記載のヘアードライヤー。
【請求項7】
前記遠赤外線塗料は、40℃の動作温度において、波長6~14μmの領域における平均放射率が0.90~0.97である、請求項1または2に記載のヘアードライヤー。
【請求項8】
吸込口と吹出口とを連通する通気路を内部に形成したヘアードライヤーにおいて、その吹出口近傍に配置されるものであり、
前記吸込口に面する内面と、前記吹出口側に面する外面と、前記内面から前記外面に貫通する複数の貫通孔とを備え、
前記内面、前記外面、および前記貫通孔の穴壁面は、トルマリン、陶土、ムライト、コージライトのうち少なくともいずれかの粉末を含む赤外線塗料によって覆われており、
前記貫通孔の最大径をDとし、前記貫通孔の板圧方向の長さをLとした場合に、D/Lの値が1/5~4/5の範囲である、ヘアードライヤーのノズルプレート。