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特開2023-160066産業用ロボットの製造方法、産業用ロボット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160066
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】産業用ロボットの製造方法、産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/00 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
B25J17/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070129
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】若林 浩平
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707CX01
3C707CX03
3C707HS27
3C707HT25
(57)【要約】
【課題】構造体を挟んだ両側にモータと減速機を配置する構成において、モータと減速機の同軸度を高精度で得ることができる産業用ロボットの製造方法、産業用ロボットを提供する。
【解決手段】実施形態による産業用ロボットの製造方法は、軸部17bを有し、2軸用モータ10の配置構造を疑似的に再現する形状に形成された一面側治具17を、軸部17bが他面側に露出した状態で構造体の一面側に取り付ける工程と、2軸用減速機11を軸部17bに対して位置決めしつつ他面側に配置する工程と、一面側治具17を取り外した位置に2軸用モータ10を配置する工程とを含んでおり、構造体の両側に配置される減速機とモータとを、一面側に設けられている単一の基準位置を基準にして配置する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータおよび減速機を備える産業用ロボットの製造方法であって、
前記モータは、前記産業用ロボットの構造体の一面側に配置されるものであり、
前記減速機は、前記構造体を挟んで前記モータとは反対側となる他面側に、前記モータの出力側の回転部材に連結されて配置されるものであり、
前記回転部材に対応する軸部を有し、前記モータの配置構造を疑似的に再現する形状に形成された一面側治具を、前記構造体の一面側の所定の位置に位置決めした状態で取り付ける工程と、
前記減速機を、前記軸部に対して位置決めしつつ他面側に配置する工程と、
前記一面側治具を取り外す工程と、
前記一面側治具を取り外した一面側に前記モータを配置する工程と、
を含む産業用ロボットの製造方法。
【請求項2】
前記構造体の一面に、前記モータまたは前記モータを取り付けるための一面側取付部材の少なくとも一部と嵌合される一面側嵌合構造を形成する工程をさらに含み、
前記一面側治具を取り付ける工程では、前記一面側治具を前記一面側嵌合構造に嵌合させることにより一面側の所定の位置に位置決めされた状態に取り付ける請求項1記載の産業用ロボットの製造方法。
【請求項3】
モータおよび減速機を備える産業用ロボットの製造方法であって、
前記モータは、前記産業用ロボットの構造体の一面側に配置されるものであり、
前記減速機は、前記構造体を挟んで前記モータとは反対側となる他面側に、前記モータの出力側の回転部材に連結されて配置されるものであり、
前記モータの出力側の回転部材を挿入可能な挿入孔を有し、前記減速機の配置構造を疑似的に再現する形状に形成された他面側治具を前記構造体の他面側の所定の位置に位置決めした状態で取り付ける工程と、
前記モータを、前記回転部材を前記中空軸部に挿入して位置決めしつつ一面側に配置する配置する工程と、
前記他面側治具を取り外す工程と、
前記他面側治具を取り外した他面側に前記減速機を配置する工程と、
を含む産業用ロボットの製造方法。
【請求項4】
前記構造体の他面には、前記減速機または前記減速機を取り付けるための他面側取付部材の少なくとも一部と嵌合される他面側嵌合構造を形成する工程をさらに含み、
前記他面側治具を取り付ける工程では、前記他面側治具を前記他面側嵌合構造に嵌合させることにより他面側の所定に位置に位置決めされた状態に取り付ける請求項3記載の産業用ロボットの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項記載の製造方法で製造した産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットの製造方法、および、その製造方法で製造された産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットは、関節部にモータと減速機とが設けられており、モータを駆動することによって姿勢が制御される。このとき、モータおよび減速機は、例えば特許文献1に記載されているようにフレーム等の構造体を挟んだ両側に配置されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6050999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
さて、減速機の振動や異音あるいは摩耗を低減するためには、モータの出力側の軸芯と減速機の軸芯とのずれを可能な限り小さくすることが求められる。換言すると、産業用ロボットを製造する際には、モータと減速機の軸芯の一致度が高い状態で配置することが求められる。以下、軸芯の一致度を同軸度とも称する。
【0005】
しかしながら、従来では、構造体を挟んだ両側にモータと減速機を配置する場合、いわゆるマシニングセンタのような加工機により、構造体の両側に、モータを位置決めするための位置決め構造と減速機を位置決めするための位置決め構造とをそれぞれ形成していた。具体的には、構造体の一方の面に位置決め構造を形成した後、例えば構造体をチャッキングし直して向きを変えたり、回転テーブルを回転させて向きを変えたりした後に、他方の面に位置決め構造を形成していた。
【0006】
その場合、構造体の向きを変える際に位置がずれたりすると、構造体の両側に形成される位置決め構造自体にずれが生じ、その結果、モータと減速機との同軸度が低下するおそれがあった。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、構造体を挟んだ両側にモータと減速機を配置する構成において、モータと減速機の同軸度を高精度で得ることができる産業用ロボットの製造方法、産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載した発明では、産業用ロボットは、構造体の一面側の所定の位置に位置決めされた状態で配置されるモータと、構造体を挟んでモータとは反対側となる他面側に、モータに対して位置決めされた状態で、モータの出力側の回転部材に連結されて配置される減速機とを備えている。そして、産業用ロボットの製造方法は、回転部材に対応する軸部を有し、モータの配置構造を疑似的に再現する形状に形成された一面側治具を、軸部が他面側に露出した状態で構造体の一面側に取り付ける工程を含んでいる。
【0009】
これにより、一面側治具を構造体に取り付けた状態では、軸部が他面側に露出することにより、一面側に配置されるモータに対して減速機を位置決めした状態で配置するための基準位置が、構造体を挟んで反対側となる他面側に形成される。換言すると、減速機を、構造体の一面側の所定の位置を基準にした状態で配置することが可能となる。
【0010】
続いて、減速機を軸部に対して位置決めしつつ他面側に配置することにより、減速機を、疑似的にモータに対して位置決めした状態で配置することができる。そして、一面側治具を取り外した位置にモータを配置することにより、構造体の両側に配置される減速機とモータとを、一面側に設けられている単一の基準位置に基づいて、互いに位置決めした状態で配置することができる。したがって、構造体を挟んだ両側にモータと減速機を配置する構成において、モータと減速機の同軸度を高精度で得ることができる。
【0011】
請求項2に記載した発明では、構造体の一面に、モータまたはモータを取り付けるための一面側取付部材の少なくとも一部と嵌合される一面側嵌合構造を形成する工程をさらに含み、一面側治具を取り付ける工程では、一面側治具を一面側嵌合構造に嵌合させることにより一面側の所定の位置に位置決めされた状態に取り付ける。これにより、一面側治具を容易に位置決めした状態で取り付けることができるとともに、一面側治具を取り付けるための構造とモータを位置決めするための構造とを同じ一面側嵌合構造によって実現することができることから、加工や製造に要する時間やコストを低減することができる。
【0012】
請求項3に記載した発明では、産業用ロボットは、産業用ロボットの構造体の一面側に配置されるモータと、構造体を挟んでモータとは反対側となる他面側に、モータの出力側の回転部材に連結されて配置される減速機とを備えている。そして、産業用ロボットの製造方法は、モータの出力側の回転部材を挿入可能な挿入孔を有し、減速機の配置構造を疑似的に再現する形状に形成された他面側治具を構造体の他面側の所定の位置に位置決めした状態で取り付ける工程を含んでいる。
【0013】
これにより、他面側治具を構造体に取り付けた状態では、挿入孔が一面側に露出することにより、モータを位置決めした状態で配置するための基準位置が、構造体を挟んで反対側となる一面側に形成される。換言すると、モータを、構造体の他面側の所定の位置を基準とした状態で配置することが可能となる。
【0014】
そして、モータを挿入孔に対して位置決めしつつ配置することにより、減速機に対して疑似的に位置決めした状態でモータを配置することができる。そして、他面側治具を取り外した位置に減速機を配置することにより、構造体の両側に配置される減速機とモータとを、他面側に設けられている単一の基準位置に基づいて、互いに位置決めした状態で配置することができる。したがって、構造体を挟んだ両側にモータと減速機を配置する構成において、モータと減速機の同軸度を高精度で得ることができる。
【0015】
請求項4に記載した発明では、構造体の他面に、減速機の少なくとも一部と嵌合される他面側嵌合構造を形成する工程をさらに含み、他面側治具を取り付ける工程では、他面側治具を他面側嵌合構造に嵌合させることにより他面側の所定の位置に位置決めされた状態に取り付ける。これにより、他面側治具を容易に位置決めした状態で取り付けることができるとともに、他面側治具を位置決めするための構造と減速機を位置決めするための構造とを同じ他面側嵌合構造によって実現することができることから、加工や製造に要する時間やコストを低減することができる。
【0016】
請求項5に記載した発明では、上記した製造方法で産業用ロボットを製造している。これにより、モータと減速機の同軸度を高精度で得ることができ、高い精度で姿勢を制御することができる産業用ロボットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態における産業用ロボットの構成例を模式的に示す図
図2】第2軸(J2)の構成例を模式的に示す図
図3】モータアッセンブリの構成例を模式的に示す図
図4】構造体の構成例を模式的に示す図
図5】モータと減速機の配置態様例を模式的に示す図
図6】一面側治具の構成例を模式的に示す図
図7】比較例であって、従来の構成例を模式的に示す図
図8】構造体の加工例を模式的に示す図
図9】製造方法の流れを示す図
図10】各工程における配置態様例を模式的に示す図
図11】第2実施形態における構造体の構成例を模式的に示す図
図12】他面側治具の構成例を模式的に示す図
図13】製造方法の流れを示す図
図14】各工程における配置態様例を模式的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、複数の実施形態について図面を参照しながら説明する。各実施形態では、実質的に共通する部位には同一符号を付すものとし、その詳細な説明は省略する。また、各実施形態は、以下に述べているように、構造体を挟んで両側に配置されるモータと減速機とを、一方の側に設けられている単一の基準位置を基準にして配置するという共通する技術的思想に基づいてなされたものである。
(第1実施形態)
【0019】
図1に示すように、本実施形態で想定している産業用ロボットとしてのロボット1は、垂直多関節型のいわゆる6軸ロボットである。ただし、産業用ロボットとしては、垂直多関節型のいわゆる7軸ロボットや水平多関節型のいわゆる4軸ロボットを対象とすることもできる。
【0020】
ロボット1は、設置面に設置されるベース1a、ベース1aに対して第1軸(J1)を中心として相対回転可能に設けられているショルダ1b、ショルダ1bに対して第2軸(J2)を中心として相対回転可能に設けられている下アーム1c、下アーム1cに対して第3軸(J3)を中心として相対回転可能に設けられている第1上アーム1d、第1上アーム1dに対して第4軸(J4)を中心として同軸で相対回転可能に設けられている第2上アーム1e、第2上アーム1eの先端に設けられていて、第2上アーム1eに対して第5軸(J5)を中心として相対回転可能に設けられている手首1f、手首1fの先端に取り付けられているフランジ1gを有している。
【0021】
このとき、第1軸(J1)はロボット1の設置面に対して垂直に設けられており、第2軸(J2)は第1軸(J1)に対して垂直に設けられており、第3軸(J3)は第2軸(J2)に対して垂直に設けられており、第4軸(J4)は第3軸(J3)に対して垂直に設けられており、第5軸(J5)は第4軸(J4)に対して垂直に設けられており、第6軸(J6)は第5軸(J5)に対して垂直に設けられている。そして、ロボット1は、フランジ1gに図示しないハンドやツールが取り付けられた状態で、図示しない制御装置によって制御されることで教示された動作を実行する。また、ロボット1への教示は、制御装置と接続されて作業者が操作する図示しない操作装置などによって行われる。
【0022】
このとき、ベース1a、ショルダ1b、下アーム1c、第1上アーム1d、第2上アーム1e、手首1fおよびフランジ1gは、動作の精度や位置決めの精度を確保するために、高い剛性を有する例えば金属材料などによりフレームが形成されている。以下、ベース1a、ショルダ1b、下アーム1c、第1上アーム1d、第2上アーム1e、手首1fおよびフランジ1gをアーム部とも称し、アーム部において剛性を確保しているフレームを構造体とも称し、ロボット1の各軸を関節部とも称する。
【0023】
ロボット1の各関節部には、モータと減速機とが設けられている。例えば図2に示すように、第2軸(J2)には、2軸用モータ10と2軸用減速機11が設けられている。なお、図2は、図1に示すように下アーム1cが概ね第1軸(J1)に沿った位置にあるときのII-II線における断面を模式的に示しているが、図面を見やすくするために2軸用モータ10と2軸用減速機11にはハッチングを付していない。
【0024】
下アーム1cは、ベース1a側となる図示下端側において、その内部が中空に形成されているとともに、ショルダ1bによって両側から挟まれた構造となっている。そして、下アーム1cの内部に2軸用モータ10が配置されており、2軸用モータ10とは下アーム1cを挟んで反対側となる下アーム1cの外部に2軸用減速機11が配置されている。
【0025】
つまり、2軸用モータ10は、構造体としての下アーム1cの壁部の一面側に配置されており、2軸用減速機11は、壁部つまりは構造体を挟んで2軸用モータ10とは反対側となる他面側に配置されている。なお、図2では一例として第2軸(J2)の構造を例示しているが、下アーム1cの他方の端部に位置する第3軸(J3)や、第1軸(J1)、第4軸(J4)あるいは第5軸(J5)なども、モータの大きさや性能、減速機の減速比などが異なることはあるものの、構造体を挟んだ両側にモータと減速機とが配置された構造となっている。
【0026】
この2軸用モータ10は、図3に示すように、モータ本体部10a、モータ本体部10aに対して回転可能に設けられているモータシャフト10bを有している。そして、2軸用モータ10は、モータ本体部10aがプレート12に形成されている固定用凹部12aに一部挿入された状態で固定され、モータシャフト10bの出力側の端部にインプットギア13が連結および固定された状態で、図2に示すようにプレート12を下アーム1cに固定することによって下アーム1cの一面側に配置されている。
【0027】
プレート12は、モータを取り付けるための一面側取付部材に相当するものであり、図3に示すように概ね円盤状に形成されている。本実施形態の場合、プレート12は旋盤加工によって形成されており、その外形寸法(D1)が高精度で製造されている。また、プレート12には、外形寸法(D2)の2軸用モータ10の一部を嵌合した状態で固定可能な内径寸法(D3)の固定用凹部12a、インプットギア13が通る内径寸法を有する貫通孔12b、および、下アーム1cに固定する際にボルトを通すための複数のボルト孔12cが形成されている。また、図示は省略するが、プレート12には、モータを締結するためのねじ穴も形成されている。
【0028】
固定用凹部12aは、旋盤加工によって高い寸法精度でプレート12の所定の位置に形成されている。そのため、プレート12と2軸用モータ10との相対的な位置関係は精度よく規定されることになる。なお、図3に示すプレート12の構成は一例である。また、図3では説明の簡略化のために、プレート12とインプットギア13にのみハッチングを付している。
【0029】
インプットギア13は、モータの出力側の回転部材に相当するものであり、モータシャフト10bを接続するための接続孔13aを有しており、後述する2軸用減速機11の連結構造部11aに挿入された際、図示右方側となる先端が、2軸用減速機11の図示しない歯車とかみ合う構成となっている。また、インプットギア13は、図示は省略するが軸方向に中空に形成されており、モータシャフト10bを接続孔13aに接続した状態で、モータシャフト10bとは逆側の端部から長ネジによってモータシャフト10bにネジ止めされて固定されている。
【0030】
以下、本実施形態では2軸用モータ10にプレート12およびインプットギア13を組み付けたものを、モータアッセンブリ14と称する。換言すると、モータアッセンブリ14は、構造体の一面側にモータと減速機とを連結した状態で配置するために必要となる構造の総称でもある。このモータアッセンブリ14は、図2に示すように、図示右方側の一部が下アーム1cに嵌合した状態で取り付けられる。
【0031】
そのため、下アーム1cの一面側には、図4に示すように、一面側の表面から窪んでいて、プレート12を収容可能且つ嵌合可能な一面側凹部15が形成されている。この一面側凹部15は、プレート12の少なくとも一部と嵌合される一面側嵌合構造に相当する。そのため、一面側凹部15の内径寸法(D5)は、プレート12をはめあい嵌合するために、プレート12の外形寸法(D1)と同じ大きさに形成されている。また、一面側凹部15の中央には、一面側凹部15よりも直径が小さい段差凹部15aと、他面側まで連通している連通孔部15bが形成されている。これら一面側凹部15、段差凹部15aおよび連通孔部15bは、いずれも円形の孔部として形成されている。また、下アーム1cの逆側の壁部には、モータアッセンブリ14を挿入可能な比較的大きな円形の開口15dが形成されている。
【0032】
そして、モータアッセンブリ14は、プレート12の外周面が一面側凹部15の壁面15cに概ね当接した状態で下アーム1cに対して固定される。このとき、プレート12は、上記したようにその外形寸法が精度よく製造されており、そのプレート12に対する2軸用モータ10の位置も精度よく規定されている。そのため、本実施形態では、一面側凹部15の壁面15cは、モータアッセンブリ14つまりは2軸用モータ10を一面側の所定の位置に位置決めした状態で配置するために、一面側に単一で設けられている基準位置となっている。
【0033】
さて、下アーム1cの他面側には、他面側の表面から窪んでいて、2軸用減速機11の一部を収容可能な他面側凹部16が形成されている。この他面側凹部16は、その中央付近が一面側凹部15まで貫通している。本実施形態の場合、他面側凹部16の内径寸法(D6)は、2軸用減速機11の外形寸法(D7)よりも大きく形成されている。そのため、2軸用減速機11は、その一部が他面側凹部16に収容された状態において、他面側凹部16の壁面16aには接触しない状態となっている。換言すると、2軸用減速機11は、他面側凹部16内において若干の位置調整が可能な状態で配置されている。
【0034】
この2軸用減速機11は、周知の構成を採用することができるため詳細な説明は省略するが、例えば、インプットギア13が挿入される筒状の連結構造部11aを有し、図示右端側にインプットギア13とかみ合う複数の歯車が配置された偏心揺動型のものや、遊星歯車型のものを採用することができる。ただし、2軸用減速機11の構成はこれに限定されず、他の構成のものを採用することができる。
【0035】
そして、2軸用減速機11は、図5に示すように、下アーム1cの一面側に取り付けられているモータアッセンブリ14に対して、インプットギア13を連結構造部11aに挿入し、インプットギア13と同軸となる状態、且つ、プレート12から所定の離間距離(L8)だけ離間した位置となる状態に配置される。この2軸用モータ10が駆動されると、シャフトおよびインプットギア13が回転し、2軸用減速機11の減速比に応じた速度でモータ本体部10aがシャフトに対して相対的に回転することにより、下アーム1cがショルダ1bに対して相対的に回転する。なお、例えば第1軸(J1)のようにモータがベース1a内に配置されている場合には、モータの出力側に接続されているショルダ1bがベース1aに対して相対的に回転する。
【0036】
ところで、減速機の振動や異音あるいは摩耗を低減するためには、モータの出力側の軸芯と減速機の軸芯とのずれを可能な限り小さくすることが求められる。換言すると、産業用ロボットを製造する際には、モータと減速機の軸芯の一致度が高い状態で配置することが求められる。以下、軸芯の一致度を同軸度とも称する。
【0037】
そのため、本実施形態では、ロボット1を製造する際、より厳密に言えば、モータと減速機とを構造体の両側に配置する組み立て作業を行う際、図6に一例として示す一面側治具17を用いている。なお、一面側治具17の作用効果の詳細については後述する。この一面側治具17は、第2軸(J2)に沿った軸方向から視た正面視、軸方向に対して垂直な方向から視た側面視および平面視として示すように、概ね円盤状に形成されている治具本体部17aと、治具本体部17aの中心に設けられていて軸方向の他面側に延びている概ね柱状の軸部17bとを有している。
【0038】
このとき、一面側治具17は、治具本体部17aの外形寸法(D9)がプレート12の外形寸法(D1)と等しく形成されている。この治具本体部17aには、構造体にボルトなどで固定するための複数の固定用貫通孔17c、および、後述するように2軸用減速機11を固定する際にボルトや工具を通すための複数の作業用長孔17dが周方向に形成されている。
【0039】
また、一面側治具17は、軸部17bの長さ(L10)が上記した離間距離(L8)よりも長く、軸部17bの外形寸法(D11)が2軸用減速機11の連結構造部11aに挿入可能な寸法で形成されている。つまり、一面側治具17は、対比例として示すように、治具本体部17aがモータアッセンブリ14のプレート12に対応し、軸部17bがインプットギア13の軸芯の位置を示す形状に形成されている。
【0040】
換言すると、一面側治具17は、モータアッセンブリ14のプレート12よりも他面側の部位、つまりは、モータが配置された際の配置構造の他面側の少なくとも一部を疑似的に再現する形状に形成されている。そして、一面側治具17は、後述するように構造体に取り付けられた際には、軸部17bが他面側に露出され、減速機の連結構造部11aに挿入されることになる。
【0041】
次に、上記した構成の作用について説明する。
前述のように、減速機の振動や異音あるいは摩耗を低減するためには、モータの出力側の軸芯と減速機の軸芯とのずれを可能な限り小さくすることが求められ、そのためには、モータと減速機との同軸度を高い精度で確保する必要がある。このとき、従来では、構造体を挟んだ両側にモータと減速機を配置する場合、構造体の両側に、モータを位置決めするための位置決め構造と減速機を位置決めするための位置決め構造とをそれぞれ形成していた。
【0042】
具体的には、従来では、図7に従来の形状例として示すように、構造体としての例えば下アーム1cの一面側に、プレート12を嵌合させるための一面側嵌合凹部101を形成し、他面側に2軸用減速機11の一部を収容可能であった2軸用減速機11を嵌合させるための他面側嵌合凹部102を形成していた。なお、図7では、説明の簡略化のために、一面側にはプレート12だけを示している。
【0043】
そして、従来の組み付け例として示すように、構造体の一面側においては、プレート12つまりはモータアッセンブリ14を一面側嵌合凹部101の壁面101aに対して位置決めした状態で配置し、構造体の他面側においては、2軸用減速機11を他面側嵌合凹部102の壁面102aに対して位置決めした状態で配置していた。換言すると、従来では、一面側嵌合凹部101の壁面101aと他面側嵌合凹部102の壁面102aという異なる基準位置を基準にして、モータと減速機とをそれぞれ位置決めして配置していた。
【0044】
その場合、それぞれの基準位置にずれが生じると、モータと減速機との同軸度が低下するおそれがあった。これは、図8に示すように、一面側凹部15をマシニングセンタのエンドミル18により加工する場合と、他面側凹部16をエンドミル18で加工する場合とでは、構造体の向きを変える必要があるためである。つまり、構造体の向きを変える際、例えば構造体をチャッキングし直したり回転テーブルを回転させたりすると、構造体の位置にずれが生じる可能性がある。そして、ずれが生じた場合には、形成される一面側凹部15と他面側凹部16との相対的な位置関係にもずれが生じることになる。
【0045】
その結果、従来例のように一面側凹部15の側面と他面側凹部16の側面とをそれぞれの基準位置にして配置しようとすると、モータの軸芯と減速機の軸芯とにずれが生じ、モータと減速機との同軸度が低下するおそれがあった。また、例えば本実施形態で取り上げている下アーム1cの場合、長尺なアームの両端に第2軸(J2)と第3軸(J3)とが位置しており、ロボット1の姿勢を正確に制御するためには、第2軸(J2)と第3軸(J3)とを高精度で平行に配置する必要などもある。
【0046】
そこで、本実施形態では、上記した一面側治具17を用いることにより、モータと減速機との同軸度を高精度で得ることができるようにしている。具体的には、本実施形態の産業用ロボットの製造方法は、図9に示す各工程を含んでいる。まず、加工工程(S1)において、一面側嵌合構造に相当する一面側凹部15と、他面側凹部16とが構造体に形成される。
【0047】
この加工工程では、図8に示したように、例えば一面側凹部15を形成した後、構造体の向きを変えて、他面側凹部16が形成される。但し、他面側凹部16を形成した後に一面側凹部15を形成する順序であっても構わない。また、加工工程では段差凹部15aと連通孔部15bも形成されている。
【0048】
続いて、治具取り付け工程(S2)において、構造体に一面側治具17が取り付けられる。このとき、一面側治具17は、図10に示すように、一面側凹部15に嵌合した状態で取り付けられる。そのため、一面側治具17は、一面側凹部15の壁面15cを基準位置とした状態、つまりは、一面側凹部15に対して位置決めされた状態であって、軸部17bが他面側に露出した状態で取り付けられる。これにより、他面側には、一面側凹部15の壁面15cを基準位置とした状態で配置されている一面側治具17の軸部17bが配置される。
【0049】
さて、一面側治具17は、上記したようにその寸法精度が高精度に加工されている。そのため、一面側治具17を取り付けた場合、他面側に露出している軸部17bは、モータアッセンブリ14を取り付ける際の基準位置となる一面側凹部15の壁面15cを、間接的に他面側における基準位置として利用可能にしている。つまり、治具取り付け工程は、一面側の所定の位置に配置されるモータに対して減速機を位置決めした状態に配置するための基準位置を、構造体を挟んで反対側となる他面側に形成する工程にも相当する。
【0050】
一面側治具17を取り付けた後、図9に示すように、減速機配置工程(S3)において、構造体の他面側に2軸用減速機11が配置される。この場合、図10に示すように、2軸用減速機11は、一面側治具17の軸部17bを連結構造部11aに挿入した状態で、下アーム1cの他面側とショルダ1bとにボルトによって固定される。つまり、2軸用減速機11は、一面側治具17の軸部17bを基準として位置決めされた状態で他面側に配置される。
【0051】
続いて、図9に示すように、治具取り外し工程(S4)において一面側治具17が取り外され、モータ配置工程(S5)において、一面側治具17を取り外した位置に、モータアッセンブリ14が配置される。このとき、モータアッセンブリ14は、図10に示すように、プレート12を一面側凹部15に嵌合させた状態で配置される。
【0052】
そして、上記したように一面側治具17はモータアッセンブリ14のプレート12よりも図示右方側に対応する形状となっているため、モータアッセンブリ14は、インプットギア13の軸芯と2軸用減速機11の軸芯とが一致した状態で配置される。換言すると、一面側治具17を用いて組み立てることにより、モータと減速機との同軸度を高い精度で得ることができる。
【0053】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
産業用ロボットは、構造体の一面側の所定の位置に位置決めされた状態で配置されるモータと、構造体を挟んでモータとは反対側となる他面側に、モータに対して位置決めされた状態で、モータの出力側の回転部材に連結されて配置される減速機とを備えている。そして、産業用ロボットの製造方法は、回転部材に対応する軸部17bを有し、モータの配置構造を疑似的に再現する形状に形成された一面側治具17を、軸部17bが他面側に露出した状態で構造体の一面側に取り付ける工程を含んでいる。
【0054】
これにより、一面側治具17を構造体に取り付けた状態では、軸部17bが他面側に露出することにより、一面側に配置されるモータに対して減速機を位置決めした状態で配置するための基準位置が、構造体を挟んで反対側となる他面側に形成される。換言すると、減速機を、構造体の一面側の所定の位置を基準にした状態で配置することが可能となる。
【0055】
続いて、減速機を軸部17bに対して位置決めしつつ他面側に配置することにより、減速機を、疑似的にモータに対して位置決めした状態で配置することができる。そして、一面側治具17を取り外した位置にモータを配置することにより、構造体の両側に配置される減速機とモータとを、一面側に設けられている単一の基準位置に基づいて、互いに位置決めした状態で配置することができる。
【0056】
したがって、構造体を挟んだ両側にモータと減速機を配置する構成において、モータと減速機の同軸度を高精度で得ることができる。また、同軸度を高精度で得ることができることから、減速機の振動や異音あるいは摩耗を低減することができる。また、治具を用いて減速機を位置決めすることから、例えば一面側に実際のモータアッセンブリ14を配置し、そのモータアッセンブリ14に対して減速機をずらしながら位置決めする手法と比べて、減速機の歯車やインプットギア13が損傷するおそれを低減することができる。
【0057】
また、産業用ロボットの製造方法では、構造体の一面に、モータまたはモータを取り付けるための一面側取付部材の少なくとも一部と嵌合される一面側嵌合構造を形成する工程をさらに含み、一面側治具17を取り付ける工程では、一面側治具17を一面側嵌合構造に嵌合させることにより一面側の所定の位置に位置決めされた状態に取り付ける。これにより、一面側治具17を容易に位置決めした状態で取り付けることができるとともに、一面側治具17を取り付けるための構造とモータを位置決めするための構造とを同じ一面側嵌合構造によって実現することができることから、加工や製造に要する時間やコストを低減することができる。
【0058】
また、上記した製造方法でロボット1を製造することにより、モータと減速機の同軸度を高精度で得ることができ、高い精度で姿勢を制御することができるロボット1を得ることができる。
【0059】
また、本実施形態ではプレート12を介して間接的にモータを一面側凹部15に取り付ける構成例を示したが、モータを直接的に一面側凹部15に嵌合させる構成とすることができる。
【0060】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、治具を構造体の他面側に設ける点において第1実施形態と異なっている。図11に示すように、本実施形態の場合、構造体として下アーム1cの一面側に一面側凹部21が形成されており、他面側に他面側凹部22が形成されている。他面側凹部22は、減速機の少なくとも一部と嵌合される他面側嵌合構造に相当する。
【0061】
これら一面側凹部21と他面側凹部22とは、上記した図8と同様に形成される。ただし、一面側凹部21の内径寸法(D20)は、プレート12の外形寸法(D1)よりも大きく、他面側凹部22の内径寸法(D21)は、2軸用減速機11の外形寸法(D7)と概ね同じであるものの、2軸用減速機11を嵌合するために若干大きく形成されている。また、一面側凹部21の中央には、一面側凹部21よりも直径が小さい段差凹部21aと、他面側まで連通している連通孔部21bが形成されている。
【0062】
そして、本実施形態では、構造体の一面側にモータを配置した後、そのモータに対して軸合わせした状態で減速機を配置する手順でロボット1が製造される。つまり、本実施形態では、他面側凹部22の壁面22aが、モータおよび減速機を配置するために他面側に設けられている単一の基準位置となっている。
【0063】
具体的には、本実施形態では、図12に示す他面側治具23を用いている。この他面側治具23は、第2軸(J2)に沿った軸方向から視た正面視、軸方向に対して垂直な方向から視た側面視および平面視として示すように、概ね円盤状に形成されている治具本体部23aと、治具本体部23aの中心に設けられていて軸方向の一面側に延びている中空の概ね柱状に形成されている中空軸部23bとを有している。
【0064】
このとき、他面側治具23は、治具本体部23aの外形寸法(D22)が2軸用減速機11の外形寸法(D7)と等しくなるように、その寸法精度が高精度に形成されている。この治具本体部23aには、構造体にボルトなどで固定するための複数の固定用貫通孔23cが周方向に形成されている。また、中空軸部23bは、その長さ(L23)が一面側に露出可能に設定されており、その外形寸法(D24)が構造体の連通孔部15bに挿入可能であるとともに、その中心にインプットギア13を挿入可能な挿入孔23dが形成されている。この挿入孔23dは、連結構造部11aとほぼ共通する大きさに形成されている。
【0065】
つまり、他面側治具23は、減速機が配置された際の配置構造の一面側の少なくとも一部を疑似的に再現する形状に形成されている。そして、他面側治具23は、後述するように構造体に取り付けられた際には、中空軸部23bにインプットギア13が挿入されることになる。ただし、他面側治具23は、挿入孔23dを有していればよく、中空軸部23bが無い構造、つまりは、治具本体部23aに挿入孔23dが形成されている構成とすることもできる。
【0066】
具体的には、本実施形態の産業用ロボットの製造方法は、図13に示す各工程を含んでいる。まず、加工工程(S11)において、一面側凹部21と、他面側嵌合構造に相当する他面側凹部22とが構造体に形成される。この加工工程では、図11に示したように、例えば一面側凹部21を形成した後、構造体の向きを変えて他面側凹部22が形成される。但し、他面側凹部22を形成した後に一面側凹部21を形成する順序であっても構わない。また、加工工程では段差凹部15aと連通孔部15bも形成されている。
【0067】
続いて、治具取り付け工程(S12)において、構造体に他面側治具23が取り付けられる。このとき、他面側治具23は、図14に示すように、他面側凹部22に嵌合した状態で取り付けられる。そのため、他面側治具23は、他面側凹部22の壁面22aを基準位置とした状態、つまりは、他面側凹部22に対して位置決めされた状態であって、中空軸部23bが一面側に露出した状態で取り付けられる。換言すると、他面側治具23は、一面側から挿入孔23dにインプットギア13を挿入可能な状態で配置される。
【0068】
さて、他面側治具23は、上記したようにその寸法精度が高精度に加工されている。そのため、他面側治具23を取り付けた場合には、2軸用減速機11を取り付ける際の基準位置となる他面側凹部22の壁面22aを、間接的に一面側において位置合わせする際の基準位置として利用可能になる。つまり、治具取り付け工程は、他面側の所定の位置に配置される減速機に対してモータを位置決めした状態に配置するための基準位置を、構造体を挟んで反対側となる一面側に形成する工程にも相当する。
【0069】
他面側治具23を取り付けた後、図13に示すように、モータ配置工程(S13)において、構造体の一面側に2軸用モータ10が配置される。この場合、図14に示すように、2軸用モータ10は、他面側治具23の中空軸部23bの挿入孔23dにインプットギア13を挿入した状態で、下アーム1cの一面側にボルトによって固定される。つまり、2軸用モータ10は、他面側治具23の中空軸部23b、より厳密に言えば、挿入孔23dを基準として位置決めされた状態で一面側に配置される。
【0070】
続いて、図13に示すように、治具取り外し工程(S14)において他面側治具23が取り外され、減速機配置工程(S15)において、他面側治具23を取り外した位置に、2軸用減速機11が配置される。このとき、2軸用減速機11は、図14に示すように、他面側凹部22に嵌合させた状態で配置され、2軸用減速機11に設けられているざぐり穴を利用して、他面側からボルトなどによって下アーム1cに固定される。そして、上記したように他面側治具23は減速機の少なくとも一部を疑似的に再現する形状となっているため、減速機は、インプットギア13の軸芯と一致した状態で配置される。換言すると、他面側治具23を用いて組み立てることにより、モータと減速機との同軸度を高い精度で得ることができる。
【0071】
以上説明した実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
産業用ロボットは、産業用ロボットの構造体の一面側に配置されるモータと、構造体を挟んでモータとは反対側となる他面側に、モータの出力側の回転部材に連結されて配置される減速機とを備えている。そして、産業用ロボットの製造方法は、モータの出力側の回転部材を挿入可能な挿入孔23dを有し、減速機の配置構造を疑似的に再現する形状に形成された他面側治具23を構造体の他面側の所定の位置に位置決めした状態で取り付ける工程を含んでいる。
【0072】
これにより、他面側治具23を構造体に取り付けた状態では、中空軸部23bが他面側に露出することにより、減速機を位置決めした状態で配置するための基準位置が、構造体を挟んで反対側となる一面側に形成される。換言すると、モータを、構造体の他面側の所定の位置を基準として配置することが可能となる。
【0073】
続いて、モータを挿入孔23dに対して位置決めしつつ一面側に配置することにより、疑似的に減速機に対して位置決めした状態でモータを配置することができる。そして、他面側治具23を取り外した位置に減速機を配置することにより、構造体の両側に配置される減速機とモータとを、他面側に設けられている単一の基準位置に基づいて、互いに位置決めした状態で配置することができる。
【0074】
したがって、構造体を挟んだ両側にモータと減速機を配置する構成において、モータと減速機の同軸度を高精度で得ることができる。また、同軸度を高精度で得ることができることから、減速機の振動や異音あるいは摩耗を低減することができる。また、治具を用いてモータを位置決めすることから、例えば他面側に実際の減速機を配置し、その減速機に対してモータをずらしながら位置決めする手法と比べて、減速機の歯車やインプットギア13が損傷するおそれを低減することができる。
【0075】
また、産業用ロボットの製造方法では、構造体の他面に、減速機の少なくとも一部と嵌合される他面側嵌合構造を形成する工程をさらに含み、他面側治具23を取り付ける工程では、他面側治具23を他面側嵌合構造に嵌合させることにより他面側の所定の位置に位置決めされた状態に取り付ける。これにより、他面側治具23を容易に位置決めした状態で取り付けることができるとともに、他面側治具23を位置決めするための構造と減速機を位置決めするための構造とを同じ他面側嵌合構造によって実現することができることから、加工や製造に要する時間やコストを低減することができる。
【0076】
また、上記した製造方法でロボット1を製造することにより、モータと減速機の同軸度を高精度で得ることができ、高い精度で姿勢を制御することができるロボット1を得ることができる。
【0077】
また、本実施形態では他面側凹部22に減速機を直接的に取り付ける構成としたが、減速機を取り付けるための他面側取付部材を設け、他面側取付部材の少なくとも一部を他面側凹部22に嵌合させる構成とすることができる。
【0078】
本発明は、上記した、あるいは、図面に記載した実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲での種々の変形、拡張あるいは他の構成との組み合わせすることができ、それらは均等の範囲に含まれる。
【0079】
例えば、実施形態の製造方法は、第3軸(J3)、第1軸(J1)、第4軸(J4)あるいは第5軸(J5)など、モータの大きさや性能、減速機の減速比などが異なることはあるものの構造体を挟んだ両側にモータと減速機とが配置された構造の部位に適用することができる。
【符号の説明】
【0080】
図面中、1はロボット、1aはベース(構造体)、1bはショルダ(構造体)、1cは下アーム(構造体)、1dは第1上アーム(構造体)、1eは第2上アーム(構造体)、1fは手首(構造体)、10は2軸用モータ(モータ)、11は2軸用減速機(減速機)、12はプレート(一面側取付部材)、13はインプットギア(回転部材)、15は一面側凹部(一面側嵌合構造)、16は他面側凹部、17は一面側治具、17bは軸部、21は一面側凹部、22は他面側凹部(他面側嵌合構造)、23は他面側治具、23bは中空軸部を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14