(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001601
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】信号処理装置、及び信号処理方法
(51)【国際特許分類】
H04L 13/00 20060101AFI20221226BHJP
【FI】
H04L13/00 315A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102417
(22)【出願日】2021-06-21
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.3GPP
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003694
【氏名又は名称】弁理士法人有我国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 亮二
(72)【発明者】
【氏名】花屋 達郎
【テーマコード(参考)】
5K035
【Fターム(参考)】
5K035CC08
5K035CC10
5K035GG09
5K035KK07
(57)【要約】
【課題】送受信部の内部遅延量を正確に算出し、被試験対象の遅延量の高精度の算出を可能にする信号処理装置、及び信号処理方法を提供する。
【解決手段】信号処理装置1は、測定装置10、SA20、及び制御装置30を備え、DUT50にパケットデータの所定の単位からなる試験信号を送受信する送受信部11と、DUT50の遅延量を算出する遅延量算出部33cと、を備える。遅延量算出部33cは、SA20と協働して内部遅延量算出部15aで算出される試験信号の送受信部11での内部遅延量と、DUT50と送受信部11と間の遅延量と、をパケットデータの所定の単位ごとに算出し、DUT50と送受信部11との間の遅延量を、内部遅延量と、DUT50と送受信部11との経路に応じた物理量と、によりパケットデータの所定の単位ごとに補正し、パケットデータの所定の単位ごとのDUT50の遅延量を算出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験対象(50)にパケットデータの所定の単位からなる試験信号を送受信する送受信部(11)と、
前記送受信部を制御する制御部(15)と、
前記被試験対象の遅延量を算出する遅延量算出部(33c)と、を備え、
前記遅延量算出部は、
前記試験信号の前記送受信部における内部遅延量と、前記被試験対象と前記送受信部と間の遅延量と、を前記パケットデータの所定の単位ごとに算出し、
前記被試験対象と前記送受信部との間の遅延量を、前記内部遅延量と、前記被試験対象と前記送受信部との経路に応じた物理量と、により前記パケットデータの所定の単位ごとに補正し、前記パケットデータの所定の単位ごとの前記被試験対象の遅延量を算出することを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
外部に接続された信号測定装置(20)をさらに有し、
前記信号測定装置は、前記試験信号を前記被試験対象に送信する際に送出されるトリガー信号を受信してから、前記被試験信号が分離器を介して入力するまでのタイミングに応じて前記送受信部の内部遅延量を検出する内部遅延量検出部(15a)を有し、
前記遅延量算出部は、前記内部遅延量検出部が検出した前記内部遅延量を取得することを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記送受信部は、IPレイヤー、PDCPレイヤー、RLCレイヤー、MACレイヤー、PHYレイヤーの順に前記試験信号を送信し、前記PHYレイヤー、前記MACレイヤー、前記RLCレイヤー、前記PDCPレイヤー、前記IPレイヤーの順で前記試験信号を受信し、
前記内部遅延量は、前記送受信部の前記PDCPレイヤーから前記送受信部の前記PHYレイヤーまでの遅延量であることを特徴とする請求項1または2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記被試験対象と前記送受信部との経路は、前記被試験対象のPHYレイヤーと、前記送受信部の前記PHYレイヤーとの経路であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の信号処理装置。
【請求項5】
被試験対象にパケットデータの所定の単位からなる試験信号を送受信する送受信部と、
前記送受信部を制御する制御部と、
前記被試験対象の遅延量を算出する遅延量算出部と、
を備える信号処理装置を用い、前記試験信号の前記送受信部における内部遅延量と、前記被試験対象と前記送受信部と間の遅延量と、に基づいて前記被試験対象の遅延量を算出する信号処理方法であって、
前記被試験対象にパケットデータの所定の単位からなる前記試験信号を送受信する送受信ステップ(S2、S3)と、
前記試験信号の前記送受信部における内部遅延量と、前記被試験対象と前記送受信部と間の遅延量と、を前記パケットデータの所定の単位ごとに算出するステップ(S6、S7)と、
前記被試験対象と前記送受信部との間の遅延量を、前記内部遅延量と、前記被試験対象と前記送受信部との経路に応じた物理量と、により前記パケットデータの所定の単位ごとに補正し、前記パケットデータの所定の単位ごとの前記被試験対象の遅延量を算出する遅延量算出ステップ(S8、S9)と、を含むことを特徴とする信号処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動端末等の被試験対象との間で試験信号を送受信して被試験対象の遅延量を測定する遅延量測定試験を実施する信号処理装置、及び信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話システムにおいては、近年、LTE-Advanced方式等を採用している4G(第4世代)のサービスから5G(第5世代)のサービスへ移行するための技術開発が進展しつつある。
【0003】
5Gのサービスは、例えば、自動運転制御及び交通制御、ロボットによる製造業の自動化、遠隔手術等の遠隔制御等への適用が期待されている。5Gサービスを提供する5G NRシステム(New Radio System)の最大の特徴は、超高信頼、かつ、低遅延な無線通信(Ultra-Reliable and Low Latency Communications:URLLC)の実現にある。
【0004】
URLLCへの対応を見据え、新規に開発される5G NR用の移動端末(以下、5G端末)を被試験対象(Device Under Test:DUT)とする性能試験の一つとして、DUTに対して試験信号を送信し、あるいはDUTとの間で試験信号を送受信することにより当該DUTにおけるユーザプレーンでの遅延量(User plane Latency)を測定するユーザプレーン遅延量測定試験(以下、遅延量測定試験)が知られている。
【0005】
上記遅延量測定試験については、クリアすべきユーザプレーン遅延(無線区間遅延)の目標値が3GPP(3rd Generation Partnership Project)等の業界団体によって規定されている。例えば、3GPP 技術仕様書の章38.913V16.0.0(2020-07)_7.5 User plane Latency、及び同7.9 Reliabilityには、無線区間遅延はパケットの受信成功までに要する片道の遅延であること、その許容値としては、「32バイトのパケット送信時に1ms(millisecond)以下の無線区間遅延かつ99.999%以上のパケット受信成功率の達成」できること等に規格が明記されている(例えば、下記非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】3GPP 技術仕様書 章38.913V16.0.0(2020-07)_7.5 User plane Latency/7.9 Reliability
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した遅延量測定試験を行うための信号処理装置では、例えば、試験信号であるパケットデータを送信してからDUTでの該パケットデータ(試験信号)の受信成功までに要する片道の遅延量を求める試験において、パケットデータを送受信する送受信部の内部遅延量と、DUT側での遅延量を考慮することが重要となる。
【0008】
5G端末を被試験対象として遅延量測定試験を行う従来の信号処理装置では、遅延量測定試験に際し、一連のパケットデータからなる試験信号を対象に一括に測定してその平均値を用いて送受信部の内部遅延量を算出するようにしていた。
【0009】
このため、この種の従来の信号処理装置では、パケットデータごとの遅延量のばらつきを吸収することができず、送受信部での内部遅延量を正確に算出できないことから被試験対象の遅延量についても精度よく算出することが困難となり、上記規格に沿った被試験対象の正当な評価が行えないという問題点があった。
【0010】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであって、送受信部の内部遅延量を正確に算出し、被試験対象の遅延量の高精度の算出を可能にする信号処理装置、及び信号処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る信号処理装置は、被試験対象(50)にパケットデータの所定の単位からなる試験信号を送受信する送受信部(11)と、前記送受信部を制御する制御部(15)と、前記被試験対象の遅延量を算出する遅延量算出部(33c)と、を備え、前記遅延量算出部は、前記試験信号の前記送受信部における内部遅延量と、前記被試験対象と前記送受信部と間の遅延量と、を前記パケットデータの所定の単位ごとに算出し、前記被試験対象と前記送受信部との間の遅延量を、前記内部遅延量と、前記被試験対象と前記送受信部との経路に応じた物理量と、により前記パケットデータの所定の単位ごとに補正し、前記パケットデータの所定の単位ごとの前記被試験対象の遅延量を算出することを特徴とする。
【0012】
この構成により、本発明の請求項1に係る信号処理装置は、送受信部における内部遅延量をパケットデータの所定単位ごとに測定することで、一連のパケットデータを対象に一括に測定し算出する場合に比べて、内部遅延量を正確に算出可能となる。さらにはこの内部遅延量を用いて被試験対象と送受信部との間の遅延量を、パケットデータの所定の単位ごとに補正し、パケットデータの所定の単位ごとの被試験対象の遅延量を算出することで、当該遅延量の算出精度も向上させることが可能となる。
【0013】
本発明の請求項2に係る信号処理装置は、外部に接続された信号測定装置(20)をさらに有し、前記信号測定装置は、前記試験信号を前記被試験対象に送信する際に送出されるトリガー信号を受信してから、前記被試験信号が分離器を介して入力するまでのタイミングに応じて前記送受信部の内部遅延量を検出する内部遅延量検出部(15a)を有し、前記遅延量算出部は、前記内部遅延量検出部が検出した前記内部遅延量を取得する構成としてもよい。
【0014】
この構成により、本発明の請求項2に係る信号処理装置は、送受信部における内部遅延量を容易かつ正確に算出(取得)することができ、被試験対象の遅延量の算出処理も容易に行うことが可能となる。
【0015】
本発明の請求項3に係る信号処理装置において、前記送受信部は、IPレイヤー、PDCPレイヤー、RLCレイヤー、MACレイヤー、PHYレイヤーの順に前記試験信号を送信し、前記PHYレイヤー、前記MACレイヤー、前記RLCレイヤー、前記PDCPレイヤー、前記IPレイヤーの順で前記試験信号を受信し、前記内部遅延量は、前記送受信部の前記PDCPレイヤーから前記送受信部の前記PHYレイヤーまでの遅延量である構成とすることもできる。
【0016】
この構成により、本発明の請求項3に係る信号処理装置は、送受信部におけるユーザプレーンでの内部遅延量を正確に算出することができ、ひいては被測定対象の遅延量も精度よく算出可能となる。
【0017】
本発明の請求項4に係る信号処理装置において、前記被試験対象と前記送受信部との経路は、前記被試験対象のPHYレイヤーと、前記送受信部の前記PHYレイヤーとの経路である構成とすることもできる。
【0018】
この構成により、本発明の請求項4に係る信号処理装置は、被試験対象と送受信部との間で試験信号を伝送する、例えば、光ケーブルのケーブル長などの物理量に応じて、被試験対象と送受信部との間の遅延量を正確に補正し、被測定対象の遅延量を精度よく算出することができる。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の請求項5に係る信号処理方法は、被試験対象にパケットデータの所定の単位からなる試験信号を送受信する送受信部と、前記送受信部を制御する制御部と、前記被試験対象の遅延量を算出する遅延量算出部と、を備える信号処理装置を用い、前記試験信号の前記送受信部における内部遅延量と、前記被試験対象と前記送受信部と間の遅延量と、に基づいて前記被試験対象の遅延量を算出する信号処理方法であって、前記被試験対象にパケットデータの所定の単位からなる前記試験信号を送受信する送受信ステップ(S2、S3)と、前記試験信号の前記送受信部における内部遅延量と、前記被試験対象と前記送受信部と間の遅延量と、を前記パケットデータの所定の単位ごとに算出するステップ(S6、S7)と、前記被試験対象と前記送受信部との間の遅延量を、前記内部遅延量と、前記被試験対象と前記送受信部との経路に応じた物理量と、により前記パケットデータの所定の単位ごとに補正し、前記パケットデータの所定の単位ごとの前記被試験対象の遅延量を算出する遅延量算出ステップ(S8、S9)と、を含む構成を有する。
【0020】
この構成により、本発明の請求項5に係る信号処理方法は、信号処理装置の送受信部における内部遅延量をパケットデータの所定単位ごとに測定することで、一連のパケットデータを対象に一括に測定し算出する場合に比べて、内部遅延量を正確に算出可能となる。さらにはこの内部遅延量を用いて被試験対象と送受信部との間の遅延量を、パケットデータの所定の単位ごとに補正し、パケットデータの所定の単位ごとの被試験対象の遅延量を算出することで、当該遅延量の算出精度も向上させることが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、送受信部の内部遅延量を正確に算出し、被試験対象の遅延量の高精度の算出を可能にする信号処理装置、及び信号処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る信号処理装置の測定装置及びDUTの送受信部におけるレイヤー処理機能の構成を示す概念図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る信号処理装置の遅延測定経路の構造と経路各部における遅延量を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る信号処理装置のDLでの遅延量算出制御シーケンスを示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る信号処理装置における測定装置及びSAによる測定装置の送受信部の内部遅延量算出処理手順の流れを示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る信号処理装置の遅延量測定試験におけるSAでの試験信号の波形表示画面の表示例を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る信号処理装置における遅延量測定試験の制御動作を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の一実施形態に係る信号処理装置における遅延量測定試験の試験結果を示す表図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る信号処理装置、及び信号処理方法の実施形態について図面を用いて説明する。
【0024】
本発明の一実施形態について、測定装置、SA(スペクトラムアナライザ)、及び制御装置を備え、5G端末をDUTとしてその遅延量を測定する信号処理装置を例に挙げて説明する。まず、本実施形態に係る信号処理装置の構成及び遅延量測定試験の概要について
図1~
図6を参照して説明する。
【0025】
本実施形態に係る信号処理装置1は、例えば、
図1に示すように、測定装置10、SA20、制御装置30を有して構成される。測定装置10、SA20、制御装置30間は、例えば、イーサネット(登録商標)によって相互に通信可能に接続されている。
【0026】
この信号処理装置1は、制御装置30の制御下で測定装置10及びSA20が駆動制御される。信号処理装置1では、DUT50の遅延量を測定する遅延量測定試験において、制御装置30から送信した試験信号(所定単位のパケットデータ)が測定装置10、DUT50を経由して制御装置30まで順繰りに送信される。制御装置30から送信された試験信号が制御装置30まで戻る試験信号の伝送経路を、以下、遅延測定経路という。
【0027】
制御装置30では、DUT50から送られてくる試験信号を受信すると、該試験信号を送った時間とその後に当該試験信号を受信した時間とに基づいて試験信号の遅延測定経路全体での遅延量を測定するとともに、その間、測定装置10とSA20が協働して測定装置10の送受信部11における内部遅延量を測定し、該測定装置10の送受信部11における内部遅延量を加味してDUT50の内部遅延量を算出するようになっている。DUT50は、所定の通信規格、例えば5G NRと呼ばれる通信規格に対応して無線周波数信号を送受信する携帯電話やモバイル端末等の端末(5G端末)である。SA20は、本発明の信号測定装置を構成する。
【0028】
信号処理装置1において、測定装置10は、送受信部11、信号処理部13、外部インタフェース(I/F)部14、制御部15、記憶部16を備えて構成されている。この測定装置10は、図示しないCPU、ROM、RAM、FPGA、各種インタフェースが接続される入出力回路等を備えたマイクロコンピュータを含む。すなわち、測定装置10は、ROMに予め格納された制御プログラムを実行させることにより、マイクロコンピュータをDUT50の遅延量を測定する遅延量測定試験を実施させる構成を有している。
【0029】
送受信部11は、送信部11aと受信部11bとによって構成され、RF(Radio Frequency)信号を介してDUT50と通信するようになっている。
【0030】
送信部11aは、測定装置10がDUT50に対して信号(例えば、試験信号)を送信するダウンリンク(Downlink:DL)経路に対応して設けられ、該信号(ダウンリンクデータ)である無線周波数信号(RF信号)を送信する機能部である。
【0031】
受信部11bは、DUT50が測定装置10に対して信号を送信するアップリンク(Uplink:UL)経路に対応して設けられ、該信号(アップリンクデータ)であるRF信号を受信する機能部である。
【0032】
信号処理部13は、制御装置30から送られてくるI/Qデータを、送信部11aからDUT50に対してダウンリンクデータとして送信可能な信号に変換するDL用信号処理と、受信部11bで受信したDUT50からのアップリンクデータが含まれるRF信号をアナログ信号からデジタル信号に変換し、さらには復号化処理を行ってIQデータを算出するUL用信号処理を行うための演算処理機能部である。
【0033】
外部インタフェース(I/F)部14は、制御装置30との間でHUB40を介して信号を送受信するためのインタフェース手段である。
【0034】
制御部15は、例えば、CPU(中央制御装置)で構成され、送受信部11を含む測定装置10全体の制御を行う機能部である。制御部15は、制御機能の一つとして、制御装置30の制御下で実施される遅延量測定試験に際し、SA20を制御して当該測定装置10の送受信部11の内部遅延量を検出する内部遅延量検出部15aを有している。
【0035】
記憶部16は、CPUが内部遅延量検出部15aを実現するためのプログラム等、種々の情報を記憶する機能部である。
【0036】
SA20は、測定装置10からDUT50に試験信号を送信する際に、分離されて自装置にも入力される当該試験信号の信号処理を行う信号処理部21と、信号処理後の試験信号等、各種情報の表示を行う表示部22を有して構成されている。なお、SA20に付随して、それぞれの個所で試験信号の分離を行うスプリッタ12a、及び12bが設けられている。
【0037】
制御装置30は、例えば、パーソナル・コンピュータ(PC)等のコンピュータ装置により構成され、DUT50の遅延量測定試験のための測定装置10及びSA20の各種制御動作を統括的に制御する制御PCとして機能する。
図1に示すように、制御装置30は、外部I/F部31、信号処理部32、制御部33、記憶部34、操作部35、表示部36を有している。
【0038】
外部I/F部31は、測定装置10との間でHUB40を介して信号を送受信するためのインタフェース手段である。
【0039】
信号処理部32は、DUT50へ送出するためのダウンリンクデータ(RF信号)を符号化した後にデジタル信号に変換してI/Qデータを生成し、該I/Qデータを測定装置10に送出するDL用信号処理と、DUT50からのアップリンクデータ(I/Qデータ)の復号化処理後のデータを測定装置10から入力し、RF信号に復元するUL用信号処理と、を実施する機能部である。
【0040】
制御部33は、制御装置30全体、測定装置10及びSA20を統括的に制御する機能部であり、擬似基地局制御部33a、遅延試験制御部33b、遅延量算出部33c、解析制御部33d、表示制御部33eを有している。
【0041】
擬似基地局制御部33aは、複数の擬似基地局を管理し、予め設定した試験シナリオに従ってDUT50の遅延量測定試験のための各擬似基地局の動作制御を行うものである。
【0042】
遅延試験制御部33bは、DUT50の遅延量を測定する遅延測定試験を実施する機能部であり、パケットデータからなる試験信号をRF信号に変換してDUT50に送信するとともに、該試験信号を受信したDUT50が制御装置30に対して送り出す当該試験信号を入力し、制御部33へと引き渡すための制御を行う。
【0043】
遅延量算出部33cは、DUT50の遅延測定試験において、試験信号を送信してから該試験信号を受信するまでの時間に応じて当該試験信号が一巡する遅延測定経路全体の遅延量を算出するとともに、測定装置10の内部遅延量検出部15aで検出された送受信部11の内部遅延量を加味してDUT50の遅延量を算出する機能部である。
【0044】
解析制御部33dは、信号処理部32で処理された信号(DUT50から送られてくる試験信号を含む)の解析を行う処理機能部である。
【0045】
操作部35は、キーボード、ダイヤル又はマウスのような入力デバイスで構成され、遅延測定試験や解析処理等に係る各設定や、各種の指示等に係る入力操作を実行する部分である。
【0046】
表示部36は、遅延試験制御部33bによって実施される遅延測定試験に係る設定画面や遅延試験結果画面、あるいは解析制御部33dによる信号解析結果画面等、種々の情報を表示する部分である。
【0047】
上述した構成を有する信号処理装置1では、例えば、
図2に示すように、測定装置10の送受信部11にはレイヤー処理部11cが設けられるとともに、DUT50の送受信部に相当する部分にはレイヤー処理部11cに対向するレイヤー処理部51が設けられている。
図2においては特に、レイヤー処理部11c及びレイヤー処理部51におけるDLに係るレイヤー処理機能部に限定した構成を開示している。
【0048】
レイヤー処理部11cは、信号処理部12で生成される信号データの各レイヤーの信号の送信部11aでの送信に係る信号処理を行う部分と、DUTから送られてくる信号データの各レイヤーの信号の受信部11bでの受信に係る信号処理を行う部分と、を有している。
【0049】
レイヤー処理部51は、測定装置10のレイヤー処理部11cから送られてくる信号データの各レイヤーの信号のDUT50での受信処理を行う部分と、測定装置10のレイヤー処理部11cへと送る信号データの各レイヤーの信号の受信処理を行う部分と、を有している。
【0050】
レイヤー処理部11cは、下位から順番に、例えば、PHY層(Physical Layer、物理層)、MAC層(Medium Access Control Layer、媒体アクセス制御層)、RLC層(Radio Link Control Layer、無線リンク制御層)、SDAP層(Service Data Adaptation Protocol)、PDCP層(Packet Data Convergence Protocol Layer、パケットデータ収束層)、IP層(Internet Protocol)の処理を実行可能な構成を有している。同様に、レイヤー処理部51も、下位から順番に、例えば、PHY層、MAC層、RLC層、SDAP層、PDCP層、IP層の処理を実行可能な構成を有している。
【0051】
以下の説明において、測定装置10の送受信部11の内部遅延量は、レイヤー処理部11cのPDCPレイヤーからPHYレイヤーまでの遅延量に相当するものである。
【0052】
次に、本実施形態に係る信号処理装置1における遅延測定試験の概要について、
図3及び
図4を参照して説明する。
【0053】
本実施形態に係る信号処理装置1の遅延測定試験においては、例えば、
図3に示すように、パケットデータの所定の単位からなる試験信号を、タイミングT1に、制御装置30から測定装置10に対して送信し、該試験信号を受信した測定装置10では該試験信号をDUT50の送信し、さらにDUT50は測定装置10から受信した試験信号を制御装置30へと送信する。
【0054】
制御装置30では、DUT50から送出された試験信号をタイミングT2で受信し、試験信号を送信したタイミングT1から、遅延測定経路を一巡した当該試験信号を受信したタイミングT2間の時間T0(=T2-T1)を遅延測定経路全体の遅延量Lt0として算出する。
【0055】
ここで制御装置30から測定装置10までのパケットデータの伝送時間をta、測定装置10からDUT50までの間の試験信号の伝送時間(遅延量)をLt1、DUT50から制御装置30までのパケットデータの伝送時間をtbとする。この場合、伝送時間ta、tb、遅延量Lt1は、試験信号を構成するパケットデータの構造と伝送路(例えば、光ケーブル)の長さ等の物理量によって予め既知であるため、DUT50の遅延量Ldtは、Ldt=Lt0-(ta+Lt1+tb)として求めることが可能である。
【0056】
また、上述した測定装置10からDUT50までの間(
図2におけるポイントP1からポイントP2の区間)の試験信号の遅延量Lt1は、測定装置10の送受信部11の内部遅延量Lt2と、測定装置10からDUT50までの間の経路に応じた物理量によって決まる遅延量Lt3と、を含んでいる。
【0057】
このため、上述した遅延測定試験において、DUT50の遅延量Ltdをより正確に算出するためには、測定装置10からDUT50までの間の試験信号の遅延量Lt1を、測定装置10の送受信部11の内部遅延量Lt2と、測定装置10からDUT50までの間の経路に応じた物理量によって決まる遅延量Lt3を考慮に入れた遅延量Lt1´に補正したうえで、下式(2)を用いて算出することが有効となる。
Ldt=Lt0-(ta+Lt1´+tb) ・・・ (1)
【0058】
本実施形態に係る信号処理装置1では、上述した遅延測定試験における測定装置10の送受信部11の内部遅延量Lt2は、例えば、測定装置10とSA20とが協働して算出するようになっている。具体的には、遅延測定試験中、SA20は、試験信号をDUT50に送信する際に測定装置10から送出されるトリガー信号を受信してから、上記試験信号がスプリッタ12bを経由して自装置に入力するまでのタイミングを計測する。測定装置10は、SA20において、トリガー信号が入力されてから試験信号がスプリッタ12bを経由して自装置に入力するまでのタイミングに基づき、送受信部11の内部遅延量Lt2を検出する内部遅延量検出部15aを有している。スプリッタ12bは、本発明の分離器を構成する。
【0059】
内部遅延量Lt2の算出処理については
図5を参照して後で詳しく説明するものとし、ここではまず、遅延測定経路全体の遅延量Lt0の算出処理について
図4を参照して説明する。
図4においては、信号処理装置1における一方向(DL)の遅延量算出手順を示している。
【0060】
図4に示すように、信号処理装置1での遅延量測定試験が開始されると、制御装置30では、遅延試験制御部33bが信号処理部32により試験信号であるパケットデータを生成させるように制御する(ステップS100)。ここで遅延試験制御部33bは、生成するパケットデータに対応するタイムスタンプ(例えば、TS1)を生成し、該タイムスタンプTS1を該パケットデータの識別情報(Identifier)とともに当該パケットデータに付加する処理を行う。
【0061】
次いで、遅延試験制御部33bは、生成したパケットデータを測定装置10に送信する制御を行う(ステップS101)。この制御により、タイムスタンプTS1が付加された上記パケットデータがイーサネットによりHUB40を介して測定装置10に入力され、その後、制御部15の制御下で、送信部11aからRF信号としてDUT50へと送信される(ステップS200)。ここで送信部11aは、当該パケットデータを、IPレイヤー、PDCPレイヤー、RLCレイヤー、MACレイヤー、PHYレイヤーの順にDUT50へ送信するようになっている。
【0062】
DUT50では、測定装置10からDLにより送られてくるパケットデータを図示しない送受信部のうちの受信部により受信する(ステップS201)。ここでDUT50の受信部は、当該パケットデータを、PHYレイヤー、MACレイヤー、RLCレイヤー、PDCPレイヤー、IPレイヤーの順で受信するようになっている。
【0063】
次いでDUT50は、ステップS201で受信した上記パケットデータを上記送受信部のうちの送信部によりイーサネットを介して(測定装置10を経由せずに直接)制御装置30に送信するように制御する(ステップS301)。ここでDUT50の送信部は、当該パケットデータを、IPレイヤー、PDCPレイヤー、RLCレイヤー、MACレイヤー、PHYレイヤーの順にDUT50へ送信する。
【0064】
一方、制御装置30では、上記ステップS101で上記パケットデータを送信した後、DUT50から送られてくるパケットデータを外部I/F部31により受信すると、遅延試験制御部33bが、該受信したタイミングに対応するタイムスタンプ例えばTS2を生成する(ステップS110)。
【0065】
次いで、遅延試験制御部33bは、該受信したパケットデータの識別情報をチェックする(ステップS111)。
【0066】
ここで遅延試験制御部33bは、パケットデータの識別情報としてタイムスタンプTS1が付加されていることを確認すると、当該TM1と、ステップS110で生成したパケットデータに付加したTS2とをそれぞれ上述したT1、T2として用い、上記(1)式により遅延測定経路全体の遅延量Lt0(=TS2-TS1)を算出する(ステップS112)。
【0067】
このように、本実施形態に係る信号処理装置1では、制御装置30からタイムスタンプ付きの試験信号(パケットデータ)を測定装置10経由でDUT50に送信するとともに、該DUT50がその受信した試験信号を制御装置30に向けて送信するのを受けた制御装置30において、パケットデータ送信時のタイムスタンプの値とパケットデータ受信時のタイムスタンプの値とに基づいて遅延測定経路全体の遅延量Lt0を算出するようになっている。
【0068】
次に、遅延測定経路全体の遅延量Lt0の算出手順(
図4参照)に合わせて実施される、測定装置10及びSA20による測定装置10の送受信部11の内部遅延量Lt2の算出手順について
図5を参照して説明する。
【0069】
図5において、S101、S200、S301の各ステップ符号は、
図4に示す同様のステップ符号と同一のものである。
【0070】
図5に示すように、信号処理装置1は、タイムスタンプ付きの試験信号をステップS101、S200、S301を経て、制御装置30、測定装置10、DUT50、制御装置30間で順繰りに伝送し、上述した遅延測定経路全体の遅延量Lt0を算出する処理を実施している。
【0071】
上述した試験信号の順繰り伝送において、制御装置30は光モジュール(SFPモジュール)から試験信号を送出する。測定装置10はその試験信号を光モジュール(SFP+モジュール)で受信すると、該試験信号を送信部11aからRF信号としてDUT50に送信し、さらにDUT50はその受信した試験信号を制御装置30へと送信する。
【0072】
試験信号の順繰り伝送に合わせて、測定装置10及びSA20では、測定装置10の送受信部11の内部遅延量Lt2を以下の手順により算出する。
【0073】
測定装置10は、上述した試験信号の順繰り伝送時、
図5に示すように、制御装置30から試験信号を受信(ステップS101参照)したタイミングで、DTM Debug PinよりSA20に対し、測定装置10の送受信部11の内部遅延量Lt2をカウント開始するためのトリガー信号を送出する(ステップS400)。
【0074】
一方で測定装置10は、制御装置30から受信した試験信号を、RF信号のMainとAuxを切り替える機能部12aを介してDUT50に対して送信する(ステップS200参照)のに合わせて、スプリッタ12bを介して当該試験信号をSA20に対しても送信する(ステップS401)。ここで試験信号をSA20に送信するタイミングは、上記トリガー信号をSA20に送信するタイミングと同じである。
【0075】
SA20では、上記ステップS400で測定装置1からトリガー信号を受信すると、そのタイミングからRF Input端子に対する入力信号を信号処理部21によって信号処理し、該処理後の入力信号の波形を表示部22に表示する動作を実行する。この表示動作においては、トリガー信号が入力されてからRF Input端子に対する入力信号として試験信号が入力されるまでの期間が入力波形でない状態の波形表示が行われる。
【0076】
表示部22における試験信号未入力状態を含む入力信号の波形表示形態について
図6を参照して説明する。
図6は、SA20の表示部22における試験信号の測定波形表示画面22aの表示例を示している。測定波形表示画面22aにおいて、時間軸である横軸上の時間t0が上記トリガー信号の入力したタイミングである。測定波形表示画面22aでは、時間t0から時間t1までの期間、試験信号が入力されない状態として表示されている。その後、時間t1に達して測定装置10からスプリッタ12bを経由して試験信号が入力されると、このタイミング(「RF立ち上がり」タイミング)から当該入力信号である試験信号の波形が連続的に表示されるようになる。
【0077】
上述したSA20の処理動作において、測定装置10からのトリガー信号が入力(
図5のステップS400参照)してからスプリッタ12bより試験信号が入力する(
図5のステップS401参照)までの期間が、測定装置10の送受信部11の内部遅延量Lt2として捕らえて差し支えないものである。
【0078】
測定装置10において、内部遅延量検出部15aは、SA20において、測定装置10からのトリガー信号が入力してからスプリッタ12bより試験信号が入力するまでの期間を示す情報を測定装置10の送受信部11の内部遅延量Lt2として取得し、該取得した内部遅延量Lt2を制御装置30に対して通知する制御機能を有している。内部遅延量検出部15aが上記内部遅延量Lt2をSA20から取得する機能は、例えば、トリガー信号が入力してから試験信号が入力するまでの期間を補正量として計測し、該計測した補正量をSA20から測定装置10に対して通知する(
図5のステップS402参照)機能を備える構成により実現することができる。
【0079】
また、本実施形態では、測定装置10の外部にSA20を配置し、両者が協働して測定装置10の送受信部11の内部遅延量Lt2を測定する構成を挙げているが、測定装置10の内部に送受信部11の内部遅延量Lt2を検出する検出機能を設け、測定装置10が単独で送受信部11の内部遅延量Lt2を検出する構成としてもよい。
【0080】
制御装置30において、遅延量算出部33cは、測定装置10から通知を受けた(取得した)送受信部11の内部遅延量Lt2を加味してDUT50の遅延量Ldtを算出するようになっている。
【0081】
以上を踏まえ、本実施形態に係る信号処理装置1における遅延量測定試験の制御動作について
図7に示すフローチャートを参照して説明する。
【0082】
信号処理装置1を用いたDUT50の遅延量測定試験は、操作部35での所定の試験開始操作を受け付けることにより開始される。遅延量測定試験が開始されると、遅延試験制御部33bは、試験信号としてのパケットデータを生成し(ステップS1)、該パケットデータを遅延測定経路へ送信する(ステップS2)。ステップS1で生成されるパケットデータは当該パケットデータに対応するタイムスタンプを有するものであり、ステップS2において上記遅延測定経路中の測定装置10、DUT50、制御装置30を経由して順繰りに送信される。
【0083】
ステップS2でパケットデータを送信した後、遅延試験制御部33bは、当該パケットデータが上記遅延測定経路を一巡してDUT50から受信されたか否かをチェックする(ステップS3)。ここで当該パケットデータが受信されていない場合(ステップS3でNO)、遅延試験制御部33bはステップS3の処理を続行する。
【0084】
これに対し、当該パケットデータが受信された場合(ステップS3でYES)、遅延試験制御部33bは、次のパケットデータを生成する(ステップS4)。ここで生成されるパケットデータは、当該パケットデータとして受信されたパケットデータのタイムスタンプの値に続くタイムスタンプの値を有するものである。
【0085】
次いで、遅延量算出部33cは、ステップS3で受信された当該パケットデータのタイムスタンプの値(例えば、TS1)と、ステップS4で新たに生成した次のパケットデータのタイムスタンプの値(例えば、TS2)に基づいて遅延測定経路全体の遅延量Lt0を算出する(ステップS5)。
【0086】
引き続き、遅延量算出部33cは、算出された遅延測定経路全体の遅延量Lt0から測定装置10の送受信部11とDUT50との間の遅延量Lt1を算出する(ステップS6)。測定装置10の送受信部11とDUT50との間の遅延量Lt1は、例えば、
図3に示すように、ポイントP1とポイントP2との間の遅延量であり、遅延測定経路全体の遅延量Lt0からそれぞれ既知の伝送時間taと伝送時間tbを減算することによって算出することができる。
【0087】
さらに遅延量算出部33cは、上記パケットデータが一巡する間(ステップS2~S4の処理区間)に測定装置10の内部遅延量検出部15aによって算出された当該測定装置10の送受信部11の内部遅延量Lt2を内部遅延量検出部15aから取得する(ステップS7)。
【0088】
上記ステップS6とステップS7の各処理は順番が問われず、例えば、測定装置10の送受信部11の内部遅延量Lt2を取得する処理が、測定装置10の送受信部11とDUT50との間の遅延量Lt1を算出する処理の前に実施されるようにしてもよい。
【0089】
次いで、遅延量算出部33cは、上記ステップS6で算出した、測定装置10の送受信部11とDUT50との間の遅延量Lt1を、上記ステップS7で取得した測定装置10の送受信部11の内部遅延量Lt2と、DUT50と測定装置10の送受信部11との間の経路に応じた物理量(例えば、ケーブル種別、ケーブル長など)で決まる既知の遅延量Lt3と、により遅延量Lt1´として補正する処理を実施する(ステップS8)。ここでDUT50と測定装置10の送受信部11との間の経路とは、例えば、
図2において、DUT50のPHYレイヤーと、測定装置10の送受信部11のPHYレイヤーとの経路に相当する。
【0090】
さらに遅延量算出部33cは、この補正された測定装置10の送受信部11とDUT50との間の遅延量Lt1´を用いてDUT50の遅延量Ldtを算出する(ステップS9)。ここでDUT50の遅延量Ldtは、例えば、
図3に示すように、ステップS6で算出した測定装置10の送受信部11とDUT50との間の遅延量Lt1からステップS7で補正した遅延量Lt1´を減算することで算出することができる。
【0091】
次いで、遅延試験制御部33bは、遅延量測定試験の終了が指示されたか否かをチェックする(ステップS10)。ここで遅延量測定試験の終了が指示されていない場合(ステップS10でNO)、遅延試験制御部33bは、ステップS2以降の処理を継続的に実施する。
【0092】
これに対し、遅延量測定試験の終了が指示されている場合(ステップS10でYES)、遅延試験制御部33bは、上記一連の遅延量測定試験動作を終了させる。
【0093】
図7においては、ステップS5~S9の処理をパケットデータ単位に実施する例を挙げているが、本発明はこれに限られるものではない。すなわち、本実施形態においては、測定装置10の送受信部11とDUT50との間の遅延量Lt1と、測定装置10の送受信部11の内部遅延量Lt2と、をパケットデータの所定の単位ごとに算出し、DUT50と測定装置10の送受信部11との間の遅延量Lt2を、測定装置10の送受信部11の内部遅延量Lt2と、DUT50と測定装置10の送受信部11との経路に応じた物理量と、によりパケットデータの所定の単位ごとに補正し、パケットデータの所定の単位ごとのDUT50の遅延量Ldtを算出する構成としてもよい。
【0094】
図8は、
図7に示すフローチャートに沿った遅延量測定試験の試験結果(遅延量測定結果)を示す表図である。この表図は、横方向に並ぶ複数の項目ごとに、当該各項目の測定値が、遅延量測定試験の進行を現す縦方向に沿って並べられた構成を有している。複数の項目としては、左側から順に、試験回数、本実施形態に係る信号処理方法によるDUT50の遅延量の測定結果(発明適用)、従来の信号処理方法によるDUT50の遅延量の測定結果(従来)、DUT50の遅延量と測定装置10の遅延量の合計値、測定装置10のDLでの内部遅延量(Internal Delay)、ULでの遅延量の各項目が示されている。
【0095】
図8に示すように、従来は、測定装置10のDLでの内部遅延量を一連のパケットデータからなる試験信号を、トリガー信号を使わず、一括測定にて算出していたため、測定結果のばらつきが多かった。
【0096】
これに対し、本実施形態では、測定装置10に試験信号が入力するごとにトリガー信号を発出し、SA20にて、該トリガー信号を用いて、その都度、パケットデータの所定の単位ごとに測定装置10のDLでの内部遅延量を算出するようにしたため、ばらつきを小さく抑えることができる。その結果、算出された測定装置10のDLでの内部遅延量を加味してDUT50での遅延量Ldtを正確に求めることができ、DUT50の正当な評価を実現することできる。
【0097】
以上説明したように、本実施形態に係る信号処理装置1は、DUT50にパケットデータの所定の単位からなる試験信号を送受信する送受信部11と、送受信部11を制御する制御部15と、DUT50の遅延量Ldtを算出する遅延量算出部33cと、を備え、遅延量算出部33cは、試験信号の送受信部11における内部遅延量Lt2と、DUT50と送受信部11と間の遅延量Lt1と、をパケットデータの所定の単位ごとに算出し、DUT50と送受信部11との間の遅延量Lt1を、内部遅延量Lt2と、DUT50と送受信部11との経路に応じた物理量と、によりパケットデータの所定の単位ごとに補正し、パケットデータの所定の単位ごとのDUT50の遅延量Ldtを算出する構成である。
【0098】
この構成により、本実施形態に係る信号処理装置1は、送受信部11における内部遅延量Lt2をパケットデータの所定単位ごとに測定することで、一連のパケットデータを対象に一括に測定し算出する場合に比べて、内部遅延量Lt2を正確に算出可能となる。さらにはこの内部遅延量Lt2を用いてDUT50と送受信部11との間の遅延量Lt1を、パケットデータの所定の単位ごとに補正し、パケットデータの所定の単位ごとのDUT50の遅延量Ldtを算出することで、当該遅延量Ltdの算出精度も向上させることが可能となる。
【0099】
本実施形態に係る信号処理装置1は、外部に接続されたSA20をさらに有し、SA20は、試験信号をDUT50に送信する際に送出されるトリガー信号を受信してから、DUT50がスプリッタ12bを介して入力するまでのタイミングに応じて送受信部11の内部遅延量Lt2を検出する内部遅延量検出部15aを有し、遅延量算出部33cは、内部遅延量検出部15aが検出した内部遅延量を取得する構成を有している。
【0100】
この構成により、本実施形態に係る信号処理装置1は、送受信部11における内部遅延量Lt2を容易かつ正確に算出(取得)することができ、DUT50の遅延量Ldtの算出処理も容易に行うことが可能となる。
【0101】
本実施形態に係る信号処理装置1において、送受信部11は、IPレイヤー、PDCPレイヤー、RLCレイヤー、MACレイヤー、PHYレイヤーの順に試験信号を送信し、PHYレイヤー、MACレイヤー、RLCレイヤー、PDCPレイヤー、IPレイヤーの順で試験信号を受信し、内部遅延量Lt2は、送受信部11のPDCPレイヤーから送受信部11のPHYレイヤーまでの遅延量である構成を有している。
【0102】
この構成により、本実施形態に係る信号処理装置1は、送受信部11におけるユーザプレーンでの内部遅延量Lt2を正確に算出することができ、ひいてはDUT50の遅延量Ldtも精度よく算出することが可能となる。
【0103】
本実施形態に係る信号処理装置1において、DUT50と送受信部11との経路は、DUT50のPHYレイヤーと、送受信部11のPHYレイヤーとの経路である構成を有している。
【0104】
この構成により、本実施形態に係る信号処理装置1は、DUT50と送受信部11との間で試験信号を伝送する、例えば、光ケーブルのケーブル長などの物理量に応じて、DUT50と送受信部11との間の遅延量Lt1を正確に補正し、DUT50の遅延量Ldtを精度よく算出することができる。
【0105】
また、本実施形態に係る信号処理方法は、DUT50にパケットデータの所定の単位からなる試験信号を送受信する送受信部11と、送受信部11を制御する制御部15と、DUT50の遅延量Ldtを算出する遅延量算出部33cと、を備える信号処理装置1を用い、試験信号の送受信部11における内部遅延量Lt2と、DUT50と送受信部11と間の遅延量Lt1と、に基づいてDUT50の遅延量Ldtを算出する信号処理方法であって、DUT50にパケットデータの所定の単位からなる試験信号を送受信する送受信ステップ(S2、S3)と、試験信号の送受信部11における内部遅延量Lt2と、DUT50と送受信部と間の遅延量Lt1と、をパケットデータの所定の単位ごとに算出するステップ(S6、S7)と、DUT50と送受信部11との間の遅延量Lt1を、内部遅延量Lt2と、DUT50と送受信部との経路に応じた物理量と、によりパケットデータの所定の単位ごとに補正し、パケットデータの所定の単位ごとのDUT50の遅延量を算出する遅延量算出ステップ(S8、S9)と、を含む構成を有する。
【0106】
この構成により、本実施形態に係る信号処理方法は、送受信部11における内部遅延量Lt2をパケットデータの所定単位ごとに測定することで、一連のパケットデータを対象に一括に測定し算出する場合に比べて、内部遅延量Lt2を正確に算出可能となる。さらにはこの内部遅延量Lt2を用いてDUT50と送受信部11との間の遅延量Lt1を、パケットデータの所定の単位ごとに補正し、パケットデータの所定の単位ごとのDUT50の遅延量Ldtを算出することで、当該遅延量Ltdの算出精度も向上させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上のように、本発明に係る信号処理装置、及び信号処理方法は、送受信部の内部遅延量を正確に算出し、被試験対象の遅延量の高精度の算出を可能にするという効果を奏し、5G端末等をDUTとして遅延量を測定し、該DUTの低遅延、高信頼性に関する性能を評価する信号処理装置、及び信号処理方法全般に有用である。
【符号の説明】
【0108】
1 信号処理装置
10 測定装置
11 送受信部
15 制御部
20 SA(信号測定装置)
30 制御装置
33c 遅延量算出部
50 DUT(被試験対象)
Ldt 遅延量
Lt1 遅延量
Lt2 内部遅延量