IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 清水建設株式会社の特許一覧

特開2023-160113パネル支持構造、およびパネル支持具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160113
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】パネル支持構造、およびパネル支持具
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/96 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
E04B2/96
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070217
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】松尾 隆士
【テーマコード(参考)】
2E002
【Fターム(参考)】
2E002NA01
2E002NA04
2E002NB02
2E002NC01
2E002PA01
2E002WA19
2E002XA08
2E002XA18
(57)【要約】
【課題】パネルを2辺で支持しながら、風圧に因るパネルの変形を抑えることができるパネル支持構造、およびパネル支持具を提供する。
【解決手段】パネル支持構造1は、カーテンウォールを構成する平面視略矩形のパネル3と、前記パネルの平行する2辺の縁部に略全長にわたって設けられ、前記パネルを支持する一対のパネル支持具2と、前記パネルと前記パネル支持具との間に設けられ、前記パネルと前記パネル支持具とを接合するシーラント4と、を備え、前記パネルの厚さ方向における前記シーラントの厚さは、外端より内端の方が厚く、前記シーラントの前記外端と前記内端との間の長さは、前記シーラントの前記外端の厚さおよび前記シーラントの前記内端の厚さより長い。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーテンウォールを構成する平面視略矩形のパネルと、
前記パネルの平行する2辺の縁部に略全長にわたって設けられ、前記パネルを支持する一対のパネル支持具と、
前記パネルと前記パネル支持具との間に設けられ、前記パネルと前記パネル支持具とを接合するシーラントと、を備え、
前記パネルの厚さ方向における前記シーラントの厚さは、外端より内端の方が厚く、
前記シーラントの前記外端と前記内端との間の長さは、前記シーラントの前記外端の厚さおよび前記シーラントの前記内端の厚さより長いことを特徴とするパネル支持構造。
【請求項2】
前記シーラントの前記外端と前記内端との間の長さbが18mmより大きい場合、前記シーラントは、前記シーラントの前記外端の厚さaおよび前記シーラントの前記内端の厚さaと、前記長さbとの関係がb/3<a<a<bの関係を満たす
請求項1に記載のパネル支持構造。
【請求項3】
前記シーラントの厚さ方向に沿う断面形状が台形である
請求項1または2に記載のパネル支持構造。
【請求項4】
前記パネル支持具は、前記シーラントとの接着部を備え、
前記接着部の外縁から内縁に向かって傾斜する傾斜面を有し、
前記傾斜面が前記パネルの被支持面に対して傾斜して配置されることにより、前記シーラントの前記内端の厚さが前記外端の厚さより厚く形成される
請求項1または2に記載のパネル支持構造。
【請求項5】
前記パネル支持具は、前記シーラントとの接着部を備え、
前記接着部の外縁と内縁との間に厚さ方向の寸法が異なる段部を有し、
前記段部によって、前記シーラントの前記内端の厚さが前記外端の厚さより厚く形成される
請求項1または2に記載のパネル支持構造。
【請求項6】
カーテンウォールを構成する平面視略矩形のパネルの平行する2辺の縁部に略全長にわたって設けられ、シーラントにより接合されて前記パネルを支持する支持部材であって、
前記パネルの支持構造物への結合部と、
前記シーラントにより接合される接着部と、を備え、
前記接着部の外縁の厚さが内縁の厚さより厚いことを特徴とするパネル支持具。
【請求項7】
前記接着部の前記外縁から前記内縁に向かって傾斜する傾斜面を有し、
前記接着部の前記外縁の厚さが、前記内縁の厚さより厚く形成されている
請求項6に記載のパネル支持具。
【請求項8】
前記接着部の前記外縁と前記内縁との間に厚さ方向の寸法が異なる段部を有し、
前記外縁と前記段部との間の前記接着部の厚さが、前記段部と前記内縁との間の前記接着部の厚さより厚く形成されている
請求項6に記載のパネル支持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パネル支持構造、およびパネル支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィス、ホテル、集合住宅等の建物の外壁をガラス等のパネルで構成するカーテンウォール構法が知られている。例えば、特許文献1には、ガラスと金属方立てをシーラントで接着させて接合することで支持する構法であるSSG(Structural Sealant Glazing)構法を用いたカーテンウォールユニットが開示されている。従来、SSG構法では、ガラスパネルの4辺を支持する方法が一般的であったが、近年、外装デザインに透明性が求められる傾向があり、ガラスパネルを上下辺あるいは左右辺の2辺で支持する構造が検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-179987号公報
【特許文献2】特開2018-172918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、2辺支持のSSG構法では、他の2辺が支持されないため、風を受けた時のガラスパネルの変形および応力が4辺支持の構造に比べて大きくなり、風圧に対する対策が課題となっていた。
【0005】
上記事情を踏まえ、本発明は、パネルを2辺で支持しながら、風圧に因るパネルの変形を抑えることができるパネル支持構造、およびパネル支持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るにパネル支持構造は、カーテンウォールを構成する平面視略矩形のパネルと、前記パネルの平行する2辺の縁部に略全長にわたって設けられ、前記パネルを支持する一対の支持部材と、前記パネルと前記パネル支持具との間に設けられ、前記パネルと前記パネル支持具とを接合するシーラントと、を備え、前記パネルの厚さ方向における前記シーラントの厚さは、外端より内端の方が厚く、前記シーラントの前記外端と前記内端との間の長さは、前記シーラントの前記外端の厚さおよび前記シーラントの前記内端の厚さより長いことを特徴とする。
【0007】
このように構成されたパネル支持構造によれば、シーラントの外端の厚さより内端の厚さの方が厚いことによって、シーラントの最大せん断応力が発生する領域を低減できる。このため、風圧等によってパネルに対して厚さ方向の力が加わったときにパネルに生じる最大せん断応力を、シーラントで緩和する効果が向上し、パネルの変形を効果的に吸収できる。また、パネルを2辺で支持する構造であっても、風圧に因るパネルの変形を抑えることができる。さらに、従来のSSG構法で使用するシーラントの使用量と同等でありながら、従来に比べてパネルの風圧による変形を効果的に吸収でき、コストメリットの高いパネル支持構造を提供できる。
【0008】
本発明に係るにパネル支持構造では、前記シーラントの前記外端と前記内端との間の長さbが18mmより大きい場合、前記シーラントは、前記シーラントの前記外端の厚さaおよび前記シーラントの前記内端の厚さaと、前記長さbとの関係がb/3<a<a<bの関係を満たすように構成してもよい。
【0009】
このように構成されたパネル支持構造によれば、シーラントの外端と内端との間の長さbが18mmより大きい場合、シーラントの外端の厚さaおよびシーラントの内端の厚さaと、長さbとの関係がb/3<a<a<bの関係を満たすようにシーラントを備えることによって、風圧等によってパネルに対して厚さ方向の力が加わったときのパネルの応力集中を緩和できる。したがって、2辺支持のSSG構法において、シーラントの量を増やすことなく、パネルを安定的に支持できる。
【0010】
本発明に係るパネル支持構造では、前記シーラントの厚さ方向に沿う断面形状が台形であってもよい。
【0011】
このように構成されたパネル支持構造によれば、シーラントの厚さ方向に沿う断面形状が台形であることによって、風圧等によってパネルに対して厚さ方向の力が加わったときのパネルの応力集中を緩和できる。さらに、シーラントの厚さ方向に沿う断面形状が台形であることによって、応力集中を緩和できるシーラントを容易に形成できる。
【0012】
本発明に係るパネル支持構造では、前記パネル支持具は、前記シーラントとの接着部を備え、前記接着部の外縁から内縁に向かって傾斜する傾斜面を有し、前記傾斜面が前記パネルの被支持面に対して傾斜して配置されることにより、前記シーラントの前記内端の厚さが前記外端の厚さより厚く形成されてもよい。
【0013】
このように構成されたパネル支持構造によれば、接着部に傾斜面を有する結果、パネル支持具をパネルの被支持面に対向配置させて、パネル支持具とパネルとの間にシーラントを設けることにより、外端より内端の方が厚いシーラントを容易に形成できる。
【0014】
本発明に係るパネル支持構造では、前記パネル支持具は、前記シーラントとの接着部を備え、前記接着部の外縁と内縁との間に厚さ方向の寸法が異なる段部を有し、前記段部によって、前記シーラントの前記内端の厚さが前記外端の厚さより厚く形成されてもよい。
【0015】
上記パネル支持構造によれば、接着部の外縁と内縁との間に厚さ方向の寸法が異なる段部を有するため、被支持面に対向配置させて、パネル支持具とパネルとの間にシーラントを設けることにより、外端より内端の方が厚いシーラントを容易に形成できる。また、接着部に段部を有する結果、パネルとパネル支持具との間にシーラントを設けた状態で、パネル支持具をパネル側に押し込む際に横滑りを防ぎ、所望のシーラントを容易に形成できる。
【0016】
本発明に係るパネル支持具は、カーテンウォールを構成する平面視略矩形のパネルの平行する2辺の縁部に略全長にわたって設けられ、シーラントにより接合されて前記パネルを支持する一対の支持部材であって、前記パネルの支持構造物への結合部と、前記シーラントにより接合される接着部と、を備え、前記接着部の外縁の厚さが内縁の厚さより厚いことを特徴とする。
【0017】
上記パネル支持具によれば、接着部の外縁の厚さが内縁の厚さより厚いため、パネル支持具をパネルの被支持面に対向配置させて、パネル支持具とパネルとの間にシーラントを設けることにより、外端より内端の方が厚いシーラントを容易に形成できる。
【0018】
本発明に係るパネル支持具は、前記接着部の前記外縁から前記内縁に向かって傾斜する傾斜面を有し、前記接着部の前記外縁の厚さが、前記内縁の厚さより厚く形成されてもよい。
【0019】
上記パネル支持具によれば、接着部に傾斜面を有する結果、パネル支持具をパネルの被支持面に対向配置させて、パネル支持具とパネルとの間にシーラントを設けることにより、外端より内端の方が厚いシーラントを容易に形成できる。
【0020】
本発明に係るパネル支持具は、前記接着部の前記外縁と前記内縁との間に厚さ方向の寸法が異なる段部を有し、前記外縁と前記段部との間の前記接着部の厚さが、前記段部と前記内縁との間の前記接着部の厚さより厚く形成されていてもよい。
【0021】
上記パネル支持具によれば、接着部の外縁と内縁との間に厚さ方向の寸法が異なる段部を有するため、被支持面に対向配置させて、パネル支持具とパネルとの間にシーラントを設けることにより、外端より内端の方が厚いシーラントを容易に形成できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、パネルを2辺で支持しながら、風圧に因るパネルの変形を抑えることができるパネル支持構造、およびパネル支持具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係るパネル支持構造の使用例を示す正面図である。
図2図1に示すA-A断面図である。
図3図2に示すB-B断面図である。
図4】パネル支持具およびパネル支持構造の変形例を示す断面図である。
図5】実施例および比較例に用いるパネルの風圧に対する変形量の分布図である。
図6A】実施例1のシーラントのせん断応力の分布図である。
図6B】実施例1のシーラントの要素分解図である。
図7A】実施例2のシーラントのせん断応力の分布図である。
図7B】実施例2のシーラントの要素分解図である。
図8A】実施例3のシーラントのせん断応力の分布図である。
図8B】実施例3のシーラントの要素分解図である。
図9A】比較例1のシーラントのせん断応力の分布図である。
図9B】比較例1のシーラントの要素分解図である。
図10A】比較例2のシーラントのせん断応力の分布図である。
図10B】比較例2のシーラントの要素分解図である。
図11】シーラントの解析に用いる指標を示す模式図であり、比較例1の断面図である。
図12】シーラントの解析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態に係るパネル支持具およびパネル支持構造について、図1から図3を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るパネル支持構造1の使用例を示す正面図である。パネル支持構造1は、例えばカーテンウォールを構成するガラスパネルの支持に用いられる。カーテンウォールは、複数のパネル3が並べられて建物の外壁を構成する。パネル3は、金属製支持構造物がパネル支持具2に連結されることによって、パネル支持具2を介して、支持構造物に支持される。パネル3は、フレームを備えず、かつ、サッシを用いることなく、パネル3の外縁部に取り付けられたパネル支持具2が公知の金属製支持構造物に固定されて支持される。パネル支持構造1は、カーテンウォールを構成する平面視略矩形のパネル3の平行する2辺を一対のパネル支持具2,2で支持する2辺支持構造である。図2および図3に示すように、パネル3とパネル支持具2,2とは、パネル3とパネル支持具2,2との間に設けられたシーラント4により接合される。
【0025】
パネル3は、例えば、強化ガラス製、樹脂製の公知のカーテンウォール用パネルである。以下の説明において、パネルの厚さ方向をY方向と記載し、Y方向のうち、パネル支持具2が取り付けられる面側をY1方向と記載し、Y1方向の反対側をY2方向と記載する。カーテンウォールでは、Y1方向が室外側であり、Y2方向が室内側である。パネル3の厚さ方向Yの二面のうち、パネル支持具2が接合され、支持構造物に支持されるY1方向側の面を被支持面31と記載し、被支持面31と反対側の面を外装面32と記載する。
【0026】
一対のパネル支持具2,2はパネル3の平行する2辺の縁部に略全長にわたって設けられ、パネル3を支持する長尺な支持部材である。パネル支持具2は、例えば、アルミニウム型材である。図2は、図1のA-A断面図であり、図3は、図1のB-B断面図である。図3に示すように、パネル支持具2は、結合部21と接着部22とを備える。結合部21は、例えば、略平板形状を有する。結合部21と接着部22とは、首部23で接続されている。接着部22は、例えば、Y方向における結合部21側の第一端辺27が結合部21と略平行な辺を有する。接着部22のシーラント4に接合される側の辺を第二端辺24と称する。第二端辺24は、第二端辺24の外縁25から内縁26に向かって傾斜する傾斜面241を有する。接着部22は、外縁25側の厚さT1が内縁26側の厚さT2より厚くなるように傾斜している。接着部22は、例えば、第一端辺27側の内角が略直角の直角台形の中空ホローである。結合部21および接着部22のX方向の長さbは略等しい。パネル支持具2は、全長にわたって図3に示す断面形状を有している。パネル支持具2は、例えば、ステンレス鋼、チタン、アルミニウム等の金属や、これらを含む合金製である。結合部21は、図示例の平板形状の例を示しているが、結合部21の形状は図示例に限定されない。首部23は必須の構成ではなく、形状も図示例に限定されない。
【0027】
シーラント4は、例えば、透明なシリコーン系シーリング材からなる。シーラント4は、厚さ方向に沿う断面形状が略台形を有する。シーラント4の外端43と内端44との間のX方向の長さbは、シーラント4の外端43の厚さaおよび内端44の厚さaより長い。長さbは、例えば6mm以上である。Y方向(厚さ方向)におけるシーラント4の外端43の厚さaより、内端44の厚さaの方が厚い。シーラント4のパネル支持具2の接着部22との接着面42は傾斜している。シーラント4のY方向の断面形状は、被支持面31側の辺41側の両端部が略直角な直角台形である。
【0028】
シーラント4のX方向の長さbが例えば、18mmより大きい場合、外端43の厚さaおよび内端44の厚さaと、長さbとの関係がb/3<a<a<bの関係を満たすようにシーラント4が形成されると、パネル3が風圧を受けたときの応力集中を緩和する効果が十分に発揮される。すなわち、長さbが例えば、18mmより大きい場合、シーラント4の外端43の厚さaは、長さbに対してb/3より大きいことが好ましい。シーラント4の断面形状が台形の場合、b/3<a<a<bであると、構造シーラントの国際規格(ISO18278-2)を満たす。長さbが例えば、18mmより大きい場合に、外端43の厚さaが、b/3未満であると、厚さaと長さbの寸法比が大きくなり、シーラント4の厚さが薄くなり、応力集中を緩和する効果が十分に発揮できない。
【0029】
パネル支持構造1は、接着部22のY方向の厚さは、外縁25側の厚さT1の方が内縁26側の厚さT2より厚い直角台形を有し、シーラント4のY方向の厚さは、外端43のaおよび内端44の厚さaの方が厚い直角台形の断面形状を有する。したがって、第一端辺27とパネル3の被支持面31は平行である。結合部21もパネル3の被支持面31と平行である。パネル支持具2の接着部22に傾斜面241を有することによって、パネル支持具2の傾斜面241をパネル3の被支持面31に対向配置させ、パネル支持具2の外縁25とパネル3の端部とを揃えてX方向に配置し、シーラント材を設けると、上述の通り、断面形状が台形のシーラント4が形成される。
【0030】
シーラント4の外端43側の厚さaより内端44の厚さaの方が厚いと、風圧等によりパネル3に被支持面31に対してY方向に力を受けると、パネル3が撓み、パネル3のX方向(幅方向)の略中央部が最も変形する。これに対して、内端44の厚さaが厚いことによって、内端44側の耐荷重性を高めることができる。この結果、パネル3に厚さ方向の力が掛かったときのパネル3の変形量を低減し、パネル3の応力集中を緩和させることができる。
【0031】
上記実施形態に係るパネル支持構造1およびパネル支持具2によれば、シーラントの厚さ方向に沿う断面形状が台形であることによって、風圧等によってパネルに対して厚さ方向の力が加わったときのパネルの応力集中を緩和できる。さらに、シーラントの厚さ方向に沿う断面形状が台形であることによって、応力集中を緩和できるシーラントを容易に形成できる。
【0032】
上記実施形態に係るパネル支持構造1およびパネル支持具2によれば、シーラント4の外端43の厚さaより内端44の厚さaの方が厚いことによって、シーラント4の最大せん断応力が発生する領域を低減できる。このため、風圧等によってパネル3に対して厚さ方向の力が加わったときにパネル3に生じる最大せん断応力を、シーラント4で緩和する効果が向上し、パネルの変形を効果的に吸収できる。また、パネルを2辺で支持する構造であっても、風圧に因るパネル3の変形を抑えることができる。さらに、従来のSSG構法で使用するシーラントの使用量と同等でありながら、従来に比べてパネル3の風圧による変形を効果的に吸収でき、コストメリットの高いパネル支持構造を提供できる。
【0033】
上記実施形態に係るパネル支持構造1によれば、シーラント4の外端43と内端44との間のX方向の長さbが18mmより大きい場合、シーラントの外端の厚さaおよびシーラントの内端の厚さaと、長さbとの関係がb/3<a<a<bの関係を満たすシーラント4を備えることによって、風圧等によってパネル3に対して厚さ方向の力が加わったときのパネル3の応力集中を緩和できる。したがって、2辺支持のSSG構法において、シーラント4の量を増やすことなく、パネル3を安定的に支持できる。
【0034】
上記実施形態に係るパネル支持構造1およびパネル支持具2によれば、シーラント4の厚さ方向に沿う断面形状が台形であることによって、風圧等によってパネル3に対して厚さ方向の力が加わったときのパネル3の応力集中を緩和できる。さらに、シーラント4の厚さ方向に沿う断面形状が台形であることによって、応力集中を緩和できるシーラント4を容易に形成できる。
【0035】
上記実施形態に係るパネル支持具2によれば、接着部22に傾斜面241を有する結果、パネル支持具2をパネル3の被支持面31に対向配置させて、パネル支持具2とパネル3との間にシーラントを設けることにより、外端43より内端44の方が厚いシーラント4を容易に形成できる。
【0036】
本実施形態に係るパネル支持構造1は、シーラント4の厚さ方向に沿う断面形状が台形の例に限定されず、外端43の厚さaより内端44の厚さaの方が厚ければ、応力集中を緩和する効果が得られる。図4にパネル支持具2およびパネル支持構造1の変形例の断面図である。図4に示すように、断面形状がステップ形状のシーラント4Aであっても同様の効果を奏する。
【0037】
図4に示すように、パネル支持具2Aは、接着部22Aの断面形状が図1に示す実施形態と異なる。パネル支持具2Aは、段部28を有する。シーラント4の内端44の厚さaが外端43の厚さaより厚く形成される。シーラント4は、厚さ方向に沿う断面形状がステップ形状を有する。
【0038】
断面形状がステップ形状のシーラント4の場合、X方向における段部28の位置は特に限定されない。例えば、従来の断面四角形のシーラントと同等のシーラントの量でシーラント4を形成する場合、X方向における段部28の位置は、長さbの略中央部に設定し、かつシーラント4の厚さa、aで相殺するように調整する。例えば、シーラントの量を従来例と同等に抑えるという制約がない場合、X方向における段部28の位置を変えることによって、応力集中を緩和する効果をより効果的に発揮できる。
【0039】
上記パネル支持構造1によれば、接着部22の外縁25と内縁26との間に厚さ方向の寸法が異なる段部28有するため、被支持面31にパネル支持具2を対向配置させて、パネル支持具2とパネル3との間にシーラント4を設けることにより、外端43より内端44の方が厚いシーラントを容易に形成できる。また、接着部22に段部28を有する結果、パネル3とパネル支持具2との間にシーラント4を設けた状態で、パネル支持具2をパネル3側に押し込む際に横滑りを防ぎ、所望のシーラントを容易に形成できる。
【0040】
本実施形態に係るパネル支持構造の効果を検証するため、FEM(有限要素法)解析を実施した。パネル3として、ガラス板厚19mm、ガラス幅Gw=2140mmを用い、図5に示すように、パネル3の左右辺を平板形状のパネル支持具20で支持する2辺支持SSG構法の構造体を設定した。パネル3の上下辺はフリー辺である。シーラント4は、表1に示すように、断面形状が異なる実施例1~実施例3および比較例1,2を用いた。シーラント4の量は各例で同じである。シーラント4のX方向の長さbは各例で同じである。各例について、ガラス風荷重として、-3700Paの力を加え、図5に示すように、パネル3のX方向の中央部の最大せん断応力が24.207MPaが生じる条件下で、シーラント4に発生する応力を求めた。図6A図7A図8Aおよび図9Aに、各例のシーラント4に発生した応力の分布図を示す。図6B図7B図8Bおよび図9Bに、各例のシーラント4のFEM分析の要素分解図(メッシュ分割図)を示す。
【0041】
(実施例1、実施例2)
実施例1、2は、平板形状のアルミニウム材のパネル支持具20とパネル3の間に図3に示す台形の断面形状のシーラント4を設けた。シーラント4は、内端44の厚さaが外端43の厚さaより大きく、かつ、厚さa、aがシーラント4のX方向の長さbより小さい台形で形成した。実施例1と実施例2とはシーラント4の断面寸法が異なる例である。実施例2より実施例1の方が厚さaが厚い例である。シーラント4の量が同じであるため、厚さa、aの寸法差が大きく、パネル支持具20の傾斜角度が大きい。
【0042】
(実施例3)
実施例3は、実施例1,2と同じ板厚のアルミニウム材に段部28を有する型材からなるパネル支持具20を用いた。実施例3のシーラント4は、図4に示すステップ形の断面形状で形成した。シーラント4は、段部28を境に厚さが変わり、内端44の厚さaが外端43の厚さaより大きく、かつ、厚さa、aがシーラント4のX方向の長さbより小さい。
【0043】
(比較例1)
比較例1は、実施例1,2と同じ平板形状のアルミニウム材のパネル支持具20とパネル3の間に図11に示すように矩形の断面形状を有するシーラント4を設けた。シーラント4の厚さa、aは同じであり、かつ、厚さa、aがシーラント4のX方向の長さbより小さい矩形で形成した。
【0044】
(比較例2)
比較例2は、平板形状のアルミニウム材のパネル支持具20とパネル3の間に台形の断面形状のシーラント4を設けた。シーラント4は、外端43の厚さaが内端44の厚さaより大きく、かつ、厚さa、aがシーラント4のX方向の長さbより小さい台形で形成した。
【0045】
表1および図12に解析結果を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
比較例1の場合、最大せん断応力が0.257MPaとなった。実施例1の最大せん断応力は0.239MPaとなり、比較例1に対して7%程度低減できることがわかった。また、図6Aに示すように、一般的な構造シーラントの設計許容応力0.14MPa以上となる領域も図9Aに示す比較例1に比べて、実施例1の方が小さくなることがわかった。
【0048】
実施例2の最大せん断応力は0.248MPaとなり、比較例1に対して4%程度低減できることが分かった。さらに、図7Aに示すように、実施例2も、最大せん断応力が0.14MPa以上となる領域が、比較例1に比べて小さくなることが分かった。
【0049】
実施例3では、発生する最大せん断応力が、比較例1に比べて12%程度低減できることがわかった。また、図8Aに示すように、最大せん断応力が0.14MPa以上となる領域が、比較例1に比べて小さくなることが分かった。
【0050】
図12は、解析結果に基づき、断面形状が台形のシーラント4の寸法比と、最大せん断応力との関係を表すグラフである。図12に示すように、内端44の厚さaが外端43の厚さaより大きい方が最大せん断応力が小さいことが分かった。したがって、外端43より内端44の方が厚いシーラント4は最大せん断応力を抑える効果があることが分かった。また、ステップ形状のシーラント4の場合、台形のシーラント4と内端44の厚さaと外端43の厚さaの比が同等であっても、最大せん断応力を抑える効果が高いことが分かった。
【0051】
比較例2は、最大せん断応力が0.284MPaと大きい値を示し、比較例1に対して11%程度増加することが分かった。また、図10Aに示すように、比較例2では、最大せん断応力が0.14MPa以上となる領域が、比較例1に比べて大きくなることが分かった。このため、シーラント4の断面形状が台形であっても、外端43の厚さa1が内端44の厚さaより大きい台形であると、パネル3の応力集中を緩和する効果が得られないことが分かった。
【0052】
以上の結果によれば、外端43の厚さaより内端44の厚さaが大きいシーラント4を用いることによって、シーラント4の最大せん断応力が0.14MPa以上となる領域を小さく抑えることができる。この結果、パネル3の応力集中に対するシーラント4の対応強度を高めることができ、パネル3の応力集中を緩和する効果が得られると言える。
【0053】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成要素の組み合わせを変えたり、各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。以下にいくつか変更を例示するが、これらはすべてではなく、それ以外の変更も可能である。また、これらの変更が2以上適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0054】
1 パネル支持構造
2、2A パネル支持具
3 パネル
4、4A シーラント
21 結合部
22、22A 接着部
25 外縁
26 内縁
28 段部
43 外端
44 内端
241 傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12