(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160117
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】工具
(51)【国際特許分類】
B23B 51/04 20060101AFI20231026BHJP
B23B 51/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
B23B51/04 S
B23B51/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070223
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000152527
【氏名又は名称】日進工具株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 洋介
(72)【発明者】
【氏名】古木 辰也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩文
【テーマコード(参考)】
3C037
【Fターム(参考)】
3C037AA05
3C037BB01
3C037BB08
3C037BB11
3C037BB15
3C037FF06
3C037FF08
(57)【要約】
【課題】高硬度である素材から円柱状の加工品を高い加工能率で加工できる工具を提供する。
【解決手段】工具1は、回転軸Zに沿って延びるシャンク2と、シャンク2と一体的に結合された中空円筒状のボディ3と、ボディ3の端部31にボディ3と一体的に結合された刃部4と、を備えている。刃部4は、先端にダイヤモンド焼結体5を有している。ダイヤモンド焼結体5は、外周面に設けられて外方に向けて尖る外周切刃51と、内周面に設けられて内方に向けて尖る内周切刃52と、先端面に設けられて先方に向けて尖る底切刃53と、を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に沿って延びるシャンクと、前記シャンクと一体的に結合された中空円筒状のボディと、
前記ボディの端部に前記ボディと一体的に結合された刃部と、を備え、
前記刃部は、先端にダイヤモンド焼結体を有し、
前記ダイヤモンド焼結体は、外周面に設けられて外方に向けて尖る外周切刃と、内周面に設けられて内方に向けて尖る内周切刃と、先端面に設けられて先方に向けて尖る底切刃と、を有する
工具。
【請求項2】
前記外周切刃と、前記内周切刃と、前記底切刃とは、連続している
請求項1に記載の工具。
【請求項3】
前記外周切刃、前記内周切刃及び前記底切刃は、それぞれ、回転方向に沿って均等な間隔で複数配置されている
請求項1又は請求項2に記載の工具。
【請求項4】
前記外周面は、前記外周切刃から内方に窪む外周逃溝を有し、
前記内周面は、前記内周切刃から外方に窪む内周逃溝を有し、
前記先端面は、前記底切刃から後方に窪む底逃溝を有する
請求項1又は請求項2に記載の工具。
【請求項5】
前記外周逃溝は、前記外周切刃による外周仕上面を基準として、前記外周切刃から正転側に傾斜する外周正逃面と、前記外周切刃から逆転側に傾斜する外周逆逃面とを有し、
前記内周逃溝は、前記内周切刃による内周仕上面を基準として、前記内周切刃から正転側に傾斜する内周正逃面と、前記内周切刃から逆転側に傾斜する内周逆逃面とを有し、
前記外周仕上面と前記外周正逃面との成す外周正逃角と、前記外周仕上面と前記外周逆逃面との成す外周逆逃角とは、等しく、
前記内周仕上面と前記内周正逃面との成す内周正逃角と、前記内周仕上面と前記内周逆逃面との成す内周逆逃角とは、等しい
請求項4に記載の工具。
【請求項6】
前記底逃溝は、前記底切刃による底仕上面を基準として、前記底切刃から正転側に傾斜する底正逃面と、前記底切刃から逆転側に傾斜する底逆逃面とを有し、
前記底仕上面と前記底正逃面との成す底正逃角と、前記底仕上面と前記底逆逃面との成す底逆逃角とは、等しい
請求項5に記載の工具。
【請求項7】
前記刃部は、前記ダイヤモンド焼結体及び前記ボディのそれぞれに対して一体的に結合される裏打超硬部を有する
請求項1又は請求項2に記載の工具。
【請求項8】
前記裏打超硬部の硬度は、前記ダイヤモンド焼結体の硬度より低く、前記ボディの硬度より高い
請求項7に記載の工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高硬度である素材の超硬合金製や、化学蒸着法で製造された炭化ケイ素製(CVD-SiC)などの円盤状素材から、円柱状の加工品を複数成形し、例えば、レンズ成形用の金型の材料として用いる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、超硬合金製や、CVD-SiC製の円盤状の高硬度である素材から円柱状の加工品を複数成形する場合は、円盤状の素材を格子状に切断して得られた複数の角柱を、それぞれ円柱状に丸め加工していた。そのため、加工能率に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、高硬度である素材から円柱状の加工品を高い加工能率で加工できる工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決する手段は、次のとおりである。
(1)本発明の一態様に係る工具は、回転軸に沿って延びるシャンクと、前記シャンクと一体的に結合された中空円筒状のボディと、前記ボディの端部に前記ボディと一体的に結合された刃部と、を備え、前記刃部は、先端にダイヤモンド焼結体を有し、前記ダイヤモンド焼結体は、外周面に設けられて外方に向けて尖る外周切刃と、内周面に設けられて内方に向けて尖る内周切刃と、先端面に設けられて先方に向けて尖る底切刃と、を有する。
(2)上記(1)において、前記外周切刃と、前記内周切刃と、前記底切刃とは、連続していてよい。
(3)上記(1)又は(2)において、前記外周切刃、前記内周切刃及び前記底切刃は、それぞれ、回転方向に沿って均等な間隔で複数配置されていてよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記外周面は、前記外周切刃から内方に窪む外周逃溝を有し、前記内周面は、前記内周切刃から外方に窪む内周逃溝を有し、前記先端面は、前記底切刃から後方に窪む底逃溝を有してよい。
(5)上記(4)において、前記外周逃溝は、前記外周切刃による外周仕上面を基準として、前記外周切刃から正転側に傾斜する外周正逃面と、前記外周切刃から逆転側に傾斜する外周逆逃面とを有し、前記内周逃溝は、前記内周切刃による内周仕上面を基準として、前記内周切刃から正転側に傾斜する内周正逃面と、前記内周切刃から逆転側に傾斜する内周逆逃面とを有し、前記外周仕上面と前記外周正逃面との成す外周正逃角と、前記外周仕上面と前記外周逆逃面との成す外周逆逃角とは、等しく、前記内周仕上面と前記内周正逃面との成す内周正逃角と、前記内周仕上面と前記内周逆逃面との成す内周逆逃角とは、等しくてよい。
(6)上記(5)において、前記底逃溝は、前記底切刃による底仕上面を基準として、前記底切刃から正転側に傾斜する底正逃面と、前記底切刃から逆転側に傾斜する底逆逃面とを有し、前記底仕上面と前記底正逃面との成す底正逃角と、前記底仕上面と前記底逆逃面との成す底逆逃角とは、等しくてよい。
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記刃部は、前記ダイヤモンド焼結体及び前記ボディのそれぞれに対して一体的に結合される裏打超硬部を有してよい。
(8)上記(7)において、前記裏打超硬部の硬度は、前記ダイヤモンド焼結体の硬度より低く、前記ボディの硬度より高くてよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高硬度である素材から円柱状の加工品を高い加工能率で加工できる工具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る工具を説明する斜視図である。
【
図6】第2実施形態に係る工具を説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、図面を参照し、第1実施形態に係る工具1を説明する。
図1は、第1実施形態に係る工具1を説明する斜視図である。
図2は、第1実施形態に係る工具1の平面図である。
図3は、第1実施形態に係る工具1の正面図である。
図4は、
図2におけるA部詳細図である。
図5は、
図3におけるB部詳細図である。なお、以下、特に説明のない限り、回転軸Zに沿って工具1の刃部4に向かう方向を先方といい、工具1のシャンク2に向かう方向を後方という。
図2に示すように、工具1の平面視において、回転軸Zを中心として反時計回りに回転する方向を正転方向といい、時計回りに回転する方向を逆転方向という。回転軸Zから離れる方向を外方といい、回転軸Zに近づく方向を内方という。
【0010】
図1に示すように、第1実施形態に係る工具1は、いわゆる、ホールソー又はコアドリルとも呼ばれるものであり、被加工品である素材を円形状に切断して、その切断部より中心側にあるコアを円柱状に切り抜くものである。
詳細には、工具1は、回転軸Zに沿って延びるシャンク2と、シャンク2と一体的に結合された中空円筒状のボディ3と、ボディ3の端部31にボディ3と一体的に結合された刃部4と、を備えている。そして、刃部4は、先端にダイヤモンド焼結体(PCDともいう。)5を有している。これにより、CVD-SiCのような高い硬度を有する材料で形成された素材から、円柱状の加工品を成形できる。
ここで、
図4及び
図5に示すように、ダイヤモンド焼結体5は、外周面5Eに設けられて外方に向けて尖る外周切刃51と、内周面5Jに設けられて内方に向けて尖る内周切刃52と、先端面5Tに設けられて先方に向けて尖る底切刃53と、を有している。このように、外周切刃51、内周切刃52及び底切刃53を、ダイヤモンド焼結体5に設けたので、CVD-SiCのような高い硬度を有する材料で形成された円盤状の素材から、直接的に、円柱状に切り抜く加工をすることできる。したがって、円盤状の素材から格子状に切断して角柱を形成する工程を省くことができる。よって、高硬度である素材から円柱状の加工品を高い加工能率で加工できる。
【0011】
シャンク2は、不図示の回転機械のチャックに把持されて固定される柄の部分である。シャンク2は、工具1の回転軸Zに沿って延びる円柱状の棒状体である。シャンク2は、ボディ3に対して一体的に形成されていてよく、ボディ3に対して、螺合、溶接、圧接等の適宜の手段で結合されていてもよい。シャンク2の外径寸法は、ボディ3の外径寸法より小さくてよい。シャンク2の材質は、例えば、金属等を切削する工具に用いられる炭素工具鋼(JISG4401-2006)であってよい。シャンク2の材質は、ボディ3の材質と同じであってよい。シャンク2は冷却用のクーラントを供給するための円柱状中心に貫通穴がある中空円筒状でもよい。
【0012】
ボディ3は、シャンク2に結合される。ボディ3は、工具1の回転軸Zに沿って延びる中空円筒状の部分である。ボディ3は、例えば、20mmの内径を有している。ボディ3は、シャンク2に対して一体的に形成されていてよく、シャンク2に対して、螺合、溶接、圧接等の適宜の手段で結合されていてもよい。ボディ3の内径寸法又は外径寸法は、シャンク2の外径寸法より大きくてよい。ボディ3の材質は、例えば、金属等を切削する工具に用いられる炭素工具鋼(JISG4401-2006)であってよい。ボディ3の材質は、シャンク2の材質と同じであってよい。
【0013】
ボディ3の端部31には、ボディ3と結合された刃部4が設けられている。なお、ボディ3と刃部4とは、別部材をろう付け等により結合して一体的に形成されていてもよい。
ボディ3の端部31は、刃部4に形成された係止突部4Pと噛み合う嵌合溝3Qを有している。これにより、ろう付けによる結合力に機械的な抵抗力が加わるので、ボディ3と刃部4との境界において工具1の捻じれ方向に作用するせん断力への抵抗性を高めることができる。
【0014】
刃部4は、工具1の回転軸Zを中心とする円環状のものである。刃部4は、ボディ3と同程度の内径及び外径を有している。
刃部4は、ボディ3に対して一体的に形成されていてよく、ボディ3に対して、螺合、溶接、圧接等の適宜の手段で結合されていてもよい。刃部4は、例えば、ろう付けにより、ボディ3に結合されている。
刃部4の外径部分の最大寸法(回転軸Zを中心に回転する外周切刃51の軌跡となる外周仕上面S1が形成する最大寸法)は、ボディ3の外径寸法より大きい。刃部4の内径部分の最小寸法(回転軸Zを中心に回転する内周切刃52の軌跡となる内周仕上面S2が形成する最小寸法)は、ボディ3の内径寸法より小さい。
また、外周切刃51の外周逃溝G1の最も深い部分である最小径部の回転軌跡S11は、ボディ3の外径寸法よりわずかに大きいことが好ましい。内周切刃52の内周逃溝G2の最も深い部分である最大径部の回転軌跡S21は、ボディ3の内径寸法よりわずかに小さいことが好ましい。これにより、ボディ3の断面の全てを有効に利用して、ボディ3から刃部4にトルクを確実に伝えることができる。また、これにより、刃部4による仕上面とボディ3との間に生じる隙間から、切削により生じる切粉を刃部4からボディ3に向けて有効に逃がすことができる。
【0015】
刃部4の先端に設けられたダイヤモンド焼結体5は、外周切刃51と、内周切刃52と、底切刃53と、を有している。
図1から
図5に示すように、外周切刃51は、回転軸Zに沿って直線状に延びている。内周切刃52は、回転軸Zに沿って直線状に延びている。底切刃53は、回転軸Zから外方に向けて放射状に直線状に延びている。
ここで、刃部4に形成された外周切刃51と、内周切刃52と、底切刃53とは、連続している。
すなわち、外周面5Eから先端面5Tを経て内周面5Jに至るまで、外周切刃51の刃先が形成する直線と、内周切刃52の刃先が形成する直線と、底切刃53の刃先が形成する直線とは、繋がっている。これにより、素材を、外周仕上面S1、内周仕上面S2及び底仕上面S3に沿って、精度よく切削できる。
【0016】
外周切刃51、内周切刃52及び底切刃53は、それぞれ、回転方向Rに沿って均等な間隔で複数配置されている。これにより、切削抵抗を複数の切刃に均等に分散できる。よって、切刃の1箇所当たりに作用する負荷を低減でき、高硬度の素材を精度良く切削できる。
【0017】
図4及び
図5に示すように、外周面5Eは、外周切刃51から内方に窪む外周逃溝G1を有している。内周面5Jは、前記内周切刃から外方に窪む内周逃溝G2を有している。先端面5Tは、底切刃53から後方に窪む底逃溝G3を有している。これにより、切刃による切削で発生する素材の切粉の逃げ量を確保することができる。よって、切削時における工具1の回転抵抗を低減できる。
【0018】
刃部4に形成された外周切刃51と、内周切刃52と、底切刃53とが、連続している場合、回転方向に隣接する切刃同士の間に形成される逃溝も連続している。すなわち、外周逃溝G1、底逃溝G3及び内周逃溝G2は連続していてよい。これにより、外周面5Eから先端面5Tを経て内周面5Jまでの間で、切刃による切削で発生した素材の切粉の移動を自由にできる。よって、切削時における工具1の回転抵抗を低減できる。
【0019】
図4に示すように、外周逃溝G1は、外周切刃51による外周仕上面S1を基準として、外周切刃51から正転側(回転方向R)に傾斜する外周正逃面G1aと、外周切刃51から逆転側(回転方向Rとは反対方向)に傾斜する外周逆逃面G1bとを有している。
内周逃溝G2は、内周切刃52による内周仕上面S2を基準として、内周切刃52から正転側に傾斜する内周正逃面G2aと、内周切刃52から逆転側に傾斜する内周逆逃面G2bとを有している。
そして、外周仕上面S1と外周正逃面G1aとの成す外周正逃角θ1aと、外周仕上面S1と外周逆逃面G1bとの成す外周逆逃角θ1bとは、等しく、内周仕上面S2と内周正逃面G2aとの成す内周正逃角θ2aと、内周仕上面S2と内周逆逃面G2bとの成す内周逆逃角θ2bとは、等しい。これにより、切刃の強度の確保と切粉の逃げ量の確保をバランスよくできるとともに、切削抵抗を低減できる。
【0020】
刃部4は、先端に設けられたダイヤモンド焼結体5及びボディ3のそれぞれに対して一体的に結合される裏打超硬部6を有していてよい。言い換えると、ダイヤモンド焼結体5とボディ3とは、裏打超硬部6を介して結合されていてよい。これにより、切刃が形成され、硬度の高いダイヤモンド焼結体5を、工具1の先端に集中させることができる。よって、硬い素材を切削しやすくできる。また、ダイヤモンド焼結体5を、裏打超硬部6を介してボディ3に結合できる。よって、刃部4をボディ3に対して強固に結合できる。なお、ダイヤモンド焼結体5をボディ3に対して直接的に結合してもよい。すなわち、ダイヤモンド焼結体5からなる刃部4をボディ3に対して直接的に結合してもよい。
【0021】
裏打超硬部6の硬度は、ダイヤモンド焼結体5の硬度より低く、ボディ3の硬度より高いことが好ましい。なお、裏打超硬部6の材質は、例えば、タングステンカーバイドとコバルトを焼結した超硬合金であることが好ましい。これにより、高温時の硬度低下や磨耗を低減できるとともに、工具1に作用する捻じりモーメントをシャンク2及びボディ3から、裏打超硬部6を経て、ダイヤモンド焼結体5まで、円滑に伝達させることができる。
【0022】
(第2実施形態)
次に、図面を参照し、第2実施形態に係る工具1を説明する。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と共通する機能を有する特徴部には、同じ符号が付される場合がある。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と共通する機能を有する特徴部の説明は、省略される場合がある。
図6は、第2実施形態に係る工具1を説明する斜視図である。
図7は、第2実施形態に係る工具1の平面図である。
図8は、第2実施形態に係る工具1の正面図である。
図9は、
図7におけるC部詳細図である。
図10は、
図8におけるD部詳細図である。
【0023】
図6に示すように、第2実施形態に係る工具1は、第1実施形態に係る工具1と同様に、回転軸Zに沿って延びるシャンク2と、シャンク2と一体的に結合された中空円筒状のボディ3と、ボディ3の端部31にボディ3と一体的に結合された刃部4と、を備えている。そして、刃部4は、先端にダイヤモンド焼結体5を有している。
【0024】
図9に示すように、第1実施形態に係る工具1と同様に、外周逃溝G1は、外周切刃51による外周仕上面S1を基準として、外周切刃51から正転側(回転方向R)に傾斜する外周正逃面G1aと、外周切刃51から逆転側(回転方向Rとは反対方向)に傾斜する外周逆逃面G1bとを有している。
内周逃溝G2は、内周切刃52による内周仕上面S2を基準として、内周切刃52から正転側に傾斜する内周正逃面G2aと、内周切刃52から逆転側に傾斜する内周逆逃面G2bとを有している。
そして、外周仕上面S1と外周正逃面G1aとの成す外周正逃角θ1aと、外周仕上面S1と外周逆逃面G1bとの成す外周逆逃角θ1bとは、等しく、内周仕上面S2と内周正逃面G2aとの成す内周正逃角θ2aと、内周仕上面S2と内周逆逃面G2bとの成す内周逆逃角θ2bとは、等しい。
【0025】
ここで、
図10に示すように、第2実施形態に係る工具1は、第1実施形態に係る工具1とは異なり、底逃溝G3は、底切刃53による底仕上面S3を基準として、底切刃53から正転側に傾斜する底正逃面G3aと、底切刃53から逆転側に傾斜する底逆逃面G3bとを有している。
そして、底仕上面S3と底正逃面G3aとの成す底正逃角θ3aと、底仕上面S3と底逆逃面G3bとの成す底逆逃角θ3bとは、等しい。これにより、工具1が、正逆のいずれに回転した場合であっても、同じ抵抗、同じ精度で素材を切削できる。よって、工具1を、回転方向Rの制限のないものにできる。
【0026】
以上説明したように、実施形態に係る工具1は、回転軸Zに沿って延びるシャンク2と、シャンク2と一体的に結合された中空円筒状のボディ3と、ボディ3の端部31にボディ3と一体的に結合された刃部4と、を備えている。そして、刃部4は、先端にダイヤモンド焼結体5を有している。ここで、ダイヤモンド焼結体5は、外周面5Eに設けられて外方に向けて尖る外周切刃51と、内周面5Jに設けられて内方に向けて尖る内周切刃52と、先端面5Tに設けられて先方に向けて尖る底切刃53と、を有している。これにより、CVD-SiCのような高い硬度を有する材料で形成された円盤状の素材から、直接的に、円柱状に切り抜く加工をすることできる。したがって、円盤状の素材から格子状に切断して角柱を形成する工程を省くことができる。よって、高硬度である素材から円柱状の加工品を高い加工能率で加工できる。
【0027】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0028】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。例えば、本実施例では超硬合金やCVD-SiCを例に述べているが、本材料に限定されるものでなく広くセラミック型、金型など広く様々な成形型において、実施することを特徴としている。
【符号の説明】
【0029】
1 工具
2 シャンク
3 ボディ
3Q 嵌合溝
4 刃部
4P 係止突部
5 ダイヤモンド焼結体
5E 外周面
5J 内周面
5T 先端面
6 裏打超硬部
31 端部
51 外周切刃
52 内周切刃
53 底切刃
G1 外周逃溝
G1a 外周正逃面
G1b 外周逆逃面
G2 内周逃溝
G2a 内周正逃面
G2b 内周逆逃面
G3 底逃溝
G3a 底正逃面
G3b 底逆逃面
R 回転方向
S1 外周仕上面
S2 内周仕上面
S3 底仕上面
Z 回転軸
θ1a 外周正逃角
θ1b 外周逆逃角
θ2a 内周正逃角
θ2b 内周逆逃角
θ3a 底正逃角
θ3b 底逆逃角