(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160128
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】樹脂被覆部材
(51)【国際特許分類】
B32B 27/42 20060101AFI20231026BHJP
B32B 7/06 20190101ALI20231026BHJP
C23F 11/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
B32B27/42
B32B7/06
C23F11/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070253
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】509338994
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラシステム
(71)【出願人】
【識別番号】000175021
【氏名又は名称】三井化学産資株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】武川 哲
(72)【発明者】
【氏名】中村 善彦
(72)【発明者】
【氏名】矢ケ部 菜月
(72)【発明者】
【氏名】井出 一直
(72)【発明者】
【氏名】清水 幹雄
【テーマコード(参考)】
4F100
4K062
【Fターム(参考)】
4F100AB03A
4K062AA01
4K062BC08
4K062BC15
4K062BC16
4K062FA16
(57)【要約】
【課題】樹脂被覆部材において、樹脂層の剥離性と密着性とをバランスよく高めることである。
【解決手段】樹脂被覆部材10は、部材本体12aを有する部材12と、部材本体12aの表面に被覆され、透明ポリウレア樹脂で形成される樹脂層16と、を備え、部材本体12aと樹脂層16との間の全面に設けられ、低粘着剤で形成される低粘着剤層14を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂被覆部材であって、
部材本体を有する部材と、
前記部材本体の表面に被覆され、透明ポリウレア樹脂で形成される樹脂層と、
を備え、
前記部材本体と前記樹脂層との間の全面に設けられ、低粘着剤で形成される低粘着剤層を備える、樹脂被覆部材。
【請求項2】
樹脂被覆部材であって、
部材本体を有する部材と、
前記部材本体の表面に被覆され、透明ポリウレア樹脂で形成される樹脂層と、
を備え、
前記部材本体と前記樹脂層との間に設けられ、低粘着剤で形成される低粘着剤層からなる剥離領域と、
前記部材本体と前記樹脂層との間に設けられ、前記低粘着剤層を含まない非剥離領域と、
を含み、
前記非剥離領域は、格子状に設けられており、
前記剥離領域は、前記剥離領域の周りが前記非剥離領域で囲まれている、樹脂被覆部材。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂被覆部材であって、
前記部材は、前記部材本体の周りに延設された延設部を有しており、
前記延設部は、前記樹脂層で被覆されており、
前記延設部と前記樹脂層との間には、前記低粘着剤層を含まない、樹脂被覆部材。
【請求項4】
請求項3に記載の樹脂被覆部材であって、
前記延設部と前記樹脂層との間に設けられ、接着剤または接着テープで形成される接着層を有する、樹脂被覆部材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の樹脂被覆部材であって、
前記部材は、前記部材本体の表面に凹凸部を有している、樹脂被覆部材。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂被覆部材であって、
前記低粘着剤層は、前記凹凸部と前記樹脂層との間に設けられている、樹脂被覆部材。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1つに記載の樹脂被覆部材であって、
前記部材は、前記部材本体が複数の部材板と、隣接する前記部材板を締結する締結部と、を有している、樹脂被覆部材。
【請求項8】
請求項7に記載の樹脂被覆部材であって、
前記低粘着剤層は、前記締結部と前記樹脂層との間に設けられている、樹脂被覆部材。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の樹脂被覆部材であって、
前記樹脂層と前記低粘着剤層との密着力は、前記部材本体と前記低粘着剤層との密着力よりも大きい、樹脂被覆部材。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つに記載の樹脂被覆部材であって、
前記低粘着剤は、糊剤、フッ素樹脂剤またはシリコーン樹脂剤である、樹脂被覆部材。
【請求項11】
請求項10に記載の樹脂被覆部材であって、
前記糊剤は、ポリビニルアルコール樹脂剤、酢酸ビニル樹脂剤、ポリビニルピロリドン樹脂剤またはでんぷん剤である、樹脂被覆部材。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1つに記載の樹脂被覆部材であって、
前記樹脂層の剥離荷重は、JISZ0237に準拠した粘着力測定方法において、2KN以上85KN以下である、樹脂被覆部材。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1つに記載の樹脂被覆部材であって、
前記樹脂層の剥離荷重は、JISZ0237に準拠した粘着力測定方法において、2KN以上10KN以下である、樹脂被覆部材。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1つに記載の樹脂被覆部材であって、
前記部材は、前記部材の表面に塗膜が設けられている、樹脂被覆部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂被覆部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラント、橋梁、水門等の構造物に使用されている鋼部材等の部材の表面に、樹脂シートを被覆して、部材の防食性や防水性等を高めることが行われている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、鋼部材等の部材に被覆された樹脂シート等の樹脂層が経年劣化等した場合には、劣化した樹脂層を部材から剥離した後に、再び、新たな樹脂層を被覆することが行われている。また、部材が塗装されている場合には、塗膜が経年劣化等したときに、樹脂層を剥離した後に、部材を再塗装し、新たな樹脂層を被覆することが行われている。
【0005】
ここで樹脂層を部材から剥離するときに、樹脂層と部材とが強固に密着していると、上述したような樹脂層の剥離作業に多大な時間を要する可能性がある。一方、樹脂層と部材との密着性が低い場合には、樹脂層が部材から剥がれ易くなり、樹脂層と部材との間の隙間から水等の腐食媒体が入り易くなる。このため防食性や防水性等が低下する可能性がある。
【0006】
そこで本開示の目的は、樹脂層の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる樹脂被覆部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る樹脂被覆部材は、部材本体を有する部材と、前記部材本体の表面に被覆され、透明ポリウレア樹脂で形成される樹脂層と、を備え、前記部材本体と前記樹脂層との間の全面に設けられ、低粘着剤で形成される低粘着剤層を備える。
【0008】
本開示に係る樹脂被覆部材は、部材本体を有する部材と、前記部材本体の表面に被覆され、透明ポリウレア樹脂で形成される樹脂層と、を備え、前記部材本体と前記樹脂層との間に設けられ、低粘着剤で形成される低粘着剤層からなる剥離領域と、前記部材本体と前記樹脂層との間に設けられ、前記低粘着剤層を含まない非剥離領域と、を含み、前記非剥離領域は、格子状に設けられており、前記剥離領域は、前記剥離領域の周りが前記非剥離領域で囲まれている。
【0009】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記部材は、前記部材本体の周りに延設された延設部を有しており、前記延設部は、前記樹脂層で被覆されており、前記延設部と前記樹脂層との間には、前記低粘着剤層を含まなくてもよい。
【0010】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記延設部と前記樹脂層との間に設けられ、接着剤または接着テープで形成される接着層を有していてもよい。
【0011】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記部材は、前記部材本体の表面に凹凸部を有していてもよい。
【0012】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記低粘着剤層は、前記凹凸部と前記樹脂層との間に設けられていてもよい。
【0013】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記部材は、前記部材本体が複数の部材板と、隣接する前記部材板を締結する締結部と、を有していてもよい。
【0014】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記低粘着剤層は、前記締結部と前記樹脂層との間に設けられていてもよい。
【0015】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記樹脂層と前記低粘着剤層との密着力は、前記部材本体と前記低粘着剤層との密着力よりも大きくてもよい。
【0016】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記低粘着剤は、糊剤、フッ素樹脂剤またはシリコーン樹脂剤としてもよい。
【0017】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記糊剤は、ポリビニルアルコール樹脂剤、酢酸ビニル樹脂剤、ポリビニルピロリドン樹脂剤またはでんぷん剤としてもよい。
【0018】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記樹脂層の剥離荷重は、JISZ0237に準拠した粘着力測定方法において、2KN以上85KN以下としてもよい。
【0019】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記樹脂層の剥離荷重は、JISZ0237に準拠した粘着力測定方法において、2KN以上10KN以下としてもよい。
【0020】
本開示に係る樹脂被覆部材において、前記部材は、前記部材の表面に塗膜が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0021】
上記構成の樹脂被覆部材によれば、樹脂層の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本開示の第一実施形態において、樹脂被覆部材の構成を示す平面模式図である。
【
図2】本開示の第一実施形態において、
図1のA-A方向の断面模式図である。
【
図3】本開示の第一実施形態において、樹脂被覆部材の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】本開示の第二実施形態において、樹脂被覆部材の構成を示す断面模式図である。
【
図5】本開示の第三実施形態において、樹脂被覆部材の構成を示す平面模式図である。
【
図6】本開示の第三実施形態において、
図5のA-A方向の断面模式図である。
【
図7】本開示の第四実施形態において、樹脂被覆部材の構成を示す断面模式図である。
【
図8】本開示の第五実施形態において、樹脂被覆部材の構成を示す断面模式図である。
【
図9】本開示の第六実施形態において、樹脂被覆部材の構成を示す断面模式図である。
【
図10】本開示の第七実施形態において、樹脂被覆部材の構成を示す断面模式図である。
【
図11】本開示の実施例において、密着力評価試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔第一実施形態〕
以下に本開示の第一実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、樹脂被覆部材10の構成を示す平面模式図である。
図2は、
図1のA-A方向の断面模式図である。樹脂被覆部材10は、部材12と、低粘着剤層14と、樹脂層16と、を備えている。
【0024】
部材12は、部材本体12aを有している。部材12は、鋼材等の金属材料で形成される金属部材や、コンクリート材料で形成されるコンクリート部材等で構成されている。部材12は、例えば、プラント、橋梁、水門等の構造物に使用されている構造部材等である。部材12は、例えば、平板部材等で構成されている。部材12は、防食性や防水性等を高めるために塗装されていてもよく、部材12の表面に塗膜が設けられていてもよい。
【0025】
樹脂層16は、部材本体12aの表面に被覆されており、樹脂で形成されている。樹脂層16は、部材本体12aの表面の全面に被覆されているとよい。部材本体12aの表面を樹脂層16で覆うことにより、部材本体12aの表面を保護することができる。例えば、部材本体12aの表面を樹脂層16で覆うことにより、部材12の防食性や防水性等を高めることができる。また、部材本体12aの表面を樹脂層16で覆うことにより、部材12の表面の傷等の損傷を抑制することができる。樹脂層16の厚みは、例えば、100μmから3mmとすることが可能である。樹脂層16は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等で形成することが可能である。樹脂層16の樹脂には、例えば、ポリウレア樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂等を用いることができる。
【0026】
樹脂層16は、高弾性樹脂で形成されているとよい。樹脂層16が高弾性樹脂で形成されている場合には、樹脂層16が高い弾性力を有している。これにより樹脂層16にマイクロクラック等が生じた場合でも追従するので、樹脂層16の破断を抑制することができる。このような高弾性樹脂には、例えば、ポリウレア樹脂を用いるとよい。樹脂層16は、透明樹脂で形成されているとよい。樹脂層16が透明になるので、外側から部材12の表面状態を点検、観察等することができる。このような透明樹脂には、例えば、透明ポリウレア樹脂を用いるとよい。
【0027】
低粘着剤層14は、部材本体12aと樹脂層16との間の全面に設けられており、低粘着剤で形成されている。低粘着剤層14は、部材本体12aの表面の全面に被覆されている。これにより樹脂層16の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる。部材本体12aと樹脂層16との間の全面に低粘着剤層14を設けることにより、樹脂層16の剥離荷重を、JISZ0237に準拠した粘着力測定方法において、2KN以上85KN以下となるようにしてもよく、2KN以上10KN以下となるようにしてもよい。
【0028】
低粘着剤は、樹脂層16を形成する樹脂よりも粘着力が小さいとよい。低粘着剤は、例えば、糊剤、フッ素樹脂剤、シリコーン樹脂剤等とすることができる。糊剤は、例えば、ポリビニルアルコール樹脂剤、酢酸ビニル樹脂剤、ポリビニルピロリドン樹脂剤、でんぷん剤等とすることが可能である。これらの低粘着剤は、部材本体12aと樹脂層16との密着力を低下させることができる。より詳細には、部材本体12aと低粘着剤層14との密着力と、樹脂層16と低粘着剤層14との密着力とが、部材本体12aと樹脂層16との密着力よりも小さくなる。
【0029】
低粘着剤の溶剤は、水、有機溶剤等とすることが可能である。低粘着剤がポリビニルアルコール樹脂剤、酢酸ビニル樹脂剤等の糊剤である場合には、溶剤には水を用いるとよい。低粘着剤がフッ素樹脂剤、シリコーン樹脂剤である場合には、溶剤には有機溶剤を用いるとよい。また、樹脂層16が有機溶剤系の樹脂で形成される場合には、溶剤に水を用いる低粘着剤を使用するとよい。樹脂層16の形成時に低粘着剤層14の溶出を抑制可能だからである。
【0030】
低粘着剤には、糊剤を用いるとよい。ポリビニルアルコール樹脂剤、酢酸ビニル樹脂剤等の糊剤は、フッ素樹脂剤やシリコーン樹脂剤よりも部材本体12aと樹脂層16との間の密着力をより低下させることができる。これにより樹脂層16の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる。また糊剤の溶剤には水を用いることができるので、樹脂層16が有機溶剤系の樹脂で形成される場合にも樹脂層16の形成時に低粘着剤層14の溶出を抑制することができる。
【0031】
樹脂層16と低粘着剤層14との密着力は、部材本体12aと低粘着剤層14との密着力よりも大きいとよい。樹脂被覆部材10から樹脂層16を剥がすときに、樹脂層16に低粘着剤層14が付着するので、樹脂層16と低粘着剤層14とを略同時に剥離することができる。これにより部材本体12aの表面に低粘着剤層14が残留することが抑制されるので、樹脂層16の剥離作業を効率よく行うことができる。例えば、部材12がステンレス鋼で形成され、樹脂層16がポリウレア樹脂で形成され、低粘着剤層14がポリビニルアルコール樹脂で形成されている場合には、樹脂層16を剥がすときに樹脂層16と低粘着剤層14とを略同時に剥離することができるので、部材本体12aの表面への低粘着剤層14の残留を抑制できる。
【0032】
次に、樹脂被覆部材10の製造方法について説明する。
図3は、樹脂被覆部材10の製造方法を示すフローチャートである。樹脂被覆部材10の製造方法は、低粘着剤層形成工程(S10)と、樹脂層形成工程(S12)と、を備えている。
【0033】
低粘着剤層形成工程(S10)は、部材本体12aの表面に低粘着剤で低粘着剤層14を形成する工程である。低粘着剤層形成工程(S10)では、部材本体12aの表面の全面に低粘着剤で低粘着剤層14を形成する。まず、部材本体12aの表面に低粘着剤層14を形成する前に、部材本体12aの表面を前処理するとよい。部材12が金属部材である場合には、酸洗処理、機械研磨、脱脂洗浄等をして前処理することができる。これらの前処理は、一般的な金属材料の前処理方法を適用可能である。
【0034】
次に、低粘着剤層14の形成方法について説明する。低粘着剤層14は、低粘着剤をスプレー塗布、刷毛塗り等して形成することが可能である。低粘着剤には、上述した糊剤、フッ素樹脂剤、シリコーン樹脂剤等を用いることができる。低粘着剤には、一般的に市販されているものを使用可能である。部材本体12aの表面に低粘着剤を塗布等した後は、溶剤を除去するために室温等で乾燥するとよい。
【0035】
樹脂層形成工程(S12)は、低粘着剤層14の表面に樹脂を被覆して樹脂層16を形成する工程である。樹脂層形成工程(S12)では、低粘着剤層14の表面の全面に樹脂を被覆して樹脂層16を形成するとよい。樹脂層16は、低粘着剤層14を設けた部材本体12aの表面に、未硬化樹脂を吹付けまたは塗布等した後に、加熱等により樹脂硬化して形成することができる。樹脂には、上述したポリウレア樹脂等を用いることができる。樹脂には、一般的に市販されているものを使用可能である。このようにして樹脂被覆部材10を製造することができる。
【0036】
以上、上記構成の樹脂被覆部材によれば、部材本体を有する部材と、部材本体の表面に被覆され、樹脂で形成される樹脂層と、を備え、部材本体と樹脂層との間の全面に設けられ、低粘着剤で形成される低粘着剤層を備えるので、樹脂層の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる。
【0037】
〔第二実施形態〕
次に本開示の第二実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図4は、樹脂被覆部材20の構成を示す断面模式図である。第二実施形態は、第一実施形態と、部材本体12aの周りに延設部22が設けられている点で相違しており、その他の構成については同じである。なお上記の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0038】
部材21は、部材本体12aの周りに延設された延設部22を有している。延設部22は、部材本体12aの全周を囲むようにして設けられている。延設部22は、樹脂層16で被覆されている。延設部22と樹脂層16との間には、低粘着剤層14が含まれていない。部材21と樹脂層16との間の外周部では、部材21と樹脂層16との密着性が高まるので、樹脂被覆部材20の外側からの水等の腐食媒体の侵入を抑制することができる。
【0039】
樹脂被覆部材20は、延設部22と樹脂層16との間に、接着層(図示せず)が設けられていてもよい。これにより延設部22と樹脂層16との密着性が更に高められるので、樹脂被覆部材20の外側からの水等の腐食媒体の侵入を更に抑制することができる。また、延設部22は平坦で形成されているので、樹脂層16を剥がすときには、工具(皮スキ、グラインダ等)を用いて容易に剥離することができる。接着層は、接着剤や接着テープ等で形成することが可能である。接着剤や接着テープ等については、一般的な樹脂系接着剤等の市販品を用いることができる。
【0040】
接着層は、延設部22と樹脂層16との間の一部のみに設けられていてもよいが、延設部22と樹脂層16との全周に設けられているとよい。樹脂層16と接着層との接着力は、延設部22と接着層との接着力よりも大きいとよい。樹脂層16を剥がすときに、樹脂層16に接着層が付着するので、樹脂層16と接着層とを略同時に剥がすことができる。これにより、部材21に接着層が残留することを抑制できるので、樹脂層16の剥離作業を容易に行うことができる。樹脂層16と接着層との接着力は、樹脂層16の機械的強度よりも小さいとよい。樹脂層16と接着層との接着力を樹脂層16の機械的強度よりも小さくすることにより、樹脂層16を剥がすときに、樹脂層16の破断を抑制して、樹脂層16を剥離することができる。これにより樹脂層16の剥離作業性を高めることが可能となる。
【0041】
以上、上記構成の樹脂被覆部材によれば、部材は、部材本体の周りに延設された延設部を有しており、延設部は、樹脂層で被覆されており、延設部と樹脂層との間には低粘着剤層を含まないので、樹脂層の剥離性と密着性とをバランスよく高めると共に、樹脂被覆部材の外側からの水等の腐食媒体の侵入を抑制することができる。
【0042】
〔第三実施形態〕
次に本開示の第三実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図5は、樹脂被覆部材30の構成を示す平面模式図である。
図6は、
図5のA-A方向の断面模式図である。なお上記の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0043】
樹脂被覆部材30は、部材本体12aを有する部材12と、部材本体12aの表面に被覆され、樹脂で形成される樹脂層16と、を備えている。樹脂被覆部材30は、部材本体12aと樹脂層16との間に設けられる剥離領域32と、非剥離領域34とを有している。
【0044】
剥離領域32は、部材本体12aと樹脂層16との間に設けられ、低粘着剤で形成される低粘着剤層14で構成されている。非剥離領域34は、部材本体12aと樹脂層16との間に設けられ、低粘着剤層14を含まないで構成されている。非剥離領域34は、格子状に設けられている。剥離領域32は、剥離領域32の周りが非剥離領域34で囲まれている。部材本体12aと樹脂層16との間に剥離領域32と非剥離領域34とを設けることにより、樹脂層16の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる。次に、剥離領域32と非剥離領域34とについて、詳細に説明する。
【0045】
非剥離領域34は、部材本体12aと樹脂層16との間に設けられ、低粘着剤層14を含まないで構成されている。非剥離領域34は、部材本体12aの表面に格子状に形成されている。また部材本体12aの外周部は、非剥離領域34で形成されている。非剥離領域34は、低粘着剤層14を含まないので、樹脂層16と部材本体12aとが直接密着している。これにより非剥離領域34では、部材本体12aと樹脂層16との密着性が高められる。このように非剥離領域34では、部材本体12aと樹脂層16との密着性が高められているので、水等の腐食媒体が部材本体12aと樹脂層16との間に入り込むことを抑制できる。
【0046】
剥離領域32は、部材本体12aと樹脂層16との間に設けられ、低粘着剤で形成される低粘着剤層14から構成されている。低粘着剤層14を設けることにより、樹脂層16と低粘着剤層14との密着力及び部材本体12aと低粘着剤層14との密着力の少なくとも一方を、部材本体12aと樹脂層16との密着力より小さくすることができる。剥離領域32では低粘着剤層14を介在させることにより、部材本体12aと樹脂層16との密着性が低下するので、樹脂層16を容易に剥がすことができる。低粘着剤層14の低粘着剤は、第一実施形態の低粘着剤層14の低粘着剤と同様のものを適用可能である。
【0047】
剥離領域32は、剥離領域32の周りが非剥離領域34で囲まれており、矩形状に形成されている。より詳細には、剥離領域32の全周が、非剥離領域34で囲まれている。樹脂被覆部材30の使用中に、剥離領域32に剥離が生じた場合でも、剥離領域32同士が非連続であり接触していないので、剥離の連鎖が抑制される。これにより、例えば、剥離領域32の剥離箇所から水等の腐食媒体が部材本体12aと樹脂層16との間の隙間に入り込んだ場合でも、腐食媒体は非剥離領域34で囲まれているので、腐食媒体の更なる拡散を抑制することができる。
【0048】
次に、樹脂被覆部材30の製造方法について説明する。樹脂被覆部材30の製造方法は、低粘着剤層形成工程と、樹脂層形成工程と、を備えている。
【0049】
低粘着剤層形成工程は、部材本体12aの表面に低粘着剤で低粘着剤層14を形成する工程である。部材本体12aを前処理した後に、部材本体12aの非剥離領域34をマスキング材で格子状にマスキングする。マスキング材には、一般的なマスキングテープ等を用いることができる。部材本体12aのマスキング面に、低粘着剤をスプレー塗布等して低粘着剤層14を形成する。低粘着剤層14を形成した後、部材本体12aからマスキング材を除去し、低粘着剤層14からなる剥離領域32が形成される。低粘着剤層14の形成方法については、第一実施形態の低粘着剤層形成工程(S10)と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0050】
樹脂層形成工程は、低粘着剤層14を設けた部材本体12aの表面に、樹脂を被覆して樹脂層16を形成する工程である。樹脂層形成工程は、第一実施形態の樹脂層形成工程(S12)と同様であるので詳細な説明を省略する。このようにして樹脂被覆部材30を製造することができる。
【0051】
なお、樹脂被覆部材30においても、第二実施形態の樹脂被覆部材20と同様に、部材本体の周りに延設された延設部を有していてもよい。部材と樹脂層との間の外周部では、部材と樹脂層との密着性が更に高まるので、樹脂被覆部材30の外側からの水等の腐食媒体の侵入を抑制することができる。
【0052】
上記構成の樹脂被覆部材によれば、部材本体を有する部材と、部材本体の表面に被覆され、樹脂で形成される樹脂層と、を備え、部材本体と樹脂層との間に設けられ、低粘着剤で形成される低粘着剤層からなる剥離領域と、部材本体と樹脂層との間に設けられ、低粘着剤層を含まない非剥離領域と、を含み、非剥離領域は、格子状に設けられており、剥離領域は、剥離領域の周りが非剥離領域で囲まれているので、樹脂層の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる。
【0053】
〔第四実施形態〕
次に本開示の第四実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図7は、樹脂被覆部材50の構成を示す断面模式図である。なお、上記の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。第四実施形態は、第一実施形態と、主に部材52の構成が相違している。
【0054】
樹脂被覆部材50の部材52は、部材本体12aの表面に凹凸部54を有している。凹凸部54は、特に限定されないが、例えば、突起、ウエブ、フランジ等で構成することができる。部材52は、部材本体12aの表面に、凹凸部54と、平坦部56と、を備えることができる。凹凸部54及び平坦部56の配置については、特に限定されないが、例えば、平坦部56を格子状に配置して、凹凸部54の周りを平坦部56で囲むようにしてもよい。
【0055】
部材本体12aの表面は、低粘着剤層14で被覆されている。低粘着剤層14は、部材本体12aの表面の全面を覆っている。より詳細には、低粘着剤層14は、部材本体12aの表面の凹凸部54及び平坦部56の全面を覆っている。樹脂層16が凹凸部54に直接被覆される場合には、凹凸部54のアンカー効果により樹脂層16の密着力がより強固になる。このため、樹脂層16を剥がすときに、樹脂層16の破断等が生じて、樹脂層16の剥離作業性が低下する。一方、凹凸部54に低粘着剤層14を設けることにより、凹凸部54と樹脂層16との密着力が低下するので、樹脂層16を剥がすときに樹脂層16を部材本体12aから剥離し易くすることができる。
【0056】
凹凸部54の低粘着剤層14は、平坦部56の低粘着剤層14と同じ低粘着剤を適用してもよいし、異なる低粘着剤を適用してもよい。凹凸部54の低粘着剤層14と、平坦部56の低粘着剤層14とを同じ低粘着剤で形成することにより、樹脂被覆部材50の生産性を向上させることができる。例えば、凹凸部54及び平坦部56に被覆される低粘着剤層14を、同じ糊剤を用いて形成することが可能である。
【0057】
また、凹凸部54の低粘着剤層14と、平坦部56の低粘着剤層14とを異なる低粘着剤で形成する場合には、凹凸部54の低粘着剤層14は、平坦部56の低粘着剤層14よりも粘着力が小さい低粘着剤を用いるとよい。上述したように凹凸部54はアンカー効果により樹脂層16との密着力がより強固になるからである。例えば、凹凸部54の低粘着剤層14を糊剤で形成し、平坦部56の低粘着剤層14をフッ素樹脂剤やシリコーン樹脂剤で形成してもよい。
【0058】
樹脂被覆部材50の製造方法は、第一実施形態の低粘着剤層形成工程(S10)及び樹脂層形成工程(S12)と同様であるので詳細な説明を省略する。なお、凹凸部54の低粘着剤層14と、平坦部56の低粘着剤層14とについて異なる低粘着剤を適用する場合には、マスキング等して低粘着剤層14を形成すればよい。
【0059】
上記構成の樹脂被覆部材によれば、第一実施形態の効果を奏すると共に、部材の表面に凹凸部がある場合でも、樹脂層の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる。
【0060】
〔第五実施形態〕
次に本開示の第五実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図8は、樹脂被覆部材60の構成を示す断面模式図である。なお、上記の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。第五実施形態は、第三実施形態と、主に部材52の構成が相違している。
【0061】
樹脂被覆部材60の部材52は、部材本体12aの表面に凹凸部54を有している。部材52は、第四実施形態の樹脂被覆部材50の部材52と同様の構成であるので詳細な説明を省略する。
【0062】
樹脂被覆部材60は、剥離領域32と、非剥離領域34とを有している。剥離領域32は、部材本体12aと樹脂層16との間に設けられており、低粘着剤層14で形成されている。非剥離領域34は、部材本体12aと樹脂層16との間に設けられており、低粘着剤層14を含まないで構成されている。非剥離領域34は、格子状に設けられており、剥離領域32の周りは、非剥離領域34で囲まれている。剥離領域32は、剥離領域32の全周が非剥離領域34で囲まれている。
【0063】
凹凸部54には、剥離領域32が設けられているとよい。剥離領域32は、凹凸部54に被覆した低粘着剤層14で構成されている。剥離領域32は、凹凸部54の全面に設けられていてもよいし、凹凸部54の一部のみに設けられていてもよいが、凹凸部54の全面に設けられているとよい。上述したように凹凸部54はアンカー効果により密着力がより強固になるので、凹凸部54に剥離領域32を設けることにより密着力を低下させることができる。また、平坦部56には、非剥離領域34が設けられているとよい。平坦部56ではアンカー効果が殆ど生じないので、低粘着剤層14を設けなくても密着力を抑制可能だからである。例えば、平坦部56が格子状に配置されており、凹凸部54が平坦部56で囲まれて配置されている場合には、凹凸部54に剥離領域32を対応させると共に、平坦部56に非剥離領域34を対応させて構成することが可能である。
【0064】
樹脂被覆部材60の製造方法は、第三実施形態の樹脂被覆部材30の製造方法における低粘着剤層形成工程と、樹脂層形成工程と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0065】
上記構成の樹脂被覆部材によれば、第三実施形態の効果を奏すると共に、部材の表面に凹凸部がある場合でも、樹脂層の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる。
【0066】
〔第六実施形態〕
次に本開示の第六実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図9は、樹脂被覆部材70の構成を示す断面模式図である。なお、上記の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。第六実施形態は、第一実施形態と、主に部材72の構成が相違している。
【0067】
樹脂被覆部材70の部材72は、継ぎ手部材で構成されている。部材72は、部材本体72aが、複数の部材板74と、隣接する部材板74を締結する締結部76と、を有している。締結部76の締結方法は、特に限定されないが、例えば、ボルト継手等で構成することができる。
図9に示す樹脂被覆部材70では、締結部76がボルト継手で構成されている。
【0068】
締結部76は、隣接する部材板74の突合せ端部同士の上側と下側とに添接板78を重ねて配置した状態で、各部材板74と各添接板78の重ね合わせ部に穿設してあるボルト孔に対して、ボルト80が挿通されている。添接板78の上側に突出するボルト80の先端部には、ワッシャ(図示せず)が嵌め込まれ、ナット82が螺着している。これにより、締結部76は、隣接する部材板74の突合せ端部同士を、添接板78を介して連結させている。部材板74の平坦部及び締結部76の配置については、特に限定されないが、例えば、部材板74の平坦部を格子状に配置して、締結部76の周りを部材板74の平坦部で囲むようにしてもよい。
【0069】
部材本体72aの表面は、低粘着剤層14で被覆されている。低粘着剤層14は、部材本体72aの表面の全面を覆っている。より詳細には、低粘着剤層14は、部材板74の平坦部及び締結部76の全面を覆っている。樹脂層16が締結部76に直接被覆される場合には、締結部76のアンカー効果により樹脂層16の密着力がより強固になる。このため、樹脂層16を剥がすときに、樹脂層16の破断等が生じて、樹脂層16の剥離作業性が低下する。一方、締結部76に低粘着剤層14を設けることにより、締結部76と樹脂層16との密着力が低下するので、樹脂層16を剥がすときに樹脂層16を部材72から剥離し易くすることができる。
【0070】
締結部76の低粘着剤層14は、部材板74の平坦部の低粘着剤層14と同じ低粘着剤を適用してもよいし、異なる低粘着剤を適用してもよい。締結部76の低粘着剤層14と、部材板74の平坦部の低粘着剤層14とを同じ低粘着剤で形成することにより、樹脂被覆部材70の生産性を向上させることができる。例えば、部材板74の平坦部及び締結部76に被覆される低粘着剤層14を、糊剤を用いて形成することが可能である。
【0071】
また、締結部76の低粘着剤層14と、部材板74の平坦部の低粘着剤層14とを異なる低粘着剤で形成する場合には、締結部76の低粘着剤層14は、部材板74の平坦部の低粘着剤層14よりも粘着力が小さい低粘着剤を用いるとよい。上述したように締結部76はアンカー効果により樹脂層16との密着力がより強固になるからである。例えば、部材板74の平坦部の低粘着剤層14をフッ素樹脂剤やシリコーン樹脂剤で形成し、締結部76の低粘着剤層14を糊剤で形成してもよい。
【0072】
樹脂被覆部材70の製造方法は、第一実施形態の低粘着剤層形成工程(S10)及び樹脂層形成工程(S12)と同様であるので詳細な説明を省略する。なお、締結部76の低粘着剤層14と、部材板74の平坦部の低粘着剤層14とについて異なる低粘着剤を適用する場合には、マスキング等して低粘着剤層14を形成すればよい。
【0073】
上記構成の樹脂被覆部材によれば、第一実施形態の効果を奏すると共に、部材に締結部がある場合でも、樹脂層の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる。
【0074】
〔第七実施形態〕
次に本開示の第七実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図10は、樹脂被覆部材80の構成を示す断面模式図である。なお、上記の実施形態と同様の構成には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。第七実施形態は、第三実施形態と、主に部材72の構成が相違している。
【0075】
樹脂被覆部材80の部材72は、部材本体72aが、複数の部材板74と、隣接する部材板74を締結する締結部76と、を有している。部材72は、第六実施形態の樹脂被覆部材70の部材72と同様の構成であるので詳細な説明を省略する。
【0076】
樹脂被覆部材80は、剥離領域32と、非剥離領域34とを有している。剥離領域32は、部材本体72aと樹脂層16との間に設けられ、低粘着剤層14で形成されている。非剥離領域34は、部材本体72aと樹脂層16との間に設けられ、低粘着剤層14を含まないで構成されている。非剥離領域34は、格子状に設けられており、剥離領域32の周りは非剥離領域34で囲まれている。
【0077】
締結部76には、剥離領域32が設けられているとよい。剥離領域32は、締結部76に設けた低粘着剤層14で構成されている。剥離領域32は、締結部76の全面に設けられていてもよいし、締結部76の一部のみに設けられていてもよいが、締結部76の全面に設けられているとよい。上述したように締結部76はアンカー効果により密着力がより強固になるので、締結部76に剥離領域32を設けることにより密着力を低下させることができる。また、部材板74の平坦部には、非剥離領域34が設けられているとよい。部材板74の平坦部ではアンカー効果が殆ど生じないので、低粘着剤層14を設けなくても密着力を抑制可能だからである。例えば、部材板74の平坦部が格子状に配置されており、締結部76が部材板74の平坦部で囲まれて配置されている場合には、締結部76に剥離領域32を対応させると共に、部材板74の平坦部56に非剥離領域34を対応させて構成することが可能である。
【0078】
なお、樹脂被覆部材80の製造方法は、第三実施形態の樹脂被覆部材30の製造方法における低粘着剤層形成工程と、樹脂層形成工程と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0079】
上記構成の樹脂被覆部材によれば、第三実施形態の効果を奏すると共に、部材に締結部がある場合でも、樹脂層の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができる。
【実施例0080】
低粘着剤について密着性評価試験を行った。まず実施例1から4の試験片について説明する。密着性評価試験は、JISZ0237(2009)の粘着力測定方法に準拠して行った。各試験片は、金属基材の表面に低粘着剤を塗布して低粘着剤層を被覆し、低粘着剤層の表面に樹脂層を被覆して作製した。各試験片の金属基材及び樹脂層は同じとした。金属基材には、鋼材を使用した。樹脂層は、透明ポリウレア樹脂で形成した。
【0081】
次に各試験片の低粘着剤層について説明する。実施例1の試験片では、シリコーン樹脂剤で低粘着剤層を形成した。実施例2の試験片では、フッ素樹脂剤で低粘着剤層を形成した。実施例3の試験片では、ポリビニルアルコール樹脂剤からなる糊剤で低粘着剤層を形成した。実施例4の試験片では、酢酸ビニル樹脂剤からなる糊剤で低粘着剤層を形成した。低粘着剤の溶剤については、実施例1,2の試験片では有機溶剤を使用し、実施例3,4の試験片では水を使用した。
【0082】
次に比較例1の試験片について説明する。比較例1の試験片は、実施例1から4の試験片に対して低粘着剤層がない点で相違しており、その他の構成については同じとした。より詳細には、金属基材の表面を透明ポリウレア樹脂で被覆して樹脂層を形成した。
【0083】
各試験片の形状は、幅が約24mm、長さが約300mmの矩形状とした。各試験片から樹脂層を剥がすときの剥離荷重を測定した。
図11は、密着力評価試験結果を示すグラフである。
図11のグラフでは、横軸に各試験片をとり、縦軸に剥離荷重をとり、各試験片の剥離荷重を棒グラフで示している。
【0084】
実施例1の試験片の剥離荷重は、80.00KNであった。実施例2の試験片の剥離荷重は、70.60KNであった。実施例3の試験片の剥離荷重は、3.14KNであった。実施例4の試験片の剥離荷重は、3.14KNであった。これに対して比較例1の試験片の剥離荷重は、97.30KNであった。この試験結果から実施例1から4の試験片は、比較例1の試験片よりも剥離荷重が小さくなることがわかった。実施例3から4の試験片は、実施例1から2の試験片よりも剥離荷重が更に小さくなることがわかった。また、実施例1から4の試験片は、樹脂層の密着性に対して適度な剥離荷重を有しており、適度な密着力が得られることがわかった。
【0085】
以上のことから、ポリビニルアルコール樹脂剤、酢酸ビニル樹脂剤からなる糊剤、シリコーン樹脂剤、フッ素樹脂剤で低粘着剤層を形成した場合には、低粘着剤層を形成しない場合に対して樹脂層の密着力を低下させることができることが明らかとなった。ポリビニルアルコール樹脂剤、酢酸ビニル樹脂剤からなる糊剤で低粘着剤層を形成した場合には、シリコーン樹脂剤、フッ素樹脂剤で低粘着剤層を形成した場合よりも樹脂層の密着力を更に低下させることができることが明らかとなった。また、ポリビニルアルコール樹脂剤、酢酸ビニル樹脂剤からなる糊剤、シリコーン樹脂剤、フッ素樹脂剤で低粘着剤層を形成した場合でも、樹脂層に対して適度な密着力が得られることがわかった。
【0086】
この結果から、ポリビニルアルコール樹脂剤、酢酸ビニル樹脂剤からなる糊剤、シリコーン樹脂剤、フッ素樹脂剤で低粘着剤層を形成することにより、樹脂層の剥離性と密着性とをバランスよく高めることができることが明らかとなった。