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特開2023-160131ポリアルデヒド化合物含有組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160131
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】ポリアルデヒド化合物含有組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 3/04 20060101AFI20231026BHJP
   C07H 1/00 20060101ALI20231026BHJP
   C08B 31/18 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C07H3/04
C07H1/00
C08B31/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070260
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】513244753
【氏名又は名称】カーリットホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】梅山 晃典
(72)【発明者】
【氏名】瀬野 勝之
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 みなみ
【テーマコード(参考)】
4C057
4C090
【Fターム(参考)】
4C057AA15
4C057AA30
4C057BB03
4C090AA03
4C090AA10
4C090BA08
4C090BB65
4C090CA34
4C090DA08
4C090DA11
4C090DA28
4C090DA31
(57)【要約】
【課題】加熱による着色が低減されたポリアルデヒド化合物含有組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ポリアルデヒド化合物に低分子量のアルデヒド化合物を一定量含有させることで、固体状態において加熱による着色が低減されたポリアルデヒド化合物含有組成物及びその製造方法を提供できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数1~6のアルデヒド化合物の含有量が50~2000mg/kgであるポリアルデヒド化合物含有組成物。
【請求項2】
酸化度が80%以上である請求項1に記載のポリアルデヒド化合物含有組成物。
【請求項3】
ポリアルデヒド化合物含有組成物に含まれるポリアルデヒド化合物が、アルデヒド基を2つ有する構造の単位が一部に形成されたデンプン、マルトデキストリン、マルトースおよびトレハロースからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物である請求項1又は請求項2に記載のポリアルデヒド化合物含有組成物。
【請求項4】
105℃の雰囲気下で6時間加熱後の粉体の色度bと加熱前の粉体のbとの差Δbが、0.0~3.0である請求項3に記載のポリアルデヒド化合物含有組成物。
【請求項5】
糖質からポリアルデヒド化合物含有組成物を得るための製造方法であって、過ヨウ素酸塩で糖質を酸化して得られるポリアルデヒド化合物含有組成物を、有機溶媒を含む溶媒で洗浄する工程を含む製造方法。
【請求項6】
糖質が、二糖類、三糖類乃至十糖類又は多糖類であることを特徴とする請求項5に記載のポリアルデヒド化合物含有組成物の製造方法。
【請求項7】
有機溶媒中にアルコール類が含まれることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のポリアルデヒド化合物含有組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアルデヒド化合物含有組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デンプンやデキストリン、オリゴ糖などの糖質から過ヨウ素酸塩等の酸化剤を用いて得られるポリアルデヒド化合物は、反応性の高いアルデヒド基を多数有しており、水酸基やアミノ基を容易に結合することができることから、紙力増強剤として優れることが知られている(特許文献1)。また、ポリアルデヒド化合物とポリアミンやポリアミドと組み合わせたバインダー組成物が知られている(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2005-509417
【特許文献2】再表2009/057802
【特許文献3】特開2015-113467
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~3のポリアルデヒド化合物は、アルデヒド基の反応性が高いため、固体状態において加熱による着色が発生する問題があることが本発明者らの検討により判明した。
従って、本発明は固体状態において加熱による着色が低減されたポリアルデヒド化合物含有組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究の結果、ポリアルデヒド化合物に低分子量のアルデヒド化合物を一定量含有させることで、固体状態において加熱による着色が低減されたポリアルデヒド化合物含有組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
本発明は以下に示すものである。
【0007】
[1]炭素数1~6のアルデヒド化合物の含有量が50~2000mg/kgであるポリアルデヒド化合物含有組成物。
[2]酸化度が80%以上である[1]に記載のポリアルデヒド化合物含有組成物。
[3]ポリアルデヒド化合物含有組成物に含まれるポリアルデヒド化合物が、アルデヒド基を2つ有する構造の単位が一部に形成されたデンプン、マルトデキストリン、マルトースおよびトレハロースからなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物である[1]又は[2]に記載のポリアルデヒド化合物含有組成物。
[4]105℃の雰囲気下で6時間加熱後の粉体の色度bと加熱前のbとの差Δbが、0.0~3.0である[1]~[3]のいずれかに記載のポリアルデヒド化合物含有組成物。
[5]糖質からポリアルデヒド化合物含有組成物を得るための製造方法であって、過ヨウ素酸塩で糖質を酸化して得られるポリアルデヒド化合物含有組成物を、有機溶媒を含む溶媒で洗浄する工程を含む製造方法。
[6]糖質が、二糖類、三糖類乃至十糖類又は多糖類であることを特徴とする[5]に記載のポリアルデヒド化合物含有組成物の製造方法。
[7]有機溶媒中にアルコール類が含まれることを特徴とする[5]又は[6]に記載のポリアルデヒド化合物含有組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、固体状態で加熱による着色が低減されたポリアルデヒド化合物含有組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明について説明する。
【0010】
[ポリアルデヒド化合物含有組成物]
本発明のポリアルデヒド化合物含有組成物は、例えば、糖質を過ヨウ素酸塩等の酸化剤で酸化することで得ることができる。
【0011】
本発明のポリアルデヒド化合物含有組成物は、ポリアルデヒド化合物と、炭素数1~6のアルデヒド化合物を50~2000mg/kg含む。
【0012】
ポリアルデヒド化合物含有組成物の炭素数1~6のアルデヒド化合物の含有量が50mg/kg未満であると、ポリアルデヒド化合物含有組成物は安定性が低下し、加熱による着色が増加する。メカニズムの詳細は明らかではないが、炭素数1~6のアルデヒド化合物とポリアルデヒド化合物に、強い分子間力が働き、安定性が向上し、加熱による着色が低減されるものと推定される。あるいは、アルデヒド基が水和されたヘミアルダール化による保護、または、水酸基とのアセタール化、ヘミアセタール化による保護が促進されたことによる安定化と推定される。
また、ポリアルデヒド化合物含有組成物の炭素数1~6のアルデヒド化合物の含有量が2000mg/kgを超えるものであると、ポリアルデヒド化合物含有組成物は安定性が著しく低くなり、加熱による着色が発生し、低分子量のアルデヒドは毒性が高いため、安全性に問題がある。
ポリアルデヒド化合物含有組成物の炭素数1~6のアルデヒド化合物の含有量は50mg/kg~1650mg/kgが好ましく、50mg/kg~510mg/kgがより好ましい。
【0013】
炭素数1~6のアルデヒド化合物を例示すると、ギ酸、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナールなどである。
【0014】
ポリアルデヒド化合物含有組成物に含まれる炭素数1~6のアルデヒド化合物は、糖質を酸化剤で酸化することにより発生したものを用いてもよく、添加したものであってもよい。
【0015】
本発明のポリアルデヒド化合物含有組成物の酸化度は、Pharmaceutical Research、Vol.8、400-402(1991)に記載の塩酸ヒドロキシルアミン法による手法で測定することができる。つまりは、アルデヒドを塩酸ヒドロキシルアミンと反応させ、発生した塩酸を水酸化ナトリウムで定量(終点pH5)し、下記一般式(1)により算出することができる。
【0016】
酸化度(%)=(V_NaOH×C_NaOH)/(s_サンプル×Mw)×1/2×100 …(1)
【0017】
式中、VNaOH=終点までの水酸化ナトリウム量、CNaOH=0.1mol/l、Sサンプル=サンプルの乾燥重量、Mw=160g/mol ジアルデヒドグルコースユニットの分子量 を表す。
【0018】
本発明のポリアルデヒド化合物含有組成物の酸化度は、架橋点の増大による紙力増強剤としての性能を向上させる観点から80%~100%であることが好ましく、90~100%であることがより好ましい。
[糖質]
本発明の実施形態に係る糖質は、グルコース単位をもつ化合物であり、一般式C(HO)で表される。
糖質を例示すると、単糖類、二糖類や三糖類乃至十糖類(いわゆるオリゴ糖)、多糖類などである。単糖類を例示すると、グルコース、フラクトース、ガラクトースやマンノースなどである。二糖類を例示すると、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロースやセロビオースなどである。オリゴ糖を例示すると、スタキオース、マルトトリオース、マルトテトラオースやマルトペンタオースなどである。多糖類を例示すると、デンプン、シクロデキストリン、セルロース、デキストラン、βグルカン、デキストリン、グリコーゲン、ブルラン、α-グルカン、グリコサミノグリカン、キチン、プロテオグリカン、ポリウロニド、キトサン、カラギーナン、ヘミセルロース、マンナン、ガラクタン、キシラン、イヌリン、フルクタンなどである。
糖質は、二糖類、三糖類乃至十糖類又は多糖類であることが好ましい。
【0019】
[ポリアルデヒド化合物]
本発明のポリアルデヒド化合物は、例えば、糖質を過ヨウ素酸塩等の酸化剤で酸化させることで得ることができる。ポリアルデヒド化合物は、糖質の分子鎖が持つグルコピラノース単位において、主に隣接する炭素間が開裂し、隣接するカルビノール基(>C-OH)がともにアルデヒド基に変換されて、アルデヒド基を2つ有する構造の単位が形成された化合物である。
【0020】
本発明のポリアルデヒド化合物の酸化度は、架橋点の増大による架橋点の増大による紙力増強剤としての性能を向上させる観点から80%~100%であることが好ましく、85%~100%であることがより好ましい。
【0021】
本発明のポリアルデヒド化合物含有組成物に含まれるポリアルデヒド化合物の量は、80質量%~100質量%であることが好ましい。
【0022】
本発明のポリアルデヒド化合物含有組成物に含まれる水分の量は、0質量%~20質量%であることが好ましい。
【0023】
[ポリアルデヒド化合物含有組成物の製造方法]
【0024】
本発明において、ポリアルデヒド化合物のアルデヒド基は、糖質に、分子骨格中のグルコピラノース環における主に隣接する炭素原子間の結合の一部を開裂させ、隣接するカルビノール基の両方または片方をアルデヒド基に変換する酸化剤を作用させることによって導入されたものであることが好ましい。
【0025】
該酸化剤としては、処理の簡便さから、過ヨウ素酸および過ヨウ素酸塩からなる群から選ばれる少なくとも1種(以下、過ヨウ素酸(塩)ともいう。)が好ましい。過ヨウ素酸塩としては、過ヨウ素酸ナトリウム、過ヨウ素酸カリウム、過ヨウ素酸アンモニウム、過ヨウ素酸ルビジウム、過ヨウ素酸セシウム等が挙げられる。過ヨウ素酸(塩)としては、扱いやすさの面から過ヨウ素酸ナトリウムが好ましい。
【0026】
その他、該酸化剤としては、硝酸セリウム(IV)、四酢酸鉛、酢酸コバルト(II)と酸素の組み合せ、ヨウ素と酸化水銀(II)の組み合せ、硝酸銀とペルオキソ二硫酸カリウムの組み合せなどが挙げられる。
【0027】
過ヨウ素酸(塩)を糖質に作用させた場合、通常、糖質の分子鎖が持つグルコピラノース単位において、主に隣接する炭素間が開裂し、隣接するカルビノール基(>C-OH)がともにアルデヒド基に変換されて、アルデヒド基を2つ有する構造の単位(以下、「アルデヒド基を2つ有する構造の単位」とも記載する)が形成される。
過ヨウ素酸(塩)を用いた酸化反応については後で詳しく説明する。
【0028】
前記酸化剤として過ヨウ素酸(塩)を用いる場合、アルデヒド基の導入に用いる酸化剤の添加量は、前記糖質1g当たり0.1mmol以上10.0mmol以下の範囲内であることが好ましく、0.15mmol以上5.0mmol以下であることがより好ましい。
【0029】
過ヨウ素酸(塩)による酸化処理方法は特に限定しないが、一般に、過ヨウ素酸(塩)による糖質の反応では、糖質のグリコシド結合の切断などの副反応が生じることや、過ヨウ素酸(塩)自体が光に対して不安定であることが知られている。これらの影響を低減するために、暗所のもと、例えば0~80℃で糖質分散液に過ヨウ素酸(塩)を添加し、適宜攪拌操作することにより行うことが望ましい。過ヨウ素酸(塩)による酸化処理時間も特に限定はしないが、反応を完全に進行させるため、48時間程度攪拌し続けることが好ましい。
【0030】
なお、本発明において用いられるポリアルデヒド化合物は、アルデヒド基を有するものであれば、その製造方法については上記の方法に限定されない。
【0031】
[ポリアルデヒド化合物含有組成物の洗浄に用いられる溶媒]
糖質を酸化して得られるポリアルデヒド化合物含有組成物を洗浄することで、ポリアルデヒド化合物含有組成に含まれる炭素数1~6のアルデヒド化合物の量を調整することができる。ポリアルデヒド化合物含有組成物の洗浄に用いられる溶媒には、水又は有機溶媒を用いることができる。
【0032】
有機溶媒としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、セロソルブ類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、スルホン類等を用いることができる。
【0033】
アルコール類としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール、n-アミルアルコール、s-アミルアルコール、t-アミルアルコール、アリルアルコール、イソアミルアルコール、イソブチルアルコール、2-エチルブタノール、2-オクタノール、n-オクタノール、シクロヘキサノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、ベンジルアルコール、メチルシクロヘキサノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等が挙げられる。
【0034】
ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチル-n-プロピルケトン等が挙げられる。
【0035】
エステル類としては、アセト酢酸エチル、安息香酸エチル、安息香酸メチル、蟻酸イソブチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸メチル、酢酸イソブチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸メチル、サリチル酸メチル、シュウ酸ジエチル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、フタル酸エチル、フタル酸メチル、フタル酸ブチル、γ-ブチロラクトン、マロン酸エチル、マロン酸メチル等が挙げられる。
【0036】
エーテル類としては、メチルグリコール、メチルジグリコール、メチルトリグリコール、メチルポリグリコール、イソプロピルグリコール、イソプロピルジグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、ブチルトリグリコール、イソブチルグリコール、イソブチルジグリコール、ブチルジグリコールアセテート、ヘキシルグリコール、ヘキシルジグリコール、2-エチルヘキシルグリコール、2-エチルヘキシルジグリコール、アリルグリコール、フェニルグリコール、フェニルジグリコール、ベンジルグリコール、ベンジルジグリコール、メチルプロピレングリコール、メチルプロピレンジグリコール、メチルプロピレントリグリコール、プロピルプロピレングリコール、プロピルプロピレンジグリコール、ブチルプロピレングリコール、ブチルプロピレンジグリコール、ブチルプロピレントリグリコール、フェニルプロピレングリコール、メチルプロピレングリコールアセテート、ジメチルグリコール、ジメチルジグリコール、ジメチルトリグリコール、メチルエチルジグリコール、ジエチルジグリコール、ジブチルジグリコール、ジメチルプロピレンジグリコール等が挙げられる。
【0037】
セロソルブ類としては、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等が挙げられる。
【0038】
芳香族炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0039】
脂肪族炭化水素類としては、ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。
【0040】
スルホン類としては、スルホラン、ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、エチルイソプロピルスルホン、3-メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0041】
前記溶媒は単独で用いる他、混合して用いることができる。
【0042】
ポリアルデヒド化合物含有組成物に低分子量のアルデヒド化合物を適度な量含ませることができるため、前記洗浄溶媒の中でも、水又はアルコールが溶媒に含まれることが好ましく、アルコールが含まれることが特に好ましい。
【実施例0043】
[実施例1]
水300gにデンプンを乾燥重量で10.0gを添加し、撹拌しながら硫酸を入れてpH4.0に調整した。この溶液に過ヨウ素酸ナトリウム13.2gを添加し、60℃で5時間反応させた。反応後の溶液を中和した後にろ過、水洗浄で無機塩を除去し、得られたスラリーを凍結乾燥にて水分を除去することで粗精製物を得た。作製した粗精製物にメタノール100gを添加して撹拌した後、ろ過して精製物を回収した。得られた精製物を乾燥させることで、デンプン由来のポリアルデヒド化合物含有組成物を得た。
【0044】
[実施例2]
メタノールを、水:メタノール=1:1に代えた以外は実施例1と同様にして、デンプン由来のポリアルデヒド化合物含有組成物を得た。
[実施例3]
実施例2と同様にして得た精製物に、水:メタノール=1:1の混合溶媒を50g添加して撹拌した後、ろ過して回収した固形物を乾燥させることで、デンプン由来のポリアルデヒド化合物含有組成物を得た。
【0045】
[実施例4]
水300gにマルトデキストリン(DE:13~17)を乾燥重量で10.0gを添加し、撹拌しながら硫酸を入れてpH4.0に調整した。この溶液に過ヨウ素酸ナトリウム13.2gを添加し、60℃で5時間反応させた。その後、電気透析により無機塩を除去し、得られた水溶液を凍結乾燥にて水分を除去することで粗精製物を得た。作製した粗精製物にメタノール100gを添加して撹拌した後、ろ過して精製物を回収した。得られた精製物を乾燥させることで、マルトデキストリン由来のポリアルデヒド化合物含有組成物を得た。
【0046】
[実施例5]
メタノールを、水:メタノール=1:1に代えた以外は実施例4と同様にして、マルトデキストリン由来のポリアルデヒド化合物含有組成物を得た。
[実施例6]
実施例5と同様にして得た精製物に、水:メタノール=1:1の混合溶媒を50g添加して撹拌した後、ろ過して回収した固形物を乾燥させることで、マルトデキストリン由来のポリアルデヒド化合物含有組成物を得た。
【0047】
[実施例7]
水300gにマルトースを乾燥重量で10.0gを添加し、撹拌しながら硫酸を入れてpH4.0に調整した。この溶液に過ヨウ素酸ナトリウム13.2gを添加し、40℃で5時間反応させた。その後、電気透析により無機塩を除去し、得られた水溶液を凍結乾燥にて水分を除去することで粗精製物を得た。作製した粗精製物に2-プロパノール100gを添加して撹拌した後、ろ過して精製物を回収した。得られた精製物を乾燥させることで、マルトース由来のポリアルデヒド化合物含有組成物を得た。
【0048】
[実施例8]
2-プロパノールを、水:2-プロパノール=1:1に代えた以外は実施例7と同様にして、マルトース由来のポリアルデヒド化合物含有組成物を得た。
[実施例9]
実施例8と同様にして得た精製物に、水:2-プロパノール=1:1の混合溶媒を50g添加して撹拌した後、ろ過して回収した固形物を乾燥させることで、マルトース由来のポリアルデヒド化合物含有組成物を得た。
【0049】
[実施例10]
水300gにトレハロースを乾燥重量で10.0gを添加し、撹拌しながら硫酸を入れてpH4.0に調整した。この溶液に過ヨウ素酸ナトリウム13.2gを添加し、40℃で5時間反応させた。その後、電気透析により無機塩を除去し、得られた水溶液を凍結乾燥にて水分を除去することで粗精製物を得た。作製した粗精製物に2-プロパノール100gを添加して撹拌した後、ろ過して精製物を回収した。得られた精製物を乾燥させることで、トレハロース由来のポリアルデヒド化合物含有組成物を得た。
【0050】
[実施例11]
2-プロパノールを、水:2-プロパノール=1:1に代えた以外は実施例10と同様にして、トレハロース由来のポリアルデヒド化合物含有組成物を得た。
[実施例12]
実施例11と同様にして得た精製物に、水:2-プロパノール=1:1の混合溶媒を50g添加して撹拌した後、ろ過して回収した固形物を乾燥させることで、トレハロース由来のポリアルデヒド化合物含有組成物を得た。
【0051】
[比較例1]
水300gにデンプンを乾燥重量で10.0gを添加し、撹拌しながら硫酸を入れてpH4.0に調整した。この溶液に過ヨウ素酸ナトリウム13.2gを添加し、60℃で5時間反応させた。その後、ろ過、水洗浄で無機塩を除去し、得られたスラリーを凍結乾燥にて水分を除去することでデンプン由来のポリアルデヒド化合物含有組成物を得た。
【0052】
[比較例2]
実施例2と同様にして得た精製物に、水:メタノール=1:1の混合溶媒100g添加して撹拌した後、ろ過して固形物を回収した。さらに、固形物に水:メタノール=1:1の混合溶媒300gを添加して撹拌した後、ろ過して固形物を回収し、得られた固形物を乾燥させることで、デンプン由来のポリアルデヒド化合物含有組成物を得た。
【0053】
[比較例3]
水300gにマルトデキストリン(DE:13~17)を乾燥重量で10.0gを添加し、撹拌しながら硫酸を入れてpH4.0に調整した。この溶液に過ヨウ素酸ナトリウム13.2gを添加し、60℃で5時間反応させた。その後、ろ過、水洗浄で無機塩を除去し、得られたスラリーを凍結乾燥にて水分を除去することでマルトデキストリン由来のポリアルデヒド化合物含有組成物を得た。
【0054】
[比較例4]
実施例5と同様にして得た精製物に、水:メタノール=1:1の混合溶媒を添加して撹拌した後、ろ過して固形物を回収した。さらに、固形物に水:メタノール=1:1の混合溶媒300gを添加して30℃で1時間撹拌した後、ろ過して固形物を回収し、得られた固形物を乾燥させることで、マルトデキストリン由来のポリアルデヒド化合物含有組成物を得た。
【0055】
[比較例5]
水300gにマルトースを乾燥重量で10.0gを添加し、撹拌しながら硫酸を入れてpH4.0に調整した。この溶液に過ヨウ素酸ナトリウム13.2gを添加し、40℃で5時間反応させた。その後、ろ過、水洗浄で無機塩を除去し、得られたスラリーを凍結乾燥にて水分を除去することでマルトース由来のポリアルデヒド化合物含有組成物を得た。
【0056】
[比較例6]
実施例8と同様にして得た精製物に、水:2-プロパノール=1:1の混合溶媒を添加して撹拌した後、ろ過して固形物を回収した。さらに、固形物に水:2-プロパノール=1:1の混合溶媒300gを添加して撹拌した後、ろ過して固形物を回収し、得られた固形物を乾燥させることで、マルトース由来のポリアルデヒド化合物含有組成物を得た。
【0057】
[比較例7]
水300gにトレハロースを乾燥重量で10.0gを添加し、撹拌しながら硫酸を入れてpH4.0に調整した。この溶液に過ヨウ素酸ナトリウム13.2gを添加し、40℃で5時間反応させた。その後、電気透析により無機塩を除去し、得られた水溶液を凍結乾燥にて水分を除去することでトレハロース由来のポリアルデヒド化合物含有組成物を得た。
【0058】
[比較例8]
実施例11と同様にして得た精製物に、水:2-プロパノール=1:1の混合溶媒を添加して撹拌した後、ろ過して固形物を回収した。さらに、固形物に水:2-プロパノール=1:1の混合溶媒300gを添加して撹拌した後、ろ過して固形物を回収し、得られた固形物を乾燥させることで、トレハロース由来のポリアルデヒド化合物含有組成物を得た。
【0059】
実施例1~12、および比較例1~8で作製したポリアルデヒド化合物含有組成物を以下の方法で分析した。
【0060】
[酸化度の測定]
作製したポリアルデヒド化合物含有組成物の酸化度は、Pharmaceutical
Research、Vol.8、400-402(1991)に記載の塩酸ヒドロキシルアミン法による手法で測定した。つまりは、アルデヒドを塩酸ヒドロキシルアミンと反応させ、発生した塩酸を水酸化ナトリウムで定量(終点pH5)し、下記式(1)により算出した。
【0061】
酸化度(%)=(V_NaOH×C_NaOH)/(s_サンプル×Mw)×1/2×100 …(1)
【0062】
式中、VNaOH=終点までの水酸化ナトリウム量、CNaOH=0.1mol/l、Sサンプル=サンプルの乾燥重量、Mw=160g/mol ジアルデヒドグルコースユニットの分子量 を表す。
【0063】
[アルデヒド化合物の定量]
炭素数1~6のアルデヒド化合物の定量と同定には、ガスクロマトグラフィー・マススペクトロメトリー(GC-MS)を用いた。本体は、アジレント・テクノロジー社5973型を用い、カラムは、DB-5MSを用いた。キャリアガスは、ヘリウムを用いた。注入口温度は250℃、カラム温度は40℃から毎分20℃で昇温し、最終的には230℃とする条件で行った。マススペクトロメトリー部の条件は、イオン化法は電子衝撃法で、電圧は70eVとした。イオン源温度は200℃で、スキャン速度は0.8sec/scanとした。
【0064】
[安定性の評価]
粉体のポリアルデヒド化合物含有組成物をガラスシャーレに入れて、105℃の雰囲気下で6時間加熱する耐熱性試験を行い、粉体の色度bについて加熱前と加熱後の差Δbを算出した。色度は日本電色工業社の分光色差計NR555型を用いて測定した。
【0065】
分析結果を表1に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
上記のとおり、本発明の実施例1~12で得られる、炭素数1~6のアルデヒド化合物を50~2000mg/kg含有するポリアルデヒド化合物含有組成物は、安定性が向上し、固体状態において加熱による着色が低減された。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のポリアルデヒド化合物含有組成物は加熱による着色が低減されるため、紙力増強剤等に適用できる。