IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社イノアックコーポレーションの特許一覧 ▶ 株式会社イノアック技術研究所の特許一覧

<>
  • 特開-複合材 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160147
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】複合材
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20231026BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20231026BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20231026BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231026BHJP
   C09J 7/21 20180101ALI20231026BHJP
【FI】
C09J7/38
B32B27/12
C09J201/00
B65D65/40 D
C09J7/21
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070288
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(71)【出願人】
【識別番号】000127307
【氏名又は名称】株式会社イノアック技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100132137
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 謙一郎
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 諒太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 甫規
(72)【発明者】
【氏名】宮田 敦史
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086BA04
3E086BA15
3E086BA19
3E086BB84
4F100AC03B
4F100AJ06A
4F100AK07A
4F100AN01B
4F100BA02
4F100CA16B
4F100CA18B
4F100CB00B
4F100DG01A
4F100DG02A
4F100DG15A
4F100JB05B
4F100JK06
4F100JK10
4F100JM01B
4F100YY00A
4J004AA05
4J004AA18
4J004AB01
4J004CB01
4J004FA06
4J040CA011
4J040JA03
4J040JB09
4J040KA26
4J040KA42
4J040MA10
4J040MB02
4J040NA06
(57)【要約】
【課題】 包装材として好適に使用可能な、新たな複合材を提供する。
【解決手段】 本発明のある態様は、不織布と、前記不織布の表面に設けられており、水系粘着剤により形成された粘着剤層と、を備え、前記不織布は、下記測定方法1で測定された吸収時間が60秒以上であることを特徴とする、複合材である。
(測定方法1)
20mm×20mmのサイズに加工した前記不織布に前記水系粘着剤を0.2ml滴下したのち、前記不織布の側面からマイクロスコープで観察し、前記不織布上に前記水系粘着剤が保持された時間を測定する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布と、前記不織布の表面に設けられており、水系粘着剤により形成された粘着剤層と、を備え、
前記不織布は、下記測定方法1で測定された吸収時間が60秒以上である
ことを特徴とする、複合材。
(測定方法1)
20mm×20mmのサイズに加工した前記不織布に前記水系粘着剤を0.2ml滴下したのち、前記不織布の側面からマイクロスコープで観察し、前記不織布上に前記水系粘着剤が保持された時間を測定する。
【請求項2】
不織布と、前記不織布の表面に設けられており、水系粘着剤により形成された粘着剤層と、を備え、
剥離強度が0.3N/25mm以上であり、
衝撃吸収率が20%以上である
ことを特徴とする、複合材。
【請求項3】
前記粘着剤層が自己粘着性を有する、請求項1又は2に記載の複合材。
【請求項4】
前記複合材が包装材である、請求項1又は2に記載の複合材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合材に関する。
【背景技術】
【0002】
スポイラー、サイドモール、リアウインドウガーニッシュ等の塗装が施された自動車部品の外装品は、部品メーカで塗装され、その後、アセンブリメーカまで搬送され、車体に組み付けられる。これら外装品が搬送される際に、外装品の意匠面に汚れ、傷等がつかないように、部品一つ一つに、各種の包装材(梱包材)で包装されている場合がある。
【0003】
これら包装材のなかには、面材の片面に粘着剤が塗布されたものがあり、搬送される部品の周辺端部を部分的に被覆したり、一枚の包装材で部品全体を覆ったりしている。粘着剤は、部品の意匠面に密着することもあり、部品に粘着し包装するが、剥離が容易な材料が選択されている。さらに、部品全体をエアーセル等の緩衝材で覆い、箱詰めされることもある。
【0004】
このような包装材として、特許文献1には、所定のポリエチレン発泡層と、ゴムラテックスからなる所定の粘着剤と、を含む積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-034171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、環境対応の観点から脱プラスチックの要求が高まっており、従来の気泡緩衝材や、樹脂発泡層を用いた部材とは異なる、新たな包装材が求められている。
【0007】
そこで、本発明は、包装材として好適に使用可能な、新たな複合材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究を行い、特定の複合材によって前記課題を解決可能であることを見出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は下記の通りである。
【0009】
本発明のある態様は、
不織布と、前記不織布の表面に設けられており、水系粘着剤により形成された粘着剤層と、を備え、
前記不織布は、下記測定方法1で測定された吸収時間が60秒以上である
ことを特徴とする、複合材である。
(測定方法1)
20mm×20mmのサイズに加工した前記不織布に前記水系粘着剤を0.2ml滴下したのち、前記不織布の側面からマイクロスコープで観察し、前記不織布上に前記水系粘着剤が保持された時間を測定する。
【0010】
本発明の別の態様は、
不織布と、前記不織布の表面に設けられており、水系粘着剤により形成された粘着剤層と、を備え、
剥離強度が0.3N/25mm以上であり、
衝撃吸収率が20%以上である
ことを特徴とする、複合材である。
【0011】
前記粘着剤層が自己粘着性を有することが好ましい。
前記複合材が包装材であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、包装材として好適に使用可能な、新たな複合材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、衝撃吸収率の測定方法の概要を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下であることを表す。
【0015】
本明細書中、複数の上限値と複数の下限値とが別々に記載されている場合、これらの上限値と下限値とを自由に組み合わせて設定可能な全ての数値範囲が本明細書に記載されているものとする。
【0016】
本明細書中、ある化合物が記載されている場合、その異性体も同時に記載されているものとする。
【0017】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
【0018】
<<<複合材の構造>>>
複合材は、不織布と、不織布の表面に設けられた粘着剤層とを備える。
粘着剤層は、水系粘着剤により形成されていることが好ましい。
【0019】
別の表現によれば、複合材は、不織布と、不織布の表面に積層された粘着剤層とを有し、粘着剤層は水系粘着剤により形成されており、不織布の粘着剤層に隣接する側には、水系粘着剤が不織布に含浸することで形成された粘着剤含浸領域が形成され、不織布と粘着剤層とが一体化されている。
【0020】
複合材は、その他の層(例えば、印刷層や、表面保護層等)を有していてもよい。
【0021】
<<不織布>>
不織布を構成する繊維としては、特に限定されないが、比較的疎水性が高い繊維である疎水性繊維を含むことが好ましい。より具体的には、不織布を構成する繊維として、疎水性の合成繊維の他、比較的親水性が高い繊維である親水性繊維(親水性の合成繊維、天然繊維、半合成繊維等)の撥水化処理物を含むことが好ましい。このような繊維を用いることで、後述する吸収時間を所定範囲に設定しやすくなるとともに、複合材の防汚性等を高めることができる。
【0022】
合成繊維としては、ポリエステル繊維(例えば、PET繊維、PEN繊維、PTT繊維、PLA繊維、PBS繊維等)、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリオレフィン繊維(例えば、PE繊維、PP繊維等)、PE/ポリエステル複合繊維、PE/PP複合繊維等が挙げられる。合成繊維は、撥水化処理が実施されていてもよい。例えば、前述したもののうち、PLA繊維やPBS繊維は比較的親水性が高いことから、撥水化処理が実施されていることが好ましい。
【0023】
天然繊維としては、綿、シルク、パルプ、羊毛、麻等が挙げられる。
【0024】
半合成繊維としては、レーヨン繊維、アセテート繊維等が挙げられる。
【0025】
繊維は、2種類以上の材質によって構成された繊維(例えば、芯鞘構造を有する繊維)であってもよい。
【0026】
撥水化処理は、例えば、繊維表面に撥水剤を付着させることで実施できる。撥水剤は、例えば、フッ素系化合物の他、非フッ素化合物(炭化水素系化合物やシリコーン系化合物等)が挙げられる。
【0027】
繊維は、撥水化処理以外の表面処理が実施されていてもよい。
【0028】
繊維は、撥水化処理が実施されたレーヨン(撥水レーヨン)を含むことが好ましい。繊維が撥水レーヨンを含むことで、後述する吸収時間、衝撃吸収率、剥離強度等の各物性を適切な範囲に調整しやすくなる。
【0029】
不織布は、1種類の繊維のみを含んでいてもよいし、2種類以上の繊維を含んでいてもよい。
【0030】
不織布は、親水性繊維と、疎水性繊維と、の混合物であってもよい。例えば、不織布は、撥水レーヨンとレーヨンとの混合物であってもよい。この場合、疎水性繊維(例えば、撥水レーヨン)は、繊維全体に対して、50質量%超であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
【0031】
不織布を構成する繊維の平均繊維径は、特に限定されないが、5~100μmであることが好ましく、10~30μmであることがより好ましい。繊維層をSEM(株式会社キーエンス製、VHX-D510)で撮影し、得られた画像に含まれる繊維の繊維径を10本分測定し、それを平均したものを平均繊維径とする。
【0032】
不織布の目付は、10g/m以上、25g/m以上、又は、50g/m以上であることが好ましく、また、1000g/m以下、500g/m以下、又は、200g/m以下であることが好ましい。
【0033】
不織布の目付をこのような範囲とすることで、衝撃吸収率と剥離強度とのバランスに優れた複合材とすることができる。
【0034】
不織布の厚みは、0.30mm以上、0.50mm以上、又は、1.00mm以上であることが好ましく、また、20.00mm以下、10.00mm以下、又は、5.00mm以下であることが好ましい。
【0035】
不織布の密度(目付/厚み)は、25kg/m以上、40kg/m以上、又は、50kg/m以上であることが好ましく、500kg/m以下、200kg/m以下、又は、100kg/m以下であることが好ましい。
【0036】
不織布は、湿式抄紙法、乾式抄紙法、スパンボンド法、メルトブロー法、ラテックス樹脂ボンド法、溶剤ボンド法、スティッチボンド法、ニードルパンチ法、スパンレース法、サーマルボンド法、エアスルー法、エアレイド法等の公知の方法により製造することができる。
【0037】
不織布は、表面処理/表面改質がされていてもよい。例えば、不織布の表面は、熱ロール等を用いた表面平滑化処理が実施されていてもよい。このような表面平滑化処理を実施することで、剥離強度を高めることができる。
【0038】
不織布は、以下の測定方法1で示された不織布の吸収時間Tが、60秒以上であることが好ましく、120秒以上であることがより好ましく、180秒以上であることが更に好ましく、300秒超であることが特に好ましい。
【0039】
(測定方法1)
20mm×20mmのサイズに加工した不織布に水系粘着剤を0.2ml滴下したのち、不織布の側面からマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VH-ZST)で観察し、不織布上に水系粘着剤が保持された時間を測定する。
測定方法1における水系粘着剤は、複合材の粘着剤層を形成する原料である水系粘着剤を示す。
【0040】
なお、不織布上に水系粘着剤が保持された時間とは、水系粘着剤が不織布に滴下された瞬間から、水系粘着剤が不織布に吸収され、目視にて水系粘着剤が確認できなくなるまでの時間を示す。
【0041】
ここで、別の観点では、不織布は、以下の測定方法2で示された不織布の吸収時間Tが、60秒以上であることが好ましく、120秒以上であることがより好ましく、180秒以上であることが更に好ましく、300秒超であることが特に好ましい。
【0042】
(測定方法2)
20mm×20mmのサイズに加工した不織布に水系粘着剤を0.2ml滴下したのち、不織布の側面からマイクロスコープ(株式会社キーエンス製、VH-ZST)で観察し、不織布上に水系粘着剤が保持された時間を測定する。
測定方法2における水系粘着剤は、天然ゴムラテックスを主成分とし、ブルックフィールド粘度計で測定された25℃粘度が850~1000mPa・s(好ましくは、900~950mPa・s又は900~920mPa・s)である水系粘着剤である。
【0043】
吸収時間Tや吸収時間Tを上記範囲とすることで、複合材の剥離強度等を向上させることができる。
【0044】
不織布を構成する繊維の撥水性を高めることで、吸収時間T及び吸収時間Tを長くすることができる。また、不織布の目付等によっても、吸収時間T及び吸収時間Tを調整することができる。
【0045】
<<粘着剤層>>
粘着剤層は、水系粘着剤により形成されている。
【0046】
水系粘着剤とは、水系媒体中に、粘着剤成分である高分子材料を溶解させた水溶性タイプ又は粘着剤成分である高分子材料を分散させたエマルジョンタイプの液状組成物であり、液状組成物を乾燥させることで、固形分が残留して、粘着剤層が形成される。
【0047】
水系粘着剤により形成された粘着剤層を用いることで、環境負荷を低減しつつ、所望の剥離強度を得やすい。
【0048】
粘着剤層の主成分である粘着剤成分(高分子材料)としては、特に限定されず、ゴム系(合成ゴム系、天然ゴム系)、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、シリコーン系、エチレン酢酸ビニル共重合体系等が挙げられる。
【0049】
粘着剤層は、自己粘着性を有することが好ましい。自己粘着性を有する粘着剤とは、粘着剤の被着対象を同種の粘着剤とした場合には比較的強い粘着性を発揮し、それ以外の被着対象に対しては粘着性が発揮し難い性質を有する粘着剤を示す。
【0050】
自己粘着性を有する粘着剤層は、例えば、粘着剤層(又は、水系粘着剤)に、フィラーを含有させることで形成することができる。この場合、粘着剤層に含まれるフィラーが粘着剤層の表面から突出することで、被着対象と粘着剤層中の粘着剤成分との接触を阻害し、粘着性が発揮し難くなり、自己粘着性を有する粘着剤層同士を接触させ押圧することで、フィラーが粘着剤層に沈み込む等して粘着性が発揮される。
【0051】
フィラーとしては、粘土鉱物(カオリナイト、モンモリロナイト、パイロフィライト、タルク、雲母、及び、珪藻土等)、シリカ、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、カーボン系材料等が挙げられる。粘土鉱物は、カオリナイトを主成分とするカオリンや、モンモリロナイトを主成分とするクレイ等の混合物の形態であってもよい。
【0052】
フィラーの平均粒子径(レーザー回折法にて測定されるD50)は、例えば、0.1~20μmであることが好ましく、0.2~10μmであることがより好ましく、0.5~5μmであることが更に好ましい。
【0053】
フィラーの含有量は、特に限定されないが、粘着剤層全体(水系粘着剤中の固形分全体)を100質量%とした際に、1~25質量%等とすることができる。
【0054】
また、水系粘着剤は、その他の成分(粘着剤成分及びフィラー以外の成分)を含んでいてもよい。その他の成分としては、界面活性剤(例えば、乳化剤)、粘着付与剤、加硫促進剤、架橋剤、粘度調整剤、消泡剤、分散剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、老化防止剤、着色剤等の公知の添加剤が挙げられる。
【0055】
その他の成分の含有量は、特に限定されないが、粘着剤層全体(水系粘着剤中の固形分全体)を100質量%とした際に、1~25質量%等とすることができる。
【0056】
<<<複合材の物性/性質>>>
<<衝撃吸収率>>
複合材の衝撃吸収率(点衝撃吸収率)は、20%以上、25%以上、30%以上、40%以上、50%以上、又は、60%以上であることが好ましい。衝撃吸収率の上限は、特に限定されない。
【0057】
複合材の衝撃吸収率は、以下の測定方法3に従って測定することができる。
【0058】
<測定方法3>
図1に、衝撃吸収率の測定方法の概要(特に、試験機や試料の配置関係)を示す。
図1に示すように、落下型衝撃吸収試験機1を使用し衝撃吸収試験を行う。
φ50mmのサイズに加工した複合材(試料11)を試料台12に設置し、気温23℃の環境下において、重さ12gの衝撃子10(鋼球)を10cmの高さから落下させる。
式1に基づいて衝撃吸収率を算出する。
衝撃吸収率(%)={(fa0-fa1)/fa0}×100 (式1)
式1において、fa0は、試料11を試料台12に設置せずに衝撃吸収試験を行った時の衝撃荷重であり、fa1は、試料11を試料台12に設置して衝撃吸収試験を行った時の衝撃荷重である。衝撃荷重は、試料台12に設置したセンサー13によって測定する。
【0059】
<<剥離強度>>
複合材の剥離強度(180°剥離強度)は、0.3N/25mm以上、0.4N/25mm以上、0.5N/25mm以上、0.8N/25mm以上、1.0N/25mm以上、又は、2.0N/25mm以上であることが好ましい。剥離強度の上限は、特に限定されないが、例えば、50.0N/25mm以下、40.0N/25mm以下、30.0N/25mm以下、20.0N/25mm以下、又は、10.0N/25mm以下である。
【0060】
複合材の剥離強度は、以下の測定方法4に従って測定することができる。
【0061】
<測定方法4>
(試料作製)
複合材から幅25mm、長さ100mmの試料を2枚切り出す。これら2枚の試料の粘着面側を重ね合わせ、平滑な面の上にのせる。別途用意した幅45mm、質量5kgのゴム被覆ハンドローラーを試料の長手方向に回転させながら1往復させ、加圧密着させる。加圧密着後に1時間以上放置し、試料とする。
(剥離試験)
材料試験機(島津製作所製、オートグラフAG-X)を用いて180°剥離試験を行う。試料の端部から10mmの部分を材料試験機のチャック部に固定し、300mm/minの引張速度(クロスヘッドスピード)で剥離させ、剥離強度を測定する。
【0062】
<<<複合材の製造方法>>>
複合材の製造方法は、特に限定されない。一例として、不織布に水系粘着剤を塗布する工程である塗布工程、及び、不織布に塗布された水系粘着剤を乾燥させ、粘着剤層を形成する(水系粘着剤由来の固形分を残留させる)工程である乾燥工程を実施することで、複合材を製造することができる。
【0063】
不織布については、前述した通りである。
【0064】
水系粘着剤の各成分(固形分)は、前述した通りである。
【0065】
水系粘着剤に含まれる液体媒体は、水であってもよいし、水と水溶性の液体との混合物であってもよい。水溶性の液体としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール類、N-メチルピロリドン等の極性溶剤が挙げられる。
【0066】
水系粘着剤中の液体媒体の含有量は、水系粘着剤の粘度等を考慮して適宜調整すればよい。
【0067】
水系粘着剤の粘度(ブルックフィールド粘度計で測定された25℃粘度)は、水系粘着剤を不織布に塗布する手段(塗布手段)等に応じて適宜変更すればよい。水系粘着剤の粘度は、例えば、100~2000mPa・s、200~1800mPa・s、又は、300~1500mPa・s等とすればよい。
【0068】
水系粘着剤の塗布手段としては、例えば、ロールコーター、グラビアロールコーター、リバースロールコーター、ディップロールコーター、ワイヤーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター等が挙げられる。
【0069】
水系粘着剤の塗布量は、所望の粘着剤層厚み等となるように適宜調整すればよく、特に限定されないが、剥離強度や衝撃吸収性等を適切な範囲とするために、5~200g/m、10~100g/m、又は、10~50g/mとすることが好ましい。
【0070】
水系粘着剤の乾燥手段としては、特に限定されないが、熱風乾燥等を用いることができる。また、乾燥条件(乾燥温度や乾燥時間)も特に限定されないが、例えば、50~100℃、10秒~10分等の条件とすることができる。
また、乾燥後に、数時間~数日間に亘って粘着剤層を熟成(養生)させる工程を設けてもよい。
【0071】
<<<複合材の用途>>>
本形態に係る複合材の用途は、特に限定されないが、粘着剤層を有する緩衝材として使用可能なことから、包装材(梱包材)として好ましく使用される。
【0072】
特に、本形態に係る複合材は、塗装が施された部品の意匠面を保護するための包装材(例えば、自動車部品用の包装材)として好ましく使用される。
【0073】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0074】
以下、本発明を実施例及び比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
<<水系粘着剤>>
以下に示す原料を用いて水系粘着剤を調製した。各原料の配合比率をあわせて示す。残余分は水である。
【0076】
・天然ゴムラテックス(固形分60%)
67.6質量%
・クレイ(BASF社製、ASP-900)
4.5質量%
・粘着付与剤(荒川化学工業株式会社製、タマノル E100)
3.1質量%
・界面活性剤(ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムのグリコール水溶液)
0.1質量%
・粘度調整剤(ポリビニルピロリドン)
0.6質量%
・加硫促進剤(ジチオカルバメート系加硫促進剤)
1.3質量%
・老化防止剤(2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール))
1.1質量%
【0077】
水系粘着剤の25℃粘度は、850~1000mPa・sである。
【0078】
<<不織布>>
表1に、各実施例及び比較例で用いた不織布の、繊維構成(不織布を構成する繊維の種類)、目付及び厚みを示す。
【0079】
表1中、PP系繊維及び撥水レーヨンは疎水性繊維であり、レーヨン及びパルプは親水性繊維である。
【0080】
疎水性繊維である撥水レーヨンと、親水性繊維であるレーヨンとを混合した不織布について、繊維の混合比(質量比)を表1に示す。また、撥水レーヨンとレーヨンとを混合した不織布における平均繊維径は12μmであった。
【0081】
比較例2で用いられた不織布は、中間層としてパルプの層を設け、その上下に撥水レーヨンの層を設けた、3層構造の不織布である。
【0082】
実施例2、実施例3及び実施例8で用いられた不織布は、表面に対して熱ロールによる熱処理(平滑化処理)が実施されたものである。
【0083】
前述した方法(測定方法1、測定方法2)に基づき、各不織布について、水系粘着剤の吸収時間を測定した。測定結果を表1に示す。
【0084】
<<複合材>>
自動フィルムアプリケーター(テスター産業社製、PI-1210)、ワイヤーコーターRDS44を使用して、表1に示す塗布量となるように、各不織布に対して水系粘着剤を塗布し、70℃で120秒の乾燥を実施し、各実施例及び比較例に係る複合材(不織布と、粘着剤層とを有する複合材)を得た。
【0085】
<<複合材の衝撃吸収率>>
前述した方法(測定方法3)に基づき、各実施例及び比較例に係る複合材の衝撃吸収率を測定した。測定結果を表1に示す。
【0086】
<<複合材の剥離強度>>
前述した方法(測定方法4)に基づき、各実施例及び比較例に係る複合材の剥離強度を測定した。測定結果を表1に示す。
【表1】

図1