(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160163
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】電子部品ハンドリング装置、及び、電子部品試験装置
(51)【国際特許分類】
G01R 31/26 20200101AFI20231026BHJP
【FI】
G01R31/26 J
G01R31/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070313
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】須田 明寿
(72)【発明者】
【氏名】竹内 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】梶原 拓郎
【テーマコード(参考)】
2G003
【Fターム(参考)】
2G003AA07
2G003AA08
2G003AG01
2G003AG11
2G003AG16
(57)【要約】
【課題】テストトレイを垂直とした状態でDUTをテストする場合であっても、ソケットに対してDUTを正確に位置決めすることが可能な電子部品ハンドリング装置を提供する。
【解決手段】ハンドラ10は、DUT100を収容したインサート70を有するテストトレイ50を垂直にした状態で、DUT100をソケット5に押圧する押圧装置20を備えており、押圧装置20は、DUT100に接触するプッシャ42と、インサート70に当接する当接部44と、を備えている。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
DUT、又は、前記DUTを収容したキャリアを収容したインサートを有するテストトレイを垂直にした状態で、前記DUT又は前記キャリアをソケットに押圧する押圧装置を備えた電子部品ハンドリング装置であって、
前記押圧装置は、
前記DUT又は前記キャリアに接触するプッシャと、
前記インサートに当接する当接部と、を備えた電子部品ハンドリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記当接部は、前記プッシャが前記DUT又は前記キャリアに接触する前に、前記インサートに当接する電子部品ハンドリング装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記当接部は、
前記インサートに接触するプッシュピンと、
前記プッシュピンを前記インサートに向かって付勢する付勢部材と、を備えた電子部品ハンドリング装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記インサートは、前記DUT又は前記キャリアが挿入される挿入口を有し、樹脂材料からなるインサート本体を備えた電子部品ハンドリング装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記プッシュピンは、前記インサート本体において前記インサート本体の重心を含む領域、又は、前記インサート本体において前記重心よりも下側の領域に接触する電子部品ハンドリング装置。
【請求項6】
請求項4に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記インサート本体は、複数の前記挿入口を有しており、
前記プッシュピンは、前記インサートにおいて前記複数の挿入口の間の領域に接触する電子部品ハンドリング装置。
【請求項7】
請求項4に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記インサートは、前記挿入口に対応するように前記インサート本体に装着され、前記DUTを保持するデバイス保持部をさらに備えた電子部品ハンドリング装置。
【請求項8】
請求項3に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記プッシュピンは、長円の断面形状を有しており、
前記プッシュピンは、前記プッシュピンの断面長手方向が鉛直方向に対して非平行となるように配置されている電子部品ハンドリング装置。
【請求項9】
請求項3に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記押圧装置は、前記プッシュピンを保持しているベースを備え、
前記ベースから突出する前記プッシュピンの突出部分は、前記プッシャが前記DUT又は前記キャリアに接触する前に、前記プッシュピンが前記インサートに接触するような長さを有している電子部品ハンドリング装置。
【請求項10】
請求項3に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記押圧装置は、前記インサートの第1のガイド孔と嵌合可能な第1のガイドピンをさらに備え、
前記プッシュピンと前記第1のガイドピンとは相互に独立した部材である電子部品ハンドリング装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記押圧装置は、前記プッシュピンを保持しているベースを備え、
前記ベースから突出する前記プッシュピンの突出部分は、前記第1のガイドピンが前記第1のガイド孔と嵌合する前に、前記プッシュピンが前記インサートに接触するような長さを有している電子部品ハンドリング装置。
【請求項12】
請求項1に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記押圧装置は、複数の前記プッシャを備えるマッチプレートを備えており、
前記マッチプレートは、前記テストトレイの第2のガイド孔と嵌合可能な第2のガイドピンを備えている電子部品ハンドリング装置。
【請求項13】
請求項12に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記テストトレイは、
前記インサートと、
長円の平面形状を有する前記第2のガイド孔が形成されたフレームと、
前記フレームに固定されていると共に前記インサートを遊動可能に保持するファスナと、を備えており、
前記第2のガイド孔は、前記テストトレイに保持された前記DUT又は前記キャリアに前記プッシャが対向した状態において、前記第2のガイド孔の断面長手方向が鉛直方向に実質的に平行となるように、前記フレームに形成されている電子部品ハンドリング装置。
【請求項14】
請求項1に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記テストトレイは、
前記インサートと、
フレームと、
前記フレームに固定されていると共に前記インサートを遊動可能に保持するファスナと、
前記インサートへの前記当接部の当接に伴って、前記インサートをセンタリングするセンタリング機構と、を備えた電子部品ハンドリング装置。
【請求項15】
請求項1に記載の電子部品ハンドリング装置であって、
前記テストトレイは、
前記インサートと、
フレームと、
前記フレームに固定されていると共に前記インサートを遊動可能に保持するファスナと、を備え、
前記ファスナは、前記インサートが有する切欠部に前記ファスナが挿入されることで、前記インサートを遊動可能に保持しており、
前記ファスナは、
シャフト部と、
前記シャフト部よりも大きなフランジ部と、を備え、
前記インサートの前記切欠部は、
前記シャフト部が挿入された挿入部と、
前記挿入部よりも大きく、前記フランジ部が収容された拡大部と、を備え、
前記拡大部は、前記挿入部が開口していると共に、前記フランジ部が接触可能な底面を有し、
前記拡大部は、前記底面に向かうに従って先細となる形状を有している電子部品ハンドリング装置。
【請求項16】
DUTを試験する電子部品試験装置であって、
請求項1~15のいずれか一項に記載の電子部品ハンドリング装置と、
前記ソケットを有するテスタと、を備えた電子部品試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体集積回路素子等の被試験電子部品(DUT:Device Under test)の試験に用いられる電子部品ハンドリング装置、及び、電子部品試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DUTを収容したテストトレイを用いた電子部品ハンドリング装置として、例えば、特許文献1に記載された装置が知られている。この電子部品ハンドリング装置では、テストトレイを垂直とした状態で、押圧装置によってDUTをソケットに向かって水平方向に押圧する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のテストトレイでは、DUTを収容したインサートがフレームに遊動可能に保持されている。ここで、DUTをソケットに押し付ける際には、当該DUTをソケットに対して平行にした状態で位置決めを行う必要がある。しかしながら、テストトレイを垂直とした状態では、インサートがその自重によってフレームに対して不規則に傾いてしまい、DUTをソケットに対して正確に位置決めすることが難しい場合がある、という問題がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、テストトレイを垂直とした状態でDUTをテストする場合であっても、ソケットに対してDUTを正確に位置決めすることが可能な電子部品ハンドリング装置及び電子部品試験装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の態様1は、DUT、又は、前記DUTを収容したキャリアを収容したインサートを有するテストトレイを垂直にした状態で、前記DUT又は前記キャリアをソケットに押圧する押圧装置を備えた電子部品ハンドリング装置であって、前記押圧装置は、前記DUT又は前記キャリアに接触するプッシャと、前記インサートに当接する当接部と、を備えた電子部品ハンドリング装置である。
【0007】
[2]本発明の態様2は、態様1の電子部品ハンドリング装置において、前記当接部は、前記プッシャが前記DUT又は前記キャリアに接触する前に、前記インサートに当接する電子部品ハンドリング装置であってもよい。
【0008】
[3]本発明の態様3は、態様1又は2の電子部品ハンドリング装置において、前記当接部は、前記インサートに接触するプッシュピンと、前記プッシュピンを前記インサートに向かって付勢する付勢部材と、を備えた電子部品ハンドリング装置であってもよい。
【0009】
[4]本発明の態様4は、態様3の電子部品ハンドリング装置において、前記インサートは、前記DUT又は前記キャリアが挿入される挿入口を有し、樹脂材料からなるインサート本体を備えた電子部品ハンドリング装置であってもよい。
【0010】
[5]本発明の態様5は、態様4の電子部品ハンドリング装置において、前記プッシュピンは、前記インサート本体において前記インサート本体の重心を含む領域、又は、前記インサート本体において前記重心よりも下側の領域に接触する電子部品ハンドリング装置であってもよい。
【0011】
[6]本発明の態様6は、態様4又は5の電子部品ハンドリング装置において、前記インサート本体は、複数の前記挿入口を有しており、前記プッシュピンは、前記インサートにおいて前記複数の挿入口の間の領域に接触する電子部品ハンドリング装置であってもよい。
【0012】
[7]本発明の態様7は、態様4~6のいずれか一つの電子部品ハンドリング装置において、前記インサートは、前記挿入口に対応するように前記インサート本体に装着され、前記DUTを保持するデバイス保持部をさらに備えた電子部品ハンドリング装置であってもよい。
【0013】
[8]本発明の態様8は、態様3~7のいずれか一つの電子部品ハンドリング装置において、前記プッシュピンは、長円の断面形状を有しており、前記プッシュピンは、前記プッシュピンの断面長手方向が鉛直方向に対して非平行となるように配置されている電子部品ハンドリング装置であってもよい。
【0014】
[9]本発明の態様9は、態様3~8のいずれか一つの電子部品ハンドリング装置において、前記押圧装置は、前記プッシュピンを保持しているベースを備え、前記ベースから突出する前記プッシュピンの突出部分は、前記プッシャが前記DUT又は前記キャリアに接触する前に、前記プッシュピンが前記インサートに接触するような長さを有している電子部品ハンドリング装置であってもよい。
【0015】
[10]本発明の態様10は、態様3~9のいずれか一つの電子部品ハンドリング装置において、前記押圧装置は、前記インサートの第1のガイド孔と嵌合可能な第1のガイドピンをさらに備え、前記プッシュピンと前記第1のガイドピンとは相互に独立した部材である電子部品ハンドリング装置であってもよい。
【0016】
[11]本発明の態様11は、態様10の電子部品ハンドリング装置において、前記押圧装置は、前記プッシュピンを保持しているベースを備え、前記ベースから突出する前記プッシュピンの突出部分は、前記第1のガイドピンが前記第1のガイド孔と嵌合する前に、前記プッシュピンが前記インサートに接触するような長さを有している電子部品ハンドリング装置であってもよい。
【0017】
[12]本発明の態様12は、態様1~11のいずれか一つの電子部品ハンドリング装置において、前記押圧装置は、複数の前記プッシャを備えるマッチプレートを備えており、前記マッチプレートは、前記テストトレイの第2のガイド孔と嵌合可能な第2のガイドピンを備えている電子部品ハンドリング装置であってもよい。
【0018】
[13]本発明の態様13は、態様12の電子部品ハンドリング装置において、前記テストトレイは、前記インサートと、長円の平面形状を有する前記第2のガイド孔が形成されたフレームと、前記フレームに固定されていると共に前記インサートを遊動可能に保持するファスナと、を備えており、前記第2のガイド孔は、前記テストトレイに保持された前記DUT又は前記キャリアに前記プッシャが対向した状態において、前記第2のガイド孔の断面長手方向が鉛直方向に実質的に平行となるように、前記フレームに形成されている電子部品ハンドリング装置であってもよい。
【0019】
[14]本発明の態様14は、態様1~12のいずれか一つの電子部品ハンドリング装置において、前記テストトレイは、前記インサートと、フレームと、前記フレームに固定されていると共に前記インサートを遊動可能に保持するファスナと、前記インサートへの前記当接部の当接に伴って、前記インサートをセンタリングするセンタリング機構と、を備えた電子部品ハンドリング装置であってもよい。
【0020】
[15]本発明の態様15は、態様1~12のいずれか一つの電子部品ハンドリング装置において、前記テストトレイは、前記インサートと、フレームと、前記フレームに固定されていると共に前記インサートを遊動可能に保持するファスナと、を備え、前記ファスナは、前記インサートが有する切欠部に前記ファスナが挿入されることで、前記インサートを遊動可能に保持しており、前記ファスナは、シャフト部と、前記シャフト部よりも大きなフランジ部と、を備え、前記インサートの前記切欠部は、前記シャフト部が挿入された挿入部と、前記挿入部よりも大きく、前記フランジ部が収容された拡大部と、を備え、前記拡大部は、前記挿入部が開口していると共に、前記フランジ部が接触可能な底面を有し、前記拡大部は、前記底面に向かうに従って先細となる形状を有している電子部品ハンドリング装置であってもよい。
【0021】
[16]本発明の態様16は、DUTを試験する電子部品試験装置であって、態様1~15のいずれか一つの電子部品ハンドリング装置と、前記ソケットを有するテスタと、を備えた電子部品試験装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、押圧装置がインサートに当接する当接部を備えているので、フレームに対して傾斜しているインサートの姿勢を垂直状態に矯正することができ、ソケットに対してDUTを正確に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態における電子部品試験装置の全体構成を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態における電子部品試験装置で用いられるテストトレイを示す正面図である。
【
図6A】
図6Aは、
図3のVI-VI線に沿った断面図であり、インサートのセンタリング前の状態を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、
図3のVI-VI線に沿った断面図であり、インサートのセンタリング後の状態を示す図である。
【
図7】
図7は、
図2のVII-VII線に沿った断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態におけるテストトレイのインサート本体を示す正面図である。
【
図9】
図9は、
図8に示すインサート本体を背面側から見た斜視図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態におけるマッチプレートを示す背面図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態における押圧ユニットを示す背面図である。
【
図13A】
図13Aは、本発明の実施形態におけるDUTの押圧動作を示す断面図(その1)である。
【
図13B】
図13Bは、本発明の実施形態におけるDUTの押圧動作を示す断面図(その2)である。
【
図13C】
図13Cは、本発明の実施形態におけるDUTの押圧動作を示す断面図(その3)である。
【
図13D】
図13Dは、本発明の実施形態におけるDUTの押圧動作を示す断面図(その4)である。
【
図13E】
図13Eは、本発明の実施形態におけるDUTの押圧動作を示す断面図(その5)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
図1は本実施形態における電子部品試験装置1の全体構成を示す概略断面図である。
【0026】
本実施形態の電子部品試験装置1は、DUT100の電気的特性を試験する装置である。
図1に示すように、この電子部品試験装置1は、DUT100を試験するテスタ2と、DUT100を搬送してソケット5に押し付けるハンドラ10と、を備えている。特に限定されないが、こうした電子部品試験装置1及びハンドラ10として、例えば、特開2022-021239号公報、又は、特開2022-021241号公報に記載のものを例示することができる。また、試験対象であるDUT100(
図4、
図13D及び
図13E参照)の具体例としては、メモリデバイス、ロジックデバイス、又は、SoC(System on a chip)を例示することができる。
【0027】
テスタ2は、
図1に示すように、メインフレーム(テスタ本体)3と、テストヘッド4と、を備えている。メインフレーム3は、ケーブル8を介してテストヘッド4に接続されている。このテストヘッド4の上部には、複数(本例では256個)のソケット5が搭載されている。このテストヘッド4は、当該テストヘッド4の姿勢を90度回転させた状態で、ハンドラ10の開口10aに挿入されており、水平方向を向いた状態で複数のソケット5がハンドラ10の内部に位置している。
【0028】
本実施形態では、256個のソケット5が、テストヘッド4の上部に16行16列に配置されている。なお、テストヘッド4が有するソケット5の数は特に上記に限定されず、当該ソケット5の配列も特に上記に限定されない。それぞれのソケット5は、DUT100の端子に接触する接触子6(
図13D参照)を備えている。こうした接触子6としては、特に限定されないが、ポゴピン、カンチレバー型のプローブ針、異方導電性ゴムシート、又は、絶縁性膜にバンプを形成したメンブレンタイプの接触子を例示することができる。
【0029】
ハンドラ10は、DUT100をテストトレイ50に収容したまま状態で、当該DUT100をソケット5に押し付ける押圧装置20を備えている。この際、本実施形態では、ハンドラ10は、テストトレイ50を垂直にした状態で、押圧装置20によりDUT100をソケット5に押し付ける。この状態で、メインフレーム3がテストヘッド4を介して試験信号をDUT100に送出することで、当該DUT100を試験する。なお、本実施形態における「垂直状態」とは、テストトレイ50の主面が鉛直方向(図中のZ軸方向)に対して実質的に平行となっている状態を意味する。
【0030】
なお、特に図示しないが、このハンドラ10が、DUT100の試験の前に、未試験のDUT100をカスタマトレイ(不図示)からテストトレイ50に移し替える機能(ローダ部)を備えていてもよい。また、このハンドラ10が、当該未試験のDUT100をテストトレイ50に収容した状態で、当該DUT100に高温又は低温の熱ストレスを印加する機能(熱ストレス印加部)を備えていてもよい。
【0031】
また、特に図示しないが、このハンドラ10が、DUT100の試験の後に、試験済みのDUT100をテストトレイ50に収容した状態で、当該DUT100から熱ストレスを除去する機能(熱ストレス除去部)を備えていてもよい。また、このハンドラ10が、試験結果に応じて当該試験済みのDUT100を分類しながら、当該DUT100をテストトレイ50からカスタマトレイに積み替える機能(アンローダ部)を備えていてもよい。
【0032】
ここで、カスタマトレイは、この電子部品試験装置1を用いる工程と他の工程との間で複数のDUT100を搬送するためのトレイである。このカスタマトレイは、例えば、JEDEC(Joint Electron Device Engineering Council)規格に準拠したトレイであり、樹脂材料等から構成されている板状のトレイである。このカスタマトレイは、マトリクス状に配置された複数のポケットを有しており、それぞれのポケットは、DUT100を収容可能な凹状形状を有している。未試験のDUT100は、このカスタマトレイに搭載された状態で前工程からハンドラ10に搬入される。また、試験済みのDUT100は、このカスタマトレイに搭載された状態でハンドラ10から後工程に搬出される。
【0033】
これに対し、テストトレイ50は、複数のDUT100を収容した状態でハンドラ10内を循環搬送されるトレイである。以下に、
図2~
図9を参照しながら、このテストトレイ50について説明する。
【0034】
図2は本実施形態における電子部品試験装置1で用いられるテストトレイ50を示す正面図であり、
図3は
図2に示すテストトレイ50の背面図であり、
図4は
図2のIV-IV線に沿った断面図であり、
図5は
図2のV-V線に沿った断面図である。
図6A及び
図6Bは
図3のVI-VI線に沿った断面図であり、
図6Aはインサート70のセンタリング前の状態を示す図であり、
図6Bはインサート70のセンタリング後の状態を示す図である。
図7は
図2のVII-VII線に沿った断面図である。
図8は本実施形態におけるテストトレイ50のインサート本体71を示す正面図であり、
図9は
図8に示すインサート本体71を背面側から見た斜視図である。
【0035】
このテストトレイ50は、
図2~
図5に示すように、フレーム部材60と、複数(本例では64個)のインサート70と、複数のファスナ80と、を備えている。
【0036】
フレーム部材60は、矩形状の外枠61と、当該外枠61の内側に配置された格子状の内枠62と、を備えている。このフレーム部材60は、外枠61及び内枠62によって区画された矩形状の開口63を備えている。本実施形態では、フレーム部材60に64個の開口63が8行8列に配置されている。複数のインサート70は、当該フレーム部材60の開口63にそれぞれ対応するように配置されており、当該インサート70の外周部がフレーム部材60の外枠61又は内枠62と重なっている。なお、フレーム部材60が有する開口63の数及び配列は、特に上記に限定されず、テストトレイ50が有するインサート70の数及び配列に応じて設定される。
【0037】
それぞれのインサート70は、当該インサート70の四隅でファスナ80により保持されており、このファスナ80は、その先端でフレーム部材60に固定されている。このため、フレーム部材60には、このファスナ80を固定するための複数の固定孔64が形成されている。
【0038】
それぞれの固定孔64は、
図6A及び
図6Bに示すように、挿入部641と、当該挿入部641の内径より大きな内径を有する座繰部642と、を備えている。この固定孔64の挿入部641には、ファスナ80のシャフト部81(後述)の先端が挿入されており、座繰部642には当該ファスナ80のヘッド部82(後述)が挿入されている。
【0039】
図2及び
図3に示すように、それぞれの固定孔64は、開口63の角部に対応するように配置されており、相互に隣り合う複数のインサート70の角部を1つのファスナ80によってまとめて保持している。具体的には、内枠62に固定されたファスナ80に関しては、1つのファスナ80により4つ又は2つのインサート70の角部をまとめて保持している。また、外枠61に固定されたファスナ80については、1つのファスナ80により2つのインサート70の角部をまとめて保持している。すなわち、相互に隣り合う複数のインサート70によって、一つのファスナ80が共用されている。なお、外枠61に固定された一部のファスナ80については、1つのファスナ80により1つのインサート70のみを保持している。
【0040】
また、
図2に示すように、フレーム部材60の内枠62には、ガイド孔65が形成されている。このガイド孔65は、フレーム部材60の長手方向(図中のY軸方向)の中央部に配置されている。このガイド孔65は、
図7に示すように、孔本体部651と、テーパ部652と、を備えている。孔本体部651は、その一端(インサート70側。図中の-X方向側)で開口していると共に、その他端でテーパ部652に接続されている。テーパ部652は、孔本体部651からインサート70とは反対側(図中の+X方向側)に向かって拡大するテーパ状の内径を有している。
【0041】
また、このガイド孔65は、長円の断面形状を有している。ここでは、長円とは、相互に平行に延在する一対の直線部と、当該直線部を相互に接続する一対の円弧部とからなる形状を意味する。
図2に示すように、このガイド孔65は、押圧装置20がDUT100をソケット5に押し付ける状態(すなわち、テストトレイ50を垂直にした状態)において、当該ガイド孔65の長手方向VL
1が鉛直方向(図中のZ軸方向)に実質的に平行となるように、フレーム部材60の内枠62に形成されている。このガイド孔65には、押圧装置20が有するガイドピン352(後述)が嵌合する。
【0042】
それぞれのインサート70は、
図2~
図5に示すように、インサート本体71と、複数(本例では4個)のデバイスコア72と、を備えている。なお、
図2及び
図3では、テストトレイ50の構成の理解を容易にするために、一部のデバイスコア72のみを破線で示している。デバイスコア72が、本発明の態様における「デバイス保持部」の一例に相当する。
【0043】
インサート本体71は、
図8及び
図9に示すように、矩形板状の樹脂成形体である。本実施形態では、このインサート本体71に4個の挿入口711が形成されており、当該4個の挿入口711は2行2列に配置されている。それぞれの挿入口711は、インサート70がフレーム部材60に取り付けられた状態において、フレーム部材60の開口63と対向している。
【0044】
図4に示すように、複数のデバイスコア72がこの挿入口711にそれぞれ対応するように配置されている。従って、テストトレイ50全体では、16行16列に配置された256個のデバイスコア72を備えており、このデバイスコア72の配列は、上述したテストヘッド4上のソケット5の配列に対応している。
【0045】
なお、それぞれのインサート70が有するデバイスコア72の数及び配列は、特に上記に限定されない。また、テストトレイ50が有するデバイスコア72の数及び配列も、特に上記に限定されず、テストヘッド4上のソケット5の数及び配列に応じて設定される。
【0046】
それぞれのデバイスコア72は、フック(不図示)によりインサート本体71に着脱可能に固定されている。それぞれのデバイスコア72は、当該デバイスコア72の底部に形成された開口721を有する樹脂成形体であり、この開口721を介してDUT100が有する端子を露出させつつ、当該DUT100を保持することが可能となっている。このように、それぞれのデバイスコア72が1つのDUT100を保持することが可能であるので、インサート70一つ当たりで4個のDUT100を保持することが可能であり、テストトレイ50全体では256個のDUT100を保持することが可能となっている。
【0047】
このデバイスコア72は、DUT100の品種交換の際に、インサート本体71から取り外されて、当該品種交換後のDUT100に適合した他のデバイスコア72に交換される。なお、インサート70が有するデバイスコア72の数が1つであってもよく、この場合には、デバイスコア72がインサート本体71と一体的に形成されて、デバイスコア72がインサート本体71から着脱不可能となっていてもよい。
【0048】
また、
図5、
図8及び
図9に示すように、インサート本体71には、2つのガイド孔712が形成されている。このガイド孔712は、インサート本体71の中心線上における当該インサート本体71の上部と下部にそれぞれ配置されている。
【0049】
それぞれのガイド孔712は、
図5及び
図8に示すように、孔本体部713と、テーパ部714と、を備えている。孔本体部713は、その一端(フレーム部材60とは反対側。図中の-X方向側)で開口していると共に、その他端でテーパ部714に接続されている。テーパ部714は、孔本体部713からフレーム部材60の開口73に向かって拡大するテーパ状の内径を有している。このガイド孔712には、押圧装置20が有するガイドピン43(後述)が嵌合する。
【0050】
また、
図8及び
図9に示すように、インサート本体71には、4対の貫通孔715が形成されている。4対の貫通孔715は4つの挿入口711を挟むようにそれぞれ配置されており、各対をそれぞれ構成する2つの貫通孔715は当該挿入口711の上側と下側に配置されている。それぞれの貫通孔715は、例えば、ソケットガイド(不図示)が有するガイドピン7(
図13A~13E参照)に対応する位置に配置されており、当該ガイドピン7の外径よりも十分に大きな外径を有している。
【0051】
ここで、デバイスコア72も、この貫通孔715に対応する位置にガイド孔(不図示)を有しており、、上記のソケットガイドのガイドピン7がこのデバイスコア72のガイド孔に嵌合する。この際、インサート本体71の上記の貫通孔715によって、ガイドピン7においてデバイスコア72のガイド孔からインサート本体71側に突出している部分と、インサート本体71との干渉が回避される。なお、このソケットガイドは、ソケット5を囲むようにテストヘッド4上に設けられた部材である。
【0052】
さらに、
図9に示すように、インサート本体71の4つの全ての角部に切欠部716がそれぞれ形成されている。それぞれの切欠部716は、
図6A、
図6B及び
図9に示すように、挿入部717と、拡大部718と、を備えている。
【0053】
挿入部717は、円筒を1/4に分割したうちの一つのような形状(略1/4円筒形状)を有している。この挿入部717は、その一端(フレーム部材60側。図中の+X方向側)で開口していると共に、その他端で拡大部718に接続されている。なお、この挿入部717は、ファスナ80がインサート70を遊動可能に保持できるように、上述したフレーム部材60の固定孔64の挿入部641の半径よりも大きな半径を有している。
【0054】
拡大部718は、カップ形状を1/4に分割したうちの一つのような形状(略1/4カップ形状)を有している。この拡大部718は、挿入部717が接続されている端部とは反対側(フレーム部材60とは反対側。図中の-X方向側)の端部で開口している。この拡大部718は、挿入部717の半径よりも大きく、且つ、ファスナ80のフランジ部83の半径よりも大きな半径を有している。そして、この拡大部718は、挿入部717に向かうに従って段階的に先細となる階段形状を有しており、この拡大部718の底面719(挿入部717が開口している面)は、当該フランジ部83の半径よりも僅かに大きな半径を有している。なお、拡大部718が、挿入部717に向かうに従って連続的に先細となる形状(例えば、曲面形状)を有していてもよい。
【0055】
ファスナ80は、
図6A及び
図6Bに示すように、シャフト部81と、ヘッド部82と、フランジ部83と、を備えている。シャフト部81は、インサート本体71の切欠部716の挿入部717の半径よりも小さな半径を有する円柱形状を有している。ヘッド部82は、シャフト部81の先端に接続されている。このヘッド部82は、当該シャフト部81の先端の外径よりも大きく、且つ、フレーム部材60の固定孔64の挿入部641の内径よりも大きな外径を有している。フランジ部83は、シャフト部81の後端に接続されている。このフランジ部83は、シャフト部81の後端の半径よりも大きく、且つ、インサート本体71の切欠部716の挿入部717の半径よりも大きな半径を有する円板形状を有している。
【0056】
そして、このファスナ80は、フレーム部材60に固定されていると共に、インサート70を遊動可能に保持している。このように、インサート70がファスナ80に遊動可能に保持されていることで、複数のインサート70をソケット5に対して相互に独立して位置決めすることが可能となっている。
【0057】
具体的には、ファスナ80のシャフト部81の先端がフレーム部材60の固定孔64の挿入部641に挿入されていると共に、当該ファスナ80のヘッド部82が当該固定孔64の座繰部642に挿入されている。これにより、固定孔64における座繰部642と挿入部641との間の段差にヘッド部82が係止されて、ファスナ80がフレーム部材60に固定されている。
【0058】
そして、ファスナ80のシャフト部81の後端がインサート本体71の切欠部716の挿入部717に収容されていると共に、当該ファスナ80のフランジ部83が当該切欠部716の拡大部718に収容されている。ここで、上述のように、挿入部717がシャフト部81の半径よりも大きな半径を有していると共に、拡大部718もフランジ部83の半径よりも大きな半径を有している。このため、
図6Aに示すように、通常の状態(インサート70に対して重力以外の負荷が印加されていない状態)では、インサート70は、ファスナ80によって遊動可能に保持されている。
【0059】
また、上述のように、切欠部716の拡大部718の底面719がフランジ部83の半径よりも僅かに大きな半径を有している。このため、
図6Bに示すように、押圧装置20の当接部44(後述)によりインサート70が押圧されると、ファスナ80のフランジ部83が、切欠部716の拡大部718に沿って案内され、当該拡大部718の底面719に接触することで、インサート70がフレーム部材60の開口63に対してセンタリングされる。
【0060】
次に、本実施形態における電子部品ハンドリング装置10の押圧装置20について、
図1及び
図10~
図12を参照しながら説明する。
【0061】
図10は本実施形態におけるマッチプレート30を示す背面図であり、
図11は本実施形態における押圧ユニット40を示す背面図であり、
図12は
図11のXII-XII線に沿った断面図である。
【0062】
上述のように、ソケット5が水平方向を向いた姿勢で、テストヘッド4の一部が、開口10aを介してハンドラ10の内部に入り込んでいる。
図1に示すように、ハンドラ10の押圧装置20は、このソケット5に対向するように配置されている。
【0063】
また、特に図示しないが、このハンドラ10は、DUT100を収容したテストトレイ50をテストヘッド4上のソケット5と押圧装置20との間に搬送する搬送装置を備えている。この搬送装置は、テストトレイ50の長手方向(図中のY軸方向)の両端を保持して当該テストトレイ50を搬送するトレイ搬送レールを備えている。このトレイ搬送レールは、押圧装置20によるDUT100の押圧動作に伴って、テストトレイ50と共にテストヘッド4側に移動することが可能となっている。
【0064】
未試験のDUT100を収容したテストトレイ50がこの搬送装置によってソケット5と押圧装置20との間に搬入されると、DUT100をテストトレイ50に収容したままの状態で、押圧装置20がDUT100をソケット5に押し付ける。そして、DUT100の試験が完了すると、当該試験済みのDUT100を収容したテストトレイ50は、この搬送装置によってソケット5と押圧装置20との間から搬出される。
【0065】
押圧装置20は、アクチュエータ25と、マッチプレート30と、を備えている。アクチュエータ25は、マッチプレート30を図中のX軸方向に沿って移動させる駆動装置であり、マッチプレート30をテストヘッド4上にソケット5に向かって進退移動させることが可能となっている。特に限定されないが、こうしたアクチュエータ25の一例としては、ボールねじ機構を備えたモータ等を例示することができる。
【0066】
マッチプレート30は、
図10に示すように、プレート部材35と、複数(本例では64個)の押圧ユニット40と、を備えている。プレート部材35には64個の保持孔351が形成されており、この保持孔351は、テストトレイ50のフレーム部材60の開口63に対応するように、8行8列で配置されている。それぞれの開口63には押圧ユニット40が装着されている。なお、プレート部材35が有する保持孔351の数及び配列は、特に上記に限定されず、押圧装置20が有する押圧ユニット40の数及び配列に応じて設定される。
【0067】
また、このプレート部材35には、ガイドピン352が設けられている。このガイドピン352は、テストトレイ50のフレーム部材60が有する上述したガイド孔65に対応するように配置されており、マッチプレート30の長手方向(図中のY軸方向)の中央部に配置されている。
【0068】
このガイドピン352は、上述の
図7に示すように、円柱状のピン本体部353と、テーパ部354と、を備えている。ピン本体部353は、長円状のガイド孔65の孔本体部651の短手方向(図中のY軸方向)の幅よりも僅かに小さな外径を有しており、当該孔本体部651と嵌合することが可能となっている。これに対し、テーパ部354は、ピン本体部353から先端に向かうに従って先細の形状を有している。このガイドピン352がガイド孔65に嵌合することで、水平方向(図中のY軸方向)においてテストトレイ50がマッチプレート30に対して位置決めされる。
【0069】
ガイドピン352が本発明の態様における「第2のガイドピン」の一例に相当し、ガイド孔65が本発明の態様における「第2のガイド孔」の一例に相当する。
【0070】
それぞれの押圧ユニット40は、
図11及び
図12に示すように、ベース41と、複数(本例では4個)のプッシャ42と、ガイドピン43と、当接部44と、を備えている。
【0071】
ベース41は、プレート部材35の保持孔351に挿入されており、プレート部材35に着脱可能に固定されている。プッシャ42、ガイドピン43、及び、当接部44は、このベース41に設けられている。このマッチプレート30の複数の押圧ユニット40が、上述したテストトレイ50が有する複数のインサート70にそれぞれ対応している。
【0072】
また、このベース41には、当接部44のコイルスプリング46(後述)を収容した収容穴411が形成されている。この収容穴411は、コイルスプリング46の外径よりも大きな内径を有する収容部412と、この収容部412の内径よりも小さな内径を有する小径部413と、を有している。
【0073】
プッシャ42は、ベース41上に2行2列に配置されている。このプッシャ42の配列は、テストトレイ50のインサート本体71に形成された上述の4個の挿入口711の配列に対応している。このプッシャ42が、テストトレイ50のフレーム部材60の開口63と、インサート本体71の挿入口711とに進入して、デバイスコア72に保持されているDUT100に接触して、当該DUT100をソケット5に押し付ける。マッチプレート30全体では、16行16列に配置された256個のプッシャ42を備えており、このプッシャ42の配列は、上述したテストヘッド4上のソケット5の配列に対応している。
【0074】
なお、それぞれの押圧ユニット40が有するプッシャ42の数及び配列は、特に上記に限定されない。また、マッチプレート30が有するプッシャ42の数及び配列も、特に上記に限定されず、テストヘッド4上のソケット5の数及び配列に応じて設定される。
【0075】
ガイドピン43は、テストトレイ50のインサート本体71が有する上述のガイド孔712に対応するように配置されている。このガイドピン43は、円柱状のピン本体部431と、テーパ部432と、を備えている。ピン本体部431は、ガイド孔712の孔本体部713の内径よりも僅かに小さな外径を有しており、当該孔本体部713と嵌合することが可能となっている。これに対し、テーパ部432は、ピン本体部431から先端に向かうに従って先細の形状を有している。このガイドピン43がガイド孔712に嵌合することで、インサート70が押圧ユニット40に対して位置決めされる。
【0076】
ガイドピン43が本発明の態様における「第1のガイドピン」の一例に相当し、ガイド孔712が、本発明の態様における「第1のガイド孔」の一例に相当する。
【0077】
当接部44は、アクチュエータ25の駆動による押圧ユニット40の前進動作に伴って、インサート本体71に当接する機構である。なお、当接部44の構成は、押圧ユニット40の前進動作に伴ってインサート本体71に当接するものであれば、以下に説明する構成を有するものに限定されない。
【0078】
本実施形態では、この当接部44がインサート70に当接することで、フレーム部材60に対して傾斜しているインサート70の姿勢を垂直な状態に矯正することができる。また、インサート70への当接部44の当接と、上述の切欠部716によるファスナ80の案内とによって、インサート70をフレーム部材60の開口63に対してセンタリングすることができる。
【0079】
この当接部44は、インサート本体71に接触するプッシュピン45と、当該プッシュピン45を付勢するコイルスプリング46と、を備えている。
【0080】
プッシュピン45は、第1のピン部451と、フランジ部452と、第2のピン部453と、を備えている。第1のピン部451は、フランジ部452の一方の面に接続されているのに対し、第2のピン部453は、当該フランジ部452の他方の面に接続されている。
【0081】
このプッシュピン45の第1のピン部451は、ベース41の収容穴411の小径部413の内径よりも小さな外径を有している。この第1のピン部451は、小径部413を通過して、収容穴411の外側に突出している。フランジ部452は、ベース41の収容穴411の小径部413の内径よりも大きく且つ収容部412の内径よりも小さな外径を有している。第2のピン部453も、収容部412の内径よりも小さな外径を有している。このフランジ部452と第2のピン部453は、収容部412内に移動可能に収容されている。
【0082】
そして、このプッシュピン45の第2のピン部453がコイルスプリング46の内孔に挿入されていると共に、コイルスプリング46がフランジ部452と収容部412の底面との間に圧縮された状態で介装されている。すなわち、プッシュピン45は、コイルスプリング46によって収容穴411の外側(インサート70側。図中の-X方向側)に向かって付勢されている。なお、コイルスプリング46に代えて、ゴム等の弾性部材を用いてもよい。
【0083】
本実施形態では、
図11に示すように、このプッシュピン45は、ベース41の重心GP
1を含まない領域であって当該重心GP
1よりも下側の領域に配置されている。このため、このプッシュピン45は、押圧装置20がDUT100をソケット5に押し付ける状態(すなわち、テストトレイ50を垂直にした状態)において、インサート本体71において当該インサート本体71の重心GP
2を含まない領域であって当該重心GP
2よりも下側の領域AR(上述の
図8参照)に接触する。
【0084】
ここで、本実施形態におけるベース41の重心GP
1とは、
図11に示すように、ベース41を正面から見た場合(図中の+X方向に沿ってベース41を見た場合)における当該ベース41の表面上における重心を意味する。同様に、本実施形態におけるインサート本体71の重心GP
2とは、上述の
図8に示すように、インサート本体71を正面から見た場合(図中の-X方向に沿ってインサート本体71を見た場合)における当該インサート本体71の表面上における重心を意味する。
【0085】
この領域ARは、鉛直方向においてインサート本体71の重心GP2と重複していてもよい。さらに、当該領域ARの中心が、鉛直方向においてインサート本体71の重心GP2と重複していてもよい。
【0086】
この領域ARは、インサート本体71において4つの挿入口711の間に位置している。なお、この領域ARが、
図8に示す下側の2つの挿入口711の間に位置していてもよい。
【0087】
なお、プッシュピン45が、ベース41の重心GP1を含む領域に配置されていてもよい。この場合には、プッシュピン45は、インサート本体71の重心GP2を含む領域に接触する。
【0088】
このプッシュピン45の第1のピン部451は、長円の断面形状を有している。ここで、長円とは、相互に平行に延在する一対の直線部451aと、当該直線部451aを相互に接続する一対の円弧部451bとからなる形状を意味する。このプッシュピン45は、当該プッシュピン45の第1のピン部451の断面長手方向VL2が鉛直方向(図中のZ軸方向)に対して実質的に直交するように、ベース41に保持されている。
【0089】
なお、第1のピン部451の断面長手方向VL2が鉛直方向(図中のZ軸方向)に対して非平行となるように、プッシュピン45がベース41に保持されているのであれば、鉛直方向に対するプッシュピン45の断面形状の姿勢は、特に上記に限定されない。
【0090】
このように、プッシュピン45が非円形の平面形状を有していると共に、第1のピン部451の断面長手方向VL2が鉛直方向(図中のZ軸方向)に対して非平行となっていることで、プッシュピン45がインサート本体71に当接した際に、当該インサート本体71がプッシュピン45を中心として回転してしまうのを抑制することができる。
【0091】
また、プッシュピン45が長円の断面形状を有していることで、円柱部材を部分的に切削するだけで非円形の第1のピン部451を作製することができるので、マッチプレート30のコスト増加の抑制を図ることもできる。
【0092】
このプッシュピン45においてベース41から突出している部分の長さL1は、テストトレイ50のデバイスコア72に保持されているDUT100にプッシャ42が接触する前に、当該プッシュピン45がインサート本体71に接触するような長さに設定されている。これにより、DUT100をソケット5に押し付ける前に、インサート70の姿勢を垂直な状態に矯正することができると共に、インサート70をフレーム部材60の開口63に対してセンタリングすることができる。
【0093】
また、このプッシュピン45の突出部分の長さL1は、押圧ユニット40のガイドピン43がインサート70のガイド孔712と嵌合する前に、プッシュピン45がインサート本体71に接触するような長さに設定されている。これにより、インサート70を押圧ユニット40に対して位置決めする前に、インサート70の姿勢を垂直な状態に矯正することができると共に、インサート70をフレーム部材60の開口63に対してセンタリングすることができる。
【0094】
以下に、上述した押圧装置20によりDUT100の押圧動作について、
図13A~
図13Bを参照しながら説明する。
図13A~
図13Eは本実施形態におけるDUT100の押圧動作を示す断面図である。
【0095】
上述した搬送装置(不図示)によって、未試験のDUT100を収容したテストトレイ50がソケット5と押圧装置20との間に搬入されると、
図13Aに示すように、テストトレイ50が有する複数のインサート70が、押圧装置20が有する複数の押圧ユニット40にそれぞれ対向する。この際、本実施形態では、テストトレイ50は、上述の搬送装置によって垂直状態で搬入される。
【0096】
ここで、上述のように、それぞれのインサート70はファスナ80により遊動可能に保持されている。このため、テストトレイ50を垂直とした状態では、同図に示すように、インサート70がその自重によりフレームに対して傾いている場合がある。なお、上述した
図6Aは、
図13AのVIA部に対応する拡大図である。
【0097】
次いで、押圧装置20のアクチュエータ25が駆動して、マッチプレート30全体がテストトレイ50に向かって前進すると、
図13Bに示すように、最初に、それぞれの押圧ユニット40が有するプッシュピン45がインサート本体71に接触し、コイルスプリング46の圧縮が開始される。これにより、インサート70が当該プッシュピン45により押圧されて、傾斜している当該インサート70の姿勢が垂直の状態に矯正される。この際、本実施形態では、プッシュピン45が、インサート本体71の重心GP
2を含まない領域であって当該重心GP
2よりも下側の領域AR(上述の
図8参照)に接触するので、インサート70の姿勢の矯正の確実性を高めることができる。
【0098】
また、このプッシュピン45によるインサート70の押圧によって、ファスナ80のフランジ部83が切欠部716の拡大部718に沿って案内されて、当該拡大部718の底面719に接触することで、インサート70がフレーム部材60の開口63に対してセンタリングされる。すなわち、インサート本体71の中心がフレーム部材60の開口63の中心に対して位置決めされる。
【0099】
すなわち、本実施形態では、プッシュピン45によりインサート70の押圧によって、インサート70の姿勢の矯正と、インサート70のセンタリングと、を行うことが可能となっている。なお、上述した
図6Bは、インサート70の姿勢矯正及びセンタリング後を示す後述の
図13CのVIB部に対応する拡大図である。
【0100】
また、特に図示しないが、アクチュエータ25によるマッチプレート30の上述の前進に伴って、マッチプレート30のプレート部材35のガイドピン352が、テストトレイ50のフレーム部材60のガイド孔65に嵌合する。これにより、水平方向(図中のY軸方向)において、テストトレイ50がマッチプレート30に対して位置決めされる。
【0101】
ここで、本実施形態では、マッチプレート30と、テストヘッド4上の複数のソケット5とは、予め構造的に位置合わせされている。このため、上述のガイドピン352とガイド孔65とによりテストトレイ50がマッチプレート30に対して位置決めされると、結果的に、当該テストトレイ50はソケット5に対して相対的に位置決めされることとなる。
【0102】
上述のように、このガイドピン352はマッチプレート30の長手方向の中央部に配置されていると共に、ガイド孔65はテストトレイ50の長手方向の中央部に配置されている。このため、ハンドラ10によってテストトレイ50に印加された熱ストレスによる影響(熱膨張及び熱収縮)の低減を図ることができる。
【0103】
なお、鉛直方向(図中のZ軸方向)におけるソケット5に対するテストトレイ50の位置決めについては、特に図示しないが、例えば、上述の搬送装置が備えるアクチュエータが有する位置決めピンが、テストトレイ50のフレーム部材60の短辺の側面(図中のZ軸方向に沿って側面)に形成された位置決め孔に嵌合することで、テストトレイ50を位置決めすることができる。
【0104】
次いで、押圧装置20のアクチュエータ25がマッチプレート30全体をテストトレイ50に向かって更に前進させると、
図13Cに示すように、プッシュピン45がインサート本体71により押圧され、コイルスプリング46が更に圧縮する。これと同時に、押圧ユニット40のガイドピン43がインサート70のガイド孔712に挿入されると共に、押圧ユニット40のプッシャ42が、テストトレイ50フレーム部材60の開口63を介して、インサート本体71の挿入口711に進入する。
【0105】
そして、
図13Dに示すように、押圧ユニット40のガイドピン43がインサート70のガイド孔712に嵌合することで、インサート70が押圧ユニット40に対して位置決めされる。そして、ガイドピン43がガイド孔712に嵌合した後に、プッシャ42がデバイスコア72に保持されているDUT100に接触する。
【0106】
なお、プッシャ42がDUT100に接触するタイミングは、特に限定されない。例えば、ソケット5のガイドピン7がデバイスコア72のガイド孔(不図示)に嵌合した後に、プッシャ42がDUT100に接触してもよい。或いは、ソケット5の接触子6がDUT100の端子に接触した後に、プッシャ42がDUT100に接触してもよい。
【0107】
次いで、押圧装置20のアクチュエータ25がマッチプレート30全体をテストトレイ50に向かって更に前進させると、
図13Eに示すように、プッシャ42がデバイスコア72に保持されているDUT100をソケット5に押し付ける。この際、ソケット5の周囲に設けられたガイドピン7が、デバイスコア72のガイド孔(不図示)に嵌合することで、デバイスコア72がソケット5に対して位置決めされる。
【0108】
そして、プッシャ42がデバイスコア72に保持されているDUT100をソケット5に押し付けると、ソケット5の接触子6がDUT100の端子に接触し、ソケット5を介してDUT100がテストヘッド4と電気的に接続される。この状態で、メインフレーム3がテストヘッド4を介して試験信号をDUT100に送出することで、当該DUT100を試験する。
【0109】
以上のように、本実施形態では、押圧装置20がインサート70に当接する当接部44を備えているので、テストトレイ50のフレーム部材60に対して傾斜しているインサート70の姿勢を垂直状態に矯正することができる。このため、ソケットに対してDUTを正確に位置決めすることができるので、DUT100とソケット5との接触不良及び損傷の発生を抑制すると共に、ソケット5の長寿命化を図ることができる。
【0110】
特に、本実施形態では、テストトレイ50のフレーム部材60に対して傾斜しているインサート70の姿勢を垂直状態に矯正するので、テストトレイ50を垂直にした状態でDUT100をソケット5に押圧する場合であっても、インサート70のガイド孔712と押圧ユニット40のガイドピン43との嵌合時の抵抗力を低減することができ、インサート本体71とガイドピン43とに生じる摩耗の低減を図ることができる。
【0111】
また、本実施形態では、インサート70への当接部44の当接と、上述の切欠部716によるファスナ80の案内とによって、インサート70をフレーム部材60の開口63に対してセンタリングした状態で、当該インサート70をファスナ80により保持することができる。このため、テストトレイ50を垂直にした状態でDUT100をソケット5に押圧する場合であっても、インサート70の自重に起因して生じるインサート本体71及びガイドピン43の偏摩耗の低減を図ることができる。
【0112】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0113】
例えば、デバイスキャリア200(
図4、
図13D及び
図13E参照)を用いてDUT100の試験を行ってもよい。この場合には、DUT100を収容したデバイスキャリア200を収容したテストトレイ50をハンドラ10により搬送して、当該デバイスキャリア200をソケット5に押し付けることで、当該デバイスキャリア200を介してDUT100とソケット5とが電気的に接続される。こうしたデバイスキャリア200としては、特開2019-197012号公報、又は、及び、特開2013-79860号公報に記載のキャリアを用いることができる。
【符号の説明】
【0114】
1…電子部品試験装置
4…テストヘッド
5…ソケット
10…ハンドラ
20…押圧装置
25…アクチュエータ
30…マッチプレート
352…ガイドピン
40…押圧ユニット
41…ベース
42…プッシャ
43…ガイドピン
44…当接部
45…プッシュピン
46…コイルスプリング
50…テストトレイ
60…フレーム部材
65…ガイド孔
70…インサート
71…インサート本体
711…挿入口
712…ガイド孔
716…切欠部
717…挿入部
718…拡大部
AR…重心よりも下側の領域
72…デバイスコア
80…ファスナ
81…シャフト部
83…フランジ部
100…DUT