(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160168
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/135 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
A61B3/135
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070320
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(74)【代理人】
【識別番号】100213702
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 芳則
(72)【発明者】
【氏名】月原 浩一
(72)【発明者】
【氏名】山本 諭史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AB19
4C316FY01
4C316FY02
4C316FY04
4C316FY09
(57)【要約】
【課題】照明系によるバックグラウンド照明の照明光の遮光を回避しつつ、瞼での影の発生を抑制し、被検眼の観察をより正確に行う眼科装置を提供すること。
【解決手段】眼科装置は、照明光の照射方向を被検眼に向けながら被検眼周りに回動可能に支持された照明系と、照明系に対して被検眼の配置位置とは反対側に設けられる観察系と、被検眼よりも下方位置であって観察系に設けられるバックグラウンド照明用の発光部と、を備える。発光部は、被検眼側から見た照明系の移動可能方向に複数設けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光の照射方向を被検眼に向けながら被検眼周りに回動可能に支持された照明系と、
前記照明系に対して被検眼の配置位置とは反対側に設けられる観察系と、
被検眼よりも下方位置であって前記観察系に設けられるバックグラウンド照明用の発光部と、
を備え、
前記発光部は、被検眼側から見た前記照明系の移動可能方向に複数設けられる、
眼科装置。
【請求項2】
前記照明系と前記発光部の相対位置に応じて、前記発光部を調光する機能を有する請求項1に記載の眼科装置。
【請求項3】
前記発光部は、前記照明系の回動軸方向から見た平面視において、被検眼の位置である原点から、前記観察系の受光部を結ぶ観察軸上に位置する場合の前記照明系の2接線により形成される遮光角よりも外側に配置される、請求項2に記載の眼科装置。
【請求項4】
前記照明系は、
前記照明光を出射する細隙灯と、前記照明光を被検眼に偏向する偏向部とを有し、
被検眼の観察の際には、被検眼と前記観察系の受光部とを結ぶ観察軸から外れた位置から、被検眼に前記照明光を照射する、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、バックグラウンド照明用の光源を有する細隙灯顕微鏡等の眼科装置が提案されている。バックグラウンド照明は、被検眼の観察においてスリット光が照射された被検眼における位置の確認や、被検眼のカメラ撮影の際の白飛びを防止するため等に用いられる。例えば、特許文献1には、観察系の上部にバックグラウンド照明が設置された眼科装置(細隙灯顕微鏡)が開示されている。この眼科装置のバックグラウンド照明は、点灯動作により、照明光を偏向光学系(照明系)の上方を通るように斜め下方向に出射して、照明系による照明光の遮光を回避して被検眼に到達するように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の眼科装置では、照明光が被検眼に対して上方から照射されるため、瞼によって被検眼の観察領域に影が生じることがある。そのため、前眼部等の観察領域を適切に観察できないことがあった。
【0005】
本開示は、照明系によるバックグラウンド照明の照明光の遮光を回避しつつ、瞼での影の発生を抑制し、被検眼の観察をより正確に行う眼科装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本開示に係る眼科装置は、照明光の照射方向を被検眼に向けながら被検眼周りに回動可能に支持された照明系と、前記照明系に対して被検眼の配置位置とは反対側に設けられる観察系と、被検眼よりも下方位置であって前記観察系に設けられるバックグラウンド照明用の発光部と、を備え、前記発光部は、被検眼側から見た前記照明系の移動可能方向に複数設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る眼科装置によれば、照明系によるバックグラウンド照明の照明光の遮光を回避しつつ、瞼での影の発生を抑制し、被検眼のより正確な観察を可能とした眼科装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の実施形態1に係る眼科装置の側面図である。
【
図2】実施形態1の眼科装置の照明系及び観察系の被検者側から見た斜視図である。
【
図3】幅広のカメラ装置及び幅狭のカメラ装置(実施形態1の変形例1)にそれぞれ照明装置が装着された状態を示す平面模式図である。
【
図4】実施形態1の眼科装置の照明系を移動させた状態を示す正面図である。
【
図5】実施形態1の眼科装置において、被検眼、照明系及び発光部の位置関係を示す平面図である。
【
図7】実施形態1の眼科装置の動作フローチャートである。
【
図8】実施形態1の眼科装置の変形例2を示す図である。
【
図9】実施形態2の眼科装置において、光学式エンコーダが取り付けられた回動軸、及び、実施形態2の変形例1の磁気式エンコーダが取り付けられた回動軸の拡大図である。
【
図10】実施形態2の眼科装置の動作フローチャートである。
【
図11】実施形態2の変形例2及び変形例3の眼科装置を説明する正面図である。
【
図12】実施形態3の眼科装置の照明系及び観察系の被検者側から見た斜視図である。
【
図13】実施形態3の変形例1の眼科装置を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施形態1)
以下、本開示の実施形態1を図面に基づき説明する。なお、以下の説明において、眼科装置10は、被検者側を前、その反対側(検者側)を後ろとし、被検者側から見た左側を左、その反対側を右とする。また、眼科装置10は、
図1の上側を上、その反対側を下として説明する。
【0010】
まず、眼科装置10の構成について説明する。
図1は、眼科装置10A(10)の側面図である。本実施形態の眼科装置10Aは、
図1に示すように、いわゆるZeiss式(Littman式)の細隙灯顕微鏡であり、ベース12、顔支持部14、電動駆動部16、可動テーブル18、操作レバー20、第1の支持部材22、顕微鏡支持アーム24、回動軸26、第2の支持部材28、回動軸30、照明系32、観察系34(顕微鏡部)、バックグラウンド照明用の照明装置36、及び光源操作部38、を備える。
【0011】
ベース12は、不図示の検眼テーブル上に載置することができる。顔支持部14は、そのベース12の上方に設けられる。また、電動駆動部16及び光源操作部38は、ベース12の上面に設けられる。さらに、可動テーブル18は水平方向(前後方向Dy及び左右方向Dx)に移動自在に保持されている。なお、前後方向Dyは被検者に近づく前方向及び被検者から遠ざかる後方向であり、左右方向Dxは被検者の眼幅方向である。
【0012】
顔支持部14は、ベース12に固定され且つ上下方向に延びた一対の支柱14aと、一対の支柱14aの上下方向の中間部に設けられた顎受14bと、一対の支柱14aの上下方向の上端部に設けられた額当14cと、を有する。被検者の顔は、被検者が顎受14bに顎を載せると共に額当14cに額を当てることで顔支持部14により支持される。これにより、被検眼Eの位置が固定される。なお、被検眼Eは、回動軸26及び回動軸30の略上方に位置するように固定される。
【0013】
電動駆動部16は、ベース12上で可動テーブル18を水平方向(左右方向Dx及び前後方向Dy)に移動させる移動機構である。また、操作レバー20は、可動テーブル18の上方で且つ後方向側(検者側)の後端部に設けられる。さらに、第1の支持部材22は、可動テーブル18の上面には、上下方向に移動可能(昇降可能)に設けられている。
【0014】
電動駆動部16は、不図示の複数のモータと、各モータの回転をそれぞれ水平方向(Dx,Dy)及び上下方向Dzの駆動力に変換する不図示の駆動伝達機構と、を備える。電動駆動部16は、操作レバー20の操作に応じて可動テーブル18を水平方向(Dx,Dy)に移動させる機能と、第1の支持部材22を上下方向Dzに移動させる機能とを有する。これにより、被検眼Eに対する第1の支持部材22(照明系32及び観察系34)の位置調整が可能となる。
【0015】
操作レバー20は、第1の支持部材22(照明系32及び観察系34)を水平方向(Dx,Dy)と上下方向Dzとにそれぞれ手動で移動操作するための操作部材である。例えば、操作レバー20を前後方向Dy又は左右方向Dxに傾倒操作されると、電動駆動部16は可動テーブル18を前後方向Dy又は左右方向Dxに移動させる。また、操作レバー20が軸線周りに回動操作されると、電動駆動部16は第1の支持部材22を上下方向Dzに移動させる。なお、操作レバー20の頂部には、撮影等に用いるスイッチ20aが設けられている。
【0016】
第1の支持部材22には顕微鏡支持アーム24が設けられている。この顕微鏡支持アーム24は、水平アーム部24aと鉛直アーム部24bとを有しており、
図1に示すように側面視略L字状に形成される。
【0017】
水平アーム部24aの前方側(被検眼E側)の端部は、上下方向Dzに延びた回動軸26を介して、第1の支持部材22上において水平回動(水平面を回動面とする回動)可能に取り付けられている。また、第2の支持部材28は、水平アーム部24aの回動軸26の延長線上(すなわち、略同軸上)に位置する回動軸30を介して、水平回動可能に取り付けられる。
【0018】
なお、回動軸26を中心とした顕微鏡支持アーム24の水平回動、及び回動軸30を中心とした第2の支持部材28の水平回動は、検者の手動操作で行ったり或いは不図示の電動回動機構を用いて電動で行ったりしてもよい。
【0019】
鉛直アーム部24bの上端部には顕微鏡部である観察系34が取り付けられる。また、第2の支持部材28には照明系32が設けられている。
【0020】
照明系32は、第一照明光L1を出射する細隙灯44と偏向光学系46とを備える。細隙灯44は、偏向光学系46に向けて第一照明光L1としてスリット光を出射する。偏向光学系46は、細隙灯44の上方位置に設けられており、且つ細隙灯44よりも上方位置に第一照明光L1を被検眼Eに偏向する偏向部48を有する。偏向部48は、例えばミラー(反射鏡)又はプリズム等の偏向光学素子により構成され、細隙灯44から出射された第一照明光L1を被検眼Eに向けて偏向(導光)する。これにより、第一照明光L1は被検眼Eに対して照射される。なお、本実施形態では偏向光学素子としてプリズムを用いている。なお、細隙灯44及び偏向光学系46は、
図1に示したものに限定されるものでなく、Zeiss式の細隙灯顕微鏡で使用可能な構成であれば、その形状、構造及び配置に特に限定はされない。
【0021】
照明系32は、回動軸30を中心として第2の支持部材28と一体に水平回動される。顔支持部14は、被検眼Eが回動軸30の略上方に位置するように顔を固定するため、照明系32は、第一照明光L1の照射方向を被検眼Eに向けながら被検眼E周りに回動可能に支持される。これにより、被検眼Eに対する第一照明光L1の照射方向(入射角度)を調整することができる。
【0022】
観察系34は、照明系32に対して被検眼Eの配置位置とは反対側に設けられる。観察系34は、照明系32から出射された第一照明光L1及び後述の照明装置36から出射された各種の光が照射されている被検眼Eの観察に用いられる。この観察系34の前方側(被検眼E側)の前端部には受光部である対物レンズ50が設けられ、後方側(検者側)の後端部には接眼レンズ52が設けられる。
図1中の符号LAは、被検眼Eと対物レンズ50(受光部)とを結ぶ軸線であって、対物レンズ50の光軸(観察軸)である。
【0023】
観察系34は、例えば、対物レンズ50により受光した光を、倍率調整を行う等して検者側(眼科装置10の後方側)に導光して接眼レンズ52から出射する。また、観察系34は、回動軸26を中心として顕微鏡支持アーム24と一体に水平回動させることができる。そのため、観察系34は、被検眼Eの観察方向を調整することができる。
【0024】
また、本実施形態の観察系34は、観察系34の光学系を介して被検眼Eを撮像するカメラ装置56を有する。カメラ装置56は、観察系34において被検眼E(又は対物レンズ50)とは反対側に設けられる。カメラ装置56は、例えば、デジタルカメラである。カメラ装置56は、長尺に形成され、長軸が上下方向Dzを向くように、観察系34の筐体に対して(
図1の例では、鉛直アーム部24b)着脱自在に装着可能に取り付けられている。
【0025】
カメラ装置56は、被検眼Eにより反射された第一照明光L1を受光して撮像する図示しない撮像部561と、電源回路562と、制御回路563とを備える。撮像部561は、CMOSイメージセンサ又はCCDイメージセンサ等の撮像素子である。対物レンズ50を介してカメラ装置56に入射した第一照明光L1は、ハーフミラー等によって一部が撮像部561に導光されて撮像される。第一照明光L1の他の一部は、接眼レンズ52側に導光される。電源回路562は、カメラ装置56に駆動電力を供給する回路である。電源回路562は、眼科装置10から供給された電力の一部を各機能部に分配する回路として構成してもよいし、電池、変圧器又は発電回路を備える構成としてもよい。
【0026】
照明装置36は、被検眼Eよりも下方位置における観察系34に設けられる。
図3には、本実施形態の幅広のカメラ装置56に照明装置36Aが装着された観察系34A(34)を平面模式図で示している。
図1の眼科装置10Aは観察系34Aを有する。観察系34Aの照明装置36Aは、バックグラウンド照明用の発光部363(詳細は後述)が複数設けられた長尺状の照明本体部361と、照明本体部361の両端部から後方に延設された腕部362とを有する。照明装置36Aは、照明本体部361及び腕部362が略直角に連結された平面視略U字状に形成される。
【0027】
本実施形態の観察系34Aにおけるカメラ装置56は、前述の撮像部561と発光部363とを有する。照明装置36Aは、カメラ装置56に対して接続されて固定される。例えば、照明装置36Aは、U字状に形成された照明本体部361の腕部362により観察系34Aの鉛直アーム部24bを挟み込むようにカメラ装置56と接続され、被検眼E側から見た照明系32の移動可能方向について鉛直アーム部24bよりも幅広のカメラ装置56に対して、被検眼E側から挿抜可能(着脱可能)に形成される。観察系34Aの例では、照明装置36Aは、腕部362の端部に設けられた挿入部362a(例えば、ジャック)と、カメラ装置56に設けられた被挿入部56a(例えば、レセプタクル)とを接続することで、カメラ装置56に対し固定される。なお、照明本体部361の下面が、鉛直アーム部24bの前方側面から前方側に突出した支持突起により支持される構成としてもよい。
【0028】
また、照明装置36Aは、腕部362の内部を通じた配線ケーブルを介してカメラ装置56の電源回路562から電力供給を受けることができる。さらに照明装置36の制御回路は、カメラ装置56の制御回路563の回路基板と共有してもよいし、又は、カメラ装置56の筐体内にカメラ装置56用の制御回路563の回路基板とは別個の回路基板に設けられて収容されてもよい。照明装置36の制御回路の回路基板がカメラ装置56の筐体内に収容されることで、照明装置36及びカメラ装置56の全体を小型化することができる。
【0029】
発光部363は、被検眼Eに対して互いに異なる複数種類の光(例えば、可視光、赤外光、及び励起光の3種類の光)を選択的に発光可能な光源を有する。本実施形態では、
図2に示すように、赤外光を出射可能な赤外光源363a及び可視光を出射可能な可視光源363bが、照明本体部361の前面側に上下に配置されている。
【0030】
光源操作部38は、ベース12の上面において後方側(検者側)に設けられる。この光源操作部38は、詳しくは後述するが、検者による細隙灯44のオン又はオフ操作及び光量調整操作、並びに、発光部363のオン又はオフ操作及び光量調整操作に用いられる。
【0031】
図4は、被検者(被検眼E)側から見た、照明系32及び観察系34の正面図である。
図4では、観察系34に対する照明系32の相対位置が異なる眼科装置10A及び眼科装置10Bを示している。発光部363は、被検眼E側から見た照明系32の移動可能方向である左右方向Dxに複数設けられる。換言すると、照明系32は、発光部363の配置方向に移動可能に構成される。本実施形態の発光部363は、正面視における右側及び左側の両端部に、同じ種類の光源である赤外光源363a及び可視光源363bがそれぞれ一つずつ配置されている。可視光源363bは、赤外光源363aよりも上側に配置される。
【0032】
図5は、照明系32及び観察系34の平面図である。発光部363は、照明系32の回動軸30方向から見た平面視において、被検眼Eの位置(被検眼Eの略中心位置又は前眼部の位置等の被検眼Eの基準となる位置)である原点Oから、観察系34の受光部である対物レンズ50を結ぶ観察軸LA上に位置する場合の照明系32の2接線L3により形成される遮光角θよりも外側に配置される。したがって、
図5に示すように、照明系32が略観察軸LA上に位置する状態では、被検眼Eは、照明装置36の左右方向Dxの両端部に配置された両発光部363から、バックグラウンド照明としての第二照明光L2の照射を受けることができる。
【0033】
図6は、眼科装置10A(10)が備える光源操作部38及び制御装置40の概略図である。光源操作部38は、細隙灯光源操作部381と、赤外光源操作部382と、可視光源操作部383と、を備える。また、眼科装置10Aは、眼科装置10Aの各機能を実行するための制御プログラムを記憶した図示しない記憶装置(又は記憶媒体ともいう)を備える。
【0034】
細隙灯光源操作部381は、細隙灯44のオン又はオフ操作と、細隙灯44から出射される第一照明光(スリット光)の光量調整操作と、を受け付ける。赤外光源操作部382は、赤外光源363aのオン又はオフ操作と、赤外光源363aから出射される赤外光の光量調整操作と、を受け付ける。可視光源操作部383は、可視光源363bのオン又はオフ操作と、可視光源363bから出射される可視光の光量調整操作と、を受け付ける。
【0035】
制御装置40は、例えば可動テーブル18内に設けられており(眼科装置10Aの外部でも可)、眼科装置10Aの各部の動作を統括的に制御する。この制御装置40は、例えばパーソナルコンピュータのような演算装置であり、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御装置40の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0036】
制御装置40は、操作レバー20の前後方向Dy又は左右方向Dxの傾倒操作に応じて、電動駆動部16を駆動して可動テーブル18を前後方向Dy又は左右方向Dxに移動させ、且つ操作レバー20の軸線周りの回動操作に応じて、電動駆動部16を駆動して第1の支持部材22を上下方向Dzに移動させることができる。
【0037】
また、制御装置40は、光源操作部38に対するオンオフ操作及び光量調整操作の入力に応じて、細隙灯44、赤外光源363a及び可視光源363bの各光源のオン又はオフと、各光源から出射される光の光量調整と、を制御する。これにより、検者は、オン又はオフ操作に対応する光源のオン又はオフの切り替え、及び、光量調整操作に対応する光源から出射される光の光量の調整を容易に行うことができる。このため、制御装置40は、本発明の光源制御部として機能する。これにより、光源の切替及び光量調整等を、手動操作(例えばフィルター切り替え等)で行う場合と比較して簡単に実行することができる。
【0038】
図4に戻り、眼科装置10A-1(10A)は、左右方向Dxに幅広の照明装置36Aを観察系34に装着して、照明系32を略観察軸LA上に位置させた状態を示している。眼科装置10A-1では、観察系34が観察軸LAに対して左右方向Dxにある程度変位した場合であっても、被検眼Eは左右両端の発光部363からの第二照明光L2の照射を受けることができる。
【0039】
また、
図4の眼科装置10A-2(10A)のように、照明系32が観察系34に対して相対移動する場合、左右の発光部363のいずれかが照明系32により遮光される場合があるが、本実施形態の眼科装置10A-2(10A)は、左右方向Dxに複数の発光部363を有するため、少なくとも一部の発光部363(
図4では、右側の発光部363)から出射された第二照明光L2を、照明系32の位置に関わらず被検眼Eに照射することができる。
【0040】
ここで、眼科装置10Aの動作フローチャートの例について
図7を参照して説明する。なお、
図7のフローチャートでは、ステップS08及びステップS09については、操作レバー20又は光源操作部38等を用いて眼科装置10Aの操作を半手動(又は制御装置40による半自動)で行う例について説明するが、その他の処理については手動又は制御装置40による自動のいずれによって実行するようにしてもよい。
【0041】
まず、ステップS01で、被検者は顎受14bに顎を載せて顔を支持し、被検眼Eの位置を固定する。ステップS02で、検者等のユーザは、操作レバー20を操作する等して照明系32の電源を入れる(「ON」に切り替える)。
【0042】
ステップS03で、被検眼Eの位置に合わせて、ユーザが操作レバー20を操作する等して、照明系32の位置及び角度の調整等が行われる。ステップS04で、ユーザは、眼科装置10Aのアライメント調整を行う。また、ユーザは、光源操作部38を操作する等して、ステップS05で被検眼Eに照射される第一照明光L1のスリット幅を調整し、ステップS06で第一照明光L1の明るさ調整等の調光を行う。
【0043】
ステップS07で、ユーザは、観察軸LAに対する照明系32から被検眼Eへの第一照明光L1の出射角度を確認し、眼科装置10Aは、ユーザ操作によって、照明系32を任意の位置(すなわち、観察軸LAに対する任意の角度)となるように照明系32の位置を調整する。
【0044】
ステップS08で、制御装置40は、ユーザの光源操作部38に対する操作により、任意のバックグラウンド照明用の光源を点灯させる(又は「ON」に切り替える)。なお、発光部363のうち、赤外光源363a及び可視光源363bのいずれかを点灯させるかは、ユーザの操作により手動で設定してもよいし、制御装置40により自動判定で設定してもよい。
【0045】
ステップS09で、制御装置40は、点灯させたバックグラウンド照明用の光源を調光する。本実施形態の眼科装置10Aは、照明系32と発光部363の相対位置に応じて、発光部363を調光する機能を有する。調光機能は、例えば、接眼レンズ52(
図1参照)や図示しない外部モニタ等を用いて被検眼Eの画像を確認しながら光源操作部38を介してユーザによって行われる。
【0046】
制御装置40は、ユーザの光源操作部38に対する操作により、照明系32が観察軸LA側に位置して左右の発光部363から出射された第二照明光L2を被検眼Eに照射可能である場合(
図4の眼科装置10A-1参照)は、左右の発光部363を点灯することができる。
【0047】
一方、照明系32は、被検眼Eの観察の際には、主に、被検眼Eと観察系34の受光部である対物レンズ50とを結ぶ観察軸LAから外れた(離れた)位置であって、観察軸LAに対して傾斜した方向から被検眼Eに第一照明光L1を照射する。したがって、照明系32が観察軸LAから左方(又は右方)に離れて一部の発光部363から出射される第二照明光L2が遮光される状況である場合(
図4の眼科装置10A-2参照)は、第二照明光L2が遮光される一部の発光部363を消灯する。これにより、眼科装置10Aの無駄な消費電力を抑制することができる。
【0048】
ステップS10で、操作レバー20への入力操作により、カメラ装置56が操作されて、被検眼Eの画像が撮像される。撮像された画像は、眼科装置10Aの記憶装置等に記憶される。
【0049】
以上、本実施形態の眼科装置10Aについて説明した。特許文献1に例示される従来の眼科装置では、眼科医又は看護師等の操作者の手元から離れた位置にある照明調整手段を操作してバックグラウンド照明の電源のON操作又はOFF操作及び調光制御等をする必要があったため、操作が手間であった。また、バックグラウンド照明用の照明装置の電源は眼科装置の他の構成に使用する電源と別個の配線を通じて電力供給を受ける構成とする場合があった。そのため、眼科装置からは2系統の配線が引き出されることにより、眼科装置の設置のための空間を要したり、配線コストがかかり、経済的ではなかった。
【0050】
本実施形態の眼科装置10Aは、照明装置36Aがカメラ装置56と接続される構成とすることで、ユーザが手元でバックグランド照明の調整ができ、さらに、第二照明光L2用の電源もカメラ装置56の電源と兼用して使うことができるため、省配線及び省スペース化が期待できる。従来の構成では、観察系の上部にバックグラウンド照明用の照明装置が取り付けられていたため、観察系の筐体の上部位置が比較的高くなっていた。このため、アプラネーショントノメータ等の機器の装着が難しい場合があったが、眼科装置10Aは、照明装置36とカメラ装置56の制御回路や、電源回路の基板を共通化することが可能であるため、照明機能や撮影機能を備えながらも、コストダウン、省配線及び小型化(省スペース化)を図ることができる。
【0051】
なお、本実施形態では、照明装置36Aが、被検眼E側から挿抜可能(着脱可能)に形成される構成について説明したがこれに限らない。例えば、照明装置36Aは、カメラ装置56に対して検者側、眼科装置10の右側若しくは左側、上側、又はその他の任意の方向から挿抜可能(着脱可能)に構成してもよい。
【0052】
(実施形態1の変形例1)
なお、
図3の観察系34Aで説明したように、本実施形態では、照明装置36が、鉛直アーム部24bよりも幅広のカメラ装置56に対して、被検眼E側から挿抜可能な構成について説明したが、
図3の観察系34Bに示すように、カメラ装置56の左右幅を照明装置36Bの左右幅よりも幅狭とし、挿入部362aをカメラ装置56の左右の側面に形成した被挿入部56a側から接続する構成としてもよい。照明装置36Bをカメラ装置56に接続する場合、照明装置36Bの意図しない脱落を防止することができる。
【0053】
(実施形態1の変形例2)
図8は、
図1に示した観察系34よりも高い照明系32C(32)を有する眼科装置10C(10)の正面図である。なお、眼科装置10Cの説明において、眼科装置10Aと同様の構成については、同一の符号を付す等してその説明を省略又は簡略化する。眼科装置10Cは、実施形態1の照明系32Aの代わりにいわゆるタワー型の照明系32Cを備える。照明系32Cは、
図8の正面視において観察軸LAの周辺を開口させるように間隔を空けて配置した二本の支柱32C1を備える。各支柱32C1の下部は、詳細は図示しないが、
図1で示した第2の支持部材28により支持されており、回動軸30により回動可能に接続されている。また、支柱32C1の上部には細隙灯44及び照明光学系46Cが配置されている。照明系32Cの照明光学系46Cは、細隙灯44の下方位置に設けられており、且つ細隙灯44よりも下方位置に第一照明光L1を被検眼Eに偏向する偏向部48Cを有する。なお、偏向部48Cは、照明系32Cの第2の支持部材28(
図1も参照)等により支持されるが、その支持構造の詳細な図示は省略する。また、前述の偏向部48と同様の機能を有する偏向部48Cは、例えばミラー(反射鏡)又はプリズム等であり、細隙灯44から出射された第一照明光L1を被検眼Eに向けて偏向(導光)する。
【0054】
また、
図5には、眼科装置10Cの支柱32C1(支柱32C1は一点鎖線で図示)と、被検眼Eと、発光部363との位置関係も示している。発光部363は、照明系32(32C)の回動軸30方向から見た平面視において、被検眼Eの位置である原点Oから、観察系34の受光部である対物レンズ50を結ぶ観察軸LA上に位置する場合の照明系32(32C)の2接線L3により形成される遮光角θよりも外側に配置される。したがって、タワー型の照明系32Cが観察軸LA上に位置する状態では、被検眼Eは、照明装置36Aの左右方向Dx両端部に配置された発光部363の両方から、バックグラウンド照明としての第二照明光L2の照射を受けることができる。
【0055】
バックグラウンド照明用の発光部を観察系の上部に設置した眼科装置の場合、タワー型の照明系(例えば照明系32C)を用いると、照明系の回動位置によっては、発光部から出射される照明光が照明系により遮光されて被検眼Eを十分に照らすことができないことが想定される。しかし、本実施形態の照明装置36Aを備える眼科装置10Cは、タワー型の照明系32Cを用いた場合であっても、照明系によるバックグラウンド照明の照明光の遮光を回避しつつ、被検眼Eの瞼での影の発生を抑制し、バックグラウンド照明としての第二照明光L2をいずれかの発光部363から被検眼Eに照射して、被検眼のより正確な観察を可能とすることができる。
【0056】
(実施形態2)
次に、本開示の実施形態2について説明する。実施形態2の眼科装置10Dは、バックグラウンド照明用の光源から出射される第二照明光を自動で調光制御する。
図9は、光学式エンコーダ61(位置検出部)が取り付けられた回動軸26,30を備える眼科装置10D、及び、磁気式エンコーダ62(位置検出部)が取り付けられた回動軸26,30を備える眼科装置10Eの、各回動軸26,30の拡大図である。実施形態2では、眼科装置10Dについて説明する。なお、眼科装置10Dの説明において、眼科装置10Aと同様の構成については、同一の符号を付す等してその説明を省略又は簡略化する。
【0057】
眼科装置10Dは、大部分の構成については
図1に示した眼科装置10Aと同様の構成を備える。眼科装置10Dは、回動軸26,30に光学式エンコーダ61を備える。光学式エンコーダ61は、例えば、ロータリーエンコーダが用いられ、光センサ611及びスリット円盤612を備える。スリット円盤612は、回動軸26,30と同軸に配置されて平板状に形成されており、外周縁部周りに周方向に亘って複数のスリット(開口部又は切欠部)を間欠的に備えている。また、光センサ611は、投光部及び受光部が一体又は別体に形成された投受光センサである。光センサ611は、スリット円盤612の配列位置に光を照射して反射又は透過した光を受光する。眼科装置10Dの制御装置40(
図6参照)は、光センサ611から光の検出信号を受信して、回動軸26,30の回動角度を検出することができる。したがって、制御装置40は、光学式エンコーダ61によって、照明系32の観察系34に対する回動角度を検出することができる。
【0058】
次に、眼科装置10の動作フローチャートの例について
図10を参照して説明する。
図10のフローチャートにおいて、ステップS21、ステップS22、ステップS23、ステップS24、ステップS25及びステップS26の処理又は動作は、それぞれ、ステップS01、ステップS02、ステップS03、ステップS04、ステップS05及びステップS06の処理又は動作と同様である。また、ステップS29の処理は、ステップS10の処理と同様である。
【0059】
ステップS27で、眼科装置10Dは、ユーザの光源操作部38に対する操作により、バックグラウンド照明用の光源の電源を入れる(又は「ON」に切り替える)。また、眼科装置10Dは、照明系32と発光部363の相対位置に応じて、発光部363を調光制御する機能を有する。調光制御は、発光部363による第二照明光L2の出射のON又はOFF切替、及び、光量調整を含む。調光制御の例として、制御装置40は、ステップS23において調整された照明系32の観察系34に対する相対位置(回動角度)を光学式エンコーダ61により検出する。制御装置40は、例えば
図4等に示した眼科装置10Aのバックグラウンド照明用の光源である発光部363のうち、照明系32により遮光がされない一方側(照明系32の影にならない方)を点灯させるとともに、照明系32により遮光される他の一方側を消灯させるように、発光部363を自動的に選択し点灯させる機能を有する。点灯された発光部363からは、第二照明光L2(
図1参照)が出射される。
【0060】
なお、眼科装置10Dは、記憶装置に予め照明系32と観察系34との回動角度と、各発光部363から出射される第二照明光L2が被検眼Eにどの程度到達するかの遮光情報とを対応させた対応情報を有する。又は、記憶装置は、上記回動角度のうち予め定めた角度を、発光部363の点灯又は消灯の閾値情報として記憶する。制御装置40は、例えば
図4の眼科装置10A-1に示すように、被検眼E側から見て発光部363の全部が照明系32によって遮られていない場合、又は、被検眼E側から見て発光部363の一部(例えば、全体の80%又は半分、等)が照明系32によって遮られていない場合に、発光部363を点灯させるように制御することができる。
【0061】
また、発光部363のうち、赤外光源363a及び可視光源363bのいずれかを点灯させるかは、ユーザの操作により手動で設定してもよいし、制御装置40により自動判定で設定してもよい。
【0062】
ステップS28で、制御装置40は、点灯させたバックグラウンド照明用の発光部363(光源)を調光する。前述のとおり、発光部363は、被検眼E側から見た照明系32の移動可能方向に複数設けられる。制御装置40は、照明系32の位置に関わらず発光部363から被検眼Eに到達する第二照明光L2の光量の変化を抑制するように、発光部363を調光する調光制御機能を有する。具体的に、制御装置40は、
図4の眼科装置10A-2のように、第二照明光L2を出射した場合に照明系32により遮光されない一方の発光部363(
図4では右側の発光部363)を点灯した場合と、眼科装置10A-1のように、第二照明光L2を出射した場合に照明系32により遮光されない両方の発光部363を点灯した場合とで、光量が同程度となるよう発光部363の出力を制御する。すなわち、制御装置40は、点灯する発光部363が多い場合は第二照明光L2の出力を低減させ、点灯する発光部363が少ない場合は第二照明光L2の出力を増加させる制御を行う。このように、制御装置40は、被検眼Eに到達可能な第二照明光L2の光源の数に応じて第二照明光L2の光量を制御することで、検者の観察又はステップS29の撮像を行う場合に、照明系32の位置に関わらず観察領域周辺等における明るさの変化を抑制することができる。
【0063】
本実施形態においても、照明系32は、被検眼Eの観察の際には、主に、被検眼Eと観察系34の受光部である対物レンズ50とを結ぶ観察軸LAから外れた(離れた)位置から、被検眼Eに対して観察軸LAに対して傾斜した方向から第一照明光L1を照射する。したがって、
図4の眼科装置10A-2に示すように、照明系32が観察軸LAから左方(又は右方)に離れて一部の発光部363から出射される第二照明光L2が遮光される場合は、第二照明光L2を被検眼Eに照射できない一部の発光部363を消灯する。これにより、眼科装置10の無駄な消費電力を抑制することができる。
【0064】
以上、実施形態2の眼科装置10Dは、照明系32の位置に関わらず発光部363から被検眼Eに到達する第二照明光L2の光量の変化を抑制するように発光部363を制御する構成としたため、被検眼Eの観察の際に、瞼での影の発生を抑制しつつ、簡易な操作でバックグラウンド照明による被検眼Eの観察をより正確に行うことができる。
【0065】
(実施形態2の変形例1)
なお、眼科装置10Dは、光学式エンコーダ61の代わりに磁気式エンコーダ62を備える眼科装置10Eであってもよい。磁気式エンコーダ62は、例えば、回動軸30に固定された磁気センサ621(例えばホール素子)と、回動軸26周りに環状に配置された永久磁石である磁気ドラム622を備え、回動軸30の回動軸26に対する回動角度に応じた検出信号を出力する。制御装置40は、磁気式エンコーダ62から取得した検出信号に基づいて、照明系32の観察系34に対する回動角度(相対位置)を判定することができる。眼科装置10Eは、眼科装置10Dと同様に、
図10のフローチャートに従って動作することができる。
【0066】
さらに、眼科装置10は、照明系32の観察系34に対する角度の検出装置として、光学式エンコーダ61及び磁気式エンコーダ62の他に機械式エンコーダ(ポテンショメータ)又は電磁誘導式エンコーダ等のその他のエンコーダを用いてもよい。
【0067】
(実施形態2の変形例2及び変形例3)
次に、実施形態2の変形例2及び変形例3について説明する。
図11は、実施形態2における、変形例2の眼科装置10F(10)及び変形例3の眼科装置10G(10)を説明する正面図である。なお、眼科装置10F及び眼科装置10Gの説明において、眼科装置10Aと同様の構成については、同一の符号を付す等してその説明を省略又は簡略化する。
【0068】
眼科装置10Fの照明装置36Fは、照明本体部361における左右方向Dxの略中央にカメラ部63を備える。眼科装置10Gは、カメラ部63により照明系32側を撮像し、取得した画像から制御装置40によって照明系32の位置を検出することができる。照明装置36Gは、記憶装置に予め照明系32と観察系34との回動角度と、各発光部363から出射される第二照明光L2が被検眼Eにどの程度到達するかの遮光情報とを対応させた対応情報を有する。又は、記憶装置は、上記回動角度のうち予め定めた角度を、発光部363の点灯又は消灯の閾値情報として記憶する。
【0069】
眼科装置10Fの制御装置40は、カメラ部63により取得した画像のデータに基づいて、照明系32の観察系34に対する回動角度(相対位置)を判定することができる。また、眼科装置10Fは、眼科装置10Dと同様に、
図10のフローチャートに従って動作することができる。
【0070】
眼科装置10Gの照明装置36Gは、照明本体部361における左右方向Dxの略中央にTOF(Time of Flight)センサ64を備える。眼科装置10Gは、TOFセンサ64により照明系32の有無を検出することができる。なお、照明装置36Gも、記憶装置に予め照明系32と観察系34との回動角度と、各発光部363から出射される第二照明光L2が被検眼Eにどの程度到達するかの遮光情報とを対応させた対応情報を有してもよいし、上記回動角度のうち予め定めた角度を、発光部363の点灯又は消灯の閾値情報として記憶してもよい。
【0071】
眼科装置10Gの制御装置40は、TOFセンサ64から取得した照明系32の位置情報に関するデータに基づいて、照明系32の観察系34に対する回動角度(相対位置)を判定することができる。また、眼科装置10Gは、眼科装置10Dと同様に、
図10のフローチャートに従って動作することができる。
【0072】
(実施形態3)
次に、実施形態3について説明する。
図12は、本実施形態の眼科装置10H(10)の照明系32及び観察系34の被検眼E側から見た斜視図である。なお、眼科装置10Hの説明において、眼科装置10Aと同様の構成については、同一の符号を付す等してその説明を省略又は簡略化する。
【0073】
眼科装置10Hは、眼科装置10Aにおける照明装置36Aの代わりに照明装置36Hを備える。照明装置36Hは、照明装置36Aに比べて、照明本体部361の左右幅が短尺に形成され、腕部362の配置間隔が幅狭に形成される。スリット光を用いた眼科装置10Hにおいて、照明系32は、被検眼Eの観察の際には、主に、被検眼Eと観察系34の受光部である対物レンズ50とを結ぶ観察軸LAから外れた(離れた)位置であって、観察軸LAに対して傾斜した方向から被検眼Eに第一照明光L1を照射する。そのため、照明装置36Hは、
図12に示す観察軸LA周辺の正面図に示すように、照明系32が略観察軸LA上に位置する場合において発光部363から出射された光の一部(又は全部)が遮光されるような発光部363の配置構成であっても、第二照明光L2が照明系32により遮光される照明系32の位置を検出することで、照明系32と発光部363の相対位置に応じて、発光部363を調光制御し、被検眼Eの観察の際に第二照明光L2が遮光されることを回避することができる。したがって、実施形態1又は実施形態2と同様に、被検眼Eの観察の際に、瞼での影の発生を抑制しつつ、バックグラウンド照明による被検眼Eの観察をより正確に行うことができる。また、眼科装置10Hは、照明装置36Hの左右幅を短尺に形成したため全体を小型に構成することができる。
【0074】
また眼科装置10Hは、
図10のフローチャートの処理及び動作を行うことができる。これにより、被検眼Eの観察の際に、瞼での影の発生を抑制しつつ、少ない工数でバックグラウンド照明による被検眼Eの観察をより正確に行うことができ、さらに主に照明装置36H周辺部分について小型化することができる。
【0075】
また、眼科装置10Hは、
図7のフローチャートの処理及び動作を行ってもよい。これにより、被検眼Eの観察の際に、瞼での影の発生を抑制しつつ、照明装置36Hを小型化することができる。
【0076】
(実施形態3の変形例1)
次に、実施形態3の変形例1について説明する。
図13は、実施形態3における変形例1の眼科装置10I(10)を説明する正面図である。眼科装置10Iは、眼科装置10Aにおける照明装置36Aの代わりに照明装置36Iを備える。なお、眼科装置10Iの説明において、眼科装置10Aと同様の構成については、同一の符号を付す等してその説明を省略又は簡略化する。
【0077】
眼科装置10Iの照明装置36Iは、照明本体部361における左右方向Dxの略中央部に配置された複数の発光部363を備える。
【0078】
また、眼科装置10Iにおける照明系32の回動角度の判定は、前述のエンコーダ(例えば、光学式エンコーダ61、磁気式エンコーダ62、等)、カメラ部63、及びTOFセンサ64等の任意の構成を用いて制御装置40により行うことができる。照明系32Iは、被検眼Eの観察の際には、主に、被検眼Eと観察系34の受光部である対物レンズ50とを結ぶ観察軸LAから外れた(離れた)位置であって、観察軸LAに対して傾斜した方向から被検眼Eに第一照明光L1を照射する。そのため、照明装置36Iは、照明本体部361の中央部に配置された左右の発光部363から出射された第二照明光L2がいずれも一部又は全部について遮光されるような間隔で発光部363が配置された場合であっても、被検眼Eの観察精度に与える影響が略無く、実施形態1又は実施形態2と同様に、被検眼Eの観察の際に、瞼での影の発生を抑制しつつ、バックグラウンド照明による被検眼Eの観察をより正確に行うことができる。
【0079】
また眼科装置10Iも、
図10のフローチャートの処理及び動作を行うことができる。これにより、被検眼Eの観察の際に、瞼での影の発生を抑制しつつ、少ない工数でバックグラウンド照明による被検眼Eの観察をより正確に行うことができ、さらに主に照明装置36I周辺部分について小型化することができる。
【0080】
また、眼科装置10Iは、
図7のフローチャートの処理及び動作を行ってもよい。これにより、被検眼Eの観察の際に、瞼での影の発生を抑制しつつ、照明装置36Iを小型化することができる。
【0081】
(実施形態4)
次に、本開示の実施形態4について説明する。
図14及び
図15は、実施形態4の眼科装置10J(10J-1,10J-2,10J-3)の正面図である。なお、眼科装置10Jの説明において、眼科装置10Aと同様の構成については、同一の符号を付す等してその説明を省略又は簡略化する。眼科装置10Jは、眼科装置10Aと同様に構成されるが、照明装置36Aの代わりに照明装置36Jを有する。照明装置36Jは、被検眼E側から見た照明系32の移動可能方向である左右方向Dxに移動可能に構成された発光部363Jを有する。発光部363Jは、照明本体部361の正面側(被検眼E側)に設けられる。発光部363Jは、例えば、ラックギア及びピニオンギアを用いた動力伝達機構に配置して左右方向Dxに移動可能に構成することができるが、その他の任意の動力伝達機構を適用することができる。
【0082】
照明系32の位置に応じて発光部363を移動させて、発光部363から出射される第二照明光L2が照明系32によって遮光されることを回避する回避動作機能を有する。回避動作機能は、制御装置40の制御により行われる。具体的に、眼科装置10J-1に示すように、制御装置40は、照明系32が眼科装置10Jの左右方向Dxにおける略中央側に位置する場合、発光部363Jを照明系32の右側又は左側(一点鎖線で示す)に位置(移動)させる。
【0083】
また、眼科装置10J-2に示すように、制御装置40は、照明系32が眼科装置10Jの左右方向Dxにおける中心部から離れた外側に位置する場合(例えば、照明装置36Jにおける一方の発光部363Jが)、発光部363Jを眼科装置10J-2の左右方向Dxにおける右側(又は左側)の位置から内側に移動させて、第二照明光L2が照明系32によって遮光されることを回避することができる。なお、発光部363Jは、照明系32が被検眼E側から見て右方に移動した場合は左方に移動させ、又は、照明系32が左方に移動した場合は右方に移動してもよい。
【0084】
さらに、眼科装置10J-3に示すように、制御装置40は、照明系32が眼科装置10Jの左右方向Dxにおける中心部から離れた外側に位置する場合、発光部363Jを眼科装置10J-3の左右方向Dxにおける略中央位置に移動させて、第二照明光L2が照明系32によって遮光されることを回避してもよい。
【0085】
実施形態4に係る眼科装置10Jは、発光部363Jを移動可能な構成としたため、瞼での影の発生を回避し、かつ、照明系32によるバックグラウンド照明としての第二照明光L2の遮蔽を回避しながら、被検眼Eの正確な観察を可能とすることができる。また、眼科装置10Jは、フレアの発生を防止し、被検眼Eの正確な観察を可能にする眼科装置10J(細隙灯顕微鏡)を提供することができる。
【0086】
なお、眼科装置10Jは、発光部363Jを照明装置36Jにおける照明本体部361の左右に複数有してもよい。この場合、照明系32が眼科装置10Jの左右方向Dxにおける中心部から離れた外側に位置する場合、全ての発光部363Jを被検眼E側から見た中央部に位置するように移動させてもよいし、被検眼E側から見て照明系32が右方に移動した場合は発光部363Jの両方を左方に移動させ、又は、照明系32が左方に移動した場合は発光部363Jの両方を右方に移動させるように制御されてもよい。
【0087】
また、図示はしないが、制御装置40は、照明本体部361において左右に設けられた発光部363Jの一方又は両方を、照明系32の移動方向と同方向に移動させて、第二照明光L2が照明系32によって遮光されることを回避してもよい。制御装置40は、発光部363Jを、被検眼E側から見て照明系32の左右の両側に位置させながら右方又は左方へ移動させてもよい。
【0088】
また、発光部363Jを移動可能とする構成は、他の眼科装置10A~10Iの構成に適用させてもよい。
【0089】
また、発光部363Jに含まれる赤外光源363a及び可視光源363bを同時に移動させる例について説明したが、個別に移動させてもよい。
【0090】
以上、第一照明光L1の照射方向を被検眼Eに向けながら被検眼E周りに回動可能に支持された照明系32と、照明系32に対して被検眼Eの配置位置とは反対側に設けられる観察系34と、被検眼Eよりも下方位置であって観察系34に設けられるバックグラウンド照明用の発光部363と、を備え、照明系32と発光部363の相対位置に応じて、発光部363が調光制御される眼科装置10及び眼科装置10の光源制御方法について説明した。このため、バックグラウンド照明により被検眼Eのより正確な観察を可能とした眼科装置10を提供することができる。
【0091】
また、眼科装置10が、第一照明光L1の照射方向を被検眼Eに向けながら被検眼E周りに回動可能に支持された照明系32と、カメラ装置56を有し照明系32に対して被検眼Eの配置位置とは反対側に設けられる観察系34と、を備えるとともに、カメラ装置56が、被検眼Eにより反射された第一照明光L1を受光して撮像する撮像部561と、被検眼Eよりも下方位置であって観察系34に設けられるバックグラウンド照明用の発光部363とを備える構成について説明した。このため、簡易な構成で被検眼Eのバックグラウンド照明機能と撮像機能とを有する眼科装置10及びカメラ装置56を提供することができる。
【0092】
また、第一照明光L1の照射方向を被検眼Eに向けながら被検眼E周りに回動可能に支持された照明系32と、照明系32に対して被検眼Eの配置位置とは反対側に設けられる観察系34と、被検眼Eよりも下方位置であって観察系34に設けられるバックグラウンド照明用の発光部363と、を備え、発光部363は、被検眼E側から見た照明系32の移動可能方向に複数設けられる、眼科装置10について説明した。このため、照明系32によるバックグラウンド照明の第二照明光L2の遮光を回避しつつ、瞼での影の発生を抑制し、被検眼Eの観察をより正確に行う眼科装置10を構成することができる。
【0093】
また、第一照明光L1の照射方向を被検眼Eに向けながら被検眼E周りに回動可能に支持された照明系32と、照明系32に対して被検眼Eの配置位置とは反対側に設けられる観察系34と、被検眼Eよりも下方位置であって観察系34に設けられるバックグラウンド照明用の発光部363と、を備え、照明系32の位置に応じて発光部363を移動させて、発光部363から出射される第二照明光L2が照明系32によって遮光されることを回避する回避動作機能を有する眼科装置10について説明した。このようにすると、照明系32によるバックグラウンド照明の第二照明光L2の遮光を回避しつつ、瞼での影の発生を抑制し、被検眼Eのより正確な観察を可能とする眼科装置10及び眼科装置10の照明制御方法を構成することができる。
【0094】
以上で本開示の実施形態の説明を終えるが、本開示の態様は各実施形態に示した構成に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0095】
10(10A~10J) 眼科装置
10A-1,10A-2 眼科装置
10J-1~10J-3 眼科装置
12 ベース
14 顔支持部
14a 支柱
14b 顎受
14c 額当
16 電動駆動部
18 可動テーブル
20 操作レバー
20a スイッチ
22 第1の支持部材
24 顕微鏡支持アーム
24a 水平アーム部
24b 鉛直アーム部
26 回動軸
28 第2の支持部材
30 回動軸
32(32A,32C) 照明系
32C1 支柱
32I 照明系
34(34A,34B) 観察系
36(36A,36B,36F~36J) 照明装置
38 光源操作部
40 制御装置
44 細隙灯
46 偏向光学系
46C 照明光学系
48,48C 偏向部
50 対物レンズ
52 接眼レンズ
56 カメラ装置
56a 被挿入部
61 光学式エンコーダ
62 磁気式エンコーダ
63 カメラ部
64 TOFセンサ
361 照明本体部
362 腕部
362a 挿入部
363,363J 発光部
363a 赤外光源
363b 可視光源
381 細隙灯光源操作部
382 赤外光源操作部
383 可視光源操作部
561 撮像部
562 電源回路
563 制御回路
611 光センサ
612 スリット円盤
621 磁気センサ
622 磁気ドラム
Dx 左右方向
Dy 前後方向
Dz 上下方向
E 被検眼
L1 第一照明光
L2 第二照明光
L3 接線
LA 観察軸
O 原点
θ 遮光角