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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160177
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】カムクラッチ
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/08 20060101AFI20231026BHJP
   F16D 41/07 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
F16D41/08 A
F16D41/07 B
F16D41/07 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070333
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】楠 颯太
(57)【要約】
【課題】簡単な構造で、カムの噛み込みの発生を防止して動作モードの切り替え動作を含めた円滑な動作が可能であり、高機能化及び小型化を実現可能なカムクラッチを提供すること。
【解決手段】カムクラッチ100であって、複数のカムは噛み合い方向が互いに異なる第1カム130a及び第2カム130bを含み、カムクラッチ100の動作モードを切り替える動作モード切替機構150と、切替作動機構140とを備え、動作モード切替機構150は、外輪側ケージリング160と、内輪側ケージリング170と、位置規制用ケージリング180とを備え、切替作動機構140は、外輪側ガイド141と、内輪側ガイド142と、外輪側ガイド141及び内輪側ガイド142と周方向へ相対的に移動可能で外輪側ケージリング160及び内輪側ケージリング170の軸方向位置を操作する回転リング143とを有すること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の回転軸上に相対回転可能に設けられている外輪及び内輪と、前記外輪と前記内輪との間において周方向に配列された複数のカムとを備えたカムクラッチであって、
前記複数のカムは、前記外輪及び前記内輪に対する噛み合い方向が互いに異なる第1カム及び第2カムを含み、
前記カムクラッチの動作モードを切り替える動作モード切替機構と、前記動作モード切り替え機構を作動する切替作動機構とを備え、
前記動作モード切替機構は、前記外輪及び前記内輪の回転動作とは独立して軸方向に移動可能に設けられ前記第1カムの姿勢を変更可能に構成された外輪側ケージリングと、前記外輪及び前記内輪の回転動作とは独立して軸方向に移動可能に設けられ前記第2カムの姿勢を変更可能に構成された内輪側ケージリングと、前記外輪側ケージリングと前記内輪側ケージリングとの間に設けられ前記外輪側ケージリング及び前記内輪側ケージリングの周方向の移動の自由度を規制する位置規制用ケージリングとを備え、
前記切替作動機構は、前記外輪側ケージリングの軸方向位置を規定する外輪側ガイドと、前記外輪側ガイドと相対位置を固定され前記内輪側ケージリングの軸方向位置を規定する内輪側ガイドと、前記外輪側ガイド及び前記内輪側ガイドと周方向へ相対的に移動可能で前記外輪側ケージリング及び前記内輪側ケージリングの軸方向位置を操作する回転リングとを有することを特徴とするカムクラッチ。
【請求項2】
前記外輪側ケージリングの端部には、前記外輪側ケージリングと周方向摺動自在で半径方向に突出した外輪側突出部材が設けられ、
前記内輪側ケージリングの端部には、前記内輪側ケージリングと周方向摺動自在で半径方向に突出した内輪側突出部材が設けられ、
前記外輪側ガイドは、前記外輪側突出部材を受け入れ可能且つ摺動可能に構成され、前記外輪側ケージリングを前記外輪側に進出した位置で保持する外輪側進出ガイド部と、前記外輪側ケージリングを前記外輪から後退した位置で保持する外輪側後退ガイド部と、前記外輪側進出ガイド部と前記外輪側後退ガイド部とを連結する外輪側傾斜ガイド部とを有し、
前記内輪側ガイドは、前記内輪側突出部材を受け入れ可能且つ摺動可能に構成され、前記内輪側ケージリングを前記内輪側に進出した位置で保持する内輪側進出ガイド部と、前記内輪側ケージリングを前記内輪から後退した位置で保持する内輪側後退ガイド部と、前記内輪側進出ガイド部と前記内輪側後退ガイド部とを連結する内輪側傾斜ガイド部とを有することを特徴とする請求項1に記載のカムクラッチ。
【請求項3】
前記回転リングは、前記外輪側ケージリングと前記外輪側ガイドとの間及び前記内輪側ケージリングと前記内輪側ガイドとの間に形成された外輪側筒状壁及び内輪側筒状壁と、前記外輪側筒状壁を貫通する外輪側摺動孔と、前記内輪側筒状壁を貫通する内輪側摺動孔を有し、
前記外輪側摺動孔は、前記外輪側突出部材を通過可能且つ、前記外輪側ガイドと連通するように形成され、
前記内輪側摺動孔は、前記内輪側突出部材を通過可能且つ、前記内輪側ガイドと連通するように形成されていることを特徴とする請求項2に記載のカムクラッチ。
【請求項4】
前記外輪側進出ガイド部及び前記外輪側後退ガイド部と、前記内輪側進出ガイド部及び前記内輪側後退ガイド部とは、それぞれ少なくとも一箇所以上周方向で同じ位置に配置されていることを特徴とする請求項2に記載のカムクラッチ。
【請求項5】
前記外輪側ケージリング及び前記内輪側ケージリングは、それぞれ前記第1カムを保持する第1カム保持部と、前記第2カムを保持する第2カム保持部とを有し、
前記外輪側ケージリングにおける第2カム保持部及び前記内輪側ケージリングにおける第1カム保持部は、軸方向において開口幅が一定となるように構成され、
前記外輪側ケージリングにおける第1カム保持部及び前記内輪側ケージリングにおける第2カム保持部は、軸方向において開口幅が連続的に変化する開口幅変動部を有するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のカムクラッチ。
【請求項6】
前記外輪側ケージリングは、軸方向に延びる内面溝部を内面に有し、
前記内輪側ケージリングは、軸方向に延びる外面溝部を外面に有し、
前記位置規制用ケージリングは、軸方向一端部に径方向外方に突出するよう設けられ前記外輪側ケージリングの内面溝部に摺動可能に係合される外方突起部を有すると共に、軸方向他端部に径方向内方に突出するよう設けられ前記内輪側ケージリングの外面溝部に摺動可能に係合される内方突起部を有することを特徴とする請求項1に記載のカムクラッチ。
【請求項7】
前記内面溝部は、周方向に延びるよう設けられ前記外輪側ケージリングが前記第1カムを噛合状態とする位置にあるときに前記外方突起部の周方向の移動を許容するスライド溝部を有し、
前記外面溝部は、周方向に延びるよう設けられ前記内輪側ケージリングが前記第2カムを噛合状態とする位置にあるときに前記内方突起部の周方向の移動を許容するスライド溝部を有することを特徴とする請求項6に記載のカムクラッチ。
【請求項8】
前記外輪には、前記複数のカムの軸方向の移動を規制する位置規制部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のカムクラッチ。
【請求項9】
前記複数のカムの前記外輪側ケージリングに接する両側面及び前記内輪側ケージリングに接する両側面が、幅方向の寸法がカムの姿勢に拘らず一定となるように構成された曲面により構成されていることを特徴とする請求項1に記載のカムクラッチ
【請求項10】
前記複数のカムの前記外輪側ケージリングに接する両側面が、軸方向平面視にて、共通の基礎円を有するインボリュート曲線に沿った曲線により構成され、
前記複数のカムの前記内輪側ケージリングに接する両側面が、軸方向平面視にて、共通の基礎円を有するインボリュート曲線に沿った曲線により構成されていることを特徴とする請求項9に記載のカムクラッチ。
【請求項11】
同一の回転軸上に回転可能に設けられた第1回転部材及び第2回転部材を連動させて軸方向に移動させる軸方向連動機構であって、
前記第1回転部材の軸方向位置を規定する第1ガイドと、前記第1ガイドと相対位置を固定され前記第2回転部材の軸方向位置を規定する第2ガイドと、前記第1ガイド及び前記第2ガイドと周方向へ相対的に移動可能で前記第1回転部材及び前記第2回転部材の軸方向位置を操作する回転リングとを有することを特徴とする軸方向連動機構。
【請求項12】
前記第1回転部材の端部には、前記第1回転部材と周方向摺動自在で半径方向に突出した第1突出部材を有し、
前記第2回転部材の端部には、前記第2回転部材と周方向摺動自在で半径方向に突出した第2突出部材を有し、
前記第1ガイドは、前記第1突出部材を受け入れ可能且つ摺動可能に構成され、前記第1回転部材を進出した位置で保持する第1進出ガイド部と、前記第1回転部材を後退した位置で保持する第1後退ガイド部と、前記第1進出ガイド部と前記第1後退ガイド部とを連結する第1傾斜ガイド部とを有し、
前記第2ガイドは、前記第2突出部材を受け入れ可能且つ摺動可能に構成され、前記第2回転部材を進出した位置で保持する第2進出ガイド部と、前記第2回転部材を後退した位置で保持する第2後退ガイド部と、前記第2進出ガイド部と前記第2後退ガイド部とを連結する第2傾斜ガイド部とを有することを特徴とする請求項11に記載の軸方向連動機構。
【請求項13】
前記回転リングは、前記第1回転部材と前記第1ガイドとの間及び前記第2回転部材と前記第2ガイドとの間に形成された第1筒状壁及び第2筒状壁と、前記第1筒状壁を貫通する第1摺動孔と、前記第2筒状壁を貫通する第2摺動孔を有し、
前記第1摺動孔は、前記第1突出部材を通過可能且つ、前記第1ガイドと連通するように形成され、
前記第2摺動孔は、前記第2突出部材を通過可能且つ、前記第2ガイドと連通するように形成されていることを特徴とする請求項12に記載の軸方向連動機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作モードを切り替え可能に構成されたカムクラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
回転力の伝達と遮断を制御するクラッチとして、正転方向及び逆転方向の両方向に駆動と空転が切り替え可能な2方向クラッチが知られている。
例えば、特許文献1には、付勢手段によって回転ロック方向が逆方向になるように付勢された第1スプラグ及び第2スプラグをともに保持する保持器を制御して、正転方向及び逆転方向の両方向の回転を許容する両方向フリーモード、正転方向に対してのみ回転を許容し逆転方向の回転を禁止する一方向ロックモード及び逆転方向に対してのみ回転を許容し正転方向の回転を禁止する一方向ロックモードの3つの動作モードの切り替えが可能に構成されたクラッチが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-231828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
而して、上述の2方向クラッチにおいては、動作モードの変更に際して保持器を制御することで第1スプラグ及び第2スプラグのすべてのものが強制的に傾倒されるものであるため、外輪及び内輪の正転方向及び逆転方向の両方向の相対的な回転を禁止する両方向ロックモードを実現することはできない。
【0005】
また、上述の2方向クラッチにおいては、第1スプラグ及び第2スプラグは外輪及び内輪に接触するように付勢されており、外輪または内輪にトルクが働くと、一方のスプラグが外輪及び内輪に直ちに噛み合いを開始するように傾倒するが、他方のスプラグは外輪及び内輪と摺動しながら接触を続け、噛み合い待機の状態を維持する。
トルクが除荷されることで一方のスプラグが噛み合い解除方向に傾倒して空転状態に移行されることになるが、このとき、一方のスプラグの噛み合いが解除されるまでの間に、他方のスプラグが噛み合い方向に傾倒して外輪及び内輪に対し噛み合いを開始し、すべてのカムが同時に噛み合う「噛み込み」が生ずるおそれがある。
このような状態にあっては、すべてのスプラグが高い面圧をもって噛み合っているため、クラッチの動作モードを外輪及び内輪の正逆いずれか一方向または両方向の相対的な回転動作を禁止するロックモードから外輪及び内輪の両方向の相対的な回転動作を許容するフリーモードに切り替えるときに、スプラグの姿勢を変更するのに大きな力が必要となり、スプラグの外輪及び内輪に対する係合面や、外輪の軌道面及び内輪の軌道面を痛め、クラッチを短命化させてしまうおそれがあった。
さらに、スプラグの姿勢を変更するための姿勢変更部材に、高い剛性が必要となる、という問題もある。
【0006】
さらにまた、カムクラッチにおける係合子としてのカムの形状は、一般に、側面の形状が円弧形状とされており、このような外周輪郭形状では、カムと該カムの姿勢変更手段として機能する保持器の接触位置の関係で、カムの転がり距離を稼ぐことが困難である、という問題があった。
【0007】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、簡単な構造で、カムの噛み込みの発生を防止して動作モードの切り替え動作を含めて円滑な動作が可能であり、高機能化及び小型化を実現可能なカムクラッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、同一の回転軸上に相対回転可能に設けられている外輪及び内輪と、前記外輪と前記内輪との間において周方向に配列された複数のカムとを備えたカムクラッチであって、前記複数のカムは、前記外輪及び前記内輪に対する噛み合い方向が互いに異なる第1カム及び第2カムを含み、前記カムクラッチの動作モードを切り替える動作モード切替機構と、前記動作モード切り替え機構を作動する切替作動機構とを備え、前記動作モード切替機構は、前記外輪及び前記内輪の回転動作とは独立して軸方向に移動可能に設けられ前記第1カムの姿勢を変更可能に構成された外輪側ケージリングと、前記外輪及び前記内輪の回転動作とは独立して軸方向に移動可能に設けられ前記第2カムの姿勢を変更可能に構成された内輪側ケージリングと、前記外輪側ケージリングと前記内輪側ケージリングとの間に設けられ前記外輪側ケージリング及び前記内輪側ケージリングの周方向の移動の自由度を規制する位置規制用ケージリングとを備え、前記切替作動機構は、前記外輪側ケージリングの軸方向位置を規定する外輪側ガイドと、前記外輪側ガイドと相対位置を固定され前記内輪側ケージリングの軸方向位置を規定する内輪側ガイドと、前記外輪側ガイド及び前記内輪側ガイドと周方向へ相対的に移動可能で前記外輪側ケージリング及び前記内輪側ケージリングの軸方向位置を操作する回転リングとを有することにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0009】
本請求項1に係る発明によれば、外輪側ケージリングに第1カムの姿勢制御機能を持たせると共に内輪側ケージリングに第2カムの姿勢制御機能を持たせ、さらに、位置規制用ケージリングによって外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングの周方向の移動の自由度を規制することで、外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングの一方または両方を軸方向に移動させるだけで、カムを傾倒させることができると共に変更されたカムの姿勢を保持することができ、従って、カムクラッチを簡単な構成で4つの動作モードに対応可能な高機能を有するものとして構成することが可能である。
また、外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングの周方向の移動の自由度を規制することで、カムの姿勢変更に際して、第1カム及び第2カムが共に外輪及び内輪に噛み合う噛み込みが生ずることが回避され、円滑な動作を実現することができて高い応答性を得ることができる。
また、動作モード切り替え機構を作動する切替作動機構は、外輪側ガイド及び内輪側ガイドと周方向へ相対的に移動可能で外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングの軸方向位置を操作する回転リングを有しているため、回転リングを回転させることのみで外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングをそれぞれ外輪側ガイド及び内輪側ガイドに沿って軸方向位置を変更することができ、より一層簡単にカムクラッチを4つの動作モードに対応することができる。
また、例えば、外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングをそれぞれ軸方向に移動するシリンダーで動作させる場合に比べて、特に軸方向の省スペース化を実現できる。
【0010】
本請求項2に係る発明によれば、外輪側ガイドは外輪側突出部材を受け入れ可能且つ摺動可能に構成され、外輪側進出ガイド部と、外輪側後退ガイド部と、外輪側傾斜ガイド部とを有し、内輪側ガイドは内輪側突出部材を受け入れ可能且つ摺動可能に構成され、内輪側進出ガイド部と、内輪側後退ガイド部と、内輪側傾斜ガイド部とを有するため、外輪側突出部材及び内輪側突出部材をそれぞれ外輪側ガイド及び内輪側ガイドに沿って摺動させることで、外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングを簡単に軸方向に移動させることができる。
これによって、例えば、外輪側進出ガイド部及び外輪側後退ガイド部、内輪側進出ガイド部及び内輪側後退ガイド部の軸方向位置をそれぞれ第1カム及び第2カムの所望の姿勢保持位置とすることで、回転リングを所定の位置まで回転させることのみでカムクラッチを4つの動作モードのそれぞれで確実に保持することができる。
本請求項3に係る発明によれば、回転リングは、外輪側ケージリングと外輪側ガイドとの間及び内輪側ケージリングと内輪側ガイドとの間に形成された外輪側筒状壁及び内輪側筒状壁と、外輪側筒状壁を貫通する外輪側摺動孔と、内輪側筒状壁を貫通する内輪側摺動孔とを有し、外輪側摺動孔は、外輪側突出部材を通過可能且つ、外輪側ガイドと連通するように形成され、内輪側摺動孔は、内輪側突出部材を通過可能且つ、内輪側ガイドと連通するように形成されているため、外輪側摺動孔及び内輪側摺動孔の軸方向長さを、それぞれ外輪側進出ガイド部から外輪側後退ガイド部までの長さ、及び内輪側進出ガイド部から内輪側後退ガイド部までの長さに形成することで、外輪側突出部材及び内輪側突出部材は回転リングの回転に連動して外輪側ガイド及び内輪側ガイドに沿って軸方向に移動することができる。
【0011】
本請求項4に係る発明によれば、外輪側進出ガイド部及び外輪側後退ガイド部と、内輪側進出ガイド部及び内輪側後退ガイド部とは、それぞれ少なくとも一箇所以上周方向で同じ位置に配置されているため、例えば、外輪側突出部材と内輪側突出部材とを周方向同じ向きに配置することで、外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングが、外輪側進出ガイド部及び内輪側進出ガイド部へ移動した位置、外輪側進出ガイド部及び内輪側後退ガイド部へ移動した位置、外輪側後退ガイド部及び内輪側進出ガイド部へ移動した位置、外輪側後退ガイド部及び内輪側後退ガイド部へ移動した位置の4つの組み合わせを回転リングを回転させることで簡単に切り替えることができる。
これによって、外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングの軸方向位置によって切り替わるカムの姿勢を4つの動作モードに対応可能な組み合わせで保持することができる。
本請求項5に係る発明によれば、動作モード切替機構としての外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングの各々の第1カム保持部及び第2カム保持部の開口形状を変えることで、第1カム及び第2カムの一方のみを傾倒させることができる。
すなわち、外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングの各々にカムの姿勢を変更させる機構が一体に構成されることで、構造の簡素化、小型化、部品点数の削減及び保持トルックの増大を図ることができる。
また、外輪側ケージリングにおける第1カム保持部及び内輪側ケージリングにおける第2カム保持部の開口形状を単純な矩形状ではなく、開口幅が連続的に変化する開口幅変動部を有するような異形状にすることで、製造誤差などで発生するわずかな噛み込みの解除を小さな推力で実行可能となっている。
さらに、外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングの第1カム保持部及び第2カム保持部の開口形状を適宜変更することで、より多くの動作モード及びその切り替えを実現することが可能となる。
【0012】
本請求項6に係る発明によれば、簡単な構成で、外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングの周方向の移動の自由度を規制することが可能である。
本請求項7に係る発明によれば、外輪側ケージリングが第1カムを外輪及び内輪に噛合した状態とする位置にあるときに、位置規制用ケージリングにおける外方突起部が周方向に移動可能となって外輪側ケージリングの位置規制用ケージリングに対する適正な自由度が得られると共に、内輪側ケージリングが第2カムを外輪及び内輪に噛合した状態とする位置にあるときに、位置規制用ケージリングにおける内方突起部が周方向に移動可能となって内輪側ケージリングの位置規制用ケージリングに対する適正な自由度が得られるので、第1カム及び第2カムの外輪及び内輪に対する適正な噛合状態を実現することが可能である。
【0013】
本請求項8に係る発明によれば、カムの軸方向保持機能を外輪に付加することで、部品点数を増加させることなく、カムクラッチの所期の機能を確実に得ることができる。
本請求項9に係る発明によれば、小さなカムに対して大きな回転角度を持たせつつ、外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングに対して高い連動性を維持することが可能となるため、カムサイズを小型化してカムクラッチの小型化を図ることが可能となるとともに、小さいトルクでカムを傾倒させることが可能となり、噛み込みトルクを小さく抑制することが可能となる。
【0014】
本請求項10に係る発明によれば、カムと外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングとの接触位置の調整を容易に行うことができ、ケージリングとの連動性を高めつつ、カムの可動範囲を拡大することが可能となる。
本請求項11に係る発明によれば、回転リングを回転させることのみで第1回転部材及び第2回転部材のそれぞれの軸方向位置を変更することができる。
また、第1回転部材及び第2回転部材をそれぞれ軸方向に移動するシリンダーで動作させる場合に比べて、特に軸方向の省スペース化を実現できる。
【0015】
本請求項12に係る発明によれば、第1ガイドは第1突出部材を受け入れ可能且つ手動可能に構成され、第1進出ガイド部と、第1後退ガイド部と、第1傾斜ガイド部とを有し、第2ガイドは第2突出部材を受け入れ可能且つ摺動可能に構成され、第2進出ガイド部と、第2後退ガイド部と、第2傾斜ガイド部とを有するため、第1突出部材及び第2突出部材をそれぞれ第1ガイド及び第2ガイドに沿って摺動させることで、第1回転部材及び第2回転部材を簡単に軸方向に沿って移動させることができる。
本請求項13に係る発明によれば、回転リングは、第1回転部材と第1ガイドとの間及び第2回転部材と第2ガイドとの間に形成された第1筒状壁及び第2筒状壁と、第1筒状壁を貫通する第1摺動孔と、第2筒状壁を貫通する第2摺動孔とを有し、第1摺動孔は、第1突出部材を通過可能且つ、第1ガイドと連通するように形成され、第2摺動孔は、第2突出部材を通過可能且つ、第2ガイドと連通するように形成されているため、第1摺動孔及び第2摺動孔の軸方向長さを、それぞれ第1進出ガイド部から第1後退ガイド部までの長さ、及び第2進出ガイド部から第2後退ガイド部までの長さに形成することで、第1突出部材及び第2突出部材は回転リングの回転に連動して第1ガイド及び第2ガイドに沿って軸方向に移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のカムクラッチの一構成例を示す、軸方向前方側から見た斜視図である。
図2】本発明のカムクラッチの切替作動機構を除いた一構成例を示す、軸方向前方側から見た斜視図である。
図3図1に示すカムクラッチの回転軸心を含む平面で切った断面斜視図である。
図4図1に示すカムクラッチの回転軸心を含む平面で切った断面の一部を示す軸方向断面図である。
図5図1に示すカムクラッチの回転軸心と直交する平面で切った、軸方向後方側から見た径方向断面図である。
図6】カムの構成を示す平面図である。
図7図1に示すカムクラッチにおける外輪側ガイド部及び内輪側ガイドを示す斜視図である。
図8図1に示すカムクラッチにおける回転リングを示す斜視図である。
図9】外輪側ケージリングの構成を示す、軸方向前方側から見た斜視図である。
図10図9に示す外輪側ケージリングの一部展開図である。
図11】内輪側ケージリングの構成を示す、軸方向前方側から見た斜視図である。
図12図11に示す内輪側ケージリングの一部展開図である。
図13】位置規制用ケージリングの構成を示す、軸方向前方側から見た斜視図である。
図14図13に示す位置規制用ケージリングの一部展開図である。
図15図7に示す外輪側ガイド及び内輪側ガイドを示す、軸方向前方側から見た上面図である。
図16図1に示すカムクラッチの、正転方向ロックモードから両方向フリーモードへの動作モードの切り替え動作を示す側面図である。
図17図1に示すカムクラッチの、正転方向ロックモードから両方向フリーモードの切り替え動作を示す模式図である。
図18図1に示すカムクラッチの、正転方向ロックモードから両方向ロックモードへの動作モードの切り替え動作を示す側面図である。
図19図1に示すカムクラッチの、正転方向ロックモードから両方向ロックモードへの動作モードの切り替え動作を示す模式図である。
図20図1に示すカムクラッチの、正転方向ロックモードから逆転方向ロックモードへの動作モードの切り替え動作を示す側面図である。
図21図1に示すカムクラッチの、正転方向ロックモードから逆転方向ロックモードへの動作モードの切り替え動作を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施例を図1図20を参照して説明する。
【0018】
図1図5に示すように、本発明に係るカムクラッチ100は、同一軸上に相対回転可能に設けられた外輪110及び内輪120と、外輪110の軌道面111と内輪120の軌道面121との間の環状空間において周方向に間隔を空けて配列され外輪110と内輪120との間でトルクの伝達及び遮断を行う係合子としての複数のカムと、外輪110と内輪120との間において同一軸上に外輪110または内輪120と共に回転可能に設けられ複数のカムの各々を保持する外輪側ケージリング160及び内輪側ケージリング170と、外輪側ケージリング160と内輪側ケージリング170の周方向の移動の自由度を規制する位置規制用ケージリング180とを備える。
図4におけるCは、回転軸心である。
さらに、外輪側ケージリング160及び内輪側ケージリング170を軸方向前方側から回転軸心Cを回転中心に回転可能に構成された回転リング143と、外輪側ケージリング160及び内輪側ケージリング170のそれぞれの軸方向位置を規定する外輪側ガイド141及び内輪側ガイド142を有した切替作動機構140が設けられている。
【0019】
外輪110には、複数のカムの各々の軸方向の移動を規制する位置規制部115が設けられている。
本実施例では、位置規制部115は、外輪110の内周面における軸方向両端部の各々に、周方向の全周にわたって径方向内方に突出するように設けられた内方リブ部116によって構成され、複数のカムの各々が内方リブ部116間に位置されることで複数のカムの各々の軸方向の移動が規制されるようになっている。
【0020】
複数のカムの各々は、外輪110及び内輪120に対する噛み合い方向が互いに異なる第1カム130a及び第2カム130bを含む。
本実施例においては、第1カム130a及び第2カム130bは、例えば互いに同一の外形形状を有するものであって、第1カム130aを表裏反転させたものを第2カム130bとして用いている。
【0021】
第1カム130a及び第2カム130bは、例えば、周方向に等間隔で交互に並ぶよう配置されている。
第1カム130a及び第2カム130bの配列は、特に限定されるものではなく、第1カム130a及び第2カム130bは周方向に交互に並ぶよう配置されていなくてもよく、また、第1カム130aの数と第2カム130bの数とが異なっていてもよい。
【0022】
第1カム130aの噛み合い方向は、図5における時計方向(以下、「正転方向」という。)であって、第1カム130aは、外輪110が正転方向に回転されることで、もしくは、内輪120が図5における反時計方向(以下、「逆転方向」という。)に回転されることで外輪110及び内輪120に対し噛み合うように構成されている。
第2カム130bの噛み合い方向は、逆転方向であって、第2カム130bは、外輪110が逆転方向に回転されることで、もしくは、内輪110が正転方向に回転されることで外輪110及び内輪120に対し噛み合うように構成されている。
【0023】
第1カム130a及び第2カム130bは、軸方向平面視において、インボリュート曲線に沿った曲線部分を含む外周輪郭形状を有する。
第1カム130aの一構成例を図6に示す。
図6において、塗りつぶした矢印は、第1カム130aの噛み合い方向を示し、白抜きの矢印は、第1カム130aの噛み合い解除方向を示す。
なお、上述のように、第2カム130bは、第1カム130aを表裏反転させたものであって、第1カム130aと同一形状を有するものであるので説明を省略する。
【0024】
この第1カム130aは、径方向中央部にくびれ部131を有し、略ひょうたん形形状をなすように構成されている。
この第1カム130aにおけるくびれ部131に対し径方向外方側の頭部部分132は、外輪側係合面133を有し、外輪側係合面133に滑らかに連続し外輪側ケージリング160に接する両側面134a、134bが、頭部部分132の幅寸法が第1カム130aの姿勢に拘らず一定となるように構成された曲面により構成されている。
具体的には、頭部部分132の両側面134a、134bは、軸方向平面視にて、共通の基礎円を有するインボリュート曲線に沿った曲線により構成されている。
また、第1カム130aにおけるくびれ部131に対し径方向内方側の脚部部分135は、内輪側係合面136を有し、内輪側係合面136に滑らかに連続し内輪側ケージリング170に接する両側面137a、137bが脚部部分135の幅寸法が第1カム130aの姿勢に拘らず一定となるように構成された曲面により構成されている。
具体的には、脚部部分135の両側面137a、137bは、軸方向平面視にて、共通の基礎円を有するインボリュート曲線に沿った曲線により構成されている。
第1カム130a及び第2カム130bが、このような外周輪郭形状を有することにより、小さなカムに対して大きな回転角度を持たせつつ、外輪側ケージリング160及び内輪側ケージリング170に対して高い連動性を維持することが可能となるため、カムサイズを小型化してカムクラッチ100の小型化を図ることができ、しかも小さいトルクでカムを傾倒させることが可能となるため、噛み込みトルクを小さく抑制することができるようになっている。
なお、第1カム130a及び第2カム130bを外輪110及び内輪120に対する噛み合い方向に付勢するような付勢部材を設けてもよい。
【0025】
切替作動機構140は後述する動作モード切替機構150を操作するものであり、図7及び図8に示すように、外輪110及び内輪120のそれぞれと独立して相対的に回転可能且つ、後述する外輪側突出部材169及び内輪側突出部材179を回転する回転リング143と、回転リング143と相対的に回転可能な外輪側ガイド141及び内輪側ガイド142とで構成されている。
回転リング143は、軸方向に延び外輪側ケージリング160と外輪側ガイド141との間に介在する外輪側筒状壁144と、軸方向に延び内輪側ケージリング170と内輪側ガイド142との間いに介在する内輪側筒状壁146と、外輪側筒状壁144と内輪側筒状壁146とを接続する接続部148とを有している。
また、外輪側筒状壁144には、後述する外輪側突出部材169を通過可能且つ、外輪側ガイド141と連通する外輪側摺動孔145が設けられ、内輪側筒状壁146には、後述する内輪側突出部材179を通過可能且つ、内輪側ガイド142と連通する内輪側摺動孔147が設けられている。
【0026】
外輪側ガイド141は、外輪側突出部材169を受け入れ可能且つ摺動可能に構成され、外輪側突出部材169を介して外輪側ケージリング160を外輪110側に軸方向進出した位置で保持する外輪側進出ガイド部141aと、外輪側ケージリング160を外輪110から軸方向後退した位置で保持する外輪側後退ガイド部141bと、外輪側進出ガイド部141aと外輪側後退ガイド部141bとを連結する外輪側傾斜ガイド部141cとを有し、外輪側ケージリング160の回転に伴って外輪側ケージリング160を軸方向に進退移動するものである。
また、内輪側ガイド142は、内輪側突出部材179を受け入れ可能且つ摺動可能に構成され、内輪側突出部材179を介して内輪側ケージリング170を内輪120側に軸方向進出した位置で保持する内輪側進出ガイド部142aと、内輪側ケージリング170を内輪120から軸方向後退した位置で保持する内輪側後退ガイド部142bと、内輪側進出ガイド部142aと内輪側後退ガイド部142bとを連結する内輪側傾斜ガイド部142cとを有し、内輪側ケージリング170の回転に伴って内輪側ケージリング170を軸方向に進退移動するものである。
【0027】
なお、外輪側ガイド141と内輪側ガイド142とは、相対的な位置を固定されており、外輪側進出ガイド部141a、外輪側後退ガイド部141bと、内輪側進出ガイド部142a、内輪側後退ガイド部142bとは、それぞれの組み合わせが回転軸心Cを中心にした周方向で同じ向きになる箇所が含まれるように配置されている。
これによって、後述する外輪側突出部材169と内輪側突出部材179とを回転軸心Cを中心にした周方向の同じ向きを維持したまま回転リング143を回転することで、外輪側ケージリング160と内輪側ケージリング170をそれぞれ軸方向へ進退移動し、後述する動作モードのいずれかに固定できる。
また、外輪側傾斜ガイド141cと内輪側傾斜ガイド142cとは、回転軸心Cを中心にした周方向の同じ向きには配置されていない。
【0028】
本実施例におけるカムクラッチ100は、動作モード切替機構150によって、正転方向における外輪110及び内輪120の相対回転を禁止する正転方向ロックモード、逆転方向における外輪110及び内輪120の相対回転を禁止する逆転方向ロックモード、正転方向及び逆転方向の両方向における外輪110及び内輪120の相対回転を禁止する両方向ロックモード、及び、正転方向及び逆転方向の両方向における外輪110及び内輪120の相対回転を許容する両方向フリーモードの4つの動作モードが切り替え可能となっている。
【0029】
本実施例においては、外輪側ケージリング160及び内輪側ケージリング170と、位置規制用ケージリング180とによって、動作モード切替機構150が構成される。
【0030】
外輪側ケージリング160は、図9及び図10に示すように、軸方向に延びる円筒状の本体部161を備える。
本体部161には、第1カム130aの頭部部分132を受容して第1カム130aを保持する第1カム保持部162と、第2カム130bの頭部部分を受容して第2カム130bを保持する第2カム保持部165とが、周方向に交互に並ぶように設けられている。
また、外輪側ケージリング160の軸方向前方側の端部には、外輪側フランジ161aと、外輪側フランジ161aと周方向に摺動自在に接続され半径方向外方に突出する外輪側突出部材169が設けられている。
【0031】
外輪側ケージリング160の第1カム保持部162は、軸方向において開口幅が連続的に変化する開口幅変動部を有するように構成されている。
具体的には、第1カム保持部162は、軸方向において開口幅が一定となるよう構成されたガイド空間部163aと、ガイド空間部163aより開口幅が小さくなるよう構成されガイド空間部163aの軸方向前方側(図10において上方側)に連続する第1姿勢固定用空間部163bと、ガイド空間部163aより開口幅が小さくなるよう構成されガイド空間部163aの軸方向後方側(図10において下方側)に連続する第2姿勢固定用空間部163cとを有する。
第1姿勢固定用空間部163bは、開口幅が軸方向前方に向かうに従って連続的に小さくなるよう形成された第1開口幅変動部164aを介してガイド空間部163aに連続し、第2姿勢固定用空間部163cは、開口幅が軸方向後方に向かうに従って連続的に小さくなるよう形成された第2開口幅変動部164bを介してガイド空間部163aに連続する。
第1開口幅変動部164aは、第1カム130aの噛み合い解除方向(図10において左方向)側の開口縁が内方に突出するように形成されることで構成され、第2開口幅変動部164bは、第1カム130aの噛合方向(図10において右方向)側の開口縁が内方に突出するように形成されることで構成される。
外輪側ケージリング160の第2カム保持部165は矩形状であって、軸方向において開口幅が一定となるように構成されている。
【0032】
外輪側ケージリング160は、外輪110及び内輪120の回転動作とは独立して軸方向に移動可能に設けられており、これにより、第2カム130bの姿勢を保持したまま、第1カム130aを傾倒させて第1カム130aの姿勢を変更することが可能となっている。
このように、外輪側ケージリング160の第1カム保持部162が、単純な矩形状の開口部ではなく、軸方向両端部において開口幅が狭まる異形状の開口窓により構成されることで、製造誤差などで発生するわずかな噛み込みの解除を小さな推力で実行可能となっていると共に、第1カム保持部162の開口形状を適宜変更することで、より多くの動作モード及びその切り替えを実現することが可能となっている。
【0033】
外輪側ケージリング160における本体部161の内面には、第1カム保持部162と、該第1カム保持部162と第1カム130aの噛み合い方向に隣接する第2カム保持部165との間において、軸方向に延びる内面溝部166が形成されている。
内面溝部166は、本体部161の軸方向後端縁から軸方向前端縁まで直線上に延びるガイド溝部167と、ガイド溝部167の軸方向前端部に連続するスライド溝部168とを有する。
スライド溝部168は、周方向において第1カム130aの噛み合い方向に延びるように形成されており、外輪側ケージリング160が第1カム130aを噛合状態とする位置にあるときに、後述する位置規制用ケージリング180の外方突起部185の周方向移動が許容されるように構成されている。
【0034】
内輪側ケージリング170は、図11及び図12に示すように、軸方向に延びる円筒状の本体部171を備える。
本体部171には、第1カム130aの脚部部分135を受容して第1カム130aを保持する第1カム保持部172と、第2カム130bの脚部部分を受容して第2カム130bを保持する第2カム保持部173とが、周方向に交互に並ぶように設けられている。
また、内輪側ケージリング170の軸方向前方側の端部には、内輪側フランジ171aと、内輪側フランジ171aと周方向に摺動自在に接続され半径方向外方に突出する内輪側突出部材179が設けられている。
【0035】
内輪側ケージリング170の第1カム保持部172は矩形状であって、軸方向において開口幅が一定となるように構成されている。
内輪側ケージリング170の第2カム保持部173は、軸方向において開口幅が連続的に変化する開口幅変動部を有するように構成されている。
具体的には、第2カム保持部173は、軸方向において開口幅が一定となるよう構成されたガイド空間部174aと、ガイド空間部174aより開口幅が小さくなるよう構成されガイド空間部174aの軸方向前方側(図12において上方側)に連続する第1姿勢固定用空間部174bと、ガイド空間部174aより開口幅が小さくなるよう構成されガイド空間部174aの軸方向後方側(図12において下方側)に連続する第2姿勢固定用空間部174cとを有する。
第1姿勢固定用空間部174bは、開口幅が軸方向前方に向かうに従って連続的に小さくなるよう形成された第1開口幅変動部175aを介してガイド空間部174aに連続し、第2姿勢固定用空間部174cは、開口幅が軸方向後方に向かうに従って連続的に小さくなるよう形成された第2開口幅変動部175bを介してガイド空間部174aに連続する。
第1開口幅変動部175aは、第2カム130bの噛み合い解除方向(図12において右方向)側の開口縁が内方に突出するように形成されることで構成され、第2開口幅変動部175bは、第2カム130bの噛み合い方向(図12において左方向)側の開口縁が内方に突出するように形成されることで構成されている。
【0036】
内輪側ケージリング170は、外輪110及び内輪120の回転動作とは独立して軸方向に移動可能に設けられており、これにより、第1カム130aの姿勢を保持したまま、第2カム130bを傾倒させて第2カム130bの姿勢を変更することが可能となっている。
このように、内輪側ケージリング170の第2カム保持部173が、単純な矩形状の開口部ではなく、軸方向両端部において開口幅が狭まる異形状の開口窓により構成されることで、製造誤差などで発生するわずかな噛み込みの解除を小さな推力で実行可能となっていると共に、第2カム保持部173の開口形状を適宜変更することで、より多くの動作モード及びその切り替えを実現することが可能となっている。
【0037】
内輪側ケージリング170における本体部171の外面には、第2カム保持部173と、該第2カム保持部173と第2カム130bの噛み合い解除方向に隣接する第1カム保持部172との間において、軸方向に延びる外面溝部176が形成されている。
外面溝部176は、本体部171の軸方向前端縁から軸方向後端縁まで直線状に延びるガイド溝部177と、ガイド溝部177の軸方向後端部に連続するスライド溝部178とを有する。
スライド溝部178は、周方向において第2カム130bの噛み合い方向に延びるように形成されており、内輪側ケージリング170が第2カム130bを噛合状態とする位置にあるときに、後述する位置規制用ケージリング180の内方突起部186の周方向移動が許容されるように構成されている。
【0038】
なお、本実施例における外輪側突出部材169及び内輪側突出部材179は、それぞれ外輪側ケージリング160及び内輪側ケージリング170に1つずつ設けられているが、それぞれ複数設けられていてもよく、外輪側ガイド141及び内輪側ガイド142、外輪側摺動孔145及び内輪側摺動孔147の形状に応じて適宜選択することができる。
【0039】
而して、本実施例におけるカムクラッチ100の動作モード切替機構150は、上述のように、外輪側ケージリング180及び内輪側ケージリング170の周方向の移動の自由度を規制する位置規制用ケージリング180を備えた構成とされる。
これにより、外輪側ケージリング160及び内輪側ケージリング170の、位置規制用ケージリング180に対する周方向の移動の自由度が各動作モードに応じた適正な自由度に調整可能となり、第1カム130a及び第2カム130bを適正な姿勢に保持することが可能となっている。
【0040】
位置規制用ケージリング180は、図13及び図14に示すように、周方向に互いに平行に延在する一対の円環部181と、円環部181を所定間隔で軸方向に連結する複数の連結部182とからなり、隣接する連結部182間の空間により第1カム130a及び第2カム130bをそれぞれ一つずつ収容可能なポケット部183が構成されている。
ポケット部183は、周方向に沿って等間隔に設けられている。
【0041】
位置規制用ケージリング180は、軸方向前端部に径方向外方に突出するよう設けられ外輪側ケージリング160の内面溝部166に摺動可能に係合される外方突起部185を有するとともに、軸方向後端部に径方向内方に突出するよう設けられ内輪側ケージリング170の外面溝部176に摺動可能に係合される内方突起部186を有する。
【0042】
以下、本実施例のカムクラッチ100の動作について図15乃至図21を用いて説明する。
なお、本実施例では、外輪側ケージリング160の外輪側突出部材169が外輪側摺動孔145を通過して外輪側ガイド141内を摺動するように位置し、内輪側ケージリング170の内輪側突出部材179が内輪側摺動孔147を通過して内輪側ガイド142内を摺動するように位置しているため、回転リング143を回転させることで、外輪側突出部材169及び内輪側突出部材179をそれぞれ外輪側摺動孔145及び内輪側摺動孔147で側方から押すようにして同時に回転できる。
また、外輪側突出部材169は外輪側フランジ161aと周方向に摺動自在に接続され、内輪側突出部材179は内輪側フランジ171aと周方向に摺動自在に接続され、外輪側摺動孔145及び内輪側摺動孔147は、回転軸心Cから見て周方向同じ向きに形成されているため、外輪側突出部材169及び内輪側突出部材179も同じ周方向同じ向きを維持する。
すなわち、回転リング143を回転させることで、外輪側突出部材169及び内輪側突出部材179を周方向同じ向きを維持したまま外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングと周方向相対的に回転し、外輪側ガイド141及び内輪側ガイド142内を摺動するため、外輪側ケージリング160及び内輪側ケージリングを4つの動作モードのそれぞれを機能させる軸方向位置の組み合わせに簡単に切り替えることができる。
【0043】
先ず、図15に示すように、外輪側突出部材169が外輪側進出ガイド部141a1、内輪側突出部材179が内輪側進出ガイド部142a1に位置した状態(P1)、すなわち、図16(a)に示すように、外輪側ケージリング160及び内輪側ケージリング170が共に軸方向後方側に位置されているときには、図17(a)に示すように、外輪110または内輪120にトルクが働くことで第1カム130aが外輪110及び内輪120に対する噛み合いが直ちに開始されるように噛み合い待機の状態を維持している。
一方、第2カム130bは、内輪側係合面136が内輪120の軌道面121から離間した状態を維持しており、従って、カムクラッチ100は、外輪110及び内輪120の正転方向の相対回転を禁止する正転方向ロックモードとされている。
【0044】
この状態から、例えば、図15に示すように、外輪側突出部材169及び内輪側突出部材179を、P1からP2へ、すなわち、外輪側突出部材169のみが外輪側傾斜ガイド部141c1を摺動しながら外輪側後退ガイド部141b1に移動するように回転リング143を回転して、図16(b)に示すように、外輪側ケージリング160を軸方向前方側に移動させると、図17(b)に示すように、外輪側ケージリング160の第1カム保持部162における第2開口幅変動部164bの作用によって第1カム130aの頭部部分132が押圧される。
このとき、内輪側突出部材179は、内輪側進出ガイド部142a1内のみを摺動するため、内輪側ケージリング170は軸方向への移動をすることがない。
これにより、第1カム130aが噛み合い解除方向に傾倒されると共に第1カム130aの姿勢が第1カム130aの内輪側係合面136が内輪120の軌道面121から離間する状態に保持される。
一方、外輪側ケージリング160における第2カム保持部165は軸方向において開口幅が一定の矩形状に形成されており、また外輪側ケージリング160及び内輪側ケージリング170の周方向の自由度が位置規制用ケージリング180によって規制されていることから、第2カム130bの姿勢は、内輪側係合面136が内輪120の軌道面121から離間する状態に保持される。
これにより、カムクラッチ100の動作モードが、正転方向ロックモードから外輪110及び内輪120の正転方向及び逆転方向の両方向の相対回転を許容する両方向フリーモードに切り替えられる。
なお、図16(a)及び図16(b)においては、便宜上、外輪110の軌道面111と内輪120の軌道面121を平行平面で示してある。
【0045】
逆に、カムクラッチ100の動作モードを両方向フリーモードから正転方向ロックモードに切り替えるときには、図15に示すように、外輪側突出部材169及び内輪側突出部材179をP2からP1へ、すなわち、外輪側突出部材169のみが外輪側傾斜ガイド141c1を摺動しながら外輪側進出ガイド部141a1に位置するように回転リング143を回転して、外輪側ケージリング160を軸方向後方側に移動させる。
このとき、内輪側突出部材179は、内輪側進出ガイド部142a1内のみを摺動するため、内輪側ケージリング170は軸方向への移動をすることがない。
これにより、外輪側ケージリング160の第1カム保持部162における第1開口幅変動部164aの作用によって第1カム130aの頭部部分132が押圧され、第1カム130aが噛み合い方向に傾倒されると共に、外輪110または内輪120にトルクが働くことで第1カム130aが外輪110及び内輪120に対する噛み合いが直ちに開始されるように噛み合い待機の状態に保持される。
このとき、外輪側ケージリング160の内面溝部166がスライド溝部168を有することで、位置規制用ケージリング180の外方突起部185の周方向の移動が許容される。
このため、外輪側ケージリング160の位置規制用ケージリング180に対する周方向の移動の自由度が適正に調整され、第1カム130aが適正な姿勢で保持される。
一方、第2カム130bの姿勢は、上述のように、内輪側係合面136が内輪120の軌道面121から離間する状態に保持される。
これにより、カムクラッチ100の動作モードが、両方向フリーモードから正転方向ロックモードに切り替えられる。
【0046】
また、カムクラッチ100の動作モードが図18(a)及び図19(a)に示す正転方向ロックモードとされている状態において、図15に示すように、外輪側突出部材169及び内輪側突出部材179を、P1からP3へ、すなわち、内輪側突出部材179のみが内輪側傾斜ガイド部142c6を摺動しながら内輪側後退ガイド部142b3に位置するように回転リング143を回転して、図17(b)に示すように、内輪側ケージリング170を軸方向前方側に移動させると、図18(b)に示すように、内輪側ケージリング170の第2カム保持部173における第2開口幅変動部175bの作用によって第2カム130bの脚部部分135が押圧される。
このとき、外輪側突出部材169は、外輪側進出ガイド部141a1内のみを摺動するため、外輪側ケージリング160は軸方向への移動をすることがない。
これにより、第2カム130bが噛み合い方向に傾倒されると共に、外輪110または内輪120にトルクが働くことで第2カム130bが外輪110及び内輪120に対する噛み合いが直ちに開始されるように噛み合い待機の状態に保持される。
このとき、内輪側ケージリング170の外面溝部176がスライド溝部178を有することで、位置規制用ケージリング180の内方突起部186の周方向の移動が許容される。
このため、内輪側ケージリング170の位置規制用ケージリング180に対する周方向の移動の自由度が適正に調整され、第2カム130bが適正な姿勢で保持される。
一方、内輪側ケージリング170における第1カム保持部172は軸方向において開口幅が一定の矩形状に形成されていることから、第1カム130aの姿勢は、外輪110または内輪120にトルクが働くことで第1カム130aが外輪110及び内輪120に対する噛み合いが直ちに開始されるように噛み合い待機の状態に保持される。
これにより、カムクラッチ100の動作モードが、正転方向ロックモードから外輪110及び内輪120の正転方向及び逆転方向の両方向の相対回転を禁止する両方向ロックモードに切り替えられる。
【0047】
逆に、カムクラッチ100の動作モードを両方向ロックモードから正転方向ロックモードに切り替えるときには、図15に示すように、外輪側突出部材169及び内輪側突出部材179を、P3からP1へ、すなわち、内輪側突出部材179のみが内輪側傾斜ガイド部142c6を摺動しながら内輪側進出ガイド部142a1に位置するように回転リング143を回転して、内輪側ケージリング170を軸方向後方側に移動させる。
このとき、外輪側突出部材169は、外輪側進出ガイド部141a1内のみを摺動するため、外輪側ケージリング160は軸方向への移動をすることがない。
これにより、内輪側ケージリング170の第2カム保持部173における第1開口幅変動部175aの作用によって第2カム130bの脚部部分135が押圧され、第2カム130bが噛み合い解除方向に傾倒されると共に第2カム130bの姿勢が第2カム130bの内輪側係合面136が内輪120の軌道面121から離間する状態に保持される。
一方、第1カム130aの姿勢は、上述のように、外輪110または内輪120にトルクが働くことで第1カム130aが外輪110及び内輪120に対する噛み合いが直ちに開始されるように噛み合い待機の状態に保持される。
これにより、カムクラッチ100の動作モードが、両方向ロックモードから正転方向ロックモードに切り替えられる。
【0048】
さらにまた、カムクラッチ100の動作モードが図20(a)及び図21(a)に示す正転方向ロックモードとされている状態において、図15に示すように、外輪側突出部材169及び内輪側突出部材179を、P1からP4へ、すなわち、外輪側突出部材169及び内輪側突出部材179がそれぞれ外輪側傾斜ガイド141c1、内輪側傾斜ガイド部142c1を摺動しながら外輪側後退ガイド部141b1、内輪側後退ガイド部142b1に位置するように回転リング143を回転して、図19(b)に示すように、外輪側ケージリング160及び内輪側ケージリング170を共に軸方向前方側に移動させると、図20(b)に示すように、外輪側ケージリング160の第1カム保持部162における第2開口幅変動部164bの作用によって第1カム130aの頭部部分132が押圧される。
これにより、第1カム130aが噛み合い解除方向に傾倒されると共に第1カム130aの姿勢が第1カム130aの内輪側係合面136が内輪120の軌道面121から離間する状態に保持される。
一方、内輪側ケージリング170の第2カム保持部173における第2開口幅変動部175bの作用によって第2カム130bの脚部部分135が押圧される。
これにより、第2カム130bが噛み合い方向に傾倒されると共に、外輪110または内輪120にトルクが働くことで第2カム130bが外輪110及び内輪120に対する噛み合いが直ちに開始されるように噛み合い待機の状態に保持される。
このとき、上述したように、内輪側ケージリング170の位置規制用ケージリング180に対する周方向の移動の自由度が適正に調整され、第2カム130bが適正な姿勢で保持される。
これにより、カムクラッチ100の動作モードが、正転方向ロックモードから外輪110及び内輪120の逆転方向の相対回転を禁止する逆転方向ロックモードに切り替えられる。
【0049】
逆に、カムクラッチ100の動作モードを逆転方向ロックモードから正転方向ロックモードに切り替えるときには、図15に示すように、外輪側突出部材169及び内輪側突出部材179を、P4からP1へ、すなわち、外輪側突出部材169及び内輪側突出部材179がそれぞれ外輪側傾斜ガイド部141c1及び内輪側傾斜ガイド部142c1を摺動しながら外輪側進出ガイド部141a1及び内輪側進出ガイド部142a1に位置するように回転リング143を回転して、外輪側ケージリング160及び内輪側ケージリング170を共に軸方向後方側に移動させる。
これにより、外輪側ケージリング160の第1カム保持部162における第1開口幅変動部164aの作用によって第1カム130aの頭部部分132が押圧され、第1カム130aが噛み合い方向に傾倒されると共に、外輪110または内輪120にトルクが働くことで第1カム130aが外輪110及び内輪120に対する噛み合いが直ちに開始されるように噛み合い待機の状態に保持される。
このとき、上述したように、外輪側ケージリング160の位置規制用ケージリング180に対する周方向の移動の自由度が適正に調整され、第1カム130aが適正な姿勢で保持される。
一方、内輪側ケージリング170の第2カム保持部173における第1開口幅変動部175aの作用によって第2カム130bの脚部部分135が押圧され、第2カム130bが噛み合い解除方向に傾倒されると共に第2カム130bの姿勢が第2カム130bの内輪側係合面136が内輪120の軌道面121から離間する状態に保持される。
これにより、カムクラッチ100の動作モードが、逆転方向ロックモードから正転方向ロックモードに切り替えられる。
【0050】
以上のように、本実施例のカムクラッチ100においては、外輪側ケージリング160に第1カム130aの姿勢制御機能を持たせるとともに内輪側ケージリング170に第2カム130bの姿勢制御機能を持たせ、さらに、位置規制用ケージリング180によって外輪側ケージリング160及び内輪側ケージリング170の自由度を規制することで、外輪側ケージリング160及び内輪側ケージリング170の一方または両方を軸方向に移動させるだけで、第1カム130a及び第2カム130bの一方または両方を傾倒させることができるとともに変更された姿勢を保持することができる。
従って、カムクラッチ100を簡単な構成で4つの動作モードに対応可能な高機能を有するものとして構成することが可能となっている。
また、外輪側ケージリング160及び内輪側ケージリング170の自由度を規制することで、カムの姿勢変更に際して、第1カム130a及び第2カム130bが共に外輪110及び内輪120に噛み合う噛み込みが生ずることが回避され、円滑な動作を実現することができて高い応答性を得ることが可能となっている。
また、回転リング143を回転させることのみで外輪側ケージリング160及び内輪側ケージリング170の軸方向への移動を制御できるため、より一層簡単にカムクラッチ100を4つの動作モードに対応することができる。
さらに、外輪側傾斜ガイド部141cと内輪側傾斜ガイド部142cとが回転軸心Cを中心にした周方向の同じ向きには配置されていないため、回転リング143を回転しても、外輪側突出部材169と内輪側突出部材179の少なくともいずれか一方が、外輪側進出ガイド部141a、外輪側後退ガイド部141b、内輪側進出ガイド142a、内輪側後退ガイド142b内のいずれかの箇所に位置するため、動作モードを切り替える際に、外輪側ケージリング160及び内輪側ケージリング170のいずれか一方の軸方向位置を固定した状態で操作でき、動作を安定化できる。
また、例えば、外輪側ケージリング160及び内輪側ケージリング170をそれぞれ軸方向に移動するシリンダーで動作させる場合に比べて、特に軸方向の省スペース化を実現できる。
【0051】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなくk、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
【0052】
上記実施例においては、外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングが軸方向後方側に位置されているときに、カムクラッチの動作モードが正転方向ロックモードとされる構成について説明したが、カムクラッチの動作モードと、外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングの軸方向位置との関係は特に限定されるものではない。
例えば、外輪側ケージリング及び内輪側ケージリングが軸方向後方側に位置されているときに、カムクラッチの動作モードがフリーモード、両方向ロックモードあるいは逆転方向ロックモードとされるように構成されていてもよい。
また、上記実施例においては、両方向ロックモード以外の動作モードにおいて、第1カム及び第2カムの一方または両方が内輪から離間する構成のものについて説明したが、カムを外輪から離間するように構成されていてもよい。
【0053】
また、上記実施例においては、外輪側ガイドと外輪側ケージリングとの間には外輪側筒状壁が設けられ、内輪側ガイドと内輪側ケージリングとの間には内輪側筒状壁が設けられているものとして説明したが、回転リングの構成はこれに限定されず、例えば、外輪側ガイドと外輪側ケージリングとの間、内輪側ガイドと内輪側ケージリングとの間をそれぞれ軸方向に延びる柱状体を設けて、外輪側突出部及び内輪側突出部を周方向に移動可能に構成してもよい。
【0054】
なお、外輪側ケージリングおよび内輪側ケージリングを軸方向にそれぞれ所定の位置に移動させる上記実施例のような切替作動機構の構成は、同一回転軸上に配置された2つの部材の軸方向移動を外部から行う場合に最適であり、上記本実施例のようなカムクラッチに限らず、同様の動作を求められる如何なるものにも応用できる。
【符号の説明】
【0055】
100 ・・・ カムクラッチ
110 ・・・ 外輪
111 ・・・ 軌道面
115 ・・・ 位置規制部
116 ・・・ 内方リブ部
120 ・・・ 内輪
121 ・・・ 軌道面
130a ・・・ 第1カム
130b ・・・ 第2カム
131 ・・・ くびれ部
132 ・・・ 頭部部分
133 ・・・ 外輪側係合面
134a ・・・ 側面
134b ・・・ 側面
135 ・・・ 脚部部分
136 ・・・ 内輪側係合面
137a ・・・ 側面
137b ・・・ 側面
140 ・・・ 切替作動機構
141 ・・・ 外輪側ガイド
141a(141a1、141a2、141a3) ・・・ 外輪側進出ガイド部
141b(141b1、141b2、141b3) ・・・ 外輪側後退ガイド部
141c(141c1、141c2、141c3、141c4、141c5、141c6) ・・・ 外輪側傾斜ガイド部
142 ・・・ 内輪側ガイド
142a(142a1、142a2、142a3) ・・・ 内輪側進出ガイド部
142b(142b1、142b2、142b3) ・・・ 内輪側後退ガイド部
142c(142c1、142c2、142c3、142c4、142c5、142c6) ・・・ 内輪側傾斜ガイド部
143 ・・・ 回転リング
144 ・・・ 外輪側筒状壁
145 ・・・ 外輪側摺動孔
146 ・・・ 内輪側筒状壁
147 ・・・ 内輪側摺動孔
148 ・・・ 接続部
150 ・・・ 動作モード切替機構
160 ・・・ 外輪側ケージリング
161 ・・・ 本体部
161a ・・・ 外輪側フランジ
162 ・・・ 第1カム保持部
163a ・・・ ガイド空間部
163b ・・・ 第1姿勢固定用空間部
163c ・・・ 第2姿勢固定用空間部
164a ・・・ 第1開口幅変動部
164b ・・・ 第2開口幅変動部
165 ・・・ 第2カム保持部
166 ・・・ 内面溝部
167 ・・・ ガイド溝部
168 ・・・ スライド溝部
169 ・・・ 外輪側突出部材
170 ・・・ 内輪側ケージリング
171 ・・・ 本体部
171a ・・・ 内輪側フランジ
172 ・・・ 第1カム保持部
173 ・・・ 第2カム保持部
174a ・・・ ガイド空間部
174b ・・・ 第1姿勢固定用空間部
174c ・・・ 第2姿勢固定用空間部
175a ・・・ 第1開口幅変動部
175b ・・・ 第2開口幅変動部
176 ・・・ 外面溝部
177 ・・・ ガイド溝部
178 ・・・ スライド溝部
179 ・・・ 内輪側突出部材
180 ・・・ 位置規制用ケージリング
181 ・・・ 円環部
182 ・・・ 連結部
183 ・・・ ポケット部
185 ・・・ 外方突起部
186 ・・・ 内方突起部
C ・・・ 回転軸心
P1 ・・・ 正転方向ロックモードの状態における外輪側突出部および内輪側突出部の向き
P2 ・・・ 両方向フリーモードの状態における外輪側突出部および内輪側突出部の向き
P3 ・・・ 両方向ロックモードの状態における外輪側突出部および内輪側突出部の向き
P4 ・・・ 逆転方向ロックモードの状態における外輪側突出部および内輪側突出部の向き

図1
図2
図3
図4
図5
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