(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160182
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】燃料電池式産業車両
(51)【国際特許分類】
B60K 11/04 20060101AFI20231026BHJP
F01P 5/06 20060101ALI20231026BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20231026BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20231026BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20231026BHJP
【FI】
B60K11/04 E
F01P5/06 510B
H01M8/00 Z
H01M8/04 J
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070342
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】村木 俊博
【テーマコード(参考)】
3D038
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
3D038AA05
3D038AB10
3D038AC02
3D038AC14
3D038AC25
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA22
5H127BB02
5H127BB07
5H127BB12
5H127BB22
5H127BB37
5H127BB39
5H127CC07
5H127EE04
5H127FF06
(57)【要約】
【課題】ラジエータファンによる冷却性能の低下を抑制できる燃料電池式産業車両を提供すること。
【解決手段】バルブ26は、エア流路24に流入したエアを供給エアと余剰エアとに分流させる。供給流路24cは、バルブ26によって分流された供給エアを燃料電池スタック21に供給する。流入流路32は、バルブ26によって分流された余剰エアが流入する。ダクト15は、ダクト出口15bが車体11の後面11aに開口する。噴出流路16は、流入流路32の出口32aに連通するとともに、噴出口16bが車体11の後面11aに開口する。ダクト出口15bと噴出口16bとは、車体11の後面11aに隣接して配置されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックを冷却する冷却媒体が循環する循環流路を含む熱交換器と、
前記熱交換器に向けて送風するラジエータファンと、
エアコンプレッサと、
前記エアコンプレッサから吐出されたエアが流入するエア流路と、
前記エア流路に接続されるバルブであって、前記エア流路に流入した前記エアを前記燃料電池スタックに供給するための供給エアと、前記エア流路に流入した前記エアから前記供給エアを差し引いた余剰エアと、に分流させる前記バルブと、
前記バルブに接続され、前記供給エアを前記燃料電池スタックに供給する供給流路と、
前記バルブに接続され、前記余剰エアが流入する流入流路と、を車体に搭載した燃料電池式産業車両であって、
前記熱交換器に向けてダクト入口が開口するとともに、ダクト出口が前記車体の後面に開口するダクトと、
前記流入流路の出口に連通するとともに、噴出口が前記車体の後面に開口する噴出流路と、が前記車体に設けられ、
前記ダクト出口と前記噴出口とは、前記車体の後面に隣接して配置されていることを特徴とする燃料電池式産業車両。
【請求項2】
前記噴出流路は、当該噴出流路の入口から前記噴出口に向かうに従い上り傾斜しており、前記噴出口は、前記ダクト出口よりも下方に位置している請求項1に記載の燃料電池式産業車両。
【請求項3】
前記噴出流路は、当該噴出流路の入口から前記噴出口に向かうに従い流路断面積を小さくする絞りを有している請求項1又は請求項2に記載の燃料電池式産業車両。
【請求項4】
車幅方向への前記噴出口の寸法は、車両上下方向への前記噴出口の寸法より大きい請求項3に記載の燃料電池式産業車両。
【請求項5】
前記噴出口は、前記ダクト出口の車幅方向への寸法内で、当該車幅方向に複数並設されている請求項3に記載の燃料電池式産業車両。
【請求項6】
前記エア流路には、前記エアコンプレッサから吐出されたエアを冷却するためのインタークーラが設けられている請求項1又は請求項2に記載の燃料電池式産業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池式産業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示のエンジン駆動の産業車両は、産業車両内の熱気をラジエータにより冷却させながら、熱気をラジエータファンにより産業車両の外に排出している。産業車両は、前進時、ラジエータファンの送風方向を後方とする。一方、産業車両は、後進時の速度が切替速度以上になると、ラジエータファンの送風方向を後方から前方に切り替える。この送風方向の切替により、後進時の走行風と、ラジエータファンの送風とが衝突することを回避して、ラジエータファンによる冷却性能の低下を抑制している。
【0003】
なお、この送風方向の切替により、後進時の走行風と、ラジエータファンの送風との衝突を回避する方策は、燃料電池式産業車両に適用することも可能である。
燃料電池式産業車両は、燃料電池スタックと、循環流路を含む熱交換器と、ラジエータファンと、を有する。循環流路は、燃料電池スタックと熱交換器との間で冷却媒体を循環させる。ラジエータファンは、熱交換器に向けて送風する。冷却媒体は、ラジエータファンによる送風によって冷却される。熱交換器で冷却された冷却媒体を燃料電池スタックに流すことにより燃料電池スタックが冷却される。そして、熱交換器での熱交換後の排気は、燃料電池式産業車両の外部に排出される。このとき、ラジエータファンの送風方向を後方から前方に切り替えて、後進時の走行風と、排気とが衝突することを回避して、ラジエータファンによる冷却媒体の冷却性能の低下を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、ラジエータファンは、一方向に向けた送風を主目的として設計される。このため、ラジエータファンの送風方向を切り替えると、他方向に向けた送風能力が低下してしまうため、ラジエータファンによる冷却性能が低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するための燃料電池式産業車両は、燃料電池スタックと、前記燃料電池スタックを冷却する冷却媒体が循環する循環流路を含む熱交換器と、前記熱交換器に向けて送風するラジエータファンと、エアコンプレッサと、前記エアコンプレッサから吐出されたエアが流入するエア流路と、前記エア流路に接続されるバルブであって、前記エア流路に流入した前記エアを前記燃料電池スタックに供給するための供給エアと、前記エア流路に流入した前記エアから前記供給エアを差し引いた余剰エアと、に分流させる前記バルブと、前記バルブに接続され、前記供給エアを前記燃料電池スタックに供給する供給流路と、前記バルブに接続され、前記余剰エアが流入する流入流路と、を車体に搭載した燃料電池式産業車両であって、前記熱交換器に向けてダクト入口が開口するとともに、ダクト出口が前記車体の後面に開口するダクトと、前記流入流路の出口に連通するとともに、噴出口が前記車体の後面に開口する噴出流路と、が前記車体に設けられ、前記ダクト出口と前記噴出口とは、前記車体の後面に隣接して配置されていることを要旨とする。
【0007】
これによれば、燃料電池スタックの発電時、エアコンプレッサから吐出されたエアはエア流路を経由してバルブに流入する。バルブによって分流されたエアのうち、供給エアは供給流路を経由して燃料電池スタックに供給される。燃料電池スタックは、供給エアを酸化剤ガスとして発電する。また、燃料電池スタックと熱交換された冷却媒体を冷却するため、ラジエータファンは、熱交換器に向けて送風する。ラジエータファンからの送風により、熱交換器にて循環流路を流れる冷却媒体が冷却される。熱交換器にて冷却媒体と熱交換された後の排気は、ダクト入口及びダクトを通じてダクト出口から車体の外へ排出される。
【0008】
バルブによって分流されたエアのうち、余剰エアは、流入流路を経由して噴出流路に流入する。噴出流路に流入した余剰エアは、噴出口から車体の外へ噴出する。噴出口は、ダクト出口に隣接するため、余剰エアは、ダクト出口の周囲に噴出している。よって、ダクト出口の周囲には、余剰エアの噴流が発生している。
【0009】
燃料電池式産業車両が後進したとき、走行風は、ダクト出口に向かう流れとなるが、噴出口から噴出する余剰エアの噴流が走行風を遮る。この余剰エアの噴流により、ダクト出口からダクト内に走行風が侵入することを抑制できる。つまり、ダクトからの排気の流れと反対向きの走行風がダクトに侵入することを抑制できる。その結果、走行風と、ラジエータファンの送風とが衝突することを回避できるため、後進時の走行風によって、ダクト出口からの排気の排出が妨げられることが抑制される。このため、熱交換後の排気の排出をダクトから適切に行うことができる結果、ラジエータファンによる冷却媒体の冷却性能の低下を抑制できる。
【0010】
燃料電池式産業車両は、エアコンプレッサの吐出するエアを利用して、後進時の走行風が、ダクト出口からダクトに流入することを抑制できる結果、ラジエータファンによる冷却性能の低下を抑制できる。このため、後進時の走行風を原因とした冷却性能の低下を抑制するために、ラジエータファンを逆回転させる必要もない。ラジエータファンは、熱交換器に向けた一方向への送風を主目的として設計されている。このため、ラジエータファンを逆回転させたときの他方向への送風量は、一方向へのラジエータファンの送風量に劣る。このため、後進時の走行風を原因とした冷却性能の低下を抑制するために、ラジエータファンを他方向へ送風させる場合と比べて、ラジエータファンによる冷却性能の低下を抑制できる。
【0011】
燃料電池式産業車両について、前記噴出流路は、当該噴出流路の入口から前記噴出口に向かうに従い上り傾斜しており、前記噴出口は、前記ダクト出口よりも下方に位置していてもよい。
【0012】
これによれば、例えば、噴出流路が、噴出流路の入口から噴出口に向かうに従い下り傾斜する場合と比べると、余剰エアの圧力損失を抑制して、噴出流路での余剰エアの流速の低下を抑制できる。このため、余剰エアの噴流の流速の低下を抑制できる。また、余剰エアの噴流は、ダクト出口の下方から上に向かう。このため、後進時の走行風は、余剰エアの噴流によって好適に遮られる。
【0013】
燃料電池式産業車両について、前記噴出流路は、当該噴出流路の入口から前記噴出口に向かうに従い流路断面積を小さくする絞りを有していてもよい。
これによれば、絞りは、余剰エアの流速を早めるため、余剰エアの噴流の流速の低下を抑制できる。
【0014】
燃料電池式産業車両について、車幅方向への前記噴出口の寸法は、車両上下方向への前記噴出口の寸法より大きくてもよい。
これによれば、簡単な構成で絞りを形成できる。
【0015】
燃料電池式産業車両について、前記噴出口は、前記ダクト出口の車幅方向への寸法内で、当該車幅方向に複数並設されていてもよい。
これによれば、簡単な構成で絞りを形成できる。
【0016】
燃料電池式産業車両について、前記エア流路には、前記エアコンプレッサから吐出されたエアを冷却するためのインタークーラが設けられていてもよい。
これによれば、余剰エアは、インタークーラによって冷却されるため、噴出口から高温の余剰エアが噴出されることを抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ラジエータファンによる冷却性能の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】燃料電池式フォークリフトを示す側面図である。
【
図2】燃料電池ユニット、ダクト、及び噴出流路を示す部分破断断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、燃料電池式産業車両を燃料電池式フォークリフトに具体化した一実施形態を
図1~
図5にしたがって説明する。なお、以下の説明において、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」とは、燃料電池式フォークリフトを運転する作業者が車両前方(前進方向)を向いた状態を基準とした場合の「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」のことをいう。
【0020】
<燃料電池式フォークリフト>
図1及び
図2に示すように、燃料電池式フォークリフト10は、車体11を有する。車体11は、カウンタウエイト12を含む。カウンタウエイト12は、車体11の後部に設けられている。なお、車両前後方向は、車体11の前後方向である。車幅方向は、車体11の左右方向である。車体11には収容部13が設けられている。収容部13には燃料電池ユニット20が収容されている。また、車体11の後部には、ダクト15と、噴出流路16とが設けられている。
【0021】
<ダクト及び噴出流路>
ダクト15は、収容部13と車体11の後面11aとの間で車両前後方向に延びる。ダクト15の前端にはダクト入口15aが開口するとともに、ダクト15の後端にはダクト出口15bが開口する。ダクト15の軸線L1は、ダクト入口15aからダクト出口15bに向かって上り傾斜するように斜めに延びる。このため、ダクト15は、ダクト入口15aからダクト出口15bに向かうに従い上り傾斜する。ダクト入口15aは、収容部13に向けて開口する。ダクト出口15bは、車体11の後面11aに開口する。
【0022】
図4に示すように、車体11の後面視では、ダクト出口15bは車幅方向に横長な四角形状である。ダクト出口15bの車幅方向への寸法W1は、ダクト出口15bの車両上下方向への寸法H1より大きい。
【0023】
図2に示すように、噴出流路16は、収容部13と車体11の後面11aとの間で車両前後方向に延びる。噴出流路16は、ダクト15よりも下方に位置している。噴出流路16の前端には入口16aが開口するとともに、噴出流路16の後端には噴出口16bが開口する。噴出流路16の入口16aは、収容部13に向けて開口する。噴出流路16の出口となる噴出口16bは、車体11の後面11aに開口する。噴出流路16の軸線L2は、入口16aから噴出口16bに向かって上り傾斜するように斜めに延びる。このため、噴出流路16は、当該噴出流路16の入口16aから噴出口16bに向かうに従い上り傾斜する。
【0024】
図4に示すように、車体11の後面視では、噴出口16bは、ダクト出口15bよりも下方に位置している。車体11の後面視では、噴出口16bは横長な四角形状である。車幅方向への噴出口16bの寸法W2は、車両上下方向への噴出口16bの寸法H2より大きい。噴出口16bの寸法W2は、ダクト出口15bの寸法W1とほぼ同じである。なお、噴出口16bの寸法W2は、ダクト出口15bの寸法W1より若干小さくてもよいし、若干大きくてもよい。また、噴出口16bの寸法H2は、ダクト出口15bの寸法H1より小さい。噴出口16bは、ダクト出口15bの車幅方向の全長に沿う。
【0025】
ダクト出口15bと噴出口16bとは、車体11の後面11aにおいて隣接して配置されている。ダクト出口15bと噴出口16bとは、車両上下方向に並ぶように近接している。
【0026】
図2に示すように、噴出流路16は、絞り16cを有する。絞り16cは、噴出流路16の入口16aから噴出口16bに向かうに従い噴出流路16の流路断面積を小さくすることで形成されている。絞り16cは、車両前後方向における噴出流路16の中間付近から噴出口16bに向けて車両上下方向への寸法を小さくすることで流路断面積を小さくすることによって形成されている。
【0027】
<燃料電池ユニット>
図2及び
図3に示すように、燃料電池ユニット20は、燃料電池スタック21と、水素タンク22と、エアクリーナ23aと、エアコンプレッサ23と、インタークーラ25と、バルブ26と、熱交換器27と、ラジエータファン28と、を有する。また、燃料電池ユニット20は、吸気流路23bと、エア流路24と、供給流路24cと、流入流路32と、を有する。燃料電池ユニット20が有する筐体30は、燃料電池スタック21と、水素タンク22と、エアクリーナ23aと、エアコンプレッサ23と、インタークーラ25と、バルブ26と、熱交換器27と、ラジエータファン28と、を収容する。また、筐体30は、吸気流路23bと、エア流路24と、供給流路24cと、流入流路32の一部を収容する。
【0028】
そして、車体11には、燃料電池ユニット20が搭載されている。このため、車体11には、燃料電池スタック21と、水素タンク22と、エアクリーナ23aと、エアコンプレッサ23と、インタークーラ25と、バルブ26と、熱交換器27と、ラジエータファン28と、が搭載されている。また、車体11には、吸気流路23bと、エア流路24と、供給流路24cと、流入流路32と、が搭載されている。
【0029】
<燃料電池スタック>
燃料電池スタック21は、複数の燃料電池セルをスタック化したものである。燃料電池セルは、固体分子型燃料電池である。燃料電池スタック21は、水素ガスを含む燃料ガス、及び酸化剤ガスが供給されることによって発電する。酸化剤ガスは、エアに含まれる酸素である。
【0030】
<水素タンク>
水素タンク22は、水素ガスを貯蔵する。水素タンク22と燃料電池スタック21とは、水素供給路31によって接続されている。水素タンク22に貯蔵された水素ガスは、水素供給路31を経由して燃料電池スタック21の図示しないアノードに供給される。
【0031】
<エアコンプレッサ及び接続流路>
エアコンプレッサ23は、エアクリーナ23a及び吸気流路23bを通じて吸入したエアを圧縮する。エアコンプレッサ23は、圧縮したエアをエア流路24に吐出する。したがって、エア流路24には、エアコンプレッサ23から吐出されたエアが流入する。エアコンプレッサ23の吐出容量の最大値は、燃料電池スタック21に対するエアの供給量の最大値よりも大きい。エアコンプレッサ23は、燃料電池スタック21に対するエアの供給量の最大値よりも大きい吐出量で、エアを吐出する。
【0032】
エア流路24は、第1流路24aと、第2流路24bと、を有する。第1流路24aは、エアコンプレッサ23とインタークーラ25を接続する。第2流路24bは、インタークーラ25とバルブ26を接続する。したがって、インタークーラ25は、エア流路24に設けられている。なお、バルブ26と燃料電池スタック21は、供給流路24cによって接続されている。
【0033】
エアコンプレッサ23から吐出されたエアは、エア流路24の第1流路24aに流入する。第1流路24aに流入したエアは、インタークーラ25に供給される。インタークーラ25は、エアを冷却する。したがって、インタークーラ25は、エアコンプレッサ23から吐出されたエアを冷却する。インタークーラ25によって冷却されたエアは、第2流路24bに流入する。第2流路24bに流入したエアは、バルブ26に流入する。
【0034】
<バルブ>
バルブ26は、三方弁である。バルブ26には、エア流路24の第2流路24bと、供給流路24cと、流入流路32とが接続されている。バルブ26は、第2流路24bを経由して流入したエアを分流する。エアの多くは、供給エアとして供給流路24cに流れる。供給流路24cに流入した供給エアは、供給流路24cを経由して燃料電池スタック21に供給される。したがって、供給流路24cは、バルブ26に接続されるとともに、供給エアを燃料電池スタック21に供給するための流路である。
【0035】
上記したように、エアコンプレッサ23は、燃料電池スタック21に対するエアの供給量の最大値よりも大きい吐出量でエアを吐出する。このため、バルブ26に流入したエアのうち、供給エアを差し引いたエアは、余剰エアとなる。つまり、余剰エアは、エアコンプレッサ23からエア流路24に流入したエアから供給エアを差し引いた残りのエアである。
【0036】
そして、余剰エアは、流入流路32に流入する。したがって、流入流路32は、バルブ26に接続されるとともに、余剰エアが流入する流路である。また、バルブ26は、エア流路24に流入したエアを、供給エアと余剰エアに分流させる。
【0037】
流入流路32の入口は、バルブ26に接続されている。流入流路32の出口32aは、噴出流路16の入口16aに連通している。流入流路32の出口32a側の一部は、噴出流路16の入口16aを通過して、噴出流路16の内部に入り込んでいる。このため、噴出流路16の入口16aは、流入流路32の出口32a全体に対向している。
【0038】
バルブ26には、車両制御装置14が信号接続されている。車両制御装置14は、燃料電池スタック21の発電量に応じたエアの供給量を算出する。車両制御装置14は、算出した供給量の供給エアが、エアコンプレッサ23、エア流路24、バルブ26、及び供給流路24cを通じて燃料電池スタック21に供給されるようにバルブ26に制御信号を出力する。バルブ26は、車両制御装置14から出力された制御信号に応じてバルブ26の開度を制御する。
【0039】
<熱交換器、ラジエータファン、循環流路>
熱交換器27は、収容部13に向けて開口するダクト入口15aに対向している。つまり、ダクト入口15aは、熱交換器27に向けて開口している。ダクト入口15aにおける車両上下方向への寸法H1は、熱交換器27の車両上下方向への寸法と同じか、若干大きい。また、ダクト入口15aにおける車幅方向への寸法W1は、熱交換器27の車幅方向への寸法より大きい。このため、ダクト入口15aは、車両上下方向及び車幅方向の各々の全体に亘って熱交換器27に対向している。なお、ダクト入口15aは、少なくとも一部が熱交換器27に対向していればよく、車両上下方向の全体に亘って熱交換器27に対向していなくてもよい。
【0040】
熱交換器27は、外気と冷却媒体との間で熱交換を行う。熱交換器27は、循環流路29を含む。循環流路29には、燃料電池スタック21を冷却する冷却媒体が循環する。つまり、循環流路29は、燃料電池スタック21と熱交換器27との間で冷却媒体を循環させる。冷却媒体としては冷却水が用いられるが、その他の媒体を用いてもよい。
【0041】
循環流路29は、往路29aと、復路29bと、図示しないポンプと、熱交換流路と、を有している。往路29aは、熱交換器27から燃料電池スタック21に向けて冷却媒体を流すための流路である。復路29bは、燃料電池スタック21から熱交換器27に向けて冷却媒体を流すための流路である。ポンプは、循環流路29で冷却媒体を循環させる。図示しない熱交換流路は、燃料電池スタック21内及び熱交換器27内に取り回されている。
【0042】
往路29aを通って燃料電池スタック21内の熱交換流路に流れ込んだ冷却媒体は、燃料電池スタック21で発生した熱を吸収して燃料電池スタック21を冷却する。復路29bを通って熱交換器27内の熱交換流路に流れ込んだ冷却媒体は、外気と熱交換されて冷却される。
【0043】
ラジエータファン28は、熱交換器27を挟んで、ダクト入口15aの反対側に配置されている。つまり、ラジエータファン28とダクト入口15aとの間に熱交換器27が配置されている。
【0044】
ラジエータファン28は、熱交換器27、ひいてはダクト入口15aに向けて送風する。ラジエータファン28は、熱交換器27に向けた一方向への送風を目的として設計されている。ラジエータファン28は、モータMによって回転する。ラジエータファン28のモータMには、車両制御装置14が信号接続されている。車両制御装置14は、燃料電池スタック21が発電を開始すると、モータMを駆動してラジエータファン28を回転させる。
【0045】
ラジエータファン28が回転することにより、熱交換器27に向けて送風される。ラジエータファン28による送風により、熱交換器27内の熱交換流路での冷却媒体の冷却効率が高められる。熱交換器27での冷却媒体との熱交換によって生じた排気は、ダクト入口15aからダクト15に流入する。排気は、ダクト出口15bから車体11の外に排出される。上記したようにダクト入口15aは、車両上下方向及び車幅方向の各々の全体に亘って熱交換器27に対向している。このため、熱交換器27からの排気のほとんどはダクト入口15aに流入する。
【0046】
[実施形態の作用]
燃料電池スタック21が発電を開始すると、車両制御装置14は、燃料電池スタック21の発電量に応じたエアの供給量を算出する。車両制御装置14は、算出した供給量の供給エアが、エアコンプレッサ23、エア流路24、バルブ26、及び供給流路24cを通じて燃料電池スタック21に供給されるようにバルブ26に制御信号を出力する。バルブ26は、車両制御装置14から出力された制御信号に応じてバルブ26の開度を制御する。
【0047】
エアコンプレッサ23の周囲のエアは、エアクリーナ23a及び吸気流路23bを通じてエアコンプレッサ23に吸入されるとともに、エアコンプレッサ23によって圧縮される。圧縮されたエアは、エア流路24の第1流路24aに吐出される。第1流路24aに流入したエアは、インタークーラ25によって冷却された後、第2流路24bに流入する。
【0048】
発電量に応じた供給エアが、バルブ26を経由して供給流路24cに流入する。そして、供給エアは、供給流路24cを通じて燃料電池スタック21に供給される。同時に、余剰エアが、バルブ26を経由して流入流路32に流入する。流入流路32に流入した余剰エアのほとんどは、流入流路32を通じて入口16aから噴出流路16に流入する。噴出流路16に流入した余剰エアは、絞り16cによって流速が早められる。
【0049】
図5に示すように、噴出流路16に流入した余剰エアは、矢印Gに示すように、噴出流路16を通じて噴出口16bから車体11の外に噴出する。すると、車体11の後面11a付近には、矢印Gに示すように、噴出口16bから噴出した余剰エアの噴流が発生する。余剰エアの噴流は、噴出流路16の軸線L2と平行な流れである。
【0050】
燃料電池スタック21の発電時、車両制御装置14は、モータMを駆動してラジエータファン28を回転させる。ラジエータファン28からの送風により、熱交換器27では、熱交換流路の冷却媒体が冷却される。熱交換器27での熱交換後の排気は、ダクト入口15aからダクト15に流入する。排気は、ダクト15を通じてダクト出口15bから車体11の外に排出される。矢印Fに示すように、排気は、ダクト15の軸線L1と平行な流れとなって斜め上方に排出されるとともに、余剰エアと平行な流れとなって排出される。
【0051】
燃料電池式フォークリフト10が後進すると、走行風Xは、ダクト15のダクト出口15bに向かう。このとき、矢印Gに示すように、ダクト出口15bの周囲には、ダクト出口15bの下方から上に向かう余剰エアの噴流が発生している。この余剰エアの噴流によって、後進時の走行風Xが遮られる。
【0052】
[実施形態の効果]
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)バルブ26は、エアコンプレッサ23から吐出されたエアを供給エアと余剰エアに分流させる。バルブ26に接続された流入流路32は、余剰エアを噴出流路16に流入させる。噴出流路16は、噴出口16bから余剰エアを噴出させる。噴出口16bは、車体11の後面11aにおいてダクト出口15bに隣接している。このため、噴出口16bからの余剰エアの噴流により、後進時の走行風Xが遮られる。その結果、ダクト出口15bからダクト15に走行風Xが流入することを抑制できるため、走行風Xとラジエータファン28の送風とが衝突することを回避できる。このため、後進時の走行風Xによって、ダクト出口15bからの排気の排出が妨げられることが抑制される。その結果、熱交換器27による熱交換後の排気の排出を適切に行うことができる結果、ラジエータファン28による冷却性能の低下を低減できる。
【0053】
(2)エアコンプレッサ23の吐出するエアを利用して、後進時の走行風Xが、ダクト出口15bからダクト15に流入することを抑制できる結果、ラジエータファン28による冷却性能の低下を抑制できる。このため、後進時の走行風Xを原因とした冷却性能の低下を抑制するために、ラジエータファン28を逆回転させる必要もない。また、ラジエータファン28は、熱交換器27に向けた一方向への送風を主目的として設計されている。このため、ラジエータファン28を逆回転させたときの他方向への送風量は、一方向へのラジエータファン28の送風量に劣る。このため、後進時の走行風Xを原因とした冷却性能の低下を抑制するために、ラジエータファン28を他方向へ送風させる場合と比べて、ラジエータファン28による冷却性能の低下を抑制できる。
【0054】
(3)噴出流路16は、入口16aから噴出口16bに向かうに従い上り傾斜している。噴出流路16が、入口16aから噴出口16bに向かうに従い下り傾斜する場合と比べると、余剰エアの圧力損失を抑制して、噴出流路16での余剰エアの流速の低下を抑制できる。このため、余剰エアの噴流の流速の低下を抑制できる。そして、噴出口16bは、ダクト出口15bよりも下方に位置している。このため、噴出口16bからの余剰エアの噴流は、ダクト出口15bの下方から上に向かう。よって、後進時の走行風Xは、噴出口16bからの余剰エアの噴流によって好適に遮られる。その結果、後進時の走行風Xによって、ダクト出口15bからの排気の排出が妨げられることが抑制される。
【0055】
(4)噴出流路16は、絞り16cを有する。この絞り16cは、噴出流路16での余剰エアの流速を早めるため、余剰エアの噴流の流速の低下を抑制できる。その結果、余剰エアの噴流により、ダクト出口15bからダクト15に走行風Xが流入することを好適に抑制できる。
【0056】
(5)車幅方向への噴出口16bの寸法W2は、車両上下方向への噴出口16bの寸法H2より大きい。これによれば、簡単な構成で絞り16cを形成できるため、噴出流路16での余剰エアの流速を早めて、噴流の流速を容易に早めることができる。
【0057】
(6)エア流路24には、インタークーラ25が設けられている。このため、エアコンプレッサ23から吐出されたエアは、インタークーラ25によって冷却される。そして、冷却されたエアの一部は、余剰エアとして噴出口16bから車体11の外へ噴出する。このため、噴出口16bから高温の余剰エアが噴出されることを抑制できる。
【0058】
(7)噴出口16bは、車幅方向におけるダクト出口15bの全長に亘って延びるように設けられている。このため、噴出口16bから噴出する余剰エアは、車幅方向におけるダクト出口15bの全長に亘る。よって、車幅方向におけるダクト出口15bの全長に亘って余剰エアの噴流を発生させることができるため、後進時の走行風Xがダクト出口15bに流入することを好適に抑制できる。
【0059】
(8)エアコンプレッサ23は、吐出容量が少なくなるとサージングが発生するため、吐出容量を低下させないように駆動される。このため、エアコンプレッサ23から吐出されるエアは、燃料電池スタック21への供給エア以外にも余剰エアが生じる。そして、この余剰エアを利用して、後進時の走行風Xがダクト15に侵入することを抑制している。したがって、エアコンプレッサ23の余剰エアを利用するだけで、ラジエータファン28による冷却性能の低下を低減できる。
【0060】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○
図6に示すように、噴出口16bは、車幅方向へのダクト出口15bの寸法W1内で、当該車幅方向に複数並設されていてもよい。このように構成した場合、簡単な構成で噴出流路16の絞り16cを形成できる。
【0061】
○
図7に示すように、噴出流路16は、入口16aから噴出口16bに向かうに従い下り傾斜していてもよい。この場合、噴出流路16は、ダクト15よりも上方に設けられている。そして、噴出口16bは、ダクト出口15bよりも上方に位置している。
【0062】
○噴出口16bの寸法W2と、噴出口16bの寸法H2とは同じでもよいし、寸法W2が寸法H2より小さくてもよい。
○噴出流路16は、ダクト15に対して車幅方向に並んで設けられていてもよい。この場合、噴出口16bは、ダクト出口15bと車幅方向に並ぶことで隣接して配置される。
【0063】
○噴出流路16の絞り16cは無くてもよい。
○噴出流路16及びダクト15は、上り傾斜せずに、車両前後方向へ水平に延びるように設けられていてもよい。
【0064】
○インタークーラ25は無くてもよい。
○エアクリーナ23a及び吸気流路23bは無くてもよい。
○バルブ26は、車両制御装置14から出力された制御信号に応じて開度を調節できない固定流量式のタイプでもよい。
【0065】
○燃料電池式産業車両は燃料電池式トーイングトラクタであってもよい。
【符号の説明】
【0066】
10…燃料電池式産業車両としての燃料電池式フォークリフト、11…車体、11a…後面、15…ダクト、15a…ダクト入口、15b…ダクト出口、16…噴出流路、16a…入口、16b…噴出口、16c…絞り、21…燃料電池スタック、23…エアコンプレッサ、24…エア流路、24c…供給流路、25…インタークーラ、26…バルブ、27…熱交換器、28…ラジエータファン、29…循環流路、32…流入流路、32a…出口。