(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160183
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】極低温冷却装置及び超電導装置
(51)【国際特許分類】
F25B 9/08 20060101AFI20231026BHJP
F25B 9/00 20060101ALI20231026BHJP
H10N 60/81 20230101ALI20231026BHJP
【FI】
F25B9/08
F25B9/00 J
H01L39/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070343
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高木 紀和
(72)【発明者】
【氏名】栗山 透
(72)【発明者】
【氏名】高橋 政彦
(72)【発明者】
【氏名】上野 航生
【テーマコード(参考)】
4M114
【Fターム(参考)】
4M114AA40
4M114CC03
4M114DA34
(57)【要約】
【課題】冷却ガスの温度を低下させる膨張機構を、可動部が無く構造が簡単で、メンテナンスを不要にできること。
【解決手段】被冷却物1との間のガス配管12により冷却ガスXを循環させる圧縮機11と、圧縮機に戻る低圧側の冷却ガスにより圧縮機からの高圧側の冷却ガスを冷却する熱交換器13と、熱交換器からの高圧側の冷却ガスを膨張させて温度低下させる膨張機構とを有し、膨張機構からの冷却ガスにより被冷却物を冷却する極低温冷却装置10であって、圧縮機に戻る低圧側の冷却ガスの圧力は冷却ガスの臨界圧力以上に設定され、膨張機構は、ノズル17、ディフューザ18、注入口、吸込口及び吐出口を備えたエジェクタ14であり、注入口が熱交換器からの高圧側の冷却ガスを導くガス配管に接続され、吐出口が、被冷却物側へ吐出ガスとしての冷却ガスを導くガス配管に接続され、吸込口が、吐出口からの吐出ガスCの一部を抽出する循環配管22に接続される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物との間に設けられたループ状のガス配管により冷却ガスを循環させるために圧縮する圧縮機と、
前記ガス配管に配設され、前記圧縮機に戻る低圧側の冷却ガスにより前記圧縮機から吐出した高圧側の冷却ガスを熱交換して冷却する熱交換器と、
前記ガス配管に接続され、前記熱交換器から流出した高圧側の冷却ガスを膨張させて温度低下させる膨張機構とを有し、
前記膨張機構からの温度低下した冷却ガスにより前記被冷却物を冷却する極低温冷却装置であって、
前記圧縮機に戻る低圧側の冷却ガスの圧力は冷却ガスの臨界圧力以上に設定され、
前記膨張機構は、高圧側の冷却ガスを駆動ガスとして注入口から注入し噴射させるノズルと、冷却ガスを吸い込む吸込口と、これらの吸い込まれた吸込ガスと駆動ガスとを混合し昇圧して吐出口から吐出させるディフューザと、を備えたエジェクタであり、
前記注入口が、前記熱交換器からの高圧側の冷却ガスを導く前記ガス配管に接続され、前記吐出口が、被冷却物側へ吐出ガスとしての冷却ガスを導く前記ガス配管に接続され、前記吸込口が、前記吐出口からの吐出ガスの一部を抽出する循環配管に接続されて構成されたことを特徴とする極低温冷却装置。
【請求項2】
前記熱交換器からの高圧側の冷却ガスをエジェクタに導くガス配管に配設されて、前記エジェクタに導入される前の冷却ガスを冷却する冷却源を、更に有することを特徴とする請求項1に記載の極低温冷却装置。
【請求項3】
前記冷却源は、冷却ガスと熱交換可能な液冷媒が貯溜された液冷媒タンクであることを特徴とする請求項2に記載の極低温冷却装置。
【請求項4】
前記冷却源は、別系統の冷却装置により冷却された冷媒を断熱配管により導き、この冷媒と冷却ガスとを熱交換可能な冷却源熱交換器であることを特徴とする請求項2に記載の極低温冷却装置。
【請求項5】
前記冷却源は、単段冷凍機の冷却ステージと冷却ガスとを熱交換可能な冷却源熱交換器、または多段冷凍機の複数の冷却ステージのそれぞれと冷却ガスとを熱交換可能な直列接続された複数の冷却源熱交換器であることを特徴とする請求項2に記載の極低温冷却装置。
【請求項6】
前記冷却源は、直列接続された複数の冷却源熱交換器間を流れる冷却ガスを、被冷却物を冷却した後の戻り冷却ガスにより熱交換する追加熱交換器を、更に有することを特徴とする請求項5に記載の極低温冷却装置。
【請求項7】
前記被冷却物が超電導コイルである請求項1または2に記載の極低温冷却装置を有して構成されたことを特徴とする超電導装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷却ガスを用いて被冷却物を冷却するガス循環冷却方式の極低温冷却装置、及びこの極低温冷却装置を備えた超電導装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超電導コイルを極低温に冷却する極低温冷却装置として、極低温冷凍機を用いた伝導冷却方式がある。この伝導冷却方式は、液体ヘリウムで冷却する方式に比べて、専門知識が必要な液体ヘリウムを取扱う必要が無いことや、近年のヘリウム資源の枯渇問題での液体ヘリウムの入手困難性等の影響を受けないメリットがある。しかし、極低温冷凍機が磁場中では使用できず超電導コイルから距離を離す必要がある場合や、一つの極低温冷凍機で複数の被冷却物を冷却する場合には、極低温冷凍機と超電導コイルとの伝熱距離が長くなる。このため、伝導冷却方式では、極低温冷凍機と超電導コイルとの間の温度差が大きくなってしまう問題がある。
【0003】
そこで、極低温冷凍機で冷却した冷却ガスを循環させて冷却するガス循環冷却方式の極低温冷却装置が有利となる。このガス循環冷却方式では、極低温冷凍機と超電導コイルとの距離を離しても両者の温度差が大きくならない利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-75284号公報
【特許文献2】特開平10-311618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガス循環冷却方式の極低温冷却装置において冷却ガスの温度を下げる手段(膨張機構)としては、膨張タービンにより冷却ガスから仕事を取り出して、理想的には等エントロピ膨張させる方法がある。
図7に示す従来の極低温冷却装置100では、冷却ガスMを圧縮機101により圧縮して高圧側の冷却ガスMとし、この高圧側の冷却ガスMを熱交換器102により熱交換して冷却した後、膨張タービン103により膨張させて温度低下させ、この温度低下した冷却ガスMにより被冷却物104を冷却させる冷凍サイクルを形成している。なお、
図7中の符号105は真空容器を示す。しかしながら、膨張タービン103には可動部があるため高価でメンテナンスが必要になる。
【0006】
一方、構造が簡単な膨張弁を用いて冷却ガスを絞り膨張させる極低温冷却装置があるが、この場合には等エンタルピ膨張であるため、温度低下に利用できる温度域が冷媒(冷却ガス)の逆転温度以下に制約される。このような背景から、冷却ガスの温度を低下させると共に、可動部が無く安価で信頼性の高い膨張機構が求められている。
【0007】
ところで、特許文献1には、エジェクタがガス循環冷却方式に使用されている例が開示されている。このエジェクタは、被冷却体からの戻りガスを、冷却段階からの高圧の噴射ガスにより吸入して昇圧するポンプとして機能するものである。このエジェクタからの吐出ガスは気液二相流となり、エジェクタの出口に気液分離器が設けられている。
【0008】
別の先行例として特許文献2では、エジェクタは真空容器内の低温領域のガスを循環させるポンプとして機能し、真空容器外の室温領域から流入するガス流量を減らすことで、低温領域への熱侵入量を減少するために用いられている。
【0009】
本発明の実施形態は、上述の事情を考慮してなされたものであり、冷却ガスの温度を低下させる膨張機構を、可動部が無く構造が簡単で、且つメンテナンスを不要にできる極低温冷却装置及び超電導装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態における極低温冷却装置は、被冷却物との間に設けられたループ状のガス配管により冷却ガスを循環させるために圧縮する圧縮機と、前記ガス配管に配設され、前記圧縮機に戻る低圧側の冷却ガスにより前記圧縮機から吐出した高圧側の冷却ガスを熱交換して冷却する熱交換器と、前記ガス配管に接続され、前記熱交換器から流出した高圧側の冷却ガスを膨張させて温度低下させる膨張機構とを有し、前記膨張機構からの温度低下した冷却ガスにより前記被冷却物を冷却する極低温冷却装置であって、前記圧縮機に戻る低圧側の冷却ガスの圧力は冷却ガスの臨界圧力以上に設定され、前記膨張機構は、高圧側の冷却ガスを駆動ガスとして注入口から注入し噴射させるノズルと、冷却ガスを吸い込む吸込口と、これらの吸い込まれた吸込ガスと駆動ガスとを混合し昇圧して吐出口から吐出させるディフューザと、を備えたエジェクタであり、前記注入口が、前記熱交換器からの高圧側の冷却ガスを導く前記ガス配管に接続され、前記吐出口が、被冷却物側へ吐出ガスとしての冷却ガスを導く前記ガス配管に接続され、前記吸込口が、前記吐出口からの吐出ガスの一部を抽出する循環配管に接続されて構成されたことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の実施形態における超電導装置は、前記被冷却物が超電導コイルである前記実施形態に記載の極低温冷却装置を有して構成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態によれば、冷却ガスの温度を低下させる膨張機構を、可動部が無く構造が簡単で、且つメンテナンスを不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る極低温冷却装置の構成を示す管路図。
【
図3】第2実施形態に係る極低温冷却装置の構成を示す管路図。
【
図4】第3実施形態に係る極低温冷却装置の構成を示す管路図。
【
図5】第4実施形態に係る極低温冷却装置の構成を示す管路図。
【
図6】第5実施形態に係る極低温冷却装置の構成を示す管路図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を、図面に基づき説明する。
[A]第1実施形態(
図1、
図2)
図1は、第1実施形態に係る極低温冷却装置の構成を示す管路図である。この
図1に示す極低温冷却装置10は、超電導装置を構成する超電導コイルを被冷却物1とし、この被冷却物1をガス循環冷却方式により極低温(例えば4K~30K程度)に冷却するものであり、圧縮機11、ガス配管12、熱交換器13、膨張機構としてのエジェクタ14、伝熱部15及び真空容器16を有して構成される。
【0015】
ガス配管12はループ形状に形成され、このガス配管12に圧縮機11、熱交換器13、エジェクタ14、伝熱部15及び熱交換器13が順次配設される。このうちの圧縮機11が断熱容器である真空容器16外に配置され、熱交換器13、エジェクタ14及び伝熱部15が、被冷却物1と共に真空容器16内に配置される。
【0016】
圧縮機11は、ヘリウムガス等の冷却ガスXを圧縮して吐出し、この冷却ガスXをガス配管12により被冷却物1側の伝熱部15との間で循環させるものである。圧縮機11から吐出された冷却ガスXは、熱交換器13により冷却され、エジェクタ14により更に冷却(温度低下)された後に伝熱部15に導かれ、この伝熱部15で被冷却物1を極低温に冷却した後、熱交換器13を経て圧縮機11に戻されて循環する。上述の伝熱部15による被冷却物1の冷却は、例えば伝熱部15が被冷却物1に接触して、熱伝導により被冷却物1を冷却ガスXにより冷却する。
【0017】
熱交換器13は、被冷却物1を冷却した後に圧縮機11に戻る低圧側の冷却ガスXにより、圧縮機11から吐出された高圧側の冷却ガスXを熱交換して冷却する。つまり、この熱交換器13は、圧縮機11に戻る低圧側の冷却ガスXにより、真空容器16の外側の室温領域から真空容器16の内側の低温領域に配置されたガス配管12内を流れる高圧側の冷却ガスXを、上記低温領域でエジェクタ14に流入する前に熱交換して冷却する。
【0018】
ここで、圧縮機11に戻る低圧側の冷却ガスXの圧力、及びエジェクタ14からの吐出ガスC(後述)の圧力は、冷却ガスXの臨界圧力以上に設定されている。これにより、極低温冷却装置10の圧縮機11、ガス配管12、熱交換器13、エジェクタ14及び伝熱部15内をそれぞれ流れる冷却ガスXは、気体の単相流になっている。
【0019】
エジェクタ14は、膨張機構の一例であり、熱交換器13から流出した高圧側の冷却ガスXを膨張させて温度低下させ、この冷却ガスXにより、伝熱部15を介して被冷却物1を冷却する。このエジェクタ14は、具体的には、
図2に示すように、熱交換器13からの高圧側の冷却ガスXを駆動ガスAとして注入口19から注入し減圧して加速させ噴射させるノズル17と、この駆動ガスAの運動エネルギを利用して冷却ガスXを内部に吸込ガスBとして吸い込む吸込口20と、この吸込ガスBと駆動ガスAとを混合し昇圧して減速させ吐出ガスCとして吐出口21から吐出するディフューザ18と、を有して構成される。
【0020】
上述のエジェクタ14は、吸込口20から吸込ガスBを吸い込んで駆動ガスAと混合し、この混合ガスをディフューザ18で昇圧し吐出ガスCとして吐出させることから、ポンプ機能を有する。更にエジェクタ14は、駆動ガスAがノズル17で減圧され加速される際の運動エネルギが、吸込口20から吸込ガスBを吸い込む仕事に使われるので、ディフューザ18から吐出される吐出ガスCのエンタルピ及びエントロピ(温度)が、駆動ガスAを吸引ガスBの圧力まで絞り膨張させた場合と比べて低下する。
【0021】
本第1実施形態のエジェクタ14では、上述の吐出ガスCのエンタルピ及びエントロピ(温度)の低下を累積的且つ効率的に実現するために、注入口19は、熱交換器13からの高圧側の冷却ガスXを導くガス配管12に接続され、また吐出口21は、被冷却物1側の伝熱部15へ吐出ガスCとしての冷却ガスXを導くガス配管12に接続され、更に吸込口20は、吐出口21からの吐出ガスCの一部を抽出する循環配管22に接続される。
【0022】
従って、
図1に示す極低温冷却装置10では、圧縮機11で圧縮された高圧側の冷却ガスXは熱交換器13にて、被冷却物1を冷却した後の低圧側の冷却ガスXと熱交換して冷却され、エジェクタ14の注入口19に流入する。エジェクタ14の注入口19に流入(注入)された冷却ガスXは、駆動ガスAとなってノズル17にて加速され、このときの運動エネルギにより、吐出ガスCの一部が循環配管22を経て吸込口20から吸い込まれ、この吸込みが連続して成されることで、エジェクタ14の吐出口21から吐出される吐出ガスCの温度が低下する。このエジェクタ14からの吐出ガスC(冷却ガスX)は伝熱部15に導かれて被冷却物1を冷却し、この冷却後の冷却ガスXが熱交換器13を経て圧縮機11に、低圧側の冷却ガスXとして戻される。
【0023】
以上のように構成されたことから、本第1実施形態によれば、次の効果(1)~(3)を奏する。
(1)
図2に示すように、エジェクタ14では、冷却ガスXが駆動ガスAとしてノズル17により減圧され加速されて得られる運動エネルギが、吸込口20から冷却ガスX(吐出ガスC)を吸い込む仕事に使われるので、ディフューザ18で昇圧され減速される吐出ガスCは、エンタルピ及びエントロピ(温度)が駆動ガスAよりも低下する。この吐出ガスCの一部を抽出し循環配管22を経て吸込口20からエジェクタ14内部に吸い込ませることで、吐出ガスC(冷却ガスX)の温度を累積的且つ効率的に低下させることができ、この冷却ガスXにより被冷却物1を好適に冷却することができる。
【0024】
(2)
図1及び
図2に示すように、圧縮機11に戻る低圧側の冷却ガスXの圧力が冷却ガスXの臨界圧力以上に設定されているので、この冷却ガスXは気体の単相流である。従って、エジェクタ14内の冷却ガスX(駆動ガスA、吸込ガスB、吐出ガスC)も当然に気体の単相流であるため、冷却ガスXが気液二相流である場合に比べて、冷却ガスXとしての駆動ガスAがノズル17で加速されるときの損失が小さく、更に、冷却ガスXとしての吸込ガスBと駆動ガスAとの混合時の損失も小さい。この結果、吐出口21からの吐出ガスCの温度を効果的に低下させることができる。
【0025】
(3)膨張機構としてのエジェクタ14は、高圧の冷却ガスXをノズル17により加速したときの運動エネルギを利用して冷却ガスXを吸込ガスBとして吸い込み、ディフューザ18により昇圧して吐出するので、可動部が無く構造が簡単である。このため、エジェクタ14のメンテナンスを不要にすることができる。
【0026】
[B]第2実施形態(
図3)
図3は、第2実施形態に係る極低温冷却装置の構成を示す管路図である。この第2実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0027】
本第2実施形態の極低温冷却装置25が第1実施形態と異なる点は、熱交換器13からの高圧側の冷却ガスXをエジェクタ14に導くガス配管12に、冷却源としての液冷媒タンク26が配設され、この液冷媒タンク26には、エジェクタ14に導入される前の冷却ガスXを熱交換器27により熱交換可能な液冷媒28が貯溜され、このエジェクタ14に導入される前の冷却ガスXが液冷媒28の潜熱を利用して冷却される点である。
【0028】
液冷媒タンク26は真空容器16内に配置される。この液冷媒タンク26に貯溜される液冷媒28は、例えば液体水素や液体メタンなどである。従って、この液冷媒28は、極低温冷却装置25とは別の設備である動力発生装置における動力源として利用することが可能になる。
【0029】
以上のように構成されたことから、本第2実施形態においても、第1実施形態の効果(1)~(3)と同様な効果を奏するほか、次の効果(4)及び(5)を奏する。
【0030】
(4)エジェクタ14に導入される前の冷却ガスXが、液冷媒タンク26内の液冷媒28により熱交換器27を用いて冷却されることから、エジェクタ14から吐出される吐出ガスC(冷却ガスX)を、液冷媒タンク26内の液冷媒28の温度以下に低下させることができる。このため、エジェクタ14及び液冷媒タンク26を有する極低温冷却装置25の被冷却物1に対する冷却能力を、第1実施形態の極低温冷却装置10よりも向上させることができる。
【0031】
(5)極低温冷却装置25における液冷媒28が、極低温冷却装置25とは別の設備の動力発生装置の動力源として利用される場合には、上述の極低温冷却装置25と動力発生装置とを組み合わせたシステム全体の重量を、液冷媒タンク26が兼用されることで減少させることができる。
【0032】
[C]第3実施形態(
図4)
図4は、第3実施形態に係る極低温冷却装置の構成を示す管路図である。この第3実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0033】
本第3実施形態の極低温冷却装置30が第1実施形態と異なる点は、熱交換器13からの高圧側の冷却ガスXをエジェクタ14に導くガス配管12に、冷却源としての冷却源熱交換器31が配設され、この冷却源熱交換器31は、別系統の冷却装置32の冷却手段33にて冷却された冷媒Yを断熱配管34により導き、この冷媒Yにより、エジェクタ14に導入される前の冷却ガスXを熱交換して冷却するよう構成された点である。
【0034】
つまり、冷却装置32は、極低温冷却装置30とは別系統であり、真空容器35外に圧縮機36が配置され、真空容器35内に熱交換器37及び冷却手段33が配置される。冷却源熱交換器31は、極低温冷却装置30の真空容器16内に配置される。これらの圧縮機36、熱交換器37、冷却手段33及び冷却源熱交換器31が、ループ形状の冷媒配管38に順次配設される。
【0035】
ここで、冷媒配管38のうち、冷却装置32の真空容器35外と極低温冷却装置30の真空容器16外に延びる配管部分が、断熱施工されて断熱配管34として構成される。また、上記冷却手段33は冷凍機、または液体水素もしくは液体メタン等の液冷媒である。
【0036】
冷却装置32では、圧縮機36にて圧縮された気体の冷媒Yは、冷却ガスXを後述の如く冷却源熱交換器31にて冷却した後の冷媒Yにより、熱交換器37を用いて冷却されて冷却手段33に導かれ、この冷却手段33により更に冷却される。冷却手段33にて冷却された冷媒Yは、冷却源熱交換器31に導入され、この冷却源熱交換器31にて、極低温冷却装置30におけるエジェクタ14に導入される前の冷却ガスXを冷却した後、熱交換器37を経て圧縮機36に戻される。
【0037】
以上のように構成されたことから、本第3実施形態によれば、第1実施形態の効果(1)~(3)と同様な効果を奏するほか、次の効果(6)及び(7)を奏する。
【0038】
(6)エジェクタ14にて冷却される前の冷却ガスXが、別系統の冷却装置32の冷却手段33にて冷却された冷媒Yにより、冷却源熱交換器31を用いて冷却されることから、エジェクタ14から吐出される吐出ガスC(冷却ガスX)を、第1実施形態の場合よりも冷却することができる。このため、エジェクタ14及び冷却源熱交換器31を有する極低温冷却装置30の被冷却物1に対する冷却能力を、第1実施形態の極低温冷却装置10よりも向上させることができる。
【0039】
(7)冷却装置32の冷媒配管38のうち、真空容器35外と極低温冷却装置30の真空容器16外に延びる配管部分が、断熱施工されて断熱配管34として構成されたので、極低温冷却装置30の被冷却物1と冷却装置32の冷却手段33とを離反して設置することができる。この結果、真空容器16内に被冷却物1及び冷却源熱交換器31を有する極低温冷却装置30を小型に構成することができる。
【0040】
[D]第4実施形態(
図5)
図5は、第4実施形態に係る極低温冷却装置の構成を示す管路図である。この第4実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0041】
本第4実施形態の極低温冷却装置40が第1実施形態と異なる点は、熱交換器13からの高圧側の冷却ガスXをエジェクタ14に導くガス配管12に、冷却源としての冷却源熱交換器41が配設され、この冷却源熱交換器41が、単段の極低温冷凍機42の冷却ステージ43により、エジェクタ14に導入される前の冷却ガスXを熱交換して冷却するよう構成された点である。ここで、極低温冷凍機42は、真空容器16に設置されて、冷却ステージ43が真空容器16内に配置される。
【0042】
以上のように構成されたことから、本第4実施形態の極低温冷却装置40においても、第1実施形態の効果(1)~(3)と同様な効果を奏するほか、次の効果(8)を奏する。
【0043】
(8)エジェクタ14にて冷却される前の冷却ガスXが、極低温冷凍機42の冷却ステージ43により冷却源熱交換器41を用いて熱交換されて冷却されることから、エジェクタ14から吐出された吐出ガスC(冷却ガスX)を、第1実施形態の場合よりも冷却することができる。このため、エジェクタ14及び冷却源熱交換器41を有する極低温冷却装置40の被冷却物1に対する冷却能力を、第1実施形態の極低温冷却装置10よりも向上させることができる。
【0044】
[E]第5実施形態(
図6)
図6は、第5実施形態に係る極低温冷却装置の構成を示す管路図である。この第5実施形態において第1実施形態と同様な部分については、第1実施形態と同一の符号を付すことにより説明を簡略化し、または省略する。
【0045】
本第5実施形態の極低温冷却装置50が第1実施形態と異なる点は、熱交換器13からの高圧側の冷却ガスXをエジェクタ14に導くガス配管12に、冷却源としての冷却源第1熱交換器51、冷却源第3熱交換器53及び冷却源第2熱交換器52が直列接続されて配設され、これらの冷却源第1熱交換器51、冷却源第3熱交換器53及び冷却源第2熱交換器52が、エジェクタ14に導入される前の冷却ガスXを熱交換して冷却するよう構成された点である。
【0046】
つまり、多段、例えば2段の極低温冷凍機54の1段冷却ステージ55により冷却源第1熱交換器51が、2段冷却ステージ56により冷却源第2熱交換器52が、それぞれエジェクタ14に導入される前の冷却ガスXを熱交換して冷却する。また、冷却源第3熱交換器53は、冷却源第1熱交換器51から流出して冷却源第2熱交換器52に流入する前の冷却ガスXを、伝熱部15により被冷却物1を冷却した後の戻りの冷却ガスXにより熱交換して冷却する。
【0047】
ここで、極低温冷凍機54は真空容器16に設置されて、1段冷却ステージ55及び2段冷却ステージ56が真空容器16内に配置される。1段冷却ステージ55と熱交換する冷却源第1熱交換器51、及び2段冷却ステージ56と熱交換する冷却源第2熱交換器52も真空容器16内に配置される。更に、冷却源第3熱交換器53も真空容器16内に配置されている。
【0048】
以上のように構成されことから、本第5実施形態においても、第1実施形態の効果(1)~(3)と同様な効果を奏するほか、次の効果(9)を奏する。
【0049】
(9)エジェクタ14にて冷却される前の冷却ガスXが、極低温冷凍機54の1段冷却ステージ55により冷却源第1熱交換器51を用いて、2段冷却ステージ56により冷却源第2熱交換器52を用いてそれぞれ熱交換されて冷却され、更に、冷却源第1熱交換器51と冷却源第2熱交換器52間を流れる冷却ガスXが、被冷却物1を冷却した後の戻りの冷却ガスXにより冷却源第3熱交換器53を用いて熱交換されて冷却される。これにより、エジェクタ14から吐出される吐出ガスC(冷却ガスX)を、第1及び第4実施形態の場合よりも冷却することができ、この結果、極低温冷却装置50の被冷却物1に対する冷却能力を、第1及び第4実施形態の極低温冷却装置10及び40よりも向上させることができる。
【0050】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、組み合わせを行うことができ、また、それらの置き換えや変更、組み合わせは、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1…被冷却物、10…極低温冷却装置、11…圧縮機、12…ガス配管、13…熱交換器、14…エジェクタ(膨張機構)、16…真空容器、17…ノズル、18…ディフューザ、19…注入口、20…吸込口、21…吐出口、22…循環配管、25…極低温冷却装置、26…液冷媒タンク(冷却源)、27…熱交換器、28…液冷媒、30…極低温冷却装置、31…冷却源熱交換器(冷却源)、32…冷却装置、33…冷却手段、34…断熱配管、40…極低温冷却装置、41…冷却源熱交換器(冷却源)、42…極低温冷凍機、43…冷却ステージ、50…極低温冷却装置、51…冷却源第1熱交換器(冷却源)、52…冷却源第2熱交換器(冷却源)、53…冷却源第3熱交換器(冷却源)、54…極低温冷凍機、55…1段冷却ステージ、56…2段冷却ステージ、A…駆動ガス、B…吸込ガス、C…吐出ガス、X…冷却ガス、Y…冷媒