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特開2023-160186自動車配管用エラストマーホース及び自動車配管用エラストマーホースの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160186
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】自動車配管用エラストマーホース及び自動車配管用エラストマーホースの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/06 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
F16L11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070346
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000113942
【氏名又は名称】マルヤス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 香澄
(72)【発明者】
【氏名】石黒 達也
(72)【発明者】
【氏名】白木 淳
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 和裕
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA12
3H111BA34
3H111DA07
3H111DB09
(57)【要約】
【課題】耐圧強度と、挿入性とが両立し、実用に適する自動車配管用エラストマーホースを提供することにある。
【解決手段】ポリプロピレンを含む熱可塑性オレフィン系エラストマーを用いて製造され、所定の外径を有する被接続配管に接続可能な自動車配管用エラストマーホースであって、肉厚が、1.1×(最大内圧×エラストマーホース内径)/(ポリプロピレン比率×(外径変化率+3.9))≦肉厚≦-97×(エラストマーホース内径/被接続配管最大外径)/(ポリプロピレン比率×(挿入荷重-177))を満たす。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンを含む熱可塑性オレフィン系エラストマーを用いて製造され、所定の外径を有する被接続配管に接続可能な自動車配管用エラストマーホースであって、
肉厚が、1.1×(最大内圧×エラストマーホース内径)/(ポリプロピレン比率×(外径変化率+3.9))≦肉厚≦-97×(エラストマーホース内径/被接続配管最大外径)/(ポリプロピレン比率×(挿入荷重-177))を満たすことを特徴とする自動車配管用エラストマーホース。
【請求項2】
前記ポリプロピレン比率は、0.25<ポリプロピレン比率<0.5の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の自動車配管用エラストマーホース。
【請求項3】
硬度は、ポリプロピレン比率=(硬度-62)/62.5で表され、
前記肉厚が、1.1×(最大内圧×エラストマーホース内径)/(((硬度-65.4)/51.8)×(外径変化率+3.9))≦肉厚≦-97×(エラストマーホース内径/被接続配管最大外径)/(((硬度-62)/62.5)×(挿入荷重-177))を満たすことを特徴とする請求項2に記載の自動車配管用エラストマーホース。
【請求項4】
前記硬度は、77<硬度<94の範囲内であることを特徴とする請求項3に記載の自動車配管用エラストマーホース。
【請求項5】
ポリプロピレンを含む熱可塑性オレフィン系エラストマーを用いる、所定の外径を有する被接続配管に接続可能な自動車配管用エラストマーホースの製造方法であって、
肉厚が、1.1×(最大内圧×エラストマーホース内径)/(ポリプロピレン比率×(外径変化率+3.9))≦肉厚≦-97×(エラストマーホース内径/被接続配管最大外径)/(ポリプロピレン比率×(挿入荷重-177))を満たすことを特徴とする自動車配管用エラストマーホースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、特に電気自動車の冷却配管に用いることを目的とする熱可塑性エラストマーホースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池や電気自動車等に搭載される蓄電池を最適な温度下に保つための冷却液を流通させる冷却用配管としての可撓性配管には、例えば、特許文献1で開示されるような合成ゴムを材料とするものが用いられていた。しかし、合成ゴムから製造された可撓性配管は、4~4.5mm程度の厚みを持つことが知られており、自動車の冷却用配管として使用する際、配管周辺のスペースを圧迫するため、より薄い厚みの可撓性配管の開発が求められていた。また、自動車のように、屋外で低温に曝される可能性のある箇所で用いられる冷却液は、凍結を防止するために不凍液が用いられることが一般的である。また、燃料電池、蓄電池等の冷却液は、短絡や漏電を避けるため、低伝導率であることが必要となる。しかし、低伝導率の冷却液を用いても、可撓性配管からイオンの溶出が生じると、冷却液の伝導率の上昇は避けられないため、イオンの溶出を抑えた可撓性配管の開発が望まれていた。そのような背景の下、特許文献2では、過酸化物を架橋剤として用いて動的架橋された動的架橋型オレフィン系熱可塑性エラストマーを用いることで、従来の合成ゴムから製造される可撓性配管よりも薄く、また、イオンの溶出を抑制した燃料電池用水系ホースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-1688号公報
【特許文献2】特開2013-37972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献2に記載の燃料電池用水系ホースは、硬度が64~75であることが開示されているが、この範囲の硬度のエラストマーホースでは、自動車用配管としての実際の運用を考慮した場合、耐圧性が不足する可能性がある。また、耐圧性を向上させるためにはエラストマーの硬度を増加させることで対応可能となるが、単純に硬度を増加させるだけでは、例えば金属配管等の相手部品との組み付けの際の挿入荷重が大きくなってしまい、実用できない可能性がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、耐圧強度と、挿入性とが両立し、実用に適する自動車配管用エラストマーホース及び自動車配管用エラストマーホースの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、ポリプロピレンを含む熱可塑性オレフィン系エラストマーを用いて製造され、所定の外径を有する被接続配管に接続可能な自動車配管用エラストマーホースであって、肉厚が、1.1×(最大内圧×エラストマーホース内径)/(ポリプロピレン比率×(外径変化率+3.9))≦肉厚≦-97×(エラストマーホース内径/被接続配管最大外径)/(ポリプロピレン比率×(挿入荷重-177))を満たすことを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、ポリプロピレン含有率は、0.25<ポリプロピレン含有率<0.5の範囲内であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2の構成において、硬度は、ポリプロピレン比率=(硬度-62)/62.5で表され、肉厚が、1.1×(最大内圧×エラストマーホース内径)/(((硬度-65.4)/51.8)×(外径変化率+3.9))≦肉厚≦-97×(エラストマーホース内径/被接続配管最大外径)/(((硬度-62)/62.5)×(挿入荷重-177))を満たすことを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3の構成において、硬度は、77<硬度<94の範囲内であることを特徴とする。
上記目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、ポリプロピレンを含む熱可塑性オレフィン系エラストマーを用いる、所定の外径を有する被接続配管に接続可能な自動車配管用エラストマーホースの製造方法であって、肉厚が、1.1×(最大内圧×エラストマーホース内径)/(ポリプロピレン比率×(外径変化率+3.9))≦肉厚≦-97×(エラストマーホース内径/被接続配管最大外径)/(ポリプロピレン比率×(挿入荷重-177))を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐圧性と挿入性とが両立し、実用に適する自動車配管用エラストマーホースが容易に設計及び製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】硬度とPP比率との相関を示すグラフである。
図2】本発明のエラストマーホースに関するデータをまとめた表である。
図3】本発明のエラストマーホースの外径変化率と(最大内圧×エラストマーホース内径)/(肉厚×PP比率)との相関を示すグラフである。
図4】本発明のエラストマーホースの挿入荷重と(エラストマーホース内径/被接続配管最大外径)/(肉厚×PP比率)との相関を示すグラフである。
図5】(a)は、外径変化率が5%であると仮定した際の最大内圧が0.25MPaの場合におけるPP比率と式3から算出されるエラストマーホースの肉厚との相関を示すグラフ、(b)は、外径変化率が5%であると仮定した際の最大内圧が0.35MPaである場合におけるPP比率と式3から算出されるエラストマーホースの肉厚との相関を示すグラフ、(c)は、挿入荷重が120Nであると仮定した際の被接続配管最大外径が18.7mmである場合におけるPP比率と式4から算出されるエラストマーホースの肉厚との相関を示すグラフ、(d)は、挿入荷重が120Nであると仮定した際の被接続配管最大外径が19.2mmである場合におけるPP比率と式4から算出されるエラストマーホースの肉厚との相関を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の自動車配管用エラストマーホースの実施の形態を図面に基づいて説明する。
自動車配管用エラストマーホース(以下、エラストマーホース)は、ポリプロピレンとEPDMとを含む熱可塑性オレフィン系エラストマーを押出成形により中空のホースとして製造されたものである。エラストマーホースは、所定長さに切断された後、曲げ加工が施され、所定形状とされたものが所定の外径を有する被接続配管との接続により電気自動車の冷却系に組み付けられ、冷却液が流通する冷却用配管として利用される。また、本発明のエラストマーホースは単層成型であるため、リサイクル性が高い。
【0010】
本発明のエラストマーホースは、組み上がった状態の性能だけではなく、組付作業も含めて実際に自動車配管として利用する上で適切と考えられる硬度の熱可塑性オレフィン系エラストマーを用いる。作業員又は作業用機械によるエラストマーホースと被接続配管との接続作業を可能とする場合、エラストマーの硬度は77以上であることが望ましく、また、あまり硬度が高すぎても挿入性に劣るため、最大でも94程度であることが望ましい。ここで、エラストマーホースから採取されたサンプル片のTEM画像におけるポリプロピレンとポリプロピレン以外の材料との面積比から算出されるポリプロピレン比率(以下、PP比率)と、エラストマーホースの硬度との相関に着目した。図1は、硬度とPP比率との相関を示すグラフである。事前検討のために、77<硬度<94の範囲においてそれぞれ硬度の異なる複数のエラストマーホースを製造し、そのサンプル片それぞれのPP比率を、TEM画像を撮影して算出し、グラフ上にプロットした。すると、図1に示すように、PP比率と硬度との間には、PP比率が増加するほど硬度が上昇する正の相関があることが分かった。また、その相関は、77<硬度<94の範囲において、図1から、硬度=62.5×PP比率+62(関係式1)で示せることが分かった。関係式1を用いて硬度をPP比率に変換すると、その範囲は、0.25<PP比率<0.5である。
なお、本願において、硬度はデュロメータ硬度計A型を用いて測定された値を指す。
【0011】
以下で説明する実施例としてのエラストマーホースは、PP比率がそれぞれ、0.270(硬度78)、0.320(硬度82)、0.368(硬度85)、0.400(硬度87)、0.480(硬度92)である4種類のエラストマー材料を原料とし、既存の製造機械を用いた押出成形により製造された。
【0012】
また、製造されたエラストマーホースの接続先である被接続配管として、先端に原管よりも径が大きいバルジ部が形成された金属製の配管が選択された。また、被接続配管の最大外径は18.7mm、又は19.2mmとされた。なお、バジル部を除く原管の外径は17mmである。
【0013】
また、エラストマーホースと被接続配管との接続後、エラストマーホースにかかる最大内圧は、0.25MPa、又は0.35MPaとされた。
【0014】
ここで、耐圧強度と挿入性とが両立し、実用に適したエラストマーホースとするための条件について考察する。
耐圧強度を高くするためには、エラストマーホースの剛性を増大させる必要があり、剛性を評価する一つの指針として、外径変化率が挙げられる。剛性を増大させると外径変化率が小さくなり、車体への組み付け後の組付箇所周辺の環境への影響を考慮すると、外径変化率は5%以内であることが望ましいと考えられる。
【0015】
一方、剛性を増大させるとエラストマーホースと被接続配管との接続時に生じる挿入荷重が増大する。実用に適するエラストマーホースとするためには、挿入荷重は、既存の機械を用いた挿入工程で挿入が可能な120N以下であることが望ましい。より好ましくは90N以下である。
【0016】
従って、外径変化率5%以内、且つ挿入荷重120N以下の特性を有するエラストマーホースであれば、耐圧強度と挿入性とを両立した上で、実用に適したものということができる。
以下の実施例では、外径変化率5%以内、且つ挿入荷重120N以下となるように、エラストマーホースの肉厚及び内径の調整、被接続配管の最大外径の選択、及びエラストマーホースと被接続配管との接続後にエラストマーホースにかかる最大内圧の選択を行った。
【0017】
最大内圧をかけた際の外径変化率は、内圧の全くかかっていない状態のエラストマーホースの外径から、最大内圧をかけた状態のエラストマーホースの外径との間の変化率を既存の手法を用いて測定し、算出された。
また、エラストマーホースを被接続配管に接続する際に生じる挿入荷重は、既存の手法を用いて測定された。
【0018】
図2は、本発明のエラストマーホースに関するデータをまとめた表である。
実施例1は、PP比率0.270のエラストマーを用いて製造された、肉厚は3.3mm、内径は16.6mmのエラストマーホースであり、接続先の被接続配管として最大外径18.7mmの金属配管が選択され、エラストマーホースと被接続配管との接続後の最大内圧が0.25MPaとされたものである。外径変化率は3.11%、挿入荷重は90Nであった。
実施例2は、エラストマーホースと被接続配管との接続後の最大内圧が0.35MPaとされたことを除き、実施例1と同様である。外径変化率は4.85%、挿入荷重は90Nであった。
実施例3は、PP比率0.320のエラストマーを用いて製造された、肉厚は3.1mm、内径は16.3mmのエラストマーホースであり、接続先の被接続配管として最大外径18.7mmの金属配管が選択され、エラストマーホースと被接続配管との接続後の最大内圧が0.25MPaとされたものである。外径変化率は2.01%、挿入荷重は83Nであった。
実施例4は、エラストマーホースの肉厚が3.1mm、内径が16.5mmとされたことを除き、実施例3と同様である。外径変化率は2.79%、挿入荷重は58Nであった。
実施例5は、エラストマーホースと被接続配管との接続後の最大内圧が0.35MPaとされたことを除き、実施例4と同様である。外径変化率は4.30%、挿入荷重は58Nであった。
実施例6は、エラストマーホースの肉厚が2.2mm、内径が17.0mmとされたことを除き、実施例4と同様である。外径変化率は3.11%、挿入荷重は34Nであった。
実施例7は、PP比率0.40のエラストマーを用いて製造された、肉厚は2.4mm、内径は16.6mmのエラストマーホースであり、接続先の被接続配管として最大外径18.7mmの金属配管が選択され、エラストマーホースと被接続配管との接続後の最大内圧が0.25MPaとされたものである。外径変化率は1.73%、挿入荷重は77Nであった。
実施例8は、エラストマーホースと被接続配管との接続後の最大内圧が0.35MPaとされたことを除き、実施例4と同様である。外径変化率は2.87%、挿入荷重は77Nであった。
実施例9は、エラストマーホースの肉厚が2.5mm、内径が16.3mmとされたことを除き、実施例7と同様である。外径変化率は0.65%、挿入荷重は79Nであった。
実施例10は、エラストマーホースと被接続配管との接続後の最大内圧が0.35MPaとされたことを除き、実施例9と同様である。外径変化率は1.56%、挿入荷重は79Nであった。
実施例11は、エラストマーホースの肉厚が2.1mm、内径が16.1mmとされたことを除き、実施例7と同様である。外径変化率は2.77%、挿入荷重は65Nであった。
実施例12は、エラストマーホースと被接続配管との接続後の最大内圧が0.35MPaとされたことを除き、実施例11と同様である。外径変化率は4.30%、挿入荷重は65Nであった。
実施例13は、PP比率0.368のエラストマーを用いて製造された、肉厚は2.4mm、内径は16.7mmのエラストマーホースであり、接続先の被接続配管として最大外径18.7mmの金属配管が選択され、エラストマーホースと被接続配管との接続後の最大内圧が0.25MPaとされたものである。外径変化率は1.40%、挿入荷重は57Nであった。
実施例14は、エラストマーホースと被接続配管との接続後の最大内圧が0.35MPaとされたことを除き、実施例13と同様である。外径変化率は2.98%、挿入荷重は57Nであった。
実施例15は、エラストマーホースの肉厚が2.2mm、内径が15.8mmとされたことを除き、実施例13と同様である。外径変化率は2.35%、挿入荷重は73Nであった。
実施例16は、エラストマーホースと被接続配管との接続後の最大内圧が0.35MPaとされたことを除き、実施例15と同様である。外径変化率は4.47%、挿入荷重は73Nであった。
実施例17は、エラストマーホースの肉厚が2.1mm、内径が16.8mmとされたことを除き、実施例13と同様である。外径変化率は2.40%、挿入荷重は48Nであった。
実施例18は、エラストマーホースと被接続配管との接続後の最大内圧が0.35MPaとされたことを除き、実施例17と同様である。外径変化率は4.58%、挿入荷重は48Nであった。
実施例19は、PP比率0.480のエラストマーを用いて製造された、肉厚は2.2mm、内径は16.4mmのエラストマーホースであり、接続先の被接続配管として最大外径18.7mmの金属配管が選択され、エラストマーホースと被接続配管との接続後の最大内圧が0.25MPaとされたものである。外径変化率は1.03%、挿入荷重は76Nであった。
実施例20は、エラストマーホースと被接続配管との接続後の最大内圧が0.35MPaとされたことを除き、実施例19と同様である。外径変化率は1.88%、挿入荷重は76Nであった。
実施例21は、接続先の被接続配管として最大外径19.2mmの金属配管が選択されたことを除き、実施例4と同様である。外径変化率は2.79%、挿入荷重は67Nであった。
実施例22は、接続先の被接続配管として最大外径19.2mmの金属配管が選択されたことを除き、実施例6と同様である。外径変化率は3.11%、挿入荷重は40Nであった。
実施例23は、接続先の被接続配管として最大外径19.2mmの金属配管が選択されたことを除き、実施例7と同様である。外径変化率は1.73%、挿入荷重は85Nであった。
実施例24は、接続先の被接続配管として最大外径19.2mmの金属配管が選択されたことを除き、実施例9と同様である。外径変化率は0.65%、挿入荷重は98Nであった。
実施例25は、接続先の被接続配管として最大外径19.2mmの金属配管が選択されたことを除き、実施例13と同様である。外径変化率は1.40%、挿入荷重は63Nであった。
実施例26は、接続先の被接続配管として最大外径19.2mmの金属配管が選択されたことを除き、実施例15と同様である。外径変化率は2.35%、挿入荷重は85Nであった。
実施例27は、接続先の被接続配管として最大外径19.2mmの金属配管が選択されたことを除き、実施例17と同様である。外径変化率は2.40%、挿入荷重は62Nであった。
実施例28は、接続先の被接続配管として最大外径19.2mmの金属配管が選択されたことを除き、実施例19と同様である。外径変化率は1.03%、挿入荷重は91Nであった。
【0019】
一般に、自動車の冷却用配管のような内面に圧力を受け、管の半径に対して肉厚が薄い薄肉円筒状の圧力容器における発生応力は、発生応力=(内圧×内径)/肉厚(相関式1)で表される薄肉円筒式によって表される。
また、エラストマーホースの自動車用冷却配管としての利用を鑑みると、冷却液の流通によりエラストマーホースにかかる内圧が上昇する際に高い耐圧性を発揮するためには外径変化率は低い方が望ましい。ここで、外径変化率は、エラストマーホースに生じる発生応力が大きくなるほど増大する正の相関がある。つまり、相関式1において、発生応力は、外径変化率と置き換えが可能といえる。従って、外径変化率を相関式1に導入すると、外径変化率=(内圧×エラストマーホース内径)/肉厚(相関式2)と表すことができると考えられる。
【0020】
さらに、外径変化率と、エラストマーホースの円周方向の強度といえる引張強度との間には、引張強度が大きいほど外径変化率が小さくなるという負の相関がある。従って、外径変化率と引張強度との関係性を相関式2に導入すると、外径変化率=(内圧×エラストマーホース内径)/(肉厚×引張強度)(相関式3)と表すことができると考えられる。
また、引張強度は材料の硬度に依存し、引張強度と硬度との間には、硬度が高いほど引張強度は増大する正の相関がある。つまり、相関式3の引張強度は硬度に置き換えが可能といえる。従って、硬度を相関式3に導入すると、外径変化率=(内圧×エラストマーホース内径)/(肉厚×硬度)(相関式4)と表すことができると考えられる。
【0021】
続いて、エラストマーホースの組み付けに関係するパラメータである被接続配管との挿入性に着目する。挿入性が良いということは、すなわちエラストマーホースと被接続配管との接続時の挿入荷重が小さく、エラストマーホースと被接続配管との接続において作業性が高いことを指す。そして、挿入荷重を小さくするためには、エラストマーホースの軟性を高くする必要がある。一方、エラストマーホースの軟性が高くなると、外径変化率も大きくなる。従って、外径変化率と挿入荷重とは相関するといえる。よって、挿入荷重は、相関式4から、挿入荷重=(内圧×エラストマーホース内径)/(肉厚×硬度)(相関式5)と表すことができると考えられる。ただし、外径変化率とは異なり、挿入荷重は、エラストマーホースと被接続配管との接続時に生じる荷重であるため、エラストマーホースの内径、及び被接続配管の外径の大きさから影響を受ける。具体的には、被接続配管の外径に対してエラストマーホースの内径が小さいほど挿入荷重が増大し、エラストマーホースの内径に対して被接続配管の外径が小さいほど挿入荷重は減少する。また、エラストマーホースと被接続配管との接続後に生じるパラメータである内圧は、接続持に生じる挿入荷重に影響を与えない。従って、相関式5を元に、エラストマーホースの内径、及び被接続配管の外径の大きさから受ける影響を加味し、内圧の影響を排除すると、挿入荷重は、挿入荷重=(エラストマーホース内径/被接続配管外径)/(肉厚×硬度)(相関式6)と表すことができると考えられる。
【0022】
また、上述の通り、硬度とPP比率との間に関係式1で示される相関関係が存在することが分かっている。つまり、相関式4及び相関式6における硬度は、PP比率に置き換えが可能といえる。従って、PP比率を相関式4に導入すると、外径変化率=(内圧×エラストマーホース内径)/(肉厚×PP比率)(相関式7)と表すことができると考えられる。
また、PP比率を相関式6に導入すると、挿入荷重=(エラストマーホース内径/被接続配管外径)/(肉厚×PP比率)(相関式8)と表すことができると考えられる。
【0023】
図3は、本発明のエラストマーホースの外径変化率と(最大内圧×エラストマーホース内径)/(肉厚×PP比率)との相関を示すグラフである。
相関式7として導かれた相関を元に、測定された実施例1~28の外径変化率をグラフ上にプロットした(図3)。
【0024】
その結果、外径変化率と、(最大内圧×エラストマーホース内径)/(肉厚×PP比率)との間は、線形関係の相関があることが分かる。
また、図3のグラフから、外径変化率と、(内圧×エラストマーホース内径)/(肉厚×PP比率)との相関関係は、抽出されたプロットを基に算出される近似式、外径変化率=1.1×((最大内圧×エラストマーホース内径)/(肉厚×PP比率))-3.9(式1)で表すことができる。
【0025】
図4は、本発明のエラストマーホースの挿入荷重と(エラストマーホース内径/被接続配管最大外径)/(肉厚×PP比率)との相関を示すグラフである。
相関式8として導かれた相関を元に、測定された実施例1~28の挿入荷重をグラフ上にプロットした(図4)。
【0026】
その結果、挿入荷重と、(エラストマーホース内径/被接続配管最大外径)/(肉厚×PP比率)との間は、線形関係の相関があることが分かる。
また、図4のグラフから、挿入荷重と、(エラストマーホース内径/被接続配管最大外径)/(肉厚×PP比率)との相関関係は、抽出されたプロットを基に算出される近似式、挿入荷重=-97×((エラストマーホース内径/被接続配管最大外径)/(肉厚×PP比率))+177(式2)で表すことができる。
【0027】
実際の製造現場において、被接続配管の最大外径、及びエラストマーホースにかかる最大内圧の値は、自動車の規格等に基づくため、ほぼ固定値であると考えられる。従って、エラストマーホースの設計段階では、ある程度定まった被接続配管の最大外径とエラストマーホースにかかる最大内圧とを考慮した上で、耐圧強度と挿入性が両立し、実用に適したエラストマーホースを設計することは想像に難くない。また、エラストマーホースの内径は、挿入荷重への影響が考えられる一方、被接続配管の外径に対応させる必要があるため、被接続配管が規格等に基づく以上、内径の設定には一定の限度がある。しかし、実施例1~26それぞれで得られた外径変化率及び挿入荷重から、外径変化率及び挿入荷重へ与える影響が大きいと考えられるエラストマーホースの肉厚の設定は、比較的自由度が高いと言える。また、肉厚と同様に外径変化率及び挿入荷重へ与える影響が大きいと考えられるPP比率については、エラストマーホースの原料となるエラストマー材料によって異なることが容易に考えられる。実際の現場では、種々のエラストマー材料の中から選択することを考慮すると、PP比率は比較的設定の自由度が高いと言える。従って、式1及び2を、エラストマーホース設計への寄与の大きい肉厚及びPP比率についての関係式へと整理すると、以下の式3及び4となる。
【0028】
肉厚=1.1×(最大内圧×エラストマーホース内径)/(PP比率×(外径変化率+3.9))(式3)
肉厚=-97×(エラストマーホース内径/被接続配管最大外径)/(PP比率×(挿入荷重-177))(式4)
【0029】
図5(a)は、外径変化率が5%であると仮定した際の最大内圧が0.25MPaの場合におけるPP比率と式3から算出されるエラストマーホースの肉厚との相関を示すグラフ、図5(b)は、外径変化率が5%であると仮定した際の最大内圧が0.35MPaの場合におけるPP比率と式3から算出されるエラストマーホースの肉厚との相関を示すグラフ、図5(c)は、挿入荷重が120Nであると仮定した際の被接続配管最大外径が18.7mmである場合におけるPP比率と式4から算出されるエラストマーホースの肉厚との相関を示すグラフ、図5(d)は、挿入荷重が120Nであると仮定した際の被接続配管最大外径が19.2mmである場合におけるPP比率と式4から算出されるエラストマーホースの肉厚との相関を示すグラフである。
続いて、実施例1~28における最大内圧が0.25MPaである実施例1,3,4,6,7,9,11,13,15,17,19,21,22,23,24,25,26,27,28について、エラストマーホース内径、PP比率を抽出し、外径変化率が5%であると仮定した検討例1~20について、式3を用いて算出される肉厚とPP比率との関係をグラフ上にプロットした(図5(a))。また、実施例1~26における最大内圧が0.35MPaである実施例2,5,8,10,12,14,16,18,20について、エラストマーホース内径、PP比率を抽出し、外径変化率が5%であると仮定した検討例21~28について、式3を用いて算出される肉厚とPP比率との関係をグラフ上にプロットした(図5(b))。さらに、図5(a)及び(b)に示すグラフに、実施例1~26の肉厚とPP比率との関係をプロットした。
図5(a)及び(b)に示すグラフにおいて、外径変化率が、望ましい外径変化率である5%以内の実施例1~28における肉厚とPP比率との関係を示す各点は、図5(a)及び(b)に示すグラフに重畳された検討例1~20から近似された近似曲線、又は検討例21~28から近似された近似曲線よりも上の領域にプロットされることが分かる。つまり、本発明のエラストマーホースの肉厚は、肉厚≧1.1×(最大内圧×エラストマーホース内径)/(PP比率×(外径変化率+3.9))(式5)で表すことができるといえる。
【0030】
同様に、実施例1~28における被接続配管最大外径が18.7mmである実施例1~20について、エラストマーホース内径、PP比率を抽出し、挿入荷重が120Nであると仮定した検討例1~20について、式4を用いて算出される肉厚とPP比率との関係をグラフ上にプロットした(図5(c))。また、実実施例1~26における被接続配管最大外径が19.2mmである実施例21~28について、エラストマーホース内径、PP比率を抽出し、挿入荷重が120Nであると仮定した検討例21~28について、式4を用いて算出される肉厚とPP比率との関係をグラフ上にプロットした(図5(d))。さらに、図5(c)及び(d)に示すグラフに、実施例1~28の肉厚とPP比率との関係をプロットした。
図5(c)及び(d)に示すグラフにおいて、挿入荷重が、望ましい挿入荷重である120N以下の実施例1~28における肉厚とPP比率との関係を示す各点は、図5(c)及び(d)に示すグラフに重畳された検討例1~20から近似され近似曲線、又は検討例21~28から近似された近似曲線よりも下の領域にプロットされる。つまり、本発明のエラストマーホースは、肉厚≦-97×(エラストマーホース内径/被接続配管最大外径)/(PP比率×(挿入荷重-177))(式6)で表すことができるといえる。
【0031】
従って、PP比率、エラストマーホース内径、被接続配管最大外径、最大内圧及び肉厚が式5及び式6から導かれる式7を満たすようにすることで、耐圧強度と挿入性が両立し、実用に適したエラストマーホースを容易に設計できる。
【0032】
1.1×(最大内圧×エラストマーホース内径)/(ポリプロピレン比率×(外径変化率+3.9))≦肉厚≦-97×(エラストマーホース内径/被接続配管最大外径)/(ポリプロピレン比率×(挿入荷重-177))(式7)
【0033】
なお、関係式1と式7とから、式8を導くことができる。従って、硬度、エラストマーホース内径、被接続配管最大外径、最大内圧及び肉厚が式8を満たすようにすることでも、耐圧強度と挿入性が両立し、実用に適したエラストマーホースを容易に設計できる。
【0034】
1.1×(最大内圧×エラストマーホース内径)/(((硬度-62)/62.5)×(外径変化率+3.9))≦肉厚≦-97×(エラストマーホース内径/被接続配管最大外径)/(((硬度-62)/62.5)×(挿入荷重-177))(式8)
【0035】
また、本発明エラストマーホースにおいて望ましいPP比率の範囲は、0.25<ポリプロピレン含有率<0.5である。
また、本発明のエラストマーホースにおいて望ましい硬度の範囲は、77<硬度<94である。
【0036】
以上は、本発明を図示例に基づいて説明したものであり、その技術範囲はこれに限定されるものではない。例えば、式7を満たすことができれば、エラストマー材料の硬度、PP比率、エラストマーホース内径、被接続配管外径、及びエラストマーホースと被接続配管との接続後にエラストマーホースにかかる内圧は任意に設定可能である。
PP比率は、TEMを用いた算出方法を用いて得られた値以外にも、既存の分析手法を用いて算出された値であっても良い。
図1
図2
図3
図4
図5