(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160188
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】ステータ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/04 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
H02K3/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070350
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】橋本 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】菅原 純一
(72)【発明者】
【氏名】三品 徳久
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA00
5H603BB01
5H603BB02
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB03
5H603CC05
5H603CC07
5H603CC17
5H603CD12
5H603CD22
5H603CE02
(57)【要約】
【課題】セグメント導体同士の干渉を回避しつつ、コイルエンド部の小型化を図ることができるステータを実現する。
【解決手段】第1相コイル1は、第1渡り部15と、これよりも軸方向第2側L2に配置され、軸方向視でこれに重複する第2渡り部16とを備える。第1渡り部15は、第1周方向領域E1と第2周方向領域E2と接続領域E3とを備える。第1周方向領域E1は、第1区間K1と接続領域E3の側の第2区間K2との間に第1屈曲部17が形成され、第2区間K2の延在角度は第1区間K1の延在角度に対して大きい。第2周方向領域E2は、第4区間K4と接続領域E3の側の第3区間K3との間に第2屈曲部18が形成され、第3区間K3の延在角度は、第4区間K4の延在角度に対して大きい。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に並ぶように配置された複数のスロットを有する円筒状のステータコアと、前記ステータコアに巻装され、互いに異なる位相の交流電流が流れる3相のコイルと、を備えた回転電機用のステータであって、
前記交流電流の位相を当該位相の進み順に第1相、第2相、第3相として、前記第1相の前記交流電流が流れる前記コイルを第1相コイルとし、前記第2相の前記交流電流が流れる前記コイルを第2相コイルとし、前記第3相の前記交流電流が流れる前記コイルを第3相コイルとし、前記ステータコアの軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸心に直交する方向を径方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側とし、前記周方向の一方側を周方向第1側とし、前記周方向の他方側を周方向第2側として、
前記第1相コイルは、第1の前記スロットである第1スロットに収容される第1収容部と、前記第1スロットに対して前記周方向第2側に隣接する前記スロットである第2スロットに収容される第2収容部と、前記第2スロットとの間に複数の前記スロットを挟んで前記周方向第2側に離間して配置された前記スロットである第3スロットに収容される第3収容部と、前記第3スロットに対して前記周方向第2側に隣接する前記スロットである第4スロットに収容される第4収容部と、前記第1収容部と前記第4収容部とを前記ステータコアに対して前記軸方向第1側で接続する第1渡り部と、前記第2収容部と前記第3収容部とを前記ステータコアに対して前記軸方向第1側で接続する第2渡り部と、を備え、
前記第2渡り部は、前記第1渡り部よりも前記軸方向第2側に位置すると共に、前記軸方向に沿う軸方向視で前記第1渡り部と重複するように配置され、
前記第2相コイルにおける前記ステータコアに対して前記軸方向第1側に突出した部分を第2相コイル渡り部とし、前記第3相コイルにおける前記ステータコアに対して前記軸方向第1側に突出した部分を第3相コイル渡り部として、
前記第1渡り部は、前記周方向第1側の領域である第1周方向領域と、前記第1周方向領域に対して前記周方向第2側の領域である第2周方向領域と、前記第1周方向領域と前記第2周方向領域とを接続する領域であって前記径方向に屈曲形成された径方向屈曲部を含む接続領域と、を備え、
前記第1周方向領域は、前記第3相コイル渡り部に対して前記軸方向第2側であって前記軸方向視で当該第3相コイル渡り部と重複する第1区間と、前記第2相コイル渡り部に対して前記軸方向第1側であって前記軸方向視で当該第2相コイル渡り部と重複する第2区間と、を備え、
前記第2周方向領域は、前記第3相コイル渡り部に対して前記軸方向第1側であって前記軸方向視で当該第3相コイル渡り部と重複する第3区間と、前記第2相コイル渡り部に対して前記軸方向第2側であって前記軸方向視で当該第2相コイル渡り部と重複する第4区間と、を備え、
前記第1周方向領域は、前記周方向第2側へ向かうに従って前記軸方向第1側へ向かうように全体として傾斜し、前記第2周方向領域は、前記周方向第2側へ向かうに従って前記軸方向第2側へ向かうように全体として傾斜し、
前記周方向に対して、前記第1渡り部の延在方向がなす角度を延在角度として、
前記第1区間と前記第2区間との間に、前記延在角度が変化する第1屈曲部が形成され、前記第2区間は、前記第1区間に対して前記延在角度が大きく、
前記第3区間と前記第4区間との間に、前記延在角度が変化する第2屈曲部が形成され、前記第3区間は、前記第4区間に対して前記延在角度が大きい、ステータ。
【請求項2】
前記第1区間は、前記第2相コイル渡り部に対して前記径方向の内側であって前記径方向に沿う径方向視で当該第2相コイル渡り部と重複するように配置され、
前記第2区間は、前記第3相コイル渡り部に対して前記径方向の内側であって前記径方向視で当該第3相コイル渡り部と重複するように配置され、
前記第3区間は、前記第2相コイル渡り部に対して前記径方向の外側であって前記径方向視で当該第2相コイル渡り部と重複するように配置され、
前記第4区間は、前記第3相コイル渡り部に対して前記径方向の外側であって前記径方向視で当該第3相コイル渡り部と重複するように配置されている、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
前記接続領域は、全体として前記周方向に沿うように配置され、
前記径方向屈曲部は、前記径方向視で前記第2相コイル渡り部及び前記第3相コイル渡り部の双方と重複しない位置に配置されている、請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記コイルを構成する導体は、断面が矩形状であって表面に絶縁被膜が形成されている被覆導体線である、請求項1から3のいずれか一項に記載のステータ。
【請求項5】
前記導体は、前記第1渡り部及び前記第2渡り部において、断面の前記軸方向の寸法が前記径方向の寸法よりも大きい長方形状であり、
前記第1屈曲部及び前記第2屈曲部は、前記軸方向に屈曲された軸方向屈曲部である、請求項4に記載のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周方向に並ぶように配置された複数のスロットを有する円筒状のステータコアと、このステータコアに巻装され、互いに異なる位相の交流電流が流れる3相のコイルを備えた回転電機用のステータに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-88729号公報には、断面が矩形状の平角線からなるセグメント導体(30)を用いて形成された3相のコイル(ステータ巻き線(20))を備えたステータ(10)が開示されている(背景技術において括弧内に示す符号は当該文献のもの)。セグメント導体(30)は、略U字状に形成され、U字の側方に対応する部分であって、ステータコア(12)の軸方向沿って形成された溝状のスロット(18)に収容される2つの収容部(スロット内導線部(34,35))と、U字の底部に対応する部分であって、2つの収容部を繋ぐ渡り部(コイルエンド部(36))とを有する。セグメント導体(30)は、渡り部がステータコア(12)の軸方向一方側においてステータコア(12)から突出した状態でステータコアに配置される。また、ステータコアの軸方向他方側には、U字の側方の端部に対応する部分であって、収容部から延在するリード部(32,33)がステータコア(12)から突出する。このリード部(32,33)が他のセグメント導体(30)のリード部(32,33)と溶接等に接合されることにより、コイル(ステータ巻き線(20))が形成される。
【0003】
セグメント導体(30)は、コイル(ステータ巻き線(20))が、ステータコア(12)に対して複数周巻き回される状態となるように、ステータコア(12)に巻装される。つまり、1つのスロット(18)において径方向に複数のセグメント導体(30)が配置される。それぞれのセグメント導体(30)は、2つの収容部(スロット内導線部(34,35))の一方と他方との間に、複数のスロット(18)を挟むように間隔を空けてスロット(18)に配置される。このとき、一方の収容部と他方の収容部とは、径方向における配置位置が異なることがある。径方向における同じ位置を周方向に仮想的に結んだ線をレーンとすると、セグメント導体は、2つの収容部のそれぞれが配置されるレーンを渡り部において異ならせるレーンチェンジを行いつつステータコア(12)に配置されていく。周方向に隣接して配置されるセグメント導体(30)は、渡り部において一方のセグメント導体(30)が他方のセグメント導体(30)を乗り越える(他方側からみれば潜り抜ける)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
渡り部は、中央部がステータコア(12)から離間する方向に膨らんだ山形に形成されている。回転電機を小型化するために、ステータコア(12)も小型化しようとした場合、渡り部においてセグメント導体(30)を曲げて山形を形成する際の曲げ半径も小さくする必要がある。しかし、上述したように、セグメント導体(30)が平角線で形成される場合、曲げ半径を小さくするには限界がある。また、ステータコア(12)を小型化するとスロット(18)の周方向間隔も小さくなる。このため、渡り部において一方のセグメント導体(30)が他方のセグメント導体(30)を乗り越えたり、潜ったりする際に、セグメント導体(30)が干渉するおそれがある。ステータコア(12)の軸方向端面から渡り部の頂点までの高さがより高くなるようにセグメント導体(30)を形成することで、このような干渉を抑制することは可能である。しかし、この場合には、ステータコア(12)の軸方向から突出するコイルエンド部の軸方向の長さが長くなり、ステータの小型化が妨げられる。
【0006】
上記背景に鑑みて、セグメント導体同士の干渉を回避しつつ、コイルエンド部の小型化を図ることができるステータを実現することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記に鑑みたステータは、周方向に並ぶように配置された複数のスロットを有する円筒状のステータコアと、前記ステータコアに巻装され、互いに異なる位相の交流電流が流れる3相のコイルと、を備えた回転電機用のステータであって、前記交流電流の位相を当該位相の進み順に第1相、第2相、第3相として、前記第1相の前記交流電流が流れる前記コイルを第1相コイルとし、前記第2相の前記交流電流が流れる前記コイルを第2相コイルとし、前記第3相の前記交流電流が流れる前記コイルを第3相コイルとし、前記ステータコアの軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸心に直交する方向を径方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側とし、前記周方向の一方側を周方向第1側とし、前記周方向の他方側を周方向第2側として、前記第1相コイルは、第1の前記スロットである第1スロットに収容される第1収容部と、前記第1スロットに対して前記周方向第2側に隣接する前記スロットである第2スロットに収容される第2収容部と、前記第2スロットとの間に複数の前記スロットを挟んで前記周方向第2側に離間して配置された前記スロットである第3スロットに収容される第3収容部と、前記第3スロットに対して前記周方向第2側に隣接する前記スロットである第4スロットに収容される第4収容部と、前記第1収容部と前記第4収容部とを前記ステータコアに対して前記軸方向第1側で接続する第1渡り部と、前記第2収容部と前記第3収容部とを前記ステータコアに対して前記軸方向第1側で接続する第2渡り部と、を備え、前記第2渡り部は、前記第1渡り部よりも前記軸方向第2側に位置すると共に、前記軸方向に沿う軸方向視で前記第1渡り部と重複するように配置され、前記第2相コイルにおける前記ステータコアに対して前記軸方向第1側に突出した部分を第2相コイル渡り部とし、前記第3相コイルにおける前記ステータコアに対して前記軸方向第1側に突出した部分を第3相コイル渡り部として、前記第1渡り部は、前記周方向第1側の領域である第1周方向領域と、前記第1周方向領域に対して前記周方向第2側の領域である第2周方向領域と、前記第1周方向領域と前記第2周方向領域とを接続する領域であって前記径方向に屈曲形成された径方向屈曲部を含む接続領域と、を備え、前記第1周方向領域は、前記第3相コイル渡り部に対して前記軸方向第2側であって前記軸方向視で当該第3相コイル渡り部と重複する第1区間と、前記第2相コイル渡り部に対して前記軸方向第1側であって前記軸方向視で当該第2相コイル渡り部と重複する第2区間と、を備え、前記第2周方向領域は、前記第3相コイル渡り部に対して前記軸方向第1側であって前記軸方向視で当該第3相コイル渡り部と重複する第3区間と、前記第2相コイル渡り部に対して前記軸方向第2側であって前記軸方向視で当該第2相コイル渡り部と重複する第4区間と、を備え、前記第1周方向領域は、前記周方向第2側へ向かうに従って前記軸方向第1側へ向かうように全体として傾斜し、前記第2周方向領域は、前記周方向第2側へ向かうに従って前記軸方向第2側へ向かうように全体として傾斜し、前記周方向に対して、前記第1渡り部の延在方向がなす角度を延在角度として、前記第1区間と前記第2区間との間に、前記延在角度が変化する第1屈曲部が形成され、前記第2区間は、前記第1区間に対して前記延在角度が大きく前記第3区間と前記第4区間との間に、前記延在角度が変化する第2屈曲部が形成され、前記第3区間は、前記第4区間に対して前記延在角度が大きい。
【0008】
本構成によれば、第2渡り部を、第1渡り部よりも軸方向第2側であって軸方向視で第1渡り部と重複する位置に配置したことにより、第1渡り部と第2渡り部とが径方向に並ばず、コイルエンド部の径方向寸法を小型化し易い。また、本構成によれば、第2区間の傾斜角度を第1区間の傾斜角度よりも大きくしたことにより、第1区間と当該第1区間に対して軸方向第1側に配置される第3相コイル渡り部との干渉、第2区間と当該第2区間に対して軸方向第2側に配置される第2相コイル渡り部との干渉、第3区間と当該第3区間に対して軸方向第2側に配置される第3相コイル渡り部との干渉、及び、第4区間と当該第4区間に対して軸方向第1側に配置される第2相コイル渡り部との干渉を回避しつつ、限られた周方向のスペースに第1渡り部及び第2渡り部を配置することができる。さらに、第1区間、第4区間の傾斜を小さくしていることにより、第1区間においては、周方向第2側へ向かうに従って軸方向第1側へ向かう軸方向の長さを短く抑え易く、第4区間においては、周方向第1側へ向かうに従って軸方向第1側へ向かう軸方向の長さを短く抑え易い。即ち、渡り部の全体として、軸方向第1側へ向かう長さ、換言すればコイルの軸方向の高さを低く抑えることができる。従って、コイルエンド部の軸方向寸法を小型化し易い。このように、本構成によれば、セグメント導体同士の干渉を回避しつつ、コイルエンド部の小型化を図ることができるステータを実現することができる。
【0009】
回転電機のステータのさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】コイルに対する電気的接続の一例を示す模式的回路ブロック図
【
図5】最内周側のセグメント導体を外した状態で径方向内側から見たステータの拡大斜視図
【
図6】径方向内側から見たセグメント導体の配置例を示す周方向平面拡大展開図
【
図7】セグメント導体における延在角度を示す説明図
【
図8】軸方向第1側から見たセグメント導体の配置例を示す拡大平面図
【
図9】比較例のセグメント導体の配置例を示す部分斜視図
【
図10】軸方向第1側から見た比較例のセグメント導体の配置例を示す部分平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、回転電機のステータの実施形態を図面に基づいて説明する。
図1の斜視図は、ステータコア80にコイル84(ステータコイル)が巻装されたステータ8を示している。以下の説明では、「軸方向L」、「径方向R」、及び「周方向C」は、コイル84が巻装されるステータコア80の軸心Xを基準として定義している。また、
図1に示すように、軸方向Lの一方側を軸方向第1側L1とし、軸方向Lの他方側(軸方向第1側L1とは反対側)を軸方向第2側L2とする。また、周方向Cの一方側を周方向第1側C1とし、周方向Cの他方側(周方向第1側C1とは反対側)を周方向第2側C2とする。尚、以下の説明において、コイル84、及びコイル84を形成するセグメント導体4についての各方向は、コイル84がステータコア80に巻装された状態での方向である。
【0012】
図2に示すように、回転電機(ステータ8)に交流電力を供給する交流電源として、インバータINVが備えられている。インバータINVは、直流電源91とコイル84との間に接続され、直流電力と複数相(ここでは3相)の交流電力との間で電力を変換する。インバータINVは、複数のスイッチング素子を有して構成されている。回転電機は、電動機及び発電機の双方として機能することができ、発電機として機能する場合には、発電された交流電力がインバータINVによって直流電力に変換され、直流電源91に供給される。直流電源91は、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池(バッテリ)や、電気二重層キャパシタなどにより構成されている。回転電機が、車両の駆動力源の場合、直流電源91は、大電圧大容量の電源であり、定格の電源電圧は、例えば200~400[V]である。インバータINVの直流側には、インバータINVの直流側の電圧(直流リンク電圧)を平滑する直流リンクコンデンサ92(平滑コンデンサ)が備えられている。直流リンクコンデンサ92は、回転電機の消費電力の変動に応じて変動する直流電圧(直流リンク電圧)を安定化させる。
【0013】
図2に示すように、本実施形態では、コイル84は、3相(U相、V相、W相)の各相が中性点で接続されたY字結線型である。詳細は後述するが、3相各相のコイル(ここでは、第1相コイル1、第2相コイル2、第3相コイル3)は、中性点バスバー88によって互いに電気的に接続されている。また、3相の各相のコイルは、それぞれインバータINVの3相の交流出力と、動力線バスバー87によって電気的に接続されている。尚、第1相コイル1は、U相、V相、W相の何れであってもよく、第2相コイル2、第3相コイル3についても同様に、第1相コイル1に応じて、U相、V相、W相の何れにも対応する。
【0014】
図1に示すように、コイル84は、軸方向Lに延びるスロットS及びティースTが周方向Cに複数形成されているステータコア80に巻装される。ステータコア80は、軸方向L視で円環状に形成されるヨークYと、ヨークYから径方向内側R1(本実施形態では不図示のロータが配置される側)に延びる複数のティースTとを備えている。そして、周方向Cに隣接する2つのティースTの間に、径方向外側R2に底部を有する溝状のスロットSが形成されている。本実施形態では、スロットSはセミオープンスロットであり、スロットSの径方向内側R1の開口部は、スロットSにおけるコイル84が配置される領域よりも、周方向Cの幅が小さく形成されている。ここでは、スロットSの開口部の周方向Cの幅は、後述する長辺長さW1よりも小さく形成されている。ステータコア80は、磁性材料を用いて形成される。例えば、ステータコア80は、複数枚の磁性体板(例えば、ケイ素鋼板等の電磁鋼板)を積層して形成される。或いは、ステータコア80は、磁性材料の粉体を加圧成形してなる圧粉材を主な構成要素として形成される。
【0015】
コイル84は、スロットS内にそれぞれ配置される複数本の収容部(後述する第1端部側収容部41、第2端部側収容部42、特定収容部63)を備えている。本実施形態では、収容部は、軸方向Lに平行に延びるようにスロットS内に配置されている。コイル84は、1本の収容部の径方向Rの配置領域を1層として、
図1及び
図4等に示すように、1つのスロットSの内部に、複数本の収容部が層に分かれて配置される。本実施形態では、コイル84は6層巻構造を有しており、1つのスロットSの内部には、複数本の収容部が6つの層に分かれ、一列に並んで径方向Rに沿って配置される。よって、本実施形態では、1つのスロットSの内部には、最大で6本の収容部が径方向Rに並べて配置される。
【0016】
コイル84は、
図3に示すようなセグメント導体4を複数本接合して構成される。セグメント導体4のそれぞれは、当該セグメント導体4の延在方向の両側の端部にリード部(第1のリード部43、第2のリード部44)を有している。コイル84は、複数のセグメント導体4のリード部同士を順次接合することにより形成される。
【0017】
セグメント導体4のそれぞれは、1本の連続する線状導体を用いて構成される。ここで、「連続」とは、継ぎ目なく延在方向に一体に形成されていることを意味する。線状導体は、銅やアルミニウム等の導電性を有する材料により構成される。線状導体の表面は、異なる部材間の電気的接続箇所を除いて、樹脂等の電気的絶縁性を有する材料(例えばポリアミドイミド等により構成されたエナメル樹脂)からなる絶縁皮膜により被覆されている。
【0018】
図3に示すように、本実施形態では、セグメント導体4を構成する線状導体として、延在方向に直交する断面の形状が矩形状(本実施形態では長方形状)の線状導体(平角線)を用いている。本実施形態では、セグメント導体4の断面形状は、長辺長さW1、短辺長さW2の長方形状である。尚、断面の形状が、正方形状であることを妨げるものではなく、また、角部が円弧状に面取り(R面取り)又は直線状に面取り(C面取り)された矩形、内角の大きさと90度との差の絶対値が予め定められた角度(例えば、5度や10度等)未満であるものも含む。
【0019】
セグメント導体4には、上述したように互いに連続的に接合されてコイル84の中核となる複数のコイル本体部83を形成する一般セグメント導体5と、コイル本体部83のそれぞれの端部に接合される特定セグメント導体6とが含まれる。本実施形態では、特定セグメント導体6は、インバータINVからの交流電力を供給する動力線バスバー87とコイル本体部83とをそれぞれ接続したり、コイル84の中性点を形成する中性点バスバー88と複数のコイル本体部83のそれぞれの中性点とを接続したりするセグメント導体4である。
【0020】
図3は、セグメント導体4の代表として一般セグメント導体5を模式的に示している。一般セグメント導体5は、略U字状の形状を有している。
図3に示すように、断面が長方形状の平角線の長辺側側面の側が略U字形状の正面側であり、平角線の短辺側側面の側が側面である。一般セグメント導体5は、後述する径方向Rへの屈曲部49(径方向屈曲部19など(
図4から
図8等参照))を除き、短辺の側を曲げるエッジワイズ曲げによってU字形状が形成されている。
【0021】
セグメント導体4のそれぞれは、当該セグメント導体4の延在方向の両側の端部にそれぞれ第1のリード部43及び第2のリード部44を有している。略U字形状の内、第1のリード部43の側において直線的に延びる部分には、第1のリード部43及び第1端部側収容部41が連続して直線的に形成され、第2のリード部44の側において直線的に延びる部分には、第2のリード部44及び第2端部側収容部42が連続して直線的に形成されている。略U字形状の底部には、第1端部側収容部41と第2端部側収容部42とを結ぶように、渡り部40が形成されている。上述した屈曲部49は、渡り部40の中央部に形成されている。この屈曲部49は、長辺の側を曲げるフラットワイズ曲げによって形成されている。
【0022】
第1端部側収容部41及び第2端部側収容部42は、ステータコア80のスロットSに収容される部分である。また、第1端部側収容部41と第2端部側収容部42との周方向Cにおける間隔は、周方向Cに隣接するスロットSの間隔のN倍(Nは自然数)である。本実施形態では、N=6又はN=4である(
図6等参照)。尚、上述したように、セグメント導体4は、1本の収容部(第1端部側収容部41、第2端部側収容部42等)の径方向Rの配置領域を1層として、1つのスロットSの内部に、複数本の収容部が6層に分かれて配置されている。つまり、1つのスロットSの内部には、複数本の収容部が一列に並んで径方向Rに沿って配置される。従って、径方向内側R1と径方向外側R2とでは、周方向Cの間隔が異なる。このため、径方向外側R2に配置されるセグメント導体4の第1端部側収容部41と第2端部側収容部42との周方向Cにおける間隔は、径方向内側R1に配置されるセグメント導体4の第1端部側収容部41と第2端部側収容部42との周方向Cにおける間隔に比べて広い。
【0023】
セグメント導体4は、ステータコア80に対して軸方向第1側L1から軸方向第2側L2に向かって、第1のリード部43及び第2のリード部44の側からスロットSに軸方向Lに沿って挿入される。渡り部40は、セグメント導体4の第1端部側収容部41及び第2端部側収容部42がスロットS内に収容された状態で、ステータコア80の軸方向第1側L1に突き出す部分である。また、第1のリード部43及び第2のリード部44は、セグメント導体4の第1端部側収容部41及び第2端部側収容部42がスロットS内に収容された状態で、ステータコア80の軸方向第2側L2に突き出す部分である。突き出した第1のリード部43及び第2のリード部44は、
図3に二点鎖線で示すように周方向Cに折り曲げられ、他のセグメント導体4のリード部と溶接等によって接合される。渡り部40に対して、これら第1のリード部43及び第2のリード部44は、接合部45に相当する。
【0024】
このように、ステータコア80の軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2には、コイル84が突き出した部分、いわゆるコイルエンド部が形成される。両者を区別する場合、軸方向第1側L1において渡り部40によって形成されたコイルエンド部を第1コイルエンド部85と称し、軸方向第2側L2において接合部45によって形成されたコイルエンド部を第2コイルエンド部86と称する。ステータコア80の軸方向第1側端面81から軸方向第1側L1に渡り部40が最も突出した部分までの長さが、第1コイルエンド部85の軸方向Lの長さに相当する。また、ステータコア80の軸方向第2側端面82から軸方向第2側L2に接合部45が最も突出した部分までの長さが、第2コイルエンド部86の軸方向Lの長さに相当する。
【0025】
コイル84には、コイル本体部83を形成する一般セグメント導体5の他、コイル本体部83と電源(この場合、交流電力を供給するインバータINV)とを接続する動力線バスバー87や、コイル本体部83における異なる相同士を接続する中性点バスバー88に電気的に接続される特定セグメント導体6も含まれる。
図1に示すように、特定セグメント導体6は、ステータコア80のスロットSに収容される特定収容部63と、ステータコア80に対して軸方向に延在する軸方向延在部64と、一般セグメント導体5の渡り部40よりも軸方向第1側L1であって軸方向延在部64よりも径方向外側R2において径方向Rに延在する径方向延在部65を有する。
【0026】
また、複数の特定セグメント導体6には、交流電源(ここではインバータINV)に接続される複数の動力線用導体61と、複数のコイル本体部83の中性点同士を接続するための複数の中性点用導体62とが含まれる。複数の動力線用導体61の径方向延在部65は、複数の中性点用導体62の径方向延在部65よりも軸方向第1側L1に配置されている。
【0027】
それぞれのセグメント導体4(一般セグメント導体5)は、上述したように、2つの収容部(第1端部側収容部41及び第2端部側収容部42)の間に、複数のスロットSを挟むように間隔を空けてスロットSに配置される。このとき、第1端部側収容部41と第2端部側収容部42とは、径方向Rにおける配置位置が異なることがある。つまり、第1端部側収容部41と第2端部側収容部42とは、異なる層に配置される場合がある(
図4参照)。径方向Rにおける同じ位置を周方向Cに仮想的に結んで形成される層をコイル84が周方向Cに延伸するレーンとすると、セグメント導体4は、2つの収容部のそれぞれが配置されるレーンを渡り部40において異ならせるレーンチェンジを行いつつ、ステータコア80に配置されていく(
図4、
図5等参照)。このため、周方向Cに隣接して配置されるセグメント導体4は、
図5等に示すように、渡り部40において一方のセグメント導体4が他方のセグメント導体4を乗り越えたり、潜り抜けたりする。
【0028】
渡り部40は、中央部がステータコア80から離間する方向に膨らんだ山形に形成されている。回転電機を小型化する場合、ステータコア80も小型化が必要であり、渡り部40においてセグメント導体4を曲げて山形を形成する際の曲げ半径を小さくしようとすることがある。しかし、上述したように、セグメント導体4が平角線で形成され、エッジワイズ曲げによってU字形状が形成される場合、例えば、導体の曲げ応力との関係による強度の問題や、絶縁皮膜への影響を考慮した絶縁性の確保の問題から、曲げ半径を小さくするには限界がある。
【0029】
また、ステータコア80を小型化するとスロットSの周方向Cの間隔も小さくなる。このため、渡り部40において一方のセグメント導体4が他方のセグメント導体4を乗り越えたり、潜ったりする際に、
図9及び
図10の比較例に示すように、セグメント導体4同士が干渉領域Fにおいて干渉するおそれがある。例えば、ステータコア80の軸方向端面(ここでは軸方向第1側端面81)から渡り部40の頂点までの高さがより高くなるようにセグメント導体4を形成し、潜り抜け易くすることで、このような干渉を抑制することは可能である。しかし、この場合には、ステータコア80の軸方向Lに突出するコイルエンド部(ここでは第1コイルエンド部85)の軸方向Lの長さが長くなり、ステータ8の小型化が妨げられる。
【0030】
そこで、本実施形態では、セグメント導体4(一般セグメント導体5)の形状を工夫することにより、セグメント導体4同士の干渉を回避しつつ、コイルエンド部(第1コイルエンド部85)の小型化を図ることができるステータ8を実現している。
【0031】
上述したように、本実施形態のステータ8は、周方向Cに並ぶように配置された複数のスロットSを有する円筒状のステータコア80と、ステータコア80に巻装され、互いに異なる位相の交流電流が流れる3相のコイル84とを備えている。ここで、交流電流の位相を当該位相の進み順に第1相、第2相、第3相(例えば、「U相、V相、W相」、「V相、W相、U相」、「W相、U相、V相」)として、第1相の交流電流が流れるコイル84を第1相コイル1とし、第2相の交流電流が流れるコイル84を第2相コイル2とし、第3相の交流電流が流れるコイル84を第3相コイル3とする。
【0032】
詳細は後述するが、
図6に示すように、第1相コイル1は、第1スロットS1に収容される第1収容部11と、第1スロットS1に対して周方向第2側C2に隣接するスロットSである第2スロットS2に収容される第2収容部12と、第2スロットS2との間に複数のスロットSを挟んで周方向第2側C2に離間して配置されたスロットSである第3スロットS3に収容される第3収容部13と、第3スロットS3に対して周方向第2側C2に隣接するスロットSである第4スロットS4に収容される第4収容部14と、第1収容部11と第4収容部14とをステータコア80に対して軸方向第1側L1で接続する第1渡り部15と、第2収容部12と第3収容部13とをステータコア80に対して軸方向第1側L1で接続する第2渡り部16とを備えている。コイル84の巻き方はこれに限定されないが、
図6に示す例では、コイル84は短節巻で巻装されている。ここでは、第3スロットS3が、第2スロットS2との間に3つのスロットSを挟んで配置されている。そして、第1渡り部15は、6スロットピッチ離れて配置された第1収容部11と第4収容部14とを接続し、第2渡り部16は、4スロットピッチ離れて配置された第2収容部12と第3収容部13とを接続している。
【0033】
尚、第1渡り部15と第2渡り部16とを総称する場合、第1相コイル渡り部10と称する。第1相コイル1は、第1の第1相コイル1aと第2の第1相コイル1bとを備えており、第1渡り部15は、第1の第1相コイル1aの第1相コイル渡り部10であり、第2渡り部16は、第2の第1相コイル1bの第1相コイル渡り部10である。第2渡り部16は、第1渡り部15よりも軸方向第2側L2に位置すると共に、軸方向視で第1渡り部15と重複するように配置されている。本実施形態では、第2渡り部16の全体が第1渡り部15と軸方向視で重複する形態を例示している。しかし、第2渡り部16の一部のみが第1渡り部15と軸方向視で重複する形態であってもよい。
【0034】
このように、第2渡り部16が、第1渡り部15よりも軸方向第2側L2であって軸方向視で第1渡り部15と重複する位置に配置されていることにより、第1渡り部15と第2渡り部16とが径方向Rに並ばず、第1コイルエンド部85の径方向寸法を小型化し易い。
【0035】
また、第2相コイル2におけるステータコア80に対して軸方向第1側L1に突出した部分を第2相コイル渡り部20とし、第3相コイル3におけるステータコア80に対して軸方向第1側L1に突出した部分を第3相コイル渡り部30とする。第1相コイル1と同様に、第2相コイル2も第1の第2相コイル2aと第2の第2相コイル2bとを備えており、第3相コイル3も第1の第3相コイル3aと第2の第3相コイル3bとを備えている。そして、第1の第2相コイル2a及び第2の第2相コイル2bのそれぞれが第2相コイル渡り部20を備え、第1の第3相コイル3a及び第2の第3相コイル3bのそれぞれが第3相コイル渡り部30を備えている。
【0036】
第1渡り部15は、周方向第1側C1の領域である第1周方向領域E1と、第1周方向領域E1に対して周方向第2側C2の領域である第2周方向領域E2と、第1周方向領域E1と第2周方向領域E2とを接続する領域であって径方向Rに屈曲形成された径方向屈曲部19を含む接続領域E3とを備えている。
【0037】
第1周方向領域E1は、第3相コイル渡り部30に対して軸方向第2側L2であって軸方向視で当該第3相コイル渡り部30と重複する第1区間K1と、第2相コイル渡り部20に対して軸方向第1側L1であって軸方向視で当該第2相コイル渡り部20と重複する第2区間K2とを備えている。尚、第1渡り部15が第2相コイル渡り部20に対して軸方向第1側L1であって軸方向視で当該第2相コイル渡り部20と重複する区間(K20)は、接続領域E3にも存在している。第2区間K2は、この区間(K20)の一部として設定されている。
【0038】
また、第2周方向領域E2は、第3相コイル渡り部30に対して軸方向第1側L1であって軸方向視で当該第3相コイル渡り部30と重複する第3区間K3と、第2相コイル渡り部20に対して軸方向第2側L2であって軸方向視で当該第2相コイル渡り部20と重複する第4区間K4とを備える。尚、第1渡り部15が第3相コイル渡り部30に対して軸方向第1側L1であって軸方向視で当該第3相コイル渡り部30と重複する区間(K30)は、接続領域E3にも存在している。第3区間K3は、この区間(K30)の一部として設定されている。
【0039】
第1周方向領域E1は、周方向第2側C2へ向かうに従って軸方向第1側L1へ向かうように全体として傾斜し、第2周方向領域E2は、周方向第2側C2へ向かうに従って軸方向第2側L2へ向かうように全体として傾斜している。ここで、周方向Cに対して、第1渡り部15の延在方向がなす角度を延在角度とする。
【0040】
図6に示すように、第1区間K1と第2区間K2との間には、第1渡り部15の延在角度が変化する第1屈曲部17が形成されている。第1屈曲部17は、セグメント導体4の短辺側を軸方向Lに曲げるエッジワイズ曲げにより形成されている。第2区間K2は、第1区間K1に対して延在角度が大きい。つまり、
図7に示すように、第1屈曲部17よりも周方向第2側C2における第1渡り部15の延在角度(第2区間K2における延在角度)である第2延在角度θ2は、第1屈曲部17よりも周方向第1側C1における第1渡り部15の延在角度(第1区間K1における延在角度)である第1延在角度θ1よりも大きい。
【0041】
また、
図6に示すように、第3区間K3と第4区間K4との間には、第1渡り部15の延在角度が変化する第2屈曲部18が形成されている。第2屈曲部18は、セグメント導体4の短辺側を軸方向Lに曲げるエッジワイズ曲げにより形成されている。第3区間K3は、第4区間K4に対して延在角度が大きい。つまり、
図7に示すように、第2屈曲部18よりも周方向第1側C1における第1渡り部15の延在角度(第3区間K3における延在角度)である第3延在角度θ3は、第2屈曲部18よりも周方向第2側C2における第1渡り部15の延在角度(第4区間K4における延在角度)である第4延在角度θ4よりも大きい。
【0042】
尚、本実施形態では、第1渡り部15の形状は、径方向視で対称であり、第1延在角度θ1と第4延在角度θ4とは同じ角度(θ10)であり、第2延在角度θ2と第3延在角度θ3とは同じ角度(θ20)である。即ち、第1屈曲部17及び第2屈曲部18に対して軸方向第1側L1における第1渡り部15の延在角度である軸方向第1側延在角度θ20は、第1屈曲部17及び第2屈曲部18に対して軸方向第2側L2における第1渡り部15の延在角度である軸方向第2側延在角度θ10よりも大きい。
【0043】
尚、第1渡り部15の形状は、必ずしも径方向視で対称である必要はない。即ち、延在角度については、「θ2>θ1」、「θ3>θ4」の関係が満足できていればよく、第1延在角度θ1と第4延在角度θ4とが同じ角度(軸方向第2側延在角度θ10)でなくてもよい。同様に、第2延在角度θ2と第3延在角度θ3とが同じ角度(軸方向第1側延在角度θ20)でなくてもよい。
【0044】
第2区間K2の傾斜角度(延在角度)である第2延在角度θ2を第1区間K1の傾斜角度である第1延在角度θ1よりも大きくしたことにより、第1区間K1の軸方向Lにおける位置が、軸方向第2側L2に引退する。その結果、第1区間K1に対して軸方向第1側L1に配置される第3相コイル渡り部30と、第1区間K1(第1渡り部15)との間に空間を確保し易くなり、第1区間K1と当該第1区間K1に対して軸方向第1側L1に配置される第3相コイル渡り部30との干渉を回避し易くなる。
【0045】
また、第2区間K2の傾斜角度(延在角度)である第2延在角度θ2を第1区間K1の傾斜角度である第1延在角度θ1よりも大きくしたことにより、第2区間K2の軸方向Lにおける位置が、軸方向第1側L1に移動するため、第2区間K2よりも軸方向第2側L2に配置される第2渡り部16も軸方向第1側L1に移動させることができる。その結果、第2区間K2及び第2区間K2と軸方向視で重複する第2渡り部16の領域(区間)に対して軸方向第2側L2に配置される第2相コイル渡り部20と、第2区間K2及び第2区間K2と軸方向視で重複する第2渡り部16の領域(区間)との間の空間を確保し易くなる。従って、第2区間K2と当該第2区間K2に対して軸方向第2側L2に配置される第2相コイル渡り部20との干渉を回避し易くなる。
【0046】
また、第3区間K3の傾斜角度(延在角度)である第3延在角度θ3を第4区間K4の傾斜角度である第4延在角度θ4よりも大きくしたことにより、第3区間K3の軸方向Lにおける位置が、軸方向第1側L1に移動するため、第3区間K3よりも軸方向第2側L2に配置される第2渡り部16も軸方向第1側L1に移動させることができる。その結果、第3区間K3及び第3区間K3と軸方向視で重複する第2渡り部16の領域(区間)に対して軸方向第2側L2に配置される第3相コイル渡り部30と、第3区間K3及び第3区間K3と軸方向視で重複する第2渡り部16の領域(区間)との間の空間を確保し易くなる。従って、第3区間K3と当該第3区間K3に対して軸方向第2側L2に配置される第3相コイル渡り部30との干渉を回避し易くなる。
【0047】
また、第3区間K3の傾斜角度(延在角度)である第3延在角度θ3を第4区間K4の傾斜角度である第4延在角度θ4よりも大きくしたことにより、第4区間K4の軸方向Lにおける位置が、軸方向第2側L2に引退する。その結果、第4区間K4に対して軸方向第1側L1に配置される第2相コイル渡り部20と、第4区間K4(第1渡り部15)との間に空間を確保し易くなり、第4区間K4と当該第4区間K4に対して軸方向第1側L1に配置される第2相コイル渡り部20との干渉を回避し易くなる。
【0048】
即ち、本実施形態によれば、第1相コイル1と第2相コイル2との干渉、第1相コイル1と第3相コイル3との干渉を回避しつつ、限られた周方向Cのスペースに第1渡り部15及び第2渡り部16を配置することができる。
【0049】
尚、
図9に例示する比較例においては、渡り部40における傾斜角度(延在角度)が一定で変化していない。軸方向第2側延在角度θ10(第1延在角度θ1、第4延在角度θ4)は、
図9に例示する比較例における渡り部40の延在角度(θ9)よりも小さく、軸方向第1側延在角度θ20(第2延在角度θ2、第3延在角度θ3)は、比較例における渡り部40の延在角度(θ9)よりも大きい。従って、比較例では、上述したように、渡り部40が、他の渡り部40を乗り越える場合も、潜り抜ける場合も、十分な空間を確保できずに、干渉領域Fにおいて渡り部40同士が干渉する場合がある。しかし、本実施形態では、比較例に対して、2本のセグメント導体4が交差する際に、セグメント導体4同士の干渉を回避しつつ、渡り部40の軸方向Lの長さを抑制することができる。
【0050】
さらに、第1区間K1、第4区間K4の傾斜角度を小さくしていることにより、第1区間K1においては、周方向第2側C2に向かうに従って軸方向第1側L1に向かう軸方向Lの長さを短く抑え易く、第4区間K4においては、周方向第1側C1に向かうに従って軸方向第1側L1へ向かう軸方向Lの長さを短く抑え易い。即ち、渡り部40の全体として、軸方向第1側L1へ向かう長さ、換言すればコイル84の軸方向Lの高さを低く抑えることができる。従って、第1コイルエンド部85の軸方向Lの寸法を小型化し易い。
【0051】
尚、上記においては、第1区間K1、第2区間K2、第3区間K3、第4区間K4等について、一部が軸方向視で重複する形態を例示した。しかし、これらの区間の定義における重複は、一部重複に限らず、全てが重複する場合も含む。
【0052】
また、
図6(区間は示していないが立体視では
図5参照)に示すように、第1区間K1は、第2相コイル渡り部20に対して径方向内側R1であって径方向視で当該第2相コイル渡り部20と重複するように配置されている。また、第2区間K2は、第3相コイル渡り部30に対して径方向内側R1であって径方向視で当該第3相コイル渡り部30と重複するように配置されている。また、第3区間K3は、第2相コイル渡り部20に対して径方向外側R2であって径方向視で当該第2相コイル渡り部20と重複するように配置されている。また、第4区間K4は、第3相コイル渡り部30に対して径方向外側R2であって径方向視で当該第3相コイル渡り部30と重複するように配置されている。尚、ここでは、第1相コイル1と同じ層(ここでは、径方向Rに隣接する2つの層)に配置される第2相コイル2及び第3相コイル3に着目している。
【0053】
このように、本実施形態によれば、第1相コイル1の第1渡り部15及び第2渡り部16と、第2相コイル渡り部20と、第3相コイル渡り部30とをそれぞれ限られたスペースに適切に配置することができる。従って、ステータ8の第1コイルエンド部85の小型化を図り易い。
【0054】
また、
図6に示すように、接続領域E3は、全体として周方向Cに沿うように配置されており、径方向屈曲部19は、径方向視で第2相コイル渡り部20及び第3相コイル渡り部30の双方と重複しない位置に配置されている。
【0055】
このように構成されていることで、径方向屈曲部19が径方向視で第2相コイル渡り部20及び第3相コイル渡り部30の少なくとも一方と重複して配置される場合に比べて、第1コイルエンド部85の径方向Rの寸法の小型化を図り易い。また、本実施形態では、接続領域E3に形成される径方向屈曲部19は径方向Rのみの曲げによって形成されており、セグメント導体4は軸方向Lへは曲げられていない。即ち、接続領域E3においてセグメント導体4の曲げ方向が複合しないように(エッジワイズ曲げとフラットワイズ曲げとを複合しないように)屈曲部を形成することができるので、セグメント導体4の表面に施されている絶縁被膜への機械的負荷が大きくなりにくく、絶縁性を確保し易い。
【0056】
上述したように、コイル84を構成する導体は、断面が矩形状であって表面に絶縁被膜が形成されている被覆導体線である。平角線は、丸線に比べて占積率を高くし易く、その分、ステータ8を小型化し易い。また、絶縁被膜を有することによって、絶縁性を確保しながら高い占積率でステータコア80にコイル84を巻装し易い。また、平角線は、形成された形状の維持が容易であるため、例えば、第1相コイル1の第1渡り部15及び第2渡り部16と、第2相コイル渡り部20と、第3相コイル渡り部30とを、定められた形状に形成し易く、これらを限られたスペースに整列させて適切に配置し易い。
【0057】
また、上述したように、コイル84を構成する導体は、第1渡り部15及び第2渡り部16において、断面の軸方向Lの寸法(長辺長さW1)が径方向Rの寸法(短辺長さW2)よりも大きい長方形状である。従って、第1屈曲部17及び第2屈曲部18は、軸方向Lに屈曲された軸方向屈曲部である。
【0058】
第1屈曲部17及び第2屈曲部18が、径方向Rに屈曲していないことより、径方向にステータのコイルエンド部が大きくなることが抑制される。また、第1屈曲部及び第2屈曲部が軸方向に屈曲することにより、第1渡り部の軸方向長さが短くなる。従って、ステータのコイルエンド部の小型化を図り易い。
【0059】
尚、上記においては、第1相コイル1を代表して、第2相コイル2及び第3相コイル3との関係より、セグメント導体4(一般セグメント導体5)を用いて構成されるコイル84、並びに当該コイル84を備えたステータ8について説明した。第1相コイル1、第2相コイル2、第3相コイル3の構造は同様であり、第2相コイル2、第3相コイル3についても、第1相コイル1を代表して上述した形態と同様である。
【符号の説明】
【0060】
1:第1相コイル、2:第2相コイル、3:第3相コイル、8:ステータ、11:第1収容部、12:第2収容部、13:第3収容部、14:第4収容部、15:第1渡り部、16:第2渡り部、17:第1屈曲部、18:第2屈曲部、19:径方向屈曲部、20:第2相コイル渡り部、30:第3相コイル渡り部、40:渡り部、49:屈曲部、80:ステータコア、84:コイル、C:周方向、C1:周方向第1側、C2:周方向第2側、E1:第1周方向領域、E2:第2周方向領域、E3:接続領域、K1:第1区間、K2:第2区間、K3:第3区間、K4:第4区間、L:軸方向、L1:軸方向第1側、L2:軸方向第2側、R:径方向、R1:径方向内側(径方向の内側)、R2:径方向外側(径方向の外側)、S:スロット、S1:第1スロット、S2:第2スロット、S3:第3スロット、S4:第4スロット、X:軸心、θ1:第1延在角度(第1区間の延在角度)、θ2:第2延在角度(第2区間の延在角度)、θ3:第3延在角度(第3区間の延在角度)、θ4:第4延在角度(第4区間の延在角度)