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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160189
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】ステータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
H02K3/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070351
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】橋本 伸吾
(72)【発明者】
【氏名】菅原 純一
(72)【発明者】
【氏名】三品 徳久
【テーマコード(参考)】
5H603
【Fターム(参考)】
5H603AA09
5H603BB01
5H603BB02
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CB03
5H603CC05
5H603CC07
5H603CC17
5H603CD12
5H603CD22
5H603CE02
(57)【要約】
【課題】セグメント導体をステータコアに組み付ける際に、コイルの本体部を構成するセグメント導体と干渉しないように、特定のセグメント導体をステータコアに取り付けることができるステータを実現する。
【解決手段】複数のセグメント導体4には、互いに連続的に接合されて複数のコイル本体部83を構成する複数の一般セグメント導体5と、複数のコイル本体部83のそれぞれの端部に接合される特定セグメント導体6とが含まれる。複数の特定セグメント導体6の少なくとも一部の軸方向延在部64が、軸方向Lに沿う軸方向視で渡り部40と重複せず、且つ、径方向Rの異なる位置に配置された複数の渡り部40同士の径方向Rの間に挟まれる部分を有するように配置されている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に並ぶように配置された複数のスロットを有する円筒状のステータコアと、前記ステータコアに巻装されたコイルと、を備えた回転電機用のステータであって、
前記ステータコアの軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸心に直交する方向を径方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側として、
前記コイルは、複数のセグメント導体を接合して構成され、
前記ステータコアに対して前記軸方向第2側に、複数の前記セグメント導体同士を接合する複数の接合部が設けられ、
複数の前記セグメント導体には、互いに連続的に接合されて複数のコイル本体部を構成する複数の一般セグメント導体と、複数の前記コイル本体部のそれぞれの端部に接合される特定セグメント導体とが含まれ、
前記一般セグメント導体は、第1の前記スロットである第1スロットに収容される第1収容部と、前記第1スロットに対して前記周方向に離間して配置された前記スロットである第2スロットに収容される第2収容部と、前記第1収容部と前記第2収容部とを前記ステータコアに対して前記軸方向第1側において接続する渡り部と、を備え、
前記特定セグメント導体は、前記スロットに収容される特定収容部と、前記ステータコアに対して前記軸方向第1側において前記軸方向に沿って延在する軸方向延在部と、を備え、
複数の前記特定セグメント導体の少なくとも一部の前記軸方向延在部が、前記軸方向に沿う軸方向視で前記渡り部と重複せず、且つ、前記径方向の異なる位置に配置された複数の前記渡り部同士の前記径方向の間に挟まれる部分を有するように配置されている、ステータ。
【請求項2】
前記特定セグメント導体は、前記一般セグメント導体の前記渡り部よりも前記軸方向第1側であって前記軸方向延在部よりも前記径方向の外側において前記径方向に延在する径方向延在部を備えている、請求項1に記載のステータ。
【請求項3】
複数の前記特定セグメント導体には、交流電源に接続される複数の動力線用導体と、複数の前記コイル本体部の中性点同士を接続するための複数の中性点用導体とが含まれ、
複数の前記動力線用導体の前記径方向延在部は、複数の前記中性点用導体の前記径方向延在部よりも前記軸方向第1側に配置されている、請求項2に記載のステータ。
【請求項4】
前記軸方向延在部よりも前記径方向の内側に配置される前記渡り部が、前記軸方向視で1本のみである、請求項1から3の何れか一項に記載のステータ。
【請求項5】
前記径方向の最も内側に配置される複数の前記渡り部の内、前記特定セグメント導体と前記径方向に沿う径方向視で重複する部分を有する1つの前記渡り部は、前記周方向に延在する部分の全域に前記径方向に屈曲する箇所がないように形成され、他の前記渡り部は、前記周方向に延在する部分に前記径方向に屈曲する屈曲部を有する、請求項4に記載のステータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周方向に並ぶように配置された複数のスロットを有する円筒状のステータコアと、当該ステータコアに巻装されたコイルとを備えた回転電機用のステータに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2018-11491号公報には、断面が矩形状の平角線からなるセグメント導体(40)を用いて形成されたコイル(30)を備えたステータ(13)が開示されている(背景技術において括弧内に示す符号は当該文献のもの)。セグメント導体(40)は、略U字状に形成され、U字の側部に対応する部分であって、ステータコア(20)の軸方向沿って形成された溝状のスロット(21)に軸方向の一方側から挿入されて収容される2つの収容部(直線部(41))と、U字の底部に対応する部分であって、2つの収容部を繋ぐ渡り部(ターン部(42))とを有する。セグメント導体(40)は、渡り部がステータコア(20)の軸方向一方側においてステータコア(20)から突出した状態でステータコアに配置される。また、ステータコア(20)の軸方向他方側には、U字の側方の端部に対応する部分であって、収容部から延在するリード部(32,33)がステータコア(12)から突出する。このリード部(32,33)が他のセグメント導体(40)のリード部(32,33)と溶接等に接合されることにより、コイル(ステータ巻き線(20))のコイル本体部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-11491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コイルには、コイル本体部を形成する一般のセグメント導体の他、コイル本体部と電源とを接続する動力線として機能するセグメント導体などの特定のセグメント導体も含まれる。特定のセグメント導体は、ステータコアのスロットに収容される収容部と、ステータコアに対して軸方向に延在する軸方向延在部とを有する。セグメント導体が、ステータコアの径方向外側から径方向内側に向かって収容されていく場合、特定のセグメント導体は、径方向内側に配置されることが多い。コイル本体部を構成するセグメント導体の内、最も径方向内側に配置されるセグメント導体の渡り部が軸方向視でスロットの最も径方向内側の部分と重複している場合、当該スロットにおける最も径方向内側の部分には、当該渡り部が配置された後で、特定のセグメント導体を軸方向に沿ってスロットに挿入することが困難となる。一方、特定のセグメント導体をスロットに挿入した後で、渡り部を有するセグメント導体をステータコアに取り付けると組み付け作業の難易度が高くなり、作業性の低下に繋がるおそれがある。また、予め、当該渡り部を有するセグメント導体と、特定のセグメント導体とを組み合わせた状態で、双方のセグメント導体を軸方向に沿ってスロットに挿入することも考えられるが、この場合も、組み付け作業の難易度が高くなり、作業性の低下に繋がるおそれがある。つまり、渡り部との干渉によって、特定のセグメント導体を容易にスロットに収容することができないおそれがある。
【0005】
上記背景に鑑みて、セグメント導体をステータコアに組み付ける際に、コイルの本体部を構成するセグメント導体と干渉しないように、特定のセグメント導体をステータコアに取り付けることができるステータを実現することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記に鑑みたステータは、周方向に並ぶように配置された複数のスロットを有する円筒状のステータコアと、前記ステータコアに巻装されたコイルと、を備えた回転電機用のステータであって、前記ステータコアの軸心に沿う方向を軸方向とし、前記軸心に直交する方向を径方向とし、前記軸方向の一方側を軸方向第1側とし、前記軸方向の他方側を軸方向第2側として、前記コイルは、複数のセグメント導体を接合して構成され、前記ステータコアに対して前記軸方向第2側に、複数の前記セグメント導体同士を接合する複数の接合部が設けられ、複数の前記セグメント導体には、互いに連続的に接合されて複数のコイル本体部を構成する複数の一般セグメント導体と、複数の前記コイル本体部のそれぞれの端部に接合される特定セグメント導体とが含まれ、前記一般セグメント導体は、第1の前記スロットである第1スロットに収容される第1収容部と、前記第1スロットに対して前記周方向に離間して配置された前記スロットである第2スロットに収容される第2収容部と、前記第1収容部と前記第2収容部とを前記ステータコアに対して前記軸方向第1側において接続する渡り部と、を備え、前記特定セグメント導体は、前記スロットに収容される特定収容部と、前記ステータコアに対して前記軸方向第1側において前記軸方向に沿って延在する軸方向延在部と、を備え、複数の前記特定セグメント導体の少なくとも一部の前記軸方向延在部が、前記軸方向に沿う軸方向視で前記渡り部と重複せず、且つ、前記径方向の異なる位置に配置された複数の前記渡り部同士の前記径方向の間に挟まれる部分を有するように配置されている。
【0007】
複数のセグメント導体は、軸方向第1側からステータコアのスロットに挿入されることでステータコアに組付けられる。本構成によれば、この場合において、複数のセグメント導体を、スロット内において径方向の外側に配置されるものから順に組み付ける場合であっても、特定セグメント導体が一般セグメント導体の組み付けの邪魔にならず、一般セグメント導体が特定セグメント導体の組み付けの邪魔にならないようにし易い。即ち、本構成によれば、セグメント導体をステータコアに組み付ける際に、コイルの本体部を構成するセグメント導体と干渉しないように、特定のセグメント導体をステータコアに取り付けることができるステータを実現することができる。
【0008】
回転電機のステータのさらなる特徴と利点は、図面を参照して説明する例示的且つ非限定的な実施形態についての以下の記載から明確となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ステータの外観を示す斜視図
図2】コイルに対する電気的接続の一例を示す模式的回路ブロック図
図3】セグメント導体の基本構成を模式的に示す図
図4】径方向内側から見たステータの部分斜視図
図5】軸方向第1側から見たステータの平面図
図6】ステータの外観を示す部分側面図
図7】径方向内側から見たステータの拡大斜視図
図8】比較例のステータの径方向内側から見た拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、回転電機のステータの実施形態を図面に基づいて説明する。図1の斜視図は、ステータコア80にコイル84(ステータコイル)が巻装されたステータ8を示している。以下の説明では、「軸方向L」、「径方向R」、及び「周方向C」は、コイル84が巻装されるステータコア80の軸心Xを基準として定義している。また、図1に示すように、軸方向Lの一方側を軸方向第1側L1とし、軸方向Lの他方側(軸方向第1側L1とは反対側)を軸方向第2側L2とする。また、周方向Cの一方側を周方向第1側C1とし、周方向Cの他方側(周方向第1側C1とは反対側)を周方向第2側C2とする。尚、以下の説明において、コイル84、及びコイル84を形成するセグメント導体4についての各方向は、コイル84がステータコア80に巻装された状態での方向である。
【0011】
図2に示すように、回転電機(ステータ8)に交流電力を供給する交流電源として、インバータINVが備えられている。インバータINVは、直流電源91とコイル84との間に接続され、直流電力と複数相(ここでは3相)の交流電力との間で電力を変換する。インバータINVは、複数のスイッチング素子を有して構成されている。回転電機は、電動機及び発電機の双方として機能することができ、発電機として機能する場合には、発電された交流電力がインバータINVによって直流電力に変換され、直流電源91に供給される。直流電源91は、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池(バッテリ)や、電気二重層キャパシタなどにより構成されている。回転電機が、車両の駆動力源の場合、直流電源91は、大電圧大容量の電源であり、定格の電源電圧は、例えば200~400[V]である。インバータINVの直流側には、インバータINVの直流側の電圧(直流リンク電圧)を平滑する直流リンクコンデンサ92(平滑コンデンサ)が備えられている。直流リンクコンデンサ92は、回転電機の消費電力の変動に応じて変動する直流電圧(直流リンク電圧)を安定化させる。
【0012】
図2に示すように、本実施形態では、コイル84は、3相(U相、V相、W相)の各相が中性点で接続されたY字結線型である。詳細は後述するが、3相各相のコイル(ここでは、第1相コイル1、第2相コイル2、第3相コイル3)は、中性点バスバー88によって互いに電気的に接続されている。また、3相の各相のコイルは、それぞれインバータINVの3相の交流出力と、動力線バスバー87によって電気的に接続されている。尚、第1相コイル1は、U相、V相、W相の何れであってもよく、第2相コイル2、第3相コイル3についても同様に、第1相コイル1に応じて、U相、V相、W相の何れにも対応する。
【0013】
図1に示すように、コイル84は、軸方向Lに延びるスロットS及びティースTが周方向Cに複数形成されているステータコア80に巻装される。ステータコア80は、軸方向L視で円環状に形成されるヨークYと、ヨークYから径方向内側R1(本実施形態では不図示のロータが配置される側)に延びる複数のティースTとを備えている。そして、周方向Cに隣接する2つのティースTの間に、径方向外側R2に底部を有する溝状のスロットSが形成されている。本実施形態では、スロットSはセミオープンスロットであり、スロットSの径方向内側R1の開口部は、スロットSにおけるコイル84が配置される領域よりも、周方向Cの幅が小さく形成されている。ここでは、スロットSの開口部の周方向Cの幅は、後述する長辺長さW1よりも小さく形成されている。ステータコア80は、磁性材料を用いて形成される。例えば、ステータコア80は、複数枚の磁性体板(例えば、ケイ素鋼板等の電磁鋼板)を積層して形成される。或いは、ステータコア80は、磁性材料の粉体を加圧成形してなる圧粉材を主な構成要素として形成される。
【0014】
コイル84は、スロットS内にそれぞれ配置される複数本の収容部(後述する第1端部側収容部41、第2端部側収容部42、特定収容部63)を備えている。本実施形態では、収容部は、軸方向Lに平行に延びるようにスロットS内に配置されている。コイル84は、1本の収容部の径方向Rの配置領域を1層として、図1及び図5等に示すように、1つのスロットSの内部に、複数本の収容部が層に分かれて配置される。本実施形態では、コイル84は6層巻構造を有しており、1つのスロットSの内部には、複数本の収容部が6つの層に分かれ、一列に並んで径方向Rに沿って配置される。よって、本実施形態では、1つのスロットSの内部には、最大で6本の収容部が径方向Rに並べて配置される。
【0015】
コイル84は、図3に示すようなセグメント導体4を複数本接合して構成される。セグメント導体4のそれぞれは、当該セグメント導体4の延在方向の両側の端部にリード部(第1のリード部43、第2のリード部44)を有している。コイル84は、複数のセグメント導体4のリード部同士を順次接合することにより形成される。
【0016】
セグメント導体4のそれぞれは、1本の連続する線状導体を用いて構成される。ここで、「連続」とは、継ぎ目なく延在方向に一体に形成されていることを意味する。線状導体は、銅やアルミニウム等の導電性を有する材料により構成される。線状導体の表面は、異なる部材間の電気的接続箇所を除いて、樹脂等の電気的絶縁性を有する材料(例えばポリアミドイミド等により構成されたエナメル樹脂)からなる絶縁皮膜により被覆されている。
【0017】
図3に示すように、本実施形態では、セグメント導体4を構成する線状導体として、延在方向に直交する断面の形状が矩形状(本実施形態では長方形状)の線状導体(平角線)を用いている。本実施形態では、セグメント導体4の断面形状は、長辺長さW1、短辺長さW2の長方形状である。尚、断面の形状は、正方形状であることを妨げるものではなく、また、角部が円弧状に面取り(R面取り)又は直線状に面取り(C面取り)された矩形、内角の大きさと90度との差の絶対値が予め定められた角度(例えば、5度や10度等)未満であるものも含む。
【0018】
セグメント導体4には、上述したように互いに連続的に接合されてコイル84の中核となる複数のコイル本体部83を形成する一般セグメント導体5と、コイル本体部のそれぞれの端部に接合される特定セグメント導体6とが含まれる。本実施形態では、特定セグメント導体6は、インバータINVからの交流電力を供給する動力線バスバー87とコイル本体部83とをそれぞれ接続したり、コイル84の中性点を形成する中性点バスバー88と複数のコイル本体部83のそれぞれの中性点とを接続したりするセグメント導体4である。
【0019】
図3は、セグメント導体4の代表として一般セグメント導体5を模式的に示している。一般セグメント導体5は、略U字状の形状を有している。図3に示すように、断面が長方形状の平角線の長辺側側面の側が略U字形状の正面側であり、平角線の短辺側側面の側が側面である。一般セグメント導体5は、後述する径方向Rへの屈曲部(径方向屈曲部49)を除き、短辺の側を曲げるエッジワイズ曲げによってU字形状が形成されている。
【0020】
セグメント導体4のそれぞれは、当該セグメント導体4の延在方向の両側の端部にそれぞれ第1のリード部43及び第2のリード部44を有している。略U字形状の内、第1のリード部43の側において直線的に延びる部分には、第1のリード部43及び第1端部側収容部41(第1収容部)が連続して直線的に形成され、第2のリード部44の側において直線的に延びる部分には、第2のリード部44及び第2端部側収容部42(第2収容部)が連続して直線的に形成されている。略U字形状の底部には、第1端部側収容部41と第2端部側収容部42とを結ぶように、渡り部40が形成されている。上述した径方向屈曲部49は、渡り部40の中央部に形成されている。この径方向屈曲部49は、長辺の側を曲げるフラットワイズ曲げによって形成されている。
【0021】
第1端部側収容部41及び第2端部側収容部42は、ステータコア80のスロットSに収容される部分である。また、第1端部側収容部41と第2端部側収容部42との周方向Cにおける間隔は、周方向Cに隣接するスロットSの間隔のN倍(Nは自然数)である。尚、上述したように、セグメント導体4は、1本の収容部(第1端部側収容部41、第2端部側収容部42等)の径方向Rの配置領域を1層として、1つのスロットSの内部に、複数本の収容部が6層に分かれて配置されている。つまり、1つのスロットSの内部には、複数本の収容部が一列に並んで径方向Rに沿って配置される。従って、径方向内側R1と径方向外側R2とでは、周方向Cの間隔が異なる。このため、径方向外側R2に配置されるセグメント導体4の第1端部側収容部41と第2端部側収容部42との周方向Cにおける間隔は、径方向内側R1に配置されるセグメント導体4の第1端部側収容部41と第2端部側収容部42との周方向Cにおける間隔に比べて広い。
【0022】
セグメント導体4は、ステータコア80に対して軸方向第1側L1から軸方向第2側L2に向かって、第1のリード部43及び第2のリード部44の側からスロットSに軸方向Lに沿って挿入される。渡り部40は、セグメント導体4の第1端部側収容部41及び第2端部側収容部42がスロットS内に収容された状態で、ステータコア80の軸方向第1側L1に突き出す部分である。また、第1のリード部43及び第2のリード部44は、セグメント導体4の第1端部側収容部41及び第2端部側収容部42がスロットS内に収容された状態で、ステータコア80の軸方向第2側L2に突き出す部分である。突き出した第1のリード部43及び第2のリード部44は、図3に二点鎖線で示すように周方向Cに折り曲げられ、他のセグメント導体4のリード部と溶接等によって接合される。渡り部40に対して、これら第1のリード部43及び第2のリード部44は、接合部45に相当する。
【0023】
このように、ステータコア80の軸方向第1側L1及び軸方向第2側L2には、コイル84が突き出した部分、いわゆるコイルエンド部が形成される。両者を区別する場合、軸方向第1側L1において渡り部40によって形成されたコイルエンド部を第1コイルエンド部85と称し、軸方向第2側L2において接合部45によって形成されたコイルエンド部を第2コイルエンド部86と称する。ステータコア80の軸方向第1側端面81から軸方向第1側L1に渡り部40が最も突出した部分までの長さが、第1コイルエンド部85の軸方向Lの長さに相当する。また、ステータコア80の軸方向第2側端面82から軸方向第2側L2に接合部45が最も突出した部分までの長さが、第2コイルエンド部86の軸方向Lの長さに相当する。
【0024】
コイル84には、コイル本体部83を形成する一般セグメント導体5の他、コイル本体部83と電源(この場合、交流電力を供給するインバータINV)とを接続する動力線バスバー87や、コイル本体部83における異なる相同士を接続する中性点バスバー88に電気的に接続される特定セグメント導体6も含まれる。図1、及び図4から図7等に示すように、特定セグメント導体6は、ステータコア80のスロットSに収容される特定収容部63と、ステータコア80に対して軸方向第1側L1において軸方向Lに延在する軸方向延在部64とを有する。
【0025】
また、本実施形態では、特定セグメント導体6は、一般セグメント導体5の渡り部40(一般セグメント渡り部55)よりも軸方向第1側L1であって軸方向延在部64よりも径方向外側R2において径方向Rに延在する径方向延在部65を備えている。径方向延在部65を備えていることで、動力線バスバー87や、中性点バスバー88と特定セグメント導体6とを溶接等によって接合し易い。当然ながら、動力線バスバー87や、中性点バスバー88と特定セグメント導体6とを適切に接合可能であれば、特定セグメント導体6は、径方向延在部65を備えることなく形成されていてもよい。
【0026】
尚、後述するように、軸方向延在部64は、一般セグメント導体5の渡り部40(一般セグメント渡り部55)と軸方向視で重複しないようにステータコア80に配置されている。これに対して、径方向延在部65は、ステータコア80に配置されている状態で、一般セグメント渡り部55と軸方向視で重複する。
【0027】
また、複数の特定セグメント導体6には、交流電源(ここではインバータINV)に接続される複数の動力線用導体61と、複数のコイル本体部83の中性点同士を接続するための複数の中性点用導体62とが含まれる。そして、図1及び図6等に示すように、複数の動力線用導体61の径方向延在部65は、複数の中性点用導体62の径方向延在部65よりも軸方向第1側L1に配置されている。
【0028】
動力線用導体61と中性点用導体62とは、電気的に接続される対象が異なる。また、径方向延在部65が設けられる場合には、径方向延在部65が、交流電源(インバータINV)や中性点を繋ぐ部材に接続される。このように動力線用導体61と中性点用導体62との径方向延在部65が軸方向Lにおける異なる位置に配置されていることで、動力線用導体61及び中性点用導体62を適切に接続対象に接続することができる。中性点はコイル本体部83同士を結ぶことで実現され、交流電源はコイル本体部83とは別に配置されている。従って、複数の動力線用導体61の径方向延在部65が、複数の中性点用導体62の径方向延在部65よりも軸方向第1側L1に配置されていることで、複数の中性点用導体62同士を周方向Cに接続する導体を配置すると共に、複数の動力線用導体61のそれぞれを交流電源に接続する構成を実現し易い。
【0029】
上記の構成によれば、例えば、動力線バスバー87に対して軸方向第2側L2において、各相のコイル84を中性点バスバー88に接合することができる。インバータINVは、ステータ8とは別の場所に配置されているから、中性点バスバー88とコイル84との接合箇所を、動力線バスバー87とコイル84との接合箇所よりもステータ8の近くにすることで、バスバーも効率的に配置することができる。しかし、例えば、インバータINVは、ステータコア80と、軸方向Lの配置位置が重複して配置される場合もある。この場合には、例えばステータコア80の軸方向第1側端面81に近い位置に動力線用導体61の径方向延在部65が配置されている方が好ましい可能性もある。従って、複数の動力線用導体61の径方向延在部65が、複数の中性点用導体62の径方向延在部65よりも軸方向第1側L1に配置されている形態に限らず、複数の動力線用導体61の径方向延在部65が、複数の中性点用導体62の径方向延在部65よりも軸方向第2側L2に配置されている形態であってもよい。また、複数の動力線用導体61の径方向延在部65と、複数の中性点用導体62の径方向延在部65とが、軸方向Lにおける同じ位置に配置されている形態であってもよい。
【0030】
また、本実施形態では、図1に示すように、本実施形態では、周方向Cに沿って、動力線用導体61が並ぶ途中に、中性点用導体62が配置されている。即ち、周方向第1側C1から周方向第2側C2に向かって、中性点用導体62、中性点用導体62、動力線用導体61、中性点用導体62、動力線用導体61、動力線用導体61の順に配置されている形態を例示している。しかし、中性点用導体62及び動力線用導体61が周方向Cにそれぞれ連続して並んでいる形態であってもよい。
【0031】
ところで、セグメント導体4が、ステータコア80の径方向外側R2から径方向内側R1に向かって収容されていく場合、特定セグメント導体6は、径方向内側R1に配置されることが多い。例えば、図8に示す比較例のステータ8Bのように、コイル本体部83を構成するセグメント導体4(一般セグメント導体5)の内、最も径方向内側R1に配置されるセグメント導体4の渡り部40が軸方向視で、特定セグメント導体6の特定収容部63が配置されるスロットSの径方向Rの領域と重複している場合、当該スロットSにおける当該部分には、当該渡り部40が配置された後で、特定セグメント導体6を軸方向Lに沿ってスロットSに挿入することが困難である。
【0032】
例えば、特定セグメント導体6をスロットSに挿入した後で、渡り部40を有する一般セグメント導体5をステータコア80に取り付けるとすれば、組み付け作業の難易度が高くなり、作業性の低下に繋がるおそれがある。特に、図8に示すように、軸方向延在部64の軸方向第1側L1の端部から、径方向外側R2に向かって径方向延在部65が形成されているような場合には、特定セグメント導体6をスロットSに挿入した後で、一般セグメント導体5をステータコア80に取り付ける作業の難易度が高い。
【0033】
また、予め、当該渡り部40を有する一般セグメント導体5と、特定セグメント導体6とを組み合わせた状態で、双方のセグメント導体4を軸方向Lに沿ってスロットSに挿入することも考えられるが、この場合も、組み付け作業の難易度が高くなり、作業性の低下に繋がるおそれがある。つまり、図8に示す比較例のステータ8Bのように、コイル本体部83を構成するセグメント導体4(一般セグメント導体5)の内、最も径方向内側R1に配置されるセグメント導体4の渡り部40が軸方向視で、特定セグメント導体6の特定収容部63が配置されるスロットSの径方向Rの領域と重複している場合、渡り部40と特定セグメント導体6との干渉によって、セグメント導体4を容易にスロットSに収容することができない。
【0034】
これに対して、本実施形態のステータ8は、セグメント導体4をステータコア80に組み付ける際に、コイル本体部83を構成するセグメント導体4(一般セグメント導体5)と干渉しないように、特定セグメント導体6をステータコア80に取り付けることができるように構成されている。
【0035】
上述したように、本実施形態のステータ8は、周方向Cに並ぶように配置された複数のスロットSを有する円筒状のステータコア80と、このステータコア80に巻装されたコイル84とを備えている。コイル84は、複数のセグメント導体4を接合して構成され、ステータコア80に対して軸方向第2側L2に、複数のセグメント導体4同士を接合する複数の接合部45(第1のリード部43及び第2のリード部44)が設けられている。複数のセグメント導体4には、互いに連続的に接合されて複数のコイル本体部83(それぞれ第1相コイル1のコイル本体部83、第2相コイル2のコイル本体部83、第3相コイル3のコイル本体部83)を構成する複数の一般セグメント導体5と、複数のコイル本体部83のそれぞれの端部に接合される特定セグメント導体6とが含まれる。
【0036】
図1図4図7等に示すように、一般セグメント導体5は、第1スロットS1に収容される第1収容部51と、第1スロットS1に対して周方向Cに離間して配置されたスロットSである第2スロットS2に収容される第2収容部52と、第1収容部51と第2収容部52とをステータコア80に対して軸方向第1側L1において接続する一般セグメント渡り部55(渡り部40)とを備えている。
【0037】
特定セグメント導体6は、スロットSに収容される特定収容部63と、ステータコア80に対して軸方向第1側L1において軸方向Lに沿って延在する軸方向延在部64とを備える。図示は省略するが、特定収容部63からはステータコア80の軸方向第2側端面82から軸方向第2側L2に突出するように、特定収容部63と連続して、一般セグメント導体5と同様にリード部が形成されている。このリード部において、第1相コイル1、第2相コイル2、第3相コイル3の何れかの端部(接合部45)と、特定セグメント導体6とが接合される。
【0038】
図1図4図5図7等に示すように、複数の特定セグメント導体6の少なくとも一部の軸方向延在部64は、軸方向Lに沿う軸方向視で一般セグメント渡り部55と重複せず、且つ、径方向Rの異なる位置に配置された複数の一般セグメント渡り部55同士の径方向Rの間に挟まれる部分を有するように配置されている。
【0039】
上述したように、複数のセグメント導体4は、軸方向第1側L1からステータコア80のスロットSに挿入されることでステータコア80に組付けられる。図7に示すように、特定セグメント導体6の軸方向延在部64は、径方向Rに屈曲することなく直線的に形成されている。つまり、特定収容部63と軸方向延在部64とは、連続して直線的に形成されている。このため、特定収容部63と軸方向視で重複する位置には、一般セグメント導体5の渡り部40は配置されない。従って、特定収容部63と、渡り部40とが互いに干渉することなく、特定セグメント導体6と、一般セグメント導体5とを、軸方向第1側L1からそれぞれ適切にスロットSに挿入することができる。
【0040】
一方、図8に示す比較例の特定セグメント導体6B(比較例の中性点用導体62B)には、特定収容部63と軸方向延在部64との間に、特定セグメント導体6が径方向Rに屈曲する特定屈曲部69が形成されている(ここでは軸方向延在部64の軸方向第2側L2の端部から径方向外側R2に屈曲している)。このため、軸方向視で、特定収容部63が重複するスロットSの径方向Rの位置と、軸方向延在部64が重複するスロットSの径方向Rの位置とが異なる。このため、軸方向視で、特定収容部63が重複するスロットSの径方向Rの位置には、一般セグメント導体5の渡り部40を配置することができる。しかし、この位置に一般セグメント導体5の渡り部40が配置された場合には、特定収容部63を軸方向第1側L1からまっすぐにスロットSに挿入することができず、上述したように組み付け作業性が著しく低下する。
【0041】
但し、本実施形態においても、特定収容部63と軸方向延在部64との間に、特定セグメント導体6が径方向Rに屈曲する特定屈曲部69が形成されていることを妨げるものではない。例えば、比較例の特定セグメント導体6Bとは径方向Rの逆方向(この場合は軸方向延在部64の軸方向第2側L2の端部から径方向内側R1)に屈曲するように特定屈曲部69が形成されていれば、セグメント導体4の組み付けに影響はない。
【0042】
本実施形態では、複数のセグメント導体4を、スロットS内において径方向外側R2に配置されるものから順に組み付ける場合であっても、特定セグメント導体6が一般セグメント導体5の組み付けの邪魔にならず、一般セグメント導体5が特定セグメント導体6の組み付けの邪魔にならないようにし易い。
【0043】
上述したように、本実施形態では、特定セグメント導体6は、一般セグメント導体5の渡り部40(一般セグメント渡り部55)よりも軸方向第1側L1であって軸方向延在部64よりも径方向外側R2において径方向Rに延在する径方向延在部65を備えている。径方向延在部65を備えていることで、動力線バスバー87や、中性点バスバー88と特定セグメント導体6とを溶接等によって接合し易い。但し、このような径方向延在部65がある場合、径方向延在部65が一般セグメント導体5をステータコア80に組み付ける際に干渉し易い。しかし、上述したように、特定セグメント導体6を、それより径方向外側R2の一般セグメント導体5よりも後に組み付けることが可能であることで、そのような干渉を避けることができる。
【0044】
尚、本実施形態では、軸方向延在部64から径方向外側R2に屈曲して径方向延在部65が形成されている形態を例示しているが、軸方向延在部64と径方向延在部65とは、これらの間に別の屈曲部(例えば、周方向Cの屈曲部)等を介して接続されていてもよい。
【0045】
また、図5に示すように、本実施形態では、軸方向延在部64よりも径方向内側R1に配置される渡り部40(一般セグメント渡り部55)が、軸方向視で1本のみである。
【0046】
一般セグメント導体5は、径方向Rにおいて複数周に亘って配置されるが、本実施形態のように一般セグメント導体5の渡り部40(一般セグメント渡り部55)が1周分のみ径方向内側R1に配置されていると、特定セグメント導体6をスロットS内における最も径方向内側R1に配置する場合に、軸方向延在部64を直線状に形成して、特定セグメント導体6のステータコア80への組付け性をよくし易い。また、特定セグメント導体6の形状も簡素化し易い。例えば、図8に例示する比較例の特定セグメント導体6Bのように、径方向Rにおける屈曲部(特定屈曲部69)を形成しなくてもよい。
【0047】
径方向Rの最も内側に配置される複数の渡り部40(一般セグメント渡り部55)の内、特定セグメント導体6と径方向視で重複する部分を有する1つの渡り部40(図7等における第1一般セグメント渡り部53)は、周方向Cに延在する部分の全域に径方向Rに屈曲する箇所がないように形成されている。また、他の渡り部40(図7等における第2一般セグメント渡り部54)は、周方向Cに延在する部分に径方向Rに屈曲する屈曲部(径方向屈曲部49)を有する。
【0048】
この構成によれば、径方向Rの最も内側に配置される渡り部40(一般セグメント渡り部55)を有する一般セグメント導体5を周方向Cに順次組み付けていくことが容易である。従って、ステータコア80に対してセグメント導体4の組み付け性が良いステータ8を構成し易い。
【0049】
図8に例示する比較例のステータ8Bでは、特定セグメント導体6と径方向視で重複する部分を有する渡り部40が、周方向Cに延在する部分に径方向Rに屈曲する径方向屈曲部49を有している。より詳しくは、径方向Rの最も内側に配置される部分を有する複数の渡り部40(一般セグメント渡り部55)の内、径方向Rの最も内側から径方向屈曲部49を経て、径方向外側R2に遷移する(レーンチェンジする)渡り部40が、径方向外側R2に遷移した領域内で特定セグメント導体6と径方向視で重複している。この場合、径方向屈曲部49により径方向外側R2に屈曲した後の渡り部40と、特定セグメント導体6が挿入されるスロットSの径方向Rの領域とが軸方向視で重複する。そのため、本実施形態と比べて、ステータコア80に対してセグメント導体4の組み付け性が悪くなる。
【0050】
尚、径方向Rの最も内側に配置される複数の渡り部40(一般セグメント渡り部55)の内、特定セグメント導体6と径方向視で重複する部分を有する渡り部40が、周方向Cに延在する部分に径方向Rに屈曲する屈曲部(径方向屈曲部49)を有している場合であっても、組み付け性が低下しない場合がある。即ち、図5に示す中性点用導体62のように、渡り部40の内、径方向Rの最も内側を通る部分と特定セグメント導体6(軸方向延在部64)とが径方向視で重複している場合には、渡り部40と、特定セグメント導体6が挿入されるスロットSの径方向Rの領域とが軸方向視で重複しない。そのため、ステータコア80に対して適切にセグメント導体4を組み付けることができる。
【符号の説明】
【0051】
4:セグメント導体、5:一般セグメント導体、6:特定セグメント導体、8:ステータ、40:渡り部、45:接合部、51:第1収容部、52:第2収容部、61:動力線用導体、62:中性点用導体、62B:中性点用導体、63:特定収容部、64:軸方向延在部、65:径方向延在部、80:ステータコア、83:コイル本体部、84:コイル、C:周方向、INV:インバータ(交流電源)、L:軸方向、L1:軸方向第1側、L2:軸方向第2側、R:径方向、R1:径方向内側(径方向の内側)、R2:径方向外側(径方向の外側)、S:スロット、S1:第1スロット、S2:第2スロット、X:軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8