(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160203
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】透水性積層フィルム、透水性包装体、内容物入り透水性包装体及び内容物入り透水性包装体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 7/02 20190101AFI20231026BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20231026BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20231026BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
B32B7/02
B65D65/40 D
B32B7/12
B32B27/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070378
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】浅倉 隆
(72)【発明者】
【氏名】松下 祐輔
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD01
3E086AD08
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BA33
3E086BB05
3E086BB44
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3E086BB90
3E086CA01
3E086DA06
4F100AK46A
4F100AK51B
4F100AK69C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
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4F100JD05
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4F100JD15C
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4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】内容物の保存性を向上させることが可能な、透水性積層フィルム、透水性包装体、内容物入り透水性包装体及び内容物入り透水性包装体の製造方法を提供する。
【解決手段】透水性積層フィルム20は、基材層21と、接着層22と、シーラント層23とをこの順に備えている。基材層21の吸水率は、5%以上15%以下である。シーラント層23の吸水率は、5%以上15%以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透水性積層フィルムであって、
基材層と、接着層と、シーラント層とをこの順に備え、
前記基材層の吸水率は、5%以上15%以下であり、
前記シーラント層の吸水率は、5%以上15%以下である、透水性積層フィルム。
【請求項2】
前記基材層は、二軸延伸フィルムを含む、請求項1に記載の透水性積層フィルム。
【請求項3】
前記基材層は、二軸延伸ポリアミドフィルムを含む、請求項2に記載の透水性積層フィルム。
【請求項4】
前記接着層は、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を含む、請求項1に記載の透水性積層フィルム。
【請求項5】
前記シーラント層は、未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムを含む、請求項1に記載の透水性積層フィルム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の透水性積層フィルムを備える、透水性包装体。
【請求項7】
請求項6に記載の透水性包装体と、
前記透水性包装体内に収納された内容物とを備え、
前記内容物は、水分活性が0.60以上の固形物である、内容物入り透水性包装体。
【請求項8】
請求項6に記載の透水性包装体を準備する工程と、
前記透水性包装体内に内容物を収納する工程と、
前記透水性包装体内で、前記内容物を冷却する工程とを備え、
前記内容物は、水分活性が0.60以上の固形物である、内容物入り透水性包装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、透水性積層フィルム、透水性包装体、内容物入り透水性包装体及び内容物入り透水性包装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、内容物が収容される包装体を作製するためのフィルムが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、透湿性基材フィルムの片側に、熱可塑性樹脂を直線状に多数平行に形成してなるフィルムであって、かつ、当該フィルムの40℃、90%RHでの水蒸気透過量が、100g/m2・24hr以上である透湿性包装用フィルムが開示されている。このようなフィルムから作製される包装体は、食品等の内容物の保存性の向上に寄与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、賞味期限切れ等の理由で、世界中で大量の食品が廃棄されていることが、社会問題化している。このため、包装体に収納される内容物の保存性を向上させることが求められている。
【0005】
本開示は、内容物の保存性を向上させることが可能な、透水性積層フィルム、透水性包装体、内容物入り透水性包装体及び内容物入り透水性包装体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、基材層と、接着層と、シーラント層とをこの順に備え、前記基材層の吸水率は、5%以上15%以下であり、前記シーラント層の吸水率は、5%以上15%以下である、透水性積層フィルムである。
【0007】
本開示の第2の態様は、上述した第1の態様による透水性積層フィルムにおいて、前記基材層は、二軸延伸フィルムを含んでいても良い。
【0008】
本開示の第3の態様は、上述した第2の態様による透水性積層フィルムにおいて、前記基材層は、二軸延伸ポリアミドフィルムを含んでいても良い。
【0009】
本開示の第4の態様は、上述した第1の態様から上述した第3の態様のそれぞれによる透水性積層フィルムにおいて、前記接着層は、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を含んでいても良い。
【0010】
本開示の第5の態様は、上述した第1の態様から上述した第4の態様のそれぞれによる透水性積層フィルムにおいて、前記シーラント層は、未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムを含んでいても良い。
【0011】
本開示の第6の態様は、上述した第1の態様から上述した第5の態様のそれぞれによる透水性積層フィルムを備える、透水性包装体である。
【0012】
本開示の第7の態様は、上述した第6の態様による透水性包装体と、前記透水性包装体内に収納された内容物とを備え、前記内容物は、水分活性が0.60以上の固形物である、内容物入り透水性包装体である。
【0013】
本開示の第8の態様は、上述した第6の態様による透水性包装体を準備する工程と、前記透水性包装体内に内容物を収納する工程と、前記透水性包装体内で、前記内容物を冷却する工程とを備え、前記内容物は、水分活性が0.60以上の固形物である、内容物入り透水性包装体の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、内容物の保存性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本実施の形態による包装体の一例を示す平面図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態による包装体の一例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態による透水性積層フィルムの一例を示す模式断面図である。
【
図4】
図4は、透水性測定試験を説明する図である。
【
図5】
図5は、透湿性測定試験を説明する図である。
【
図6】
図6は、本実施の形態による内容物入り包装体の製造方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施の形態による内容物入り透水性包装体は、内容物の保存性を向上させることができる。ここで、内容物が食品である場合、内容物の保存性を示す指標の1つに、水分活性が挙げられる。水分活性は、食品が収容された密封容器内の水蒸気圧を、同一条件下における純水の水蒸気圧で除した値である。食品中の水分は、微生物が利用できる自由水による水分と、水素結合によって食品中の成分に結びついている結合水による水分とに分けられる。上述した水分活性は、食品中の水分に対する自由水による水分の割合を示す値である。水分活性は、0から1の範囲で表される。純水の水分活性は1であり、食品の水分活性は、1未満である。
【0017】
水分活性が0.60を超える食品では、微生物が繁殖する可能性がある。一方、水分活性が0.60を超える食品であっても、水分活性0.80未満の食品では、特殊な微生物以外は、繁殖することができない。保存用の米(いわゆる貯蔵米)では、水分活性は0.62前後である。なお、保存用の米は、水分含有率が約13%以上14%以下になるまで乾燥させている。
【0018】
ここで、プラスチックフィルムから作製された包装体内に食品を収納した場合、食品中の水分が水蒸気として食品から出てくる場合がある。例えば、食品自体の温度が高い状態で、食品を包装体内に収納した場合、食品中の水分が水蒸気として食品から出てくる場合がある。また、食品の水分活性が0.60程度であっても、食品中の水分が水蒸気として食品から出てくる場合がある。このような水蒸気は、後述するように、食品の保存性及び商品価値に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0019】
このように、食品中の水分が水蒸気として出てくる食品としては、例えば、水で溶いた小麦粉に対して、焼く、蒸す又は揚げる等の加熱加工を施すことにより製造された食品がある。このような食品としては、例えば、パン、パウンドケーキ、饅頭又はドーナツ等が挙げられる。このような食品は、水を含んでおり、食品から出てきた水蒸気は、包装体の周囲の温度が下がることにより、包装体の内面で結露し得る。
【0020】
そして、結露した水を食品が吸収した場合、水を吸収した部分の食感が損なわれる。また、結露した水を食品が吸収した場合、水を吸収した部分の水分活性が上昇する。このため、当該部分において、微生物が繁殖し得る。とりわけ、繁殖速度が速い細菌、又は酵母の繁殖が、促進されてしまう可能性がある。このため、食品を腐敗させてしまうおそれがある。
【0021】
また、包装体内でのカビの繁殖を抑制するために、包装体を作製する際に、酸素バリア性を有するプラスチックフィルムが使用される場合がある。また、この場合、食品と共に、脱酸素剤が包装体内に収納され得る。しかしながら、上述したような包装体の内面で水蒸気が結露し得る環境下においては、包装体を構成するプラスチックフィルムが酸素バリア性を有していた場合であっても、微生物(例えば、細菌又は酵母)の繁殖を抑制できない可能性がある。また、包装体の内面で水蒸気が結露し得る環境下においては、食品と共に脱酸素剤を包装体内に収納した場合であっても、微生物(例えば、細菌、又は酵母)の繁殖を抑制できない可能性がある。
【0022】
このような問題を回避するために、様々な努力がなされている。例えば、包装体の内面で結露が生じないようにするために、食品から、ある程度水分を取り除いた後に、食品を包装体内に収納する場合がある。この場合、食品を予め冷却することによって、水の気化熱が大きいことを利用して、食品から水分を取り除いている。これにより、包装体の内面で結露が生じないようにできる。一方、食品の冷却設備を無菌化することは困難である。このため、冷却の際に、食品に微生物が付着する可能性がある。このように、食品に微生物が付着する可能性がある場合、食品の賞味期限が短く設定され、いわゆるフードロスの一因にもなり得る。
【0023】
ここで、いわゆる角折り包装という包装方法によって食品を包装する場合がある。「角折り包装」とは、矩形のプラスチックフィルムで固形の内容物を包むとともに、プラスチックフィルムが折り重なった部分にヒートシールを施す包装方法である。角折り包装では、包装体の内部と外部との間を空気が移動できる。これにより、角折り包装では、いわゆる密封包装と比較した場合、包装体の内面で結露が生じ難くできる。このため、内容物(例えば、食品)を十分冷却する設備若しくは時間がない場合、又は内容物をあまり乾燥させたくない場合等に、角折り包装が使用され得る。このような角折り包装は、例えば、饅頭を包装する際に使用され得る。一方、角折り包装では、空気が包装体の内部と外部との間を移動できるため、食品の香りが、虫を誘引してしまうおそれがある。
【0024】
また、例えば、ハム若しくはソーセージ等の畜肉加工食品、又は、かまぼこ若しくはさつま揚げ等の魚肉加工食品を包装体内に収納した場合においても、食品中の水分が水蒸気として食品から出てくる場合がある。ここで、畜肉加工食品及び魚肉加工食品を包装体内に収納する場合、食品に対して加熱加工を施した後に、食品を包装体内に収納する場合と、食品に対して加熱加工を施さない場合と、食品を包装体内に収納した後に、食品に対して加熱加工を施す場合とがある。
【0025】
このうち、食品に対して加熱加工を施した後に、食品を包装体内に収納する場合には、上述したように、包装体の内面で結露が生じ得るため、包装体内において微生物が繁殖し得る。このため、食品を腐敗させてしまうおそれがある。とりわけ、保存食品として利用され得るハム又はソーセージにおいては、包装体内における微生物の繁殖を抑制することが求められ得る。
【0026】
このような問題を回避するために、上述したように、食品を冷却することによって、食品から、ある程度水分を取り除いた後に、食品を包装体内に収納する場合がある。一方、この場合、上述したように、食品の賞味期限が短く設定され、いわゆるフードロスの一因にもなり得る。
【0027】
また、食品に対して加熱加工を施した後に、食品を包装体内に収納する場合には、食品を冷却した後に包装体内に収納した場合であっても、食品に添加された発色剤等に由来する水分、又は畜肉若しくは魚肉の水分が食品から滲み出でしまう可能性がある。また、原材料として畜肉又は魚肉に加えたデンプンがβ化する際に、離水する可能性がある。これらの場合においても、包装体の内面に水が付着するおそれがある。このため、輸送又は販売を低温下において行った場合であっても、乳酸菌等の低温菌が、包装体内において繁殖する可能性がある。このため、食品の賞味期限が短く設定され、いわゆるフードロスの一因にもなり得る。
【0028】
このような問題を回避するため、食品を包装体内に収納した後に、食品に対して加熱加工を施す場合がある。例えば、畜肉加工食品又は魚肉加工食品を包装体内に収納する場合に、いわゆる真空包装後に、ボイル又はレトルト等の加熱殺菌を施すことによって、賞味期限を長く設定する工夫がなされている。一方、加熱殺菌することにより、タンパク質が変性する場合がある。また、加熱殺菌することにより、味覚成分を含んだ肉汁が食品から溶け出してしまう場合がある。これらの場合、食感及び味覚が劣化してしまう可能性がある。
【0029】
さらに、畜肉加工食品又は魚肉加工食品を包装体内に収納する場合、包装体の内面に水滴が付着することによって、収納された食品が外部から見えにくくなる場合がある。このため、プラスチックフィルムのシーラント層に界面活性剤を添加した防曇フィルムが用いられる場合がある。とりわけ、ソーセージを包装体内に収納する場合には、防曇フィルムが用いられることが一般的である。上述したように、この防曇フィルムのシーラント層には、界面活性剤が添加されているため、防曇フィルムの内面は親水性になり得る。このため、包装体内の水は、包装体の内面に水滴としては付着せず、包装体の内面上に膜を形成する。この結果、包装体内の食品が外部から見えやすくなる。一方、シーラント層に界面活性剤を添加した場合、プラスチックフィルム同士を貼り合わせたシール部の剥離強度が低下する可能性がある。また、包装体内に収納された食品に、界面活性剤が付着してしまうおそれがある。さらに、プラスチックフィルムのシーラント層に防曇フィルムを使用した場合、包装体内の水が、所定の箇所(例えば、包装体の底部)に溜められてしまう可能性がある。この場合、水が溜められた場所において、微生物が繁殖しやすくなる可能性がある。
【0030】
また、内容物が寒天又はゼラチンで固めた固形物である場合においても、寒天又はゼラチンの離水によって、包装体内に多くの水が溜められる場合がある。例えば、医療機関又は製薬工場では、寒天培地をプラスチックシャーレに分注した微生物検査用の生培地を、プラスチックフィルムで包装した包装体が使用され得る。このような包装体においては、包装体内に寒天の離水に由来する多くの水が溜まり得る。このため、生培地を包装体から取り出した直後においては、シャーレの外面に水が付着している場合がある。この場合、油性ペンでシャーレに文字を記載できなくなる可能性がある。また、シャーレの外面に水が付着している場合、識別用のバーコードシールをシャーレに貼ることができなくなる可能性がある。さらに、シャーレの外面に水が付着している場合、寒天培地が微生物によって汚染される可能性がある。
【0031】
また、寒天培地の表面が水の膜で覆われている場合、微生物が繁殖したときに、独立したコロニーが形成されない可能性がある。このような問題を回避するため、現状では、包装体から取り出した生培地を使用する前に、生培地を清浄環境中に放置することによって、生培地を乾燥させてから使用する場合がある。この場合、生培地の乾燥に要する場所及び時間が必要になる。また、生培地の乾燥中に、意図しない微生物による汚染が生じてしまう可能性がある。
【0032】
なお、包装体内に、離水に由来する水を溜めないようにするために、離水を乾燥させてから生培地を包装体内に収納する方法が考えられる。一方、離水が停止するまでには、時間がかかる。このため、生培地を包装体内に収納する前に、離水を完全に乾燥させることは困難である。
【0033】
また、寒天培地が収納された容器内に生じる結露水を培地溶液に吸着させるために、寒天培地が固化する直前に容器を回転させる方法がある。しかしながら、上述したように、包装体内には、寒天の離水に由来する多くの水が溜まり得る。このため、上述した方法では、包装体内に生じる水を減少させることは困難である。また、一般的な生培地用の容器である蓋付きシャーレでは、蓋はシャーレに載せてあるだけである。このため、寒天培地が固化していない状態で容器を回転させた場合、固化前の寒天培地が容器外にこぼれてしまう可能性がある。
【0034】
さらに、嫌気性菌を培養するための嫌気性菌用生培地が収納される包装体では、包装材料として、酸素バリア性を有する材料が用いられている。また、嫌気性菌用生培地が収納される包装体では、嫌気性菌用生培地と共に脱酸素剤を包装体内に収納している。このようにして、嫌気性菌用生培地が収納される包装体では、使用前に寒天培地中の溶存酸素が無くなるようにしている。一方、包装体から取り出した嫌気性菌用生培地を使用する前に、寒天培地の表面を乾燥させてから使用する場合がある。この場合、包装体から取り出した嫌気性菌用生培地を、乾燥剤及び脱酸素剤と共に、別の包装体内に再度収納することにより、寒天培地の表面を乾燥させている。このため、嫌気性菌用生培地を使用するまでに、手間が掛かる作業が必要になる。
【0035】
また、例えば、食品が収容された包装体の輸送時、又は保管時に、食品が高温に晒された場合においても、食品中の水分が水蒸気として食品から出てくる場合がある。
【0036】
以上説明したように、包装体内に存在する水分は、内容物の保存性及び商品価値に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0037】
ここで、透湿度が高いフィルム単体で内容物を包装することによって、包装体内の水分を包装体外に排出することも可能である。一方、このようなフィルムは未延伸フィルムである可能性が高く、未延伸フィルムは、引き裂き性が良好ではない場合がある。このため、このようなフィルム単体から作製された包装体では、開封性が低下する可能性がある。また、未延伸フィルムは、吸水すると柔軟になる。このため、刃物を使用した場合であっても、包装体を開封しにくくなる場合がある。この結果、未延伸フィルム単体から作製される包装体は、実用性がなく、一般的に使用されていない。
【0038】
一方、透湿度が高い未延伸フィルムを基材フィルムに貼り合わせた積層フィルムが、一般的に使用されている。しかしながら、このような積層フィルムでは、未延伸フィルムの内面に水が付した場合には、水が未延伸フィルムを透過する。そして、未延伸フィルムを透過した水は、未延伸フィルムと基材フィルムとを接着する接着層周辺に滞留し得る。この場合、積層フィルムの剥離強度が低下し得る。このため、このような積層フィルムに収納される内容物は、水分含有率が低い乾燥食品、又は水を含まない器具等に限られている。
【0039】
従来から、通気性を有さず、無孔のプラスチックフィルムを透過する水の量は、水蒸気がプラスチックフィルムを透過する指標である透湿度のみに基づいて予想されている。そして、透湿度から算出される量よりも多くの量の水を透過できるプラスチックフィルムの存在は、知られていない。このため、当該包装体を構成するプラスチックフィルムの透湿度から算出される量よりも多くの量の水を、包装体内から包装体外へ排出する方法は、知られていない。
【0040】
本件発明者らは、内容物の保存性を向上させるために、水分がプラスチックフィルムを透過する指標として従来から用いられていた透湿度(水蒸気透過度)と、液体としての水の透過度(以下、透水度と記す)とに着目した。ここで、透水度とは、透湿度とは異なる指標である。透水度についての詳細は、後述する。
【0041】
また、本件発明者らは、透湿度(水蒸気透過度)が比較的大きいとされている従来のプラスチックフィルムにおいて、透過する水(液体)の量が、透過する水蒸気の量の数倍になり得ることを見出した。これにより、包装体の内面に付着した目に見える水(結露水又は遊離水等)への対処と、目に見えない水蒸気への対処とを、一つの包装体において分けて考えることができ、それぞれに個別に対処できることが明らかになった。この結果、水を含む固形物を収納する包装体において、結露水又は遊離水が原因で生じていた内容物の保存性の低下を抑制できることが分かった。また、水を含む固形物を収納する包装体において、使用上の不都合を抑制できることが分かった。
【0042】
本実施の形態による透水性積層フィルムは、透湿度よりも、透水性が高く、かつ、ヒートシール性、密封性又は引き裂き性等、一般の包装材料に求められる機能を備えている。そして、本実施の形態による透水性積層フィルムは、積層する層の材料等の仕様を適宜設計することによって、透湿度と透水度とのバランス調整が可能である。このため、以下に記す効果を得ることができる。
【0043】
1.内容物の保存性の向上
本実施の形態によれば、透湿度と、透水度とのバランスを考慮して透水性積層フィルムを設計することによって、液体としての水を包装体外へより早く排出できる。とりわけ、内容物をいわゆる真空包装した場合、内容物から出てきた水が液体の状態で透水性積層フィルムに接触する。このため、内容物をいわゆる真空包装することにより、包装体内の水分を更に早く排出ができる。
【0044】
このように、本実施の形態によれば、包装体内の水を速やかに排出できるため、包装体内に収納された内容物の水分活性を低下させることができる。このため、包装体内における微生物の繁殖を抑制できる。また、包装体内の水を包装体外に排出した後には、内容物の乾燥の進み方を調整できる。このため、内容物(食品又は生培地等)に応じた品質維持期間の延長が可能となる。この結果、内容物の保存性を向上できる。一例として、例えば、透湿度がより低い透水性積層フィルムを用いることによって、保管中の生培地の乾燥を抑制できる。この場合、生培地の使用期限を長く設定できる。
【0045】
また、本実施の形態によれば、敢えて包装体内で結露水又は離水を生じさせるとともに、水を包装体外へより早く排出することにより、内容物の保存性とともに利用価値も高めることができる。すなわち、水を包装体外へより早く排出することができるため、内容物をいわゆる密封包装することができ、かつ、密封包装した包装体内で、内容物を乾燥させることができる。これにより、微生物による汚染が抑制された状態で、内容物を乾燥させることができる。このため、内容物の保存性をより効果的に向上できる。また、密封包装した包装体内で内容物を乾燥させることにより、内容物の表面のみが急激に乾燥してしまうことを回避できる。このため、従来にない触感等を有する食品の製造も可能になる。従来では、このような透水度に着目した積層フィルムは、実施されていない。
【0046】
また、本実施の形態において、透水性積層フィルムの基材層及びシーラント層の少なくとも一方に、酸素バリア性を有するフィルムを用いることによって、酸素バリア性を有する透水性積層フィルムを提供できる。この場合、内容物と共に脱酸素剤を包装体内に収納することにより、カビ等の繁殖をより効果的に抑制できる。また、本実施の形態によれば、上述したように、包装体内の水を速やかに排出できるため、包装体内に収納された内容物の水分活性を低下させることができる。このため、増殖に酸素が不要な細菌又は酵母であって、水分活性が高い内容物で増殖する細菌又は酵母の増殖を効果的に抑制できる。すなわち、内容物と共に脱酸素剤を包装体内に収納することのみでは増殖を抑制することが困難であった細菌又は酵母の増殖を、効果的に抑制できる。なお、この場合、酵母又は細菌が、内容物の水分活性が低下する前に繁殖してしまうことを抑制することが重要である。
【0047】
2.内容物の品質の保持
本実施の形態によれば、包装体内の水を速やかに排出できるため、いわゆる密封包装した場合であっても、包装体内における微生物の繁殖を抑制できる。このため、密封包装しない場合(例えば、いわゆる角折り包装する場合)と比較して、食品の香りに起因する虫の誘引を抑制できる。この結果、虫食い等による、食品の品質の低下を抑制でき、食品の品質を保持できる。また、内容物が生培地である場合においても、いわゆる密封包装が可能になるため、虫(例えばダニ)の誘引を抑制できる。
【0048】
3.製造工程の簡略化
本実施の形態によれば、包装体内の水を速やかに排出できる。このため、食品に対して加熱加工を施した後に、食品を包装体内に収納する場合において、冷却工程を省略又は簡略化できる。このため、内容物入り透水性包装体の製造工程を簡略化できる。
【0049】
4.衛生性の維持及び剥離強度の低下の抑制
本実施の形態において、透水性積層フィルムの基材層及びシーラント層に透明性を有するフィルムを用いることによって、包装体内の結露水を包装体外へ排出した後は、外部からの内容物の視認性が良好になる。すなわち、本実施の形態による包装体によれば、防曇フィルムを用いることなく、外部から内容物を良好に視認できるようになる。このため、防曇フィルムのシーラント層に添加された界面活性剤が内容物に付着するリスクを回避できる。この結果、内容物の衛生性を維持できる。また、界面活性剤に起因するシール部の剥離強度の低下を抑制できる。
【0050】
また、本実施の形態による透水性積層フィルムから作製された包装体では、結露水等を包装体内から包装体外へ速やかに排出できる。すなわち、包装体内の水のうち、シーラント層及び接着層を透過した水は、接着層周辺に滞留することなく、吸水性を有する基材層を透過して包装体外へ排出される。このため、水が接着層周辺に滞留することにより生じる剥離強度の低下を抑制できる。この結果、積層フィルムの引き裂き性が低下することも抑制できる。
【0051】
5.作業性の向上
本実施の形態において、内容物がシャーレに寒天培地を分注した生培地である場合、寒天の離水に由来する水を包装体内から包装体外へ速やかに排出できる。このため、包装体から取り出した生培地を乾燥する乾燥作業を省略できる。また、透水性積層フィルムに酸素バリア性を有する材料を用いるとともに、内容物と共に脱酸素剤を包装体内に収納することにより、内容物を包装体内で乾燥させることができる。このため、包装体から取り出した内容物を乾燥する乾燥作業を省略できる。すなわち、内容物が嫌気性菌用生培地であっても、包装体の開封後に嫌気性菌用生培地を乾燥させることなく、嫌気性菌用生培地を直ちに使用することもできる。
【0052】
なお、本実施の形態による包装体において、包装体内の水分が包装体外に排出される量は、透水性積層フィルムの透水度及び透湿度によって決定される。具体的には、包装体の内面に水(液体)が付着している場合、包装体内の水分が包装体外に排出される量は、包装体の内面に水が付着している部分の面積及び透水度、並びに、水(液体)が付着していない部分の面積及び透湿度によって決定される。一方、包装体内に水(液体)がない場合、包装体内の水分が包装体外に排出される量は、透湿度によって決定される。このため、透水性積層フィルムを構成する基材層及び又はシーラント層の厚み及び又は種類を変更することにより、透水性積層フィルムの透水度と透湿度とを調整しても良い。これにより、包装体内の水(液体)を可能な限り早く包装体外に排出するとともに、包装体内から水(液体)がなくなった後に、包装体内の水分が包装体外に排出される量を調節できる。このため、内容物の保存性を向上できるとともに、包装体内での内容物の乾燥速度を早めたり遅らせたりできる。この場合、内容物が潤いを長期間保つように、内容物を乾燥させることもできる。
【0053】
以下、図面を参照して本実施の形態について説明する。
図1乃至
図6は本実施の形態を示す図である。なお、
図1乃至
図6に示されている構成には、図示と理解のしやすさの便宜上、サイズ及び縮尺等が実物のそれらから変更されている部分が含まれ得る。
【0054】
(内容物入り透水性包装体の構成)
まず、
図1及び
図2により、本実施の形態による内容物入り透水性包装体の概要について説明する。
【0055】
図1及び
図2に示すように、内容物入り透水性包装体(以下、単に内容物入り包装体とも記す)1は、透水性包装体10と、透水性包装体10内に収納された内容物Cとを備えている。
【0056】
このうち、透水性包装体(以下、単に包装体とも記す)10は、後述する透水性積層フィルム20を備えている。すなわち、包装体10は、透水性積層フィルム20の内面202(
図3参照)同士を部分的に接合することによって形成されたものである。包装体10は、透水性積層フィルム20によって構成された第1面11と、第2面12とを備えている。
【0057】
図1に示すように、包装体10は、合掌貼りシール型のいわゆるピロー袋であっても良い。また、
図2に示すように、包装体10は、四方シール型のいわゆる平袋であっても良い。
【0058】
図1及び
図2に示すように、包装体10は、第1端部13と、第1端部13と第1方向D1において対向する第2端部14と、第1端部13から第2端部14まで第1方向D1に沿って延びる一対の側端部15と、を備えている。
図1及び
図2に示す例において、第1端部13及び第2端部14は、第1方向D1に直交する第2方向D2に沿って延びており、包装体10は矩形状の外形を有している。なお、図示はしないが、第1端部13及び第2端部14は、第2方向D2に対して傾斜した方向に沿って延びていても良い。
【0059】
包装体10には、第1面11及び第2面12を構成する透水性積層フィルム20の内面202(
図3参照)同士を接合したシール部が形成されている。
【0060】
図1に示すピロー袋では、シール部は、第1端部13に位置する第1端部シール部131と、第2端部14に位置する第2端部シール部141と、第1端部シール部131と第2端部シール部141との間に配置された合掌シール部151とを有している。合掌シール部151は、背シール部とも称される部分である。この合掌シール部151は、例えば一対の側端部15のほぼ中間に配置されていても良く、第1端部13から第2端部14に向かって、第1方向D1に沿って延びていても良い。
【0061】
図2に示す平袋では、シール部は、第1端部13に位置する第1端部シール部131と、第2端部14に位置する第2端部シール部141と、一対の側端部15に位置する側端部シール部152とを有している。
【0062】
なお、透水性積層フィルム20の内面202同士を接合して包装体10を封止できる限りにおいて、シール部を形成するための方法が特に限られることはない。例えば、加熱等によって透水性積層フィルム20の一部を溶融させて、透水性積層フィルム20の内面202同士を溶着させることによって、シール部を形成しても良い。この際、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。なお、第1端部シール部131及び第2端部シール部141の第1方向D1に沿った幅Waは、それぞれ、例えば5mm以上20mm以下とすることができる。また、側端部シール部152の第2方向D2に沿った幅Wbは、例えば5mm以上20mm以下とすることができる。
【0063】
なお、図示はしないが、包装体10は、側面シール型、二方シール型、三方シール型、封筒貼りシール型、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型又はガセット型の包装体であっても良い。
【0064】
図1及び
図2に示す包装体10は、例えば水分活性が0.60以上の固形物である内容物Cを封入する際に好適に使用できる。この場合、内容物Cとしては、包装体10内に収納される時点において、微生物が繁殖可能な0.60以上の水分活性を有する固形物であっても良い。この場合、包装体10には、スープ又は調味液等の追加の水分を充填することなく、内容物Cのみが収納されても良い。内容物Cとしては、例えば、パン、パウンドケーキ、饅頭、カステラ、ドーナツ、うどん、ハム、ソーセージ、かまぼこ、さつま揚げ等の食品であっても良く、種麹又は寒天培地等、食品以外であっても良い。また、内容物Cとしては、シャーレに分注した寒天培地等、固形物が他の容器内に密封されることなく収納されている、容器入り固形物であっても良い。
【0065】
なお、本実施の形態による包装体10によって、生培地を収納する場合、包装体10のサイズを通常のサイズよりも大きくしても良い。そして、包装体10の開封後に、検体が塗布された生培地を再度包装体10内に収納した状態で、包装体10を再封止できるように構成されていても良い。
【0066】
(透水性積層フィルムの構成)
次に、
図3により、上述した包装体10に用いられる透水性積層フィルム20について説明する。
【0067】
図3に示すように、本実施の形態による透水性積層フィルム20は、基材層21と、接着層22と、シーラント層23とをこの順に備えている。すなわち、透水性積層フィルム20は、外面側に位置する基材層21と、内面側に位置するシーラント層23と、基材層21とシーラント層23との間に位置する接着層22とを備えている。
【0068】
図3に示す例においては、基材層21が透水性積層フィルム20の外面201を構成し、シーラント層23が透水性積層フィルム20の内面202を構成している。なお、外面201は、内容物入り包装体1において、内容物Cの反対側を向く面である。内面202は、内容物入り包装体1において、内容物C側を向く面である。なお、図示はしないが、透水性積層フィルム20は、印刷層や他の層を更に備えていても良い。
図3に示すような透水性積層フィルム20の厚みは、例えば30μm以上75μm以下とすることができる。
【0069】
以下、透水性積層フィルム20を構成する各層について説明する。
【0070】
基材層
基材層21は、例えば、シーラント層23を支持するとともに透水性積層フィルム20全体の強度を高めるための層である。この基材層21は、水蒸気バリア性を有する層を有していないことが好ましい。ここで、水蒸気バリア性を有する層は、例えば、金属蒸着層、金属酸化物蒸着層、又はポリ塩化ビニリデンからなる層等である。
【0071】
基材層21を構成する材料としては、例えばナイロン等のポリアミド、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)といった樹脂が用いられても良い。基材層21は、樹脂フィムルを含んでいても良い。この場合、基材層21は、二軸延伸フィルムを含んでいることが好ましい。二軸延伸フィルムは、二軸延伸ポリアミドフィルムであることが好ましい。二軸延伸ポリアミドフィルムは、ガスバリア性を有する樹脂と、ポリアミドとを共押出しすることによって作製されても良い。また、二軸延伸ポリアミドフィルムは、ガスバリア性を有するポリアミド樹脂から作製されても良い。
【0072】
基材層21は、単一の層で構成されていても良く、複数の層で構成されていても良い。基材層21の厚みは、例えば12μm以上25μm以下とすることができる。
【0073】
接着層
接着層22は、基材層21とシーラント層23とを接着する層である接着層22は、従来公知の方法、例えばドライラミネート法により形成されても良い。ドライラミネート法により2層を接着する場合、接着層22は、積層される側の層の表面に、接着剤を塗布して乾燥させることにより形成される。塗布される接着剤としては、例えば、1液硬化型若しくは2液硬化型の接着剤であっても良い。また、接着剤としては、ビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他等の溶剤型、水性型、又はエマルジョン型等の接着剤が用いられても良い。このうち、接着層22は、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を含んでいることが好ましい。上記のラミネート用接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、又はその他の方法が採用されても良い。なお、接着層22は、ホットメルトのスプレーラミネート等によって形成されても良い。
【0074】
シーラント層
シーラント層23は、透水性積層フィルム20同士を接着させるための層であり、包装体10において、最内層側となる層である。このシーラント層23は、熱によって相互に融着し得る熱可塑性樹脂により形成された層である。
【0075】
シーラント層23を構成する材料は、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)であることが好ましい。シーラント層23は、上記のような樹脂のフィルム若しくはシートから構成されていても良い。また、シーラント層23を構成するプラスチックフィルムは、未延伸であることが好ましい。この場合、シーラント層23は、未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムを含んでいることが好ましい。
【0076】
シーラント層23は、単一の層で構成されていても良く、複数の層で構成されていても良い。シーラント層23の厚みは、例えば15μm以上50μm以下とすることができる。
【0077】
他の層
透水性積層フィルム20は、他の層として、絵柄等の印刷が施された印刷層等を更に備えていても良い。印刷層は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者若しくは販売者等の表示、その他の表示、又は美感の付与のために設けられる層である。また、印刷層は、文字、数字、絵柄、図形、記号、又は模様等の所望の任意の印刷模様を形成する層である。印刷層は、例えば、基材層上の全面に設けられていても良く、基材層上の一部に設けられていても良い。なお、印刷層に用いられるインキは、後述する透水性及び透湿性に影響を及ぼす。このため、透水性積層フィルム20が印刷層を備える場合、透水性積層フィルム20が所望の透水性及び透湿性を得られるように、予め印刷層を備える透水性積層フィルム20の試作品を作製することによって、印刷層を形成する領域の面積等を検証しても良い。
【0078】
また、図示はしないが、例えば、透水性積層フィルム20の基材層21上に、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて、基材層21を構成するフィルムと同様のフィルム、又は、紙若しくは多孔性フィルム等の通水性を有するフィルムを貼り合わせても良い。
【0079】
ここで、本実施の形態による透水性積層フィルム20において、基材層21の吸水率は、5%以上15%以下である。なお、「吸水率」の詳細については、後述する。基材層21の吸水率が5%以上であることにより、基材層21の透水度が、基材層21の透湿度よりも十分に高くなる。また、基材層21の吸水率が15%以下であることにより、水の吸収に起因して基材層21が形状を保持できなくなることを抑制できる。また、基材層21の吸水率が15%以下であることにより、水の吸収に起因して基材層21の強度が極端に低下することを抑制できる。
【0080】
また、本実施の形態による透水性積層フィルム20において、シーラント層23の吸水率は、5%以上15%以下である。シーラント層23の吸水率が5%以上であることにより、シーラント層23の透水度が、シーラント層23の透湿度よりも十分に高くなる。また、シーラント層23の吸水率が15%以下であることにより、水の吸収に起因してシーラント層23が形状を保持できなくなること抑制できる。また、シーラント層23の吸水率が15%以下であることにより、水の吸収に起因してシーラント層23の強度が極端に低下することを抑制できる。
【0081】
ここで、「透水度」と「透湿度」との関係について説明する。まず、「透水度」とは、プラスチックフィルムに接触した水(液体)が、プラスチックフィルムを透過する量を示す指標である。上述したように、透水度は、水蒸気がプラスチックフィルムを透過する量を示す「透湿度」(水蒸気透過度)とは異なる指標である。
【0082】
本件発明者らは、通気性を有さないプラスチックフィルムにおいて、当該プラスチックフィルムで形成した包装体内から包装体外へ排出される水には、水蒸気(気体)として排出される水だけでなく、液体として排出される水があることを見出した。そして、本件発明者らは、通気性を有さず、無孔のプラスチックフィルムであっても、透過させる水蒸気量よりも多くの量の水(液体)を透過させるプラスチックフィルムが存在することを見出した。すなわち、本件発明者らは、透水度が透湿度よりも高いプラスチックフィルムが存在することを見出した。さらに、本件発明者らは、透水度が透湿度よりも十分に高いプラスチックフィルムは、後述するように、様々な性能及び利点を有していることを見出した。一例として、透水度が透湿度よりも十分に高いプラスチックフィルムでは、スポンジ内を水が透過するように、一方の面から吸収した水が、他方の面から容易に排出されるようになる。
【0083】
そして、本件発明者らの研究により、透水度が透湿度よりも高いプラスチックフィルムは、所定の値の吸水率を有しており、吸水率が5%以上15%以下であることにより、上述した効果が得られることが分かった。
【0084】
ここで、二軸延伸ポリアミドフィルムの吸水率は9%程度である。また、後述するように、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムの吸水率は、8%以上11%以下程度である。また、後述するように、ポリ乳酸フィルムの吸水率は、1%程度である。さらに、なお、吸水率は、フィルムの厚みによって変化し得る。上述した二軸延伸ポリアミドフィルムの吸水率は、厚みが12μm以上25μm以下程度の範囲における吸水率である。また、上述したエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムの吸水率は、厚みが15μm以上30μm以下程度の範囲における吸水率である。また、上述したポリ乳酸フィルムの吸水率は、厚みが25μm程度の場合における吸水率である。
【0085】
後述するように、吸水率が8%のエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムの透水度は、透湿度よりも十分高い。さらに、吸水率が1%のポリ乳酸フィルムの透水度は、透湿度とほぼ同じである。このため、吸水率が5%のフィルムでは、透湿度よりも透水度の方が十分高いと推測できる。なお、上述したように、透水度が透湿度よりも十分に高いプラスチックフィルムでは、スポンジ内を水が透過するように、水が排出される。このような現象から推測しても、吸水率が低いフィルムの透水度は、透湿度と比較して、それほど高くはならないと考えられる。
【0086】
吸水率が極端に高いフィルム(例えば、ポリビニルアルコールフィルム)では、水の吸収に起因してフィルムが形状を保持できなくなる場合がある。また、吸水率が極端に高いフィルム(例えば、ポリビニルアルコールフィルム)では、水の吸収に起因してフィルムの強度が極端に低下する場合がある。例えば、ポリビニルアルコールフィルムの吸水率は、30%以上程度である。なお、ポリビニルアルコールフィルムの吸水率は、厚みが20μm以上50μm以下程度の範囲における吸水率である。
【0087】
吸水率が5%以上15%以下である場合、透水度は、透湿度の1.5倍以上6倍以下となる。これにより、多くの水を包装体内から包装体外へ速やかに排出できる。
【0088】
なお、数%の吸水率を有するフィルムに、実質的な水蒸気バリア性層が設けられた場合、透水性は極端に低下する。なお、実質的な水蒸気バリア性層は、例えば、金属蒸着層、金属酸化物蒸着層又はポリ塩化ビニリデン層等である。
【0089】
次に、吸水率について説明する。本明細書中、「吸水率」とは、以下の吸水率測定試験によって測定された値を意味する。上述したように、吸水率が所定の範囲内であることにより、透水度を透湿度よりも高くでき、上述した効果が得られる。
【0090】
(吸水率測定試験)
吸水率測定試験は、以下のようにして行うことができる。
【0091】
吸水率測定試験では、まず、基材層21を切り取り、正方形の試験片を準備する。試験片のサイズは、100mm×100mm程度とする。
【0092】
次に、50℃に設定したオーブン(恒温槽)内に、試験片を24時間保存することにより、試験片を乾燥させる。この際、まず、試験片のカールを抑制するために、長さ30mm程度のクリップによって試験片を挟み込む。このとき、試験片を挟み込んだクリップが正方形の対角線上に位置するとともに、クリップの長手方向が対角線に沿って延びるように、クリップを試験片に取り付ける。
【0093】
そして、試験片を乾燥させた後、クリップを試験片から取り外す。その後、試験片の重量W1(g)を測定する。このとき、試験片の重量を測定する秤は、目量が0.01g以下の秤を用いることが好ましい。なお、以下の説明において、試験片の重量W1を乾燥重量W1とも記す。
【0094】
次に、30℃の蒸留水が充填された容器内に、試験片を収容し、試験片の全体を蒸留水に24時間浸漬する。この際、まず、試験片が浮かないように、長さ30mm程度のクリップによって試験片を挟み込む。このとき、上述したように、試験片を挟み込んだクリップが正方形の対角線上に位置するとともに、クリップの長手方向が対角線に沿って延びるように、クリップを試験片に取り付ける。
【0095】
なお、30℃の蒸留水は、以下のようにして作製できる。まず、容量が1000ml程度の容器(例えば、ビーカー)内に、蒸留水を800ml充填する。次に、容器内に充填された蒸留水を、ホットプレートを用いて約30℃に加熱する。次いで、容器の開口部を食品用ラップフィルムで覆い、ラップフィルムを輪ゴム等によって容器に固定する。その後、30℃に設定したオーブン(恒温槽)内に、開口部がラップフィルムに覆われた容器を24時間保存する。このようにして、30℃の蒸留水が得られる。
【0096】
次に、試験片を容器から取り出す。そして、試験片からクリップを取り外すとともに、試験片上の水滴を拭き取る。その後、容器から試験片を取り出してから1分以内に、試験片の重量W2(g)を測定する。このとき、試験片の重量を測定する秤は、目量が0.01g以下の秤を用いることが好ましい。なお、以下の説明において、試験片の重量W2を吸水重量W2とも記す。
【0097】
そして、得られた乾燥重量W1と、吸水重量W2とから、吸水率R1(%)を算出する。吸水率R1は、以下の式(1)によって算出できる。
R1=(W2―W1)×100/W1・・・式(1)
吸水率R1は、小数点第一位を四捨五入することによって得られた値である。
【0098】
次に、透水度を測定するための透水度測定試験について説明する。
【0099】
(透水度測定試験)
透水度測定試験は、以下のようにして行うことができる。
【0100】
まず、例えば、
図4に示す蒸留水入り包装体1Aを作製する。この蒸留水入り包装体1Aは、包装体10(
図1及び
図2参照)と、包装体10内に充填された蒸留水Wとを備えていても良い。蒸留水入り包装体1Aを作製する際、まず、第1面11を構成する測定対象のフィルムと、第2面12を構成するフィルムとを準備する。第2面12を構成するフィルムとしては、アルミニウム箔を有する積層フィルムを準備する。
【0101】
次に、第1面11を構成するフィルムの内面と、第2面12を構成するフィルムの内面とを互いに接合することにより、包装体10を作製する。このとき、包装体10に、内圧がほとんど生じない量の蒸留水Wを充填する。そして、包装体10内の空気を抜いて密封することにより、蒸留水入り包装体1Aが得られる。このとき、測定対象のフィルムの全面に蒸留水Wを接触させることが重要である。このため、可能な限り、包装体10内の空気を抜くようにする。
【0102】
この蒸留水入り包装体1Aを、透水度を測定する際の温度下に、一日保管する。このようにして、蒸留水Wに溶けていた空気を蒸留水Wから取り出す。その後、包装体10の角部のうち、一つの角部を上にして、包装体10内の空気を当該角部近傍に集める。次に、当該角部近傍に注射針を刺すことにより、包装体10内の空気を抜く。次いで、注射針を刺した箇所の内側にヒートシールを施すことにより、包装体10を密封する。その後、蒸留水入り包装体1Aの重量を測定する。なお、包装体10内に、わずかに空気(気泡)が残る場合がある。しかしながら、このような気泡と包装体との間には、通常は蒸留水Wが存在する。このため、小さい気泡であれば測定値に与える影響はほとんどない。
【0103】
次に、第1面11を上向きにした状態で、蒸留水入り包装体1Aを測定環境下に一日保管する。これにより、水が第1面11を構成するフィルムを透過し、蒸留水入り包装体1Aの重量が減少する。
【0104】
ここで、
図4に示すように、蒸留水入り包装体1Aにおいて、第1面11を構成する測定対象のフィルム全面に、常に蒸留水Wが接している。また、第2面12を構成するフィルムがアルミニウム箔を有しているため、蒸留水が第2面12を透過することはない。このため、蒸留水入り包装体1Aを保存した際に減少した重量は、蒸留水Wが測定対象のフィルムを透過し、包装体10の外面で蒸発した蒸留水Wの重量となる。すなわち、蒸留水入り包装体1Aを保存した際に減少した重量は、測定対象のフィルムを透過した蒸留水Wの重量となる。
【0105】
次いで、減少した蒸留水入り包装体1Aの重量W3(g)を測定する。次に、測定された重量W3と、第1面11を構成するフィルムのうち、シール部(第1端部シール部131等(
図1及び
図2参照))によって囲まれる領域の面積A(m
2)とから、透水度R2(g・m
-2・day
-1)を算出する。透水度R2は、以下の式(2)によって算出できる。
R2=W3/A・・・式(2)
なお、包装体10は、通常柔軟性を有している。このため、包装体10においては、第1面11を構成するフィルムに内圧がほとんど作用しない状態を保つことができる。この結果、包装体10内の水が減少することによる内圧変化の影響を受けることなく、透水度を測定できる。
【0106】
なお、蒸留水入り包装体1Aを作製することなく、測定対象のフィルムの透水度を測定することもできる。この場合、例えば、透水度を測定する際の温度を40℃とする場合、40℃に維持された蒸留水と、40℃、相対湿度0%の雰囲気とを測定対象のフィルムで仕切っても良い。このとき、例えば、測定対象のフィルムの面が水平方向に平行となるように、測定対象のフィルムを、40℃に維持された蒸留水上に配置しても良い。また、測定対象のフィルムの面のうち、蒸留水との接触面に気体が付着しないように維持する。そして、この状態において、相対湿度0%の雰囲気側へ透過した水の重量を、重量W3として測定しても良い。このとき、蒸留水の減少に伴って、蒸留水側の圧力が減少しないようにする等、蒸留水側の圧力と、相対湿度0%の雰囲気側の圧力とが、常に大気圧になるようにすることが好ましい。また、40℃の水は、常に循環させておくことが好ましい。この場合、上述した接触面と同じ高さにおいて、水をオーバーフローさせても良い。
【0107】
次に、透湿度を測定するための透湿度測定試験について説明する。
【0108】
(透湿度測定試験)
透湿度測定試験は、以下のようにして行うことができる。
【0109】
まず、例えば、
図5に示す蒸留水入り包装体1Bを作製する。この蒸留水入り包装体1Bは、包装体10(
図1及び
図2参照)と、包装体10内に充填された蒸留水Wとを備えていても良い。包装体10は、
図4に示す包装体10と同様に作製できる。ここで、透湿度測定試験では、包装体10に蒸留水Wを充填する場合、蒸留水Wの量は、第1面11を上向きにした状態で、第1面11を構成するフィルムに蒸留水Wが付着しない程度の量とする。そして、包装体10を密封することにより、蒸留水入り包装体1Bが得られる。その後、蒸留水入り包装体1Aの重量を測定する。
【0110】
なお、蒸留水入り包装体1B内の空気の相対湿度は、ほぼ100%となる。そして、包装体10の内圧が高くなった場合、包装体10内の水蒸気分圧が変動し得る。このため、包装体10内の水蒸気分圧が変動することを回避するために、包装体10内の空気量が多くなりすぎないように注意する。
【0111】
次に、第1面11を上向きにした状態で、蒸留水入り包装体1Bを測定環境下に一日保管する。これにより、水蒸気が第1面11を構成するフィルムを透過し、蒸留水入り包装体1Bの重量が減少する。なお、透湿度測定試験では、測定対象のフィルムに蒸留水Wを接触させないことが重要である。測定対象のフィルムに蒸留水Wが接触した場合、測定対象のフィルムから蒸留水Wが消失するまで待ってから、試験を開始するようにする。
【0112】
ここで、
図5に示すように、蒸留水入り包装体1Bにおいて、第1面11を構成する測定対象のフィルムは、蒸留水Wとは接触しておらず、湿度100%の空気に接触している。このため、蒸留水入り包装体1Bを保存した際に減少した重量は、測定対象のフィルムを透過した水蒸気の重量となる。
【0113】
次いで、減少した蒸留水入り包装体1Bの重量W4(g)を測定する。次に、測定された重量W4と、第1面11を構成するフィルムの面積A(m2)とから、透湿度R3(g・m-2・day-1)を算出する。透湿度R3は、以下の式(3)によって算出できる。
R3=W4/A・・・式(3)
【0114】
なお、一般的に水蒸気透過度(透湿度)は、40℃、相対湿度90%の雰囲気と、40℃、相対湿度0%の雰囲気とを測定対象のフィルムで仕切り、相対湿度0%側に流入する水蒸気の重量を測定することによって求められる。一方、上述した透水度測定試験においては、相対湿度0%の雰囲気を維持することが困難な場合がある。また、上述した透水度測定試験においては、湿度が低い場合には、湿度の測定が困難な場合がある。このため、本実施の形態では、透水度と透湿度とを同様の試験方法を用いて、かつ、同一のバッチ内で測定できるようにするために、同一環境下における、比較検証可能な測定方法を採用した。
【0115】
次に、このような構成からなる本実施の形態による包装体10の作用について説明する。ここでは、内容物入り包装体1の製造方法について説明する。
【0116】
まず、例えば、
図1に示す包装体10を準備する(準備工程、
図6の符号S1)。この際、まず、透水性積層フィルム20を作製する。この場合、例えば、基材層21として、吸水率が5%以上15%以下の二軸延伸ポリアミドフィルムを準備する。また、シーラント層23として、吸水率が5%以上15%以下のエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムを準備する。
【0117】
次に、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて、二軸延伸ポリアミドフィルムとエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムとを貼り合わせる。このようにして、透水性積層フィルム20を作製する。
【0118】
次いで、透水性積層フィルム20を折り畳んで、所定の位置にヒートシールを施すことにより、
図1に示す包装体10が得られる。なお、この場合、例えば、第1端部シール部131は、形成されていなくても良い。
【0119】
次に、包装体10内に内容物Cを収納する(収納工程、
図6の符号S2)。内容物Cは、水分活性が0.60以上の固形物であっても良い。内容物Cは、例えば、パン、パウンドケーキ、饅頭、カステラ、ドーナツ、うどん、ハム、ソーセージ、かまぼこ、さつま揚げ等の食品であっても良く、種麹又は寒天培地等、食品以外であっても良い。また、内容物Cは、加熱加工が施された後に、意図的な冷却加工が施されることなく、包装体10内に収納されても良い。なお、内容物Cは、第1端部シール部131が形成されていない第1端部13から、包装体10内に収納されても良い。
【0120】
ここで、上述したように、本実施の形態では、内容物Cは、加熱加工が施された後に、意図的な冷却加工が施されることなく、包装体10内に収納される場合がある。この場合、包装体10内で、内容物Cを冷却しても良い(冷却工程、
図6の符号S3)。本実施の形態では、基材層21の吸水率が5%以上15%以下である。また、シーラント層23の吸水率が5%以上15%以下である。このため、基材層21の透水率及びシーラント層23の透水率は、それぞれ、基材層21の透湿率及びシーラント層23の透湿率よりも十分に高くなっている。これにより、包装体10内で内容物Cを冷却することによって包装体10内で結露水が生じた場合であっても、結露水を包装体10外へ速やかに排出できる。このため、包装体10内に収納された内容物Cの部分的な水分活性の上昇を抑制し、かつ、内容物Cの水分活性を低下させることができる。この結果、包装体10内における微生物の繁殖を抑制できる。このため、内容物Cの保存性を向上できる。
【0121】
このように、本実施の形態によれば、透水性積層フィルム20の基材層21の吸水率が、5%以上15%以下である。また、透水性積層フィルム20のシーラント層23の吸水率が、5%以上15%以下である。これにより、包装体10内の水を速やかに排出でき、包装体10内に収納された内容物Cの部分的な水分活性の上昇を抑制し、かつ、内容物Cの水分活性を低下させることができる。このため、包装体10内における微生物の繁殖を抑制でき、内容物Cの保存性を向上できる。なお、基材層21の吸水率が5%以上15%以下であり、シーラント層23の吸水率が5%以上15%以下であることにより、内容物Cの保存性を向上できることは、後述する実施例によって説明する。
【0122】
また、本実施の形態によれば、包装体10内に、水分活性が0.60以上の固形物である内容物Cを収納できる。上述したように、水分活性が0.60を超える固形物では、微生物が繁殖する可能性がある。また、水分活性が0.60以上の固形物では、水分が固形物から出てくる場合がある。一方、本実施の形態による包装体10では、包装体10内の水を速やかに排出でき、包装体10内に収納された内容物Cの水分活性を低下させることができる。このため、包装体10内における微生物の繁殖を抑制でき、内容物Cの保存性を向上できる。この結果、本実施の形態によれば、従来の包装体では、いわゆる密封包装することが困難であった内容物Cを、密封包装できる。
【0123】
また、本実施の形態によれば、上述したように、内容物Cの品質の保持、製造工程の簡略化、衛生性の維持及び剥離強度の低下の抑制、並びに、作業性の向上といった効果を得ることができる。
【0124】
また、本実施の形態によれば、基材層21が、二軸延伸フィルムを含んでいる。これにより、透水性積層フィルム20の剛性及び強度を高めることができる。このため、透水性積層フィルム20を貼り合わせる貼合工程等の製袋工程において、不具合の発生を抑制できる。例えば、透水性積層フィルム20の剛性が高くなることにより、いわゆるピンホールが生じることを抑制できるとともに、包装体10が破れることを抑制できる。また、貼合工程において、シールバー(図示せず)に透水性積層フィルム20が粘着してしまうことを抑制できる。また、基材層21が二軸延伸フィルムを含んでいることにより、透水性積層フィルム20の引き裂き性を向上できる。このため、包装体10の開封性を向上できる。また、基材層21が二軸延伸フィルムを含んでいることにより、基材層21に容易に印刷を施すことができる。
【0125】
また、本実施の形態によれば、基材層21が、二軸延伸ポリアミドフィルムを含んでいる。これにより、透水性積層フィルム20の剛性及び強度を更に高めることができる。
【0126】
また、本実施の形態によれば、接着層22が、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を含んでいる。これにより、接着層22が、透水性積層フィルム20における水(液体)の透過性を阻害することを抑制できる。このため、透水性積層フィルム20の良好な透水性を維持できる。なお、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤が、透水性積層フィルム20の透水度にあまり影響を与えないことは、後述する実施例によって説明する。
【0127】
また、本実施の形態によれば、シーラント層23が、未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムを含んでいる。これにより、吸水率、透水度及び透湿度に加えて、酸素透過度もコントロールすることができる。このため、例えば、嫌気性菌用の寒天培地をシャーレに分注した嫌気性菌用生培地と共に、脱酸素剤を包装体10内に収納した場合、生培地の離水に由来する水は包装体10外に排出され、包装体10内及び寒天培地内の酸素ガスは脱酸素剤によって吸収される。とりわけ、エチレン-ビニルアルコール共重合体は、水(液体)と接触した状態では、良好な透水性を有し、乾燥状態では、良好な酸素バリア性を有する。この結果、嫌気性菌用生培地を使用するときには、生培地の表面に付着した水がなくなっており、微生物がコロニーを形成しやすい状態になる。また、嫌気性菌用生培地を使用するときには、寒天培地内の酸素ガスもなくなっているため、嫌気性菌の検査に適した状態になる。
【0128】
さらに、本実施の形態による透水性積層フィルムでは、水が接着層周辺に滞留することにより生じる剥離強度の低下が生じにくくなる。このため、シーラント層23が未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムを含んでいる場合であっても、透水性積層フィルムの引き裂き性が低下することを抑制できる。なお、透水性積層フィルムの引き裂き性が低下することを抑制できることは、後述する実施例によって説明する。
【0129】
なお、本実施の形態による包装体10において、内容物Cが透水性積層フィルム20の内面に接触している場合、接触箇所において、内容物Cから出てきた水が透水性積層フィルム20に吸収される。一方、内容物Cから出てくる水の量は、内容物Cの表面の凹凸又は包装体10内の乾燥度合い等によって異なる。このため、本実施の形態による包装体10内に、実際に収納する内容物Cを収納することにより、内容物Cの保存性等を検証することが好ましい。また、検証結果に応じて、内容物Cと透水性積層フィルム20との間に、吸水率が低い樹脂で作製したフィルム又はトレー等を配置しても良い。
【実施例0130】
(フィルムの吸水率)
まず、吸水率測定試験により、フィルムの吸水率を測定した。この際、まず、試験フィルムを準備した。このとき、試験フィルムとして、透湿度が比較的高く、かつ、包装材料に一般的に用いられる6つのフィルム(試験フィルムA乃至試験フィルムF)を準備した。試験フィルムA乃至試験フィルムFは、ヒートシール性の異なる3種類の未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムと、ポリ乳酸フィルムとから作製した。
【0131】
具体的には、試験フィルムAとして、厚み20μmの未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(株式会社クラレ製、製品名「エバール(登録商標)EF-E(以下、単にエバールEF-Eとも記す)」)を準備した。試験フィルムBとして、厚み30μmの未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(株式会社クラレ製、製品名「エバール(登録商標)EF-E」)を準備した。試験フィルムCとして、厚み20μmの未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(株式会社クラレ製、製品名「エバール(登録商標)EF-F(以下、単にエバールEF-Fとも記す)」)を準備した。試験フィルムDとして、厚み30μmの未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(株式会社クラレ製、製品名「エバール(登録商標)EF-F」)を準備した。試験フィルムEとして、厚み15μmの未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(株式会社クラレ製、製品名「エバール(登録商標)EF-CR(以下、単にエバールEF-CRとも記す)」)を準備した。試験フィルムFとして、厚み25μmのポリ乳酸フィルム(三菱ケミカル株式会社製、製品名「エコロージュ(登録商標)S SG106(以下、単にエコロージュS SG106とも記す)」)を準備した。
【0132】
次に、試験フィルムAを切り取り、正方形の試験片Aを準備した。試験片Aのサイズは、100mm×100mmとした。
【0133】
次に、50℃に設定したオーブン(恒温槽)内に、試験片Aを24時間保存することにより、試験片Aを乾燥させた。この際、まず、試験片Aのカールを抑制するために、長さ30mmのクリップによって、試験片Aを挟み込んだ。このとき、試験片Aを挟み込んだクリップが正方形の対角線上に位置するとともに、クリップの長手方向が対角線に沿って延びるように、クリップを試験片Aに取り付けた。
【0134】
そして、試験片Aを乾燥させた後、クリップを試験片Aから取り外した。その後、試験片Aの乾燥重量W1(g)を測定した。このとき、試験片Aの重量を測定する秤は、目量が0.01g以下の秤を用いた。
【0135】
次に、30℃の蒸留水が充填された容器内に、試験片Aを収容し、試験片Aの全体を蒸留水に24時間浸漬した。この際、まず、試験片Aが浮かないように、長さ30mmのクリップによって試験片Aを挟み込んだ。このとき、試験片Aを挟み込んだクリップが正方形の対角線上に位置するとともに、クリップの長手方向が対角線に沿って延びるように、クリップを試験片Aに取り付けた。
【0136】
次いで、試験片Aを容器から取り出した。そして、試験片Aからクリップを取り外すとともに、試験片A上の水滴を拭き取った。その後、容器から試験片Aを取り出してから1分以内に、試験片Aの吸水重量W2(g)を測定した。このとき、試験片Aの重量を測定する秤は、目量が0.01g以下の秤を用いた。
【0137】
そして、得られた乾燥重量W1と、吸水重量W2とから、吸水率R1(%)を算出した。試験片Aの吸水率R1は、8%であった。
【0138】
また、試験フィルムB乃至試験フィルムFをそれぞれ切り取り、正方形の試験片B乃至試験片Fを準備した。試験片B乃至試験片Fのサイズは、それぞれ100mm×100mmとした。
【0139】
そして、試験片Aと同様に、試験片B乃至試験片Fの吸水率を測定した。試験片B乃至試験片Fの吸水率R1は、それぞれ、8%、11%、11%、10%、1%であった。
【0140】
(フィルムの透水度及び透湿度)
次に、透水度測定試験により、フィルムの透水度を測定した。また、透湿度測定試験により、フィルムの透湿度を測定した。
【0141】
この際、まず、
図4及び
図5に示す第1面11を構成する試験フィルムを準備した。このとき、上述した6つの試験フィルム(試験フィルムA乃至試験フィルムF)を準備した。
【0142】
また、
図4及び
図5に示す第2面12を構成するフィルムを準備した。このとき、
図4及び
図5に示す第2面12を構成するフィルムとして、2つの積層フィルム(積層フィルムA及び積層フィルムB)を準備した。
【0143】
具体的には、積層フィルムAとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)と、アルミニウム箔(厚み7μm)と、未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(株式会社クラレ製、製品名「エバールEF-E」、厚み30μm)とがこの順に積層された積層フィルムを準備した。また、積層フィルムBとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)と、アルミニウム箔(厚み7μm)と、ポリ乳酸フィルム(厚み25μm)とがこの順に積層された積層フィルムを準備した。積層フィルムA及び積層フィルムBにおいて、各層は、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて貼り合わせた。
【0144】
次に、試験フィルムAと、積層フィルムAとによって、幅110mm×長さ120mm、ヒートシール幅(Wa、Wb(
図2参照))がそれぞれ5mmの平袋(包装体A)を作製した。このとき、積層フィルムAは、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムが試験フィルムA側を向くように、試験フィルムAと重ね合わせた。同様に、試験フィルムB乃至試験フィルムEと、積層フィルムAとによって、幅110mm×長さ120mm、ヒートシール幅(Wa、Wb)がそれぞれ5mmの平袋(包装体B乃至包装体E)を作製した。
【0145】
また、試験フィルムFと、積層フィルムBとによって、幅110mm×長さ120mm、ヒートシール幅(Wa、Wb)がそれぞれ5mmの平袋(包装体F)を作製した。このとき、積層フィルムBは、ポリ乳酸フィルムが試験フィルムF側を向くように、試験フィルムFと重ね合わせた。
【0146】
次に、包装体A乃至包装体Fに、蒸留水を80ml充填した。そして、包装体A乃至包装体F内の空気を抜いて包装体A乃至包装体Fを密封することにより、蒸留水入り包装体A乃至蒸留水入り包装体F(以下包装体A乃至包装体Fとも記す)を作製した。蒸留水入り包装体A乃至蒸留水入り包装体Fの内寸は、幅100mm×長さ110mmであった。
【0147】
次いで、各々の包装体を、試験フィルムA又は試験フィルムBを上向きにした状態で、40℃に設定された熱風循環式オーブン内で24時間保存した。その後、包装体の一つの角部を上にして、包装体内の空気を当該角部に集めた。次に、当該角部近傍に注射針を刺すことにより、包装体内から空気を抜いた。次いで、注射針を刺した箇所の内側にヒートシールを施すことにより、包装体10を密封した。このとき、蒸留水入り包装体A乃至蒸留水入り包装体Fの内寸は、幅100mm×長さ100mmであった。このようにして、透水度測定用の包装体A乃至包装体Fを作製した。
【0148】
同様に、透湿度測定用の包装体A乃至包装体Fを作製した。このとき、包装体A乃至包装体Fに充填する蒸留水を20mlとしたこと、以外は、透水度測定用の包装体A乃至包装体Fの作製方法と同様の方法により、透湿度測定用の包装体A乃至包装体Fを作製した。
【0149】
次に、透水度測定用の包装体A乃至包装体F、及び透湿度測定用の包装体A乃至包装体Fを、試験フィルムA又は試験フィルムBを上向きにした状態で、40℃に設定された熱風循環式オーブン内で同時に保存した。このとき、透湿度測定用の包装体A乃至包装体Fにおいては、試験フィルムA乃至試験フィルムFに蒸留水は接触していなかった。
【0150】
次いで、各々の包装体の重量を測定した。重量の測定は、保存開始から24時間経過後と、保存開始から7日間経過後とに行った。
【0151】
以上の結果を表1に示す。なお、エバールEF-Eの透湿度のカタログ値は、厚みが20μmである場合、27g・m-2・day-1である。エバールEF-Fの透湿度のカタログ値は、厚みが15μmである場合、69g・m-2・day-1である。エバールEF-CRの透湿度のカタログ値は、厚みが15μmである場合、142g・m-2・day-1である。エコロージュS SG106の透湿度のカタログ値は、厚みが25μmである場合、320g・m-2・day-1である。このカタログ値は、JIS-Z0208に準拠して測定された、40℃、湿度90%RHにおける透湿度である。
【0152】
【0153】
まず、透水度と透湿度との関係に着目すると、エチレン-ビニルアルコール共重合体からなる試験フィルムA乃至試験フィルムEでは、同一条件の測定環境下において、透水度が透湿度よりも高かった。すなわち、試験フィルムA乃至試験フィルムEでは、透過させる水蒸気の量よりも、多くの量の水(液体)を透過させることが判明した。具体的には、試験フィルムA乃至試験フィルムEでは、透過させる水蒸気の量の1.6倍以上の量の水(液体)を透過できることが分かった。
【0154】
また、試験フィルムA乃至試験フィルムFによって、透水度と透湿度との比が異なっていた。これにより、包装体外へ排出する対象に基づいて、透水性積層フィルムの基材層に使用する材料及び厚みを選択することにより、当該対象を包装体外へ効果的に排出できることが分かった。同様に、包装体外へ排出する対象に基づいて、透水性積層フィルムのシーラント層に使用する材料及び厚みを選択することにより、当該対象を包装体外へ効果的に排出できることが分かった。
【0155】
一般的に、厚み20μm相当のフィルムの透湿度をJIS-Z0208に準拠して測定した場合、透湿度が20g・m-2・day-1を超えるフィルムは、透湿度がかなり高いフィルムに分類される。上述したように、エバールEF-Eの透湿度のカタログ値は、厚み20μmである場合、27g・m-2・day-1である。このため、エバールEF-Eからなるフィルムは、透湿度がかなり高いフィルムに分類される。なお、表1に示す透湿度は、JIS-Z0208に準拠する測定方法とは異なる測定方法によって測定された透湿度である。一方、透水度と透湿度とは、互いに同一条件で測定している。これにより、一部のフィルムにおいては、透過させる水蒸気量よりも多くの量の水(液体)を透過させることが明らかになった。このため、フィルムに接触した水の透過量を示す指標である透水度に基づき、フィルムを評価することが重要であると考えられる。
【0156】
また、エチレン-ビニルアルコール共重合体からなる試験フィルムの透水度は、フィルムの種類(例えば、エチレン共重合比率)が同じであれば、当該試験フィルムの厚みにほぼ反比例することが判明した。これにより、エチレン-ビニルアルコール共重合体からなるフィルムを備える透水性積層フィルムの透水度の推定が可能となり、透水性積層フィルムの設計が容易になることが分かった。
【0157】
さらに、ポリ乳酸フィルムは、高い透水度と高い透湿度とを有している。一方、透水度と透湿度との差は小さく、従来の指標である透湿度のみで水分透過量の評価が可能であることが判明した。このような性質は、ポリ乳酸フィルムの吸水率の低さに由来すると考えられる。
【0158】
なお、試験フィルムA乃至試験フィルムEのような未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムは、引き裂き性が良好ではない場合がある。例えば、当該フィルム単体で包装体を作製した場合、包装体を開封するためには、刃物が必要になり得る。また、当該フィルム同士をヒートシールする場合、一般的なヒートシール方式では、シールバー(熱板)にフィルムが粘着してしまう可能性がある。このため、一般的な包装材料として、当該フィルムが単体で使用されることは希である。一方、本実施の形態による透水性積層フィルムでは、後述するように、水が接着層周辺に滞留することにより生じる剥離強度の低下が生じにくくなる。この結果、未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムを使用した場合であっても、透水性積層フィルムの引き裂き性が低下することを抑制できる。
【0159】
上述したように、未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体からなる試験フィルム(試験フィルムA乃至試験フィルムE)では、透水度が透湿度よりも高くなっていた(表1参照)。ここで、試験フィルムの透水性の値が高い場合、試験フィルムがあたかもスポンジのように水を吸収し、吸収された水が、吸収された面の反対側の面で気化していると推測できる。このため、試験フィルムの吸水率は、透水度に大きな影響を及ぼす因子であると考えられる。
【0160】
また、透水度の値が透湿度の値の1.5倍以上であるフィルムは、少なくとも数%以上の吸水率を有していると推測できる。例えば、試験フィルムAでは、透水度の値が透湿度の値の2倍であり、吸水率は、8%であった。試験フィルムBでは、透水度の値が透湿度の値の1.6倍以上であり、吸水率は、8%であった。試験フィルムCでは、透水度の値が透湿度の値の4.2倍であり、吸水率は、11%であった。試験フィルムDでは、透水度の値が透湿度の値の3.8倍以上であり、吸水率は、11%であった。試験フィルムEでは、透水度の値が透湿度の値の3.7倍以上であり、吸水率は、10%であった。
【0161】
一方、ポリ乳酸フィルムからなる試験フィルム(試験フィルムF)では、透水度が透湿度よりも低かった。また、この試験フィルムでは、高い透湿度を有しているが、透水度との差が小さかった。そして、ポリ乳酸フィルムからなる試験フィルムでは、吸水率が1%と低かった。このため、ポリ乳酸フィルムからなる試験フィルムでは、上述した未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体からなる試験フィルムとは異なり、液体の水が試験フィルムを透過するよりも、気体の水蒸気が試験フィルムを透過していると推測できる。
【0162】
なお、
図4及び
図5に示す第1面11を構成する試験フィルムとして、以下のような試験フィルムGについても、吸水率、透水度及び透湿度を測定した。試験フィルムGは、以下のようにして作製した。まず、厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムを準備した。次に、二軸延伸ポリアミドフィルムの一方の面にポリエチレンイミン系アンカーコート剤を塗布した。次いで、溶融ポリエチレン樹脂を多数のノズルから直線状かつ平行に押し出した。ポリエチレン樹脂の厚みは65μmであり、幅は1mmであった。また、ポリエチレン樹脂同士の間隔は、1mmであった。
【0163】
また、透水度及び透湿度を測定する際、
図4及び
図5に示す第2面12を構成するフィルムとして、以下のような積層フィルムCを準備した。積層フィルムCとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み12μm)と、アルミニウム箔(厚み7μm)と、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(厚み60μm)とがこの順に積層された積層フィルムを準備した。積層フィルムCにおいて、各層は、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて貼り合わせた。
【0164】
次に、試験フィルムGと、積層フィルムCとによって、幅110mm×長さ120mm、ヒートシール幅(Wa、Wb)がそれぞれ5mmの平袋(包装体G)を作製した。このとき、試験フィルムGのポリエチレン樹脂と、積層フィルムCの直鎖状低密度ポリエチレンフィルムとが対面するように、試験フィルムGと積層フィルムCとを重ね合わせた。そして、包装体A乃至包装体Fと同様に、各重量を測定した。このようにして、試験フィルムGの透水度及び透湿度を測定した。
【0165】
以上の結果を表2に示す。
【0166】
【0167】
ここで、ポリエチレン樹脂は、吸水性をほとんど有していない。また、ポリエチレン樹脂の吸水率は、0.1%未満であり、二軸延伸ポリアミドフィルムの吸水率(約9%)よりも十分低い。このため、試験フィルムの透水度は、二軸延伸ポリアミドフィルムの透水度であると仮定できる。また、このため、試験フィルムの面のうち、ポリエチレン樹脂が設けられた面に占めるポリエチレン樹脂の割合から、厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムの透水度は、約940g・m-2・day-1であると推定できる。この透水度から算出して、厚みを25μmまで厚くした場合には、二軸延伸ポリアミドフィルムの透水度は、約560g・m-2・day-1であると推定できる。この場合、使用する未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムによっては、未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムの透水度よりも、二軸延伸ポリアミドフィルムの透水度の方が高くなる。
【0168】
また、例えば、二軸延伸ポリアミドフィルムと、未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムとを、接着層として2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて貼り合わせた積層フィルムでは、内面側の透水度と、外面側の透水度とが、互いに異なるようにできる。例えば、積層フィルムにおいて、未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムによって内面を構成するとともに、二軸延伸ポリアミドフィルムによって外面を構成した場合に、内面側の透水度よりも外面側の透水度の方が高くなるようにできる。この場合、積層フィルムから作製された包装体では、包装体内の水のうち、未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム及び接着層を透過した水は、接着層周辺に滞留することなく、二軸延伸ポリアミドフィルムを透過して包装体外へ排出される。このため、水が接着層周辺に滞留することにより生じる剥離強度の低下が生じにくくなる。この結果、積層フィルムの引き裂き性が低下することを抑制できる。
【0169】
(積層フィルムの透水度及び透湿度)
次に、透水度測定試験により、積層フィルムの透水度を測定した。また、透湿度測定試験により、積層フィルムの透湿度を測定した。
【0170】
この際、まず、
図4及び
図5に示す第1面11を構成する試験フィルムを準備した。このとき、2つの試験フィルム(試験フィルムH及び試験フィルムI)を準備した。
【0171】
具体的には、試験フィルムHの基材層として、厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(東洋紡株式会社製、製品名「NAP02」)を準備した。また、試験フィルムHのシーラント層として、厚み15μmの未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(株式会社クラレ製、製品名「エバールEF-F」)を準備した。次に、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて、二軸延伸ポリアミドフィルムとエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムとを貼り合わせた。このようにして、試験フィルムHを作製した。
【0172】
また、試験フィルムIの基材層として、厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(東洋紡株式会社製、製品名「NAP02」)を準備した。また、試験フィルムIのシーラント層として、厚み30μmの未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(株式会社クラレ製、製品名「エバールEF-E」)を準備した。次に、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて、二軸延伸ポリアミドフィルムとエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムとを貼り合わせた。このようにして、試験フィルムIを作製した。
【0173】
また、
図4及び
図5に示す第2面12を構成するフィルムを準備した。このとき、
図4及び
図5に示す第2面12を構成するフィルムとして、上述した積層フィルムAを準備した。
【0174】
次に、試験フィルムHと、積層フィルムAとによって、幅110mm×長さ120mm、ヒートシール幅(Wa、Wb)がそれぞれ5mmの平袋(包装体H)を作製した。このとき、試験フィルムHの未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムと、積層フィルムAの未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムとが対面するように、試験フィルムHと積層フィルムAとを重ね合わせた。同様に、試験フィルムIと、積層フィルムAとによって、幅110mm×長さ120mm、ヒートシール幅(Wa、Wb)がそれぞれ5mmの平袋(包装体I)を作製した。そして、包装体A乃至包装体Fと同様に、各重量を測定した。このようにして、試験フィルムH及び試験フィルムIの透水度及び透湿度を測定した。
【0175】
以上の結果を表3に示す。
【0176】
【0177】
ここで、上述したように、厚みが15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムの吸水率は、9%程度である。また、厚みが15μmの未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(エバールEF-F)の吸水率は、11%である。さらに、上述したように、厚みが30μmの未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(エバールEF-E)の吸水率は、8%である(表1参照)。すなわち、試験フィルムH及び試験フィルムIの基材層の吸水率及びシーラント層の吸水率が、それぞれ5%以上15%以下であった。このため、表3に示すように、本実施の形態による透水性積層フィルム(試験フィルムH及び試験フィルムI)では、透湿度よりも透水度の方が高かった。すなわち、本実施の形態による透水性積層フィルムでは、透過させる水蒸気よりも、多くの量の水(液体)を透過させることが判明した。
【0178】
また、単体フィルムと同様に、積層フィルムにおいても、フィルムの材料及び厚みによって透水度と透湿度との比が異なっていた。これにより、包装体外へ排出する対象に基づいて、透水性積層フィルムの基材層に使用する材料及び厚みを選択することにより、当該対象を包装体外へ効果的に排出できることが分かった。同様に、透水性積層フィルムのシーラント層に使用する材料及び厚みを選択することにより、当該対象を包装体外へ効果的に排出できることが分かった。
【0179】
なお、積層フィルムの透湿度を計算する際に一般的に用いられている計算方法がある。この計算方法では、例えば、第1フィルムと、第1フィルムに積層された第2フィルムとを備えた積層フィルムの透湿度を計算する場合、第1フィルムの透湿度と、第2フィルムの透湿度とによって、積層フィルムの透湿度を計算する。具体的には、第1フィルムの透湿度をX1(g・m-2・day-1)とし、第2フィルムの透湿度をX2(g・m-2・day-1)とした場合、積層フィルムの透湿度X(g・m-2・day-1)は、以下の式(4)によって算出できる。
X-1=X1-1+X2-1・・・式(4)
【0180】
ここで、積層フィルムの透湿度に関する上記式(4)が、積層フィルムの透水度に適用可能かどうか検討する。
【0181】
上述したように、厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルムの透水度は、約940g・m-2・day-1である。また、上述したように、未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムの透水度は、エチレン共重合比率が同じであれば、当該フィルムの厚みにほぼ反比例する。また、表1に示すように、厚みが20μmの未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(エバールEF-F)の透水度は630m-2・day-1である。また、表1に示すように、厚みが30μmの未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(エバールEF-F)の透水度は420m-2・day-1である。このため、厚みが15μmの未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムの透水度は、約840g・m-2・day-1と算出される。
【0182】
次に、二軸延伸ポリアミドフィルムの透水度を上記式(4)のX1に代入し、未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムの透水度を上記式(4)のX2に代入する。これにより、Xは、約444g・m-2・day-1と算出される。この数値は、表3に示す実測値と大差がない。このため、透水度は、積層フィルムの透湿度に関する上記式(4)を利用して計算できることが判明した。
【0183】
このように、実際に積層フィルムを作製することなく、各々のフィルムの透水度のデータが有れば、積層フィルムの透水度の概算値を得られることが分かった。これは、包装材料の設計をする上で大きなメリットである。
【0184】
また、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤は、積層フィルムの透水度にあまり影響を与えないことも判明した。ここで、ウレタン樹脂の透湿度は非常に高いが、ウレタン樹脂の吸水性は非常に低い。このため、積層フィルムにおいて、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤が水(液体)の透過性を阻害する可能性があることも考えられた。一方、接着層の厚みは通常2μm以上3μm以下程度であり、かつ、ウレタン樹脂の透湿度が非常に高いため、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤は、積層フィルムの透水度にあまり影響を与えないことが判明した。
【0185】
このため、上記試験フィルムH及び試験フィルムIの二軸延伸ポリアミドフィルム上に、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて、吸水性を有するフィルムを貼り合わせた積層フィルムにおいても、高い透水性が得られると推測できる。また、上記試験フィルムH及び試験フィルムIの二軸延伸ポリアミドフィルム上に、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて、紙等の通水性を有するフィルムを貼り合わせた積層フィルムにおいても、高い透水性が得られると推測できる。
【0186】
また、基材層とシーラント層とを接着剤を用いて貼り合わせた積層フィルムにおいては、剥離強度の低下を抑制することが求められ得る。例えば、シーラント層として、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムを使用した積層フィルムでは、包装体内の水のうち、未延伸エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムを透過した水が、接着層(接着剤)まで到達し得る。そして、水が接着層周辺に滞留した場合、水がエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムと接着層との間に入り込むことにより、積層フィルムの剥離強度が極端に低下する可能性がある。このため、このような積層フィルムは、従来、水分活性の高い内容物、又は水性の液体を包装する包装体には用いられることはなかった。これに対して、本実施の形態による透水性積層フィルムは、基材層が高い透水性を有する。これにより、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムを透過した水が接着層に到達した場合であっても、水が接着層周辺に滞留することなく、基材層を透過して包装体外へ排出される。このため、水が接着層周辺に滞留することにより生じる剥離強度の低下が生じにくくなる。
【0187】
また、透水度が透湿度よりも高い性質を有する基材層と、透水度が透湿度よりも高い性質を有するシーラント層とを貼り合わせた積層フィルムでは、積層フィルム全体の透水度は、積層フィルムの全体の透湿度よりも高くなることが分かった。そして、後述するように、透水性積層フィルムの透湿度を内容物の特徴に応じて調節することにより、包装体内に溜まった水を速やかに包装体外へ排出し、かつ、水が包装体外へ排出された後に、内容物の乾燥を早めたり遅らせたりできることが分かった。また、後述するように、本実施の形態による透水性積層フィルムから作製された包装体は、ヒートシール性、密封性及び引き裂き性等、一般の包装体に求められる機能も備えていることが分かった。
【0188】
なお、本実施の形態による透水性積層フィルムから作製された包装体において、包装体の内面に水(液体)が付着した部分では、透水度に基づき水が包装体外へ排出され、水が付着していない部分では、透湿度に基づき水蒸気(気体)が包装体外へ排出される。このため、包装体の内面に水(液体)が付着していない状態では、透湿度に基づき水分が包装体外へ排出される。また、本実施の形態による透水性積層フィルムを用いて内容物を真空包装した場合、内容物に含まれる水分が透水性積層フィルムに接触する。また、本実施の形態による透水性積層フィルムは、透水度が大きい。このため、本実施の形態による透水性積層フィルムを用いて内容物を真空包装することにより、包装体外へ排出される水の量が比較的多くなり、衛生的な状態で内容物の水分を除去できる。
【0189】
次に、上述した本実施の形態の具体的実施例について説明する。
【0190】
[実施例1]
基材層として、厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(東洋紡株式会社製、製品名「NAP02」)を準備した。また、シーラント層として、厚み15μmのエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(株式会社クラレ製、製品名「エバール(登録商標)EF-F」)を準備した。基材層としての二軸延伸ポリアミドフィルムの吸水率は、9%であった。また、シーラント層としてのエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムの吸水率は、11%であった。
【0191】
次に、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて、二軸延伸ポリアミドフィルムとエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムとを貼り合わせた。このようにして、実施例1による透水性積層フィルムを作製した。
【0192】
(第1の保存試験)
まず、第1の保存試験を行った。第1の保存試験では、まず、市販の6本入りソーセージ(1本約20g)の重量(以下、乾燥前の重量とも記す)を測定した。このとき、ソーセージの重量は、袋ごと測定した。その後、ソーセージを袋から取り出し、吸水紙を用いて、袋の内面の水と、ソーセージの表面の水とを拭き取った。次に、ソーセージ及び袋を室温で1時間乾燥させた。次いで、ソーセージ及び袋の合計重量(以下、乾燥後の重量とも記す)を測定した。ソーセージ及び袋の乾燥前の重量と、ソーセージ及び袋の乾燥後の重量との差は、1.1gであった。この重量差を袋内に存在していた液体としての水の重量であるとした。なお、ソーセージを収納していた袋はピロー袋であった。また、袋の内寸は幅150mm×長さ220mm、ヒートシール幅(Wa)が10mmであった。
【0193】
次に、透水性積層フィルムから、2種類の包装体を作製した。このとき。第1の包装体として、包装体の内寸がソーセージの袋の内寸と同程度となるように、幅150mm×長さ230mm、ヒートシール幅(Wa)が5mmのピロー袋(
図1参照)を10個作製した。また、第2の包装体として、幅170mm×長さ150mm、ヒートシール幅(Wa、Wb)がそれぞれ5mmの平袋(
図2参照)を10個作製した。
【0194】
次いで、各々の包装体内に、乾燥後のソーセージ6本と水2mlを収納した。次に、各々の包装体を密封した。このとき、第1の包装体においては、包装体内の空気を除去することなく、包装体を密封した。一方、第2の包装体においては、真空包装により、包装体を密封した。このようにして、第1の保存試験に使用する2種類の内容物入り包装体を作製した。
【0195】
次に、熱風循環式オーブンを用いて、各々の内容物入り包装体を40℃で保存し、24時間ごとの重量減少量を測定した。
【0196】
(第2の保存試験)
次に、第2の保存試験を行った。第2の保存試験では、まず。包装体として、幅150mm×長さ300mm、ヒートシール幅(Wa)が5mmのピロー袋を10個作製した。このとき、各々の包装体のシール部の1箇所に、カッターナイフで2mmの切込みを入れて、開封用のノッチを形成した。
【0197】
次いで、各々の包装体内に、市販の中華肉饅頭と水2mlとを収納した。中華肉饅頭の重量は約70gであり、肉饅頭の賞味期限は、常温保存で残3日間であった。次いで、各々の包装体を封止することなく、出力600Wの電子レンジでそれぞれ30秒間加熱した。その後、即座に包装体を密封した。このようにして、第2の保存試験に使用する内容物入り包装体を作製した。
【0198】
次に、熱風循環式オーブンを用いて、各々の内容物入り包装体を40℃で7日間保存した。その後、各々の包装体をノッチから引き裂いて開封し、内容物の保存性を評価した。
【0199】
(第3の保存試験)
次に、第3の保存試験を行った。第3の保存試験では、まず、包装体として、幅150mm×長さ150mm、ヒートシール幅(Wa、Wb)がそれぞれ5mmの平袋を10個作製した。このとき、各々の包装体のシール部の1箇所に、カッターナイフで2mmの切込みを入れて、開封用のノッチを形成した。
【0200】
次いで、各々の包装体内に、市販のうどん(生麺)を収納した。うどんの重量は約200gであり、うどんの賞味期限は、低温保存で残10日間であった。また、うどんとしては、酸味料が添加されており、保存性が良好なうどんを使用した。次に、うどんを潰さないように、包装体内の空気を除去しつつ包装体を密封した。このようにして、第3の保存試験に使用する内容物入り包装体を作製した。
【0201】
次に、熱風循環式オーブンを用いて、内容物入り包装体を40℃で7日間保存した。その後、包装体をノッチから引き裂いて開封し、内容物の保存性を評価した。
【0202】
(第4の保存試験)
次に、第4の保存試験を行った。第4の保存試験では、まず、包装体として、幅170mm×長さ320mm、ヒートシール幅(Wa)が5mmのピロー袋を20個作製した。このとき、各々の包装体のシール部の1箇所に、カッターナイフで2mmの切込みを入れて、開封用のノッチを形成した。
【0203】
次いで、作製した包装体のうちの10個に対して、シール部の密封性を検査した。このとき、シール部の密封性は、シール抜け検査用赤色浸透液(三菱瓦斯化学株式会社製、製品名「エージレス(登録商標)シールチェック」)を用いて検査した。
【0204】
また、シール部の密封性を検査した包装体とは異なる包装体内に、生培地を収納した。生培地としては、直径90mm、高さ14mmのポリスチレン製シャーレに普通寒天培地(栄研化学株式会社製)を調製、分注した生培地を使用した。このとき、生培地を10枚重ねた状態で、包装体内に収納した。次に、包装体を密封した。このようにして、第4の保存試験に使用する内容物入り包装体を作製した。
【0205】
次に、包装体を10℃に設定された恒温槽で保存した。その後、包装体をノッチから引き裂いて開封し、内容物の保存性を評価した。
【0206】
(第5の保存試験)
次に、第5の保存試験を行った。第5の保存試験では、まず、包装体として、幅170mm×長さ320mm、ヒートシール幅(Wa)が5mmのピロー袋を10個作製した。このとき、各々の包装体のシール部の1箇所に、カッターナイフで2mmの切込みを入れて、開封用のノッチを形成した。
【0207】
次いで、包装体内に、生培地と共に脱酸素剤を収納した。生培地としては、直径90mm、高さ14mmのポリスチレン製シャーレに普通寒天培地(栄研化学株式会社製)を調製、分注した生培地を使用した。このとき、生培地を10枚重ねた状態で、各々の包装体内に収納した。また、脱酸素剤としては、酸素吸収能力200mlの脱酸素剤「エージレス(登録商標)FX-202」を使用した。また、脱酸素剤は、シャーレの上に載置した。次に、包装体を密封した。このようにして、第5の保存試験に使用する内容物入り包装体を作製した。
【0208】
次に、各々の包装体を10℃に設定された恒温槽で100日間保存した。その後、包装体内の酸素濃度をジルコニア酸素濃度計(東レエンジニアリングDソリューションズ株式会社製、製品名「LC-750F」)で測定した。酸素濃度は、0.1%であった。
【0209】
[実施例2]
シーラント層として、厚み30μmのエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(株式会社クラレ製、製品名「エバール(登録商標)EF-E」)を使用したこと、シーラント層としてのエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムの吸水率が8%であったこと、第1の保存試験、第3の保存試験及び第4の保存試験をそれぞれ行わなかったこと、以外は、実施例1と同様にして、第2の保存試験を行った。
【0210】
(第6の保存試験)
また、実施例2においては、第6の保存試験を行った。第6の保存試験では、まず、包装体として、幅120mm×長さ150mm、ヒートシール幅(Wa、Wb)がそれぞれ5mmの平袋を10個作製した。
【0211】
次いで、各々の包装体内に、市販のカステラと水2mlを収納した。カステラの重量は約40gであった。次いで、各々の包装体を封止することなく、出力600Wの電子レンジで30秒間加熱した。その後、即座に包装体を密封した。このようにして、第6の保存試験に使用する内容物入り包装体を作製した。
【0212】
次に、28℃に設定されたふ卵器で7日間保存した。その後、包装体を開封し、内容物の保存性を評価した。
【0213】
[実施例3]
基材層として、厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(東洋紡株式会社製、製品名「NAP22」)と、基材層に積層する他の層として、坪量17g/m2のレーヨン混抄紙(ユニ・チャーム国光ノンウーヴン株式会社製、製品名「ニューソフロン(登録商標)M170」)とを準備した。次に、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて、二軸延伸ポリアミドフィルムとレーヨン混抄紙とを貼り合わせた。このようにして、基材層としてのフィルムを作製した。基材層としての二軸延伸ポリアミドフィルムの吸水率は、9%であった。
【0214】
また、シーラント層として、厚み15μmのエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム(株式会社クラレ製、製品名「エバール(登録商標)EF-F」)を準備した。シーラント層としてのエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムの吸水率は、11%であった。
【0215】
次に、基材層としてのフィルムのうち、二軸延伸ポリアミドフィルム上に、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて、シーラント層としてのエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムを貼り合わせた。このようにして、実施例3による透水性積層フィルムを作製した。
【0216】
そして、実施例1と同様にして、第3の保存試験を行った。
【0217】
[比較例1]
比較例1による積層フィルムのシーラント層として、厚み60μmの直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(東洋紡株式会社製、製品名「L-4102」)を使用したこと、シーラント層としての直鎖状低密度ポリエチレンフィルムの吸水率が0.1%未満であったこと、第1の保存試験において、包装体として、幅150mm×長さ230mm、ヒートシール幅(Wa)が5mmのピロー袋を作製し、包装体内の空気を除去することなく、包装体を密封したこと、第3の保存試験、第4の保存試験及び第5の保存試験をそれぞれ行わなかったこと、以外は、実施例1と同様にして、第1の保存試験及び第2の保存試験を行った。また、実施例2と同様にして、第6の保存試験を行った。このとき、出力600Wの電子レンジで30秒間加熱した後、包装体を封止することなく、扇風機を用いて、内容物に対して微風を吹き付けて15分間乾燥させた。その後、包装体を密封した。
【0218】
[比較例2]
基材層として、厚み15μmの二軸延伸ポリアミドフィルム(東洋紡株式会社製、製品名「NAP02」)を準備した。基材層としての二軸延伸ポリアミドフィルムの吸水率は、9%であった。次に、二軸延伸ポリアミドフィルムの一方の面に、ポリエチレンイミン系アンカーコート剤を塗布した。次いで、溶融ポリエチレン樹脂を多数のノズルから直線状かつ平行に押し出した。ポリエチレン樹脂の厚みは65μmであり、幅は1mmであった。また、ポリエチレン樹脂同士の間隔は、1mmであった。このようにして、比較例2によるフィルムを作製した。比較例2によるフィルムにおいて、40℃における透水度は、470g・m-2・day-1であり、同一条件下における透湿度は、240g・m-2・day-1であった。
【0219】
そして、実施例1と同様にして、第4の保存試験を行った。
【0220】
以上の結果を表4乃至表10に示す。表4は、実施例1乃至比較例2の基材層及びシーラント層の吸水率を示している。表5乃至表10は、それぞれ第1の保存試験乃至第6の保存試験の結果を示している。
【0221】
【0222】
【0223】
【0224】
【0225】
【0226】
【0227】
【0228】
なお、上記表6及び表7の「開封性」の欄において、評価の「○」は、包装体を容易に引き裂いて開封できたことを意味する。また、上記表8の「開封性」の欄において、評価の「○」は、生培地を転倒させることなく、包装体を容易に引き裂いて開封できたことを意味する。
【0229】
また、上記表6乃至表8及び表10の「保存性」の欄において、評価の「○」は、内容物の保存性が良好であったことを意味する。また、評価の「×」は、内容物の保存性が良好ではなかったことを意味する。
【0230】
さらに、上記表8の「密封性」の欄において、評価の「○」は、シール部において浸透液の液漏れが発生していなかったことを意味する。また、評価の「×」は、シール部において浸透液の液漏れが発生していたことを意味する。
【0231】
以下、各保存試験の結果について説明する。
【0232】
(第1の保存試験)
表5に示すように、第1の保存試験において、比較例1による積層フィルムでは、96時間が経過した後であっても、積算重量減少量が1.9gであった。この場合、比較例1による包装体では、96時間が経過した後であっても、包装体内に収納した2mlの水が、包装体内に残っていると考えられる。
【0233】
一方、第1の保存試験において、実施例1による第1の包装体及び第2の包装体においては、24時間が経過した際に、重量減少量が2.0gを超えていた。すなわち、実施例1による第1の包装体及び第2の包装体では、24時間が経過する前に、包装体内に収納した2mlの水が、包装体外へ排出されていた。
【0234】
また、実施例1による第2の包装体では、実施例1による第1の包装体よりもサイズが小さかったが、第2の包装体における重量減少量は、第1の包装体における重量減少量よりも多かった。これは、第2の包装体では、内容物(ソーセージ)を真空包装したことにより、透水性積層フィルムが水に接触する面積が増えたため、包装体外へ排出できる水の量が増えたためと考えられる。
【0235】
このように、実施例1による第1の包装体及び第2の包装体においては、比較例1による包装体と比較して、数十倍以上の水を包装体外へ排出できた。また、比較例1による包装体を作製するための積層フィルムは、アルミニウム箔等の実質的な水蒸気バリア層を備えていない。すなわち、比較例1による積層フィルムは、従来の一般的な包装材料である。このため、実施例1による第1の包装体及び第2の包装体では、従来の一般的な包装材料と比較して、多量の水を包装体外へ排出できることが分かった。
【0236】
(第2の保存試験)
表6に示すように、第2の保存試験において、実施例1及び実施例2による包装体では、従来の一般的な包装材料から作製された、比較例1による包装体と同様に、包装体を容易に引き裂いて開封できた。
【0237】
さらに、表6に示すように、第2の保存試験において、比較例1による包装体から取り出した内容物(中華肉饅頭)では、保存性が良好ではなかった。具体的には、内容物が、包装体内に収納した水を吸収することにより、内容物の一部が泥状に変質していた。また、比較例1による包装体を開封した際に、包装体内から腐敗臭がした。
【0238】
これに対して実施例1及び実施例2による包装体から取り出した内容物(中華肉饅頭)では、保存性が良好であった。具体的には、内容物の外観に、異常と判定されるような変化は生じていなかった。また、実施例1による包装体から取り出した内容物では、内容物が湿り気を帯びており、ゴムのような触感であった。すなわち、実施例1による包装体から取り出した内容物では、柔らかさを維持していた。さらに、実施例1による包装体を開封した際、包装体内から腐敗臭はしなかった。なお、実施例1による包装体から取り出した内容物では、内容物が全体的に縮小して小さくなっていたため、内容物の表面が少し硬くなったように感じられた。
【0239】
また、実施例2による包装体から取り出した内容物(中華肉饅頭)では、内容物の大きさの変化は認められなかった。また、実施例2による包装体から取り出した内容物では、内容物の表面が少し乾燥していたが、柔らかい状態を維持していた。また、実施例2による包装体を開封した際、包装体内から腐敗臭はしなかった。さらに、実施例2による包装体内には、包装体を密封する際に加えた水は残っていなかった。
【0240】
このように、実施例1による包装体では、内容物から速やかに水分を除去できることが分かった。このため、実施例1による包装体では、包装体内に内容物を収納した状態で、乾燥食品を製造できることが判明した。
【0241】
また、実施例2による包装体では、内容物自体の温度が高い状態で、内容物を包装体内に収納した場合であっても、包装体の内面に付着した結露水を速やかに包装体外へ排出できることが分かった。このため、内容物が結露水を吸収してしまうことを抑制できることが判明した。また、結露水が包装体内から無くなった後は、透水性積層フィルムの低い透湿度(表3参照)により、内容物の急激な乾燥を抑制できることが判明した。
【0242】
さらに、第2の保存試験の結果により、本実施の形態による透水性積層フィルムでは、包装体内に生じる結露水又は離水を包装体外へ排出した後において、内容物の乾燥度合いを調整できることが分かった。すなわち、透水性積層フィルムの基材層及び又はシーラント層の材料及び又は厚みを調整することにより、内容物の乾燥速度を早めたり遅らせたりできることが判明した。
【0243】
(第3の保存試験)
表7に示すように、第3の保存試験において、実施例1及び実施例3による包装体では、包装体を容易に引き裂いて開封できた。
【0244】
さらに、表7に示すように、第3の保存試験において、実施例1及び実施例3による包装体から取り出した内容物(うどん)では、保存性が良好であった。具体的には、実施例1及び実施例3による包装体から取り出した内容物では、かなりの水分を失って灰色に変色していた。一方、実施例1及び実施例3による包装体から取り出した内容物では、乾燥麺のように硬くなってはおらず、ゴムのような触感であった。これは、包装体内の湿度が高い状態で、内容物から水分が抜けたためと考えられる。このように、本実施の形態による透水性積層フィルムでは、高い湿度下で内容物を乾燥させることができることがわかった。このため、本実施の形態による透水性積層フィルムを用いることにより、湿度が低い空気を吹き付ける従来の乾燥方法とは異なる方法によって、従来にない乾燥食品の製造ができることが判明した。
【0245】
また、本実施の形態による透水性積層フィルムの基材層として、二軸延伸ポリアミドフィルムに、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を用いて紙を貼り合わせた積層フィルムが使用され得ることが判明した。このことは、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤の透湿度が大きいこと、及び紙が通気性を有することによって、水分の透過をほとんど阻害しないことに起因していると考えられる。
【0246】
(第4の保存試験)
表8に示すように、第4の保存試験において、比較例2による包装体では、10個中8個の包装体のシール部において、浸透液の液漏れが発生していた。具体的には、比較例2による包装体では、底シール部(
図1に示す第2端部シール部141)と背シール部(
図1に示す合掌シール部151)とが交差する箇所で、ポリエチレン樹脂の長手方向に沿って、浸透液の液漏れが発生していた。このため、比較例2による包装体では、収納された生培地が、虫(例えばダニ)を誘引する可能性があることが分かった。また、比較例2による包装体では、収納された生培地が、包装体外に存在する微生物によって汚染されてしまう可能性があることが分かった。
【0247】
これに対して実施例1による包装体では、シール部において浸透液の液漏れが発生していなかった。このため、実施例1による包装体では、収納された生培地が、虫(例えばダニ)を誘引する可能性が少ないことが分かった。また、実施例1による包装体では、収納された生培地が、包装体外に存在する微生物によって汚染されてしまう可能性が少ないことが分かった。
【0248】
また、表8に示すように、第4の保存試験において、実施例1による包装体では、比較例2による包装体と同様に、包装体を容易に引き裂いて開封できた。ここで、比較例2による包装体を作製するためのフィルムは、アルミニウム箔等の実質的な水蒸気バリア層を備えていない。すなわち、比較例2によるフィルムは、従来の一般的な包装材料である。このため、実施例1による包装体では、従来の一般的な包装材料から作製された、比較例2による包装体と同様に、包装体を容易に引き裂いて開封できた。
【0249】
さらに、表8に示すように、第4の保存試験において、比較例2による包装体から取り出した内容物(生培地)では、保存性が良好ではなかった。具体的には、比較例2による包装体では、保存開始の翌日には寒天の離水に由来する水が包装体内に多く存在していたが、保存開始から2週間後には、包装体内の水の存在は認められなくなっていた。そして、保存開始から15週間後には、比較例2による包装体内の生培地が乾燥し、シャーレ内で縮小していた。
【0250】
これに対して実施例1による包装体から取り出した内容物(生培地)では、保存性が良好であった。具体的には、実施例1による包装体内の生培地は、保存開始から15週間後であっても乾燥していなかった。なお、実施例1による包装体においても、比較例2による包装体と同様に、保存開始の翌日には寒天の離水に由来する水が包装体内に多く存在していたが、保存開始から2週間後には、包装体内の水の存在は認められなくなっていた。
【0251】
このように、実施例1による包装体では、従来の一般的な包装材料から作製された、比較例2による包装体と比較して、生培地の使用期限を長く設定できることが判明した。
【0252】
なお、実施例1による透水性積層フィルムの基材層として使用した二軸延伸ポリアミドフィルムの厚み等を変更することによって、生培地の使用期限を更に長く設定し得ると考えられる。また、包装体内に溜まった水を包装体外へ排出する時間を短縮し得ると考えられる。同様に、実施例1による透水性積層フィルムのシーラント層として使用したエチレン-ビニルアルコール共重合体フィルムの厚み等を変更することによって、生培地の使用期限を更に長く設定し得ると考えられる。また、包装体内に溜まった水を包装体外へ排出する時間を短縮し得ると考えられる。
【0253】
この場合、例えば、基材層として、厚み25μmの二軸延伸ポリアミドフィルムを使用しても良い。また、シーラント層として使用した「エバール(登録商標)EF-F」の厚みを厚くしても良く、シーラント層として、「エバール(登録商標)EF-E」を使用しても良い。これらの場合、透水性積層フィルムの透水度と透湿度とを相対的に低くできるので内容物の乾燥を遅らせることができると考えられる。
【0254】
また、シーラント層として、厚み15μmの「エバール(登録商標)EF-CR」を使用しても良い。この場合、透水性積層フィルムの透水度と透湿度とが相対的に高くなる。このため、包装体内に内容物を収納した後、包装体内に溜まった水を包装体外へ排出する時間を短縮できると考えられる。
【0255】
(第5の保存試験)
表9に示すように、第5の保存試験において、実施例1による包装体では、包装体内の酸素濃度が、0.1%であった。
【0256】
このように、実施例1による包装体では、酸素バリア性に優れていることが分かった。このため、実施例1による包装体では、内容物を脱酸素剤と共に包装体内に収納することによって、カビの繁殖を効果的に抑制できることが分かった。また、実施例1による包装体では、内容物の保存中に、包装体内の水分を包装体外へ排出できる。このため、実施例1による包装体では、内容物の水分活性を低下させることも可能である。この結果、実施例1による包装体では、内容物の水分活性を、細菌又は酵母が繁殖できない程度に低下させることが可能であるとともに、カビの繁殖も効果的に抑制できることが判明した。
【0257】
また、実施例1による包装体では、結露水又は離水を包装体内から包装体外へ排出できるため、内容物入り包装体の流通過程において、結露水等を包装体外へ排出できる。このため、内容物が嫌気性菌用生培地である場合、包装体の開封後に嫌気性菌用生培地を乾燥させることなく、嫌気性菌用生培地を直ちに使用することもできる。
【0258】
(第6の保存試験)
表10に示すように、第6の保存試験において、比較例1による包装体から取り出した内容物(カステラ)では、保存性が良好ではなかった。具体的には、比較例1による包装体から取り出した内容物では、内容物の部分的な水濡れは認められなかったが、試験した10袋中4袋で内容物の表面にカビが生えていた。なお、比較例1による包装体では、包装体の内面での結露は認められなかった。
【0259】
これに対して実施例2による包装体から取り出した内容物(カステラ)では、保存性が良好であった。具体的には、実施例2による包装体から取り出した内容物では、内容物にカビは生えておらず、内容物の全体がしっとりして異臭も認められなかった。また、実施例2による包装体では、包装体の内面での結露及び内容物の部分的な水濡れは認められなかった。すなわち、実施例2による包装体では、内容物が熱いうちに包装体内に収納したことによって袋体内面に結露が生じた場合であっても、時間の経過に伴って結露水を包装体外へ排出できたと考えられる。このため、実施例2による包装体では、結露水が内容物に悪影響を与えることはなかった。
【0260】
このように、実施例2による包装体では、包装体内で内容物を冷却した場合であっても、内容物の劣化を抑制できることが分かった。このため、内容物に対して加熱加工を施した後に、内容物を包装体内に収納する場合において、冷却工程を省略できる。このため、冷却の際に、内容物に微生物が付着してしまうことを抑制できる。この結果、初発菌数を少なくすることができ、包装体内における微生物の繁殖を抑制できることが分かった。
【0261】
以上説明したように、本実施の形態による包装体では、初発菌数を少なくできるとともに、結露水等によって上昇した内容物の水分活性を速やかに低下できることが分かった。このため、本実施の形態による包装体では、繁殖速度は速いが水分活性が高くないと繁殖できない酵母又は細菌の繁殖を効果的に抑制できることが分かった。さらに、本実施の形態による包装体では、内容物の水分を包装体外へ排出することで、内容物の水分活性を低下させることができ、カビの繁殖も抑制できる可能性があることが分かった。
【0262】
上記各実施の形態及び変形例に開示されている複数の構成要素を必要に応じて適宜組合せることも可能である。あるいは、上記各実施の形態及び変形例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。