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  • 特開-防振装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160206
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 13/10 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
F16F13/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070382
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】522297236
【氏名又は名称】株式会社プロスパイラ
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】高倉 智樹
【テーマコード(参考)】
3J047
【Fターム(参考)】
3J047AA03
3J047CA04
3J047CB03
3J047CD01
3J047FA01
(57)【要約】
【課題】弾性体の酸化を抑える。
【解決手段】振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材11、および他方に連結される第2取付部材12と、第1取付部材と第2取付部材とを連結した弾性体13と、第1取付部材内の液室19を、第1取付部材の中心軸線Oに沿う軸方向に沿って、弾性体を隔壁の一部に有する第1液室14、および第2液室15に仕切るとともに、第1液室と第2液室とを連通するオリフィス通路17が形成された仕切部材16と、を備えた防振装置1であって、第1取付部材と第2取付部材とを連結し、かつ弾性体を前記軸方向に沿う第1液室の反対側から覆う変形可能な遮蔽体21が設けられ、遮蔽体と弾性体とにより前記軸方向に挟まれて画成された遮蔽室22は、液室に対して遮断されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材、および他方に連結される第2取付部材と、
前記第1取付部材と前記第2取付部材とを連結した弾性体と、
前記第1取付部材内の液室を、前記第1取付部材の中心軸線に沿う軸方向に沿って、前記弾性体を隔壁の一部に有する第1液室、および第2液室に仕切るとともに、前記第1液室と前記第2液室とを連通するオリフィス通路が形成された仕切部材と、を備えた防振装置であって、
前記第1取付部材と前記第2取付部材とを連結し、かつ前記弾性体を前記軸方向に沿う前記第1液室の反対側から覆う変形可能な遮蔽体が設けられ、
前記遮蔽体と前記弾性体とにより前記軸方向に挟まれて画成された遮蔽室は、前記液室に対して遮断されている、防振装置。
【請求項2】
前記遮蔽室の内容積は、前記第1液室および前記第2液室それぞれの内容積より小さい、請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
前記遮蔽体は、前記弾性体と同一の材質で一体に形成されている、請求項1または2に記載の防振装置。
【請求項4】
前記遮蔽室には、前記液室に封入されている液体と同じ液体が封入されている、請求項1または2に記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の防振装置として、従来から、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材、および他方に連結される第2取付部材と、第1取付部材と第2取付部材とを連結した弾性体と、第1取付部材内の液室を、第1取付部材の中心軸線に沿う軸方向に沿って、弾性体を隔壁の一部に有する第1液室、および第2液室に仕切る仕切部材と、を備える構成が知られている。仕切部材には、第1液室と第2液室とを連通するオリフィス通路が形成されている。この防振装置では、振動の入力時に、第1取付部材および第2取付部材が、弾性体を弾性変形させながら相対的に変位し、第1液室の液圧を変動させてオリフィス通路に液体を流通させることで、振動を減衰、吸収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-116920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の防振装置では、高温下に置かれた状態で弾性体が酸化することで、第1取付部材および第2取付部材の軸方向の相対位置が経時変化し、所期した防振性能を発揮しなくなるおそれがある。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、弾性体の酸化を抑えることができる防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の防振装置は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材、および他方に連結される第2取付部材と、前記第1取付部材と前記第2取付部材とを連結した弾性体と、前記第1取付部材内の液室を、前記第1取付部材の中心軸線に沿う軸方向に沿って、前記弾性体を隔壁の一部に有する第1液室、および第2液室に仕切るとともに、前記第1液室と前記第2液室とを連通するオリフィス通路が形成された仕切部材と、を備えた防振装置であって、前記第1取付部材と前記第2取付部材とを連結し、かつ前記弾性体を前記軸方向に沿う前記第1液室の反対側から覆う変形可能な遮蔽体が設けられ、前記遮蔽体と前記弾性体とにより前記軸方向に挟まれて画成された遮蔽室は、前記液室に対して遮断されている。
【0007】
第1取付部材と第2取付部材とを連結し、かつ弾性体を前記軸方向に沿う第1液室の反対側から覆う変形可能な遮蔽体が設けられているので、遮蔽体と弾性体とにより前記軸方向に挟まれて画成された遮蔽室によって、弾性体が外気に触れるのを防ぐことが可能になり、弾性体の酸化を抑制することができる。
遮蔽室が、液室に対して遮断されているので、遮蔽室を設けたことで防振性能が変化するのを抑制することが可能になり、例えば現行の防振装置に容易に適用すること等ができる。
【0008】
前記遮蔽室の内容積は、前記第1液室および前記第2液室それぞれの内容積より小さくてもよい。
【0009】
遮蔽室の内容積が、第1液室および第2液室それぞれの内容積より小さくなっているので、遮蔽室を設けたことで、防振装置が前記軸方向にかさ張るのを抑制することができる。
【0010】
前記遮蔽体は、前記弾性体と同一の材質で一体に形成されてもよい。
【0011】
遮蔽体が、弾性体と同一の材質で一体に形成されているので、防振装置を容易に形成することができるとともに、第1取付部材および第2取付部材の相対変位に伴い、遮蔽体を円滑に変形させることができる。
【0012】
前記遮蔽室には、前記液室に封入されている液体と同じ液体が封入されてもよい。
【0013】
遮蔽室に、液室に封入されている液体と同じ液体が封入されているので、防振装置を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、弾性体の酸化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態として示した防振装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る防振装置の実施の形態について、図1に基づいて説明する。
防振装置1は、振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材11、および他方に連結される第2取付部材12と、第1取付部材11と第2取付部材12とを連結した弾性体13と、第1取付部材11内を後述する主液室(第1液室)14と副液室(第2液室)15とに仕切る仕切部材16と、を備えた液体封入型の防振装置である。
この防振装置1が例えば自動車に装着される場合、第2取付部材12が振動発生部としてのエンジンに連結され、第1取付部材11が振動受部としての車体に連結される。これにより、エンジンの振動が車体に伝達することが抑えられる。
【0017】
以下、第1取付部材11の中心軸線Oに沿う方向を軸方向という。また、軸方向に沿う第2取付部材12側を上側、仕切部材16側を下側という。また、防振装置1を軸方向から見た平面視において、中心軸線Oに交差する方向を径方向といい、中心軸線O周りに周回する方向を周方向という。
なお、第1取付部材11、第2取付部材12、および弾性体13はそれぞれ、平面視した状態で円形状若しくは円環状に形成されるとともに、中心軸線Oと同軸に配設されている。
【0018】
第2取付部材12は、軸方向に延びる柱状に形成されている。第2取付部材12は、第1取付部材11における径方向の内側に設けられている。第2取付部材12には、その上端面から下方に向かって延びるねじ孔12bが形成され、このねじ孔12bにエンジン側の取付け具となるボルト(図示せず)が螺合される。
【0019】
弾性体13は、ゴム材料で形成され、第1取付部材11の内周面と第2取付部材12の外周面とにそれぞれ連結されている。なお、弾性体13は、例えば合成樹脂材料等で形成されてもよい。弾性体13は、径方向の内側から外側に向かうに従い下方に向けて延びる筒状に形成されている。
図示の例では、第1取付部材11内に嵌合筒11aが嵌合されており、弾性体13は、嵌合筒11aの内周面と、第2取付部材12の外周面と、にそれぞれ加硫接着されている。
【0020】
第1取付部材11の内周面には、全域にわたってゴム膜11bが加硫接着されている。第1取付部材11の内部のうち、弾性体13より下方に位置する部分が、液室19となっている。第1取付部材11の内部のうち、弾性体13より下方に位置する部分に、仕切部材16と、ダイヤフラム20と、が上方から下方に向けてこの順に設けられている。
【0021】
ダイヤフラム20は、ゴムや軟質樹脂等の弾性材料からなり、有底円筒状に形成されている。ダイヤフラム20は、第1取付部材11に加硫接着されている。ダイヤフラム20は、ゴム膜11bと一体に形成されている。ダイヤフラム20は、第1取付部材11の下端開口を閉塞している。図示の例では、ダイヤフラム20の底部が、外周側で深く中央部で浅い形状になっている。なお、ダイヤフラム20の形状は、適宜変更してもよい。
【0022】
第1取付部材11の内部のうち、ダイヤフラム20と弾性体13とにより軸方向に挟まれた部分が液室19となっている。液室19は、弾性体13とダイヤフラム20とにより液密に封止された密閉空間となっている。液室19に液体が封入(充填)されている。
【0023】
液室19は、仕切部材16によって、弾性体13を隔壁の一部に有する主液室14と、ダイヤフラム20を隔壁の一部に有する副液室15と、に軸方向に仕切られている。
主液室14は、弾性体13と仕切部材16とによって囲まれた空間であり、弾性体13の変形によって内容積が変化する。副液室15は、ダイヤフラム20と仕切部材16とによって囲まれた空間であり、ダイヤフラム20の変形によって内容積が変化する。このような構成からなる防振装置1は、主液室14が鉛直方向上側に位置し、副液室15が鉛直方向下側に位置するように取り付けられて用いられる、圧縮式の装置である。
【0024】
仕切部材16は、円板状に形成され、第1取付部材11内に嵌合されている。
仕切部材16には、主液室14と副液室15とを連通するオリフィス通路17が形成されている。オリフィス通路17は周方向に延びている。
仕切部材16には、ゴム材料で形成された板状のメンブラン18が収容された収容室16aが形成されている。収容室16aは、仕切部材16における径方向の中央部に設けられている。仕切部材16には、収容室16aおよび主液室14を互いに連通する第1連通孔16bと、収容室16aおよび副液室15を互いに連通する第2連通孔16cと、が形成されている。第1連通孔16bおよび第2連通孔16cは軸方向に延びている。第1連通孔16bおよび第2連通孔16cは、複数ずつ設けられている。
【0025】
このような構成からなる防振装置1では、振動の入力時に、第1取付部材11および第2取付部材12が弾性体13を弾性変形させながら相対的に変位する。すると、液室19の液体が、主液室14と副液室15との間を、オリフィス通路17を通って流通し、また、メンブラン18が収容室16aで変形若しくは変位することで、液室19の液体が、主液室14と副液室15との間を、収容室16a、第1連通孔16b、および第2連通孔16cを通って流通する。
【0026】
そして、本実施形態では、第1取付部材11の内周面と第2取付部材12の外周面とを連結し、かつ弾性体13を上方(軸方向に沿う第1液室の反対側)から覆う変形可能な遮蔽体21が設けられている。
【0027】
遮蔽体21は、弾性体13の外周面から上方に離れている。遮蔽体21は、嵌合筒11aの内周面と、第2取付部材12の外周面と、にそれぞれ加硫接着されている。遮蔽体21は、弾性体13と同一の材質で一体に形成されている。遮蔽体21は、環状の板状に形成されている。遮蔽体21は、中心軸線Oと同軸に配設されている。遮蔽体21は、径方向の内側から外側に向かうに従い下方に向けて延びている。遮蔽体21の容積は、弾性体13の容積より小さくなっている。遮蔽体21の肉厚は、弾性体13の肉厚より薄くなっている。
なお、遮蔽体21は、ゴム材料以外の材質で形成されてもよく、また、例えば蛇腹状等に形成されてもよい。
【0028】
遮蔽体21と弾性体13とにより軸方向に挟まれて画成された遮蔽室22は、液室19に対して遮断されている。遮蔽室22は、液室19に連通していない独立した密閉空間となっている。遮蔽室22は、環状に形成され、中心軸線Oと同軸に配設されている。遮蔽室22の内容積は、主液室14および副液室15それぞれの内容積より小さくなっている。遮蔽室22には、液室19に封入されている液体と同じ液体が封入されている。
なお、遮蔽室22には、液室19に封入されている液体と異なる液体、若しくは気体が封入されてもよい。
【0029】
以上説明したように、本実施形態に係る防振装置1によれば、第1取付部材11と第2取付部材12とを連結し、かつ弾性体13を上方から覆う変形可能な遮蔽体21が設けられているので、遮蔽体21と弾性体13とにより軸方向に挟まれて画成された遮蔽室22によって、弾性体13が外気に触れるのを防ぐことが可能になり、弾性体13の酸化を抑制することができる。
遮蔽室22が、液室19に対して遮断されているので、遮蔽室22を設けたことで防振性能が変化するのを抑制することが可能になり、例えば現行の防振装置に容易に適用すること等ができる。
【0030】
遮蔽室22の内容積が、主液室14および副液室15それぞれの内容積より小さくなっているので、遮蔽室22を設けたことで、防振装置1が軸方向にかさ張るのを抑制することができる。
【0031】
遮蔽体21が、弾性体13と同一の材質で一体に形成されているので、防振装置1を容易に形成することができるとともに、第1取付部材11および第2取付部材12の相対変位に伴い、遮蔽体21を円滑に変形させることができる。
【0032】
遮蔽室22に、液室19に封入されている液体と同じ液体が封入されているので、防振装置1を容易に形成することができる。
【0033】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0034】
例えば前記実施形態では、支持荷重が作用することで主液室14に正圧が作用する圧縮式の防振装置1について説明したが、主液室14が鉛直方向下側に位置し、かつ副液室15が鉛直方向上側に位置するように取り付けられ、支持荷重が作用することで主液室14に負圧が作用する吊り下げ式の防振装置にも適用可能である。
【0035】
また、前記実施形態では、仕切部材16が、第1取付部材11内の液室19を、弾性体13を隔壁の一部に有する主液室14、および副液室15に仕切るものとしたが、これに限られるものではない。
例えば、ダイヤフラム20を設けるのに代えて弾性体を設け、副液室15を設けるのに代えて、この弾性体を隔壁の一部に有する受圧液室を設けてもよい。例えば、仕切部材16が、第1取付部材11内の液室19を、第1液室14および第2液室15に仕切り、第1液室14および第2液室15のうちの少なくとも1つが、弾性体13を隔壁の一部に有する他の構成に適宜変更することが可能である。
【0036】
また、防振装置1は、車両のエンジンマウントに限定されるものではなく、エンジンマウント以外に適用することも可能である。例えば、建設機械に搭載された発電機のマウントにも適用することも可能であり、或いは、工場等に設置される機械のマウントにも適用することも可能である。
【0037】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0038】
本発明の態様は、例えば、以下の通りである。
<1>
振動発生部および振動受部のうちのいずれか一方に連結される筒状の第1取付部材、および他方に連結される第2取付部材と、
前記第1取付部材と前記第2取付部材とを連結した弾性体と、
前記第1取付部材内の液室を、前記第1取付部材の中心軸線に沿う軸方向に沿って、前記弾性体を隔壁の一部に有する第1液室、および第2液室に仕切るとともに、前記第1液室と前記第2液室とを連通するオリフィス通路が形成された仕切部材と、を備えた防振装置であって、
前記第1取付部材と前記第2取付部材とを連結し、かつ前記弾性体を前記軸方向に沿う前記第1液室の反対側から覆う変形可能な遮蔽体が設けられ、
前記遮蔽体と前記弾性体とにより前記軸方向に挟まれて画成された遮蔽室は、前記液室に対して遮断されている、防振装置。
<2>
前記遮蔽室の内容積は、前記第1液室および前記第2液室それぞれの内容積より小さい、前記<1>に記載の防振装置。
<3>
前記遮蔽体は、前記弾性体と同一の材質で一体に形成されている、前記<1>または<2>に記載の防振装置。
<4>
前記遮蔽室には、前記液室に封入されている液体と同じ液体が封入されている、前記<1>から<3>のいずれかに記載の防振装置。
【符号の説明】
【0039】
1 防振装置
11 第1取付部材
12 第2取付部材
13 弾性体
14 主液室(第1液室)
15 副液室(第2液室)
16 仕切部材
17 オリフィス通路
19 液室
21 遮蔽体
22 遮蔽室
O 中心軸線
図1