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特開2023-1602155員環の縮合した縮合多環化合物の製造方法、インダセン誘導体、並びにp-フェニレンビニレン誘導体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160215
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】5員環の縮合した縮合多環化合物の製造方法、インダセン誘導体、並びにp-フェニレンビニレン誘導体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 17/35 20060101AFI20231026BHJP
   C07C 23/34 20060101ALI20231026BHJP
   C07C 23/46 20060101ALI20231026BHJP
   C07C 41/18 20060101ALI20231026BHJP
   C07C 43/225 20060101ALI20231026BHJP
   C07C 15/56 20060101ALI20231026BHJP
   C07C 1/24 20060101ALI20231026BHJP
   C07C 23/38 20060101ALI20231026BHJP
   B01J 31/02 20060101ALI20231026BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231026BHJP
【FI】
C07C17/35
C07C23/34
C07C23/46
C07C41/18
C07C43/225 A
C07C15/56
C07C1/24
C07C23/38
B01J31/02 101Z
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070392
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】592218300
【氏名又は名称】学校法人神奈川大学
(74)【代理人】
【識別番号】100151183
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 伸哉
(72)【発明者】
【氏名】辻 勇人
(72)【発明者】
【氏名】岩田 啓佑
【テーマコード(参考)】
4G169
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G169AA06
4G169BA21A
4G169BA21B
4G169BA44A
4G169BB08A
4G169BB18A
4G169BD01B
4G169BD02B
4G169BD03A
4G169BD03B
4G169BD04B
4G169BD15A
4G169BD15B
4G169BE34A
4G169BE34B
4G169CB38
4G169CB65
4G169DA02
4H006AA02
4H006AC22
4H006AC25
4H006AC28
4H006AC30
4H006BA02
4H006BA25
4H006BA31
4H006BA32
4H006BA37
4H006BA48
4H006BA67
4H039CA40
4H039CD20
4H039CD90
4H039CH20
(57)【要約】
【課題】化学反応の足場として有用な置換基を多く備えた中間体を得ることのできる、5員環の縮合した縮合多環化合物の製造方法や、そのような製造方法により調製される新規なp-フェニレンビニレン誘導体を提供すること。
【解決手段】本発明は、下記一般式(1)で表す部分構造を備えた化合物に酸を作用させることにより、下記一般式(2)で表す部分構造を備えた化合物に転換することを特徴とする5員環の縮合した縮合多環化合物の製造方法である。一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基等であり、各Xは、それぞれ独立にハロゲン原子であり、Arの符号を付した環構造は、置換基を有してもよい芳香環である。上記一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基等であり、各Xは、それぞれ独立にハロゲン原子であり、Arの符号を付した環構造は、置換基を有してもよい芳香環である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表す部分構造を備えた化合物に酸を作用させることにより、下記一般式(2)で表す部分構造を備えた化合物に転換することを特徴とする5員環の縮合した縮合多環化合物の製造方法。
【化1】
(上記一般式(1)における*を付した二重結合はシス型でもトランス型でもよく、一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、-CQ、又は置換基を有してもよいアリール基であるか、RとRとが組み合わさって環構造を形成し、各Qは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基であり、各Xは、それぞれ独立にハロゲン原子であり、Arの符号を付した環構造は、置換基を有してもよい芳香環である。上記一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、-CQ、又は置換基を有してもよいアリール基であるか、RとRとが組み合わさって環構造を形成し、各Qは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基であり、各Xは、それぞれ独立にハロゲン原子であり、Arの符号を付した環構造は、置換基を有してもよい芳香環である。)
【請求項2】
前記酸がルイス酸である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記ルイス酸が、三フッ化ホウ素又はこれにルイス塩基が結合して錯体を形成した化合物である請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
下記一般式(3A)~(3F)のいずれかで表すインダセン誘導体。
【化2】
(上記一般式(3A)~(3F)中、各Rは、それぞれ独立に、水素原子、-CQ、又は置換基を有してもよいアリール基であるか、同じ炭素原子に結合した2つのR同士が組み合わさって環構造を形成し、各Qは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基であり、各Xは、それぞれ独立に、ハロゲン原子である。)
【請求項5】
下記一般式(4)で表す炭素架橋p-フェニレンビニレン誘導体。
【化3】
(上記一般式(4)中、各Rは、-CQであり、各Qは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基である。)
【請求項6】
前記一般式(4)における各Rがn-ブチル基である請求項5記載の炭素架橋p-フェニレンビニレン誘導体。
【請求項7】
下記一般式(11)で表す化合物に第1の酸を作用させることにより、下記一般式(12)で表す化合物を得る工程iと、
下記一般式(12)で表す化合物にアルキルリチウム化合物を作用させた後、下記一般式(13)で表す化合物を作用させることにより、下記一般式(14)で表す化合物を得る工程iiと、
下記一般式(14)で表す化合物と1,4-フェニレンジボロン酸化合物とをカップリング反応させることにより、下記一般式(15)で表す化合物を得る工程iiiと、
下記一般式(15)で表す化合物に第2の酸を作用させることにより、下記一般式(16)で表す化合物を得る工程ivと、を備えることを特徴とした炭素架橋p-フェニレンビニレン誘導体の製造方法。
【化4】
(上記化学反応式において、各Xは、それぞれ独立に、ハロゲン原子であり、各R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、-CQ、又は置換基を有してもよいアリール基であるか、RとRとが組み合わさって環構造を形成し、各R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、-CQ、又は置換基を有してもよいアリール基であるか、RとRとが組み合わさって環構造を形成し、各Qは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基である。)
【請求項8】
前記第1の酸及び前記第2の酸が、いずれもルイス酸である請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記ルイス酸が三フッ化ホウ素又はこれにルイス塩基が結合して錯体を形成した化合物である請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
前記R、R、R及びRの全てがn-ブチル基である請求項7記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、5員環の縮合した縮合多環化合物の製造方法、インダセン誘導体、並びに炭素架橋p-フェニレンビニレン誘導体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1つの6員環と2つの5員環が縮合した3環の芳香族化合物であるインダセンは、医薬品等の各種化学品や、大きなπ電子系を備えた化合物からなる発光材料、電子移動材料、正孔移動材料等の電子材料を調製するための中間体として有用である。一般に、縮合多環芳香族化合物の合成は容易なものではないが、こうしたインダセン誘導体を比較的簡便な手順で合成し、さらにそれを発展させて大きなπ電子系を備えたp-フェニレンビニレン誘導体とすることが本発明者らによって提案されてきた(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
引用文献1に記載されたp-フェニレンビニレン誘導体は、炭素原子により架橋されて梯子状の構造を備えた化合物であり、良好な発光効率を示すとともに分子ワイヤとして有用であるとされる。このようなp-フェニレンビニレン誘導体は、5員環を構成する炭素原子にフェニル基等のアリール基が結合したインダセン誘導体より合成されるとされ、引用文献1には、5員環部分が多くのフェニル基で置換されたインダセン誘導体を合成するための手順が紹介されている。
【0004】
一方で、各種化学品を合成するための中間体としてインダセン誘導体等の縮合多環化合物を見た場合、脱離基等のように化学反応の足掛かりとなる置換基を多数備えたものであることが望ましい。しかしながら、引用文献1で示された合成手順では、5員環部分にフェニル基等といったアリール基を多く備えたインダセン誘導体を得るには都合が良いものの、その5員環部分にアルキル基や化学反応の足掛かりとなる置換基を多く備えたインダセン誘導体を得るのは困難だった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-32197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の状況に鑑みてなされたものであり、化学反応の足場として有用な置換基を多く備えた中間体を得ることのできる、5員環の縮合した縮合多環化合物の製造方法や、そのような製造方法により調製される新規なp-フェニレンビニレン誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)で表す部分構造を備えた化合物にルイス酸等の酸を作用させることにより、新たに5員環が形成されて下記一般式(2)で表す部分構造を備えた化合物に転換されることを見出した。その反応機構としては、下記のようなものが想定される。なお、下記の化学反応式では、酸としてルイス酸である三フッ化ホウ素にジエチルエーテルが配位した化合物(BF・OEt)を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。また、下記の反応式では、5員環が1つだけ形成される例を示したが、例えばArで表す芳香環が5員環を形成させるための置換基を2つ備えていれば5員環が2つ形成されるし、Arで表す芳香環が5員環を形成させるための置換基を3つ備えていれば5員環が3つ形成されることになる。このようにして形成された新たな5員環は、ハロゲン原子(X)を複数備えることから、この5員環を含む化合物は、各種の化学製品を合成する際の中間体として有用なものである。
【0008】
【化1】
【0009】
具体的には、本発明は下記のようなものを提供する。
【0010】
本発明は、下記一般式(1)で表す部分構造を備えた化合物に酸を作用させることにより、下記一般式(2)で表す部分構造を備えた化合物に転換することを特徴とする5員環の縮合した縮合多環化合物の製造方法である。
【化2】
(上記一般式(1)における*を付した二重結合はシス型でもトランス型でもよく、一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、-CQ、又は置換基を有してもよいアリール基であるか、RとRとが組み合わさって環構造を形成し、各Qは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基であり、各Xは、それぞれ独立にハロゲン原子であり、Arの符号を付した環構造は、置換基を有してもよい芳香環である。上記一般式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、-CQ、又は置換基を有してもよいアリール基であるか、RとRとが組み合わさって環構造を形成し、各Qは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基であり、各Xは、それぞれ独立にハロゲン原子であり、Arの符号を付した環構造は、置換基を有してもよい芳香環である。)
【0011】
上記酸は、ルイス酸であることが好ましい。
【0012】
上記ルイス酸は、三フッ化ホウ素又はこれにルイス塩基が結合して錯体を形成した化合物であることが好ましい。
【0013】
また本発明は、下記一般式(3A)~(3F)のいずれかで表すインダセン誘導体でもある。
【化3】
(上記一般式(3A)~(3F)中、各Rは、それぞれ独立に、水素原子、-CQ、又は置換基を有してもよいアリール基であるか、同じ炭素原子に結合した2つのR同士が組み合わさって環構造を形成し、各Qは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基であり、各Xは、それぞれ独立に、ハロゲン原子である。)
【0014】
また本発明は、下記一般式(4)で表す炭素架橋p-フェニレンビニレン誘導体でもある。
【化4】
(上記一般式(4)中、各Rは、-CQであり、各Qは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基である。)
【0015】
上記一般式(4)における各Rは、n-ブチル基であることが好ましい。
【0016】
また本発明は、下記一般式(11)で表す化合物に第1の酸を作用させることにより、下記一般式(12)で表す化合物を得る工程iと、下記一般式(12)で表す化合物にアルキルリチウム化合物を作用させた後、下記一般式(13)で表す化合物を作用させることにより、下記一般式(14)で表す化合物を得る工程iiと、下記一般式(14)で表す化合物と1,4-フェニレンジボロン酸化合物とをカップリング反応させることにより、下記一般式(15)で表す化合物を得る工程iiiと、下記一般式(15)で表す化合物に第2の酸を作用させることにより、下記一般式(16)で表す化合物を得る工程ivと、を備えることを特徴とした炭素架橋p-フェニレンビニレン誘導体の製造方法でもある。
【化5】
(上記化学反応式において、各Xは、それぞれ独立に、ハロゲン原子であり、各R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、-CQ、又は置換基を有してもよいアリール基であるか、RとRとが組み合わさって環構造を形成し、各R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、-CQ、又は置換基を有してもよいアリール基であるか、RとRとが組み合わさって環構造を形成し、各Qは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基である。)
【0017】
上記第1の酸及び上記第2の酸は、いずれもルイス酸であることが好ましい。
【0018】
上記ルイス酸は、三フッ化ホウ素又はこれにルイス塩基が結合して錯体を形成した化合物であることが好ましい。
【0019】
上記R、R、R及びRの全てがn-ブチル基であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、化学反応の足場として有用な置換基を多く備えた中間体を得ることのできる、5員環の縮合した縮合多環化合物の製造方法や、そのような製造方法により調製される新規なp-フェニレンビニレン誘導体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の5員環の結合した縮合多環化合物の製造方法の一実施態様、本発明のインダセン誘導体の一実施形態、本発明の炭素架橋p-フェニレンビニレン誘導体の一実施形態、及び本発明の炭素架橋p-フェニレンビニレンの製造方法の一実施態様についてそれぞれ説明する。なお、本発明は、以下の実施形態及び実施態様に何ら限定されるものでなく、本発明の範囲において適宜変更を加えて実施することができる。
【0022】
<5員環の結合した縮合多環化合物の製造方法>
まずは、本発明の5員環の結合した縮合多環化合物の製造方法の一実施態様について説明する。本発明の5員環の結合した縮合多環化合物の製造方法は、下記一般式(1)で表す部分構造を備えた化合物に酸を作用させることにより、下記一般式(2)で表す部分構造を備えた化合物に転換することを特徴とする。この製造方法を実行することにより、下記一般式(1)においてArで表す芳香環に縮合した5員環が増設される。この反応は、室温でも実行可能で収率も良い。また、下記一般式(2)においてXで表すハロゲン原子が縮合環に導入されるので、この反応により得られた一般式(2)で表す化合物は、各種化学品の合成のための中間体として有用である。このように、本発明の製造方法によれば、簡便な実験操作で各種化学品の合成に有用な中間体を収率良く調製することができる。
【0023】
【化6】
【0024】
上記一般式(1)では、便宜上、二重結合部分をトランス型で表記したが、この二重結合部分、すなわち*を付した二重結合はシス型でもトランス型でもよい。既に説明したように、一般式(1)で表す化合物は、一般式(1)に含まれる水酸基が酸により引き抜かれることでカチオン型の中間構造をとることになり、その際、シス型とトランス型とを行き来する平衡状態となる。そして、シス型をとったときに、R及びRの結合する炭素原子が芳香環を攻撃し、5員環が形成される。このような反応機構によれば、一般式(1)において*を付した結合はシス型でもトランス型でも構わないことになる。なお、下記の化学反応式では酸としてBF・OEtを例示したが、勿論他の酸を用いてもよい。
【0025】
【化7】
【0026】
上記一般式(1)におけるR及びRは、それぞれ独立に、(イ)水素原子、-CQ、又は置換基を有してもよいアリール基であるか、(ロ)RとRとが組み合わさって環構造を形成する。(イ)の場合、各Qはそれぞれ独立に水素原子又は1価の有機基である。つまり、RやRが-CQとなる場合、これらは-CHや-CHQやCHQや-CQの構造となるのでアルキル末端としての炭素原子を持ち、後者3種はその先に水素原子又は1価の有機基を持つ。このような1価の有機基としては、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルコキシ基、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキルスルファニル基、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキルアミノ基、アルキルアリール基等が挙げられる。途中に分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、その鎖中又は末端に置換基を有してもよいアリール基を備えてもよい。鎖中にヘテロ原子やアリール基を備えたアルキル基は、厳密にはアルキル基とは呼べないが、本発明ではこのようなものもアルキル基と呼称する。この場合、アリール基に含まれる炭素の数は、アルキル基の炭素数には含まれないものとする。さらに、これらのアルキル基は、各種の置換基を備えてもよい。このような置換基としては、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、アリール基、アルコキシ基等が挙げられる。また、上記ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。これらの中でも、Qとしては、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基が好ましく挙げられる。また、上記置換基を有してもよいアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基、ピリミジル基等が挙げられる。(ロ)の場合、RとRとが組み合わさって形成される環構造としては、置換されてもよい脂肪環や芳香環が挙げられ、シクロペンタン環、フルオレン環、シクロヘキサン環、インデン環、テトラヒドロフラン環、ピラン環、ピロリジン環、ピペリジン環等が挙げられる。
【0027】
上記一般式(1)において、各Xは、それぞれ独立に、ハロゲン原子である。このようなハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、これらの中でも臭素原子が好ましく挙げられる。
【0028】
上記一般式(1)において、Arの符号を付した環構造は、置換基を有してもよい芳香環である。このような芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環等が例示される。これらの中でも、ベンゼン環やナフタレン環等が好ましく挙げられる。なお、上記一般式(1)は、化合物の部分構造であり、このArがどのような置換基を持っていてもよいし、このArが縮合環であってもよい。例えば、このArが、一般式(1)に示す鎖状基をもう一つ備えていれば5員環が2つ縮環した化合物が得られるし、その鎖状基をもう二つ備えていれば5員環が3つ縮環した化合物が得られることになる。
【0029】
上記一般式(1)で表す部分構造を備えた化合物の一例としては、次のようなものを挙げられる。なお、下記の化学式において、Meはメチル基を表し、Buはn-ブチル基を表し、Hexはn-ヘキシル基を表し、Phはフェニル基を表す。
【化8】
【0030】
上記一般式(1)で表す部分構造を備えた化合物に酸を作用させることにより、5員環が形成され、上記一般式(2)で表す部分構造を備えた化合物が得られる。酸は、ブレンステッド酸であっても、ルイス酸であってもよい。酸が例えばブレンステッド酸であれば、プロトンが水酸基に付加して-OH 基が形成され、これが水分子として脱離するし、酸が例えばルイス酸であれば、ルイス酸が水酸基の酸素原子に配位した後に、その配位体が脱離することになる。このように、いずれの酸を用いてもよいが、これらの中でもルイス酸が好ましく挙げられる。
【0031】
ルイス酸としては、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、塩化アルミニウム、塩化チタン(IV)等が挙げられる。これらのルイス酸の中でも三フッ化ホウ素が好ましく例示され、ハンドリングの容易性の観点から三フッ化ホウ素にルイス塩基が結合したものをより好ましく挙げることができる。このようなルイス塩基としては、特に限定されないが、ジエチルエーテルが例示できる。
【0032】
上記一般式(1)で表す部分構造を備えた化合物に酸を作用させて上記一般式(2)で表す部分構造を備えた化合物を得る際は、上記一般式(1)で表す部分構造を備えた化合物を溶媒に溶解させた上で、酸を作用させればよい。この場合の酸の添加量としては、上記一般式(1)で表す部分構造を備えた化合物のモル数に対して、2~10倍モル程度を例示することができる。酸を添加した後、室温で10~30分程度反応させることにより、上記一般式(2)で表す部分構造を備えた化合物が得られる。
【0033】
上記一般式(2)におけるR及びRは、それぞれ独立に、(イ)水素原子、-CQ、又は置換基を有してもよいアリール基であるか、(ロ)RとRとが組み合わさって環構造を形成する。(イ)の場合、各Qはそれぞれ独立に水素原子又は1価の有機基である。つまり、RやRが-CQとなる場合、これらはアルキル末端としての炭素原子を持ち、その先に水素原子又は1価の有機基を持つ。このような1価の有機基としては、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルコキシ基、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキルスルファニル基、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキルアミノ基、アルキルアリール基等が挙げられる。途中に分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、その鎖中又は末端に置換基を有してもよいアリール基を備えてもよい。また、これらのアルキル基は、各種の置換基を備えてもよい。このような置換基としては、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、アリール基、アルコキシ基等が挙げられる。また、上記ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。これらの中でも、Qとしては、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基が好ましく挙げられ、水素原子又は炭素数3~12のアルキル基がより好ましく挙げられる。また、上記置換基を有してもよいアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基、ピリミジル基等が挙げられる。(ロ)の場合、RとRとが組み合わさって形成される環構造としては、置換されてもよい脂肪環や芳香環が挙げられ、シクロペンタン環、フルオレン環、シクロヘキサン環、インデン環、テトラヒドロフラン環、ピラン環、ピロリジン環、ピペリジン環等が挙げられる。
【0034】
上記一般式(2)において、各Xは、それぞれ独立に、ハロゲン原子である。このようなハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、これらの中でも臭素原子が好ましく挙げられる。
【0035】
上記一般式(2)において、Arの符号を付した環構造は、置換基を有してもよい芳香環である。このような芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環、チオフェン環、フラン環、ピリジン環、ピリミジン環等が例示される。これらの中でも、ベンゼン環やナフタレン環等が好ましく挙げられる。なお、上記一般式(2)は、化合物の部分構造であり、このArがどのような置換基を持っていてもよいし、このArが、新たに形成された5員環以外の環と縮環していてもよい。
【0036】
上記一般式(2)で表す部分構造を備えた化合物の一例としては、次のようなものを挙げられる。なお、下記の化学式において、Meはメチル基を表し、Buはn-ブチル基を表し、Hexはn-ヘキシル基を表し、Phはフェニル基を表す。また、下記の化学式において、化合物2a~2pは、一般式(1)で表す部分構造を備えた化合物の一例として上記化合物例1に示した化合物1a~1pを原料として本発明の製造方法で合成されたものにそれぞれ対応する。例えば下記化合物2aは、上記化合物1aを原料として本発明の製造方法により得られる化合物に対応する。
【0037】
【化9】
【0038】
<インダセン誘導体>
下記一般式(3A)~(3F)で表すインダセン誘導体もまた、本発明の一つである。本発明のインダセン誘導体は、3つの環構造を持ち、中央に存在するベンゼン環の両側に5員環が縮環した骨格を備える化合物である。本発明のインダセン誘導体は、本発明の5員環の縮合した縮合多環化合物の製造方法により好ましく調製され、化学反応の足場となるハロゲン原子を分子中に多数含むので、化学品の合成中間体として有用である。
【0039】
【化10】
【0040】
上記一般式(3A)~(3F)における各Rは、それぞれ独立に、(イ)水素原子、-CQ、又は置換基を有してもよいアリール基であるか、(ロ)同じ炭素原子に結合した2つのR同士が組み合わさって環構造を形成する。(イ)の場合、各Qはそれぞれ独立に水素原子又は1価の有機基である。つまり、Rが-CQとなる場合、これらはアルキル末端としての炭素原子を持ち、その先に水素原子又は1価の有機基を持つ。このような1価の有機基としては、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルコキシ基、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキルスルファニル基、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキルアミノ基、アルキルアリール基等が挙げられる。途中に分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、その鎖中又は末端に置換基を有してもよいアリール基を備えてもよい。また、これらのアルキル基は、各種の置換基を備えてもよい。このような置換基としては、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、アリール基、アルコキシ基等が挙げられる。また、上記ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。これらの中でも、Qとしては、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基が好ましく挙げられ、水素原子又は炭素数3~12のアルキル基がより好ましく挙げられる。また、上記置換基を有してもよいアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基、ピリミジル基等が挙げられる。(ロ)の場合、同じ炭素原子に結合した2つのR同士が組み合わさって形成される環構造としては、置換されてもよい脂肪環や芳香環が挙げられ、シクロペンタン環、フルオレン環、シクロヘキサン環、インデン環、テトラヒドロフラン環、ピラン環、ピロリジン環、ピペリジン環等が挙げられる。
【0041】
上記一般式(3A)~(3F)において、各Xは、それぞれ独立に、ハロゲン原子である。このようなハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、これらの中でも臭素原子が好ましく挙げられる。
【0042】
ところで、一般式(3A)で表す化合物と一般式(3B)で表す化合物とは、一方の化合物における1つの5員環が上下にフリップすることで他方の化合物になるという関係になる。これらは、上記化合物2oと化合物2pにそれぞれ対応する一般式であるが、これらの化合物は、上記化合物1oと化合物1pからそれぞれ合成される。このように、本発明の5員環の縮合した縮合多環化合物の製造方法において、原料となる置換ベンゼンの置換基の位置や数を調節することで、上記一般式(3A)~(3F)の化合物を作り分けることができる。
【0043】
<炭素架橋p-フェニレンビニレン誘導体>
下記一般式(4)で表す炭素架橋p-フェニレンビニレン誘導体もまた、本発明の一つである。本発明の炭素架橋p-フェニレンビニレン誘導体は、上記本発明の5員環の縮合した縮合多環化合物の製造方法により好ましく調製される。
【0044】
【化11】
【0045】
上記一般式(4)において、各Rは、-CQであり、各Qは、それぞれ独立に、水素原子又は1価の有機基である。つまり、各Rはアルキル末端としての炭素原子を持ち、その先に水素原子又は1価の有機基を持つ。このような1価の有機基としては、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルコキシ基、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキルスルファニル基、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキルアミノ基、アルキルアリール基等が挙げられる。途中に分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、その鎖中又は末端に置換基を有してもよいアリール基を備えてもよい。また、これらのアルキル基は、各種の置換基を備えてもよい。このような置換基としては、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、アリール基、アルコキシ基等が挙げられる。また、上記ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。これらの中でも、Rとしては、n-ブチル基が好ましく挙げられ、全てのRがn-ブチル基であることがより好ましく挙げられる。
【0046】
上記一般式(4)において、各Rが、いずれもアルキル末端となる炭素原子を介してp-フェニレンビニレン骨格に結合することで、置換又は無置換の、分枝を有してもよいアルキル基となることが本発明のポイントである。上記一般式(4)において、各Rがアリール基であるものは既に知られており、いずれも良好な発光効率や分子ワイヤ機能を備えることが報告されている(例えば、J.Am.Chem.Soc.2012,134,19254、特開2011-32197を参照)。しかしながら、本発明者らの検討によれば、各Rがいずれも炭素数1以上のアルキル基となる炭素架橋p-フェニレンビニレン誘導体によれば、モル吸光係数や蛍光発光における放射失活定数がより大きくなることが判明した。モル吸光係数が大きいということは励起光を効率良く吸収できるということであり、また、蛍光発光における放射失活定数が大きいということは励起してから蛍光放射失活までの時間が短いということであり、より強い蛍光を発することが可能であることを意味する。参考までに、上記一般式(4)において、各RがAr(p-オクチルフェニル基)及びn-ブチル基(本発明)である場合のモル吸光係数及び放射失活定数を表1に示す。
【0047】
【表1】
【0048】
本発明の炭素架橋p-フェニレンビニレン誘導体は、やはり本発明の一つとなる炭素架橋p-フェニレンビニレン誘導体の製造方法により調製される。次に、本発明の炭素架橋p-フェニレンビニレン誘導体の製造方法について説明する。
【0049】
<p-フェニレンビニレン誘導体の製造方法>
本発明のp-フェニレンビニレン誘導体の製造方法は、上記本発明の5員環の縮合した縮合多環化合物の製造方法を応用したものであり、下記一般式(11)で表す化合物に第1の酸を作用させることにより、下記一般式(12)で表す化合物を得る工程[i]と、下記一般式(12)で表す化合物にアルキルリチウム化合物を作用させた後、下記一般式(13)で表す化合物を作用させることにより、下記一般式(14)で表す化合物を得る工程[ii]と、下記一般式(14)で表す化合物と1,4-フェニレンジボロン酸化合物とをカップリング反応させることにより、下記一般式(15)で表す化合物を得る工程[iii]と、下記一般式(15)で表す化合物に第2の酸を作用させることにより、下記一般式(16)で表す化合物を得る工程[iv]と、を備えることを特徴とする。以下、各工程について説明する。
【0050】
【化12】
(上記化学反応式において、各Xは、それぞれ独立に、ハロゲン原子であり、各R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキル基若しくは置換基を有してもよいアリール基であるか、RとRとが組み合わさって環構造を形成し、各R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキル基若しくは置換基を有してもよいアリール基であるか、RとRとが組み合わさって環構造を形成する。)
【0051】
[工程i]
工程iは、上記一般式(11)で表す化合物に第1の酸を作用させることにより、上記一般式(12)で表す化合物を得る工程である。この化学反応は、上記本発明の5員環の縮合した縮合多環化合物の製造方法における化学反応と同じものである。
【0052】
一般式(11)及び(12)において、R及びRは、それぞれ独立に、(イ)水素原子、-CQ、又は置換基を有してもよいアリール基であるか、(ロ)RとRとが組み合わさって環構造を形成する。(イ)の場合、各Qはそれぞれ独立に水素原子又は1価の有機基である。つまり、RやRが-CQとなる場合、これらはアルキル末端としての炭素原子を持ち、その先に水素原子又は1価の有機基を持つ。このような1価の有機基としては、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルコキシ基、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキルスルファニル基、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキルアミノ基、アルキルアリール基等が挙げられる。途中に分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、その鎖中又は末端に置換基を有してもよいアリール基を備えてもよい。また、これらのアルキル基は、各種の置換基を備えてもよい。このような置換基としては、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、アリール基、アルコキシ基等が挙げられる。また、上記ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。これらの中でも、Qとしては、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基が好ましく挙げられ、水素原子又は炭素数3~12のアルキル基がより好ましく挙げられる。また、上記置換基を有してもよいアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基、ピリミジル基等が挙げられる。(ロ)の場合、RとRとが組み合わさって形成される環構造としては、置換されてもよい脂肪環や芳香環が挙げられ、シクロペンタン環、フルオレン環、シクロヘキサン環、インデン環、テトラヒドロフラン環、ピラン環、ピロリジン環、ピペリジン環等が挙げられる。これらの中でも、R及びRのいずれもがn-ブチル基であることを好ましく挙げられる。なお、一般式(11)におけるR及びRは、一般式(12)におけるR及びRとそれぞれ同じものである。
【0053】
上記一般式(11)及び(12)において、各Xは、それぞれ独立に、ハロゲン原子である。このようなハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、これらの中でも臭素原子が好ましく挙げられる。なお、一般式(11)における各Xは、一般式(12)において対応する各Xとそれぞれ同じものである。
【0054】
上記一般式(11)で表す化合物に第1の酸を作用させることにより、5員環が形成され、上記一般式(12)で表す化合物が得られる。第1の酸は、ブレンステッド酸であっても、ルイス酸であってもよい。このことは、上記本発明の5員環の縮合した縮合多環化合物の製造方法にて既に説明した通りである。これらの酸の中でも第1の酸としてルイス酸が好ましく挙げられる。
【0055】
ルイス酸としては、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、塩化アルミニウム、塩化チタン(IV)等が挙げられる。これらのルイス酸の中でも三フッ化ホウ素が好ましく例示され、ハンドリングの容易性の観点から三フッ化ホウ素にルイス塩基が結合したものをより好ましく挙げることができる。このようなルイス塩基としては、特に限定されないが、ジエチルエーテルが例示できる。
【0056】
上記一般式(11)で表す化合物に第1の酸を作用させて上記一般式(12)で表す化合物を得る際は、上記一般式(11)で表す化合物を溶媒に溶解させた上で、第1の酸を作用させればよい。この場合の第1の酸の添加量としては、上記一般式(11)で表す化合物のモル数に対して、2~10倍モル程度を例示することができる。酸を添加した後、室温で10~30分程度反応させることにより、上記一般式(12)で表す化合物が得られる。
【0057】
工程iで得た一般式(12)で表す化合物は、適切な精製を受けた後、工程iiに付される。
【0058】
[工程ii]
工程iiは、上記一般式(12)で表す化合物にアルキルリチウム化合物を作用させた後、上記一般式(13)で表す化合物を作用させることにより、上記一般式(14)で表す化合物を得る工程である。すなわち、一般式(12)で表す化合物における1つのXをリチオ化して求核性を付与した後、これを一般式(13)で表す化合物のカルボニル基へ攻撃させて一般式(14)で表す化合物を得るものである。
【0059】
一般式(12)及び(14)におけるR、R及びXは、一般式(11)におけるものと同様である。なお、一般式(14)におけるR及びRは、一般式(12)におけるR及びRとそれぞれ同じものである。また、一般式(14)におけるXは、一般式(12)において対応するXと同じものである。
【0060】
アルキルリチウム化合物は、一般式(12)で表す化合物におけるXをリチオ化するための試薬であり、n-ブチルリチウムが好ましく用いられる。リチオ化する際の条件としては、一般式(12)で表す化合物を溶媒に溶解させて溶液とした後、これを-78℃に冷却し、アルキルリチウム化合物を撹拌しながら1時間程度かけて滴下することを挙げられるが、特に限定されない。このときの溶媒としては、脱水テトラヒドロフランが好ましく挙げられる。また、アルキルリチウム化合物の添加量としては、一般式(12)で表す化合物と等モル程度が好ましく挙げられる。アルキルリチウム化合物の滴下が終了した後、温度を維持したまま1時間程度撹拌することによりリチオ化が完了する。
【0061】
次いで、リチオ化の完了した溶液へ一般式(13)で表す化合物を滴下により添加する。滴下終了後、30分程度撹拌を続けてから徐々に溶液温度を室温まで戻し、反応をクエンチさせる。クエンチを行うに際しては、例えば塩化アンモニウム水溶液を反応溶液に添加することを挙げられる。これらの反応により、一般式(14)で表す化合物が得られる。
【0062】
一般式(13)及び(14)におけるR及びRは、それぞれ独立に、(イ)水素原子、-CQ、又は置換基を有してもよいアリール基であるか、(ロ)RとRとが組み合わさって環構造を形成する。(イ)の場合、各Qはそれぞれ独立に水素原子又は1価の有機基である。つまり、RやRが-CQとなる場合、これらはアルキル末端としての炭素原子を持ち、その先に水素原子又は1価の有機基を持つ。このような1価の有機基としては、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキル基、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルコキシ基、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキルスルファニル基、途中にヘテロ原子や分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキルアミノ基、アルキルアリール基等が挙げられる。途中に分枝を有してもよい炭素数1~12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、2-エチルヘキシル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、その鎖中又は末端に置換基を有してもよいアリール基を備えてもよい。また、これらのアルキル基は、各種の置換基を備えてもよい。このような置換基としては、水酸基、ニトロ基、アミノ基、スルホ基、アリール基、アルコキシ基等が挙げられる。また、上記ヘテロ原子としては、酸素原子、硫黄原子、窒素原子等が挙げられる。これらの中でも、Qとしては、水素原子又は炭素数1~12のアルキル基が好ましく挙げられ、水素原子又は炭素数3~12のアルキル基がより好ましく挙げられる。また、上記置換基を有してもよいアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基、ピリミジル基等が挙げられる。(ロ)の場合、RとRとが組み合わさって形成される環構造としては、置換されてもよい脂肪環や芳香環が挙げられ、シクロペンタン環、フルオレン環、シクロヘキサン環、インデン環、テトラヒドロフラン環、ピラン環、ピロリジン環、ピペリジン環等が挙げられる。これらの中でも、R及びRのいずれもがn-ブチル基であることを好ましく挙げられる。なお、一般式(13)におけるR及びRは、一般式(14)におけるR及びRとそれぞれ同じものである。
【0063】
工程iiで得た一般式(14)で表す化合物は、適切な精製を受けた後、工程iiiに付される。
【0064】
[工程iii]
工程iiiは、上記一般式(14)で表す化合物と1,4-フェニレンジボロン酸化合物とをカップリング反応させることにより、上記一般式(15)で表す化合物を得る工程である。この反応を経ることにより、2分子の一般式(14)で表す化合物がp-フェニレン基を挟んで結合して一般式(15)で表す化合物となる。なお、ここでいうカップリング反応は、鈴木・宮浦クロスカップリング反応と呼ばれるものになる。
【0065】
一般式(15)におけるR、R、R及びRは、一般式(14)におけるR、R、R及びRと同じものなので、ここでの説明を省略する。
【0066】
1,4-フェニレンジボロン酸化合物は、鈴木・宮浦クロスカップリング反応におけるボロン酸化合物に対応するものであり、1,4-フェニレンジボロン酸自体でもよいし、1,4-フェニレンジボロン酸における2つのボロン酸部分が保護された化合物であってもよい。ボロン酸部分が保護された化合物を用いる場合、その保護基としては、ボロン酸のピナコールエステル、ボロン酸のビスシクロヘキシルジオールエステル、ボロン酸のジアミノナフタレンアミド、トリフルオロボレート塩等が挙げられる。
【0067】
一般式(14)で表す化合物と1,4-フェニレンジボロン酸化合物とをカップリング反応させるに際しての条件としては、鈴木・宮浦クロスカップリング反応における一般的な条件をそのまま用いることができる。このような条件の一例としては、一般式(14)で表す化合物1当量に対して1,4-フェニレンジボロン酸を0.5当量用い、パラジウム(0)触媒、及びトリフェニルホスフィンを、炭酸カリウム水溶液を添加した溶媒に加え、100℃程度で24時間程度反応させることを挙げられる。この際、パラジウム(0)触媒としては、Pd(dba)と呼ばれるトリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)を好ましく挙げることができるが特に限定されない。また、溶媒としてはジオキサンを好ましく挙げることができるが特に限定されない。
【0068】
工程iiiで得た一般式(15)で表す化合物は、そのまま又は適切な精製を受けた後、工程ivに付される。
【0069】
[工程iv]
工程ivは、上記一般式(15)で表す化合物に第2の酸を作用させることにより、上記一般式(16)で表す化合物を得る工程である。
【0070】
一般式(15)及び(16)におけるR、R、R及びRは、一般式(14)におけるR、R、R及びRと同じものなので、ここでの説明を省略する。
【0071】
第2の酸は、ブレンステッド酸であっても、ルイス酸であってもよい。これらの酸の中でも、第2の酸としてルイス酸が好ましく挙げられる。
【0072】
ルイス酸としては、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、塩化アルミニウム、塩化チタン(IV)等が挙げられる。これらのルイス酸の中でも三フッ化ホウ素が好ましく例示され、ハンドリングの容易性の観点から三フッ化ホウ素にルイス塩基が結合したものをより好ましく挙げることができる。このようなルイス塩基としては、特に限定されないが、ジエチルエーテルが例示できる。
【0073】
上記一般式(15)で表す化合物に第2の酸を作用させて上記一般式(16)で表す化合物を得る際は、上記一般式(15)で表す化合物を溶媒に溶解させた上で、第2の酸を作用させればよい。この場合の第2の酸の添加量としては、上記一般式(15)で表す化合物のモル数に対して、2~10倍モル程度を例示することができる。酸を添加した後、室温で10~30分程度反応させることにより、上記一般式(16)で表す化合物が得られる。
【実施例0074】
以下、実施例を示すことにより本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0075】
まずは、上記化合物例1に表す化合物1a~1pを合成するための原料化合物0a~0pを合成する一般的な手順として化合物0a~0pの中からいくつかを抜粋し、その手順を記載する。なお、化合物0a~0pのうち下記に合成手順の記載のないものは、下記の合成手順と同様の手順で合成をすることが可能であるか、市販品として入手できるものである。また、化合物0a~0pは、上記化合物例1における化合物1a~1pを合成するための原料化合物にそれぞれ対応する。同様に、化合物1a~1pは、上記化合物例2における化合物2a~2pを合成するための原料化合物にそれぞれ対応する。
【0076】
・5-(p-トリルエチニル)ノナン-5-オール(化合物0h)の合成
【化13】
【0077】
1-エチニル-4-メチルベンゼン(290mg、2.50mmol)を乾燥テトラヒドロフラン(THF)10mLに溶解させ、その溶液を0℃に冷却した。これにn-ブチルリチウム(1.59Mヘキサン溶液として1.57mL、2.50mmol)を滴下により加え、温度を維持しながら0.5時間撹拌した。次いで、この反応溶液に5-ノナノン(349mg、2.45mmol)を滴下により加え、0℃で3時間撹拌した。反応終了後、反応溶液に水(10mL)を加えて反応を停止させ、10mLの塩化メチレンで3回抽出した。有機相をまとめて硫酸マグネシウムで乾燥させてから減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:塩化メチレン=1:1)で精製することで、淡黄色オイル状の化合物0hを得た(収量416mg、収率64%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.32-7.31(m,2H),7.12-7.09(m,2H),7.23-7.18(m,2H),2.34(s,3H),1.96(s,1H),1.78-1.66(m,4H),1.58-1.51(m,4H),1.42-1.34(m,4H),0.96-0.92(m,6H).
13C{H}-NMR(150MHz,CDCl):δ(ppm) 138.1,131.5,128.9,119.8,91.5,84.3,71.6,41.8,26.5,22.9,21.4,14.0.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C1827O([M+H]):259.2062,found:259.2056.
【0078】
・5-(o-トリルエチニル)ノナン-5-オール(化合物0i)
【化14】
【0079】
用いた原料が異なる点を除いて上記と同様の手順により、無色オイル状の化合物0iを得た(収率81%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.39(d,J=7.8Hz,1H),7.23-7.18(m,2H),7.15-7.11(m,1H),2.43(s,3H),1.98(s,1H),1.80-1.69(m,4H),1.61-1.53(m,5H),1.44-1.34(m,4H),0.91-0.96(m,7H).
13C{H}-NMR(150MHz,CDCl):δ(ppm) 139.9,131.9,129.2,128.0,125.4,122.6,96.3,83.0,71.7,41.9,26.5,22.8,20.6,14.0.
HRMS (APCI+) m/z calcd for C1825O([M-H]):257.1905,found:257.1895.
【0080】
・5-[(4-メトキシフェニル)エチニル]ノナン-5-オール(化合物0j)の合成
【化15】
【0081】
1-ブロモ-4-メトキシベンゼン(486.2mg、2.60mmol)、5-エチニル-5-ノナノール(451.6mg、2.68mmol)、PdCl(PPh(78.9mg、0.11mmol)及びCuI(67.4mg、0.11mmol)をピペリジン(2.7mL)に溶解させた。この溶液を80℃で3日間撹拌し、反応溶液を濾過して濾液を濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:塩化メチレン=1:4)で精製することで、褐色オイル状の化合物0jを得た(収量273.8mg、収率38%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.37-7.34(m,2H),6.85-6.81(m,2H),3.81(s,2H),1.95(s,1H),1.78-1.68(m,4H),1.58-1.51(m,6H),1.42-1.34(m,4H),0.95(t,J=7.3Hz,6H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 159.5,133.1,115.0,113.8,90.8,84.1,71.6,55.3,41.9,26.5,22.9,14.1
HRMS (APCI+) m/z calcd for C1827([M+H]):275.2011,found:257.2000.
【0082】
・5-[(4-ブロモフェニル)エチニル]ノナン-5-オール(化合物0k)
【化16】
【0083】
用いた原料が異なる点を除いて上記と同様の手順により、黄色オイル状の化合物0kを得た(収率27%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.45-7.42(m,2H),7.29-7.26(m,2H),1.95(s,1H),1.78-1.66(m,4H),1.57-1.49(m,4H),1.42-1.33(m,4H),0.93(t,J=7.2Hz,6H).
13C{H}-NMR(150MHz,CDCl):δ(ppm) 133.0,131.4,122.3,121.8,93.5,83.1,71.5,41.7,26.4,22.8,14.0.
HRMS (APCI+) m/z calcd for C1724BrO([M+H]):323.1011,found:323.1002.
【0084】
・5-{[4-(トリフルオロメチル)フェニル]エチニルノナン-5-オール(化合物0l)
【化17】
【0085】
用いた原料が異なる点を除いて上記と同様の手順により、淡黄色オイル状の化合物0lを得た(収率64%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.56(d,J=8.2Hz,2H),7.52(d,J=8.2Hz,2H),1.99(s,1H),1.80-1.67(m,4H),1.58-1.50(m,9H),1.39(m,4H),0.95(t,J=7.3Hz,6H).
13C{H}-NMR(150MHz,CDCl):δ(ppm) 131.9,129.9(q,C-F=33Hz),126.7,125.2,123.9(q,C-F=271Hz),94.8,83.0,71.7,41.7,26.5,22.9,14.1.
HRMS (APCI+) m/z calcd for C1823O([M]):317.1701,found: 312.1691.
【0086】
・5-[(1,1’-ビフェニル)-4-イルエチニル]ノナン-5-オール(化合物0m)
【化18】
【0087】
用いた原料が異なる点を除いて上記と同様の手順により、淡黄色固体の化合物0mを得た(収率65%)。
M.p.:52-53℃.
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)7.59(dt,J=7.0,1.4Hz,2H),7.55(dd,J=6.4,1.8Hz,2H),7.51-7.48(m,2H),7.47-7.43(m,2H),7.38-7.34(m,1H),1.99(s,1H),1.79-1.68(m,4H),1.64-1.52(m,4H),1.40(m,4H),0.96(t,J=7.1Hz,6H).
13C{H}-NMR(150MHz,CDCl):δ(ppm) 140.9,140.3,132.1,128.8,127.6,127.0,126.9,121.8,92.9,84.1,71.7,41.9,26.5,22.9,14.1.
HRMS (APCI+) m/z calcd for C2328O([M]):320.2140,found:320.2123.
【0088】
・2-(3-ブチル-3-ヒドロキシノン-1-インイル)ナフタレン(化合物0n)
【化19】
【0089】
用いた原料が異なる点を除いて上記と同様の手順により、黄色オイル状の化合物0nを得た(収率71%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.94(s,1H),7.82-7.76(m,3H),7.49-7.45(m,3H),2.01(s,1H),1,79-1.74(m,4H),1.61-1.56(m,4H),1.46-1.38(m,4H),0.97(t,J=7.2Hz,3H).
13C{H}-NMR(150MHz,CDCl):δ(ppm) 132.8,132.6,131.3,128.4,127.8,127.62,127.56,126.5,126.4,120.1,92.6,84.5,71.6,41.8,26.5,22.9,14.0.
HRMS (APCI+) m/z calcd for C2126O([M]):294.1984,found:294.1984.
【0090】
・1,3-ビス(3-ブチル-3-ヒドロキシノン-1-インイル)ベンゼン(化合物0p)
【化20】
【0091】
用いた原料が異なる点を除いて上記と同様の手順により、白色固体の化合物0pを得た(収率56%)。
M.p.:115-117℃.
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.47(brs,1H),7.35(dd,J=8.4,1.2Hz,2H),7.25(t,J=8.4Hz,1H),1.96(s,2H),1.78-1.67(m,8H),1.58-1.50(m,16H),1.43-1.34(m,8H),0.95(t,J=7.6Hz,12H).
13C{H}-NMR(150MHz,CDCl):δ(ppm) 134.7,131.3,128.3,123.1,92.9,83.4,71.6,41.8,26.5,22.9,14.1.
HRMS (APCI+) m/z calcd for C1213Br([M]):410.3185,found:410.3175.
【0092】
次に、上記化合物例2に表す化合物2a~2pを合成するための原料化合物1a~1pを合成する一般的な手順として化合物1a~1pの中からいくつかを抜粋し、その手順を記載する。なお、化合物1a~1pのうち下記に合成手順の記載のないものは、下記の合成手順と同様の手順で合成をすることが可能である。また、上記の通り、化合物1a~1pは、上記化合物例2における化合物2a~2pを合成するための原料化合物にそれぞれ対応する。
【0093】
・(E)-3,4,-ジブロモ-2-メチル-4-フェニルブト-3-エン-2-オール(化合物1a)の合成
【化21】
【0094】
2-メチル-4-フェニルブト-3-イン-2-オール(209mg、1.30mmol)の塩化メチレン溶液(0.25mL)に、N-ブロモスクシンイミド(NBS;698mg、3.92mmol)及び臭化テトラブチルアンモニウム(TBAB;1.27g、3.93mmol)を添加し、室温で72時間撹拌した。反応溶液に飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、10mLの塩化メチレンで3回抽出した。有機相をまとめて硫酸マグネシウムで乾燥させてから減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:塩化メチレン=1:1)で精製することで、白色固体の化合物1aを得た(収量205mg、収率49%)。
M.p.:174-175℃.
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.41-7.36(m,2H),7.33-7.27(m,3H),1.74(s,6H).
13C{H}-NMR(100 MHz, CDCl):δ(ppm) 143.6,130.7,128.6,128.6,128.5,113.9,76.0,30.0.
HRMS (APCI+) m/z calcd for C1111Br([M-OH]):300.9228,found:300.9220.
【0095】
・(E)-1,2-ジブロモ-3-メチル-1-フェニルペント-1-エン-3-オール(化合物1b)
【化22】
【0096】
原料として化合物0bを用いた点を除いて上記と同様の手順により、白色固体の化合物1bを得た(収率82%)。
M.p.:54.5-56℃.H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.40-7.37(m,2H),7.33-7.29(m,1H),7.26(dd,J=4.7,2.7Hz,2H),2.98(s,1H),2.28-2.19(m,1H),2.00-1.91(m,1H),1.71(s,3H),1.07(t,J=7.3Hz,3H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 143.8,130.3,128.5,128.4,128.2,113.9,78.4,34.2,28.0,8.3
HRMS(APCI+) m/z calcd for C1213Br([M-OH]):314.9384,found:314.9374.
【0097】
・(E)-1,2-ジブロモ-2-フェニルヘプト-1-エン-3-オール(化合物1c)
【化23】
【0098】
原料として化合物0cを用いた点を除いて上記と同様の手順により、白色固体の化合物1cを得た(収率42%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.40-7.36(m,2H),7.32-7.28(m,1H),7.25-7.22(m,2H),2.85(s,1H),2.31-2.23(m,2H),1.80-1.71(m,2H),1.60-1.34(m,10H),0.95(q,J=6.9Hz,6H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 144.2,129.9,128.5,128.3,128.1,114.0,80.6,40.2,25.5,23.0,14.1
HRMS (APCI+) m/z calcd for C1724BrO([M-H]):401.0116,found: 401.0101.
【0099】
・(E)-1,2-ジブロモ-1-フェニルノン-1-エン-3-オール(化合物1d)
【化24】
【0100】
原料として化合物0dを用いた点を除いて上記と同様の手順により、無色オイル状の化合物1dを得た(収率42%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.41-7.32(m,5H),4.97(q,J=7.2Hz,1H),2.00-1.99(m,1H),1.79-1.69(m,2H),1.53-1.31(m,8H),0.91(t,J=7.1Hz,3H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 140.4,129.0,128.5,128.1,117.0,74.0,36.1,31.8,29.2,25.1,22.7,14.2.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C1519Br([M-OH]):356.9854,found:356.9838.
【0101】
・(E)-2,3-ジブロモ-1,1,3-トリフェニルプロプ-2-エン-1-オール(化合物1e)
【化25】
【0102】
原料として化合物0eを用いた点を除いて上記と同様の手順により、白色固体の化合物1eを得た(収率76%)。
M.p.:103℃(分解).
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.52-7.48(m,4H),7.42-7.31(m,11H),4.20(s,1H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 144.4,143.4,130.4,129.1,128.8,128.7,128.4,128.2,128.1,119.1,84.5
HRMS(APCI+) m/z calcd for C2115Br([M-OH]):424.9541,found:424.9532.
【0103】
・(E)-9-(1,2-ジブロモ-2-フェニルビニル)-9H-フルオレン-9-オール(化合物1g)
【化26】
【0104】
原料として化合物0gを用いた点を除いて上記と同様の手順により、白色固体の化合物1gを得た(収率76%)。
M.p.:141-143℃(昇華).
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.67-7.65(m,4H),7.45-7.41(m,2H),7.38-7.34(m,4H),7.26-7.31(m,3H),3.24(s,1H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 147.3,143.1,140.7,129.7,128.6,128.5,128.4,123.6,120.3,116.3.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C2115BrO([M+H]):440.9484,found:440.9472.
【0105】
(E)-1,2-ジブロモ-3-ブチル-1-(p-トリル)ヘプト-1-エン-3-オール(化合物1h)
【化27】
【0106】
原料として化合物0hを用いた点を除いて上記と同様の手順により、白色固体の化合物1hを得た(収率92%)。
M.p.:41-42℃.
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.20-7.18(m,2H),7.15-7.13(m,2H),2.88(s,1H),2.37(s,3H),2.30-2.22(m,2H),1.79-1.71(m,2H),1.60-1.34(m,8H),0.96(t,J=7.1Hz,6H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 141.6,138.4,129.8,129.3,128.2,114.4,80.7,40.4,25.7,23.1,21.5,14.2.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C1825Br([M-OH]):399.0323,found:399.0309.
【0107】
・(E)-1,2-ジブロモ-3-ブチル-1-(o-トリル)ヘプト-1-エン-3-オール(化合物1i)
【化28】
【0108】
原料として化合物0iを用いた点を除いて上記と同様の手順により、無色オイル状の化合物1iを得た(収率90%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.25-7.20(m,3H),7.10-7.07(m,1H),2.87(s,1H),2.37-2.23(m,5H),1.79-1.72(m,2H),1.62-1.33(m,8H),0.96(t,J=7.1Hz,6H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 143.4,134.4,130.7,130.4,128.6,127.9,126.3,114.0,80.7,40.4,25.7,25.6,23.0,19.1,14.1.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C1825Br([M-OH]):399.0323,found:399.0303.
【0109】
・(E)-1,2-ジブロモ-3-ブチル-1-(p-メトキシフェニル)ヘプト-1-エン-3-オール(化合物1j)
【化29】
【0110】
原料として化合物0jを用いた点を除いて上記と同様の手順により、無色オイル状の化合物1jを得た(収率39%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.24-7.18(m,2H),6.91-6.88(m,2H),3.83(s,3H),2.90(s,1H),2.29-2.22(m,2H),1.79-1.71(m,2H),1.53-1.34(m,8H),0.96(t,J=7.3Hz,6H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 159.3,136.7,129.8,129.7,114.3,113.8,80.6,55.3,40.2,25.6,23.0,14.1.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C1827Br([M+H]):433.0372,found:433.0370.
【0111】
・(E)-1,2-ジブロモ-3-ブチル-1-(p-ブロモフェニル)ヘプト-1-エン-3-オール(化合物1k)
【化30】
【0112】
原料として化合物0kを用いた点を除いて上記と同様の手順により、白色固体の化合物1kを得た(収率94%)。
M.p.:47-48℃.
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.53-7.49(m,2H),7.13-7.09(m,2H),2.78(s,1H),2.28-2.20(m,2H),1.79-1.71(m,2H),1.58-1.49(m,2H),1.46-1.34(m,6H),0.98-0.94(m,6H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 143.0,131.8,130.7,129.9,122.4,112.7,80.7,40.2,25.5,23.0,14.0.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C1722BrO([M-OH]):462.9272,found:462.9250.
【0113】
・(E)-1,2-ジブロモ-3-ブチル-1-(p-トリフルオロメチルフェニル)ヘプト-1-エン-3-オール(化合物1l)
【化31】
【0114】
原料として化合物0lを用いた点を除いて上記と同様の手順により、無色オイル状の化合物1lを得た(収率94%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.65(d,J=7.6Hz,2H),7.36(d,J=7.6Hz,2H),2.75(s,1H),2.29-2.22(m,2H),1.81-1.73(m,2H),1.60-1.51(m,2H),1.48-1.35(m,6H),0.97(t,J=7.3Hz,6H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 147.5,131.2,130.3(q,C-F=32Hz),128.8,125.8,123.8(q,C-F=271Hz),112.2,80.9,40.3,25.6,23.0,14.1
HRMS(APCI+) m/z calcd for C1822Br([M-OH]):470.0040,found:470.0027.
【0115】
・4-[(E)-1,2-ジブロモ-3-ブチル-3-ヒドロキシヘプト-1-エンイル][1,1’-ビフェニル](化合物1m)
【化32】
【0116】
原料として化合物0mを用いた点を除いて上記と同様の手順により、白色固体の化合物1mを得た(収率66%)。
M.p.:46-47℃.
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.62-7.60(m,4H),7.47-7.43(m,2H),7.38-7.32(m,3H),2.87(s,1H),2.32-2.24(m,2H),1.81-1.74(m,2H),1.62-1.36(m,8H),0.98(t,J=7.1Hz,6H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 143.0,141.1,140.3,130.1,128.8,128.7,127.6,127.2,127.1,113.8,80.7,40.2,25.6,23.0,14.1.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C2329BrO([M+H]):479.0580,found:479.0561.
【0117】
・2-[(E)-1,2-ジブロモ-3-ブチル-3-ヒドロキシヘプト-1-エンイル]ナフタレン(化合物1n)
【化33】
【0118】
原料として化合物0nを用いた点を除いて上記と同様の手順により、淡黄色オイル状の化合物1nを得た(収率87%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.87-7.84(m,3H),7.72(s,1H),7.53-7.49(m,2H),7.35(dd,J=8.7,1.8Hz,1H),2.89(s,1H),2.34-2.26(m,2H),1.83-1.76(m,2H),1.64-1.37(m,8H),0.99(t,J=7.1Hz,6H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 141.4,133.0,132.8,130.3,128.4,128.3,127.7,127.4,126.7,126.4,125.9,114.1,80.7,40.3,25.6,23.0,14.2.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C2126BrO([M]):452.0350,found:452.0350.
【0119】
・1,4-ビス[(E)-1,2-ジブロモ-3-ブチル-3-ヒドロキシヘプト-1-エンイル]ベンゼン(化合物1o)
【化34】
【0120】
原料として化合物0oを用いた点を除いて上記と同様の手順により、黄色粘性オイル状の化合物1oを得た(収率90%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.26(s,4H),2.83(s,1H),2.29-2.23(m,4H),1.80-1.72(m,4H),1.60-1.34(m,24H),0.96(t,J=7.1Hz,12H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 143.8,130.4,128.5,113.2,80.7,40.2,25.6,23.0,14.1.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C2841BrO([M-H]):725.9891,found:708.9877.
【0121】
・1,3-ビス[(E)-1,2-ジブロモ-3-ブチル-3-ヒドロキシヘプト-1-エンイル]ベンゼン(化合物1p)
【化35】
【0122】
原料として化合物0pを用いた点を除いて上記と同様の手順により、無色オイル状の化合物1pを得た(収率71%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.41(t,J=7.6Hz,1H),7.19(dd,J=7.6,1.6Hz,2H),7.10(t,J=1.6Hz,1H),2.83(s,2H),2.29-2.18(m,4H),1.81-1.74(m,4H),1.60-1.35(m,16H),0.99-0.91(m,12H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 144.3,130.6,128.8,128.5,128.1,113.1,80.7,40.2,25.5,23.0,14.1.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C2842Br([M-OH]):705.9891,found:708.9862.
【0123】
次に、原料化合物1a~1pを用いて上記化合物例2に表す化合物2a~2pを合成する一般的な手順として化合物2a~2pの中からいくつかを抜粋し、その手順を記載する。なお、化合物2a~2pのうち下記に合成手順の記載のないものは、下記の合成手順と同様の手順で合成をすることが可能である。また、上記の通り、化合物1a~1pは、上記化合物例2における化合物2a~2pを合成するための原料化合物にそれぞれ対応する。
【0124】
・2,3-ジブロモ-1,1-ジメチル-1H-インデン(化合物2a)の合成
【化36】
【0125】
化合物1a(183mg、0.57mmol)のクロロホルム溶液(5.7mL)へBF・OEt(245mg、1.72mmol)を添加し、室温で15分間撹拌した。反応混合物中へ過剰量のメタノールを加えて反応を停止させた後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:塩化メチレン=1:1)で精製することで、無色オイル状の化合物2aを得た(収量164mg、収率95%)。化合物2aのスペクトルデータは、既報(Knorr,R. et.al,J.Org.Chem.2016,12,1178-1184)のものと良く一致した。
【0126】
・2,3-ジブロモ-1-エチル-1-メチル-1Hーインデン(化合物2b)
【化37】
【0127】
原料として化合物1bを用いた点を除いて上記と同様の手順により、無色オイル状の化合物2bを得た(収率92%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.37-7.34(m,1H),7.33-7.28(m,1H),7.27-7.25(m,2H),1.94-1.81(m,2H),1.30(s,3H),0.36(t,J=7.6Hz,3H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 148.0,141.1,137.1,127.2,126.3,121.4,120.6,120.1,56.9,30.6,23.8,8.0.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C1212Br([M]):313.9306,found: 313.9300.
【0128】
・2,3-ジブロモ-1,1-ジブチル-1H-インデン(化合物2c)
【化38】
【0129】
原料として化合物1cを用いた点を除いて上記と同様の手順により、無色オイル状の化合物2cを得た(収率82%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.35-7.33(m,1H),7.30(td,J=7.0,1.5Hz,1H),7.28-7.24(m,1H),7.23-7.21(m,1H),1.86-1.75(m,4H),1.19-1.04(m,4H),0.83-0.71(m,8H),0.51-0.39(m,2H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 146.9,142.0,136.2,127.0,126.2,121.3,120.7,119.9,60.5,37.5,25.1,22.7,13.8.
HRMS (APCI+) m/z calcd for C1722Br([M]):384.0088,found:384.0076.
【0130】
・2,3-ジブロモ-1-ヘキシル-1H-インデン(化合物2d)
【化39】
【0131】
原料として化合物1dを用いた点を除いて上記と同様の手順により、無色オイル状の化合物2dを得た(収率90%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.39-7.31(m,3H),7.27(td,J=7.2,1.5Hz,1H),3.66-3.60(m,1H),2.12-2.03(m,1H),1.96-1.88(m,1H),1.29-1.04(m,7H),0.97-0.84(m,4H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 144.4,142.2,131.1,127.3,126.2,122.7,122.0,120.2,54.0,31.6,30.2,29.8,29.5,24.0,22.7,14.1.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C1518Br([M]):355.9770,found:355.9764.
【0132】
・2’,3’-ジブロモスピロ[フルオレン-9,1’-インデン](化合物2g)
【化40】
【0133】
原料として化合物1gを用いた点を除いて上記と同様の手順により、白色固体の化合物2gを得た(収率98%)。
M.p.:155-156℃.
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.80(d,J=7.2Hz,2H),7.48(d,J=7.7Hz,1H),7.40(dd,J=7.9,7.0Hz,2H),7.35-7.31(m,1H),7.19(dd,J=7.9,7.0Hz,2H),7.09-7.05(m,1H),6.86(d,J=7.2Hz,2H),6.64(d,J=7.7Hz,1H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 145.9,143.4,142.3,142.0,131.9,128.6,128.0,127.9,127.3,124.1,123.6,122.7,120.3,77.2,70.6.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C2112Br([M]):421.9300,found:421.9294.
【0134】
・2,3-ジブロモ-1,1-ジブチル-6-メチル-1H-インデン(化合物2h)
【化41】
【0135】
原料として化合物1hを用いた点を除いて上記と同様の手順により、白色固体の化合物2hを得た(収率99%)。
M.p.:35.5-36.5℃.
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.21(d,J=7.8Hz,1H),7.10(d,J=7.8Hz,1H),7.02(s,1H),2.40(s,3H),1.81-1.74(m,4H),1.18-1.06(m,4H),0.84-0.71(m,8H),0.41-0.52(m,2H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 147.0,139.5,136.2,134.8,127.7,122.2,120.6,119.6,60.3,37.6,25.1,22.8,21.7,13.8.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C1824Br([M]):398.0239,found:398.0229.
【0136】
・2,3-ジブロモ-1,1-ジブチル-5-メチル-1H-インデン(化合物2i)
【化42】
【0137】
原料として化合物1iを用いた点を除いて上記と同様の手順により、白色固体の化合物2iを得た(収率72%)。
M.p.:44.5-46℃.
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.13 (dd,J=7.0,7.0Hz,1H),7.07(d,J=7.0Hz,1H),7.01(d,J=7.0Hz,1H),2.72(s,3H),1.83-1.71(m,4H),1.19-1.05(m,4H),0.81-0.70(m,8H),0.50-0.39(m,2H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 147.8,138.3,137.5,131.0,130.1,125.9,119.9,119.4,59.6,37.9,25.0,22.7,19.9,13.8.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C1824Br([M]):398.0239,found:398.0238.
【0138】
・2,3-ジブロモ-1,1-ジブチル-6-メトキシ-1H-インデン(化合物2j)
【化43】
【0139】
原料として化合物1jを用いた点を除いて上記と同様の手順により、無色オイル状の化合物2jを得た(収率95%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.23(d,J=8.2Hz,1H),6.83(dd,J=8.2,2.3Hz,1H),6.80(d,J=2.3Hz,1H),3.85(s,3H),1.83-1.70(m,4H),1.20-1.04(m,4H),0.86-0.69(m,8H),0.54-0.40(m,2H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 159.0,148.6,135.2,133.0,120.5,120.1,111.4,108.7,60.4,55.6,37.7,25.1,22.7,13.8.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C1824Br([M]):414.0194,found:414.0191.
【0140】
・2,3,6-トリブロモ-1,1-ジブチル-1H-インデン(化合物2k)
【化44】
【0141】
原料として化合物1kを用いた点を除いて上記と同様の手順により、白色固体の化合物2kを得た(収率68%)。
M.p.:43-44℃.
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.45(dd,J=7.8,1.6Hz,1H),7.36(d,J=1.6Hz,1H),7.19(d,J=7.8Hz,1H),1.83-1.72(m,4H),1.21-1.05(m,4H),0.83-0.66(m,8H),0.51-0.38(m,2H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 149.0,141.1,136.7,130.4,124.7,121.4,120.9,120.1,61.0,37.5,25.1,22.8,13.9.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C1721Br([M]):461.9188,found: 461.9197.
【0142】
・2,3-ジブロモ-1,1-ジブチル-6-(トリフルオロメチル)-1H-インデン(化合物2l)
【化45】
【0143】
原料として化合物1lを用いた点を除いて上記と同様の手順により、白色固体の化合物2lを得た(収率30%)。
M.p.:66.5-68℃.
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.59(d,J=8.0Hz,1H),7.45(s,1H),7.44(d,J=8.0Hz,1H),1.90-1.79(m,4H),1.20-1.09(m,4H),0.81-0.69(m,8H),0.47-0.36(m,2H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 147.4,145.3,139.6,128.3(q,C-F=32Hz),124.7,124.4(q,C-F=276Hz),120.2,120.0,118.0,61.1,37.3,25.0,22.6,13.7.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C1821Br([M]+):451.9962,found:451.9942.
【0144】
・2,3-ジブロモ-1,1-ジブチル-6-フェニル-1H-インデン(化合物2m)
【化46】
【0145】
原料として化合物1mを用いた点を除いて上記と同様の手順により、無色粘性液体の化合物2mを得た(収率63%)。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.65-7.63(m,2H),7.55(dd,J=4.0,1.6Hz,1H),7.49-46(m,3H),7.41-7.34(m,2H),1.91-1.79(m,4H),1.23-1.07(m,4H),0.90-0.73(m,8H),0.61-0.48(m,2H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 147.5,141.3,141.1,139.4,136.3,128.8,127.3,127.2,126.1,120.5,120.2,120.1,60.7,37.6,25.1,22.7,13.8.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C2326Br([M]):460.0396,found:460.0384.
【0146】
・2,3-ジブロモ-1,1-ジブチル-1H-シクロペンタ[a]ナフタレン(化合物2n)
【化47】
【0147】
原料として化合物1nを用いた点を除いて上記と同様の手順により、白色固体の化合物2nを得た(収率92%)。
M.p.:72-73.5℃.
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 8.07(d,J=8.4Hz,1H),7.95(d,J=8.8Hz,1H),7.86(d,J=8.4Hz,1H),7.61-7.47(m,3H),2.29-2.22(m,2H),2.09-2.02(m,2H),1.14-0.97(m,4H),0.70-0.59(m,8H),0.30-0.19(m,2H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 141.4,139.9,136.7,132.5,129.7,128.7,128.5,126.6,125.0,122.7,120.7,118.7,62.5,37.8,25.0,22.6,13.7.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C2124Br([M]):434.0239,found:434.0230.
【0148】
・2,3,6,7-テトラブロモ-1,1,5,5-テトラブチル-1,5-ジヒドロ-s-インダセン(化合物2o)
【化48】
【0149】
原料として化合物1oを用いた点を除いて上記と同様の手順により、白色固体の化合物2oを得た(収率85%)。
M.p.:130.5-131℃.
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.17(s,2H),1.88-1.81(m,8H),1.21-1.04(m,8H),0.83-0.71(m,16H),0.48-0.37(m,4H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 146.5,140.6,136.0,120.7,113.2,60.5,37.7,25.1,22.7,13.8.
HRMS(APCI+) m/z calcd for C2838Br([M]):689.9702,found:689.9692.
【0150】
・2,3,5,6-テトラブロモ-1,1,7,7,-テトラブチル-1,7-ジヒドロ-s-インダセン(化合物2p)
【化49】
【0151】
原料として化合物1pを用いた点を除いて上記と同様の手順により、白色固体の化合物2pを得た(収率56%)。
M.p.:173-174℃.
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.34(s,1H),7.09(s,1H),1.89-1.78(m,8H),1.20-0.99(m,8H),0.86-0.75(m,4H),0.69(t,J=7.3Hz,12H),0.39(m,4H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 145.9,141.4,135.7,120.7,114.8,112.1,60.4,37.5,25.2,22.7,13.7.
HRMS(APCI+) m/z C2838Br([M]):689.9702,found:689.9705.
【0152】
・5-(2-ジブロモ-1,1-ジブチル-1H-インデン-3-イル)ノナン-5-オール(化合物3)の合成
【化50】
【0153】
化合物2c(334mg、0.86mmol)の脱水THF溶液(1mL)に、-78℃下でn-ブチルリチウム(1.59Mヘキサン溶液として0.54mL)を加え、その温度のまま1時間撹拌した。この溶液に蒸留したばかりの5-ノナノン(122mg、0.85mmol)を滴下により加えて30分間撹拌した後、溶液の温度を徐々に室温まで上げ、塩化アンモニウム水溶液(5mL)を加えて反応を停止させた。反応混合物を10mLの水に加え、20mLの塩化メチレンで抽出した。有機相を分取して硫酸マグネシウムで乾燥させた後、濾過して得た濾液を減圧下で濃縮した。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(塩化メチレン:ヘキサン=4:1)で精製することで、無色オイル状の化合物3を得た(収量206mg、収率45%)。なお、化合物3は、上記一般式(3A)~(3F)で表す化合物とは別のものである。
H-NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm) 7.72-7.69(m,1H),7.21-7.15(m,3H),2.55(s,1H),2.28-2.21(m,2H),1.84-1.76(m,2H),1.74-1.67(m,4H),1.48-1.38(m,2H),1.34-1.02(m,11H),0.89-0.77(m,7H),0.71(m,6H),0.44-0.33(m,2H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 148.8,143.5,142.7,131.6,126.3,124.9,122.2,121.2,79.1,59.7,41.1,38.0,26.0,25.4,23.1,22.9,14.1,13.9.
HRMS(APCI+) m/z C2641BrO calcd for ([M]):448.2341,found:448.2329.
【0154】
・5,5’-[1,4-フェニレンビス(1,1-ジブチル-1H-インデン-2,3-ジイル)]ビス(ノナン-5-オール)の合成(化合物4)
【化51】
【0155】
マイクロ波反応装置に化合物3(206mg、0.45mmol)、1,4-ビス(4,4,5,5,-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)ベンゼン(69.1mg、0.21mmol)、Pd(dba)(19mg、0.021mmol)、トリフェニルホスフィン(16mg、0.061mmol)、1,4-ジオキサン(0.5mL)及び2M炭酸カリウム水溶液(0.3mL)を収容し、アルゴンガスで充填した。これら反応混合物を100℃で2時間撹拌した後、常温まで冷却し、クロロホルムで希釈してからシリカゲルのショートプラグに通した。得られた溶液に対して10mLのクロロホルムで3回抽出を行い、有機相をまとめて飽和食塩水で洗浄し、これを硫酸マグネシウムで乾燥させてから減圧下で濃縮した。これに含まれる溶媒を真空かで取り除いた後、得られた化合物4を精製せずに次の反応に用いた。なお、この化合物4は、上記一般式(4)で表す化合物とは別のものである。
【0156】
・5,5,7,7,12,12,14,14-オクタブチル-5,7,12,14-テトラヒドロジインデノ[2,1-a:2’,1’-g]-s-インダセン(COPV2(Bu))
【化52】
【0157】
化合物4(49mg、6.0×10-2mmol)のクロロホルム溶液(1mL)へ室温にてBF・OEt(51mg、0.36mmol)を添加して15分間撹拌した。その後、反応溶液へメタノールを加えて反応をクエンチした。得られた溶液を濃縮し、ヘキサンを展開溶媒としたショートパスシリカゲルカラムを通過させることで、黄色個体のCOPV2(Bu)を得た(収量31mg、収率67%)。COPV2(Bu)は、本発明の炭素架橋p-フェニレンビニレン誘導体である。
M.p.:205-207℃.
H-NMR0(400MHz,THF-d):δ(ppm) 7.36(s,2H),7.32(d,J=7.7Hz,4H),7.21-7.17(m,2H),7.13-7.09(m,2H),2.25-2.03(m,16H),1.16-1.01(m,16H),0.98-0.80(m,8H),0.77-0.63(m,32H).
13C{H}-NMR(100MHz,CDCl):δ(ppm) 156.1,155.7,154.8,140.9,137.6,126.3,123.8,121.8,118.6,113.1,53.8,53.5,38.3,26.9,26.7,23.1,13.8.
HRMS(APCI+) m/z C5882([M]):778.6417,found:778.6418.
【0158】
本発明の炭素架橋p-フェニレンビニレン誘導体であるCOPV2(Bu)は、全ての架橋炭素が2つのブチル基で置換されている。この化合物は、本願明細書の表1にも示した通り、架橋炭素がアリール基(p-オクチルフェニル基)で置換されたCOPV2(Ar)に比べて、モル吸光係数が大きく、また、蛍光発光における放射失活定数が大きい。そして、蛍光発光における放射失活定数が大きいということは、励起してから蛍光放射失活までの時間が短いということであり、より強い蛍光を発することが可能であることを意味する。このことから、本発明の炭素架橋p-フェニレンビニレン誘導体は、これまで知られてきた炭素架橋p-フェニレンビニレン誘導体に比べて蛍光色素として優れた特性を備えるということができる。