(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160218
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】電動弁および電動弁の弁体位置取得方法
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20231026BHJP
H02P 8/22 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
F16K31/04 A
F16K31/04 K
H02P8/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070400
(22)【出願日】2022-04-21
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荒井 裕介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 竜也
(72)【発明者】
【氏名】早川 潤哉
(72)【発明者】
【氏名】細谷 岳史
【テーマコード(参考)】
3H062
5H580
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB04
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062FF07
3H062GG01
3H062HH04
3H062HH08
3H062HH09
5H580AA10
5H580CA02
5H580CA12
5H580CB03
5H580CB04
5H580CB08
5H580FA14
5H580FB01
5H580HH09
(57)【要約】
【課題】絞り流路の面積のばらつきを抑制できかつ所望の流量特性を得ることができる電動弁を提供する。
【解決手段】電動弁1の弁体40は、単一のテーパー形状を有する制御部45を有する。弁体40は、ステッピングモーター66の回転によって閉弁位置Paと全開位置Pzとの間の移動区間で移動される。弁体40が閉弁位置Paにあるとき、制御部45の外周面である制御面46が弁座16に接する。弁体40が閉弁位置Paから移動して移動区間にあるとき、弁座16と制御面46との間に絞り流路が形成される。移動区間が、閉弁位置Paと第1位置との間の第1区間と、第1位置と第2位置との間の第2区間と、を含む。制御装置80が、弁体40が第1区間にあるときのステップ角度を、弁体40が第2区間にあるときのステップ角度より小さくする。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁口および前記弁口を囲む弁座を有する弁本体と、前記弁口と向かい合う弁体と、前記弁体を移動させるためのステッピングモーターと、前記ステッピングモーターを制御する制御装置と、を有する電動弁であって、
前記弁体が、単一のテーパー形状を有する制御部を有し、
前記弁体が、前記ステッピングモーターの回転によって閉弁位置と全開位置との間の移動区間で移動され、
前記弁体が前記閉弁位置にあるとき、前記制御部の外周面が前記弁座に接し、
前記弁体が前記閉弁位置から移動して前記移動区間にあるとき、前記弁座と前記外周面との間に絞り流路が形成され、
前記移動区間が、前記閉弁位置と第1位置との間の第1区間と、前記第1位置と第2位置との間の第2区間と、を含み、前記第2位置は、前記第1位置よりも前記閉弁位置から遠くにあり、
前記制御装置が、前記弁体が前記第1区間にあるときの前記ステッピングモーターのステップ角度と、前記弁体が前記第2区間にあるときの前記ステップ角度と、を異なる角度にすることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記弁体が前記第1区間にあるときの前記ステップ角度が、前記弁体が前記第2区間にあるときの前記ステップ角度よりも小さい、請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記ステッピングモーターが、マグネットローターと、A相ステーターと、B相ステーターと、を有し、
前記弁体が前記第1区間にあるとき、前記制御装置が前記ステッピングモーターの動作をマイクロステップ動作とし、
前記弁体が前記第2区間にあるとき、前記制御装置が前記ステッピングモーターの動作をフルステップ動作とする、請求項2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記ステッピングモーターが、マグネットローターと、A相ステーターと、B相ステーターと、を有し、
前記弁体が前記第1区間にあるとき、前記制御装置が前記ステッピングモーターの励磁モードを1-2相励磁とし、
前記弁体が前記第2区間にあるとき、前記制御装置が前記ステッピングモーターの励磁モードを2相励磁とする、請求項2に記載の電動弁。
【請求項5】
弁口および前記弁口を囲む弁座を有する弁本体と、前記弁口と向かい合う弁体と、前記弁体を移動させるためのステッピングモーターと、前記ステッピングモーターを制御する制御装置と、を有する電動弁の弁体位置取得方法であって、
前記弁体が、単一のテーパー形状を有する制御部を有し、
前記弁体が、前記ステッピングモーターの回転によって閉弁位置と全開位置との間の移動区間で移動され、
前記弁体が前記閉弁位置から移動して前記移動区間にあるとき、前記弁座と前記制御部の外周面との間に絞り流路が形成され、
前記弁体位置取得方法が、
前記弁体の位置と、当該位置における前記弁口を流れる流体の流量と、の組み合わせを2つ以上取得する工程と、
前記組み合わせと前記弁体が前記閉弁位置にあるときの設計上の前記流量とに基づいて、前記位置と前記流量との関係を示す一次関数の式を求める工程と、
前記一次関数の式を用いて前記弁体の現在位置を取得する工程と、を含むことを特徴とする電動弁の弁体位置取得方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁および電動弁の弁体位置取得方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、従来の電動弁の一例を開示している。このような電動弁は、エアコンなどが有する冷凍サイクルに組み込まれる。電動弁は、弁本体と、弁体と、弁体を移動させるためのステッピングモーターと、を有している。ステッピングモーターは、ローターとステーターとを有している。ステッピングモーターにパルスが入力されるとローターが回転する。ローターの回転に応じて弁体が移動し、弁本体の弁口を流れる流体(冷媒)の流量が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図15に、従来の電動弁が有する弁体の一例を示す。
図15に示す弁体940は、制御部945と、着座部947と、を有している。制御部945および着座部947は、テーパー形状を有している。制御部945のテーパー角度は、着座部947のテーパー角度より小さい。着座部947の下端に、制御部945の上端が接続されている。制御部945の外周面は、テーパー面である制御面946である。着座部947の外周面はテーパー面である着座面948である。弁本体910は、弁口915と、弁座916と、を有している。弁座916は、内向きのテーパー面であり、弁口915を囲んでいる。弁口915の上端915aには、弁座916の内周縁916aが接続されている。
【0005】
着座面948が弁座916の内周縁916a(すなわち弁口915の上端915a)に接すると、弁口915が閉じる。このとき、弁体940は閉弁位置にある。そして、着座面948が弁座916から離れると、弁口915が開き、弁体940と内周縁916aとの間に絞り流路が形成される。具体的には、着座面948が弁座916から離れた直後は、着座面948と内周縁916aとの間に絞り流路が形成される(第1状態)。着座面948が弁座916からさらに離れると、制御面946と内周縁916aとの間に絞り流路が形成される(第2状態)。
【0006】
図16に示すグラフは、従来の電動弁における弁開度と絞り流路の面積との関係の一例を模式的に示している。弁開度は、弁体940の弁座916に対する位置(閉弁位置からの移動量)を示す。弁開度は、弁体940が閉弁位置にあるときを0%とし、弁体940が全開位置にあるときを100%として、パーセンテージで示している。絞り流路の面積は、弁体940が閉弁位置にあるときを0%とし、弁体940が全開位置にあるときを100%として、パーセンテージで示している。
【0007】
図16に示すように、弁口915、弁座916および弁体940の寸法が公差内であっても、線Aで示される関係を有する電動弁もあれば、線Bで示される関係を有する電動弁もある。
図16において、線Aの第1状態に対応する部分に符号a1を付し、第2状態に対応する部分に符号a2を付している。線Bの第1状態に対応する部分に符号b1を付し、線Bの第2状態に対応する部分に符号b2を付している。弁開度における第1状態に対応する区間では、寸法の違いが絞り流路の面積に大きく影響する。そのため、第1状態が存在することにより、電動弁において絞り流路の面積(すなわち、流体の流量)のばらつきが大きい。
【0008】
例えば、制御面946が弁座916に接する構成を有する電動弁では、第1状態がなく第2状態のみ有し、絞り流路の面積のばらつきを抑制できる。しかしながら、弁座916の摩耗を抑制するため、制御部945がテーパー角度の比較的大きいテーパー形状を有する必要がある。そのため、電動弁において、制御部945の形状に制約があり、所望の流量特性を得ることができない。
【0009】
そこで、本発明は、絞り流路の面積のばらつきを抑制できかつ所望の流量特性を得ることができる電動弁および電動弁の弁体位置取得方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る電動弁は、弁口および前記弁口を囲む弁座を有する弁本体と、前記弁口と向かい合う弁体と、前記弁体を移動させるためのステッピングモーターと、前記ステッピングモーターを制御する制御装置と、を有する電動弁であって、前記弁体が、単一のテーパー形状を有する制御部を有し、前記弁体が、前記ステッピングモーターの回転によって閉弁位置と全開位置との間の移動区間で移動され、前記弁体が前記閉弁位置にあるとき、前記制御部の外周面が前記弁座に接し、前記弁体が前記閉弁位置から移動して前記移動区間にあるとき、前記弁座と前記外周面との間に絞り流路が形成され、前記移動区間が、前記閉弁位置と第1位置との間の第1区間と、前記第1位置と第2位置との間の第2区間と、を含み、前記第2位置は、前記第1位置よりも前記閉弁位置から遠くにあり、前記制御装置が、前記弁体が前記第1区間にあるときの前記ステッピングモーターのステップ角度と、前記弁体が前記第2区間にあるときの前記ステップ角度と、を異なる角度にすることを特徴とする。
【0011】
本発明において、前記弁体が前記第1区間にあるときの前記ステップ角度が、前記弁体が前記第2区間にあるときの前記ステップ角度よりも小さい、ことが好ましい。
【0012】
本発明において、前記ステッピングモーターが、マグネットローターと、A相ステーターと、B相ステーターと、を有し、前記弁体が前記第1区間にあるとき、前記制御装置が前記ステッピングモーターの動作をマイクロステップ動作とし、前記弁体が前記第2区間にあるとき、前記制御装置が前記ステッピングモーターの動作をフルステップ動作とする、ことが好ましい。
【0013】
本発明において、前記ステッピングモーターが、マグネットローターと、A相ステーターと、B相ステーターと、を有し、前記弁体が前記第1区間にあるとき、前記制御装置が前記ステッピングモーターの励磁モードを1-2相励磁とし、前記弁体が前記第2区間にあるとき、前記制御装置が前記ステッピングモーターの励磁モードを2相励磁とする、ことが好ましい。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の他の一態様に係る電動弁の弁体位置取得方法は、弁口および前記弁口を囲む弁座を有する弁本体と、前記弁口と向かい合う弁体と、前記弁体を移動させるためのステッピングモーターと、前記ステッピングモーターを制御する制御装置と、を有する電動弁の弁体位置取得方法であって、前記弁体が、単一のテーパー形状を有する制御部を有し、前記弁体が、前記ステッピングモーターの回転によって閉弁位置と全開位置との間の移動区間で移動され、前記弁体が前記閉弁位置から移動して前記移動区間にあるとき、前記弁座と前記制御部の外周面との間に絞り流路が形成され、前記弁体位置取得方法が、前記弁体の位置と、当該位置における前記弁口を流れる流体の流量と、の組み合わせを2つ以上取得する工程と、前記組み合わせと前記弁体が前記閉弁位置にあるときの設計上の前記流量とに基づいて、前記位置と前記流量との関係を示す一次関数の式を求める工程と、前記一次関数の式を用いて前記弁体の現在位置を取得する工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る電動弁は、弁体が閉弁位置にあるとき、単一のテーパー形状を有する制御部の外周面が弁座に接する。弁体が閉弁位置から移動して移動区間にあるとき、弁座と制御部の外周面との間に絞り流路が形成される。これにより、絞り流路の面積のばらつきを抑制できる。また、制御装置が、弁体が第1区間にあるときのステッピングモーターのステップ角度と、弁体が第2区間にあるときのステップ角度と、を異なる角度にする。これにより、第1区間におけるステップ角度と第2区間におけるステップ角度とを適宜設定することで所望の流量特性を得ることができる。
【0016】
本発明に係る弁体位置取得方法は、(1)弁体の位置と、当該位置における弁口を流れる流体の流量と、の組み合わせを2つ以上取得する工程と、(2)前記組み合わせと弁体が閉弁位置にあるときの設計上の流量とに基づいて、位置と流量との関係を示す一次関数の式を求める工程と、(3)一次関数の式を用いて弁体の現在位置を取得する工程と、を含む。これにより、測定した流量に基づいて弁体の現在位置を取得することができる。そのため、電動弁において、閉弁位置でマグネットローターの回転を物理的に規制するストッパ機構を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施例に係る電動弁の断面図である。
【
図2】電動弁のステーターユニットの断面図である。
【
図3】電動弁の弁体が閉弁位置にあるときの弁体およびその近傍の断面図である。
【
図4】電動弁の弁体が全開位置にあるときの弁体およびその近傍の断面図である。
【
図5】電動弁における弁開度と流量との関係を示すグラフである。
【
図6】電動弁のマグネットローターとステーターとの位置関係を説明する図である。
【
図8】電動弁の制御装置に格納されたパルス番号情報およびステップ角度情報に関するテーブルの一例を示す図である。
【
図9】閉弁位置から全開位置までに割り当てられたパルス番号と弁体の位置との関係を説明する図である。
【
図10】電動弁の弁体の位置と弁口を流れる流体の流量との関係の一例を示すグラフである。
【
図11】電動弁の弁体の位置と弁口を流れる流体の流量との関係の他の一例を示すグラフである。
【
図12】電動弁の弁体の位置と弁口を流れる流体の流量との関係の他の一例を示すグラフである。
【
図13】電動弁の工場出荷時の設定を行うシステムの一例を示す図である。
【
図14】
図1の電動弁の変形例の構成を示す断面図である。
【
図15】従来の電動弁が有する弁体およびその近傍の断面図である。
【
図16】従来の電動弁における弁開度と絞り流路の面積との関係を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施例に係る電動弁1について、
図1~
図13を参照して説明する。電動弁1は、例えば、空気調和機の冷凍サイクルに組み込まれ、空気調和機の制御ユニット400からの命令に応じて動作する。制御ユニット400は、電動弁1の外部にある外部装置である。
【0019】
図1は、本発明の一実施例に係る電動弁の断面図である。
図2は、電動弁のステーターユニットの断面図である。
図3、
図4は、電動弁の弁体およびその近傍の断面図である。
図3は、弁体が閉弁位置にある状態を示す。
図4は、弁体が全開位置にある状態を示す。
図1、
図3、
図4において、電動弁の弁軸および弁体を正面から見た状態で示す。
【0020】
図1、
図2に示すように、電動弁1は、弁本体10と、キャン20と、駆動機構30と、弁体40と、制御装置80と、を有している。
【0021】
弁本体10は、アルミニウム合金などの金属製である。弁本体10は、本体部材11と、流路ブロック12と、支持部材13と、を有している。
【0022】
本体部材11は、円筒形状を有している。本体部材11は、弁室14と、弁口15と、弁座16と、を有している。弁口15は、弁室14に開口している。弁座16は、円環形状の内向きのテーパー面である。弁座16は、弁室14において弁口15を囲んでいる。弁座16の内周縁16aは、弁口15の上端15aに接続されている。本体部材11は、第1取付孔11aを有している。第1取付孔11aは、本体部材11の上面11bに配置されている。
【0023】
流路ブロック12は、直方体形状を有している。流路ブロック12は、第2取付孔12aを有している。第2取付孔12aは、流路ブロック12の上面12bに配置されている。本体部材11は、第2取付孔12aに配置されている。本体部材11は、ねじ構造により流路ブロック12に取り付けられている。本体部材11の上面11bと流路ブロック12の上面12bとは、同一平面上にある。本体部材11および流路ブロック12には、流路17と、流路18と、が設けられている。流路17は、弁室14に接続されている。流路18は、弁口15を介して弁室14に接続されている。なお、電動弁1において、流路ブロック12を省略して、本体部材11が直方体形状を有していてもよい。
【0024】
支持部材13は、円筒形状を有している。支持部材13は、第1取付孔11aに配置されている。支持部材13は、ねじ構造により本体部材11に取り付けられている。支持部材13の上部は、本体部材11の上面11bから上方に突出している。支持部材13の内周面には雌ねじ13cが形成されている。
【0025】
キャン20は、ステンレスなどの金属製である。キャン20は、下端が開口しかつ上端が塞がれた円筒形状を有している。キャン20の下端は、円環板形状の接続部材25を介して支持部材13の上部に固定されている。
【0026】
駆動機構30は、弁体40を上下方向(軸線L方向)に移動させる。駆動機構30は、マグネットローター31と、弁軸34と、ステーターユニット50と、を有している。
【0027】
マグネットローター31は、上端が開口しかつ下端が塞がれた円筒形状を有している。マグネットローター31の外径は、キャン20の内径より小さい。マグネットローター31の外周面には、複数のN極および複数のS極が形成されている。複数のN極および複数のS極は、上下方向に延在している。複数のN極および複数のS極は、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。本実施例において、マグネットローター31は、N極を12個有し、S極を12個有している。
【0028】
弁軸34は、円柱形状を有している。弁軸34の上端は、マグネットローター31の下端に同軸に固定されている。弁軸34の外周面には、雄ねじ34cが形成されている。弁軸34は支持部材13の内側に配置され、雌ねじ13cと雄ねじ34cとが螺合される。
【0029】
弁体40は、弁室14に配置されている。弁体40は、弁口15と上下方向に向かい合っている。弁体40は、弁軸34の下端に接続されている。弁軸34と弁体40とは、例えば、円柱形状のワークピースを切削加工して、一体的に形成される。
【0030】
弁体40は、制御部45を有している。制御部45は、弁口15に向かうにしたがって徐々に径が小さくなる単一のテーパー形状(円錐台形状)を有している。換言すると、制御部45は、テーパー角度の異なる複数のテーパー形状を含む形状を有していない。制御部45のテーパー角度は、弁座16の摩耗を抑制可能な角度に設定されている。制御部45のテーパー角度は、30~60度が好ましい。制御部45の外周面は、制御面46である。制御面46は、外向きのテーパー面である。
【0031】
弁体40は、駆動機構30によって上下方向に移動される。弁体40の移動によって弁口15が開閉される。具体的には、弁体40は、
図3に示す閉弁位置Paと
図4に示す全開位置Pzとの間で移動される。閉弁位置Paと全開位置Pzとの間は、弁体40の移動区間である。閉弁位置Paにおいて、制御面46が弁座16の内周縁16aに接する。全開位置Pzにおいて、制御部45の下端45aの上下方向の位置が内周縁16aの上下方向の位置と一致する。弁体40が閉弁位置Paから移動して移動区間にあるとき、内周縁16aと制御面46との間に円環形状の隙間(絞り流路)が形成される。絞り流路の面積は、弁口15を流れる流体の流量と密接な関係を有する。
【0032】
図5のグラフは、電動弁1における弁開度と流量との関係を示している。弁開度は、弁体40の弁座16に対する位置(閉弁位置Paからの移動量)を示し、弁体40が閉弁位置Paにあるときを0%とし、弁体40が全開位置Pzにあるときを100%として、パーセンテージで示される。流量は、弁口15を流れる流体の流量を示し、弁体40が閉弁位置Paにあるときの流量を0%とし、全開位置Pzにあるときの流量を100%として、パーセンテージで示される。
図5に示すように、電動弁1(弁体40)の基本的な流量特性は、弁開度に対して流量が直線的に変化するリニア特性である。
【0033】
支持部材13の雌ねじ13cと弁軸34の雄ねじ34cとは、ねじ送り機構を構成する。マグネットローター31が開弁方向に回転されると、雌ねじ13cと雄ねじ34cとのねじ送り作用により、弁軸34および弁体40が上方に移動する。マグネットローター31が閉弁方向に回転されると、雌ねじ13cと雄ねじ34cとのねじ送り作用により、弁軸34および弁体40が下方に移動する。弁体40が下方に移動して制御面46が弁座16の内周縁16aに接すると、弁体40の下方への移動が規制され、マグネットローター31の閉弁方向の回転が規制される。
【0034】
ステーターユニット50は、ステーター60と、ハウジング70と、を有している。
【0035】
ステーター60は、円筒形状を有している。ステーター60は、A相ステーター61と、B相ステーター62と、合成樹脂製のモールド63と、を有している。
【0036】
A相ステーター61は、内周側に複数のクローポール型の極歯61a、61bを有している。極歯61aの先端は下方に向いており、極歯61bの先端は上方に向いている。極歯61aと極歯61bとは、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。本実施例において、A相ステーター61は、極歯61aを12個有し、極歯61bを12個有している。互いに隣り合う極歯61aと極歯61bとの間の角度は、15度である。A相ステーター61のコイル61cが通電されると、極歯61aと極歯61bとは互いに異なる極性となる。
【0037】
B相ステーター62は、内周側に複数のクローポール型の極歯62a、62bを有している。極歯62aの先端は下方に向いており、極歯62bの先端は上方に向いている。極歯62aと極歯62bとは、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。本実施例において、B相ステーター62は、極歯62aを12個有し、極歯62bを12個有している。互いに隣り合う極歯62aと極歯62bとの間の角度は、15度である。B相ステーター62のコイル62cが通電されると、極歯62aと極歯62bとは互いに異なる極性となる。
【0038】
A相ステーター61とB相ステーター62とは、同軸に配置されている。A相ステーター61とB相ステーター62とは、互いに接している。軸線L方向から見たときに互いに隣り合うA相ステーター61の極歯61aとB相ステーター62の極歯62aとの間の角度は、7.5度である。
【0039】
モールド63は、A相ステーター61およびB相ステーター62の内側に充填されている。また、モールド63は、極歯61a、61bおよび極歯62a、62bとともにステーター内周面60aを構成している。ステーター内周面60aの径は、キャン20の外周面の径と同じである。モールド63は、端子支持部64を有している。
【0040】
端子支持部64は、A相ステーター61およびB相ステーター62から横方向(軸線Lと直交する方向)に延びている。端子支持部64は、複数の端子65を支持している。複数の端子65は、端子支持部64の先端から横方向に突出している。複数の端子65は、A相ステーター61のコイル61cおよびB相ステーター62のコイル62cと接続されている。
【0041】
電動弁1において、本体部材11(弁口15、弁座16)、支持部材13、キャン20、マグネットローター31、弁軸34、弁体40(制御部45)、ステーター60(A相ステーター61、B相ステーター62)は、それぞれの中心軸が軸線Lに一致する。
【0042】
ステーター60の内側には、キャン20が配置される。ステーター60は、キャン20の内側に配置されたマグネットローター31とともにステッピングモーター66を構成する。
【0043】
ステッピングモーター66は、フルステップ動作およびマイクロステップ動作が可能である。
図6A、
図6Bは、マグネットローター31とステーター60との位置関係を説明する図である。
図6Aは、マグネットローター31の磁極(N極、S極)がA相ステーター61の極歯61a、61bと向かい合う状態を示す。
図6Bは、マグネットローター31の磁極がB相ステーター62の極歯62a、62bと向かい合う状態を示す。
図6A、
図6Bにおいて、基準となる磁極および極歯に黒丸を付している。
【0044】
フルステップ動作とは、ステッピングモーター66への1パルスの入力に対して、マグネットローター31を、磁極が極歯61a、61bと向かい合う位置(
図6Aに示す位置)から、磁極が当該極歯61a、61bの隣にある極歯62a、62bと向かい合う位置(
図6Bに示す位置)まで回転させる動作、または、
図6Bに示す位置から
図6Aに示す位置まで回転させる動作、である。本実施例において、フルステップ動作のときの1パルスあたりの回転角度(ステップ角度)は、7.5度である。
【0045】
マイクロステップ動作とは、ステッピングモーター66への1パルスの入力に対して、フルステップ動作のステップ角度を等分割した角度でマグネットローター31を回転させる動作である。マイクロステップ動作は、A相ステーター61のコイル61cの電流値とB相ステーター62のコイル62cの電流値とを細かく制御することにより行う。マイクロステップ動作時のステップ角度は、例えば、0.9375度(8分割)、1.875度(4分割)、または、1.5度(5分割)である。なお、本実施例において、1パルスの入力に対して、フルステップ動作のステップ角度を2分割した角度(3.75度)でマグネットローター31を回転させる動作(「ハーフステップ動作」とも言われる。)はマイクロステップ動作に含む。
【0046】
本実施例において、ステッピングモーター66が500パルス分のフルステップ動作を行うと、マグネットローター31が3750度回転し、弁体40が閉弁位置Paから全開位置Pzまで移動する。本明細書において、「ステッピングモーター66にパルスが入力されること」は、「ステッピングモーター66のステーター60にパルスに応じた駆動電流が供給されること」と同義である。
【0047】
ハウジング70は、合成樹脂製である。ハウジング70は、ステーター60と制御装置80とを収容している。ハウジング70は、周壁部71と、上壁部72と、コネクタ73と、を有している。
【0048】
周壁部71は、円筒形状を有している。周壁部71には、ステーター60が埋め込まれている。周壁部71の内周面71aの径は、ステーター内周面60aの径と同じである。内周面71aは、ステーター内周面60aに段差なく連なっている。上壁部72は、ドーム形状を有している。上壁部72は、周壁部71の上端に接続されている。コネクタ73は、ハウジング70の上部に配置されている。周壁部71の内周面71a、上壁部72の内面72aおよびステーター内周面60aは、ステーターユニット50の内側空間74を形成している。内側空間74にはキャン20が配置される。
【0049】
ハウジング70は、基板空間75を有している。基板空間75は、内側空間74と隣り合っている。内側空間74と基板空間75との間に隔壁76が配置されている。隔壁76は、内側空間74と基板空間75とを区画している。ハウジング70は、基板空間75に通じる開口70aを有しており、開口70aは蓋部材77によって塞がれている。
【0050】
制御装置80は、ハウジング70の基板空間75に配置されている。制御装置80は、メイン基板90と、サブ基板100と、磁気センサー110と、マイクロコンピューター120と、を有している。
【0051】
メイン基板90は、電子部品が実装されるプリント基板である。メイン基板90は、基板空間75に収容されている。メイン基板90は、上下方向に平行に配置されている。メイン基板90には、マイクロコンピューター120が実装されている。メイン基板90には、ステーター60の複数の端子65が接続されている。
【0052】
サブ基板100は、電子部品が実装されるプリント基板である。サブ基板100は、基板空間75に収容されている。サブ基板100は、メイン基板90に対して直角に配置されている。サブ基板100の第1端部100aは、メイン基板90の近傍に配置されている。サブ基板100の第2端部100bは、隔壁76の近傍に配置されている。サブ基板100は、基板間コネクタを介してメイン基板90に接続されている。
【0053】
磁気センサー110は、例えば、ホールICである。磁気センサー110は、サブ基板100の第2端部100bに配置されている。磁気センサー110は、キャン20および隔壁76を介してマグネットローター31と横方向に並んでいる。磁気センサー110は、マグネットローター31が生じる磁界の向きに応じた信号を出力する。
【0054】
マイクロコンピューター120は、例えば、中央演算装置、不揮発性メモリ、作業用メモリ、通信モジュール、モータードライバなどを1つのパッケージに集積した組み込み機器用のマイクロコンピューターである。マイクロコンピューター120は、電動弁1の制御を司る。なお、不揮発性メモリ、作業用メモリ、通信モジュールおよびモータードライバは、マイクロコンピューター120に外部接続される個別の電子部品であってもよい。
【0055】
図7は、電動弁1の機能ブロック図を示す。
図7に示すように、制御装置80は、記憶部210と、通信部220と、演算部230と、回転制御部240と、を有している。不揮発性メモリは、記憶部210を構成する。中央演算装置は、不揮発性メモリに格納されたプログラムを実行し、通信部220、演算部230および回転制御部240として機能する。作業用メモリは、演算部230や回転制御部240で用いられる変数を格納する。通信モジュールは、コネクタ73に接続された図示しないケーブルを介して空気調和機の制御ユニット400と接続される。モータードライバは、ステッピングモーター66と接続されている。具体的には、モータードライバは、A相ステーター61のコイル61cおよびB相ステーター62のコイル62cと接続されている。モータードライバは、パルスに応じた駆動電流をコイル61cおよびコイル62cに供給する。
【0056】
記憶部210は、例えば、
図8に示すテーブル310を格納している。テーブル310は、区間情報領域311と、パルス番号情報領域312と、ステップ角度情報領域313と、を有している。
【0057】
区間情報領域311には、弁体40の閉弁位置Paから全開位置Pzまでの間に設定された区間に関する情報が設定される。区間情報領域311には、区間に関する情報として「第1区間」、「第2区間」が設定されている。
【0058】
パルス番号情報領域312には、弁体40の閉弁位置Paから全開位置Pzまでに昇順で割り当てられたパルス番号に関する情報(パルス番号情報)が設定される。パルス番号情報領域312には、パルス番号情報としてパルス番号「1」~「1000」が設定されている。また、区間情報領域311の「第1区間」には、パルス番号「1」~「600」が割り当てられ、「第2区間」には、パルス番号「601」~「1000」が割り当てられている。
【0059】
図9は、閉弁位置Paから全開位置Pzまでに割り当てられたパルス番号と弁体40の位置との関係を示す。閉弁位置Paから全開位置Pzまでの移動区間に弁体40の位置「0」~「1000」が昇順で設定されている。そして、位置「0」~「1000」の間隔部分に対してパルス番号「1」~「1000」が割り当てられている。位置「0」と位置「1」との間隔部分にパルス番号「1」が割り当てられており、位置「1」と位置「2」との間隔部分にパルス番号「2」が割り当てられており、以降も同様である。例えば、弁体40が位置「1」にある場合、弁体40を位置「0」に移動させるにはパルス番号「1」に係る情報が用いられ、弁体40を位置「2」に移動させるにはパルス番号「2」に係る情報が用いられる。本実施例において、位置[0]が閉弁位置Paであり、位置「600」が第1位置であり、位置「1000」が第2位置かつ全開位置Pzである。第2位置は、第1位置より閉弁位置Paから遠い。
【0060】
ステップ角度情報領域313は、パルス番号情報領域312に設定されたパルス番号のそれぞれに対応するステップ角度に関する情報(ステップ角度情報)が設定される。ステップ角度情報領域313には、ステップ角度情報として、フルステップ動作におけるステップ角度の分割数が設定される。ステップ角度情報領域313には、パルス番号「1」~「600」に対応して「8」が設定され、パルス番号「601」~「1000」に対応して「1」が設定されている。つまり、「第1区間」におけるステップ角度として、7.5度/8=0.9375度が設定され、「第2区間」におけるステップ角度として、7.5度/1=7.5度が設定されている。ステッピングモーター66は、第1区間および第2区間において互いに異なるステップ角度であり、第1区間におけるステップ角度が第2区間におけるステップ角度より小さい。なお、ステップ角度情報として、ステップ角度を示す数値が設定されていてもよい。
【0061】
記憶部210は、パルス番号情報およびステップ角度情報をテーブル形式で格納しているが、数式などの他の形式で格納していてもよい。
【0062】
電動弁1は、ステッピングモーター66(マグネットローター31)がテーブル310に基づいて回転されることにより、
図10に示す流量特性を有する電動弁として動作する。
図10に示す流量特性では、第1区間におけるステップ角度および第2区間におけるステップ角度が一定である。これ以外にも、例えば、テーブル310の第1区間におけるステップ角度をパルス番号が大きくなるにしたがって増加するように設定してもよい。このようにすることで、電動弁1を、
図11に示す流量特性を有する電動弁として動作させることできる。
図11に示す流量特性では、第1区間においてパルス番号が大きくなるにしたがって1パルスあたりの流量の変化量が徐々に大きくなる。または、例えば、テーブル310に第2区間に続く第3区間を設けてもよい。第3区間におけるステップ角度を第2区間におけるステップ角度より大きく設定し、第3区間におけるステップ角度を一定にする。このようにすることで、電動弁1を、
図12に示す流量特性を有する電動弁として動作させることができる。
図12において、弁体40の位置「0」が閉弁位置Paであり、弁体40の位置「800」が第1位置であり、弁体40の位置「1200」が第2位置であり、弁体40の位置「1500」が第3位置でかつ全開位置Pzである。第3位置は、第2位置より閉弁位置Paから遠い。テーブル310にステップ角度を適宜設定することにより、電動弁1において所望の流量特性を得ることができる。
【0063】
通信部220は、通信モジュールを通じて制御ユニット400と通信する。通信部220は、各種命令を制御ユニット400から受信して演算部230に転送する。通信部220は、電動弁1の各種状態を演算部230や回転制御部240から取得して制御ユニット400に送信する。通信部220は、制御ユニット400から弁体移動命令を受信する。弁体移動命令は、弁体40の移動目標位置Ptに関する情報を含んでいる。当該情報は、目標とする弁開度を示す。なお、当該情報は、弁体40の現在位置Pcからの相対的な移動距離(パルス数など)を示してもよい。当該情報に基づき、演算部230が弁体40の移動目標位置Ptを取得する。
【0064】
弁体40の現在位置Pcは、電動弁1が動作しているときは作業用メモリに格納され、電動弁1の電源が遮断される際に記憶部210に格納される。
【0065】
電動弁1において、制御ユニット400が指定する弁開度0[%]~100[%]は、弁体40の位置「0」~「1000」に対応している。例えば、弁体移動命令が含む弁開度が0%のとき、移動目標位置Ptは位置「0」である。弁体移動命令が含む弁開度が25%のとき、移動目標位置Ptは位置「250」である。弁体移動命令が含む弁開度が50%のとき、移動目標位置Ptは位置「500」である。弁体移動命令が含む弁開度が75%のとき、移動目標位置Ptは位置「750」である。弁体移動命令が含む弁開度が100%のとき、移動目標位置Ptは位置「1000」である。そして、弁体40の現在位置Pcを示す番号が移動目標位置Ptを示す番号より小さいとき、ステッピングモーター66の回転方向は弁体40が弁座16から離れる方向(開弁方向)である。弁体40の現在位置Pcを示す番号が移動目標位置Ptを示す番号より大きいとき、ステッピングモーター66の回転方向は弁体40が弁座16に近づく方向(閉弁方向)である。
【0066】
演算部230は、各種演算を行う。演算部230は、通信部220が弁体移動命令を受信すると、弁体移動命令が含む弁開度に対応する弁体40の位置を移動目標位置Ptとして取得する。演算部230は、例えば、弁開度が10[%]のとき、移動目標位置Ptとして位置「100」を取得し、弁開度が50[%]のとき、移動目標位置Ptとして位置「500」を取得し、弁開度が90[%]のとき、移動目標位置Ptとして位置「900」を取得する。
【0067】
そして、演算部230は、弁体40の現在位置Pc(始点)と移動目標位置Pt(終点)との間にあるパルス番号を取得する。例えば、演算部230は、現在位置Pcが位置「0」であり移動目標位置Ptが位置「150」であるとき、パルス番号「1」~「150」を取得する。演算部230は、現在位置Pcが位置「150」であり移動目標位置Ptが位置「750」であるとき、パルス番号「151」~「750」を取得する。演算部230は、現在位置Pcが位置「750」であり移動目標位置Ptが位置「300」であるとき、パルス番号「750」~「301」を取得する。
【0068】
また、演算部230は、磁気センサー110が出力した信号に基づいてマグネットローター31の回転角度および状態(回転状態、停止状態)を取得する。
【0069】
回転制御部240は、弁体40の現在位置Pcから移動目標位置Ptまでに割り当てられたパルス番号の順番でテーブル310から各パルス番号に対応するステップ角度情報を1つずつ取得する。そして、回転制御部240は、ステップ角度情報を用いてステップ角度を算出し、パルス、ステップ角度および回転方向をモータードライバに入力してステッピングモーター66を回転させる。
【0070】
また、回転制御部240は、弁体移動命令の成否判定を行う。具体的には、回転制御部240は、現在位置Pcから移動目標位置Ptまでに割り当てられた各パルス番号に対応するステップ角度を積算したマグネットローター31の回転角度(計算回転角度)を、演算部230が磁気センサー110の信号に基づいて取得したマグネットローター31の回転角度(測定回転角度)と比較する。これら回転角度が一致した場合、回転制御部240は、通信部220を介して弁体移動命令が成功したことを示す情報を命令実行結果として制御ユニット400に送信する。これら回転角度が一致しない場合、回転制御部240は、通信部220を介して弁体移動命令が失敗したことを示す情報を命令実行結果として制御ユニット400に送信する。
【0071】
次に、電動弁1の通常動作の一例について説明する。
【0072】
電動弁1の制御装置80は、電源が投入されると起動状態になる。起動状態において、制御装置80は、記憶部210から現在位置Pcを読み出して作業メモリに格納したあと、通常動作状態に移行する。通常動作状態において、制御装置80は、制御ユニット400からの命令を待つ。制御ユニット400は、電動弁1が
図10に示す流量特性を有するものと認識している。例えば、電動弁1が通常動作状態に移行した直後の弁体40の現在位置Pcが、閉弁位置Pa(位置「0」)であるものとする。
【0073】
制御装置80は、例えば、弁開度90[%]を含む弁体移動命令を制御ユニット400から受信すると、移動目標位置Ptとして位置「900」を取得する。そして、制御装置80は、現在位置Pcから移動目標位置Ptまでに割り当てられたパルス番号「1」~「900」を取得する。
【0074】
制御装置80は、テーブル310に基づいて、パルス番号「1」~「900」に対応するステップ角度を算出する。制御装置80は、現在位置Pcを示す番号(位置「0」)が移動目標位置Ptを示す番号(位置「900」)より小さいため、回転方向を「開弁方向」とする。制御装置80は、パルス、ステップ角度および回転方向をモータードライバに入力してステッピングモーター66(マグネットローター31)を回転させる。マグネットローター31とともに弁軸34が開弁方向に回転する。支持部材13の雌ねじ13cと弁軸34の雄ねじ34cとのねじ送り作用により、弁軸34が上方に移動する。弁軸34とともに弁体40が上方に移動して、弁体40が弁座16から離れる。制御装置80は、パルス番号「1」~「900」に対応するステップ角度を積算してマグネットローター31の回転角度(計算回転角度)を取得する。また、制御装置80は、磁気センサー110の信号に基づいてマグネットローター31の回転角度(測定回転角度)を取得する。
【0075】
制御装置80は、パルス番号「1」~「900」に対応するステップ角度でのステッピングモーター66の回転が終了すると、現在位置Pcとして、位置「900」を作業用メモリに格納する。また、制御装置80は、弁体移動命令の成否判定を行う。具体的には、制御装置80は、計算回転角度と測定回転角度とを比較する。これら回転角度が一致した場合、制御装置80は、弁体移動命令が成功したことを示す情報を命令実行結果として制御ユニット400に送信する。これら回転角度が一致しない場合、制御装置80は、弁体移動命令が失敗したことを示す情報を命令実行結果として制御ユニット400に送信する。そして、制御装置80は、制御ユニット400からの次の命令を待つ。
【0076】
次に、制御装置80は、例えば、弁開度50[%]を含む弁体移動命令を制御ユニット400から受信すると、移動目標位置Ptとして位置「500」を取得する。そして、制御装置80は、現在位置Pcから移動目標位置Ptまでに割り当てられたパルス番号「900」~「501」を取得する。
【0077】
制御装置80は、テーブル310に基づいて、パルス番号「900」~「501」に対応するステップ角度を算出する。制御装置80は、現在位置Pcを示す番号(位置「900」)が移動目標位置Ptを示す番号(位置「500」)より大きいため、回転方向を「閉弁方向」とする。制御装置80は、パルス、ステップ角度および回転方向をモータードライバに入力してステッピングモーター66(マグネットローター31)を回転させる。マグネットローター31とともに弁軸34が閉弁方向に回転する。支持部材13の雌ねじ13cと弁軸34の雄ねじ34cとのねじ送り作用により、弁軸34が下方に移動する。弁軸34とともに弁体40が下方に移動して、弁体40が弁座16に近づく。制御装置80は、パルス番号「900」~「501」に対応するステップ角度を積算してマグネットローター31の回転角度(計算回転角度)を取得する。また、制御装置80は、磁気センサー110の信号に基づいてマグネットローター31の回転角度(測定回転角度)を取得する。
【0078】
制御装置80は、パルス番号「900」~「501」に対応するステップ角度でのステッピングモーター66の回転が終了すると、現在位置Pcとして、位置「501」を作業用メモリに格納する。また、制御装置80は、弁体移動命令の成否判定を行い、弁体移動命令の命令実行結果を制御ユニット400に送信する。そして、制御装置80は、制御ユニット400からの次の命令を待つ。以降、制御装置80は、受信した命令に応じた動作を行う。制御装置80は、電源遮断命令を制御ユニット400から受信すると、作業メモリにある現在位置Pcを記憶部210に格納して、電源遮断に備える。
【0079】
次に、電動弁1の弁体位置取得方法の一例について説明する。電動弁1は、工場出荷時に、テーブル310および弁体40の現在位置Pcが記憶部210に格納される。
【0080】
図13は、電動弁の工場出荷時の設定を行うシステムの一例を示す。電動弁1の制御装置80は、コネクタ73に接続されたケーブルを介して設定装置500が接続される。設定装置500は、例えば、デスクトップコンピューターである。設定装置500は、制御装置80を介してステッピングモーター66を制御可能である。また、設定装置500は、制御装置80の記憶部210に各種情報を格納することができる。設定装置500は、閉弁位置Paと全開位置Pzとの間の移動区間において、ステッピングモーター66を一定のステップ角度で回転させることができる。本実施例では、設定装置500は、ステッピングモーター66をフルステップ動作(ステップ角度:7.5度)で動作させる。設定装置500が指定する弁開度0[%]~100[%]は、弁体40の位置「0」~「500」に対応する。ステッピングモーター66に500個のパルスを入力すると、弁体40が閉弁位置Pa(位置「0」)から全開位置Pz(位置「500」)まで移動する。設定装置500の記憶装置には、弁体40が閉弁位置Paにあるときに弁口15を流れる流体の設計上の流量F0が格納されている。
【0081】
電動弁1の流路17に流体供給装置510が接続され、流路18に流量測定装置520が接続される。流体供給装置510は、一定流量の流体を供給可能である。流量測定装置520は、流路18から流出する流体の流量を測定する。流体供給装置510および流量測定装置520は、設定装置500によって制御される。
【0082】
設定装置500は、流体供給装置510を制御して電動弁1への流体の供給を開始する。
【0083】
設定装置500は、電動弁1の弁体40が現在ある位置を位置P1とみなし、流量測定装置520によって測定された流量を位置P1における流体の流量F1として取得する。設定装置500は、記憶装置に位置P1と流量F1との組み合わせC1を格納する。なお、設定装置500は、流量F1に基づいて位置P1を推定してもよい。
【0084】
設定装置500は、ステッピングモーター66にパルスを入力し、ステッピングモーター66を回転させて、弁体40を位置P1と異なる位置P2に移動させる。設定装置500は、流量測定装置520によって測定された流量を位置P2における流体の流量F2として取得する。設定装置500は、記憶装置に位置P2と流量F2との組み合わせC2を格納する。
【0085】
設定装置500は、組み合わせC1、C2に基づいて、1パルスあたりの流量の変化(傾きa)を算出する。具体的には、以下の式(1)を用いて算出する。P1は位置P1を示す番号であり、P2は位置P2を示す番号であり、F1は弁体40が位置P1にあるときの流体の流量であり、F2は弁体40が位置P2にあるときの流体の流量である。
a=|F2-F1|/|P2-P1| ・・・ (1)
なお、設定装置は、3つ以上の組み合わせ(C1、C2、・・・、Cn)に基づいて傾きaを算出してもよい。
【0086】
設定装置500は、流量F0を切片bとして、弁体40の位置と弁口15を流れる流体の流量との関係を示す一次関数の式を求める。位置をxとし、流量をyとすると、一次関数の式は、以下の式(2)で示される。
y=ax+b ・・・ (2)
【0087】
設定装置500は、流量測定装置520が測定した流量を式(2)のyに代入して位置xを算出し、位置xを弁体40の現在位置Pcとして設定する。
【0088】
設定装置500は、ステッピングモーター66を回転させて、弁体40を現在位置Pcから閉弁位置Paに移動させる。
【0089】
そして、設定装置500は、記憶部210に、テーブル310を格納するとともに、現在位置Pcとして位置「0」を格納する。
【0090】
例えば、組み合わせC1が位置「100」と流量「40%」とを含み、組み合わせC2が位置「200」と流量「60%」とを含み、流量F0が流量「0%」である場合、設定装置500は、傾きaが0.2、切片bが0である以下の式(2A)を得る。
y=0.2x ・・・ (2A)
【0091】
そして、電動弁1の弁体40の現在の位置における流量が、例えば、「60%」のとき、設定装置500は、式(2A)を用いて弁体40の現在位置Pcとして位置「300」を取得する。設定装置500は、ステッピングモーター66に300個のパルスを入力してステッピングモーター66を回転させて、弁体40を位置「300」から位置「0」まで移動させる。設定装置500は、記憶部210に、テーブル310を格納するとともに、現在位置Pcとして位置「0」を格納する。
【0092】
電動弁1は、弁口15および弁口15を囲む弁座16を有する弁本体10と、弁口15と向かい合う弁体40と、弁体40を移動させるためのステッピングモーター66と、ステッピングモーター66を制御する制御装置80と、を有する。弁体40が、単一のテーパー形状を有する制御部45を有する。弁体40が、ステッピングモーター66の回転によって閉弁位置Paと全開位置Pzとの間の移動区間で移動される。弁体40が閉弁位置Paにあるとき、制御部45の制御面46が弁座16に接する。弁体40が閉弁位置Paから移動して移動区間にあるとき、弁座16と制御面46との間に絞り流路が形成される。移動区間が、閉弁位置Paと第1位置(位置「600」)との間の第1区間と、第1位置と第2位置(全開位置Pz)との間の第2区間と、を含む。第2位置は、第1位置よりも閉弁位置Paから遠くにある。制御装置80が、弁体40が第1区間にあるときのステッピングモーター66のステップ角度と、弁体40が第2区間にあるときのステップ角度と、を異なる角度にする。
【0093】
このようにしたことから、弁体40が閉弁位置Paにあるとき、単一のテーパー形状を有する制御部45の制御面46が弁座16に接する。弁体40が閉弁位置Paから移動して移動区間にあるとき、弁座16と制御面46との間に絞り流路が形成される。これにより、絞り流路の面積のばらつきを抑制できる。また、制御装置80が、弁体40が第1区間にあるときのステッピングモーター66のステップ角度と、弁体40が第2区間にあるときのステップ角度と、を異なる角度にする。これにより、第1区間におけるステップ角度と第2区間におけるステップ角度とを適宜設定することで所望の流量特性を得ることができる。
【0094】
また、弁体40が第1区間にあるときのステップ角度が、弁体40が第2区間にあるときのステップ角度よりも小さい。このようにすることで、電動弁1が絞り流路の面積が比較的小さい微小流量状態であるときに、流量を細かく制御することができる。
【0095】
なお、弁体40が第1区間にあるときのステップ角度が、弁体40が第2区間にあるときのステップ角度よりも大きくてもよい。
【0096】
また、ステッピングモーター66が、マグネットローター31と、A相ステーター61と、B相ステーター62と、を有する。弁体40が第1区間にあるとき、制御装置80がステッピングモーター66の動作をマイクロステップ動作とする。弁体40が第2区間にあるとき、制御装置80がステッピングモーター66の動作をフルステップ動作とする。このようにすることで、比較的簡易な制御で、弁体40が第1区間にあるときのステップ角度を、弁体40が第2区間にあるときのステップ角度よりも小さくすることができる。い。
【0097】
なお、弁体40が第1区間にあるとき、制御装置80がステッピングモーター66の励磁モードを1-2相励磁とし、弁体40が第2区間にあるとき、制御装置80がステッピングモーター66の励磁モードを2相励磁とする、ようにしてもよい。
【0098】
また、電動弁1の弁体位置取得方法は、(1)弁体40の位置と、当該位置における弁口15を流れる流体の流量と、の組み合わせを2つ以上取得する工程と、(2)前記組み合わせと弁体40が閉弁位置Paにあるときの設計上の流量F0とに基づいて、位置と流量との関係を示す一次関数の式を求める工程と、(3)一次関数の式を用いて弁体40の現在位置Pcを取得する工程と、を含む。このようにしたことから、測定した流量に基づいて弁体40の現在位置Pcおよび閉弁位置Paを取得することができる。そのため、電動弁1において、閉弁位置Paでマグネットローター31の回転を物理的に規制するストッパ機構を省略することができる。なお、弁体位置取得方法は、弁体40が閉弁位置Paにあるときに制御面46が弁座16に接しない電動弁にも適用することができる。
【0099】
電動弁1では、弁体40が閉弁位置Paにあるときに制御面46が弁座16の内周縁16aに接し、弁体40の下方への移動が規制される。すなわち、閉弁位置Paと弁体40の下方への移動が規制される位置とが一致する。そして、電動弁1において、工場出荷時に上記(2)で求めた一次関数の式を制御装置80の記憶部210に記憶してもよい。電動弁1は冷凍サイクルに組み込まれる。そして、制御装置80が制御ユニット400から弁体移動命令(例えば、目標とする流量を含む)を受信した場合、制御装置80は、現在の流量と目標とする流量と一次関数の式とを用いてステッピングモーター66を制御し、弁体40を移動することができる。電動弁1の流量は、弁体40の位置に対応する。つまり、電動弁1の流量0~100%は、位置「0」~「500」に対応する。
【0100】
また、電動弁1では、弁軸34がマグネットローター31に固定されており、弁体40の下方への移動が規制されると同時にマグネットローター31の閉弁方向への回転が規制される。このような構成以外にも、
図14に示す電動弁1Aのように、弁体40の下方への移動が規制されたあとに、ストッパ機構41によってマグネットローター31の閉弁方向の回転が規制される構成でもよい。
【0101】
図14に示すように、電動弁1Aは、弁本体10と、キャン20と、駆動機構30Aと、弁体40と、制御装置80と、を有している。電動弁1Aの説明において、電動弁1と同一(実質的に同一を含む)の構成には同一の符号を付して詳細説明を省略する。
【0102】
駆動機構30Aは、弁体40を上下方向に移動させる。駆動機構30Aは、マグネットローター31と、弁軸ホルダー32と、ガイドブッシュ33と、弁軸34Aと、永久磁石38と、ストッパ機構41と、ステーターユニット50と、を有している。
【0103】
弁軸ホルダー32は、下端が開口しかつ上端が塞がれた円筒形状を有している。弁軸ホルダー32の上端には支持リング35が固定されている。支持リング35は、マグネットローター31と弁軸ホルダー32とを連結している。弁軸ホルダー32の内周面には、雌ねじ32cが形成されている。
【0104】
ガイドブッシュ33は、円筒形状を有している。ガイドブッシュ33の上部の外径は、下部の外径より小さい。ガイドブッシュ33の下部は、支持部材13に形成された嵌合孔13aに圧入されている。ガイドブッシュ33の上部の外周面には、雄ねじ33cが形成されている。雄ねじ33cは、弁軸ホルダー32の雌ねじ32cと螺合される。ガイドブッシュ33は、支持部材13と結合されている。
【0105】
弁軸34Aは、大径部34aと、小径部34bと、を有している。大径部34aと小径部34bとは、円柱形状を有している。大径部34aの外径は、ガイドブッシュ33の内径よりわずかに小さい。小径部34bの外径は、大径部34aの外径より小さい。小径部34bは、大径部34aの上端に同軸に接続されている。小径部34bは、弁軸ホルダー32を貫通している。小径部34bには、抜け止め用のプッシュナット36が取り付けられている。弁軸34Aは、ガイドブッシュ33の内側および支持部材13の内側に配置されている。弁軸34Aは、ガイドブッシュ33に上下方向に移動可能に支持されている。弁軸34Aの下端は、弁室14に配置されている。弁軸34Aは、大径部34aと小径部34bとの間に段部が形成されている。段部は、上方を向く円環状の平面である。弁軸ホルダー32と段部との間には、閉弁ばね37が配置されている。閉弁ばね37は、圧縮コイルばねである。閉弁ばね37は、弁軸34Aを下方に向けて押している。
【0106】
永久磁石38は、キャン20の内側においてマグネットローター31の上方に配置されている。永久磁石38は、円環平板形状を有している。永久磁石38は、1つのN極と1つのS極とを有している。永久磁石38における直径で区画された一方の部分にN極が配置され、他方の部分にS極が配置されている。永久磁石38は、固定具39を介して支持リング35に固定されている。永久磁石38は、マグネットローター31とともに回転される。
【0107】
電動弁1Aにおいて、磁気センサー110は、回転角度センサーである。磁気センサー110は、キャン20および隔壁76を介して永久磁石38と横方向に向かい合っている。磁気センサー110は、永久磁石38が生じる磁界の向き(すなわち、永久磁石38とともに回転するマグネットローター31の回転角度)に応じた信号を出力する。
【0108】
ストッパ機構41は、可動ストッパ42と、固定ストッパ43と、を有している。可動ストッパ42は、弁軸ホルダー32に固定されている。可動ストッパ42は、弁軸ホルダー32とともに回転される。固定ストッパ43は、ガイドブッシュ33の下部に固定されている。可動ストッパ42と固定ストッパ43とが接すると、弁軸ホルダー32(すなわちマグネットローター31)の閉弁方向への回転が規制される。
【0109】
弁軸ホルダー32の雌ねじ32cとガイドブッシュ33の雄ねじ33cとは、ねじ送り機構を構成する。マグネットローター31が開弁方向に回転されると、雌ねじ32cと雄ねじ33cとのねじ送り作用により、弁軸ホルダー32が上方に移動し、プッシュナット36を上方に押す。これにより、弁軸34Aおよび弁体40が上方に移動する。マグネットローター31が閉弁方向に回転されると、雌ねじ13cと雄ねじ34cとのねじ送り作用により、弁軸ホルダー32が下方に移動し、閉弁ばね37を介して弁軸34Aを下方に押す。これにより、弁軸34Aおよび弁体40が下方に移動する。弁体40が下方に移動して制御面46が弁座16の内周縁16aに接すると、弁体40の下方への移動が規制される。そして、マグネットローター31が閉弁方向にさらに回転されると、閉弁ばね37が圧縮され、可動ストッパ42が固定ストッパに接して、マグネットローター31の閉弁方向への回転が規制される。
【0110】
電動弁1Aにおいて、工場出荷時に、[i]上記(2)で求めた一次関数の式、[ii]一次関数の式を用いて算出した閉弁位置Pa、および、[iii]可動ストッパ42が固定ストッパ43に接したときの仮想的な弁体40の位置(基準位置Px)、を制御装置80の記憶部210に記憶してもよい。「仮想的な弁体40の位置」とは、現実的には弁体40が弁座16に接すると当該弁体40の下方への移動が規制されるが、弁体40の移動が規制されずに弁体40が下方に移動したと仮定したときの弁体40の位置である。電動弁1Aにおいて、閉弁位置Paを示す番号を「0」とすると、基準位置Pxを示す番号は負の値となり、当該基準位置Pxに弁体40があるときの流量も負の値となる。基準位置Pxと、弁体40が基準位置Pxにあるときの流量と、は前記一次関数の式を満足する。例えば、当該流量を-20%とする。電動弁1Aは冷凍サイクルに組み込まれる。そして、制御装置80が制御ユニット400から弁体移動命令(例えば、目標とする流量を含む)を受信したとき、現在の流量と目標とする流量と前記一次関数の式とを用いてステッピングモーター66を制御できる。電動弁1Aの流量は、弁体40の位置に対応する。つまり、電動弁1Aの流量0~100%は、位置「0」~「500」に対応する。電動弁1Aの流量-20~0%は、位置「-100」~「0」に対応する。
【0111】
例えば、電動弁1Aにおいて現在位置Pcが位置「50」(流量10%)である場合に制御装置80が流量30%を含む弁体移動命令を受信したとき、制御装置80は、前記一次関数の式を用いて流量30%に対応する弁体40の位置(移動目標位置Pt、位置「150」)を算出する。そして、制御装置80は、移動目標位置Ptを示す番号(150)と現在位置Pcを示す番号(50)との差分数のパルスをステッピングモーター66に入力する。
【0112】
例えば、電動弁1Aにおいて現在位置Pcが基準位置Px(位置「-100」、流量-20%)である場合に制御装置80が流量30%を含む弁体移動命令を受信したとき、制御装置80は、前記一次関数の式を用いて流量30%に対応する弁体40の位置(移動目標位置Pt、位置「150」)を算出する。そして、制御装置80は、移動目標位置Ptを示す番号(150)と現在位置Pcを示す番号(-100)との差分数のパルスをステッピングモーター66に入力する。
【0113】
なお、電動弁1Aにおいて、基準位置Pxから閉弁位置Paまでの距離に対応するパルス数(開弁パルス数)をあらかじめ記憶部210に格納してもよい。そして、電動弁1Aは、閉弁位置Paと全開位置Pzとの間の移動区間では前記一次関数の式を用いて弁体40の位置を算出し、基準位置Pxと閉弁位置Paとの間の区間については開弁パルス数を用いてもよい。
【0114】
電動弁1は、駆動機構30においてマグネットローター31の回転を減速することなく用いる直動式の電動弁であったが、本発明は、マグネットローターの回転を減速する減速機構を有する駆動機構を有する電動弁に適用することもできる。
【0115】
本明細書において、「円筒」や「円柱」等の形状を示す各用語は、実質的にその用語の形状を有する部材や部材の部分にも用いられている。例えば、「円筒形状の部材」は、円筒形状の部材と実質的に円筒形状の部材とを含む。
【0116】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例の構成に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0117】
1、1A…電動弁、10…弁本体、11…本体部材、11a…第1取付孔、11b…上面、12…流路ブロック、12a…第2取付孔、12b…上面、13…支持部材、13a…嵌合孔、13c…雌ねじ、14…弁室、15…弁口、15a…上端、16…弁座、16a…内周縁、17…流路、18…流路、20…キャン、25…接続部材、30、30A…駆動機構、31…マグネットローター、32…弁軸ホルダー、32c…雌ねじ、33…ガイドブッシュ、33c…雄ねじ、34、34A…弁軸、34a…大径部、34b…小径部、34c…雄ねじ、35…支持リング、36…プッシュナット、37…閉弁ばね、38…永久磁石、39…固定具、40…弁体、41…ストッパ機構、42…可動ストッパ、43…固定ストッパ、45…制御部、45a…下端、46…制御面、50…ステーターユニット、60…ステーター、60a…ステーター内周面、61…A相ステーター、61a…極歯、61b…極歯、61c…コイル、62…B相ステーター、62a…極歯、62b…極歯、62c…コイル、63…モールド、64…端子支持部、65…端子、66…ステッピングモーター、70…ハウジング、70a…開口、71…周壁部、71a…内周面、72…上壁部、72a…内面、73…コネクタ、74…内側空間、75…基板空間、76…隔壁、77…蓋部材、80…制御装置、90…メイン基板、100…サブ基板、100a…第1端部、100b…第2端部、110…磁気センサー、120…マイクロコンピューター、210…記憶部、220…通信部、230…演算部、240…回転制御部、310…テーブル、311…区間情報領域、312…パルス番号情報領域、313…ステップ角度情報領域、400…制御ユニット、500…設定装置、510…流体供給装置、520…流量測定装置、L…軸線、Pa…閉弁位置、Pz…全開位置