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特開2023-160221飛翔体用部材、飛翔体、及び、それらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160221
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】飛翔体用部材、飛翔体、及び、それらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B64B 1/58 20060101AFI20231026BHJP
   B29D 22/04 20060101ALI20231026BHJP
   B64F 5/10 20170101ALI20231026BHJP
【FI】
B64B1/58
B29D22/04
B64F5/10
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070416
(22)【出願日】2022-04-21
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-11-24
(71)【出願人】
【識別番号】520365229
【氏名又は名称】株式会社岩谷技研
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】棧敷 和弥
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 圭介
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA04
4F213AC03
4F213AR07
4F213WA15
4F213WA38
4F213WA83
4F213WB01
(57)【要約】
【課題】飛翔体における耐熱性の制限を受けないロードケーブルの使用を可能とする。
【解決手段】飛翔体1は、内部に軽量ガスが充填された気嚢11と、気嚢11の頂部から子午線方向に延伸するように気嚢11に沿って配置された長手方向に貫通する孔を有する帯状部材である複数のガイドスリーブ12と、気嚢11の頂部に配置された環状部材であるリング13と、一方の端部がリング13に取り付けられガイドスリーブ12の孔に通された複数のロードケーブル14と、気嚢11の浮力により飛翔される物体であるロード15と、ロードケーブル14の下端とロード15とを連結する複数の索体16を備える。飛翔体1の製造において、ロードケーブル14には熱溶着のための加熱は行われない。従って、飛翔体1には、耐熱性の低いロードケーブル14であっても用いることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部材と、
前記筒状部材の内側に通された索体と
を備え、
前記筒状部材は飛翔体の気嚢の頂部から子午線方向に延伸するように前記気嚢に沿って配置された状態で前記気嚢の外側に取り付けられる
飛翔体用部材。
【請求項2】
前記筒状部材は熱溶着可能な素材を含み、
前記気嚢に熱溶着される
請求項1に記載の飛翔体用部材。
【請求項3】
前記索体は前記飛翔体の飛翔時に前記飛翔体のロードの荷重が掛けられる索体であるロードケーブルではない
請求項1に記載の飛翔体用部材。
【請求項4】
前記索体は前記飛翔体の飛翔時に前記飛翔体のロードの荷重が掛けられる索体であるロードケーブルである
請求項1に記載の飛翔体用部材。
【請求項5】
気嚢と、
前記気嚢の頂部から子午線方向に延伸するように前記気嚢に沿って配置された状態で前記気嚢の外側に取り付けられている筒状部材と、
前記筒状部材の内側に通された、飛翔時にロードの荷重が掛けられる索体であるロードケーブルと
を備える飛翔体。
【請求項6】
前記筒状部材は前記気嚢に熱溶着されている
請求項5に記載の飛翔体。
【請求項7】
前記筒状部材を第1の筒状部材とするとき、
前記気嚢の頂部から子午線方向に延伸するように前記気嚢に沿って配置された状態で前記気嚢の内側に取り付けられている第2の筒状部材を備える
請求項5に記載の飛翔体。
【請求項8】
前記第1の筒状部材及び前記第2の筒状部材は前記気嚢に熱溶着されている
請求項7に記載の飛翔体。
【請求項9】
帯状部材に接するように索体を配置する工程と、
前記索体を挟み込むように前記帯状部材を長手方向に沿った折り目で折り畳む工程と、
折り畳まれた前記帯状部材の短手方向における折り目から所定長さの領域を第1領域とし前記第1領域以外の領域を第2領域とするとき、前記索体が前記第1領域に配置された状態で前記帯状部材のうち前記第2領域において重なり合っている部分を固着する工程と
を備える子午線請求項1に記載の飛翔体用部材の製造方法。
【請求項10】
筒状部材の内側に送風し風力により前記筒状部材を拡げる工程と、
拡がった状態の前記筒状部材の内側に索体を通す工程と
を備える請求項1に記載の飛翔体用部材の製造方法。
【請求項11】
前記配置する工程において配置される前記索体は、飛翔体の飛翔時に当該飛翔体のロードの荷重が掛けられる索体であるロードケーブルではない
請求項9又は10に記載の飛翔体用部材の製造方法。
【請求項12】
前記配置する工程において配置される前記索体は、飛翔体の飛翔時に当該飛翔体のロードの荷重が掛けられる索体であるロードケーブルである
請求項9又は10に記載の飛翔体用部材の製造方法。
【請求項13】
気嚢を構成する熱溶着可能な複数のシート状部材のうちの互いに隣り合う2枚のシート状部材と、請求項2に記載の飛翔体用部材とを積層配置する工程と、
積層配置された前記2枚のシート状部材と前記飛翔体用部材とに対し、前記飛翔体用部材の前記一部領域以外の領域において加熱を行い、前記2枚のシート状部材と前記飛翔体用部材とを熱溶着する工程と
を備える飛翔体の製造方法。
【請求項14】
前記熱溶着する工程の後に、前記飛翔体用部材が備える索体に、飛翔体の飛翔時に当該飛翔体のロードの荷重が掛けられる索体であるロードケーブルを取り付ける工程と、
前記ロードケーブルの取り付けられた前記飛翔体用部材が備える前記索体を前記飛翔体用部材が備える前記筒状部材の内側から引き抜くことによって、前記筒状部材の内側に前記ロードケーブルを通す工程と
を備える請求項13に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項15】
熱溶着可能な素材を含む帯状部材に接するように索体を配置する工程と、
前記索体を挟み込むように前記帯状部材を長手方向に沿った折り目で折り畳む工程と、
気嚢を構成する熱溶着可能な複数のシート状部材のうちの互いに隣り合う2枚のシート状部材と、前記折り畳む工程において前記索体を挟み込んで折り畳まれた状態の前記帯状部材とを積層配置する工程と、
折り畳まれた前記帯状部材の短手方向における折り目から所定長さの領域を第1領域とし前記第1領域以外の領域を第2領域とするとき、前記索体が前記第1領域に配置された状態で、前記積層配置する工程において積層配置された前記2枚のシート状部材と前記帯状部材とに対し、前記第2領域において加熱を行い、前記2枚のシート状部材と前記帯状部材とを熱溶着する工程と
を備える飛翔体の製造方法。
【請求項16】
前記熱溶着する工程の後に、前記索体に、飛翔体の飛翔時に当該飛翔体のロードの荷重が掛けられる索体であるロードケーブルを取り付ける工程と、
前記ロードケーブルの取り付けられた前記索体を前記帯状部材の内側から引き抜くことによって、前記帯状部材の内側に前記ロードケーブルを通す工程と
を備える請求項15に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項17】
前記配置する工程において、飛翔体の飛翔時に当該飛翔体のロードの荷重が掛けられる索体であるロードケーブルを前記索体として用いる
請求項15に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項18】
気嚢を構成する熱溶着可能な複数のシート状部材のうちの互いに隣り合う2枚のシートを第1のシート状部材及び第2のシート状部材とするとき、
前記第1のシート状部材と、第1の筒状部材又は長手方向に沿った折り目で折り畳まれた第1の帯状部材と、前記第2のシート状部材と、内側に索体の配置された第2の筒状部材又は内側に索体の配置された長手方向に沿った折り目で折り畳まれた第2の帯状部材とを積層配置し積層体を作る工程と、
前記積層体に加熱を行い、前記積層体を構成する部材を当該部材と隣接している部材と熱溶着する工程と
を備える請求項8に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項19】
気嚢を構成する熱溶着可能な複数のシート状部材のうちの互いに隣り合う2枚のシートを第1のシート状部材及び第2のシート状部材とするとき、
前記第1のシート状部材と、内側に索体の配置された筒状部材と、前記第2のシート状部材とを積層配置し積層体を作る工程と、
前記積層体に加熱を行い、前記積層体を構成する部材を当該部材と隣接している部材と熱溶着する工程と
を備える請求項8に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項20】
気嚢を構成する熱溶着可能な複数のシート状部材のうちの互いに隣り合う2枚のシートを第1のシート状部材及び第2のシート状部材とするとき、
前記第1のシート状部材と、内側に索体の配置された筒状部材と、前記第2のシート状部材とを積層配置し、前記筒状部材を前記第2のシート状部材の端辺に沿った折り目で折り畳み、積層体を作る工程と、
前記積層体に加熱を行い、前記積層体を構成する部材を当該部材と隣接している部材と熱溶着する工程と
を備える請求項8に記載の飛翔体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は気嚢に生じる浮力により飛翔する飛翔体に関する。
【背景技術】
【0002】
気球、飛行船等の飛翔体は、外部の空気よりも軽い気体が内部に充填された気嚢に生じる浮力により飛翔する。以下、本願における飛翔体は、外部の空気よりも軽い気体が内部に充填された気嚢に生じる浮力により飛翔する飛翔体を意味するものとする。
【0003】
飛翔体の気嚢は軽量であることが望ましいが、気嚢を軽量にすると気嚢の強度が低下する。気嚢に掛かる荷重を分散することができれば、強度の低い気嚢であっても荷重に耐え得る。
【0004】
気嚢に掛かる荷重を分散するために、気嚢にはロードケーブルが取り付けられることが多い。ロードケーブルは、気嚢の頂部から子午線方向に延伸するように気嚢に沿って配置された状態で気嚢に取り付けられる索体である。ロードケーブルに対し直接、又は、ロードケーブルとは異なる索体を介して、飛翔体のロードが取り付けられることにより、飛翔体の飛翔時にロードの荷重がロードケーブルに掛かり、その荷重が気嚢に対しロードケーブルが接している領域において分散されて気嚢に掛かることになる。その結果、気嚢の軽量化が実現される。
【0005】
なお、ロードケーブルとしては帯状のものが採用されることが多く、一般的にはロードテープという呼称が用いられている。ただし、その形状は帯状に限られないため、本願においてはロードケーブルという呼称を用いる。
【0006】
軽量かつ強度の高い気嚢の素材として、ポリエチレン等のプラスチックがある。それらのプラスチックの多くは熱溶着可能であるため、気嚢の製造方法の1つとして、プラスチック製のシート状部材を2枚、それらの縁部で重ね合わせ、重ね合わさっている部分に対し加熱し、それらのシート状部材を熱溶着により繋ぎ合わせる方法が普及している。
【0007】
上記のように熱溶着により気嚢が製造される場合、気嚢を構成する2枚のシート状部材を熱溶着する際に、ロードケーブルをシート状部材に熱溶着することで、気嚢に対するロードケーブルの取り付けを行う方法が知られている。
【0008】
以下に、熱溶着により気嚢の製造と気嚢に対するロードケーブルの取り付けとを同時に行う手順(従来技術)の一例を説明する。
【0009】
図13は、飛翔体の一例である飛翔体9の外観図である。飛翔体9は、内部にヘリウムガス等の空気より軽い気体(以下、「軽量ガス」という)が充填された袋状部材である気嚢91と、気嚢91の頂部から子午線方向に延伸するように気嚢91に沿って配置された複数のロードケーブル92と、気嚢91の浮力により飛翔される物体であるロード93と、ロードケーブル92の下端とロード93とを連結する複数の索体94を備える。なお、ロードケーブル92が直接、ロード93に取り付けられる場合、索体94は不要である。
【0010】
なお、本願において、気嚢の頂部とは、内部に軽量ガスが充填され、浮力が生じ、ロードケーブル及び索体を介してロードを吊り上げる状態の気嚢の最上部を含み、その状態の気嚢を水平方向に切断した場合の断面の面積が最も大きい高さ方向の位置(水平方向に最も張り出している部分の位置)より上に位置する領域を意味する。
【0011】
ロードケーブル92は、気嚢91の頂部から子午線方向に135度付近(底部から45度付近)までの領域において気嚢91に取り付けられており、その領域より下においては気嚢91から分離されている。なお、ロードケーブル92が気嚢91に取り付けられている領域の下端の位置は、ロード93と気嚢91の大きさ、距離、ロードケーブル92及び索体94の長さ等により変化する。
【0012】
図14は、ロードケーブル92の製造方法の一例を説明するための図である。図14に例示のロードケーブル92は、帯状部材921、帯状部材922、帯状部材923により製造される。帯状部材921と帯状部材923は、ポリエチレン等の熱溶着可能な素材で作られた帯状部材である。帯状部材922は、グラスファイバー等の熱溶融しない素材で作られた帯状部材である。帯状部材922に含まれる熱溶融しない素材が、ロードケーブル92の強度を増強する役割を果たす。
【0013】
作業者は、まず、帯状部材921、帯状部材922、帯状部材923を図14に示される順番で積層配置する。続いて、作業者は、積層配置したそれらの部材に対し加熱を行い、帯状部材921、帯状部材922、帯状部材923を互いに熱溶着させる。その結果、ロードケーブル92が製造される。
【0014】
図15は、気嚢91の製造と気嚢91に対するロードケーブル92の取り付けを同時に行う方法を説明するための図である。作業者は、図15(A)に示されるように、まず、シート状部材911とシート状部材912とロードケーブル92とを、それらの縁辺が揃うように積層配置する。
【0015】
シート状部材911とシート状部材912は気嚢91を構成する複数のシート状部材のうちの互いに隣接する2枚である。シート状部材911とシート状部材912は、ポリエチレン等の熱溶着可能な素材で作られたシート状部材であり、気嚢91の一部を構成するように、予め所定の形状(例えば船形状)にカットされている。
【0016】
続いて、作業者は、積層配置したそれらの部材に対し、図15(A)に斜線で示される領域において加熱を行い、シート状部材911、シート状部材912、ロードケーブル92を互いに熱溶着させる。その後、作業者は、図15(B)に示されるように、シート状部材911を折り返す。これにより、気嚢91を構成するシート状部材911とシート状部材912の連結部分の外側にロードケーブル92が取り付けられた状態となる。
【0017】
例えば、特許文献1には、上述したような、気嚢の製造と気嚢に対するロードケーブルの取り付けを同時に行う作業を自動化する装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平6-344448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
上述した従来技術に係る製造方法により製造される飛翔体の気嚢による場合、ロードケーブルの強度はロードケーブル内に含まれる熱溶融しない素材の強度により左右される。熱溶融しない素材としては、上述したグラスファイバー等が挙げられるが、それらの素材が強度やコストの面から最も優れているとは限らない。例えば、ポリエチレン等の熱溶融するプラスチック素材の繊維を編み込んで帯状とした材料で、グラスファイバーよりも軽量かつ高い強度を示すものがある。しかしながら、上述した従来技術に係る製造方法による場合、それらの熱溶融する素材は、ロードケーブルとして採用することができない。
【0020】
本発明は、上述した事情に鑑み、飛翔体における耐熱性の制限を受けないロードケーブルの使用を可能とする手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、筒状部材と、前記筒状部材の内側に通された索体とを備え、前記筒状部材は飛翔体の気嚢の頂部から子午線方向に延伸するように前記気嚢に沿って配置された状態で前記気嚢に取り付けられる飛翔体用部材と、その製造方法を提案する。
【0022】
また、本発明は、気嚢と、前記気嚢の頂部から子午線方向に延伸するように前記気嚢に沿って配置された状態で前記気嚢に取り付けられている筒状部材と、前記筒状部材の内側に通された、飛翔時にロードの荷重が掛けられる索体であるロードケーブルとを備える飛翔体と、その製造方法を提案する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、飛翔体において、耐熱性の制限を受けないロードケーブルの使用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一実施形態に係る飛翔体の外観図。
図2】一実施形態に係るガイドスリーブの構造を示した図。
図3】一実施形態に係るガイドスリーブの製造方法を説明するための図。
図4】一実施形態に係る気嚢の製造と気嚢に対するガイドスリーブの取り付けを同時に行う方法を説明するための図。
図5】一実施形態に係る気嚢に取り付けられた状態のガイドスリーブにロードケーブルを通す作業を説明するための図。
図6】一変形例に係る仮止めが行われたガイドスリーブを示した図。
図7】一変形例に係るガイドスリーブの下端部を強化する方法を説明するための図。
図8】一変形例に係るガイドスリーブの下端部を強化する方法を説明するための図。
図9】一変形例に係る飛翔体の外観図。
図10】一変形例に係る気嚢の製造と気嚢に対するガイドスリーブ及びダクトの取り付けを同時に行う方法を説明するための図。
図11】一変形例に係る気嚢の製造と気嚢に対するガイドスリーブ及びダクトの取り付けを同時に行う方法を説明するための図。
図12】一変形例に係る気嚢の製造と気嚢に対するガイドスリーブ及びダクトの取り付けを同時に行う方法を説明するための図。
図13】従来技術に係る飛翔体の外観図。
図14】従来技術に係るロードケーブルの製造方法の一例を説明するための図。
図15】従来技術に係る気嚢の製造と気嚢に対するロードケーブルの取り付けを同時に行う方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施形態]
以下に本発明の一実施形態に係る飛翔体1を説明する。図1は、飛翔体1の外観図である。飛翔体1は、内部に軽量ガスが充填された気嚢11と、気嚢11の頂部から子午線方向に延伸するように気嚢11に沿って配置された状態で気嚢11に取り付けられた筒状部材である複数のガイドスリーブ12と、気嚢11の頂部に配置された環状部材であるリング13と、一方の端部がリング13に取り付けられガイドスリーブ12の孔に通された複数のロードケーブル14と、気嚢11の浮力により飛翔される物体であるロード15と、ロードケーブル14の下端とロード15とを連結する複数の索体16を備える。
【0026】
なお、ロードケーブル14が直接、ロード15に取り付けられる場合、索体16は不要である。また、1本のロードケーブル14とロード15が複数の索体16で連結されてもよい。
【0027】
図2は、ガイドスリーブ12の構造を示した図である。ガイドスリーブ12は、長手方向Xに貫通する孔を有する筒状部材である。本実施形態において、気嚢11に取り付けられる前の状態において、ガイドスリーブ12の内側にはロードケーブル14とは異なる索体17が通されている。このガイドスリーブ12と、その内側に通された状態の索体17は、本発明にかかる飛翔体用部材の一例を構成する。索体17は、例えば耐熱性が高く熱溶融しない綿製ロープ等である。
【0028】
本実施形態にかかるガイドスリーブ12は、短手方向Yにおける一部領域である第1領域R1において索体17が通されている孔を形成する筒形状であり、第1領域R1以外の領域である第2領域R2においては一層のシート形状である。
【0029】
図3は、ガイドスリーブ12の製造方法を説明するための図である。作業者は、まず、帯状部材121に接するように索体17を配置する。より具体的には、作業者は、図3(A)に示されるように、帯状部材121の短手方向Yにおける概ね中央の位置に、索体17を長手方向Xに延伸するように載せ置く。
【0030】
続いて、作業者は、索体17を挟み込むように帯状部材121を長手方向Xに沿った折り目Fで折り畳み、図3(B)に示す状態とする。
【0031】
続いて、作業者は、折り畳まれた帯状部材121の短手方向Yにおける折り目Fから所定長さの領域である第1領域R1に索体17が配置された状態で、短手方向Yにおける第1領域R1以外の領域である第2領域R2に加熱を行い、帯状部材121のうち第2領域R2において重なり合っている部分を熱溶着する。これにより、図2に示した構造のガイドスリーブ12が製造される。
【0032】
図4は、気嚢11の製造と気嚢11に対するガイドスリーブ12の取り付けを同時に行う方法を説明するための図である。作業者は、図4(A)に示されるように、まず、シート状部材111とシート状部材112とガイドスリーブ12を、それらの縁辺が揃うように積層配置する。
【0033】
シート状部材111とシート状部材112は気嚢11を構成する複数のシート状部材のうちの互いに隣接する2枚である。シート状部材111とシート状部材112は、ポリエチレン等の熱溶着可能な素材で作られたシート状部材であり、気嚢11の一部を構成するように、予め所定の形状(例えば船形状)にカットされている。
【0034】
続いて、作業者は、積層配置したそれらの部材に対し、ガイドスリーブ12の第2領域R2において加熱を行い、シート状部材111、シート状部材112、ガイドスリーブ12を互いに熱溶着させる。その後、作業者は、図4(B)に示すように、シート状部材111を折り返す。これにより、気嚢11を構成するシート状部材111とシート状部材112の連結部分(気嚢11の頂部から子午線方向に延伸する部分)の外側に、ガイドスリーブ12が取り付けられた状態となる。
【0035】
図5は、気嚢11に取り付けられた状態のガイドスリーブ12にロードケーブル14を通す作業を説明するための図である。作業者は、まず、索体17の一方の端部にロードケーブル14の一方の端部を取り付け、図5(A)。続いて、作業者は、索体17のロードケーブル14を取り付けていない側の端部を引っ張って、索体17をガイドスリーブ12から抜き取る。それに伴い、索体17に取り付けられているロードケーブル14がガイドスリーブ12の孔に通される。
【0036】
作業者は、索体17を完全にガイドスリーブ12から抜き取り、ロードケーブル14がガイドスリーブ12を貫通した状態で、ロードケーブル14から索体17を取外し、ロードケーブル14の端部をリング13に取り付ける。また、作業者は、ロードケーブル14のリング13に取り付けた側ではない側の端部に索体16を取り付ける。なお、索体16を用いず、ロードケーブル14を直接、ロード15に取り付けてもよい。
【0037】
以上が飛翔体1の説明である。上述した飛翔体1の製造において、ロードケーブル14に対する加熱は行われないため、耐熱性の低い素材のロードケーブル14であっても採用することができる。
【0038】
また、ロードケーブルが直接、気嚢に取り付けられる従来技術に係る飛翔体の場合、ロードケーブルの長さを正しく調整しなければ、複数のロードケーブル間のテンションにばらつきが生じて、荷重の分散に偏りが生じる。それに対し、飛翔体1においては、複数のロードケーブル14間のテンションが均一になるようにロードケーブル14がガイドスリーブ12内で移動する。その結果、気嚢11に吊り下げられた状態のロード15の傾きをなくすようにロードケーブル14又は索体16の長さを調整することで、気嚢11に掛かる荷重が均等に分散される状態を容易に実現することができる。
【0039】
また、図15を用いて説明した、従来技術に係る気嚢91の製造と気嚢91に対するロードケーブル92の取り付けの作業においては、ロードケーブル92が気嚢91に熱溶着される領域とロードケーブル92が気嚢91から分離される領域との境目において、ロードケーブル92を加熱部材から避ける作業が必要となる。その際、境目付近に加熱しすぎると、避けたロードケーブル92が気嚢91に熱溶着してしまうため、十分に加熱が行われない場合がある。その場合、気嚢91からロードケーブル92が剥がれやすくなる。飛翔体1においては、従来技術に係る飛翔体9において生じ得る上述のような不都合は生じない。
【0040】
[変形例]
上述した飛翔体1及びその製造方法は本発明の技術的思想の範囲内で様々に変形されてよい。以下に変形の例を示す。なお、以下に示す変形例の2以上が適宜、組み合わされてもよい。
【0041】
(1)上述した実施形態において、ガイドスリーブ12は折り畳まれた帯状部材121の第2領域R2における熱溶着により製造されるものとしたが、熱溶着以外の方法で折り畳まれた帯状部材121の第2領域R2における固着が行われてもよい。例えば、接着剤や両面テープ等により、折り畳まれた帯状部材121の第2領域R2において重なり合った部分が固着されてもよい。
【0042】
(2)上述した実施形態において、ガイドスリーブ12は気嚢11に対し熱溶着により取り付けられるものとしたが、熱溶着以外の方法でガイドスリーブ12が気嚢11に取り付けられてもよい。例えば、接着剤や両面テープ等により、ガイドスリーブ12が気嚢11に取り付けられてもよい。
【0043】
(3)上述した実施形態において、ガイドスリーブ12には最初、索体17が通されており、その後、索体17がロードケーブル14により置換されるものとしたが、ガイドスリーブ12に最初からロードケーブル14が通されていてもよい。すなわち、図3を用いて説明したガイドスリーブ12の製造において、索体17に代えてロードケーブル14が用いられてもよい。その場合、折り畳まれた帯状部材121の第2領域R2に対する加熱が行われる際、ロードケーブル14が熱の影響を受ける可能性がある。そこで、ロードケーブル14が熱の影響を受けないように、ロードケーブル14を第1領域R1の孔の第2領域R2から遠い側(折り目F側)に寄せた状態で加熱が行われることが望ましい。また、ロードケーブル14を第1領域R1の孔の第2領域R2から遠い側(折り目F側)に寄せた状態で保持するために、図6に示すように、ガイドスリーブ12に対する仮止めTが行われてもよい。仮止めTは、例えば市販されているステープラータイプのヒートシーラーにより低温又は短時間の加熱を行うことで形成される。なお、索体17を挟み込んだガイドスリーブ12が製造される場合において、その作業性を高めるために、仮止めTが形成されてもよい。
【0044】
(4)上述した実施形態において、飛翔体1はリング13を備えるものとしたが、飛翔体1がリング13を備えなくてもよい。その場合、複数のロードケーブル14が結び付け等の方法により直接連結されてもよい。また、ロードケーブル14が、例えば接着剤や両面テープ等により、気嚢11の頂部に固着されてもよい。
【0045】
(5)ガイドスリーブ12は端部(下端部及び上端部)においてロードケーブル14から強い力を受ける可能性がある。そのため、ガイドスリーブ12の端部の強度を高めるために、ガイドスリーブ12の製造時において、端部付近において帯状部材121を折り返した状態で加熱による熱溶着が行われてもよい。
【0046】
図7は、ガイドスリーブ12の端部を帯状部材121の折り返しにより強化する方法を説明するための図である。作業者は、まず、図7(A)に示すように、帯状部材121の端部を折り目Gで、例えば外側に折り畳む。続いて、作業者は、図7(B)に示すように、帯状部材121の短手方向における概ね中央の位置に、索体17を長手方向に延伸するように載せ置き、さらに、短冊形状の耐熱シートSを、その一辺が折り目Hに接するように、帯状部材121の端部付近の索体17を上から覆うように配置する。
【0047】
続いて、作業者は、索体17を挟み込むように帯状部材121を長手方向Xに沿った折り目Fで折り畳み、図7(C)に示す状態とした後、図7(C)の斜線で示す部分に加熱し、その部分を熱溶着する。なお、続いて、作業者は、耐熱シートSを帯状部材121から抜き取った後、図7(D)の斜線で示す部分に加熱し、その部分を熱溶着する。これにより、端部が強化されたガイドスリーブ12が製造される。
【0048】
なお、耐熱シートSは、図7(C)の斜線で示す部分に加熱が行われる際に、帯状部材121の索体17が通る部分が熱溶着されることを防止する役割を果たす。従って、耐熱シートSは、帯状部材121よりも融点が高い素材であれば、その素材はいずれであってもよい。例えば、帯状部材121がポリエチレンの場合、耐熱シートSとしては、PTFE等のフッ素樹脂シート等が用いられる。
【0049】
また、上述の例では図7(A)に示される折り目Gで、帯状部材121の端部が外側に折り返されるものとしたが、帯状部材121の端部が内側に折り返されてもよい。
【0050】
また、ガイドスリーブ12の端部を折り返す方法に代えて、ガイドスリーブ12の端部の別のシート状部材を熱溶着することで、ガイドスリーブ12の端部の強化が行われてもよい。その場合、作業者は、帯状部材121とは別のポリエチレン等の熱溶着可能な素材のシート状部材を帯状部材121の端部に重ね置いて、その部分に加熱をして帯状部材121にシート状部材を熱溶着することで、帯状部材121の端部を強化する。
【0051】
帯状部材121とは別のシート状部材によりガイドスリーブ12の端部の強化を行う場合、シート状部材が帯状部材121に熱溶着されるタイミングは、図3を参照して上述した作業により、索体17が通された筒状のガイドスリーブ12が製造された後に行われてもよい。図8は、索体17が通された筒状のガイドスリーブ12の端部をシート状部材により強化する方法の一例を説明するための図である。
【0052】
作業者は、例えば、図8(A)に示すように、二つ折りしたシート状部材18で、索体17が通された筒状のガイドスリーブ12の端部を覆うとともに、耐熱シートSをガイドスリーブ12に差し込んで、図8(B)の状態にする。なお、シート状部材18はポリエチレン等の熱溶着可能な素材のシート状部材である。
【0053】
続いて、作業者は、図8(B)に斜線で示した領域に加熱を行い、ガイドスリーブ12とシート状部材18を互いに熱溶着する。その後、作業者は、耐熱シートSをガイドスリーブ12から抜き取る。これにより、端部が強化されたガイドスリーブ12が製造される。
【0054】
なお、シート状部材18でガイドスリーブ12の端部を覆う方法は上述した、二つ折りしたシート状部材18でガイドスリーブ12を挟み込む方法に限られない。例えば、ガイドスリーブ12の端部に対し長いシート状部材18を複数回、巻き付けてもよい。
【0055】
(6)上述した実施形態においては、ガイドスリーブ12の製造と、ガイドスリーブ12の気嚢11への取り付けが個別に行われるものとした。これに代えて、ガイドスリーブ12の製造と、ガイドスリーブ12の気嚢11への取り付けが同時に行われもよい。
【0056】
この変形例においては、作業者は、まず、帯状部材121に接するように索体17を配置する(図3(A)参照)。続いて、作業者は、索体17を挟み込むように帯状部材121を折り目Fで折り畳む(図3(B)参照)。この際、帯状部材121に対する加熱は行わない。
【0057】
続いて、作業者は、シート状部材111、シート状部材112、索体17を挟み込んで折り畳まれた状態の帯状部材121を積層配置する(図4参照)。続いて、作業者は、そのように積層配置されたシート状部材111、シート状部材112、帯状部材121に対し、図4において斜線で示される第2領域R2において加熱を行い、それらの部材を熱溶着する。
【0058】
(7)上述した実施形態においては、ガイドスリーブ12は、図3に示されるように、帯状部材121を長手方向Xに沿った折り目Fで折り畳んだ後、第2領域R2に加熱を行って、帯状部材121のうち第2領域R2において重なり合っている部分を熱溶着することで製造されるものとした。これに代えて、予め筒状に成形されている部材(例えば、ポリチューブといった呼称で流通しているポリエチレン製のチューブ)がガイドスリーブ12として用いられてもよい。
【0059】
この場合、索体17が通っていない状態のガイドスリーブ12の内側に索体17を通す方法としては、例えば、ガイドスリーブ12内に送風を行い風力でガイドスリーブ12を拡げながら、索体17の先端に取り付けられた風受用の傘状体をガイドスリーブ12の風上側の開口からガイドスリーブ12内へと投入して、風を受けて移動する傘状体に索体17を引かせることで、索体17をガイドスリーブ12の内側に通す方法が採用されてもよい。また、長手方向が上下方向となるように配置したガイドスリーブ12内に送風を行い、風力で拡がったガイドスリーブ12の上端側の開口から先端に錘の取り付けられた索体17を落とすことで、索体17をガイドスリーブ12の内側に通す方法が採用されてもよい。また、錘に代えて、索体17の巻かれたボビンが、索体17の一方の端部がガイドスリーブ12外で保持された状態で、ガイドスリーブ12内に落とされてもよい。この場合、ガイドスリーブ12内を落下するボビンは回転しながら索体17を繰り出し、ボビンがガイドスリーブ12の下端側の開口から出ると、索体17がガイドスリーブ12の内側に通された状態となる。
【0060】
また、予め筒状に成形されている部材がガイドスリーブ12として用いられる場合、筒状のガイドスリーブ12の端部を外側又は内側に折り返して、ガイドスリーブ12の端部に耐熱シートを差し込んだ後、折り返し部分に加熱して熱溶着することで、ガイドスリーブ12の端部の強化が行われてもよい。
【0061】
(8)シート状部材111(第1のシート状部材の一例)とシート状部材112(第2のシート状部材の一例)の連結部分に、ガイドスリーブ12(第1の筒状部材の一例)に加えて、もしくはガイドスリーブ12に代えて、気嚢11の外部から内部へ軽量ガス等の気体を送気するためのダクトを構成する筒状部材が取り付けられてもよい。
【0062】
図9は、この変形例に係るダクト19(第2の筒状部材の一例)が取り付けられた気嚢11を備える飛翔体1の外観図である。この飛翔体1の気嚢11には、気嚢11の頂部から底部に至るまで子午線方向に延伸するように、ダクト19が前記気嚢の内側に取り付けられている。なお、図9の例では、ダクト19の数は1本であるが、ダクト19の数は2以上であってもよい。ダクト19の下端の開口部には、送気管20が差し込まれ、例えば、軽量ガスが充填されたガスボンベから送気管20を介して軽量ガスがダクト19に送気される。軽量ガスは、ダクト19内を上昇し、ダクト19の上端の開口部から気嚢11内へと放出される。
【0063】
なお、ダクト19の下端が気嚢11の底部から外に出るように、ダクト19の長さが図12に示したものより長くてもよい。
【0064】
図10は、この変形例に係る気嚢11の製造と気嚢11に対するガイドスリーブ12及びダクト19の取り付けを同時に行う方法の一例を説明するための図である。図10の例において、ガイドスリーブ12及びダクト19の各々は、変形例(7)で述べた、予め筒状に成形されている部材(例えば、ポリチューブ)により構成される。作業者は、図10(A)に示されるように、下から、シート状部材111、ダクト19、シート状部材112、ガイドスリーブ12の順に、それらの部材をそれらの端辺が揃うように積層配置する。以下、積層配置されたそれらの部材を積層体という。
【0065】
なお、ダクト19は、シート状部材111及びシート状部材112の子午線方向における連結部分の全域に渡り延伸するように配置される。一方、ガイドスリーブ12は、シート状部材111及びシート状部材112の子午線方向における頂部から約135度付近に至るまで領域において延伸するように配置される。
【0066】
続いて、作業者は、積層体の図10(A)に斜線で示す部分に加熱を行い、積層体を構成する部材を互いに隣接している部材と熱溶着する。その後、作業者は、シート状部材111を折り返し、図10(B)の状態とする。これにより、気嚢11を構成するシート状部材111とシート状部材112の連結部分(気嚢11の頂部から子午線方向に延伸する部分)の外側にガイドスリーブ12、内側にダクト19がそれぞれ取り付けられた状態となる。
【0067】
図11は、この変形例に係る気嚢11の製造と気嚢11に対するガイドスリーブ12及びダクト19の取り付けを同時に行う方法の他の一例を説明するための図である。図11の例において、ガイドスリーブ12及びダクト19は、1本の筒状部材(例えば、ポリチューブ)により構成される。作業者は、図11(A)に示されるように、下から、シート状部材111、ガイドスリーブ12及びダクト19を構成する筒状部材21、シート状部材112の順に、それらの部材を積層配置し、積層体を作る。その際、作業者は、シート状部材111とシート状部材112の端辺が、筒状部材21の短手方向の中腹で揃うようにする。
【0068】
この場合、筒状部材21は、シート状部材111及びシート状部材112の子午線方向における連結部分の全域に渡り延伸するように配置される。
【0069】
続いて、作業者は、積層体の図11(A)に斜線で示す部分に加熱を行い、積層体を構成する部材を互いに隣接している部材と熱溶着する。その熱溶着により、筒状部材21がガイドスリーブ12とダクト19に分離される。続いて、作業者は、シート状部材111を折り返し、図11(B)の状態とする。これにより、気嚢11を構成するシート状部材111とシート状部材112の連結部分(気嚢11の頂部から子午線方向に延伸する部分)の外側にガイドスリーブ12、内側にダクト19がそれぞれ取り付けられた状態となる。その後、作業者は、ガイドスリーブ12の不要な部分(気嚢11の底部から約45度の領域の部分)を切除する。なお、作業者は、ガイドスリーブ12の不要な部分を切除する代わりに、例えば、ガイドスリーブ12の底部から約45度の位置に至る領域においてガイドスリーブ12に切れ目を入れて、ガイドスリーブ12の内側を通っている索体17をその切れ目から取り出してもよい。
【0070】
図12においても、図11の例と同様に、ガイドスリーブ12及びダクト19は、1本の筒状部材(例えば、ポリチューブ)により構成される。作業者は、図12(A)に示されるように、下から、シート状部材111、ガイドスリーブ12及びダクト19を構成する筒状部材21、シート状部材112の順に、それらの部材を積層配置する。その際、作業者は、シート状部材111とシート状部材112の端辺が、筒状部材21の短手方向の中腹で揃うようにする。
【0071】
続いて、作業者は、筒状部材2を、シート状部材111とシート状部材112の端辺が揃っている位置で折り返し、図12(B)に示す状態の積層体を作る。
【0072】
続いて、作業者は、積層体の図12(B)に斜線で示す部分に加熱を行い、積層されているそれらの部材を互いに隣接している部材と熱溶着する。その熱溶着により、筒状部材21がガイドスリーブ12とダクト19に分離される。続いて、作業者は、シート状部材111を折り返し、図12(C)の状態とする。これにより、気嚢11を構成するシート状部材111とシート状部材112の連結部分(気嚢11の頂部から子午線方向に延伸する部分)の外側にガイドスリーブ12、内側にダクト19がそれぞれ取り付けられた状態となる。その後、作業者は、ガイドスリーブ12の不要な部分(気嚢11の底部から約45度の領域の部分)を切除する。なお、作業者は、ガイドスリーブ12の不要な部分を切除する代わりに、例えば、ガイドスリーブ12の底部から約45度の位置に至る領域においてガイドスリーブ12に切れ目を入れて、ガイドスリーブ12の内側を通っている索体17をその切れ目から取り出してもよい。
【0073】
なお、図11の例においては、積層体に加熱する領域が図11(A)の斜線で示す領域より左側にはみ出るとダクト19の短手方向の長さが短くなり過ぎる。また、積層体に加熱する領域が図11(A)の斜線で示す領域より右側にはみ出るとガイドスリーブ12の短手方向の長さが短くなり過ぎる。そのため、作業者は、図11(A)の斜線で示す領域の左右方向におけるいずれにもはみ出ないように積層体に対し加熱を行う必要がある。一方、図12の例においては、積層体に加熱する領域が図12(B)の斜線で示す領域より右側にはみ出ても、ガイドスリーブ12とダクト19の短手方向の長さが短くなり過ぎることはない。従って、作業者は、積層体に対する加熱の際、加熱する領域が、図12(B)の斜線で示す領域より左側にはみ出ないように注意するのみでよい。
【0074】
この変形例によれば、例えば、気嚢の頂部付近に孔をあけて、その孔に気嚢の外側から筒状部材を連結してダクトを形成する従来技術と比較し、ダクトが長手方向の概ね全域に渡り気嚢に固定されているため、その取り回しに気をつかう必要がなく、また、ダクトが気嚢の内側に配置されているため、ダクトが気嚢の外観を損ねることがない。
【0075】
なお、図10に示した例において、ガイドスリーブ12を用いず、シート状部材111とダクト19とシート状部材112を熱溶着させることで、ガイドスリーブ12を備えず、ダクト19を備える気嚢11が製造されてもよい。この場合、ガイドスリーブ12に代えて、従来技術にかかるロードケーブル92が気嚢11の外側に取り付けられてもよい。
【0076】
なお、この変形例において、ダクト19を構成する筒状部材に代えて、長手方向に沿った折り目で折り返された帯状部材が用いられてもよい。例えば、ガイドスリーブ12を図3に示した帯状部材121(第1の帯状部材の一例)で構成し、ダクト19を帯状部材121と同様(サイズは異なってもよい)の帯状部材(第2の帯状部材の一例)で構成してもよい。
【0077】
(9)上述した実施形態及び変形例の説明のために用いた図に記載の飛翔体1及びその構成部の形状、大きさ、数等は例示であって、様々に変更されてよい。例えば、上述の変形例(8)に関し、図10図12においては、気嚢11に取り付けられた状態のガイドスリーブ12とダクト19の短手方向の長さ(幅)が概ね同じである例が示されているが、これらの長さはガイドスリーブ12内に通されるロードケーブル14の大きさ及び形状、ダクト19に差し込まれる送気管20の外径等に応じて適宜設計されてよい。
【0078】
(10)上述した実施形態において、飛翔体1はガス気球であるものとしたが、気嚢とロードケーブルを備える飛翔体である限り、飛翔体1は熱気球等の他の種類の気球であってもよいし、飛行船等の気球以外の飛翔体であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1…飛翔体、9…飛翔体、11…気嚢、12…ガイドスリーブ、13…リング、14…ロードケーブル、15…ロード、16…索体、17…索体、18…シート状部材、19…ダクト、20…送気管、21…筒状部材、91…気嚢、92…ロードケーブル、93…ロード、94…索体、111…シート状部材、112…シート状部材、121…帯状部材、911…シート状部材、912…シート状部材、921…帯状部材、922…帯状部材、923…帯状部材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2022-08-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛翔体の気嚢の頂部から子午線方向に延伸するように前記気嚢に沿って配置された状態で前記気嚢の外側に取り付けられる飛翔体用部材であって、
筒状部材と、
前記筒状部材の内側に通された索体と
を備え、
前記筒状部材は熱溶着可能な素材を含み、
前記索体は前記飛翔体の飛翔時に前記飛翔体のロードの荷重が掛けられる索体であるロードケーブルよりも耐熱性が高く、前記筒状部材に対する加熱が行われた後に前記ロードケーブルによって置換される索体である
飛翔体用部材。
【請求項2】
気嚢と、
前記気嚢の頂部から子午線方向に延伸するように前記気嚢に沿って配置された状態で前記気嚢の外側に取り付けられている第1の筒状部材と、
前記第1の筒状部材の内側に通された、飛翔時にロードの荷重が掛けられる索体であるロードケーブルと
前記気嚢の頂部から子午線方向に延伸するように前記気嚢に沿って配置された状態で前記気嚢の内側に取り付けられている第2の筒状部材と
を備える飛翔体。
【請求項3】
前記第1の筒状部材及び前記第2の筒状部材は前記気嚢に熱溶着されている
請求項に記載の飛翔体。
【請求項4】
飛翔体の気嚢の頂部から子午線方向に延伸するように前記気嚢に沿って配置された状態で前記気嚢の外側に取り付けられる飛翔体用部材の製造方法であって、
帯状部材に接するように索体を配置する工程と、
前記索体を挟み込むように前記帯状部材を長手方向に沿った折り目で折り畳む工程と、
折り畳まれた前記帯状部材の短手方向における折り目から所定長さの領域を第1領域とし前記第1領域以外の領域を第2領域とするとき、前記索体が前記第1領域に配置された状態で前記帯状部材のうち前記第2領域において重なり合っている部分を固着する工程と
を備える飛翔体用部材の製造方法。
【請求項5】
記索体は、飛翔体の飛翔時に当該飛翔体のロードの荷重が掛けられる索体であるロードケーブルではない
請求項に記載の飛翔体用部材の製造方法。
【請求項6】
記索体は、飛翔体の飛翔時に当該飛翔体のロードの荷重が掛けられる索体であるロードケーブルである
請求項に記載の飛翔体用部材の製造方法。
【請求項7】
気嚢を構成する熱溶着可能な複数のシート状部材のうちの互いに隣り合う2枚のシート状部材と、熱溶着可能な筒状部材と前記筒状部材の内側に通された索体とを備える飛翔体用部材とを積層配置する工程と、
積層配置された前記2枚のシート状部材と前記飛翔体用部材とに対し、前記筒状部材の短手方向における前記索体を挟んでいない領域において加熱を行い、前記2枚のシート状部材と前記飛翔体用部材とを熱溶着する工程と
を備える飛翔体の製造方法。
【請求項8】
前記熱溶着する工程の後に、前記飛翔体用部材が備える索体に、飛翔体の飛翔時に当該飛翔体のロードの荷重が掛けられる索体であるロードケーブルを取り付ける工程と、
前記ロードケーブルの取り付けられた前記飛翔体用部材が備える前記索体を前記飛翔体用部材が備える前記筒状部材の内側から引き抜くことによって、前記筒状部材の内側に前記ロードケーブルを通す工程と
を備える請求項に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項9】
熱溶着可能な素材を含む帯状部材に接するように索体を配置する工程と、
前記索体を挟み込むように前記帯状部材を長手方向に沿った折り目で折り畳む工程と、
気嚢を構成する熱溶着可能な複数のシート状部材のうちの互いに隣り合う2枚のシート状部材と、前記折り畳む工程において前記索体を挟み込んで折り畳まれた状態の前記帯状部材とを積層配置する工程と、
折り畳まれた前記帯状部材の短手方向における折り目から所定長さの領域を第1領域とし前記第1領域以外の領域を第2領域とするとき、前記索体が前記第1領域に配置された状態で、前記積層配置する工程において積層配置された前記2枚のシート状部材と前記帯状部材とに対し、前記第2領域において加熱を行い、前記2枚のシート状部材と前記帯状部材とを熱溶着する工程と
を備える飛翔体の製造方法。
【請求項10】
前記熱溶着する工程の後に、前記索体に、飛翔体の飛翔時に当該飛翔体のロードの荷重が掛けられる索体であるロードケーブルを取り付ける工程と、
前記ロードケーブルの取り付けられた前記索体を前記帯状部材の内側から引き抜くことによって、前記帯状部材の内側に前記ロードケーブルを通す工程と
を備える請求項に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項11】
前記配置する工程において、飛翔体の飛翔時に当該飛翔体のロードの荷重が掛けられる索体であるロードケーブルを前記索体として用いる
請求項に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項12】
気嚢を構成する熱溶着可能な複数のシート状部材のうちの互いに隣り合う2枚のシートを第1のシート状部材及び第2のシート状部材とするとき、
前記第1のシート状部材と、第1の筒状部材又は長手方向に沿った折り目で折り畳まれた第1の帯状部材と、前記第2のシート状部材と、内側に索体の配置された第2の筒状部材又は内側に索体の配置された長手方向に沿った折り目で折り畳まれた第2の帯状部材とを積層配置し積層体を作る工程と、
前記積層体に加熱を行い、前記積層体を構成する部材を当該部材と隣接している部材と熱溶着する工程と
を備える請求項に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項13】
気嚢を構成する熱溶着可能な複数のシート状部材のうちの互いに隣り合う2枚のシートを第1のシート状部材及び第2のシート状部材とするとき、
前記第1のシート状部材と、内側に索体の配置された筒状部材と、前記第2のシート状部材とを積層配置し積層体を作る工程と、
前記積層体に加熱を行い、前記積層体を構成する部材を当該部材と隣接している部材と熱溶着する工程と
を備える請求項に記載の飛翔体の製造方法。
【請求項14】
気嚢を構成する熱溶着可能な複数のシート状部材のうちの互いに隣り合う2枚のシートを第1のシート状部材及び第2のシート状部材とするとき、
前記第1のシート状部材と、内側に索体の配置された筒状部材と、前記第2のシート状部材とを積層配置し、前記筒状部材を前記第2のシート状部材の端辺に沿った折り目で折り畳み、積層体を作る工程と、
前記積層体に加熱を行い、前記積層体を構成する部材を当該部材と隣接している部材と熱溶着する工程と
を備える請求項に記載の飛翔体の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
本発明は、飛翔体の気嚢の頂部から子午線方向に延伸するように前記気嚢に沿って配置された状態で前記気嚢の外側に取り付けられる飛翔体用部材であって、筒状部材と、前記筒状部材の内側に通された索体とを備え、前記筒状部材は熱溶着可能な素材を含み、前記索体は前記飛翔体の飛翔時に前記飛翔体のロードの荷重が掛けられる索体であるロードケーブルよりも耐熱性が高く、前記筒状部材に対する加熱が行われた後に前記ロードケーブルによって置換される索体である飛翔体用部材を提案する。
また、本発明は、飛翔体の気嚢の頂部から子午線方向に延伸するように前記気嚢に沿って配置された状態で前記気嚢の外側に取り付けられる飛翔体用部材の製造方法であって、帯状部材に接するように索体を配置する工程と、前記索体を挟み込むように前記帯状部材を長手方向に沿った折り目で折り畳む工程と、折り畳まれた前記帯状部材の短手方向における折り目から所定長さの領域を第1領域とし前記第1領域以外の領域を第2領域とするとき、前記索体が前記第1領域に配置された状態で前記帯状部材のうち前記第2領域において重なり合っている部分を固着する工程とを備える飛翔体用部材の製造方法を提案する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
また、本発明は、気嚢と、前記気嚢の頂部から子午線方向に延伸するように前記気嚢に沿って配置された状態で前記気嚢の外側に取り付けられている第1の筒状部材と、前記筒状部材の内側に通された、飛翔時にロードの荷重が掛けられる索体であるロードケーブルと、前記気嚢の頂部から子午線方向に延伸するように前記気嚢に沿って配置された状態で前記気嚢の内側に取り付けられている第2の筒状部材とを備える飛翔体を提案する。
また、本発明は、気嚢を構成する熱溶着可能な複数のシート状部材のうちの互いに隣り合う2枚のシート状部材と、熱溶着可能な筒状部材と前記筒状部材の内側に通された索体とを備える飛翔体用部材と、を積層配置する工程と、積層配置された前記2枚のシート状部材と前記飛翔体用部材とに対し、前記筒状部材の短手方向における前記索体を挟んでいない領域において加熱を行い、前記2枚のシート状部材と前記飛翔体用部材とを熱溶着する工程とを備える飛翔体の製造方法を提案する。
また、本発明は、熱溶着可能な素材を含む帯状部材に接するように索体を配置する工程と、前記索体を挟み込むように前記帯状部材を長手方向に沿った折り目で折り畳む工程と、気嚢を構成する熱溶着可能な複数のシート状部材のうちの互いに隣り合う2枚のシート状部材と、前記折り畳む工程において前記索体を挟み込んで折り畳まれた状態の前記帯状部材とを積層配置する工程と、折り畳まれた前記帯状部材の短手方向における折り目から所定長さの領域を第1領域とし前記第1領域以外の領域を第2領域とするとき、前記索体が前記第1領域に配置された状態で、前記積層配置する工程において積層配置された前記2枚のシート状部材と前記帯状部材とに対し、前記第2領域において加熱を行い、前記2枚のシート状部材と前記帯状部材とを熱溶着する工程とを備える飛翔体の製造方法を提案する。