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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160258
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】無線タグ読取装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06K 7/10 20060101AFI20231026BHJP
   H04B 5/02 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
G06K7/10 176
H04B5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070478
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 茂晃
【テーマコード(参考)】
5K012
【Fターム(参考)】
5K012AB01
5K012AC08
5K012AC10
5K012AE02
5K012BA03
(57)【要約】
【課題】多数の無線タグを読み取る際に、読み取り速度と読み取り精度とを両立させることができる無線タグ読取装置およびプログラムを提供する。
【解決手段】RFIDタグ読取装置(無線タグ読取装置)は、RFIDタグ(無線タグ)が保持する情報を読み取る第1読取部(第1の読取手段)と、RFIDタグが保持する情報を第1読取部よりも高い読取精度で読み取る第2読取部(第2の読取手段)と、第1読取部または第2読取部を、一度読み取られたRFIDタグは所定時間以上応答させない設定で使用した際に、RFIDタグの応答状況に応じて、当該RFIDタグの読み取りに係るQ値を調整するQ値調整部(調整手段)と、Q値と切替閾値(閾値)との大小関係に応じて、第1読取部と第2読取部とを切り替えてRFIDタグの読み取りを行わせる読取方式切替部(切替手段)と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線タグが保持する情報を読み取る第1の読取手段と、
前記無線タグが保持する情報を、前記第1の読取手段よりも高い読取精度で読み取る第2の読取手段と、
前記第1の読取手段または前記第2の読取手段を、一度読み取られた無線タグは所定時間以上応答させない設定で使用した際に、前記無線タグの応答状況に応じて、当該無線タグの読み取りに係るQ値を調整する調整手段と、
前記Q値と閾値との大小関係に応じて、前記第1の読取手段と前記第2の読取手段とを切り替えて前記無線タグの読み取りを行わせる切替手段と、
を備える無線タグ読取装置。
【請求項2】
前記第1の読取手段は、FM0方式である、
請求項1に記載の無線タグ読取装置。
【請求項3】
前記第2の読取手段は、ミラーサブスキャン方式である、
請求項1または請求項2に記載の無線タグ読取装置。
【請求項4】
前記閾値を設定する設定手段を更に備える、
請求項1に記載の無線タグ読取装置。
【請求項5】
前記切替手段は、前記Q値が前記閾値以上であることを条件として、前記第1の読取手段で前記無線タグの読み取りを行い、前記Q値が前記閾値よりも小さいことを条件として、前記第2の読取手段で前記無線タグの読み取りを行う、
請求項1に記載の無線タグ読取装置。
【請求項6】
無線タグ読取装置を制御するコンピュータを、
無線タグが保持する情報を読み取る第1の読取手段と、
前記無線タグが保持する情報を、前記第1の読取手段より高い読取精度で読み取る第2の読取手段と、
前記第1の読取手段または前記第2の読取手段を、一度読み取られた無線タグは所定時間以上応答させない設定で使用した際に、前記無線タグの応答状況に応じて、当該無線タグの読み取りに係るQ値を調整する調整手段と、
前記Q値と閾値との大小関係に応じて、前記第1の読取手段と前記第2の読取手段とを切り替えて前記無線タグの読み取りを行う切替手段と、
して機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、無線タグ読取装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、RFID(Radio Frequency IDentification)タグ等の無線タグが記憶するデータ(以下、タグデータともいう)を無線タグ読取装置で読み取ることで、当該無線タグが付された物品の在庫管理が行われている。
【0003】
在庫管理は、多数の無線タグを一括で読み取ることによって行われる。RFIDタグの読取プロトコルには、読み取りが高速だが受信感度が低く、読み取り距離が短いFM0方式や、読み取り速度はFM0方式ほど速くはないが、受信感度を高くすることができ読み取り距離を長くできるミラーサブキャリア方式がある。例えば、特許文献1には、FM0方式を用いた無線タグ読取装置が開示されており、特許文献2には、ミラーサブキャリア方式を用いた無線タグ読取装置が開示されている。このように、従来は、FM0方式かミラーサブキャリア方式かのどちらかを選択して読み取りを行っていた。
【0004】
大量の無線タグを読み取る際にFM0方式を使用すると、高速で読み取ることはできるが棚の奥にある無線タグの読み溢しが発生する可能性があった。また、オリコン(折り畳みコンテナ)にぎっしり詰め込まれた多数の商品の無線タグを読み取る際にFM0方式を使用すると、受信感度が低いため読み溢しが発生する可能性があった。一方、ミラーサブキャリア方式を使用すると、読み溢し頻度は低いが、FM0方式に比べると読み取りが遅かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、多数の無線タグを読み取る際に、読み取り速度と読み取り精度とを両立させることができる無線タグ読取装置およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の無線タグ読取装置は、第1の読取手段と、第2の読取手段と、調整手段と、切替手段とを備える。第1の読取手段は、無線タグが保持する情報を読み取る。第2の読取手段は、無線タグが保持する情報を、第1の読取手段よりも高い読取精度で読み取る。調整手段は、前記第1の読取手段または前記第2の読取手段を、一度読み取られた無線タグは所定時間以上応答させない設定で使用した際に、無線タグの応答状況に応じて、当該無線タグの読み取りに係るQ値を調整する。切替手段は、Q値と閾値との大小関係に応じて、第1の読取手段と第2の読取手段とを切り替えて無線タグの読み取りを行わせる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施の形態に係るRFIDタグ読取装置の構成の一例を示す図である。
図2図2は、実施の形態に係るRFIDタグ読取装置のハードウエア構成の一例を示すハードウエアブロック図である。
図3A図3Aは、第1の読取手段の一例であるFM0方式について説明する図である。
図3B図3Bは、第2の読取手段の一例であるミラーサブスキャン方式について説明する図である。
図4図4は、実施の形態に係るRFIDタグ読取装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図5A図5Aは、実施の形態に係るRFIDタグ読取装置が行う処理の流れの一例を示すスローチャートである。
図5B図5Bは、FM0方式による読取処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5C図5Cは、MS方式による読取処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して、実施形態に係る無線タグ読取装置及びプログラムについて説明する。以下では、無線タグの一例であるRFIDタグの読み取りを行うRFIDタグ読取装置10について説明する。なお、以下に説明する実施の形態により、この発明が限定されるものではない。
【0009】
(無線タグ読取装置の概要)
図1を用いて、RFIDタグ読取装置10の概要を説明する。図1は、実施の形態に係るRFIDタグ読取装置の構成の一例を示す図である。
【0010】
RFIDタグTGは、例えば商品等の物品Gに付され、図示しない記憶媒体にタグデータを記憶する。タグデータには、RFIDタグTG自身を識別可能なタグ識別子、RFIDタグTGが付された物品Gの種別を識別可能な物品識別子等が含まれる。
【0011】
本実施の形態のRFIDタグ読取装置10は、ハンディタイプの無線タグ読取装置であり、操作者が携帯することが可能となっている。例えば、RFIDタグ読取装置10は、操作者により物品Gが載置された棚等に向けられることで、物品Gの各々に付されたRFIDタグTGからタグデータの読み取りを行う。なお、RFIDタグ読取装置10は、本開示における無線タグ読取装置の一例である。また、RFIDタグTGは、本開示における無線タグの一例である。
【0012】
(無線タグ読取装置のハードウエア構成)
図2を用いて、RFIDタグ読取装置10のハードウエア構成を説明する。図2は、実施の形態に係るRFIDタグ読取装置のハードウエア構成の一例を示すハードウエアブロック図である。
【0013】
図2に示すように、RFIDタグ読取装置10は、CPU11、ROM12、RAM13、記憶部14等を備えている。CPU11は、プロセッサの一例であり、RFIDタグ読取装置10の動作を統括的に制御する。ROM12は、各種プログラムを記憶する。RAM13は、各種データを展開するためのワーキングメモリとして使用される。また、RAM13は、RFIDタグTGから読み取られたタグデータを記憶するための読取バッファを保持する。
【0014】
CPU11、ROM12、RAM13及び記憶部14は、バス等を介して接続される。ここで、CPU11、ROM12及びRAM13は、制御部100を構成する。制御部100は、CPU11が、ROM12や記憶部14に記憶された制御プログラムをRAM13に展開して実行することによって、後述する制御処理を実行する。
【0015】
記憶部14は、電源を切っても記憶情報を保持するフラッシュメモリ等の不揮発性メモリで構成される。記憶部14は、制御プログラムPと物品マスタMとを記憶する。
【0016】
制御プログラムPは、RFIDタグ読取装置10が備える機能を発揮させるためのプログラムである。なお、制御プログラムPは、ROM12に予め組み込まれて提供されてもよい。また、制御プログラムPは、制御部100にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルで、CD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。更に、制御プログラムPを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に記憶し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、制御プログラムPを、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0017】
物品マスタMは、入出庫管理の対象となる物品の情報(物品コード、商品名、価格等)を記憶したマスタファイルである。
【0018】
また、制御部100には、バス等を介して、周辺機器コントローラ15と、通信インタフェース20とが接続される。周辺機器コントローラ15には、表示デバイス16と、操作デバイス17と、読取部18と、ブザー19とが接続されている。
【0019】
表示デバイス16は、例えば液晶パネル等で形成されており、操作者に対して各種の情報を表示する。
【0020】
操作デバイス17は、例えば各種操作ボタンやタッチパネル等の入力デバイスを有し、操作者による操作を受け付ける。
【0021】
読取部18は、アンテナ181と、送信部182と、受信部183とを有する。送信部182は、アンテナ181から電波を放射させるための電力をアンテナ181に供給する。受信部183は、アンテナ181を介してRFIDタグTGから送信される電波を受信する。読取部18は、制御部100の制御の下、RFIDタグTGを読み取るための電波を放射し、当該電波を受けた無線タグが発する電波を受信することで、RFIDタグTGに記憶されたタグデータを読み取る。
【0022】
ブザー19は、制御部100が新規のRFIDタグTGを読み取った際に、制御部100からの指示に応じて鳴動する。RFIDタグ読取装置10の操作者は、ブザー19が鳴動しなくなったことを確認することにより、新規のRFIDタグTGの読み取りが行われていないことを認識する。そして、RFIDタグ読取装置10の操作者は、RFIDタグ読取装置10の位置を移動させることによって、読取範囲を変更してRFIDタグTGの読み取りを継続する。
【0023】
通信インタフェース20は、例えばBluetooth(登録商標)や無線LAN等の無線通信規格に準拠した通信インタフェースである。通信インタフェース20は、制御部100の制御の下、図2に非図示の携帯端末やサーバ装置等の外部装置と無線通信を行う。
【0024】
(FM0方式によるタグデータの読み取り)
図3Aを用いて、FM0方式によるタグデータの読み取りについて説明する。図3Aは、第1の読取手段の一例であるFM0方式について説明する図である。
【0025】
FM0(Frequency Modulation 0)方式は、送信波Sを受信したRFIDタグTGが、送信波Sと同じ周波数fcで返信し、RFIDタグ読取装置10が当該応答波Rを読み取る方式である。より具体的には、RFIDタグTGは、アンテナ151から送信された送信波Sを受信すると、受信した送信波Sのエネルギーを電力に変換して、当該電力によって起動する。そして、RFIDタグTGは、送信波Sに含まれるコマンドを解析して、コマンドに応じた応答を含む、送信波Sと同じ周波数の応答波Rを生成する。そして、RFIDタグTGは、生成した応答波Rを返信する。
【0026】
FM0方式によると、RFIDタグTGは、送信波Sと同じ周波数fcで応答すればよいため、応答時間が短い。即ち、RFIDタグTGは応答波Rを高速で返信することができる。一方、FM0方式によると、送信波Sと応答波Rの周波数が等しいため、受信感度が低くなり、尚且つ読み取り距離が短くなる。したがって、FM0方式は、近距離にある多数のRFIDタグTGを高速で読み取る用途に適している。
【0027】
(ミラーサブスキャン方式によるタグデータの読み取り)
図3Bを用いて、ミラーサブスキャン方式によるタグデータの読み取りについて説明する。図3Bは、第2の読取手段の一例であるミラーサブスキャン方式について説明する図である。
【0028】
ミラーサブキャリア方式(以下、MS方式と呼ぶ)は、送信波Sを受信したRFIDタグTGが、副搬送波成分を作成し、副搬送波(サブキャリア)を応答データ信号で変調した応答波Rを返信し、RFIDタグ読取装置10が当該応答波Rを読み取る方式である。そのため、MS方式では、RFIDタグTGは、送信波Sの周波数fcとは異なる周波数fa,fb、即ち別のチャンネルで応答波Rを返信する。
【0029】
MS方式によると、RFIDタグTGは、送信波Sの周波数fcとは異なる周波数fa,fbで応答するため、FM0方式に比べて受信感度を向上させることができ、これによって、FM0方式に比べて読み取り距離を長くすることができる。一方、応答データ信号で変調した応答波Rを作成する必要があるため、FM0方式に比べて応答速度が低くなる。したがって、MS方式は、FM0方式に比べて、遠距離にある多数のRFIDタグTGを低速で精度よく読み取る用途に適している。
【0030】
(無線タグ読取装置の機能構成)
図4を用いて、RFIDタグ読取装置10の機能構成を説明する。図4は、実施の形態に係るRFIDタグ読取装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0031】
RFIDタグ読取装置10の制御部100は、ROM12や記憶部14に記憶された制御プログラムをRAM13に展開して動作させることによって、図4に示す第1読取部21と、第2読取部22と、Q値調整部23と、読取方式切替部24と、閾値設定部25と、読取結果登録部26と、読取制御部27とを機能部として実現する。なお、これら各機能は、専用回路等のハードウエアで構成してもよい。
【0032】
第1読取部21は、アンテナ151の交信領域の内側に存在するRFIDタグTGから、当該RFIDタグTGが保持する情報を読み取る。なお、第1読取部21は、本開示における第1の読取手段の一例である。第1読取部21は、例えばFM0方式で、RFIDタグTGが保持する情報を読み取る。
【0033】
第2読取部22は、アンテナ151の交信領域の内側に存在するRFIDタグTGから、当該RFIDタグTGが保持する情報を、第1読取部21よりも高い読取精度で読み取る。なお、第2読取部22は、本開示における第2の読取手段の一例である。第2読取部22は、例えばMS方式で、RFIDタグTGが保持する情報を読み取る。
【0034】
Q値調整部23は、RFIDタグTGの応答状況に応じて、当該RFIDタグTGの読み取りに係るQ値を調整する。なお、Q値調整部23は、本開示における調整手段の一例である。
【0035】
RFIDタグ読取装置10には、多数のRFIDタグTGを漏れなく読み取るために、タイムスロット方式(スロットアロハ方式)を用いたアンチコリジョン機能が搭載されている。タイムスロット方式を有するRFIDタグ読取装置10は、アンテナ181の交信領域内に存在するRFIDタグTGに対して、Q値で規定される特定のビット(1~2Q:Qは1以上の整数)をスロットとして指定する。
【0036】
スロットの指定を受けたRFIDタグTGは、そのビット数の範囲内で乱数を生成する。例えば、スロットが2ビット(Q=1)であった場合、RFIDタグTGは、2ビットの乱数“00”、“01”、“10”、“11”の何れかを生成する。そして、RFIDタグ読取装置10から指定された乱数と一致する乱数を生成したRFIDタグTGのみが、RFIDタグ読取装置10に応答を返す。
【0037】
このとき、1つのスロットに対して1つのRFIDタグTGしか応答を返さなかった場合には、RFIDタグ読取装置10は、そのRFIDタグTGのタグデータを読み取り結果として受信する。一方、複数のRFIDタグTGが等しい乱数を生成した場合には、1つのスロットに対して複数のRFIDタグTGが同時に応答を返す。このような場合には、RFIDタグ読取装置10は、コリジョン(衝突)が発生したものと判断してタグデータを受信しない。
【0038】
コリジョンが発生したRFIDタグTGでは、再度乱数を生成し、生成した乱数に一致したタイミングのスロットを利用してRFIDタグ読取装置10に応答を返す。以降、RFIDタグ読取装置10は、スロット毎に唯1つのタグデータが読み取られるまで読取処理を繰り返すことによって、コリジョンの発生を回避する。その際、Q値調整部23は、RFIDタグTGの応答状況に応じて、Q値を自動調整する。具体的には、Q値調整部23は、スロット数に対してRFIDタグTGからの応答が適切か、スロット数に対してRFIDタグTGからの応答が多いか、又はスロット数に対してRFIDタグTGからの応答が少ないか等に応じて、Q値を自動的に調整する。
【0039】
例えば、RFIDタグTGの枚数が800枚程度である場合、RFIDタグ読取装置10は、Q値の初期値を10~11(1024(=210)~2048(=211))程度に設定することで、理論的には全てのRFIDタグTGを読み取りの対象とすることができる。このように、一度に読み取るRFIDタグTGの枚数が多い場合はQ値をより大きく調整し、一度に読み取るRFIDタグTGの枚数が少ない場合はQ値をより小さく調整する。より具体的には、Q値調整部23は、例えば、コリジョンが発生した場合にはQ値をより大きな値に調整して、全てのRFIDタグTGを読み取ることができるまで読み取りを繰り返す。また、Q値調整部23は、コリジョンが発生しない場合、即ち無応答のスロット数が多い場合には、Q値をより小さい値に調整する。
【0040】
なお、RFIDタグ読取装置10は、正常に読み取られたRFIDタグTGが、所定時間再度読み取りに参加しないように、RFIDタグTGのインベントリフラグの状態(未応答、応答済)を指定する。例えば、セッション2またはセッション3を指定することによって、応答済のRFIDタグTGは、最低2秒間は、応答波Rを返信しないようにすることができる。RFIDタグ読取装置10は、この機能を利用することによって、同じRFIDタグTGからの応答波Rを複数回受信するのを防止する。
【0041】
読取方式切替部24は、Q値調整部23が調整したQ値と、後述するQ値の閾値である切替閾値Thとの大小関係に応じて、第1読取部21と第2読取部22とを切り替えてRFIDタグTGの読み取りを行わせる。なお、読取方式切替部24は、本開示における切替手段の一例である。また、切替閾値Thは、本開示における閾値の一例である。
【0042】
閾値設定部25は、読取方式切替部24がRFIDタグTGの読取方式を切り替える判断を行う際に利用するQ値の閾値である切替閾値Thを設定する。なお、閾値設定部25は、本開示における設定手段の一例である。なお、閾値設定部25は、例えばRFIDタグ読取装置10の操作者の操作情報に基づいて、切替閾値Thを設定する。
【0043】
読取結果登録部26は、第1読取部21または第2読取部22の読取結果を登録する。
【0044】
読取制御部27は、RFIDタグ読取装置10が行う読取処理の開始と終了を指示する。また、読取制御部27は、Q値の初期値を設定する。
【0045】
(無線タグ読取装置が行う処理の流れ)
図5Aを用いて、RFIDタグ読取装置10が行う処理の流れを説明する。図5Aは、実施の形態に係るRFIDタグ読取装置が行う処理の流れの一例を示すスローチャートである。
【0046】
読取制御部27は、例えば、RFIDタグ読取装置10の操作者が操作デバイス17を介して読み取り開始を指示したかを判定する(ステップS11)。読み取り開始指示があると判定される(ステップS11:Yes)とステップS12に進む。一方、読み取り開始指示があると判定されない(ステップS11:No)とステップS11を繰り返す。
【0047】
ステップS11において、読み取り開始指示があると判定されると、閾値設定部25は、切替閾値Thを設定する(ステップS12)。
【0048】
読取制御部27は、Q値の初期値を設定する(ステップS13)。読取制御部27は、例えば、RFIDタグ読取装置10の操作者の操作情報に基づいて、Q値の初期値を設定する。
【0049】
読取方式切替部24は、Q値が切替閾値Th以上であるかを判定する(ステップS14)。Q値が切替閾値Th以上であると判定される(ステップS14:Yes)とステップS15に進む。一方、Q値が切替閾値Th以上であると判定されない(ステップS14:No)とステップS16に進む。
【0050】
ステップS14において、Q値が切替閾値Th以上であると判定されると、第1読取部21は、FM0方式による読取処理を行う(ステップS15)。その後、ステップS17に進む。なお、ステップS15で行われる処理の流れについて、詳しくは後述する(図5B参照)。
【0051】
ステップS14において、Q値が切替閾値Th以上であると判定されないと、第2読取部22は、MS方式による読取処理を行う(ステップS16)。その後、ステップS17に進む。なお、ステップS16で行われる処理の流れについて、詳しくは後述する(図5C参照)。
【0052】
ステップS15またはステップS16に続いて、読取制御部27は、例えば、RFIDタグ読取装置10の操作者が操作デバイス17を介して読み取り停止を指示したかを判定する(ステップS17)。読み取り停止指示があると判定される(ステップS17:Yes)と、RFIDタグ読取装置10は、図5Aの処理を終了する。一方、読み取り停止指示があると判定されない(ステップS17:No)と、ステップS14に戻る。
【0053】
なお、RFIDタグ読取装置10は、新規のRFIDタグTGを読み取った際にブザー19(図2参照)を鳴動させる。RFIDタグ読取装置10の操作者は、ブザー19の鳴動の頻度が高い場合は、RFIDタグ読取装置10を動かさないで読み取りを続ける。そして、ブザー19の鳴動の頻度が低くなった場合、即ち新規に読み取れるRFIDタグTGの枚数が少なくなった場合には、操作者は、RFIDタグ読取装置10を上下左右に移動させるか、または操作者自身が移動する。これによって、RFIDタグ読取装置10は、例えば棚全体の物品Gの棚卸を行うことができる。
【0054】
(FM0方式による読取の流れ)
図5Bを用いて、第1読取部21が行うFM0方式による読取処理の流れを説明する。図5Bは、FM0方式による読取処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0055】
Q値調整部23は、RFIDタグTGの応答状況に応じて、当該RFIDタグTGの読み取りに係るQ値を調整する(ステップS21)。
【0056】
第1読取部21は、FM0方式によって、RFIDタグTGが保持する情報を読み取る(ステップS22)。なお、RFIDタグTGが保持する情報を読み取る際には、前記したタイムスロット方式が利用される。
【0057】
読取結果登録部26は、ステップS22で読み取ったタグデータを、例えば棚卸表F(図2参照)に登録する(ステップS23)。
【0058】
Q値調整部23は、応答するRFIDタグTGがないかを判定する(ステップS24)。応答するRFIDタグTGがないと判定される(ステップS24:Yes)とステップS25に進む。一方、応答するRFIDタグTGがないと判定されない(ステップS24:No)とステップS21に戻る。
【0059】
ステップS24において、応答するRFIDタグTGがないと判定されると、読取制御部27は、第1読取部21による読取処理を停止させる(ステップS25)。その後、図5Aのメインルーチンに戻る。
【0060】
(MS方式による読取の流れ)
図5Cを用いて、第2読取部22が行うMS方式による読取処理の流れを説明する。図5Cは、MS方式による読取処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0061】
Q値調整部23は、RFIDタグTGの応答状況に応じて、当該RFIDタグTGの読み取りに係るQ値を調整する(ステップS31)。
【0062】
第2読取部22は、MS方式によって、RFIDタグTGが保持する情報を読み取る(ステップS32)。なお、RFIDタグTGが保持する情報を読み取る際には、前記したタイムスロット方式が利用される。
【0063】
読取結果登録部26は、ステップS32で読み取ったタグデータを、例えば棚卸表F(図2参照)に登録する(ステップS33)。
【0064】
Q値調整部23は、応答するRFIDタグTGがないかを判定する(ステップS34)。応答するRFIDタグTGがないと判定される(ステップS34:Yes)とステップS35に進む。一方、応答するRFIDタグTGがないと判定されない(ステップS34:No)とステップS31に戻る。
【0065】
ステップS34において、応答するRFIDタグTGがないと判定されると、読取制御部27は、第2読取部22による読取処理を停止させる(ステップS35)。その後、図5Aのメインルーチンに戻る。
【0066】
なお、本実施の形態において、RFIDタグ読取装置10は、第1読取部21はFM0方式でRFIDタグTGが保持する情報を読み取り、第2読取部22は、MS方式でRFIDタグTGが保持する情報を読み取ったが、読取方式はこれに限定されない。例えば、同じFM0方式の読取パラメータ、例えば読取周波数等を変更してもよい。また、同じMS方式の読取パラメータ、例えば読取周波数や使用するデータ長等を変更してもよい。
【0067】
以上説明したように、第1の実施形態のRFIDタグ読取装置10(無線タグ読取装置)は、アンテナ151の交信領域の内側に存在するRFIDタグTG(無線タグ)から、当該RFIDタグTGが保持する情報を読み取る第1読取部21(第1の読取手段)と、アンテナ151の交信領域の内側に存在するRFIDタグTGから、当該RFIDタグTGが保持する情報を、第1読取部21よりも高い読取精度で読み取る第2読取部22(第2の読取手段)と、第1読取部21または第2読取部22を、一度読み取られたRFIDタグTGは所定時間以上応答させない設定で使用した際に、RFIDタグTGの応答状況に応じて、当該RFIDタグTGの読み取りに係るQ値を調整するQ値調整部23(調整手段)と、Q値と切替閾値Th(閾値)との大小関係に応じて、第1読取部21と第2読取部22とを切り替えてRFIDタグTGの読み取りを行わせる読取方式切替部24(切替手段)と、を備える。したがって、多数のRFIDタグTGを読み取る際に、読み取り速度と読み取り精度とを両立させることができる。
【0068】
また、RFIDタグ読取装置10において、第1読取部21(第1の読取手段)は、FM0方式である。したがって、RFIDタグTGを読み取る際に、第2読取部22よりも高速で読み取ることができる。例えば、読み取り易い、近くにあるRFIDタグTGは、FM0方式で読み取るのが望ましい。
【0069】
また、RFIDタグ読取装置10において、第2読取部22(第2の読取手段)は、ミラーサブスキャン方式である。したがって、RFIDタグTGを読み取る際に、第1読取部21よりも高い読取精度で読み取ることができる。例えば、受信感度が必要な読み取りにくい位置にあるRFIDタグTGは、ミラーサブスキャン方式で読み取るのが望ましい。
【0070】
また、RFIDタグ読取装置10は、切替閾値Th(閾値)を設定する閾値設定部25(設定手段)を更に備える。したがって、第1読取部21による読み取りと、第2読取部22による読み取りとを切り替える閾値を自由に設定することができる。
【0071】
また、RFIDタグ読取装置10において、読取方式切替部24(切替手段)は、Q値が切替閾値Th以上であることを条件として、第1読取部21でRFIDタグTGの読み取りを行い、Q値が切替閾値Thよりも小さいことを条件として、第2読取部22でRFIDタグTGの読み取りを行う。したがって、RFIDタグTGの応答状況に応じて、適切な読取方式に切り替えることができる。これによって、コリジョンが多く発生している場合には第1読取部21で高速に読み取りを行い、無応答のスロットが多い場合には第2読取部22で精度の高い読み取りを行うことができる。
【0072】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例示であり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
10 RFIDタグ読取装置(無線タグ読取装置)
21 第1読取部(第1の読取手段)
22 第2読取部(第2の読取手段)
23 Q値調整部(調整手段)
24 読取方式切替部(切替手段)
25 閾値設定部(設定手段)
26 読取結果登録部
27 読取制御部
100 制御部
151 アンテナ
G 物品
R 応答波
S 送信波
TG RFIDタグ(無線タグ)
Th 切替閾値(閾値)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0074】
【特許文献1】特開2013-219458号公報
【特許文献2】特開2010-21684号公報
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C