(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160263
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナーセット、画像形成システム及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/08 20060101AFI20231026BHJP
G03G 9/09 20060101ALI20231026BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
G03G9/08
G03G9/09
G03G9/087 331
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070486
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】中島 一比古
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500AA06
2H500AA13
2H500CA06
2H500CA29
2H500CB05
2H500CB07
2H500CB14
2H500EA11A
2H500EA39B
2H500EA42C
2H500EA44B
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明の課題は、顔料含有率の異なるトナーを用いた多色印刷用であり、発色性、耐熱保管性、及び定着性が良好である静電荷像現像用トナーセット、並びにこれを用いる画像形成システム及び画像形成方法を提供することである。
【解決手段】本発明の静電荷像現像用トナーセットは、第1トナーが含む第1トナー母体粒子及び第2トナーが含む第2トナー母体粒子が、いずれも、少なくとも顔料及び結晶性樹脂を含有し、第1トナー及び第2トナーが、下記式(1A)及び(2A)を満たす。
式(1A)10≦W
P1-W
P2
式(2A)ΔH
C1/ΔH
C2≦0.15
W
P1:第1トナー母体粒子の顔料含有率[質量%]
W
P2:第2トナー母体粒子の顔料含有率[質量%]
ΔH
C1:第1トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量[kJ/g]
ΔH
C2:第2トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量[kJ/g]
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナー母体粒子が含有する顔料の種類が異なる第1トナーと第2トナーを含む静電荷像現像用トナーセットであって、
前記第1トナーが含む第1トナー母体粒子及び前記第2トナーが含む第2トナー母体粒子が、いずれも、少なくとも前記顔料及び結晶性樹脂を含有し、
前記第1トナー及び前記第2トナーが、下記式(1A)及び(2A)を満たす
ことを特徴とする静電荷像現像用トナーセット。
式(1A) 10≦WP1-WP2
式(2A) ΔHC1/ΔHC2≦0.15
WP1:第1トナー母体粒子の顔料含有率[質量%]
WP2:第2トナー母体粒子の顔料含有率[質量%]
ΔHC1:第1トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量[kJ/g]
ΔHC2:第2トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量[kJ/g]
【請求項2】
前記第1トナー及び前記第2トナーが、下記式(2B)を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーセット。
式(2B) ΔHC1/ΔHC2≦0.08
ΔHC1:第1トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量[kJ/g]
ΔHC2:第2トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量[kJ/g]
【請求項3】
前記第2トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHC2が、8~15kJ/gの範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーセット。
【請求項4】
前記第1トナー母体粒子の顔料含有率WP1が、30質量%以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーセット。
【請求項5】
前記第2トナー母体粒子の結晶性樹脂含有率WC2が、5~10質量%の範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーセット。
【請求項6】
前記第2トナー母体粒子の顔料含有率WP2が、2~10質量%の範囲内である
ことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーセット。
【請求項7】
前記第2トナー母体粒子が含有する前記顔料が、有機系顔料である
ことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーセット。
【請求項8】
前記第1トナー母体粒子が含有する前記顔料が、無機系顔料である
ことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナーセット。
【請求項9】
静電荷像現像用トナーセットを用いる画像形成システムであって、
前記静電荷像現像用トナーセットが、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーセットである
ことを特徴とする画像形成システム。
【請求項10】
静電荷像現像用トナーセットを用いる画像形成方法であって、
前記静電荷像現像用トナーセットが、請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーセットである
ことを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナーセット、画像形成システム及び画像形成方法に関する。より詳しくは、顔料含有率の異なるトナーを用いた多色印刷用であり、発色性、耐熱保管性、及び定着性が良好である静電荷像現像用トナーセット等に関する。
【背景技術】
【0002】
静電荷像現像用トナーセット(以下、単に「トナーセット」ともいう。)の各トナーは、それぞれ異なる種類の顔料を含有する。また、各トナーの顔料含有率は、顔料の種類によって、発色性などを考慮して調整され得る。
【0003】
例えば特許文献1には、有色トナーと白色トナーを用いた画像形成の実施例が記載されているが、有色トナーにおけるカーボンブラックの含有率は6質量%であるのに対し、白色トナーにおける酸化チタンの含有率は、白色度や光沢度を向上させるために、18~52質量%と比較的高く調整されている。
【0004】
一方、顔料含有率が異なると、フィラー効果による熱溶融特性低下の程度が異なるため、各トナーの熱溶融特性に差が生じる。具体的には、顔料含有率が高いトナーは、耐熱保管性が良くなりやすいものの、定着性が悪くなりやすい。逆に、顔料含有率が低いトナーは、定着性が良くなりやすいものの、耐熱保管性が悪くなりやすい。
【0005】
このように各トナーの熱溶融特性に差があると、トナーセットの管理や画像形成の面で不利である。そのため、発色性のために顔料含有率が異なっていても耐熱保管性及び定着性が良好であるトナーセットが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、顔料含有率の異なるトナーを用いた多色印刷用であり、発色性、耐熱保管性、及び定着性が良好である静電荷像現像用トナーセット、並びにこれを用いる画像形成システム及び画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記課題の原因等について検討した結果、第1トナー及び第2トナーのいずれにも、トナー母体粒子に結晶性樹脂を含有させ、さらに当該結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHC[kJ/g]の比率を制御することで、発色性、耐熱保管性、及び定着性を良好にできることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0009】
1.トナー母体粒子が含有する顔料の種類が異なる第1トナーと第2トナーを含む静電荷像現像用トナーセットであって、
前記第1トナーが含む第1トナー母体粒子及び前記第2トナーが含む第2トナー母体粒子が、いずれも、少なくとも前記顔料及び結晶性樹脂を含有し、
前記第1トナー及び前記第2トナーが、下記式(1A)及び(2A)を満たす
ことを特徴とする静電荷像現像用トナーセット。
式(1A) 10≦WP1-WP2
式(2A) ΔHC1/ΔHC2≦0.15
WP1:第1トナー母体粒子の顔料含有率[質量%]
WP2:第2トナー母体粒子の顔料含有率[質量%]
ΔHC1:第1トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量[kJ/g]
ΔHC2:第2トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量[kJ/g]
【0010】
2.前記第1トナー及び前記第2トナーが、下記式(2B)を満たす
ことを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナーセット。
式(2B) ΔHC1/ΔHC2≦0.08
ΔHC1:第1トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量[kJ/g]
ΔHC2:第2トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量[kJ/g]
【0011】
3.前記第2トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHC2が、8~15kJ/gの範囲内である
ことを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナーセット。
【0012】
4.前記第1トナー母体粒子の顔料含有率WP1が、30質量%以上である
ことを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナーセット。
【0013】
5.前記第2トナー母体粒子の結晶性樹脂含有率WC2が、5~10質量%の範囲内である
ことを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナーセット。
【0014】
6.前記第2トナー母体粒子の顔料含有率WP2が、2~10質量%の範囲内である
ことを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナーセット。
【0015】
7.前記第2トナー母体粒子が含有する前記顔料が、有機系顔料である
ことを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナーセット。
【0016】
8.前記第1トナー母体粒子が含有する前記顔料が、無機系顔料である
ことを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナーセット。
【0017】
9.静電荷像現像用トナーセットを用いる画像形成システムであって、
前記静電荷像現像用トナーセットが、第1項から第8項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーセットである
ことを特徴とする画像形成システム。
【0018】
10.静電荷像現像用トナーセットを用いる画像形成方法であって、
前記静電荷像現像用トナーセットが、第1項から第8項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナーセットである
ことを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の上記手段により、顔料含有率の異なるトナーを用いた多色印刷用であり、発色性、耐熱保管性、及び定着性が良好である静電荷像現像用トナーセット、並びにこれを用いる画像形成システム及び画像形成方法を提供することができる。
【0020】
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推測している。
【0021】
上述のとおり、顔料含有率が高いトナーは、フィラー効果が大きいため溶融しにくく、定着性が悪い傾向にある。これに対しては、トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHC[kJ/g]を相対的に低くすることで、溶融に必要な熱量を少なくすることができるため、溶融しやすくなるように制御でき、定着性を向上させることができる。
【0022】
一方、顔料含有率が低いトナーは、フィラー効果が小さいため溶融しやすく、耐熱保管性が悪い傾向にある。これに対しては、トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHC[kJ/g]を相対的に高くすることで、溶融に必要な熱量を多くすることができるため、溶融しにくくなるように制御でき、耐熱保管性を向上させることができる。
【0023】
また、本発明においては、各トナーにおける耐熱保管性及び定着性のバランスを良好にするだけでなく、トナーセットを構成する顔料含有率の異なるトナー間の耐熱保管性の差や定着性の差を解消することが重要である。
【0024】
特許文献1に記載の発明では、白色トナーの結晶性樹脂に由来する吸熱量Q1と有色トナーの結晶性樹脂に由来する吸熱量Q2との比(Q1/Q2)を、0.2以上0.8以下に制御しているが、これは白色画像部と有色画像部との光沢差を低減するための制御であり、トナー間の耐熱保管性の差や定着性の差を解消できるものではなかった。
【0025】
これに対し、本発明は、式(2A)を満たすように第1トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHC1と第2トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHC2結晶性樹脂由来のピーク吸熱量の比率(ΔHC1/ΔHC2)を0.15以下に制御することで、式(1A)を満たすように顔料含有率が10質量%以上異なる場合であっても、耐熱保管性の差や定着性の差を解消することを可能としている。
【0026】
上記手段により、各トナーにおける耐熱保管性及び定着性のバランスを良好にした上で、顔料含有率の異なるトナー間の耐熱保管性の差や定着性の差を解消できる。このような機構よって、本発明のトナーセットは、発色性、耐熱保管性、及び定着性が良好になっていると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の静電荷像現像用トナーセットは、トナー母体粒子が含有する顔料の種類が異なる第1トナーと第2トナーを含む静電荷像現像用トナーセットであって、前記第1トナーが含む第1トナー母体粒子及び前記第2トナーが含む第2トナー母体粒子が、いずれも、少なくとも前記顔料及び結晶性樹脂を含有し、前記第1トナー及び前記第2トナーが、上記式(1A)及び(2A)を満たすことを特徴とする。
この特徴は、下記実施形態に共通する又は対応する技術的特徴である。
【0029】
本発明の静電荷像現像用トナーセットの実施形態として、前記第1トナー及び前記第2トナーが、上記式(2B)を満たすことが、耐熱保管性及び定着性の観点から好ましい。
【0030】
本発明の静電荷像現像用トナーセットの実施形態として、前記第2トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHC2が、8~15kJ/gの範囲内であることが、耐熱保管性及び定着性の観点から好ましい。
【0031】
本発明の静電荷像現像用トナーセットの実施形態として、前記第1トナー母体粒子の顔料含有率WP1が、30質量%以上であることが、本発明の効果を顕著に得られる観点から好ましい。
【0032】
本発明の静電荷像現像用トナーセットの実施形態として、前記第2トナー母体粒子の結晶性樹脂含有率WC2が、5~10質量%の範囲内であることが、耐熱保管性及び定着性の観点から好ましい。
【0033】
本発明の静電荷像現像用トナーセットの実施形態として、前記第2トナー母体粒子の顔料含有率WP2が、2~10質量%の範囲内であることが、本発明の効果を顕著に得られる観点から好ましい。
【0034】
本発明の静電荷像現像用トナーセットの実施形態として、前記第2トナー母体粒子が含有する前記顔料が、有機系顔料であり、また、前記第1トナー母体粒子が含有する前記顔料が、無機系顔料であることが、本発明の効果を顕著に得られる観点から好ましい。
【0035】
本発明の画像形成システムは、静電荷像現像用トナーセットを用いる画像形成システムであって、前記静電荷像現像用トナーセットが、本発明の静電荷像現像用トナーセットであることを特徴とする。
【0036】
本発明の画像形成方法は、静電荷像現像用トナーセットを用いる画像形成方法であって、前記静電荷像現像用トナーセットが、本発明の静電荷像現像用トナーセットであることを特徴とする。
【0037】
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0038】
<1 静電荷像現像用トナーセットの概要>
本発明のトナーセットは、トナー母体粒子が含有する顔料の種類が異なる第1トナーと第2トナーを含む静電荷像現像用トナーセットであって、第1トナーが含む第1トナー母体粒子及び第2トナーが含む第2トナー母体粒子が、いずれも、少なくとも顔料及び結晶性樹脂を含有し、第1トナー及び第2トナーが、下記式(1A)及び(2A)を満たすことを特徴とする。
【0039】
式(1A) 10≦WP1-WP2
式(2A) ΔHC1/ΔHC2≦0.15
【0040】
WP1:第1トナー母体粒子の顔料含有率[質量%]
WP2:第2トナー母体粒子の顔料含有率[質量%]
ΔHC1:第1トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量[kJ/g]
ΔHC2:第2トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量[kJ/g]
【0041】
本発明のトナーセットは、トナー母体粒子が含有する顔料の種類が異なる第1トナーと第2トナーを少なくとも含むが、それ以外のトナーを更に含んでいてもよい。
【0042】
なお、本発明において、「トナー」とは、トナー粒子の集合体をいう。また、「トナー粒子」とは、トナー母体粒子に外添剤を添加したものをいう。本発明において、トナー母体粒子とトナー粒子とを区別する必要がない場合には、単にトナー粒子と称することがある。
【0043】
<1.1 トナー母体粒子の顔料含有率>
本発明のトナーセットは、第1トナー母体粒子の顔料含有率WP1及び第2トナー母体粒子の顔料含有率WP2が、下記式(1A)を満たすことを特徴とする。
【0044】
式(1A) 10≦WP1-WP2
【0045】
式(1A)は、本発明においてトナー母体粒子の顔料含有率が高い方を第1トナーとし、トナー母体粒子の顔料含有率が低い方を第1トナーとしていることと、各顔料含有率が10質量%以上異なることを表している。各トナーの顔料含有率は、発色性のためにそれぞれ調整されるが、本発明のトナーセットは、このように、発色性のために顔料含有率が異なるトナーを含むトナーセットにおいて、さらに耐熱保管性及び定着性を良好にすることを課題としている。
【0046】
なお、本発明において、「トナー母体粒子の顔料含有率」とは、トナー母体粒子の各成分の全量を100質量%としたときの、顔料の含有率である。
【0047】
一般的に、顔料含有率の差が大きいほど、耐熱保管性の差や定着性の差は大きくなり、トナーセットとしての耐熱保管性や定着性を良好にすることが難しくなる。これに対し、本発明のトナーセットは、顔料含有率の差が大きい場合であっても耐熱保管性の差や定着性の差を解消できることを特徴としているため、顔料含有率の差が大きいほど特に効果を発揮する。そのため、この観点からは、第1トナー母体粒子の顔料含有率WP1及び第2トナー母体粒子の顔料含有率WP2は、下記式(1B)を満たすことが好ましい。
【0048】
式(1B) 20≦WP1-WP2
【0049】
また、それぞれの顔料含有率に着目すると、第1トナー母体粒子の顔料含有率WP1は、30質量%以上であることが好ましく、60質量%以下であることが好ましい。第2トナー母体粒子の顔料含有率WP2は、2~10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0050】
<1.2 トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量>
本発明のトナーセットは、第1トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHC1及び第2トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHC2が、下記式(2A)を満たすことを特徴とする。
【0051】
式(2A) ΔHC1/ΔHC2≦0.15
【0052】
式(2A)は、トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量の比率(ΔHC1/ΔHC2)が0.15以下であることを表している。これによって、本発明のトナーセットは、耐熱保管性の差や定着性の差が小さく、トナーセットとしての耐熱保管性や定着性が良好となっている。
【0053】
また、耐熱保管性や定着性をより良好にする観点から、第1トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHC1及び第2トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHC2は、下記式(2B)を満たすことが好ましい。
【0054】
式(2B) ΔHC1/ΔHC2≦0.08
【0055】
また、それぞれのピーク吸熱量に着目すると、第1トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHC1は、0.64~1.2kJ/gの範囲内であることが好ましく、第2トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHC2は、8~15kJ/gの範囲内であることが好ましい。
【0056】
結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHCは、特許文献1(特開2012-177763号公報)を参考に、ASTM D3418-8に準拠した以下の方法で測定できる。
【0057】
1)試料(トナー)10mgをアルミニウムセル中に入れ、蓋をする(これを試料用セルという)。比較用にアルミナ10mgを同様に同型のアルミニウムセル中に入れ、蓋をする(これを比較用セルという)。
2)試料用セルと比較用セルとをそれぞれ測定装置にセットし、窒素雰囲気下で30℃から10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温させ、200℃で10分間放置する。この際に、吸熱・発熱曲線を求める。
3)放置後、液体窒素を用いて-10℃/分の降温速度で-30℃まで温度を下げ、-30℃で10分間放置する。
4)放置後、20℃/分の昇温速度で-30℃から200℃まで昇温する。この際に、再び吸熱・発熱曲線を求める。
【0058】
2)及び4)の操作の際に得られた吸熱・発熱曲線を比較して、±5℃の範囲にある吸熱ピークを、同一の材料由来の吸熱ピークと判断する。
【0059】
JIS-K7122の9項に準拠し、ベースラインと吸熱ピークで囲まれるピーク面積から求めた試料の質量あたりの吸熱量を、その吸熱ピークから求められるピーク吸熱量とする。
【0060】
同一の材料由来の吸熱ピークのうち、2)の操作の際に得られた吸熱ピークから求められるピーク吸熱量Aと4)の操作の際に得られた吸熱ピークから求められるピーク吸熱量Bの比率(B/A)が、0.8以下の吸熱ピークを、結晶性樹脂由来の吸熱ピークと判断する。
【0061】
2)の操作の際に得られた吸熱・発熱曲線のうち、結晶性樹脂由来の吸熱ピークから求められるピーク吸熱量を、結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHCとして採用する。
【0062】
測定装置としては、パーキンエルマー社製の示差走査型熱量計DSC-7を用いることができる。
【0063】
<2 トナーの組成>
本発明に係る第1トナー及び第2トナーは、構成成分として、トナー母体粒子を含む。また、第1トナー及び第2トナーは、構成成分として、外添剤を含み得る。
【0064】
<2.1 トナー母体粒子>
本発明においては、第1トナーが含むトナー母体粒子を第1トナー母体粒子といい、第2トナーが含むトナー母体粒子を第2トナー母体粒子という。第1トナー母体粒子及び第2トナー母体粒子は、いずれも、少なくとも顔料及び結晶性樹脂を含有することを特徴とし、更に非晶性樹脂やワックス等を含有し得る。
【0065】
<2.1.1 顔料>
本発明に用いることができる顔料の種類は、特に限定されず、例えば以下に挙げる顔料を用いることができる。
【0066】
有機系のイエロー顔料又はオレンジ顔料としては、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
【0067】
有機系のマゼンタ顔料又はレッド顔料としては、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48;1、C.I.ピグメントレッド53;1、C.I.ピグメントレッド57;1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド222、C.I.ピグメントレッド238等が挙げられる。
【0068】
有機系のシアン顔料又はブルー顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15;2、C.I.ピグメントブルー15;3、C.I.ピグメントブルー15;4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー62、C.I.ピグメントブルー66、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0069】
有機系の黒色顔料としては、カーボンブラック等が挙げられる。カーボンブラックとしては、例えば、チャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が挙げられる。
【0070】
無機系の黒色顔料としては、磁性体、チタンブラック等が挙げられる。磁性体としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルトなどの強磁性金属、これら強磁性金属を含む合金、フェライト、マグネタイトなどの強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理することにより強磁性を示す合金等が挙げられる。また、熱処理することにより強磁性を示す合金としては、例えば、マンガン-銅-アルミニウム、マンガン-銅-スズなどのホイスラー合金、二酸化クロム等が挙げられる。
【0071】
有機系の白色顔料としては、ポリスチレン樹脂粒子、尿素ホリマリン樹脂粒子、中空樹脂粒子等が挙げられる。
【0072】
無機系の白色顔料としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、酸化チタン(二酸化チタン)、水酸化アルミニウム、チタンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネートカオリン、アルミノ珪酸塩、セリサイト、ベントナイト、スメクサイト、中空シリカ等が挙げられる。
【0073】
無機系の光輝性顔料としては、アルミニウム、黄銅、青銅、ニッケル、ステンレス、亜鉛、銅、銀、金、白金などの金属粉末、酸化チタンや黄色酸化鉄を被覆した雲母、硫酸バリウム、層状ケイ酸塩、層状アルミニウムのケイ酸塩などの被覆薄片状無機結晶基質、単結晶板状酸化チタン、塩基性炭酸塩、酸オキシ塩化ビスマス、天然グアニン、薄片状ガラス粉、金属蒸着された薄片状ガラス粉、パール顔料等が挙げられる。
【0074】
有機系の蛍光顔料としては、ポリフェニル系、スチルベン系、オキサゾール系、オキサジアゾール系、クマリン系、キサンテン系、オキサジン系、チアジン系、ポリメチン系等が挙げられる。
【0075】
無機系の蛍光顔料としては、Y2O3、Zn2SiO4等に代表される金属酸化物、Sr5(PO4)3Cl等に代表されるリン酸塩、ZnS、SrS、CaS等に代表される硫化物等を結晶母核とし、これら結晶母核にCe、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属イオンやAg、Al、Mn、Sb等の金属イオンを賦活剤又は共賦活剤として組み合わせたものが挙げられる。結晶母体の好ましい例としては、例えば、YO3、Y2O3、Y2O2S、Y2SiO3、YAlO3、Y3Al5O12、(Y,Gd)3Al5O12、SnO2、Zn2SiO4、Sr4Al14O25、CeMgAl11O19、BaAl12O19、BaAl2Si2O8、BaMgAl10O17、BaMgAl14O23、Ba2Mg2Al12O22、Ba2Mg4Al8O18、Ba3Mg5Al18O35、(Ba,Sr,Mg)O・aAl2O3、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al10O17、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al10O17、(Y,Gd)BO3、GdMgB5O10、Sr2P2O7、(La,Ce)PO4、Ca5(PO4)3Cl、Ca10(PO4)6(F,Cl)2、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2、ZnS、(Zn,Cd)S、CaS、SrS、SrGa2S4等を挙げることができる。以上の結晶母核及び賦活剤又は共賦活剤は、元素組成に特に制限はなく、また、同族の元素と一部置き換えることもできる。これらの無機系の蛍光顔料は、紫外線を吸収して可視光を発するものが好ましい。
【0076】
光輝性顔料以外の顔料の平均粒径は、10~1000nmの範囲内が好ましく、50~500nmの範囲内がより好ましい。光輝性顔料の平均粒径は、10~10000nmの範囲内が好ましい。
【0077】
光輝性顔料の形状としては、例えば、扁平状(鱗片状)が挙げられる。
【0078】
光輝性顔料の長軸方向の平均長さは、1~30μmの範囲内であることが好ましく、3~20μmの範囲内がより好ましく、5~15μmの範囲内が更に好ましい。
【0079】
光輝性顔料のアスペクト比(厚さ方向の平均長さを1としたときの長軸方向の平均長さの比率)は、5~200の範囲内であることが好ましく、10~100の範囲内がより好ましく、30~70の範囲内が更に好ましい。
【0080】
光輝性顔料の長軸方向の平均長さ及び厚さ方向の平均長さは、測定し得る倍率(300から100,000倍)で撮影したSEM画像を用いて、1000個の光輝性顔料における数平均値を求めることで測定できる。SEM画像を撮影する走査電子顕微鏡には、例えば日立ハイテクノロジーズ社製S-4800を用いることができる。
【0081】
発色性の観点から、無機系顔料の場合の顔料含有率は相対的に高いことが好ましい。そのため、本発明のトナーセットにおいては、顔料含有率の高い第1トナー母体粒子が含有する顔料を無機系顔料とし、顔料含有率の低い第2トナー母体粒子が含有する顔料を有機系顔料とすることが好ましい。
【0082】
<2.1.2 結着樹脂>
本発明に係る第1トナー母体粒子及び第2トナー母体粒子は、結着樹脂として、結晶性樹脂を含有する。これによって、上述の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHC[kJ/g]の比率を制御する。また、結着樹脂として、更に非晶性樹脂を含有し得る。
【0083】
「結晶性樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC:differential scanning calorimetry)により得られる吸熱曲線において、融点、すなわち昇温時に明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。明確な吸熱ピークとは、10℃/minの昇温速度で昇温したときの吸熱曲線において半値幅が15℃以内のピークをいう。
【0084】
一方、「非晶性樹脂」とは、上記と同様の示差走査熱量測定を行った際に得られる吸熱曲線において、ガラス転移が生じたことを示すベースラインのカーブは見られるが、上述した明確な吸熱ピークが見られない樹脂のことをいう。
【0085】
(結晶性樹脂)
トナー母体粒子の結晶性樹脂含有率は、特に限定されず、上述の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHC[kJ/g]の比率を制御するために適宜調整し得る。ただし、第2トナー母体粒子と第1トナー母体粒子のそれぞれの顔料含有率及びフィラー効果を考慮すると、耐熱保管性及び定着性の観点から、第2トナー母体粒子の結晶性樹脂含有率WC2は、5~10質量%の範囲内であることが好ましく、第1トナー母体粒子の結晶性樹脂含有率WC1は、0.1~20質量%の範囲内であることが好ましい。
【0086】
結晶性樹脂の融点は、定着性と耐熱保管性の両立の観点から、55~80℃の範囲内が好ましく、70℃以上80℃以下の範囲がより好ましい。結晶性樹脂の融点は、示差走査熱量測定(DSC)を行うことにより測定することができる。
【0087】
結晶性樹脂の分子量は、数平均分子量が8500~12500の範囲内が好ましく、9000~11000の範囲内がより好ましい。
【0088】
結晶性樹脂の種類は、特に限定されないが、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリジエン系樹脂、結晶性ポリエステル樹脂等が挙げられる。これらの中でも、定着性の向上や使い易さの点で、結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂でもよい。
【0089】
結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)と、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)との重縮合反応によって得ることができる。
【0090】
多価アルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、ドデカンジオール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの2価のアルコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサエチロールメラミン、テトラメチロールベンゾグアナミン、テトラエチロールベンゾグアナミンなどの3価以上のポリオール、及びこれらのエステル化合物、ヒドロキシカルボン酸誘導体などを挙げることができる。
【0091】
多価カルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、コハク酸、マレイン酸、メサコン酸、アジピン酸、β-メチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、フマル酸、シトラコン酸、ジグリコール酸、シクロヘキサン-3,5-ジエン-1,2-ジカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、ヘキサヒドロテレフタール酸、マロン酸、ピメリン酸、酒石酸、粘液酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-カルボキシフェニル酢酸、p-フェニレン二酢酸、m-フェニレンジグリコール酸、p-フェニレンジグリコール酸、o-フェニレンジグリコール酸、ジフェニル酢酸、ジフェニル-p,p′-ジカルボン酸、ナフタレン-1,4-ジカルボン酸、ナフタレン-1,5-ジカルボン酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ドデセニルコハク酸などの2価のカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ナフタレンテトラカルボン酸、ピレントリカルボン酸、ピレンテトラカルボン酸などの3価以上のカルボン酸、及びこれらのアルキルエステル、酸無水物、酸塩化物などを挙げることができる。
【0092】
結晶性ポリエステル樹脂を構成するモノマー(多価アルコール成分及び多価カルボン酸成分)は、直鎖脂肪族モノマーを50質量%以上含有することが好ましく、80質量%以上含有することがより好ましい。芳香族モノマーを用いた場合には、結晶性ポリエステルの融点が高いものとなることが多く、分岐型の脂肪族モノマーを用いた場合には結晶性が低くなることが多いことから直鎖脂肪族モノマーを用いることが好ましい。また、直鎖脂肪族モノマーが50質量%以上とすることで、トナー中において結晶性を維持することが出来る。80質量%以上にすることで十分な結晶性を維持することが可能になる。
【0093】
多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との比率としては、多価カルボン酸成分のカルボキシ基に対する多価アルコール成分のヒドロキシ基の当量比を、1.5/1~1/1.5の範囲内とすることが好ましく、1.2/1~1/1.2の範囲内とすることがより好ましい。
【0094】
また、多価アルコール成分の炭素数(C(alcohol))と、多価カルボン酸成分の炭素数(C(acid))とが、下記式(A)~(C)の関係を満たすことが好ましい。
【0095】
C(acid)-C(alcohol)≧4 式(A)
C(acid)≧10 式(B)
C(alcohol)≦6 式(C)
【0096】
原料の炭素数が規定された結晶性ポリエステル樹脂は、主鎖の鎖長が異なる多価アルコール成分と多価カルボン酸とを用いて形成されていることから、炭素数の短い分岐鎖と炭素数の長い分岐鎖とが、交互にポリエステル鎖に結合されたものとなる。このため、結晶化する際、規則性が低い部分が存在すると考えられる。したがって、結着樹脂を構成する結晶性ポリエステル樹脂として、原料の炭素数が規定された結晶性ポリエステル樹脂を用いることにより、熱定着において結晶性ポリエステル樹脂の融点より高い温度の熱エネルギーが付与された際に、結晶の規則性が低い部分から順次に融解していくため、良好な定着性が得られる。
【0097】
上記C(acid)と上記C(alcohol)の関係は、上記式(A)のとおりC(acid)-C(alcohol)≧4を満たすことが好ましいが、C(acid)-C(alcohol)≧6を満たすことがより好ましい。
【0098】
なお、多価カルボン酸成分を2種以上含有する場合、上記C(acid)は、もっとも含有量(mol換算)の多い多価カルボン酸成分の炭素数とする。同量の場合は、炭素数がもっとも大きい多価カルボン酸成分の炭素数をC(acid)とする。
【0099】
同様に、多価アルコール成分を2種以上含有する場合、上記C(alcohol)は、もっとも含有量(mol換算)の多い多価アルコール成分の炭素数とする。同量の場合は、炭素数がもっとも大きい多価カルボン酸成分の炭素数をC(alcohol)とする。
【0100】
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価アルコール成分及び多価カルボン酸成分を重縮合する(エステル化する)ことにより製造することができる。
【0101】
エステル化触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物、アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物、亜リン酸化合物、リン酸化合物、アミン化合物等が挙げられる。スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等が挙げられる。チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド、ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどのチタンキレート等が挙げられる。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウム等が挙げられるアルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウムなどの酸化物、アルミニウムアルコキシド、トリブチルアルミネート等が挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
重縮合温度や重合重縮合時間は特に限定されるものではなく、重縮合中には必要に応じて反応系内を減圧してもよい。
【0103】
また、結晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との重縮合反応によって合成される結晶性ポリエステル重合セグメントと、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントとが共重合したハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂としてもよい。
【0104】
結晶性ポリエステル重合セグメントとは、結晶性ポリエステル樹脂に由来する部分を示す。また、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントとは、ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂に由来する部分を示す。
【0105】
ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂等が挙げられる。中でも、ビニル樹脂が好ましく、スチレン・アクリル樹脂がより好ましい。ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0106】
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル重合セグメントと、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントとを含むものであれば、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれの形態であってもよいが、グラフト共重合体であると好ましい。グラフト共重合体とすることにより、結晶性ポリエステル重合セグメントの配向を制御しやすくなり、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に十分な結晶性を付与することができる。
【0107】
また、結晶性ポリエステル重合セグメントは、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントを主鎖として、グラフト化されていることが好ましい。すなわち、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂は、主鎖としてポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントを有し、側鎖として結晶性ポリエステル重合セグメントを有するグラフト共重合体であることが好ましい。当該構造とすることにより、結晶性ポリエステル重合セグメントの配向をより高めることができ、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の結晶性を向上させることができる。
【0108】
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂には、さらに、スルホン酸基、カルボキシ基、ウレタン基などの置換基が導入されていてもよい。これらの置換基の導入は、結晶性ポリエステル重合セグメント中でもよいし、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメント中であってもよい。
【0109】
結晶性ポリエステル樹脂が、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂である場合、結晶性ポリエステル重合セグメントの含有量は、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の全量に対して50質量%以上98質量%未満であることが好ましい。上記範囲とすることにより、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂に十分な結晶性を付与することができる。なお、ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂中の各重合セグメントの構成成分及び含有量は、例えば、NMR測定、メチル化反応P-GC/MS測定により特定することができる。
【0110】
ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、結晶性ポリエステル重合セグメントとポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントとを共重合させることが可能な方法であれば、特に制限されるものではない。ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
【0111】
(A)結晶性ポリエステル重合セグメントを予め重合しておき、当該結晶性ポリエステル重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントを形成するための単量体を反応させることにより、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントを形成する方法。
(B)ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントを予め重合しておき、当該非晶性重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成するための多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分を反応させることにより、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成する方法。
(C)結晶性ポリエステル重合セグメント及びポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントをそれぞれ予め重合しておき、これらに両反応性単量体を反応させることにより、両者を結合させる方法。
【0112】
ここで、「両反応性単量体」とは、結晶性ポリエステル重合セグメントとポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントとを結合する単量体で、結晶性ポリエステル重合セグメントを形成するヒドロキシ基、カルボキシ基、エポキシ基、第1級アミノ基及び第2級アミノ基から選択される基と、スチレン・アクリル重合セグメントを形成するエチレン性不飽和基と、の双方を分子内に有する単量体である。
【0113】
両反応性単量体の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等が挙げられ、さらにこれらのヒドロキシアルキル(炭素数1~3個)のエステルであってもよいが、反応性の観点からアクリル酸、メタクリル酸又はフマル酸が好ましい。この両反応性単量体を介して結晶性ポリエステル重合セグメントとポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントとが結合される。
【0114】
両反応性単量体の使用量は、定着性を向上させる観点から、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントを構成する単量体の総量に対して、1~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることが好ましい。
【0115】
ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントを構成する単量体としては、特に限定されず、例えば後述の非晶性ビニル樹脂の項に記載のビニル単量体を用いることができる。
【0116】
ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントは、スチレン・アクリル樹脂に由来するスチレン・アクリル重合セグメントであることが好ましい。この場合、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントは、少なくとも、スチレン単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体とを付加重合させて形成される。また、スチレン単量体としては、スチレンが好ましく、(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、n-ブチルアクリレートが好ましい。
【0117】
(非晶性樹脂)
非晶性樹脂は特に限定されるものではない。例えば、非晶性ビニル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0118】
非晶性樹脂のガラス転移点Tgは、低温定着性と定着分離性をより高いバランスで保つ観点から、35~80℃の範囲内であることが好ましく、45~65℃の範囲内であることがより好ましい。
【0119】
ガラス転移点Tgは、上記したDSC法に従って測定することができる。測定には、示差走査熱量計「ダイヤモンドDSC」(パーキンエルマー社製)、DSC-7示差走査カロリメーター(パーキンエルマー社製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラー(パーキンエルマー社製)などを用いることができる。
【0120】
非晶性樹脂の重量平均分子量Mwは、非晶性樹脂の可塑性を制御しやすい観点から、20000~150000の範囲内であることが好ましく、25000~130000の範囲内であることがより好ましい。また、非晶性樹脂の数平均分子量Mnは、非晶性樹脂の可塑性を制御しやすい観点から、5000~150000の範囲内であることが好ましく、8000~70000の範囲内であることがより好ましい。
【0121】
非晶性樹脂の重量平均分子量Mwは、GPC(gel permeation chromatography)によって測定した分子量分布から求めることができる。具体的には、まず、測定試料を濃度1mg/mLとなるようにテトラヒドロフラン中に添加し、室温において超音波分散機を用いて5分間分散処理した後、ポアサイズ0.2μmのメンブレンフィルターで処理して、試料液を調製する。例えば、GPC装置HLC-8120GPC(東ソー社製)及びカラム(「TSKgel guardcolumn SuperHZ-L」及び「TSKgel SuperHZM-M」、東ソー社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフランを流速0.2mL/minで流す。キャリア溶媒とともに、調製した試料液10μLをGPC装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて試料を検出し、単分散のポリスチレン標準粒子を用いて測定した検量線を用いて、試料の分子量分布を算出する。検量線は、分子量がそれぞれ6×102、2.1×103、4×103、1.75×104、5.1×104、1.1×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106である10点のポリスチレン標準粒子(Pressure Chemical社製)を測定することにより、作成する。
【0122】
非晶性ビニル樹脂は、ビニル基を有する単量体(以下、「ビニル単量体」という。)を用いて形成されるものである。非晶性ビニル樹脂としては、スチレン・アクリル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられ、中でも、スチレン・アクリル樹脂であることが好ましい。
【0123】
ビニル単量体としては、スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、ビニルケトン系単量体、N-ビニル化合物系単量体等が挙げられる。
【0124】
スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチルスチレン、p-フェニルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0125】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの誘導体等が挙げられる。
【0126】
ビニルエステル系単量体としては、例えば、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
【0127】
ビニルエーテル系単量体としては、例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等が挙げられる。
【0128】
ビニルケトン系単量体としては、例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等が挙げられる。
【0129】
N-ビニル化合物系単量体としては、例えば、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルインドール、N-ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0130】
その他のビニル単量体としては、例えば、ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどの(メタ)アクリル酸誘導体等が挙げられる。
【0131】
上記ビニル単量体は、1種単独で、又は2種以上を組み合せて使用することができる。
【0132】
また、ビニル単量体としては、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等のイオン性解離基を有する単量体を用いることが好ましい。具体的には、以下のものが挙げられる。
【0133】
カルボキシ基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマル酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル等が挙げられる。
【0134】
スルホン酸基を有する単量体としては、スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等が挙げられる。
【0135】
リン酸基を有する単量体としては、アシドホスホオキシエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0136】
さらに、ビニル単量体として多官能性ビニル類を使用し、ビニル重合体を架橋構造を有するものにしてもよい。
【0137】
多官能性ビニル類としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等が挙げられる。
【0138】
トナー母体粒子の非晶性ビニル樹脂の含有率は、特に限定されず、上述の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHC[kJ/g]の比率を制御するために適宜調整し得る。
【0139】
続いて、非晶性ポリエステル樹脂について説明する。非晶性ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸成分(多価カルボン酸成分)と、2価以上のアルコール成分(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂のうち、明確な融点を有さず、比較的高いガラス転移点Tgを有する樹脂である。このことは、非晶性ポリエステル樹脂について、示差走査熱量測定(DSC)を行うことによって確認できる。また、結晶性ポリエステル樹脂を構成する単量体とは異なるため、例えば、NMR等の分析によっても結晶性ポリエステル樹脂と区別することができる。
【0140】
非晶性ポリエステル樹脂については特に制限はなく、本技術分野における従来公知の非晶性ポリエステル樹脂が用いられ得る。
【0141】
非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価カルボン酸成分としては、不飽和脂肪族多価カルボン酸、芳香族多価カルボン酸、及びこれらの誘導体を用いることが好ましい、また、結晶性ポリエステル樹脂との相溶がより促進され、低温定着性が向上する観点から、不飽和脂肪族多価カルボン酸を含むことがより好ましい。非晶性の樹脂を形成することができるのであれば、飽和脂肪族多価カルボン酸を併用してもよい。多価カルボン酸成分は、1種類のものに限定されるものではなく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0142】
不飽和脂肪族多価カルボン酸としては、例えば、不飽和脂肪族ジカルボン酸、不飽和脂肪族トリカルボン酸、不飽和脂肪族テトラカルボン酸等が挙げられる。また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3-ヘキセンジオイック酸、3-オクテンジオイック酸、炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルケニル基で置換されたコハク酸等が挙げられる。不飽和脂肪族トリカルボン酸としては、3-ブテン-1,2,3-トリカルボン酸、4-ペンテン-1,2,4-トリカルボン酸、アコニット酸等が挙げられる。不飽和脂肪族テトラカルボン酸としては、4-ペンテン-1,2,3,4-テトラカルボン酸等が挙げられる。
【0143】
炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルケニル基で置換されたコハク酸の具体例としては、ドデシルコハク酸、ドデセニルコハク酸、オクテニルコハク酸、デセニルコハク酸等が挙げられる。また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。
【0144】
芳香族多価カルボン酸としては、例えば、芳香族ジカルボン酸、芳香族トリカルボン酸、芳香族テトラカルボン酸、芳香族ヘキサカルボン酸等が挙げられる。また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-フェニレン二酢酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸等が挙げられる。芳香族トリカルボン酸としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸(トリメシン酸)、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、ヘミメリット酸等が挙げられる。芳香族テトラカルボン酸としては、ピロメリット酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸等が挙げられる。芳香族ヘキサカルボン酸としては、メリト酸等が挙げられる。
【0145】
飽和脂肪族多価カルボン酸の例としては、上述の結晶性ポリエステル樹脂の項で挙げた多価カルボン酸成分のうち、飽和脂肪族ジカルボン酸(例えば、ドデカン二酸など)が挙げられる。
【0146】
ジカルボン酸の炭素数は特に制限されないが、特に、熱特性を適正化させやすいことから、1~20の範囲内が好ましく、2~15の範囲内がより好ましく、3~12の範囲内がと特に好ましい。
【0147】
3価以上の多価カルボン酸成分の炭素数は特に制限されないが、特に、熱特性を適正化させやすいことから、3~20の範囲内が好ましく、5~15の範囲内がより好ましく、6~12の範囲内が特に好ましい。
【0148】
非晶性ポリエステル樹脂を構成する多価アルコール成分としては、帯電性やトナー強度の観点から、不飽和脂肪族多価アルコール、芳香族多価アルコール及びこれらの誘導体を用いることが好ましい。非晶性ポリエステル樹脂を形成することができれば、飽和脂肪族多価アルコールを併用してもよい。多価アルコール成分は、1種類のものに限定されるものではなく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0149】
不飽和脂肪族多価アルコールとしては、例えば、2-ブテン-1,4-ジオール、3-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、3-ブチン-1,4-ジオール、9-オクタデセン-7,12-ジオール等の不飽和脂肪族ジオールが挙げられる。また、これらの誘導体を用いることもできる。
【0150】
芳香族多価アルコールとしては、例えば、ビスフェノール類、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等)付加物、1,3,5-ベンゼントリオール、1,2,4-ベンゼントリオール、1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。また、これらの誘導体を用いることもできる。ビスフェノール類としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF等が挙げられる。これらの中でも、特にトナーの帯電均一性を向上させると共に、熱特性を適正化しやすいという観点から、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物を用いることが好ましい。
【0151】
飽和脂肪族多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。また、これらの誘導体を用いることもできる。
【0152】
多価アルコール成分の炭素数は特に制限されないが、特に、熱特性を適正化させやすいことから、3~30の範囲内が好ましい。
【0153】
非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwは、特に制限されないが、5000~100000の範囲内が好ましく、5000~50000の範囲内であることがより好ましい。重量平均分子量Mwが5000以上であれば、トナーの耐熱保管性を向上させることができ、100000以下であれば、定着性をより向上させることができる。
【0154】
トナー母体粒子の非晶性ポリエステル樹脂の含有率は、特に限定されず、上述の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHC[kJ/g]の比率を制御するために適宜調整し得る。
【0155】
非晶性ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分を重縮合する(エステル化する)ことにより当該樹脂を製造することができる。
【0156】
エステル化触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物、アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物、亜リン酸化合物、リン酸化合物、アミン化合物等が挙げられる。スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩等が挙げられる。チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド、ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート、チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどのチタンキレート等が挙げられる。ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウム等が挙げられるアルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウムなどの酸化物、アルミニウムアルコキシド、トリブチルアルミネート等が挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0157】
重縮合の温度は特に限定されるものではないが、150~250℃の範囲内であることが好ましい。また、重縮合の時間は特に限定されるものではないが、0.5~15時間の範囲内であることが好ましい。重縮合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
【0158】
また、非晶性ポリエステル樹脂は、多価アルコール成分と多価カルボン酸成分との重縮合反応によって合成される非晶性ポリエステル重合セグメントと、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントとが共重合したハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂としてもよい。
【0159】
非晶性ポリエステル重合セグメントとは、非晶性ポリエステル樹脂に由来する部分を示す。また、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントとは、ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂に由来する部分を示す。
【0160】
ポリエステル樹脂以外の非晶性樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、ウレタン樹脂、ウレア樹脂等が挙げられる。中でも、ビニル樹脂が好ましく、スチレン・アクリル樹脂がより好ましい。ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0161】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル重合セグメントと、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントとを含むものであれば、ブロック共重合体、グラフト共重合体などいずれの形態であってもよい。
【0162】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂には、さらに、スルホン酸基、カルボキシ基、ウレタン基などの置換基が導入されていてもよい。これらの置換基の導入は、非晶性ポリエステル重合セグメント中でもよいし、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメント中であってもよい。
【0163】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の製造方法は、非晶性ポリエステル重合セグメントとポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントとを共重合させることが可能な方法であれば、特に制限されるものではない。ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂の具体的な製造方法としては、例えば、以下に示す方法が挙げられる。
【0164】
(A)非晶性ポリエステル重合セグメントを予め重合しておき、当該非晶性ポリエステル重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントを形成するための単量体を反応させることにより、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントを形成する方法。
(B)ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントを予め重合しておき、当該非晶性重合セグメントに両反応性単量体を反応させ、さらに、非晶性ポリエステル重合セグメントを形成するための多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分を反応させることにより、非晶性ポリエステル重合セグメントを形成する方法。
(C)非晶性ポリエステル重合セグメント及びポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントをそれぞれ予め重合しておき、これらに両反応性単量体を反応させることにより、両者を結合させる方法。
【0165】
両反応性単量体や、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントを構成する単量体については、上述のハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の製造方法の項に記載したものと同様である。
【0166】
ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントの形成方法は、特に制限されず、上記単量体の重合に通常用いられる過酸化物、過硫化物、過硫酸塩、アゾ化合物などの任意の重合開始剤を用い、塊状重合、溶液重合、乳化重合法(乳化会合法)、ミニエマルション法、分散重合法など公知の重合手法により重合を行う方法が挙げられる。
【0167】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂における非晶性ポリエステル重合セグメントの含有割合は、特に制限されないが、60~95質量%の範囲内が好ましく、70~85質量%の範囲内がより好ましい。
【0168】
ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂におけるポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントの含有割合(以下、「変性量」ともいう。)は、5~40質量%の範囲内が好ましく、10~30質量%の範囲内がより好ましい。
【0169】
変性量は、具体的には、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂を合成するために用いられる樹脂原料の全質量に対する、ポリエステル樹脂以外の非晶性重合セグメントを構成する単量体の合計の質量の割合をいう。
【0170】
<2.1.3 ワックス>
本発明に係る第1トナー母体粒子及び第2トナー母体粒子は、離型剤としてワックスを含有することができる。ワックスとしては、公知の種々のワックスを用いることができる。
【0171】
ワックスとしては、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンポリエチレン共重合体ワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、サゾールワックス等の炭化水素系ワックス及びそれらの酸化物;カルナウバワックス、モンタンワックス及びそれらの脱酸ワックス、脂肪酸エステルワックス等のエステル系ワックス;脂肪酸アミド類、脂肪酸類、高級アルコール類、脂肪酸金属塩等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を用いることができる。これらの中では、耐久性の観点から、カルナウバワックスが好ましい。
【0172】
ワックスの融点は、トナーの転写性の観点から、好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、そして、定着性の観点から、好ましくは160℃以下、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは130℃以下、さらに好ましくは120℃以下である。
【0173】
ワックスの融点は、例えば、示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製)を用いて、次の方法で測定することができる。
【0174】
まず、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、昇温速度10℃/分で200℃まで昇温し、その温度から降温速度5℃/分で-10℃まで冷却する。次に試料を昇温速度10℃/分で180℃まで昇温し測定する。そこで得られる融解吸熱カーブから観察される吸熱の最高ピーク温度をワックスの融点とする。
【0175】
ワックスの使用量は、トナーの定着性と耐オフセット性の観点及び結着樹脂中への分散性の観点から、結着樹脂100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、そして、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下、さらに好ましくは7質量部以下である。
【0176】
<2.1.4 その他添加剤>
本発明に係る第1トナー母体粒子及び第2トナー母体粒子は、必要に応じてその他添加剤を含有することができる。その他添加剤としては、荷電制御剤、磁性粉、流動性向上剤、導電性調整剤、繊維状物質等の補強充填剤、酸化防止剤、クリーニング性向上剤等が挙げられる。
【0177】
荷電制御剤は、摩擦帯電により正又は負の帯電を与えることのできる物質であり、かつ無色のものであれば特に限定されず、公知の種々の正帯電性の荷電制御剤及び負帯電性の荷電制御剤を用いることができる。
【0178】
トナー母体粒子中の荷電制御剤の含有量は、0.01~30質量%の範囲内が好ましく、0.1~10質量%の範囲内がより好ましい。
【0179】
<2.2 外添剤>
トナーの流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するために、トナー母体粒子の表面に、外添剤を付着させることが好ましい。
【0180】
外添剤は、無機微粒子であっても有機微粒子であってもよい。無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化錫、酸化亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛などのステアリン酸化合物、チタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などのチタン酸化合物等が挙げられる。有機微粒子としては、メラミン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂等の樹脂微粒子や、スチレン、メチルメタクリレートなどの単独重合体、又はこれらの共重合体からなる微粒子等が挙げられる。これらは、一種単独で用いても、二種以上併用してもよい。
【0181】
中でも、シリカであることが好ましく、トナーの転写性の観点から、疎水化処理された疎水性シリカであることがより好ましい。
【0182】
シリカ粒子の表面を疎水化するための疎水化処理剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルジクロロシラン(DMDS)、シリコーンオイル、オクチルトリエトキシシラン(OTES)、メチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0183】
外添剤の平均粒径は、トナーの帯電性、流動性及び転写性の観点から、10~250nmの範囲内であることが好ましく、15~200nm範囲内であることがより好ましく、15~90nmの範囲内であることが更に好ましい。
【0184】
なお、上記平均粒径は、数平均粒径であり、走査型電子顕微鏡(SEM)写真から500個の粒子の粒径(長径と短径の平均値)を測定し、それらの数平均値として求められる。
【0185】
トナー粒子における外添剤の含有量は、トナーの帯電性、流動性及び転写性の観点から、外添剤で処理する前のトナーの全質量に対して、0.05~5質量%の範囲内であることが好ましく、0.1~3質量%の範囲内であることがより好ましく、0.3~3質量%の範囲内であることが更に好ましい。
【0186】
外添剤によるトナー母体粒子の被覆率は、トナーの流動性及び耐久性の観点から、50%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましく、95%以上であることが特に好ましい。また、感光体への外添剤移行防止の観点から、200%以下であることが好ましく、170%以下であることがより好ましく、150%以下であることが更に好ましい。
【0187】
なお、外添剤によるトナー母体粒子の被覆率は、下記式より算出できる。また、外添剤を二種以上併用した場合の、外添剤による総被覆率は、各外添剤について算出した被覆率の総和とする。
【0188】
被覆率(%)=(√3/2π)×{(D・ρt)/(d・ρs)}×C×100
【0189】
式中、Dはトナー母体粒子の体積基準のメジアン径D50[μm]、dは外添剤の数平均粒径[μm]、ρtはトナー母体粒子の比重、ρsは外添剤の比重、Cはトナー母体粒子に対する外添剤の質量比(外添剤/トナー母体粒子)を示す。
【0190】
<3 トナー母体粒子の粒径>
第1トナー母体粒子及び第2トナー母体粒子の粒径は、特に限定されず、それぞれ調整され得るが、体積基準のメジアン径D50が4~10μmの範囲内であることが好ましく、4~7μmの範囲内であることがより好ましい。体積基準のメジアン径D50が上記範囲内にあることにより、転写効率が高くなり、細線やドット等の画質が向上する。
【0191】
トナー粒子の体積基準のメジアン径D50は、「コールターカウンター3」(ベックマン・コールター株式会社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター株式会社製)を接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。
【0192】
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、例えば、界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー粒子分散液を調製する。このトナー粒子分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター株式会社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。
【0193】
ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を50μmにし、測定範囲である1μmから30μmまでの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒径が体積基準のメジアン径D50とされる。
【0194】
<4 トナーの製造方法>
本発明のトナーセットが含む各トナーの製造方法は、特に限定されず、公知の方法を採用できるが、特に、乳化重合凝集法や乳化凝集法を好適に採用できる。
【0195】
乳化凝集法は、溶媒に溶解した結着樹脂溶液に貧溶媒を滴下して転相乳化を行ったのちに脱溶媒することで、樹脂微粒子分散液とし、この樹脂微粒子分散液と顔料分散液等とを混合し、所望のトナー粒子の径となるまで凝集させ、更に結着樹脂微粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー粒子を製造する方法である。
【0196】
乳化凝集法によるトナー母体粒子の製造方法を構成する各工程の一例を以下に示す。
(1)水系媒体中に顔料粒子が分散されてなる顔料分散液を調製する工程
(2)水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した結着樹脂粒子が分散されてなる樹脂微粒子分散液を調製する工程
(3)顔料分散液と樹脂微粒子分散液とを混合して、顔料粒子及び結着樹脂粒子を凝集、会合、融着させてトナー母体粒子を形成する工程
(4)トナー母体粒子の分散系(水系媒体)からトナー母体粒子を濾別し、界面活性剤等を除去する工程
(5)トナー母体粒子を乾燥する工程
(6)トナー母体粒子に外添剤を添加する工程
【0197】
上記(3)の工程において、アニール処理を行うことが好ましい。アニール処理によって、トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHCを制御することができ、ひいては、第1トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHC1と第2トナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHC2の比率(ΔHC1/ΔHC2)を制御し得る。
【0198】
また、上記(3)の工程においては、結着樹脂粒子等を凝集させるために凝集剤を添加することが好ましい。凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属の塩から選択されるものが好適に使用される。例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩等の一価の金属の塩、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅等の二価の金属の塩、鉄、アルミニウム等の三価の金属の塩等が挙げられる。具体的な塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等を挙げることができ、これらの中で特に好ましくは二価の金属の塩である。二価の金属の塩を使用すると、より少量で凝集を進めることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0199】
以下に、上記(3)の工程の一例について、具体的に記載する。
【0200】
撹拌装置、温度センサー及び冷却管を取り付けた反応容器に、結晶性ポリエステル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂や非晶性ビニル樹脂などの結着樹脂の粒子の分散液と、顔料分散液を投入し、凝集剤(例えば、塩化マグネシウム。)の溶液を、撹拌下、添加し、上記結着樹脂の粒子や着色剤の粒子を凝集、会合、融着させ、粒子を成長させる。所望のタイミングで、塩化ナトリウムの水溶液を添加して、粒径の成長を停止させる。次いで、昇温して撹拌し、トナー粒子の平均円形度が所望の値になるまで粒子の融着を進行させ、冷却し、液温を下げる。
【0201】
その後、アニール処理として、撹拌しつつ、例えば、30分ほどかけて60℃まで昇温し、3時間ほど前記温度を維持する。その後冷却し30℃以下まで液温を下げる。その後、工程(4)~(6)を経ることで本発明の静電荷現像用トナーを製造することができる。
【0202】
また、トナー母体粒子は、コア・シェル構造を有することが好ましく、上記乳化凝集法によるトナーの製造方法は、当該コア・シェル構造を有するトナー母体粒子の作製に適している。すなわち、まず、コア粒子用の結着樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集、会合、融着させ、コア粒子を調製する。続いて、コア粒子の分散液中にシェル層用の結着樹脂粒子を添加し、コア粒子表面にシェル層用の結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル層を形成する。これにより、コア・シェル構造のトナー母体粒子を得ることができる。
【0203】
上記(6)の工程におけるトナー母体粒子に対する外添剤の外添混合処理は、機械式混合装置を用いることができる。機械式混合装置としては、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、タービュラーミキサー等が使用できる。これらの中で、ヘンシェルミキサーのように処理される粒子に剪断力を付与できる混合装置を用いて、混合時間を長くする又は撹拌羽根の回転周速を上げる等の混合処理を行うことが好ましい。また、複数種類の外添剤を使用する場合、トナー母体粒子に対して全ての外添剤を一括で混合処理するか、又は外添剤に応じて複数回に分けて分割して混合処理してもよい。
【0204】
また、上記の(3)の工程以外の工程、すなわち、上記の(1)、(2)及び(4)~(6)の工程は、特に限定されず、公知の方法を好適に採用することができる。また、本願発明の効果発現を阻害しない範囲であれば、上記(1)~(6)の工程以外の公知の工程を採用することができる。
【0205】
<5 二成分現像剤>
本発明のトナーセットが含む各トナーは、例えば、トナーとキャリア粒子とを含有する、二成分現像剤として使用できる。二成分現像剤は、トナーとキャリア粒子とを混合することにより、得られる。
【0206】
混合の際に用いられる混合装置としては、特に制限されないが、例えば、ナウターミキサー、Wコーン及びV型混合機等が挙げられる。二成分現像剤中のトナーの含有量(トナー濃度)は、特に制限されないが、4.0~12.0質量%の範囲内であることが好ましい。
【0207】
キャリア粒子は、少なくとも磁性体により構成され、公知のものを使用できる。例えば、キャリア粒子の構成としては、少なくとも磁性体からなる芯材粒子の表面に樹脂を被覆した被覆型キャリア粒子、樹脂中に磁性体微粉末が分散されてなる分散型キャリア粒子等が挙げられる。
【0208】
キャリア粒子の平均粒径は、トナー母体粒子と同様の方法で測定される体積基準のメジアン径D50として、10~500μmの範囲内であることが好ましく、30~100μmの範囲内であることがより好ましい。
【0209】
キャリア粒子は、感光体に対するキャリア粒子の付着を抑制する観点から、被覆型キャリア粒子であることが好ましい。以下、被覆型キャリア粒子について説明する。
【0210】
被覆型キャリア粒子をおける芯材粒子は、少なくとも磁性体、例えば、磁場によってその方向に強く磁化する物質、によって構成される。磁性体の例としては、鉄、ニッケル及びコバルトなどの強磁性を示す金属、これらの金属を含む合金又は化合物、及び、熱処理することにより強磁性を示す合金、が挙げられる。これらの磁性体は、一種単独で用いても、二種以上併用してもよい。
【0211】
強磁性を示す金属、及び、これらの金属を含む合金又は化合物の例としては、鉄、下記式(a)で表わされるフェライト、及び、下記式(b)で表わされるマグネタイト、が挙げられる。式(a)及び式(b)中のMは、1価又は2価の金属を表し、具体的には、Mn、Fe、Ni、Co、Cu、Mg、Sr、Zn、Cd又はLiが挙げられる。これらの金属は、一種単独で用いても、二種以上併用してもよい。
式(a):MO・Fe2O3
式(b):MFe2O4
【0212】
また、熱処理することにより強磁性を示す合金の例としては、マンガン-銅-アルミニウム及びマンガン-銅-錫などのホイスラー合金、並びに、二酸化クロム、が挙げられる。
【0213】
キャリア粒子を構成する芯材粒子の磁化は、飽和磁化が30~75A・m2/kgの範囲内、残留磁化が5.0A・m2/kg以下であることが好ましい。このような磁気特性を有する芯材粒子を用いることにより、キャリア粒子が部分的に凝集することが防止され、現像剤搬送部材の表面に二成分現像剤が均一分散されるため、濃度ムラがなく、均一で高精細のトナー画像を形成することができる。
【0214】
芯材粒子に用いられる磁性体としては、好適な磁気特性が得られる観点から、フェライトであることが好ましい。また、フェライトは、空孔を有する多孔質粒子であり、さらに、空孔に樹脂を充填した粒子であることが好ましい。このような構成とすることにより、比重を比較的小さくすることができるため、現像機内における撹拌の衝撃力によるキャリア粒子の割れや欠けを抑制でき、優れた耐久性のキャリア粒子が得られる。
【0215】
被覆型キャリア粒子を構成する被覆用樹脂としては、キャリア粒子の芯材粒子の被覆に利用される公知の樹脂を使用できる。キャリア粒子の水分吸着性を低減させる観点、及び、被覆層の芯材粒子との密着性を高める観点から、被覆用樹脂としては、シクロアルキル基を有する樹脂であることが好ましい。
【0216】
シクロアルキル基の例としては、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基及びシクロデシル基が挙げられる。中でも、シクロヘキシル基又はシクロペンチル基であることが好ましく、被覆用樹脂の層と芯材粒子(例えば、フェライト粒子)との密着性の観点から、シクロへキシル基であることがより好ましい。
【0217】
被覆用樹脂は、例えば、シクロアルキル基を有する単量体を含む重合性化合物を重合して得られる。シクロアルキル基を有する単量体としては、メタクリル酸のシクロアルキルエステルを用いることが好ましい。被覆用樹脂は、当該単量体とシクロアルキル基を有しない単量体、例えば、メタクリル酸のアルキル(ただし、環状構造を有しない)エステルとの共重合体であってもよい。
【0218】
被覆用樹脂の重量平均分子量Mwは、GPC(gel permeation chromatography)により測定でき、ポリスチレン基準として、例えば、10000~800000の範囲内であることが好ましく、100000~750000の範囲内であることが好ましい。
【0219】
被覆用樹脂におけるシクロアルキル基の含有量は、10~90質量%の範囲内であることが好ましい。被覆用樹脂におけるシクロアルキル基の含有量は、例えば、熱分解-ガスクロマトグラフ/質量分析(P-GC/MS)や1H-NMR等によって求めることができる。
【0220】
キャリア粒子における被覆用樹脂の層の厚さは、キャリア粒子の耐久性と低電気抵抗化の両立の観点から、0.05~4.0μmの範囲内であることが好ましく、0.2~3.0μmの範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であることにより、帯電性と耐久性を好ましい範囲に設定することができる。
【0221】
<6 画像形成>
本発明のトナーセットを用いる画像形成システム及び画像形成方法について説明する。
【0222】
図1は、画像形成システムの一例を示す断面概要図である。
図1では、カラートナーとしてイエローY、マゼンタM、シアンC、黒色Kの4種のトナーを用い、特色トナーとして白色Wのトナーを用いた例を示す。これらの5種のトナーのうち2種は、本発明のトナーセットが含む第1トナー及び第2トナーが用いられる。
【0223】
まず、検知センサー、二次転写装置が装着されているカラー電子写真用の画像形成システムについてその概略を説明する。
【0224】
画像形成システムGSは、タンデム型カラー画像形成システムと称せられるもので、中間転写体36の移動方向に沿ってイエロー、マゼンタ、シアン及び黒色の各カラートナー像及び特色トナーの1種である白色トナー像を形成する画像形成ユニットを配置し、各画像形成ユニットの像担持体上に形成したカラートナー像及び白色トナー像を中間転写体上に多重転写して重ね合わせた後、記録媒体上に一括転写するものである。
【0225】
図1において、画像形成システムGSの上部を占める位置に配設される画像読取装置SC上に載置された原稿画像が光学系により走査露光され、ラインイメージセンサーCCDに読み込まれ、ラインイメージセンサーCCDにより光電変換されたアナログ信号は、画像処理部において、アナログ処理、A/D変換、シェーディング補正、画像圧縮処理等を行った後、画像書込手段としての露光光学系33に画像データ信号を送る。
【0226】
中間転写体36としてはドラム式のものや無端ベルト式のものがあり、いずれも同じような機能を有するものであるが、以下の説明においては中間転写体としては無端ベルト状の中間転写体36を指すことにする。
【0227】
また、
図1において、中間転写体36の周縁部には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒色(K)及び白色(W)の各色毎の画像形成用として5組のプロセスユニット100が設けられている。プロセスユニット100はカラートナー像及び白色トナー像の形成手段として、図の矢印で示す鉛直方向の中間転写体36の回転方向に対して、中間転写体36に沿って垂直方向に縦列配置され、Y、M、C、K、Wの順に配置されている。
【0228】
5組のプロセスユニット100はいずれも共通した構造であり、それぞれ、感光体ドラム31と、帯電手段としての帯電器32と、画像書込手段としての露光光学系33と、現像装置(現像機)34と、像担持体クリーニング手段としての感光体クリーニング装置190とからなっている。
【0229】
感光体ドラム31は、例えば、外径が40~100mm程度のアルミニウム等の金属性の部材によって形成される円筒状の基体の外周に、厚さ20~40μm程度の感光層を形成したものである。感光体ドラム31は、図示しない駆動源からの動力により、基体を接地された状態で矢印の方向に、例えば80~280mm/s程度で、好ましくは220mm/sの線速度で回転される。
【0230】
感光体ドラム31の周りには、帯電手段としての帯電器32、画像書込手段としての露光光学系33、現像装置(現像機)34を1組とした画像形成部が、図の矢印にて示す感光体ドラム31の回転方向に対して配置される。
【0231】
帯電手段としての帯電器32は、感光体ドラム31の回転軸に平行な方向で感光体ドラム31と対峙し近接して取り付けられる。帯電器32は、感光体ドラム31の感光層に対し所定の電位を与えるコロナ放電電極としての放電ワイヤを備え、トナーと同極性のコロナ放電によって帯電作用(本実施形態においてはマイナス帯電)を行い、感光体ドラム31に対し一様な電位を与える。
【0232】
画像書込手段である露光光学系33は、不図示の半導体レーザー(LD)光源から発光されるレーザー光を、回転多面鏡(符号なし)により主走査方向に回転走査し、fθレンズ(符号なし)、反射ミラー(符号なし)等を経て感光体ドラム31上を画像信号に対応する電気信号による露光(画像書込)を行い、感光体ドラム31の感光層に原稿画像に対応する静電潜像を形成する。
【0233】
現像手段としての現像装置34は、感光体ドラム31の帯電極性と同極性に帯電されたイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、黒色(K)及び白色(W)の各色の2成分現像剤を収容し、例えば厚さ0.5~1mm、外径15~25mmの円筒状の非磁性のステンレス又はアルミニウム材で形成された現像剤担持体である現像ローラー34aを備えている。現像ローラー34aは、突き当てコロ(不図示)により感光体ドラム31と所定の間隙、例えば100~1000μmを空けて非接触に保たれ、感光体ドラム31の回転方向と同方向に回転するようになっており、現像時、現像ローラー34aに対してトナーと同極性(本実施形態においてはマイナス極性)の直流電圧又は直流電圧に交流電圧を重畳する現像バイアス電圧を印加することにより、感光体ドラム31上の露光部に対して反転現像が行われる。
【0234】
中間転写体36は、体積抵抗率が1.0×107~1.0×109Ω・cm程度で、表面抵抗率が1.0×1010~1.0×1012Ω/□程度の半導電性の無端状(シームレス)の樹脂ベルトが用いられる。樹脂ベルトとしては、変性ポリイミド、熱硬化ポリイミド、エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ナイロンアロイ等のエンジニアリングプラスチックに導電材料を分散した厚さ0.05~0.5mmの半導電性の樹脂フィルムを用いることができる。中間転写体36としては、この他に、シリコーンゴム又はウレタンゴム等に導電材料を分散した厚さ0.5~2.0mmの半導電性ゴムベルトを使用することもできる。中間転写体36はテンションローラー36a及び二次転写部材と対峙するバックアップローラー36Bを含む複数のローラー部材により巻回され、鉛直方向に回動可能に支持されている。
【0235】
各色毎の第1の転写手段としての一次転写ローラー37は、例えばシリコーンやウレタン等の発泡ゴムを用いたローラー状の導電性部材からなり、中間転写体36を挟んで各色毎の感光体ドラム31に対向して設けられ、中間転写体36の背面を押圧して感光体ドラム31との間に転写域を形成する。一次転写ローラー37には定電流制御によりトナーと反対極性(本実施形態においてはプラス極性)の直流定電流が印加され、転写域に形成される転写電界によって、感光体ドラム31上のトナー像が中間転写体36上に転写される。
【0236】
中間転写体36上に転写されたトナー像は、記録媒体Pに転写される。中間転写体36の周上には、パッチ像トナーの濃度を測定する検知センサー38が設置されている。
【0237】
転写された記録媒体Pを定着する定着装置47には、加熱ローラー47aと加圧ベルト47bとが設けられており、これらによりニップ部が形成されている。よって、記録媒体P上に転写された複数のトナー層のうち、上層(トナー層)と接する定着部材は、
図1では、加熱ローラー47aとなる。
【0238】
なお、高速プリントに対応するために定着ベルトで定着する、従来公知の定着装置(図示せず)を用いてもよい。かかる定着ベルトで定着する装置を用いた定着方法では、未定着のトナー画像を担持する記録媒体Pは、定着装置に送られ、案内板に案内されながらニップ部に案内される。そして、定着ベルトが記録媒体Pに密着することによって、未定着のトナー画像は、速やかに記録媒体Pに定着される。また、記録媒体Pは、定着ニップ部の下流端で、気流分離装置からの気流を受ける。このため、記録媒体Pの定着ベルトからの分離が促進される。定着ベルトから分離した記録媒体Pは、案内ローラーにより、画像形成システム外に向けて案内される。
【0239】
定着装置47の下流側には、定着された記録媒体Pを、挟持して排紙するための排紙ローラー54と、機外に排紙された記録媒体Pを載置するための排紙トレイ55が設けられている。
【0240】
一方、中間転写体36上の残留トナーをクリーニングするために、クリーニング装置190Aが設けられている。
【0241】
さらに、二次転写部材37A上のパッチ像トナーをクリーニングするために、二次転写装置70が設けられている。
【0242】
次に、画像形成方法について説明する。
【0243】
画像記録のスタートにより不図示の感光体駆動モータの始動により、イエロー(Y)の感光体ドラム31が図の矢印で示す方向へ回転され、Yの帯電器32によってYの感光体ドラム31に電位が付与される。Yの感光体ドラム31は電位を付与された後、Yの露光光学系33によって第1の色信号すなわちYの画像データに対応する電気信号による露光(画像書込)が行われ、Yの感光体ドラム31上にイエロー(Y)の画像に対応する静電潜像が形成される。この潜像はYの現像装置34により反転現像され、Yの感光体ドラム31上にイエロー(Y)のトナーからなるトナー像が形成される。Yの感光体ドラム31上に形成されたYのトナー像は一次転写手段としての一次転写ローラー7により中間転写体36上に転写される。
【0244】
次いで、マゼンタ(M)の帯電器32によってMの感光体ドラム31に電位が付与される。Mの感光体ドラム31は電位を付与された後、Mの露光光学系33によって第1の色信号すなわちMの画像データに対応する電気信号による露光(画像書込)が行われ、Mの感光体ドラム31上にマゼンタ(M)の画像に対応する静電潜像が形成される。この潜像はMの現像装置34により反転現像され、Mの感光体ドラム31上にマゼンタ(M)のトナーからなるトナー像が形成される。Mの感光体ドラム31上に形成されたMのトナー像は、一次転写手段としての一次転写ローラー37によりYのトナー像に重ね合わせて中間転写体36上に転写される。
【0245】
同様のプロセスにより、シアン(C)の感光体ドラム31上に形成されたシアン(C)のトナーからなるトナー像と、黒色(K)の感光体ドラム31上に形成された黒色(K)のトナーからなるトナー像が順次中間転写体36上に重ね合わせて形成され、中間転写体36の周面上に、Y、M、C及びKのトナーからなる重ね合わせのカラートナー像が形成される。
【0246】
次いで、白色(W)の感光体ドラム31が図の矢印で示す方向へ回転され、Wの帯電器32によってWの感光体ドラム31に電位が付与される。Wの感光体ドラム31は電位を付与された後、Wの露光光学系33によって第1の色信号すなわちWの画像データに対応する電気信号による露光(画像書込)が行われ、Wの感光体ドラム31上に白色(W)の画像に対応する静電潜像が形成される。この潜像はWの現像装置34により反転現像され、Wの感光体ドラム31上に白色(W)トナーからなるトナー像が形成される。Wの感光体ドラム31上に形成されたWのトナー像は一次転写手段としての一次転写ローラー7により中間転写体36上に転写される。これにより、中間転写体36の周面上に、Y、M、C及びKのトナーからなる重ね合わせのカラートナー像、該カラートナー像上に、Wのトナーからなる白色トナー像が形成される。
【0247】
転写後のそれぞれの感光体ドラム31の周面上に残ったトナーは感光体クリーニング装置190によりクリーニングされる。
【0248】
一方、給紙カセット50A、50B、50C内に収容された記録紙としての記録媒体Pは、給紙カセット50A、50B、50Cにそれぞれ設けられる送り出しローラー51及び給紙ローラー52Aにより給紙され、搬送路52上を搬送ローラー52B、52C、52Dによって搬送され、レジストローラー53を経て、トナーと反対極性(本実施形態においてはプラス極性)の電圧が印加される二次転写手段としての二次転写部材37Aに搬送され、二次転写部材37Aの転写域において、中間転写体36上に形成された重ね合わせのカラートナー像と、該カラートナー像上の白色トナー像が記録媒体P上に一括して転写される。これにより、記録媒体P上に、下層が白色トナー像であり、上層がカラートナー像である画像が形成される。
【0249】
図1の例では、白色トナー像は、カラートナー像の下層に形成される。白色トナー像上にカラートナー像を形成することで、カラートナーの視認性が向上し、画像としての付加価値を高めることができる。しかし、白色(W)トナー等の特色トナーからなるトナー像は、その使用目的に応じて、カラートナー像の下層に形成されるものであってもよい。
【0250】
白色トナー像及びカラートナー像が転写された記録媒体Pは、定着装置47の加熱ローラー47aと加圧ベルト47bとにより形成されるニップ部において加熱加圧されて定着され、排紙ローラー54に挟持されて機外の排紙トレイ55上に載置される。
【0251】
二次転写手段としての二次転写部材37Aにより記録媒体P上に白色トナー像及びカラートナー像が転写された後、記録媒体Pを曲率分離した中間転写体36上の残留トナーは、中間転写体クリーニング装置190Aにより除去される。
【0252】
更に、二次転写部材37A上のパッチ像トナーは、二次転写装置70のクリーニングブレード71によりクリーニングされる。
【0253】
本実施形態の画像形成方法で用いられる記録媒体(メディア、画像支持体、記録材、記録紙、記録用紙等ともいう)は、一般に用いられているものでよく、特に限定されるものではない。使用可能な記録媒体としては、例えば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙、コート紙等の塗工された印刷用紙、市販の和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布、軟質透明フィルム、ユポ紙などの合成紙等が挙げられる。本発明のトナーセットを用いた画像形成方法では、特に色紙や黒紙、アルミ蒸着紙や透明のフィルム等、特殊な記録媒体に出力する場合において、高付加価値印刷にて、フルカラー画像の上層又は下層に特色トナー層を形成して付着量が多くなった際の低温定着性及び定着分離性に優れ、さらに上層画像の隣接する層のトナーへの滲み込みを防止し、上層画像の画像濃度の低下を防ぐことができる。そのため、カラートナーの視認性が向上し、カラー画像の色再現性が良好で、かつ、色にじみ、画像はがれのない高画質で高品質な画像を形成することができ、画像としての付加価値を高めることが可能となる。
【実施例0254】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0255】
[1.シアントナー1の作製]
(1.1)非晶性ビニル樹脂微粒子分散液X1の調製
-第1段重合-
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部及びイオン交換水3000質量部を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、当該反応容器の内温を80℃に昇温させた。昇温後、得られた混合液に過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた水溶液を添加し、得られた混合液の温度を再度80℃とした。当該混合液に、下記組成からなる単量体混合液1を1時間かけて滴下後、80℃にて前記混合液を2時間加熱、撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液a1を調製した。
【0256】
(単量体混合液1)
スチレン 480質量部
n-ブチルアクリレート 250質量部
メタクリル酸 68質量部
【0257】
-第2段重合-
撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、当該溶液を80℃に加熱後、80質量部(固形分換算)の樹脂微粒子の分散液a1と、下記組成からなる単量体及び離型剤を90℃にて溶解させた単量体混合液2とを添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック社製、「CLEARMIX」は同社の登録商標)により、1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。下記炭化水素ワックス1は、離型剤であり、その融点は80℃である。
【0258】
(単量体混合液2)
スチレン 285質量部
n-ブチルアクリレート 95質量部
メタクリル酸 20質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 8質量部
炭化水素ワックス1(C80、サソール社製) 190質量部
【0259】
次いで、前記分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、得られた分散液を84℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行い、樹脂微粒子の分散液a2を調製した。
【0260】
-第3段重合-
さらに、樹脂微粒子の分散液a2にイオン交換水400質量部を添加し、十分に混合した後、得られた分散液に、過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下で、下記組成からなる単量体混合液3を1時間かけて滴下した。滴下終了後、前記分散液を2時間にわたり加熱撹拌することにより重合を行った。
【0261】
(単量体混合液3)
スチレン 307質量部
n-ブチルアクリレート 147質量部
メタクリル酸 52質量部
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 8質量部
【0262】
その後、28℃まで冷却し、ビニル樹脂(スチレン・アクリル樹脂)からなる非晶性ビニル樹脂微粒子分散液X1を調製した。
【0263】
得られた非晶性ビニル樹脂微粒子分散液X1について物性を測定したところ、非晶性ビニル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径D50は220nmであり、ガラス転移点Tgは46℃であり、重量平均分子量Mwは32000であった。
【0264】
(1.2)結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液Y1の調製
セバシン酸281質量部及び1,10-デカンジオール283質量部を、撹拌器、温度計、冷却管、窒素ガス導入管を備えた反応容器に入れた。反応容器中を乾燥窒素ガスで置換した後、Ti(OBu)4を0.1質量部添加し、得られた混合液を窒素ガス気流下、約180℃で8時間撹拌し、反応を行った。さらに、当該混合液にTi(OBu)4を0.2質量部添加し、当該混合液の温度を約220℃に上げ6時間、当該混合液を撹拌し、反応を行った。その後、反応容器内の圧力を1333.2Paまで減圧し、減圧下で反応を行い、結晶性ポリエステル樹脂P1を得た。
【0265】
結晶性ポリエステル樹脂P1の数平均分子量Mnは5500であり、重量平均分子量Mwは18000であり、融点Tmは70℃であった。
【0266】
結晶性ポリエステル樹脂P1を30質量部溶融させた状態で、乳化分散機「キャビトロンCD1010」(ユーロテック社製)へ毎分100質量部の移送速度で移送した。同時に、濃度0.37質量%の希アンモニア水を熱交換機で100℃に加熱しながら毎分0.1Lの移送速度で前記乳化分散機へ移送した。前記希アンモニア水は、水性溶媒タンクにおいて試薬アンモニア水70質量部をイオン交換水で希釈して調製した。そして、前記乳化分散機を、回転子の回転速度が60Hz、圧力が5kg/cm2(490kPa)の条件で運転することにより、固形分量が30質量部である結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液Y1を調製した。
【0267】
得られた結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液Y1について物性を測定したところ、結晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径D50は200nmであった。
【0268】
(1.3)ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液S1の調製
両反応性単量体(アクリル酸)を含む下記組成からなる、単量体混合液4を滴下ロートに入れた。なお、ジ-t-ブチルパーオキサイドは、重合開始剤である。
【0269】
(単量体混合液4)
スチレン 80質量部
n-ブチルアクリレート 20質量部
アクリル酸 10質量部
ジ-t-ブチルパーオキサイド 16質量部
【0270】
また、下記の非晶性ポリエステル重合セグメントの原料モノマーを、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した四つ口フラスコに入れ、170℃に加熱し溶解させた。
【0271】
(非晶性ポリエステル重合セグメントの原料モノマー)
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物 285.7質量部
テレフタル酸 66.9質量部
フマル酸 47.4質量部
【0272】
次いで、得られた溶液に、撹拌下で単量体混合液6を90分間かけて滴下し、60分間熟成を行った後、減圧下(8kPa)にて単量体混合液4の成分のうちの未反応のモノマーを四つ口フラスコ内から除去した。
【0273】
その後、エステル化触媒としてTi(OBu)4を四つ口フラスコ内に0.4質量部投入し、当該四つ口フラスコ中の混合液を235℃まで昇温し、常圧下(101.3kPa)にて5時間、更に減圧下(8kPa)で1時間の条件で反応を行い、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂s1を得た。ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂s1の数平均分子量はMnは10500、重量平均分子量Mwは29500であった。
【0274】
100質量部のハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂s1を、400質量部の酢酸エチル(関東化学社製)に溶解し、あらかじめ作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部と混合した。
【0275】
得られた混合液を、撹拌しながら超音波ホモジナイザー「US-150T」(日本精機製作所社製)によって、V-LEVELが300μAの条件で30分間超音波分散した。
【0276】
その後、40℃に加温した状態でダイヤフラム真空ポンプ「V-700」(BUCHI社製)を用いて前記混合液を減圧下で3時間撹拌して酢酸エチルを完全に除去した。こうして、固形分量が13.5質量%のハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液(シェル用分散液)S1を調製した。
【0277】
得られたハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液S1について物性を測定したところ、ハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂微粒子の体積基準のメジアン径D50は160nmであった。
【0278】
(1.4)シアン顔料分散液C1の調製
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に撹拌溶解し、この溶液を撹拌しながら、420質量部のC.I.ピグメントブルー18:3を徐々に添加した。次いで、得られた分散液を、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理することにより、シアン顔料分散液C1を調製した。
【0279】
シアン顔料分散液C1における顔料の体積基準のメジアン径D50を、マイクロトラック粒度分布測定装置「UPA-150」(日機装社製)を用いて測定したところ、150nmであった。
【0280】
(1.5)トナー母体粒子の製造
撹拌装置、温度センサー、冷却管を取り付けた反応容器に、288質量部(固形分換算)の非晶性ビニル樹脂微粒子分散液X1及び2000質量部のイオン交換水2000質量部を投入した後、5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を更に添加して当該反応容器中の分散液のpHを10(測定温度25℃)に調整した。
【0281】
前記分散液に、30質量部(固形分換算)のシアン顔料分散液C1を投入した。次いで、凝集剤として塩化マグネシウム30質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて前記分散液に添加した。得られた混合液を80℃まで昇温し、40質量部(固形分換算)の結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液Y1を10分間かけて前記混合液に添加して凝集を進行させた。
【0282】
「コールターマルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)にて前記混合液中で会合した粒子の粒径を測定し、当該粒子の体積基準のメジアン径D50が6.0μmになった時点で、37質量部(固形分換算)のハイブリッド非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液(シェル用分散液)S1を前記混合液に30分間かけて投入した。得られた反応液の上澄みが透明になった時点で、塩化ナトリウム190質量部をイオン交換水760質量部に溶解した水溶液を前記反応液に添加して粒子成長を停止させた。
【0283】
さらに、前記反応液を80℃に加熱し撹拌することにより、粒子の融着を進行させ、前記反応液中の粒子を測定装置「FPIA-2100」(シスメックス社製)を用いて(HPF検出数を4000個)測定し、当該粒子の平均円形度が0.945になった時点で2.5℃/分の冷却速度で前記反応液を30℃に冷却した。
【0284】
その後、撹拌しつつ、30分ほどかけて60℃まで昇温し、アニール温度60度、アニール時間3hでアニール処理を行った。その後30℃に冷却した。
【0285】
次いで、冷却した前記反応液から前記粒子を分離、脱水し、得られたケーキを、イオン交換水への再分散と固液分離とを3回繰り返して洗浄し、その後、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー母体粒子B1を得た。
【0286】
パーキンエルマー社製の示差走査型熱量計DSC-7を用いて、上述の方法でトナー母体粒子B1の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHCを測定した結果、11.5kJ/gであった。
【0287】
(1.6)外添剤の混合
100質量部のトナー母体粒子B1に、疎水性シリカ(数平均一次粒径=12nm、疎水化度=68)0.6質量部及び疎水性酸化チタン(数平均一次粒径=20nm、疎水化度=63)1.0質量部を添加し、これらを「ヘンシェルミキサー」(日本コークス工業社製)により回転翼周速35mm/秒、32℃で20分間混合した後、45μmの目開きのフルイを用いて粗大粒子を除去した。このような外添剤処理を行って、シアントナー1を作製した。
【0288】
[2.シアントナー2~4の作製]
上記シアントナー1の作製において、各分散液の投入量、及びアニール処理条件を表Iに記載のとおり変更した以外は同様にして、シアントナー2~4をそれぞれ作製した。
【0289】
シアントナー2~4におけるトナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHCは表Iに示すとおりである。
【0290】
[3.蛍光トナー1の作製]
下記式(K-1)で表される構造を有する蛍光顔料20gを、酢酸エチル450gに溶解させた。当該溶解液を、界面活性剤「アクアロンKH-05」(第一工業製薬社製)8gを含む水溶液750gへ、滴下して、撹拌した後、「クリアミックスWモーションCLM-0.8W」(エムテクニック社製)を用いて15秒間乳化処理した。その後、減圧下で酢酸エチルを除去し、蛍光顔料分散液を得た。
【0291】
【0292】
蛍光顔料分散液における顔料の体積基準のメジアン径D50を、電気泳動光散乱光度計「ELS-800」(大塚電子社製)を用いて測定したところ、4μmであった。
【0293】
上記シアントナー1の作製において、シアン顔料分散液C1の代わりに上記蛍光顔料分散液を用いて、さらに、各分散液の投入量、及びアニール処理条件を表Iに記載のとおり変更した以外は同様にして、蛍光トナー1を作製した。
【0294】
蛍光トナー1におけるトナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHCは表Iに示すとおりである。
【0295】
[4.黒色トナー1~6の作製]
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加し、この溶液を撹拌しながら、黒色顔料としてカーボンブラック(リーガル330R;キャボット社製)420質量部を徐々に添加した。次いで、機械式分散機(クレアミックス;エム・テクニック株式会社)を用いて分散処理することにより、黒色顔料分散液を得た。
【0296】
黒色顔料分散液における顔料の体積基準のメジアン径D50を、電気泳動光散乱光度計(ELS-800;大塚電子株式会社)で測定したところ、110nmであった。
【0297】
上記シアントナー1の作製において、シアン顔料分散液C1の代わりに上記黒色顔料分散液を用いて、さらに、各分散液の投入量、及びアニール処理条件を表Iに記載のとおり変更した以外は同様にして、黒色トナー1~6をそれぞれ作製した。
【0298】
黒色トナー1~6におけるトナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHCは表Iに示すとおりである。
【0299】
[5.光輝性トナー1の作製]
光輝性顔料として、ペースト状のものから溶剤を除去したアルミ顔料(昭和アルミパウダー株式会社製、260EA、平均粒径10μm)210質量部を、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム1質量%をイオン交換水480質量部に溶解した界面活性剤水溶液に投入後、超音波ホモジナイザーを用い分散を行って光輝性顔料分散液を調製した。光輝性顔料分散液中の固形分濃度(光輝性顔料の含有量)は30質量%に調整した。光輝性顔料分散液中の光輝性顔料の平均粒径は4μmであった。
【0300】
上記シアントナー1の作製において、シアン顔料分散液C1の代わりに上記光輝性顔料分散液を用いて、さらに、各分散液の投入量、及びアニール処理条件を表Iに記載のとおり変更した以外は同様にして、光輝性トナー1を作製した。
【0301】
光輝性トナー1におけるトナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHCは表Iに示すとおりである。
【0302】
[6.白色トナー1の作製]
(6.1)結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の調製
加熱乾燥した三口フラスコに、266質量部の1,12-ドデカンジカルボン酸と、169質量部の1,10-デカンジオールと、触媒として0.035質量部のテトラブトキシチタネートとを入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧し、さらに窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械撹拌にて180℃で6時間還流を行った。
【0303】
その後、減圧蒸留にて220℃まで徐々に昇温を行い2.5時間撹拌し、粘稠な状態となったところで樹脂酸価を測定し、樹脂酸価が15.0mgKOH/gになったところで、減圧蒸留を停止、空冷し結晶性ポリエステル樹脂を得た。
【0304】
得られた結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwを前述の方法にて測定したところ13000であった。また、得られた結晶性ポリエステル樹脂の融解温度を、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ73℃であった。
【0305】
次に、180質量部の上記結晶性ポリエステル樹脂を180質量部と、585質量部の脱イオン水とをステンレスビーカーに入れ、温浴につけ、95℃に加熱した。結晶性ポリエステル樹脂が溶融した時点で、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて8000rpmで撹拌し、同時に希アンモニア水を添加しpHを7.0に調整した。ついでアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR)0.8質量部を希釈した水溶液20質量部を滴下しながら、乳化分散を行い、体積平均粒径が0.23μmの結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液(樹脂微粒子濃度40質量%)を調製した。
【0306】
(6.2)非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液の調製
加熱乾燥した二口フラスコに、74質量部のアジピン酸ジメチルと、192質量部のテレフタル酸ジメチルと、216質量部のビスフェノールAエチレンオキシド付加物と、38質量部のエチレングリコールと、触媒として0.037質量部のテトラブトキシチタネートとを入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち撹拌しながら昇温した後、160℃で約7時間共縮重合反応させた。
【0307】
その後、10Torrまで徐々に減圧しながら220℃まで昇温し4時間保持した。一旦常圧に戻し、無水トリメリット酸9質量部を加え、再度10Torrまで徐々に減圧し1時間保持することにより非晶性ポリエステル樹脂を得た。
【0308】
得られた非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移点を、前述の測定方法により示差走査熱量計(DSC)を用いて測定したところ、60℃であった。得られた非晶性ポリエステル樹脂の分子量を前述の測定方法によりGPCを用いて測定したところ、重量平均分子量Mwは12000であった。また、得られた非晶性ポリエステル樹脂の酸価を測定したところ、25.0mgKOH/gであった。
【0309】
次に、115質量部の上記非晶性ポリエステル樹脂と、180質量部の脱イオン水と、5質量部のアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR)とを混合して120℃に加熱した後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理を1時間行うことにより、非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液(樹脂微粒子濃度40質量%)を調製した。
【0310】
(6.3)白色顔料分散液の調製
下記成分を混合し、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー(スギノマシン社製、HJP30006)を用いて約1.5時間分散して、白色顔料分散液W1を調製した。
【0311】
酸化チタン(石原産業社製A-220、一次粒径0.16μm) 100質量部
アニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR) 15質量部
イオン交換水 400質量部
【0312】
得られた白色顔料分散液における酸化チタンの体積平均粒径を、レーザー回折粒度測定器を用いて測定したところ、体積平均粒径は0.285μmであった。また、白色顔料分散液の固形分比率は23質量%であった。
【0313】
(6.4)離型剤分散液の調製
90質量部のフィッシャートロプシュワックスFNP92(融解温度92℃、日本精蝋社製)と、3.6質量部のアニオン性界面活性剤(第一工業製薬社製、ネオゲンR)と、369質量部のイオン交換水とを混合し、100℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで更に分散処理し、離型剤分散液を得た。得られた離型剤分散液における離型剤の体積平均粒径をレーザー回折粒度測定器を用いて測定したところ、体積平均粒径は0.23μmであった。また、離型剤分散液の固形分比率は20質量%であった。
【0314】
(6.5)トナー母体粒子の製造
結晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を5.4質量部(固形分換算)と、非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を126.6質量部(固形分換算)と、白色顔料分散液を90.0質量部(固形分換算)と、離型剤分散液を18.0質量部(固形分換算)と、脱イオン水を484質量部と、を丸型ステンレス製フラスコ中に入れて、ウルトラタラックスT50で十分に混合・分散した。
【0315】
次いで、これにポリ塩化アルミニウム0.37質量部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。さらに加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら52℃まで加熱した。52℃で3時間保持した後、ここに非晶性ポリエステル樹脂微粒子分散液を緩やかに60質量部(固形分換算)追加した。
【0316】
その後、0.5N水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを8.5にした後、ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて撹拌を継続しながら90℃まで加熱し、3.5時間保持した。
【0317】
反応終了後、冷却し、濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を施した。これを更に40℃のイオン交換水3Lに再分散し、15分間、300rpmで撹拌・洗浄した。これを更に5回繰り返し、ヌッチェ式吸引濾過によりNo.5Aろ紙を用いて固液分離を行い、次いで真空乾燥を12時間実施し、白色トナー1のトナー母体粒子を得た。
【0318】
白色トナー1のトナー母体粒子の体積基準のメジアン径D50は6.5μmであった。
【0319】
パーキンエルマー社製の示差走査型熱量計DSC-7を用いて、上述の方法でトナー母体粒子の結晶性樹脂由来のピーク吸熱量ΔHCを測定した結果、0.58kJ/gであった。
【0320】
(6.6)外添剤の混合
100質量部のトナー母体粒子に対して1質量部の疎水性シリカ粒子(日本アエロジル社製、RY-50)を加え、ヘンシェルミキサーにて外添混合を行うことで、白色トナー1を得た。
【0321】
【0322】
[7.耐熱保管性の評価]
上記作製した各トナー0.5gを内径21mmの10mLガラス瓶に取り蓋を閉めて、タップデンサーKYT-2000(セイシン企業社製)で室温にて600回振とうした後、蓋を取った状態で55℃、35%RHの環境下に2時間放置した。次いで、トナーを48メッシュ(目開き350μm)の篩上に、トナーの凝集物を解砕しないように注意しながらのせて、パウダーテスター(ホソカワミクロン社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定し、送り幅1mmの振動強度に調整し、10秒間振動を加えた後、篩上のトナー質量[g]を測定した。
【0323】
トナー凝集率[%]を下記式により算出した。
トナー凝集率[%]=篩上のトナー質量[g]/0.5g×100
【0324】
下記の基準によりトナーの耐熱保管性の評価を行った。評価結果は表IIに示すとおりである。
○:トナー凝集率が15%未満(トナーの耐熱保管性が良好)
△:トナー凝集率が15%以上(トナーの耐熱保管性が悪く、使用には好ましくない)
【0325】
[8.発色性の評価]
上記作製した各トナーに、アクリル樹脂を被覆した体積平均粒径32μmのフェライトキャリアを、トナー粒子濃度が6質量%となるように添加して混合することで、各トナーを含む二成分現像剤をそれぞれ作製した。
【0326】
市販の複合プリンタのフルカラー複写機「bizhub PRO C6501」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)の定着装置を、定着用ヒートローラの表面温度を100~210℃の範囲で変更することができるように改造した。
【0327】
改造したフルカラー複写機と各トナーを含む二成分現像剤とを用い、A4(坪量80g/m2)普通紙を縦送りで搬送し、搬送方向に垂直な方向に伸びる5mm幅のベタ帯画像を定着させた。定着温度は180℃に設定した。
【0328】
被験者3名にベタ帯画像の好ましい発色性について評価してもらった。評価の結果の発色性に優劣について以下のようなランクで表した。評価結果は表IIに示すとおりである。
○:発色性が好ましい。
△:発色性にやや難あり。
×:発色性に問題あり。
【0329】
[9.定着性の評価]
作製した各トナーを、表IIに示すとおり組み合わせて、第1トナーと第2トナーを含むトナーセット1~12とした。
【0330】
トナーセットが含む各トナーに、アクリル樹脂を被覆した体積平均粒径32μmのフェライトキャリアを、トナー粒子濃度が6質量%となるように添加して混合することで、各トナーを含む二成分現像剤をそれぞれ作製した。
【0331】
市販の複合プリンタのフルカラー複写機「bizhub PRO C6501」(コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製)の定着装置を、定着用ヒートローラの表面温度を100~210℃の範囲で変更することができるように改造した。
【0332】
改造したフルカラー複写機と各トナーを含む二成分現像剤とを用い、常温・常湿(20℃・50%RH)環境下で、プライク152g/m2(日本製紙社製)に、上層の付着量が2.5g/m2、及び下層の付着量が20g/m2となるように、未定着ベタ画像を形成した。なお、上層は第2トナーで形成し、下層は第1トナーで形成した。
【0333】
次に、定着装置の加圧ローラーの表面温度を140℃に設定し、加熱ローラーの表面温度を2℃刻みで140~180℃の範囲で変更して、定着をした。このとき、アンダーオフセットが発生しない定着上ベルトの定着下限温度を計測した。定着下限温度の計測は、上記した保管条件の異なるトナー双方に対して行った。
【0334】
定着性の評価を、以下の評価基準で行った。○及び△を合格とした。評価結果は表IIに示すとおりである。
○: 定着下限温度が、148℃以下である。
△: 定着下限温度が、150~154℃である。
×: 定着下限温度が、156℃以上である。
【0335】
【0336】
上記の評価結果から、本発明のトナーセットは、発色性、耐熱保管性、及び定着性が良好であることが分かる。