(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160264
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】空調システム及び空調方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/56 20180101AFI20231026BHJP
F24F 11/80 20180101ALI20231026BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20231026BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20231026BHJP
F24F 11/89 20180101ALI20231026BHJP
【FI】
F24F11/56
F24F11/80
F24F11/74
F24F11/64
F24F11/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070487
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 佐知
(72)【発明者】
【氏名】大平 昭義
(72)【発明者】
【氏名】吉田 征義
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA01
3L260AB02
3L260BA02
3L260CA02
3L260CA06
3L260CA12
3L260CA15
3L260CB63
3L260CB65
3L260CB85
3L260FA03
3L260FA07
3L260FC33
3L260HA01
3L260JA24
(57)【要約】
【課題】空調制御を変更する際のユーザの負担が少ない空調システム等を提供する。
【解決手段】空調システム100は、自律移動体20との間で通信を行う空気調和機10を備え、自律移動体20は、部屋R1にいる人M1の周囲の温度及び湿度のうち少なくとも一方の検出値に自律移動体20の位置情報を対応付けた環境情報を生成するとともに、部屋R1にいる人M1の撮像結果及び音声の測定結果のうち少なくとも一方を含む人情報を生成し、空気調和機10は、環境情報及び人情報の分析結果に基づいて、空調制御を変更する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律移動体との間で通信を行う空気調和機を備え、
前記自律移動体は、空調室にいる人の周囲の温度及び湿度のうち少なくとも一方の検出値に当該自律移動体の位置情報を対応付けた環境情報を生成するとともに、前記空調室にいる人の撮像結果及び音声の測定結果のうち少なくとも一方を含む人情報を生成し、
前記空気調和機は、前記環境情報及び前記人情報の分析結果に基づいて、空調制御を変更する空調システム。
【請求項2】
前記分析結果には、前記空調室にいる人の空調に関する好み情報が含まれ、
前記空気調和機は、前記好み情報に基づいて、空調の設定温度、空調風の風量及び風向のうち少なくとも一つを変更すること
を特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記分析結果には、前記空調室にいる人の空調に関する好み情報が含まれ、
前記空調制御の変更に伴う前記環境情報及び前記人情報の変化に基づいて、前記好み情報が更新されること
を特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項4】
前記自律移動体との間で通信を行うとともに、前記空気調和機との間で通信を行うサーバを備え、
前記サーバは、前記自律移動体から受信した前記環境情報及び前記人情報に基づいて、前記分析結果を生成し、当該分析結果を前記空気調和機に送信すること
を特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項5】
前記空調室には、前記サーバとの間で通信を行う家電機器が設けられ、
前記家電機器は、当該家電機器の周囲の温度を少なくとも検出するセンサを有し、
前記サーバは、前記家電機器の周囲の温度が所定範囲外である場合、前記自律移動体を前記空調室に移動させ、前記人情報及び前記環境情報を生成させること
を特徴とする請求項4に記載の空調システム。
【請求項6】
前記空調室には、前記サーバとの間で通信を行う家電機器が設けられ、
前記サーバは、前記家電機器に対して所定の操作が行われた場合、前記自律移動体を前記空調室に移動させ、前記人情報及び前記環境情報を生成させること
を特徴とする請求項4に記載の空調システム。
【請求項7】
前記空気調和機は、前記空調室を撮像する撮像部を備え、
前記撮像部の撮像結果に基づいて、前記空調室にいる人が検知された場合、前記空気調和機は、前記自律移動体を前記空調室に移動させ、前記人情報及び前記環境情報を生成させること
を特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項8】
前記空気調和機は、前記空調室を撮像する撮像部を備え、
前記撮像部の撮像結果に基づいて、前記空調室にいる人が検知された場合において、前記撮像部からは当該人の顔が見えない場合、前記空気調和機は、前記自律移動体に当該人の顔を撮像させること
を特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項9】
前記空調室にいる人の周囲の温度が所定値以上である場合、前記空気調和機は、冷房運転を開始する、又は、冷房運転の設定温度を下げる
を特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項10】
前記空調室には、第1室内機が設けられる第1空調室と、第2室内機が設けられる第2空調室と、が含まれ、
前記第1空調室と、前記第2空調室と、は隣り合っており、
前記環境情報に含まれる前記第1空調室の温度と、前記環境情報に含まれる前記第2空調室の温度と、の差の絶対値が所定値以上である場合、前記第1室内機及び第2室内機のうち少なくとも一方は、前記差の絶対値を小さくするように空調運転を行うこと
を特徴とする請求項1に記載の空調システム。
【請求項11】
自律移動体との間で通信を行う空気調和機に関する空調方法であって、
前記自律移動体は、空調室にいる人の周囲の温度及び湿度のうち少なくとも一方の検出値に当該自律移動体の位置情報を対応付けた環境情報を生成するとともに、前記空調室にいる人の撮像結果及び音声の測定結果のうち少なくとも一方を含む人情報を生成し、
前記空気調和機は、前記環境情報及び前記人情報の分析結果に基づいて、空調制御を変更する空調方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
人とロボットとの間のコミュニケーションの結果に基づいて、空調制御を変更する技術が知られている。例えば、特許文献1には、「電子機器は、当該電子機器とは異なる第1機器の状態を変更する前に、当該状態を変更することに対する了承を電子機器の周囲にいる第1人物から得て、当該了承を得たことに基づいて第1機器の状態を変更する」ことが記載されている。
また、特許文献2には、「エリアに滞在する人物に対して、エリアの環境に対する質問をロボットに行わせる質問部」を備える環境調整システムについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-83740号公報
【特許文献2】特開2019-207039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、第1機器(エアコン)の状態を変更する際、ユーザが電子機器(ロボット)に了承を与える必要があるため、ユーザにとって手間がかかる。また、特許文献2に記載の技術では、ロボットからの質問に対してユーザが答える必要があるため、ユーザにとって手間がかかる。このように、特許文献1,2のいずれにおいても、空調制御を変更する際にユーザに負担がかかるため、改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、空調制御を変更する際のユーザの負担が少ない空調システム等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明に係る空調システムは、自律移動体との間で通信を行う空気調和機を備え、前記自律移動体は、空調室にいる人の周囲の温度及び湿度のうち少なくとも一方の検出値に当該自律移動体の位置情報を対応付けた環境情報を生成するとともに、前記空調室にいる人の撮像結果及び音声の測定結果のうち少なくとも一方を含む人情報を生成し、前記空気調和機は、前記環境情報及び前記人情報の分析結果に基づいて、空調制御を変更することとした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、空調制御を変更する際のユーザの負担が少ない空調システム等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る空調システムの説明図である。
【
図2】第1実施形態に係る空調システムにおける自律移動体の説明図である。
【
図3】第1実施形態に係る空調システムの機能ブロック図である。
【
図4】第1実施形態に係る空調システムのサーバで抽出される特徴量の説明図である。
【
図5A】第1実施形態に係る空調システムにおける、空気調和機及び自律移動体のそれぞれの処理を示すフローチャートである。
【
図5B】第1実施形態に係る空調システムにおける、空気調和機及び自律移動体のそれぞれの処理を示すフローチャートである。
【
図6A】第2実施形態に係る空調システムの説明図である。
【
図6B】第2実施形態に係る空調システムの説明図である。
【
図7】第2実施形態に係る空調システムの機能ブロック図である。
【
図8】第2実施形態の変形例に係る空調システムの室内機の正面図である。
【
図9】第3実施形態に係る空調システムの説明図である。
【
図10】第3実施形態に係る空調システムの機能ブロック図である。
【
図11A】第3実施形態に係る空調システムにおける、空気調和機、サーバ、及び自律移動体のそれぞれの処理を示すフローチャートである。
【
図11B】第3実施形態に係る空調システムにおける、空気調和機、サーバ、及び自律移動体のそれぞれの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪第1実施形態≫
<空調システムの構成>
図1は、第1実施形態に係る空調システム100の説明図である。
図1に示す空調システム100は、部屋R1(空調室)にいる人M1の周囲の温湿度や人M1の撮像結果等のデータを自律移動体20が空気調和機10に送信し、このデータの分析結果に基づいて、空気調和機10が所定の空調制御を行うシステムである。
図1に示すように、空調システム100は、空気調和機10と、自律移動体20と、を含んで構成されている。空気調和機10は、部屋R1の空調を行う機器である。また、空気調和機10は、自律移動体20との間で所定に通信を行う機能も有している。空気調和機10と自律移動体20との間の通信方式は、例えば、赤外線通信であってもよいし、他の方式であってもよい。
【0010】
空気調和機10は、屋外に設置される室外機(図示せず)と、部屋R1に設置される室内機U1と、を備えている。室外機(図示せず)と室内機U1とは、冷媒配管を介して接続されるとともに、電力線・通信線を介して接続されている。
図1に示す部屋R1を含む建物B1は、例えば、住宅であってもよいし、オフィスやホテル、高齢者施設であってもよい。
【0011】
図1に示すように、空気調和機10は、サーバ11を備えている。サーバ11は、図示はしないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種インタフェース等の電子回路を含んで構成されている。そして、ROMに記憶されたプログラムを読み出してRAMに展開し、CPUが各種処理を実行するようになっている。サーバ11は、自律移動体20から受信する撮像データや音声データの他、人M1の周囲の温湿度等に基づいて、空調に関する人M1の好みを分析する。このようなサーバ11の分析結果に基づいて、空気調和機10が空調制御を行うようになっている。
【0012】
自律移動体20は、部屋R1の中を自律的に移動するロボットである。このような自律移動体20として、例えば、ロボット掃除機の他、ペットロボットや介護ロボット、サービスロボット、家庭用ロボットが用いられる。なお、空気中の微粒子を集塵する空気清浄といった他の機能を自律移動体20が有するようにしてもよい。
【0013】
図2は、自律移動体20の説明図である。
図2に示すように、自律移動体20は、画像センサ21と、音声センサ22と、温湿度センサ23と、制御基板24と、距離センサ25と、駆動輪26と、本体27と、を備えている。画像センサ21は、所定の撮像データを生成するカメラである。例えば、撮像素子(図示せず)に入射する光を光電変換することで、画像センサ21が撮像データを生成するようにしてもよい。前記した撮像素子として、CCDセンサ(Charge Coupled Device)やCMOSセンサ(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等が用いられる。なお、画像センサ21として、赤外線やその他の電波強度に感度を有するものが用いられてもよい。
【0014】
図2の例では、本体27の上面に画像センサ21が設置されている。このような画像センサ21として、画角が比較的広角である全天球カメラを用いることで、自律移動体20の周囲の全体的な画像を取得できる。なお、画像センサ21の種類の他、その設置位置や個数は、適宜に変更可能である。
音声センサ22は、人M1の音声等を測定するセンサである。このような音声センサ22として、可聴域の音声を抽出するものが用いられてもよいし、また、超音波や低周波といった可聴域外の音波を抽出するものが用いられてもよい。
【0015】
温湿度センサ23は、自律移動体20の周囲の温度や湿度を検出するセンサである。温湿度センサ23は、例えば、温度検出用の素子(図示せず)と、湿度検出用の別の素子(図示せず)と、が基板(図示せず)に実装された構成になっている。なお、前記した各素子の種類は、特に限定されるものではない。
【0016】
制御基板24は、図示はしないが、CPU、ROM、RAM、各種インタフェース等の電子回路を含んで構成されている。制御基板24は、画像センサ21、音声センサ22、及び温湿度センサ23で取得された各データを、自律移動体20の位置情報とともに、空気調和機10(
図1参照)に送信する機能を有している。また、制御基板24は、空気調和機10から受信する信号の他、距離センサ25の測定結果等に基づいて、駆動輪26のモータ28(
図3参照)を所定に駆動させる。
【0017】
距離センサ25は、物体や壁面までの距離を測定するセンサである。このような距離センサ25として、例えば、光学式のTOF(Time-of-Flight)センサが用いられてもよいし、また、レーザ式や超音波式のセンサが用いられてもよい。
駆動輪26は、自律移動体20の走行に用いられる車輪であり、モータ28(
図3参照)の回転軸に連結されている。本体27は、画像センサ21等の各センサや制御基板24、駆動輪26等が設置される収容体である。そして、距離センサ25の測定結果に基づいて、自律移動体20が部屋R1(
図1参照)の形状や間取りを推定するとともに、自己位置(自律移動体20の位置)を推定しながら部屋R1の中を走行するようになっている。
【0018】
また、自律移動体20は、画像センサ21の撮像結果に基づいて、部屋R1(
図1参照)にいる人M1を認識する機能も有している。例えば、自律移動体20は、部屋R1にいる人M1の頭部の形状や皮膚の色、目の大きさ、両目間の距離、唇の横幅、体型等に基づいて、人M1を認識する。その他、自律移動体20が、部屋R1の中の移動物体を人M1として認識するようにしてもよい。
【0019】
そして、自律移動体20は、人M1の近くまで移動し、温湿度センサ23によって、人M1の周囲の空気の温湿度を検出する。ここで、人の「周囲」とは、例えば、人からの距離が2m以内の範囲であるが、これに限定されるものではない。また、自律移動体20に代えて、サーバ11(
図1参照)が人M1を認識するようにしてもよい。
【0020】
自律移動体20は、画像センサ21、音声センサ22、及び温湿度センサ23によって取得した各データを、自律移動体20の位置情報とともに空気調和機10に送信する。ここで、自律移動体20が人M1の近くまで移動したときの自律移動体20の位置情報は、人M1のおよその位置も示している。そして、人M1の周囲の温湿度等に対応付けられている自律移動体20の位置情報(つまり、人M1の位置情報)に基づいて、空気調和機10が所定に空調制御を行うようになっている。
【0021】
このように、自律移動体20が、いわば空気調和機10の手足となって、部屋R1にいる人M1の撮像結果や音声の他、人M1の周囲の温湿度を検出するようにしている。
なお、これまでの空気調和機では、室内機に吸い込まれる空気の温度を温度センサで検出する他、部屋にいる人の表面温度を赤外線センサ等で取得して、空調制御を行うようにしていた。この場合、人の周囲の空気の温度の正確な値を検出することが困難であるため、空調の設定温度が、人の周囲の温度から乖離することが多かった。また、仮に、人の周囲の温度が設定温度に等しくなった場合でも、その設定温度が人の好みに合わないときには、人が不快に感じることもあった。
【0022】
そこで、第1実施形態では、自律移動体20が人M1(
図1参照)の撮像データや音声データの他、人M1の温湿度を含むデータを空気調和機10に送信し、空気調和機10が空調に関する人M1の好みを分析して、空調制御を所定に変更するようにしている。これによって、空調の快適性が高められる他、人M1がリモコン等の操作や自律移動体20へのアクション(質問に対する回答等)を行う必要がなくなるため、空調制御を変更する際の人M1の負担を軽減できる。
以下の説明では、人M1(
図1参照)の符号を適宜に省略することがあるものとする。
【0023】
<空調システムの制御構成>
図3は、空調システム100の機能ブロック図である。
図3に示すように、自律移動体20の制御基板24は、機能的な構成として、記憶部24aと、制御部24bと、通信部24cと、を備えている。記憶部24aには、所定のプログラムが予め格納されている他、画像センサ21や音声センサ22、温湿度センサ23、距離センサ25の各検出値や、空気調和機10から受信したデータが格納される。
【0024】
制御部24bは、例えば、空気調和機10から通信部24cを介して走行指示を受信した場合、駆動輪26(
図2参照)のモータ28を所定に駆動させる。また、制御部24bは、画像センサ21、音声センサ22、及び温湿度センサ23によって取得されたデータを自律移動体20の位置情報(例えば、人の周囲の温湿度を検出したときの位置情報)に対応付けて、通信部24cを介して、空気調和機10に送信する。通信部24cは、空気調和機10との間で所定に通信を行う。
【0025】
空気調和機10は、前記したサーバ11を備える他、圧縮機12と、膨張弁13と、室内ファン14と、室外ファン15と、所定のセンサ16を備えている。このようなセンサ16として、例えば、室内温度センサや室外温度センサが挙げられる。また、
図3には図示していないが、空気調和機10は、室内熱交換器や室外熱交換器、四方弁等を備えている。そして、周知の冷凍サイクルで冷媒が循環するようになっている。
【0026】
図3に示すように、サーバ11は、記憶部11aと、制御部11bと、通信部11cと、を備えている。記憶部11aには、所定のプログラムが予め格納されている他、自律移動体20から受信したデータや、このデータに基づく分析結果が格納される。その他、部屋R1(
図1参照)の地図情報が記憶部24aに格納されるようにしてもよい。この地図情報は、予め与えられていてもよいし、また、自律移動体20が部屋R1(
図1参照)を走行する過程で作成されてもよい。地図情報には、部屋R1の形状や間取りを示す情報が含まれている。
【0027】
制御部11bは、自律移動体20から受信したデータを分析し、その分析結果に基づいて、空調制御を所定に変更する。また、制御部11bは、通信部11cを介して、ユーザの情報端末30との間でデータの送受信を行う。例えば、サーバ11が収集したデータを空気調和機10の通信部11cを介して情報端末30に送信し、情報端末30の表示画面でユーザが確認するようにしてもよい。このような情報端末30として、例えば、携帯電話やスマートフォン、タブレット、ウェアラブル端末が用いられる。通信部11cは、自律移動体20との間で通信を行う他、ユーザの情報端末30との間でも通信を行う。
【0028】
図4は、空調システムのサーバで抽出される特徴量の説明図である(適宜、
図3を参照)。
サーバ11は、画像センサ21で取得された撮像データに基づき、人の表情の特徴量として、顔の表情の他、喜怒哀楽のレベル、笑顔量(笑顔の度合いを示す数値)、顔色といった特徴量を抽出する。また、画像センサ21が赤外線に感度を有している場合には、撮像データに基づいて、人の体温や発汗量、血流量といった特徴量をサーバ11が抽出するようにしてもよい。
【0029】
また、サーバ11は、画像センサ21で取得された撮像データに基づく人の身体の特徴量として、人の体格の他、姿勢、身体の移動速度、移動の際のブレ、筋肉の緊張といった特徴量を抽出する。なお、筋肉の緊張については、人の姿勢の変化の仕方等から推定される。人の身体に関するその他の特徴量として、例えば、人の手足の挙動速度や身体の震えをサーバ11が抽出するようにしてもよい。
【0030】
また、サーバ11は、音声センサ22で取得された音声データ(会話音・生活音)に基づく人の声の特徴量として、声の大きさ、声質(声の高さ・周波数)、声の震え等を抽出する。なお、人の会話の内容については、サーバ11が分析しないようにすることがプライバシー保護の観点から好ましいが、「暑い」や「寒い」といった言葉を抽出する程度であれば許容される。
【0031】
図4に示すように、撮像データに基づく人の顔情報や体格、声質といった特徴量は、その人が誰であるかを示す「個人情報」として用いられる。また、人の表情や身体の特徴量、及び声の特徴量のうち、人が空調をどのように感じているか(快・不快、暑い、寒い等)を示す指標となるものを「人情報」という。
【0032】
このような「人情報」には、例えば、喜怒哀楽のレベル、笑顔量、顔色、体温、発汗量、血流量、身体の姿勢、移動速度、移動の際のブレ、筋肉の緊張、声の大きさ、声の震えが含まれる。その他、「人情報」として、人の感情(表情や音声などの情報に基づいて感情を数値化したもの)が含まれていてもよいし、また、複数の特徴量が適宜に用いられるようにしてもよい。また、自律移動体20(
図2参照)における画像センサ21の撮像結果や、音声センサ22の測定結果も「人情報」に含まれるものとする。
【0033】
前記したように、サーバ11(
図3参照)は、温湿度センサ23の検出値に基づいて、人の周囲の温度・湿度の値を取得する。また、サーバ11は、距離センサ25で取得された距離のデータに基づいて、部屋R1(
図1参照)を含む建物B1(
図1参照)の間取りを推定する他、部屋R1における自律移動体20の位置(自己位置)を推定する。なお、人の周囲の温湿度や部屋R1の温湿度分布を示す情報を「環境情報」という。「環境情報」には、温湿度センサ23の検出値の他、距離センサ25の測定値に基づく建物B1の間取りや自律移動体20の自己位置を示す情報が含まれる。
【0034】
図4に示すように、サーバ11は、「人情報」及び「環境情報」に基づいて、人の空調に関する「好み情報」を生成する。例えば、サーバ11は、部屋R1(
図1参照)にいる人が暑いと感じているか、それとも寒いと感じているかの度合いを示す数値を、人の周囲の温湿度や自律移動体20の位置情報に対応付けることで、「好み情報」を生成する。「好み情報」とは、人が空調環境をどのように感じているかを示すデータである。なお、「好み情報」には、暑さ・寒さの他、空調風の風量に関する快適さや、人に空調風が当たる(又は空調風が当たらない)こと、風向きに関する快適さも含まれている。
【0035】
例えば、画像データに基づく笑顔量が比較的大きい場合には、人が空調環境を快適に感じている可能性が高い。また、人の発汗量が多く、その体温が高い場合には、人が暑いと感じている可能性が高い。その他、人の身体の震えや筋肉のこわばりが生じている場合には、人が寒いと感じている可能性が高い。このようにサーバ11は、「人情報」と「環境情報」とに基づいて、人が現在の空調環境をどう感じているかを示す「好み情報」を生成する。
【0036】
その他、人の顔や体格、声質といった「個人情報」をサーバ11が事前に登録することで、部屋R1(
図1参照)にいる人が誰であるかをサーバ11が認識するようにしてもよい。「好み情報」と「個人情報」とが対応付けられることで、部屋R1(
図1参照)にいる人が誰であって、どの場所でどのような空調を好むのかをサーバ11が把握できる。サーバ11が生成した「好み情報」は、「個人情報」に対応付けられて、記憶部11aに格納される。なお、「個人情報」の生成は、特に必須ではないため、省略することも可能である。
【0037】
また、サーバ11が、「人情報」に「日時情報」を対応付けるようにしてもよい。このような「日時情報」として、例えば、「人情報」が生成された日付・時刻が用いられる。サーバ11は、「人情報」に「日時情報」を対応付けることで、空調に関する人の「好み情報」を、季節や時間帯に対応付ける。
【0038】
その他にも、サーバ11が、空調に関する人の「好み情報」を、人がいる場所(リビング、キッチン、ダイニング、寝室等)や行動の種類に対応付けるようにしてもよい。例えば、人がキッチンで料理をしているときと、リビングでくつろいでいるときとでは、人が好む空調環境が異なることが多い。また、人が運動しているときと、リラックスしているときとでは、人が好む空調環境が異なることが多い。人の空調に関する「好み情報」を季節や時間帯、場所や行動に対応付けてサーバ11が分類することで、快適な空調をきめ細やかに行うことができる。
【0039】
また、空調制御の変更に伴って、部屋R1(
図1参照)の温湿度等の環境情報が変化した場合、環境情報が変化する前の「人情報」と、環境情報が変化した後の「人情報」と、をサーバ11が比較し、変化前・変化後のいずれが人にとって快適であるかを推定するようにしてもよい。例えば、部屋R1にいる人の周囲の温度が変化した場合において、その人の状態が変化したときには、その表情や体温や血流から、温度の変化前・変化後のどちらが快適であるかをサーバ11が推定することで、人の「好み情報」を更新(変更)できる。このように、空調制御の変更に伴う「環境情報」及び「人情報」の変化に基づいて、「好み情報」が更新されるようにしてもよい。これによって、空調環境の変化に対する人の反応がサーバ11で学習されるため、快適な空調環境を比較的短時間で提供できる。
【0040】
その他にも、例えば、自律移動体20が人に所定のアクションを起こした場合の人の反応に基づいて、空気調和機10が空調制御を変更するようにしてもよい。例えば、自律移動体20がファン等(図示せず)の機器を備え、人に向けて所定の風を吹き出したとき、人がその風を心地よいと感じているか否かをサーバ11が判定するようにしてもよい。風が心地よいと人が感じている可能性が高い場合には、その人は風を当てられることを好む可能性が高い。したがって、空気調和機10は、その人に空調風が当たるように空調制御を行うことで、空調の快適性を高めることができる。
【0041】
<空調システムの処理>
図5A、
図5Bは、空気調和機及び自律移動体のそれぞれの処理を示すフローチャートである(適宜、
図3も参照)。
なお、
図5Aの「START」時には、リモコン(図示せず)又は情報端末30(
図3参照)から空気調和機10に運転開始の指令が送信されるものとする。
ステップS101において空気調和機10は、圧縮機12等を駆動して、所定の空調運転を行う。すなわち、空気調和機10は、所定の運転モードや設定温度に基づいて、圧縮機12、膨張弁13、室内ファン14、及び室外ファン15を制御する。なお、空調の設定温度はリモコン(図示せず)で設定されることが多いが、スマートフォン等の情報端末30(
図3参照)の操作で設定されてもよいし、また、所定の初期設定が用いられてもよい。
【0042】
ステップS102において空気調和機10は、自律移動体20に走行指示を出す。その結果、空気調和機10のサーバ11(
図3参照)から自律移動体20の制御基板24(
図3参照)に走行指示の信号が送信される。
ステップS103において自律移動体20は、空気調和機10から走行指示の信号を受信する。
【0043】
ステップS104において自律移動体20は、部屋R1(
図1参照)を含む建物B1(
図1参照)の地図情報が存在するか否かを判定する。例えば、地図情報が予め提供されている場合や、自律移動体20の走行中に取得したデータに基づいて既に地図情報が作成されている場合には(S104:Yes)、自律移動体20の処理はステップS105に進む。
ステップS105において自律移動体20は、地図情報に基づいて、部屋R1の中を所定に走行する。なお、部屋R1の中の走行の仕方は、自律移動体20の用途(ロボット掃除機、ペットロボット、サービスロボット等)によってさまざまである。
【0044】
また、ステップS104において地図情報がない場合(S104:No)、自律移動体20の処理はステップS106に進む。ステップS106において自律移動体20は、部屋R1を所定に走行し、距離センサ25や画像センサ21の検出結果に基づいて、部屋R1の形状等を測定し、地図情報を生成する。なお、地図情報を生成する主体は、サーバ11(
図3参照)であってもよい。また、空気調和機10からの走行指示が特にない場合でも、自律移動体20は、部屋R1の中の走行することが可能である。
【0045】
次に、ステップS107において自律移動体20は、人を検知したか否かを判定する。すなわち、自律移動体20は、画像センサ21や音声センサ22の検出結果に基づいて、部屋R1の中に人がいるか否かを判定する。ステップS107において人を検知していない場合(S107:No)、自律移動体20の処理はステップS105に戻る。また、ステップS107において人を検知した場合(S107:Yes)、自律移動体20の処理はステップS108に進む。
【0046】
ステップS108において自律移動体20は、画像・音声のデータの他、人の周囲の温湿度や、自身の位置情報を取得する。より詳しく説明すると、自律移動体20は、画像センサ21で人の撮像データを取得するとともに、音声センサ22で音声データを取得する。また、自律移動体20は、温湿度センサ23を用いて、人の周囲の温湿度を取得する。また、自律移動体20は、距離センサ25の測定値の他、地図情報に基づいて、自律移動体20の位置情報を取得する。そして、自律移動体20は、部屋R1(空調室)にいる人の周囲の温度及び湿度の検出値に自律移動体20の位置情報を対応付けた「環境情報」を生成するとともに、部屋R1(空調室)にいる人の撮像結果及び音声の測定結果を含む「人情報」を生成する。
【0047】
ステップS109において自律移動体20は、空気調和機10にデータを送信する。すなわち、自律移動体20は、「人情報」(撮像データや音声データ)及び「環境情報」(人の周囲の温湿度や自律移動体20の位置)を含むデータを、通信部24c(
図3参照)を介して、空気調和機10のサーバ11に送信する。
ステップS110において空気調和機10は、サーバ11の通信部11c(
図3参照)を介して、自律移動体20からデータを受信する。
【0048】
なお、部屋R1にいる人の周囲の温湿度を検出するために、自律移動体20が人に常時付いて行く必要は特にない。すなわち、自律移動体20が人からいったん離れてから所定時間が経過した後、自律移動体20が再び人に接近し、人の周囲の温湿度等を検出するようにしてもよい。また、例えば、自律移動体20が掃除ロボットである場合には、部屋R1を掃除する過程で自律移動体20が人に接近したときに、人の周囲の温湿度等を検出するようにしてもよいし、走行しながら常に温湿度等を検出してもよい。
【0049】
次に、
図5BのステップS111において空気調和機10は、自律移動体20から受信した撮像データ及び音声データに基づいて、顔情報や喜怒哀楽のレベル、声の大きさといった特徴量(
図4参照)を抽出する。
ステップS112において空気調和機10は、「好み情報」等を生成し、記憶する。すなわち、空気調和機10は、部屋R1にいる人の表情や声の特徴量に、その人の周囲の温湿度や自律移動体20の位置情報(つまり、人の位置情報)を対応付けた「好み情報」を生成する。また、空気調和機10が人の顔情報に基づいて、その人を特定するための「個人情報」を生成するようにしてもよい。このようにして生成された「好み情報」や「個人情報」は、サーバ11に格納される。
【0050】
次に、ステップS113において空気調和機10は、温湿度が設定値に等しい(又は設定値を含む所定範囲内である)か否かを判定する。例えば、空気調和機10は、人の周囲の温度が、空調の設定温度に等しくなっているか否かを判定する。なお、人の周囲の湿度についても同様である。前記したように、自律移動体20が人の近くに移動することで、人の周囲の温湿度の正確な値を取得できる。ステップS113において温湿度が設定値とは異なっている場合(S113:No)、空気調和機10の処理はステップS114に進む。
【0051】
ステップS114において空気調和機10は、所定の空調制御を行う。すなわち、空気調和機10は、人の周囲の温湿度が設定値に近づくように圧縮機12等を制御する。なお、人の周囲の温湿度は、その人が感じる空調の快適さに直接関わっている。そこで、第1実施形態では、人の周囲の温湿度が所定の設定値になるように、空気調和機10が所定の空調制御を行うようにしている。ステップS114の処理を行った後、空気調和機10の処理はステップS113に戻る。
【0052】
また、ステップS113において温湿度が設定値に等しい場合(S113:Yes)、空気調和機10の処理はステップS115に進む。ステップS115において空気調和機10は、人が快適であるか否かを判定する。すなわち、空気調和機10は、サーバ40に格納されている「好み情報」(「人情報」及び「環境情報」)に基づいて、部屋R1にいる人が空調を快適に感じているか否かを判定する。ステップS115において人が空調を快適に感じていないと判定した場合(S115:No)、空気調和機10の処理はステップS116に進む。
【0053】
ステップS116において空気調和機10は、空調に関する設定値を変更する。例えば、部屋R1にいる人の発汗量が多く、体温が高い場合には、その人が暑いと感じている可能性が高い。このような場合、空気調和機10は、空調の設定温度を下げて、部屋R1が涼しくなるようにする。また、例えば、部屋R1にいる人の身体が震えていたり、筋肉がこわばっていたりする場合には、その人が寒いと感じている可能性が高い。このような場合、空気調和機10は、空調の設定温度を上げて、部屋R1が暖かくなるようにする。
【0054】
ステップS117において空気調和機10は、変更した設定値に基づいて、空調制御を所定に行う。なお、空気調和機10が、部屋R1にいる人の「好み情報」に基づいて、空調風の風量や風向を変更するようにしてもよい。例えば、空調風を当てられることを人が好む場合、空気調和機10は、空調風がその人に重点的に向かうようように、風量や風向を調整する。
【0055】
このように、空気調和機10は、「環境情報」及び「人情報」の分析結果に基づいて、空調制御を所定に変更する。前記した分析結果には、部屋R1(空調室)にいる人の空調に関する「好み情報」が含まれている。ステップS117の処理を行った後、空気調和機10の処理はステップS115に戻る。
【0056】
また、ステップS115において人が空調を快適に感じていると判定した場合(S115:Yes)、空気調和機10の処理はステップS118に進む。
ステップS118において空気調和機10は、設定値等を記憶する。すなわち、空気調和機10は、人が快適であると感じている可能性が高いときの設定温度の他、そのときの「人情報」、「環境情報」、及び「個人情報」をサーバ11に格納する。これらのデータは、次回の空調運転の際、部屋R1にいる人(以前に空調を快適であると感じた人)をサーバ11が認識した場合に適宜に用いられる。また、ステップS101における設定温度などの運転条件として前回学習した運転条件を適用してもよい。
【0057】
次に、ステップS119において空気調和機10は、空調制御を所定に行う。すなわち、空気調和機10は、人が快適であると感じている設定温度等での空調制御を継続する。ステップS119の処理を行った後、空気調和機10や自律移動体20は、一連の処理を終了する(END)。
【0058】
<効果>
第1実施形態によれば、「人情報」及び「環境情報」に基づいて、空調に関する「好み情報」をサーバ11が分析し、その分析結果に基づいて空調制御を変更するようにしている。これによって、部屋R1にいる人が設定温度の変更の必要等を特に意識することなく、快適な空調環境を過ごすことができる。また、部屋R1にいる人が所定の操作を能動的に行ったり、自律移動体20からの質問に答えたりする必要が特にないため、人が煩わしさを感じることがほとんどない。
【0059】
また、第1実施形態によれば、自律移動体20が人の撮像データや音声データを取得する他、人の周囲の温湿度を検出して、空気調和機10に送信する。このように、自律移動体20が、あたかも空気調和機10の手足のように機能することで、人の周囲の温湿度を、人が快適に感じる所定の温湿度にすることができる。
【0060】
また、自律移動体20がロボット掃除機やペットロボットといった機能を備えている場合には、普段は部屋R1を清掃したり、人に寄り添って可愛がられたりという本来の機能を果たしながら、必要に応じて「人情報」や「環境情報」を取得できる。したがって、自律移動体20が人の生活の邪魔になったり、必要以上に生活に侵襲したりすることなく、「人情報」や「環境情報」を取得できる。
また、第1実施形態によれば、空気調和機10が外部サーバ(図示せず)との間の通信手段を有する必要が特にないため、処理の簡素化を図ることができる他、コストの削減を図ることができる。
【0061】
≪第2実施形態≫
第2実施形態は、リビングR2(
図6A参照)と洗面所R3(
図6A参照)に空気調和機10A,10Bが1台ずつ設置される点が、第1実施形態とは異なっている。また、第2実施形態は、リビングR2や洗面所R3を含む建物BA1(
図6A参照)の外部にサーバ40(
図6参照)が設けられ、このサーバ40が、空気調和機10A,10Bや自律移動体20の他、洗濯乾燥機50との間で通信を行う点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0062】
<空調システムの構成>
図6A、
図6Bは、第2実施形態に係る空調システム100Aの説明図である。
なお、
図6AはリビングR2(第1空調室)や洗面所R3(第2空調室)を横から見た場合の説明図であり、
図6Bは平面図になっている。
図6Aに示すように、建物BA1には、リビングR2と、洗面所R3と、が隣り合うように設けられている。リビングR2(第1空調室)には、空気調和機10Aの室内機UA(第1室内機)が設置されている。洗面所R3(第2空調室)には、別の空気調和機10Bの室内機UB(第2室内機)や洗濯乾燥機50(家電機器)が設置されている。
【0063】
空調システム100Aは、自律移動体20と、空気調和機10A,10Bと、洗濯乾燥機50と、サーバ40と、を含んで構成されている。自律移動体20は、リビングR2と洗面所R3との間を所定に移動するようになっている。サーバ40は、建物BA1の外部に設けられ、自律移動体20との間で通信を行うとともに、空気調和機10A,10Bとの間で通信を行う他、洗濯乾燥機50との間でも所定に通信を行う。
【0064】
洗濯乾燥機50(家電機器)は、この洗濯乾燥機50の周囲の温度を少なくとも検出するセンサ51を備えている。センサ51の検出値は、洗濯乾燥機50の制御基板(図示せず)の通信部(図示せず)を介して、サーバ40に送信される。
【0065】
サーバ40は、自律移動体20から受信する「環境情報」に、洗濯乾燥機50(家電機器)の位置情報及びセンサ51の検出値を加えた上で、空調に関する人の好みを分析する。なお、洗濯乾燥機50の位置情報が、サーバ40に予め記憶されるようにしてもよい。サーバ40の分析結果は、空気調和機10A,10Bの空調制御に反映される。
【0066】
<空調システムの制御構成>
図7は、空調システム100Aの機能ブロック図である。
図7に示すように、自律移動体20の制御基板24は、サーバ40との間で通信を行う通信部24cを備えている。そして、画像センサ21や音声センサ22で取得される「人情報」の他、温湿度センサ23の検出値や自律移動体20の位置情報とを含む「環境情報」が、通信部24cを介して自律移動体20からサーバ40に送信されるようになっている。
【0067】
なお、自律移動体20がリビングR2にいるのか、それとも洗面所R3にいるのかを示す所定の位置情報を、自律移動体20がサーバ40に送信するようにしてもよい。これによって、例えば、人が洗面所R3にいる場合にはリビングR2の空調を停止させておくといった制御が可能になるため、空調が無駄に行われることを抑制できる。
図7に示す洗濯乾燥機50は、サーバ30との間で通信を行う機能を有している。そして、洗濯乾燥機50の周囲の温度や湿度の検出値が、洗濯乾燥機50からサーバ40に送信されるようになっている。
【0068】
サーバ40は、自律移動体20から受信した「環境情報」及び「人情報」に基づいて、「好み情報」等の分析結果を生成し、この分析結果を空気調和機10A,10Bに送信する。なお、「環境情報」に洗濯乾燥機50の周囲の温度や湿度が加えられるようにしてもよい。
【0069】
空気調和機10Aは、サーバ40との間で通信を行う通信部11Acを備えている。同様に、他方の空気調和機10Bも、サーバ40との間で通信を行う通信部11Bcを備えている。これらの空気調和機10A,10Bは、サーバ40の分析結果に基づいて、空調制御を所定に行う。なお、
図7の例では、自律移動体20と空気調和機10A,10Bとの間では通信が特に行われない場合を示しているが、自律移動体20と空気調和機10A,10Bとの間で通信が行われるようにしてもよい。
【0070】
<空調システムの処理>
例えば、洗濯乾燥機50(
図6A参照)のセンサ51の検出値(家電機器の周囲の温度)が所定範囲外である場合、サーバ40が、自律移動体20を洗面所R3(空調室、第2空調室)に移動させて、「人情報」及び「環境情報」を生成させるようにしてもよい。すなわち、洗面所R3の温度が所定値を超えている場合や、別の所定値を下回っている場合、サーバ40は、洗面所R3にいる人の周囲の温度等を自律移動体20に検出させる。例えば、洗面所R3の温度が所定値以上である場合において、人が暑そうにしているときには、洗面所R3の空気調和機10Bが自律的に冷房運転を開始する(又は冷房運転の設定温度を下げる)ようにしてもよい。
【0071】
例えば、自律移動体20がリビングR2にいる場合において、洗面所R3の温度が所定値以上であるときには、自律移動体20を洗面所R3に移動させる前に、空気調和機10Bが自律的に冷房運転を開始するようにしてもよい。これによって、洗面所R3で人が熱中症になってしまうことを防止できる。また、自律移動体20が掃除ロボットである場合には、リビングR2等の掃除をそのまま継続できる。
【0072】
また、「環境情報」に含まれるリビングR2(第1空調室)の温度と、「環境情報」に含まれる洗面所R3(第2空調室)の温度と、の差の絶対値が所定値以上である場合、空気調和機10A(第1室内機)及び空気調和機10B(第2室内機)のうち少なくとも一方が、前記した差の絶対値を小さくするように空調運転を行うようにしてもよい。例えば、自律移動体20がリビングR2及び洗面所R3のそれぞれの温度を検出し、リビングR2の温度に対して、洗面所R3の温度が所定値以上低かったとする。このような場合、洗面所R3の空気調和機10Bが暖房運転を自律的に開始して、洗面所R3の温度を上げるようにしてもよい。これによって、人がリビングR2から洗面所R3に移動した際にヒートショックを起こすことを防止できる。
【0073】
また、洗濯乾燥機50(家電機器)に対して所定の操作が行われた場合、サーバ40が、自律移動体20を洗面所R3(空調室)に移動させて、「人情報」及び「環境情報」を生成させるようにしてもよい。例えば、自律移動体20がリビングR2にいるときに、人が洗濯乾燥機50のドア(図示せず)の開閉や、所定のボタンの押下といった操作を行ったとする。このような操作を示す信号が洗濯乾燥機50からサーバ40に送信された場合、サーバ40は、洗濯乾燥機50が設けられた洗面所R3に人がいると判定し、その人の「人情報」や「環境情報」を取得するように、自律移動体20に所定の指令信号を送信する。これによって、洗面所R3に設けられた空気調和機10Bが、人の周囲の温湿度に基づいて、比較的短時間で快適な空調を行うことができる。
なお、洗濯乾燥機50等の家電機器が空調室に設置され、この家電機器の情報をサーバ40が利用する場合でも、家電機器が空調システム100Aには特に含まれないこともある。
【0074】
<効果>
第2実施形態によれば、人がどの部屋にいるのか、また、人がどのような状況であるかをサーバ40が分析し、その分析結果に基づいて、各部屋の空気調和機10A,10Bが空調制御を行うようにしている。したがって、人が部屋を移動するような状況でも、空調システム100Aによって快適な空調環境を提供できる。
【0075】
≪第2実施形態の変形例≫
図8は、第2実施形態の変形例に係る空調システムの室内機U2の正面図である。
図8に示すように、空気調和機10Cの室内機U2は、空調室を撮像する撮像部29を備えている。このような撮像部29として、例えば、CCDセンサやCMOSセンサが用いられてもよいし、また、赤外線やその他の電波強度に感度を有するセンサが用いられてもよい。そして、空気調和機10Cからサーバ40(
図6A参照)に、撮像部29の撮像結果を含むデータが送信されるようになっている。
【0076】
例えば、撮像部29の撮像結果に基づいて、リビングR2(空調室:
図6A参照)にいる人が検知された場合、空気調和機10Cは、自律移動体20(
図6A参照)を空調室に移動させて、「人情報」及び「環境情報」を生成させる。これによって、空気調和機10Cは、人が洗面所R3からリビングR2に移動した場合でも、快適な空調を比較的短時間で行うことができる。
【0077】
また、撮像部29の撮像結果に基づいて、リビングR2(空調室:
図6A参照)にいる人が検知された場合において、撮像部29からはその人の顔が見えない場合、空気調和機10Cが、自律移動体20にその人の顔を撮像させるようにしてもよい。例えば、撮像部29の視野では、リビングR2(
図6A参照)にいる人が後ろ向きで、その顔を撮像できなかったとする。このような場合、、空気調和機10Cは、サーバ40を介して自律移動体20に所定の指令信号を送信し、人の顔を撮像させる。さらに、音声データや人の周囲の温湿度を自律移動体20が取得するようにしてもよい。このように自律移動体20が用いられることで、人の顔画像等の分析結果に基づいて、快適性の高い空調を提供できる。
【0078】
≪第3実施形態≫
第3実施形態は、建物B1(
図9参照)の外部にサーバ40(
図9参照)が設けられる点が、第1実施形態とは異なっている。また、第3実施形態は、部屋R1にいる人が熱中症になるおそれがあるとサーバ40が判定した場合、空気調和機10Dが設定温度を低くする点が、第1実施形態とは異なっている。なお、その他については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0079】
<空調システムの構成>
図9は、第3実施形態に係る空調システム100Dの説明図である。
図9に示すように、部屋R1を含む建物B1の外部にサーバ40が設けられている。なお、サーバ40が、所定のクラウドシステムを構成するようにしてもよい。空気調和機10Dと自律移動体20とは、相互に通信を行うようになっている。また、サーバ40は、自律移動体20や空気調和機10Dとの間で所定に通信を行うようになっている。
図9に示すように、空気調和機10Dは、制御基板17を備えている。
【0080】
<空調システムの制御構成>
図10は、空調システム100Dの機能ブロック図である。
図10に示すように、自律移動体20は、空気調和機10Dやサーバ40との間で通信を行う通信部24cを備えている。また、空気調和機10Dの制御基板17は、記憶部17aと、制御部17bと、通信部17cと、を備えている。記憶部17aには、所定のプログラムやセンサ16の検出値の他、自律移動体20やサーバ40から受信したデータが格納される。制御部17bは、サーバ40の分析結果に基づいて、圧縮機12、膨張弁13、室内ファン14、及び室外ファン15を制御する。通信部17cは、自律移動体20やサーバ40との間で所定に通信を行う。
【0081】
サーバ40は、自律移動体20から受信したデータに基づいて、空調に関する人の好みを分析し、その分析結果を空気調和機10Dに送信する。また、サーバ40は、情報端末30からの要求信号に応じて、「人情報」や「環境情報」を情報端末30に提供する。空気調和機10Dは、サーバ40の分析結果に基づいて、空調制御を所定に行う。
【0082】
図11A、
図11Bは、空気調和機、サーバ、及び自律移動体のそれぞれの処理を示すフローチャートである(適宜、
図10も参照)。
なお、
図11Aの「START」時に、リモコン(図示せず)又は情報端末30(
図3参照)から空気調和機10Dに運転開始の指令が送信されるものとする。
ステップS201において空気調和機10Dは、圧縮機12等を駆動して、所定の空調運転を行う。ステップS202においてサーバ40は、自律移動体20に走行指示の信号を送信する。例えば、サーバ40は、空気調和機10Dで空調運転が開始された場合に自律移動体20に走行指示を出す。
【0083】
ステップS203において自律移動体20は、サーバ40から走行指示を受信し、ステップS204において部屋R1を所定に走行する。次に、ステップS205において人を検知した場合(S205:Yes)、ステップS206において自律移動体20は、人の画像データや音声データの他、人の周囲の温湿度や自己の位置情報といったデータを取得する。そして、ステップS207において自律移動体20は、前記したデータをサーバ40に送信する。また、ステップS205において人を検知していない場合(S204:No)、ステップS207において自律移動体20は、人の不在情報をサーバ40に送信する。
【0084】
なお、自律移動体20の周囲の温湿度や自律移動体20の位置情報が、前記した不在情報に付加されるようにしてもよい。これによって、サーバ40が、部屋R1の温度分布を把握できる。ステップS208においてサーバ40は、自律移動体20からデータを受信し、
図11BのステップS209の処理に進む。
【0085】
図11BのステップS209においてサーバ40は、自律移動体20から受信した画像・音声のデータに基づいて、人の顔情報や喜怒哀楽のレベル、声の大きさといった特徴量(
図4参照)を抽出する。ステップS210においてサーバ40は、「好み情報」等(
図4参照)を生成し、記憶する。
【0086】
次に、ステップS211においてサーバ40は、熱中症に関する判定を行う。例えば、サーバ40は、部屋R1にいる人の周囲の温湿度や、顔色、体温、発汗量、血流量等に基づいて、人が熱中症になるおそれがあるか否かを判定する。そして、ステップS212においてサーバ40は、熱中症に関する判定結果を空気調和機10Dに送信する。
【0087】
ステップS213において空気調和機10Dは、サーバ40からデータを受信する。
ステップS214において空気調和機10Dは、部屋R1にいる人が熱中症になるおそれがあるか否かを判定する。つまり、空気調和機10Dは、部屋R1にいる人が熱中症になるおそれがあることを示す情報をサーバ40から受信したか否かを判定する。ステップS214において、部屋R1にいる人が熱中症になるおそれがある場合(S214:Yes)、空気調和機10Dは、空調の設定値(例えば、設定温度)を変更し(S215)、空調制御を所定に行う(S216)。ステップS216の処理を行った後、空気調和機10Dの処理はステップS214に戻る。
【0088】
例えば、部屋R1(空調室)にいる人の周囲の温度が所定値以上である場合、空気調和機10Dが、自律的に冷房運転を開始するようにしてもよい。また、空気調和機10Dが、冷房運転の設定温度を下げるようにしてもよい。その他、空気調和機10Dが空調風の風量を増加させたり、涼しい空調風が人に当たるように風向を変更したりしてもよい。これによって、部屋R1にいる人が熱中症になることを防止できる。
【0089】
また、ステップS214において、部屋R1にいる人が熱中症になるおそれがない場合(S214:No)、ステップS217において空気調和機10Dは、空調制御を所定に行う。また、
図11Bでは特に示していないが、人が不在の場合には、空気調和機10Dが空調運転を停止するようにしてもよい。これによって、空気調和機10Dの消費電力量を削減できる。
【0090】
なお、
図11A、
図11Bに示す一連の処理は、熱中症に限らず、低体温症やヒートショックを防止するための制御にも適用できる。また、部屋R1にいる人が所定の疾患を有している場合、人の体調を考慮した適切な温度範囲を示すデータが情報端末30(
図10参照)からサーバ40(
図10参照)に送信され、サーバ40に格納されるようにしてもよい。この場合において空気調和機10Dは、部屋R1にいる人の周囲の温度が適切な温度範囲が保たれるように、所定の空調制御を行う。
【0091】
<効果>
第3実施形態によれば、自律移動体20で取得したデータに基づいて、部屋R1にいる人が熱中症になるおそれがあるか否かをサーバ40が判定し、その判定結果に基づいて、空気調和機10が空調制御を変更する。これによって、部屋R1にいる人が熱中症等の体調不良を起こすことを防止できる。
【0092】
≪変形例≫
以上、本発明に係る空調システム100等について各実施形態で説明したが、これらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、各実施形態では、自律移動体20(
図1参照)の温湿度センサ23によって、部屋R1にいる人の周囲の温度及び湿度の両方が検出される場合について説明したが、これに限らない。すなわち、空調室にいる人の周囲の温度及び湿度のうち一方が検出されるようにしてもよい。
【0093】
また、各実施形態では、人の撮像結果及び音声の測定結果の両方が「人情報」に含まれる場合について説明したが、これに限らない。すなわち、人の撮像結果及び音声の測定結果のうち一方が「人情報」に含まれるようにしてもよい。
また、各実施形態では、空気調和機10が、部屋R1(空調室)にいる人の空調に関する「好み情報」に基づいて、空調の設定温度、空調風の風量、及び風向を変更する場合について説明したが、これに限らない。すなわち、空気調和機10が「好み情報」に基づいて、空調の設定温度、空調風の風量、及び風向のうち少なくとも一つを変更するようにしてもよい。
【0094】
また、第2実施形態では、部屋の数が2つである場合について説明したが、部屋の数は3つ以上であってもよい。このような場合でも、ユーザが複数の自律移動体20を用意する必要は特になく、1台の自律移動体20で取得したデータを複数の空気調和機で共有することが可能である。
また、第2実施形態では、洗面所R3(
図6A参照)に洗濯乾燥機50(
図6A参照)が設けられる場合について説明したが、家電機器の種類はこれに限定されるものではない。例えば、周囲の空気の温度又は湿度を検出するセンサが設けられた家電製品であれば、冷蔵庫や電子レンジといった他の種類の家電製品が用いられてもよい。また、第2実施形態から洗濯乾燥機50(
図6A参照)が省略されてもよい。
【0095】
また、各実施形態は、適宜に組み合わせることができる。例えば、第1実施形態(
図1参照)と第2実施形態(
図6A参照)とを組み合わせてもよいし、また、第2実施形態(
図6A参照)と第3実施形態(
図9参照)とを組み合わせてもよい。
【0096】
また、各実施形態で説明した空調方法をコンピュータに実行させるためのプログラムは、通信回線を介して提供することもできるし、CD-ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0097】
また、実施形態は本開示を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【符号の説明】
【0098】
10,10A,10B,10C 空気調和機
11 サーバ
20 自律移動体
21 画像センサ
22 音声センサ
23 温湿度センサ
24 制御基板
29 撮像部
30 情報端末
40 サーバ
50 洗濯乾燥機(家電機器)
51 センサ
100,100A,100D 空調システム
M1 人
R1 部屋(空調室)
R2 リビング(空調室、第1空調室)
R3 洗面所(空調室、第2空調室)
UA 室内機(第1室内機)
UB 室内機(第2室内機)