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  • 特開-ヘッドアップディスプレイ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160307
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】ヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20231026BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070572
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中島 亮
【テーマコード(参考)】
2H199
3D344
【Fターム(参考)】
2H199DA03
2H199DA13
2H199DA15
2H199DA29
2H199DA42
2H199DA43
3D344AA11
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】製造性を向上できるヘッドアップディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】本実施形態におけるヘッドアップディスプレイ装置10は、開口18を有する筐体17と、筐体17内に収容され、表示光Lを開口18から出射し、ウインドシールド3で表示光Lを反射させて、ウインドシールド3の後方に位置するドライバー4にウインドシールド3の前方で虚像Vを視認させる表示器11と、透光性を有し後端19aと前端19bとを有する略平板状の部材であって、前端19bが後端19aよりも上方に位置するように前後に傾斜して開口18を覆うカバー部材19と、筐体17におけるカバー部材19の後端19aの後方から上方に立ち上がり、筐体17外からカバー部材19に入射し入射位置から後方に反射した外光Sをドライバー4に対して遮る背面32を有するメータークラスター30と、を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する筐体と、
前記筐体内に収容され、表示光を前記開口から出射し、投影部材で前記表示光を反射させて、前記投影部材の後方に位置する視認者に前記投影部材の前方で虚像を視認させる表示器と、
透光性を有し後端と前端とを有する略平板状の部材であって、前記前端が前記後端よりも上方に位置するように前後に傾斜して前記開口を覆うカバー部材と、
前記筐体における前記カバー部材の前記後端の前記後方から前記上方に立ち上がり、前記筐体外から前記カバー部材に入射し入射位置から前記後方に反射した外光を前記視認者に対して遮る遮光面を有する遮光壁と、を備えるヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項2】
前記遮光面は、前記後方に凹んだ曲面形状を有する、請求項1記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項3】
前記遮光面は、前記カバー部材で反射し前記遮光面に入射する前記外光を拡散又は吸収する材料で形成される、請求項1記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項4】
前記遮光面は、前記カバー部材で反射した後に前記遮光面に入射する前記外光である遮光面入射光の、前記遮光面における反射後の光路、及び前記遮光面入射光の前記遮光面における反射後に前記投影部材又は前記カバー部材における反射後の光路が、前記表示光の光路と異なる光路となるように、前記遮光面入射光を反射させる、請求項1記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【請求項5】
前記遮光壁は、前記視認者に対面し所要の情報を表示する正面と前記正面と反対側の面である背面とを有する表示装置であり、
前記遮光面は、前記背面である、請求項1記載のヘッドアップディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用等のヘッドアップディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイ装置は、車両等に搭載され、種々の情報をウインドシールド等の投影部材に投影し、視認者にその虚像を視認させる。ヘッドアップディスプレイ装置は、開口が形成された筐体を有し、この開口から投影部材に向けて表示光を出射する。開口は、車両等の前後方向に湾曲した形状を有するカバー部材に覆われる。カバー部材は、この湾曲形状により、太陽光等の外光が入射した場合に、視認者に向って反射することを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-120029号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カバー部材の湾曲形状は、湾曲形状でない場合に比べて、カバー部材全体の厚さ方向の寸法を大きくしたり、成形時の製造コストを上昇させたりする虞がある。また、カバー部材の製造時や筐体の開口にカバー部材を取り付ける際、治具が複雑化する等、作業性を低下させる虞がある。
【0005】
本開示はこのような事情を考慮してなされたもので、製造性を向上できるヘッドアップディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のヘッドアップディスプレイ装置は、上述した課題を解決するために、開口を有する筐体と、前記筐体内に収容され、表示光を前記開口から出射し、投影部材で前記表示光を反射させて、前記投影部材の後方に位置する視認者に前記投影部材の前方で虚像を視認させる表示器と、透光性を有し後端と前端とを有する略平板状の部材であって、前記前端が前記後端よりも上方に位置するように前後に傾斜して前記開口を覆うカバー部材と、前記筐体における前記カバー部材の前記後端の前記後方から前記上方に立ち上がり、前記筐体外から前記カバー部材に入射し入射位置から前記後方に反射した外光を前記視認者に対して遮る遮光面を有する遮光壁と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示のヘッドアップディスプレイ装置においては、製造性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車両に搭載された本実施形態におけるHUDの構成例を示す説明図。
図2】カバー部材に入射した外光が背面に向う様子を示す説明図。
図3】背面で反射した反射光がドライバーに向う様子を示す説明図。
図4】背面が後方に凹んだ曲面形状を有する例を示す説明図。
図5】カバー部材が湾曲形状を有する場合の比較例としてのHUDを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示のヘッドアップディスプレイ装置(以下「HUD(Head Up Display)」という。)の実施形態を添付図面に基づいて説明する。本開示のHUDは、例えば自動車や二輪車等の車両や、船舶、農業機械、建設機械に搭載されるHUDに適用することができる。
【0010】
図1は、車両1に搭載された本実施形態におけるHUD10の構成例を示す説明図である。
【0011】
以下の説明において、「前」、「後」、「上」及び「下」は、図1から図5における定義「Fr.」、「Re.」、「To.」及び「Bo.」に従う。「右」及び「左」は、前後方向及び上下方向に直交する方向において、紙面奥側及び紙面手前側と定義する。尚、「前」は車両1の前進方向である。
【0012】
HUD10は、車両1のインストルメントパネル5内に搭載される。HUD10は、表示器11と、平面鏡12と、凹面鏡13と、制御基板16と、筐体17と、メータークラスター30(表示装置)と、を有する。
【0013】
表示器11は、画像を表示し、画像に係る表示光Lを平面鏡12に向けて出射する。表示器11は、例えばTFT(Thin Film Transistor)型の液晶表示器や有機EL(Electroluminescence)表示器である。尚、表示器11はプロジェクタ及び表示面を構成するスクリーンを有するものであってもよい。
【0014】
平面鏡12及び凹面鏡13は、表示光Lを反射させ車両1上のウインドシールド3(投影部材)に投影(照射)するリレー光学系である。平面鏡12は、表示器11が出射した表示光Lを、凹面鏡13に向けて反射させる。凹面鏡13は、平面鏡12で反射した表示光Lを更に反射させ、ウインドシールド3に向けて筐体17から出射する。凹面鏡13は、拡大鏡としての機能を有し、表示器11に表示された画像を拡大してウインドシールド3側へ反射する。すなわち、ドライバー4が視認する虚像Vは、表示器11に表示された画像が拡大された像である。
【0015】
ウインドシールド3よりも後方に位置する車両1のドライバー4(視認者)は、ウインドシールド3の前方で、この表示光Lの反射光を虚像Vとして視認する。これにより、画像は、ウインドシールド3の前方でドライバー4に視認される実景と重なる仮想的な領域に表示される。
【0016】
制御基板16は、車両1の各部から取得する情報に基づいて、表示器11を制御する。制御基板16は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、グラフィックコントローラ、集積回路等を有し、HUD10に必要な所定の処理を実行する。具体的には、制御基板16は、表示器11に表示される画像の描画処理を実行し、画像を生成し、生成された画像を表示器11に表示するための制御を行う。
【0017】
筐体17は、遮光性を有する樹脂(例えば黒色のABS樹脂)や塗装又は表面処理が施された黒色の金属(例えばマグネシウム)からなる。筐体17は、表示器11、平面鏡12、凹面鏡13及び制御基板16を内部に支持し、収容する。筐体17は、表示光Lを出射する開口18を有する。開口18は、カバー部材19により覆われる。
【0018】
カバー部材19は、透光性を有する樹脂(例えばポリカーボネート)からなる。カバー部材19は、所定の厚みを持った、略四角形状の略平板状の部材である。カバー部材19は、略平坦な面を有し、意図的に湾曲するように形成された面を有していない。カバー部材19は、後方に位置する後端19aと、前方に位置する前端19bを有する。カバー部材19は、前端19bが後端19aよりも上方に位置するように前後に傾斜して、開口18を覆って配置される。
【0019】
メータークラスター30(遮光壁)は、速度計や走行距離計等、走行時に必要となる各種メーターを一体にまとめたメーター群である。メータークラスター30は、HUD10と一体になっており、ハンドル6の前方且つ開口18の後方に配置される。メータークラスター30は、筐体17におけるカバー部材19の後端19aの後方から上方に立ち上がる。メータークラスター30は、ドライバー4(ドライバー4のアイボックス)から、カバー部材19が視認されないように、カバー部材19の寸法や配置等との相対的な関係から高さや位置が決定される。
【0020】
尚、メータークラスター30は、HUD10と一体に形成されても、HUD10と物理的に分離した別体に形成されてもよい。
【0021】
メータークラスター30は、正面31と、背面32(遮光面)と、を有する。正面31は、ドライバー4に対面し、所要の情報を表示してドライバー4に視認される面である。背面32は、正面31と反対側の面であり、通常ドライバー4からは視認されない面である。
【0022】
背面32は、筐体17外からカバー部材19に入射し入射位置から後方に反射した外光Sを、ドライバー4に対して遮る遮光面として機能する。背面32は、カバー部材19で反射した後に背面32に入射する外光Sである反射光R(図2から図4)の、背面32における反射後の光路が、表示光Lの光路と異なる光路となるように、反射光Rを反射する。また、背面32は、反射光Rの背面32における反射後に、更にウインドシールド3又はカバー部材19において反射した後の光路が、表示光Lの光路と異なる光路となるように、反射光Rを反射する。
【0023】
背面32は、入射する光を拡散又は吸収するような材料で形成されるのが好ましい。例えば、背面32には、不織布や布状の部材等、光を吸収する材料が貼り付けられている。また、背面32には、塗装や成形により光を拡散させる凹凸が形成されている。
【0024】
ここで、図2は、カバー部材19に入射した外光Sが背面32に向う様子を示す説明図である。太陽光等の外光Sがカバー部材19に入射した場合、入射角度によってはドライバー4側に反射する虞がある。しかしながら、遮光壁としてのメータークラスター30は、上述の通りドライバー4からカバー部材19が視認されないように配置されているため、反射光R(遮光面入射光)は、メータークラスター30の背面32により遮られ、ドライバー4に到達することが抑制される。
【0025】
また、図3は、背面32で反射した反射光Rがドライバー4に向う様子を示す説明図である。図2のように、背面32は反射光Rを遮るが、背面32で反射後、更にウインドシールド3で反射した反射光Rがドライバー4に視認される虞がある。これに対しては、背面32は、反射光Rを拡散又は吸収するような材料で形成されることにより、背面32で反射する光を低減でき、外光Sがドライバー4に到達することを抑制できる。
【0026】
しかしながら、背面32に入射する反射光Rの照度が高い場合等、拡散及び吸収された後に多重反射した反射光Rが、ドライバー4に視認される虞がある。これに対応するため、背面32は後方に凹んだ曲面形状であってもよい。
【0027】
図4は、背面32が後方に凹んだ曲面形状を有する例を示す説明図である。背面32は、入射する反射光Rが、更にウインドシールド3及びカバー部材19で反射した後にドライバー4以外の方向に向うように、後方に凹んだ曲面形状を有する。これにより、背面32は、反射光Rが、ドライバー4に到達することを抑制できる。尚、背面32の後方に凹んだ曲面形状は一例であって、反射光Rをドライバー4に到達させることを抑制できる形状であれば、他の形状であってもよい。例えば、背面32は、逆L字状(庇状)等であってもよい。
【0028】
このようなHUD10は、カバー部材19が前後方向に湾曲した形状を有する場合に比べて、製造性を向上できる。ここで、図5は、カバー部材が湾曲形状を有する場合の比較例としてのHUD110を示す図である。
【0029】
HUD110のように、カバー部材119が湾曲形状を有する場合、カバー部材119自体の厚さ方向(図5の上下方向)の寸法が略平板状のカバー部材19に比べて大きくなる。これに起因して、HUD110は、HUD110自体の寸法も大きくなってしまう。これに対し、本実施形態におけるHUD10は、カバー部材19の厚さ方向を小さくできるため、HUD110に比べて相対的に装置全体の寸法を小型化できる。
【0030】
また、湾曲形状であるカバー部材119に比べて、略平板状であるカバー部材19は、製造が容易である。また、カバー部材119が取り付けられる筐体117の開口118の周縁等は、カバー部材119の形状に合わせて湾曲形状に形成する必要があり、カバー部材119、筐体117の製造や、カバー部材119の開口118への取付工程、これらに用いられる治具が複雑化する虞がある。これに対し、カバー部材19が取り付けられる開口18の周縁等は、直線的に形成される。このため、HUD10は、カバー部材19及び筐体17の製造性や組立時の作業性を向上でき、これに伴い製造コストも低減できる。尚、インストルメントパネル5は、不透過性であって、吸光性を有することで、インストルメントパネル5におけるさらなる反射光がウインドシールド3に向うことを抑制できる。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0032】
HUD10の投影部材がウインドシールド3である例を説明したが、これに代えて、又はこれと共にコンバイナであってもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 車両
3 ウインドシールド(投影部材)
4 ドライバー(視認者)
5 インストルメントパネル
6 ハンドル
10、110 ヘッドアップディスプレイ装置(HUD)
11 表示器
12 平面鏡
13 凹面鏡
16 制御基板
17 筐体
18、118 開口
19、119 カバー部材
19a 後端
19b 前端30 メータークラスター(遮光壁)
31 正面
32 背面(遮光面)
L 表示光
R 反射光
S 外光
V 虚像
図1
図2
図3
図4
図5