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  • 特開-熱電変換装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160312
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】熱電変換装置
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/13 20230101AFI20231026BHJP
【FI】
H01L35/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070583
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000165974
【氏名又は名称】古河機械金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 文雄
(72)【発明者】
【氏名】土田 友則
(57)【要約】
【課題】熱電変換装置の熱電変換の高効率化と装置の簡素化を実現する技術を提供する。
【解決手段】熱電変換装置1は、同軸に設けられた第1の配管10、第2の配管20、および第3の配管40を備え、第1の配管10は、内部に高温ガスHGが流通されるとともに、横断面の外形が多角形状を呈する領域を有しており、多角形状により形成された多角形面12のそれぞれに当接して設けられた熱電変換素子30と、熱電変換素子30の外周に加圧により密着して囲繞する、弾性変形するセパレータ23と、を有し、セパレータ23と第2の配管20が画成する円環状閉空間24内に加圧した非圧縮性流体(高熱伝導性グリースTG)が充填され、第2の配管20と第3の配管40が画成する円環状空間41内に冷却媒体(水W)が流通される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸に設けられた第1の配管、第2の配管、および第3の配管を備える熱電変換装置であって、
前記第1の配管は、内部に高熱媒体が流通されるとともに、横断面の外形が多角形状を呈する領域を有しており、
前記多角形状により形成された多角形面のそれぞれに当接して設けられた熱電変換素子と、
前記熱電変換素子の外周に加圧により密着して囲繞する、弾性変形するセパレータと、
を有し、
前記セパレータと前記第2の配管が画成する円環状の空間内に加圧した非圧縮性流体が充填され、
前記第2の配管と前記第3の配管が画成する円環状の空間内に冷却媒体が流通される、熱電変換装置。
【請求項2】
前記第1の配管と前記セパレータが画成する空間であって軸線長手方向に前記熱電変換素子が存在しない箇所に、外径が前記セパレータと接し、かつ、内径が前記第1の配管の外径と接しない円環状のカラーを有し、
前記セパレータと前記第1の配管が画成する空間が真空とされている、請求項1に記載の熱電変換装置。
【請求項3】
前記非圧縮性流体の圧力を調整する圧力調整手段を備える、請求項1又は2に記載の熱電変換装置。
【請求項4】
前記非圧縮性流体が高熱伝導性グリースである、請求項1又は2に記載の熱電変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば図3図4に示すように、一部の熱電変換装置1000は、内部に高熱媒体を流通させ、かつ、横断面の外径が多角形状の配管100と、多角形を構成する複数の面122に複数の熱電変換素子200を当接させ、熱電変換素子200の外表面をヒートシンク300で覆い、ヒートシンク300の外側にサポートリング400を配置し、サポートリング400に装着したコイルスプリング410によってヒートシンク300および熱電変換素子200を配管100の軸心方向へと付勢している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-160889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、配管の外側に取り付けられた熱電変換素子を含む熱電変換装置の新規な構造を検討し、熱電変換の高効率化と装置の簡素化を実現することを検討した。
【0005】
本発明の目的は、熱電変換装置の熱電変換の高効率化と装置の簡素化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
[1]
同軸に設けられた第1の配管、第2の配管、および第3の配管を備える熱電変換装置であって、
前記第1の配管は、内部に高熱媒体が流通されるとともに、横断面の外形が多角形状を呈する領域を有しており、
前記多角形状により形成された多角形面のそれぞれに当接して設けられた熱電変換素子と、
前記熱電変換素子の外周に加圧により密着して囲繞する、弾性変形するセパレータと、
を有し、
前記セパレータと前記第2の配管が画成する円環状の空間内に加圧した非圧縮性流体が充填され、
前記第2の配管と前記第3の配管が画成する円環状の空間内に冷却媒体が流通される、熱電変換装置。
[2]
前記第1の配管と前記セパレータが画成する空間であって軸線長手方向に前記熱電変換素子が存在しない箇所に、外径が前記セパレータと接し、かつ、内径が前記第1の配管の外径と接しない円環状のカラーを有し、
前記セパレータと前記第1の配管が画成する空間が真空とされている、[1]に記載の熱電変換装置。
[3]
前記非圧縮性流体の圧力を調整する圧力調整手段を備える、[1]又は[2]に記載の熱電変換装置。
[4]
前記非圧縮性流体が高熱伝導性グリースである、[1]から[3]までのいずれか1つに記載の熱電変換装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、熱電変換の高効率化と装置の簡素化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る熱電変換装置の縦断面図である。
図2】実施形態に係る熱電変換装置の横断面図である。
図3】従来の熱電変換装置の縦断面図である。
図4図3のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
図1は、実施形態に係る熱電変換装置1の縦断面図である。図2は熱電変換装置1の横断面図であって、特に図1の熱電変換素子30の装着された箇所を示している。
【0010】
熱電変換装置1は、同軸に設けられた第1の配管10、第2の配管20、および第3の配管40を備える。
第1の配管10は、内部空間11に高熱媒体として高温ガスHGを流通させている。第1の配管10の横断面の外形が正多角形(ここでは、正十六角形)を呈している。すなわち、第1の配管10の外周面(外側面ともいう)には、周方向に並んで16箇所の平面(以下、「多角形面12」という)が形成されている。
これら多角形面12が形成されるのは、少なくとも、軸線の長手方向(図1の紙面左右方向)で熱電変換素子30が装着される領域であり、その他の箇所の外形は、円(すなわち円筒形状の外形)を呈してもよいし、多角形面12を呈してもよい。
【0011】
第2の配管20の長手方向の前後2箇所には前板21と後板22が装着されている。前板21と後板22が形成する空間内において、多角形面12に熱電変換素子30が当接されている。
熱電変換素子30の外周には、セパレータ23が密着して配置され、熱電変換素子30を囲繞する。セパレータ23は、加圧により弾性変形する特性を有する。
なお、本実施態様では、熱電変換素子30は長手方向にタンデムに配列されて設けられている構成を例示するが、これに限る主旨ではなく各種の配置を採用できる。
【0012】
第1の配管10とセパレータ23が形成する空間であって長手方向に熱電変換素子30が存在しない箇所に円環状のカラー33が配置されている。カラー33は、外径がセパレータ23と接し、かつ、内径が第1の配管10の外径と接しない構成となっている。
カラー33は、前板21および後板22に接する端部カラー33aと、2箇所の熱電変換素子30の間に配設される中央カラー33bとで構成される。
【0013】
第2の配管20とセパレータ23によって円環状閉空間24が画成されている。円環状閉空間24には非圧縮性流体である高熱伝導性グリースTGが充填されている。
高熱伝導性グリースTGとして、例えば、熱伝導率が2~10W/mK、粘度50~100Pa・s(25℃)といった物性値を有する材料(例えばシリコーンオイル)を用いることができる。
また、円環状閉空間24には、円環状閉空間24内部の圧力を調整する圧力調整手段25が設けられている。
圧力調整手段25は、加圧部25a、測定部25b、制御部25cおよび配管25dで構成される。
加圧部25aは、円環状閉空間24内部を加圧又は減圧する。測定部25bは、円環状閉空間24内部の圧力を測定する。ここでは、円環状閉空間24と連結している配管25dの圧力を測定する。制御部25cは、測定部25bの測定結果をもとに加圧部25aを制御して、円環状閉空間24内部の圧力を調整する。本実施形態では、制御部25cは円環状閉空間24内部の圧力を一定に調整する。配管25dは、加圧部25aと円環状閉空間24とを連結する。
【0014】
熱電変換素子30には配線31が接続されている。配線31が後板22を挿通する箇所は、フィードスルー32によって密封と絶縁が保たれている。セパレータ23と第1の配管10が画成する閉空間34が真空引きにより真空(例えば100Pa以下)となっている。
【0015】
第2の配管20と第3の配管40によって円環状空間41が画成され、円環状空間41には冷却媒体として水Wが流通している。冷却媒体は水W以外であってもよい。
本実施態様においては、多角形面12と熱電変換素子30の当接面、および、熱電変換素子30とセパレータ23の当接面には図示しないカーボンシートを介挿している。
【0016】
本実施態様においては、第1の配管10、第2の配管20、第3の配管40およびセパレータ23はいずれも熱伝導率の高い金属材料(例えば、銅、鉄、アルミニウム(それらの合金を含む))で構成される。これらは同一材料であってもよいし、異なる材料でもよい。なお、第1の配管10は、酸化防止を考慮するとステンレスが好ましい。第2の配管20は、高い熱伝導率を実現する観点から銅やアルミニウム(それらの合金を含む)が好ましい。
また、本実施態様においては、セパレータ23としては、肉厚が0.03~0.2mmの金属箔パイプが用いられてもよい。金属箔パイプとして、例えばステンレス箔で作成した管を用いることができる。
一方で、前板21、後板22およびカラー33は熱伝導率の低い金属材料や樹脂材料で構成される。これらは同一材料であってもよいし、異なる材料でもよい。
【0017】
次に、本実施態様の熱電変換装置1を用いて発電する様子を説明する。
第1の配管10の内部空間11に高温ガスHGを流通させ、第2の配管20と第3の配管40が画成する円環状空間41に水Wを流通させる。第2の配管20とセパレータ23が画成する円環状閉空間24に充填した高熱伝導性グリースTGを、圧力調整手段25を用いて一定の圧力に加圧する。
【0018】
熱電変換素子30は、その内面側(すなわち第1の配管10側)が高温となり、その外面側(円環状空間41側)が低温となる。これにより、熱電変換素子30の内面側と外面側との間に温度差が形成される。この結果、熱電変換素子30では熱電変換作用によって発電が行われる。
このとき、熱電変換素子30はセパレータ23を介して高熱伝導性グリースTGによって一様に軸心側へと押圧されており、熱電変換素子30と第1の配管10の多角形面12との密着度合いが高い状態に保たれるので、熱電変換の効率が向上する。
【0019】
第1の配管10とセパレータ23が形成する空間であって長手方向に熱電変換素子30が存在しない箇所に、外径がセパレータ23と接し、かつ、内径が第1の配管10の外径と接しない円環状のカラー33を配置するので、高熱伝導性グリースTGによってセパレータ23が軸心側へ押圧されてもカラー33がこれを受けるのでセパレータ23が破断することはない。なお、カラー33として円環状のものを例示したが、これに限らず、セパレータ23の破断防止機能を発揮する形状であれば各種の形状を採用できる。
【0020】
熱電変換装置1においては、熱電変換素子30以外の箇所においては断熱されていることが好ましい。ここで、カラー33は熱伝導率の低い金属材料で構成され、セパレータ23と第1の配管10が画成する閉空間34が真空となり高い断熱性が実現されている。この結果、熱電変換素子30における熱電変換の効率が向上する。
【0021】
次に、本実施態様の熱電変換装置1と従来の熱電変換装置1000を対比する。
1)熱電変換素子と高温熱源との密着について
従来の熱電変換装置1000は、ヒートシンク300の外側にサポートリング400を配置し、サポートリング400に装着したコイルスプリング410によってヒートシンク300および熱電変換素子200を配管100の軸心方向へと付勢している。すなわち、熱電変換装置1000ではヒートシンク300が押圧部材となって熱電変換素子200を押圧することになる。
【0022】
ヒートシンク300は、図4に示す通り、軸心長手方向において、タンデムに配列した熱電変換素子200のみならず、その前後に配された水流のインレット/アウトレットの配管まで延伸する長尺な部材であることが見て取れる。
【0023】
このヒートシンク300をコイルスプリング410で付勢しているが、熱電発電中に構成部材に局所的な熱変形が生じた場合、これに柔軟に追従して部材同士の密着度合いを保つことは非常に困難である。
【0024】
これに対して本実施形態の熱電変換装置1では、熱電変換素子30はセパレータ23を介して非圧縮性流体である高熱伝導性グリースTGによって一様に軸心側へと押圧(付勢)されており、部品同士、すなわち熱電変換素子30と第1の配管10の多角形面12との密着度合いが高い状態に保たれる。
【0025】
2)装置構成について
先ず、熱電変換素子の高温熱源への押圧構造に着目すると、従来の熱電変換装置1000は、メカニカルな付勢手段を採用しており非常に凝った装置構成となっているのに対して、本実施形態の熱電変換装置1では非圧縮性流体による付勢手段を採用しており構成部材は極めて簡素にまとめられている。このことは両者の図面を、構成する部品点数の多寡に着目して参照すればその差は明らかである(特に、両者の図面の縮尺を合わせて対比するとその差は歴然である)。
【0026】
次に、真空引きする箇所に着目すると、熱電変換装置1000はサポートリング400の外側を覆うように圧力容器を構成し、この内部空間を真空引きしているので大掛かりなものとなっているのに対し、熱電変換装置1では極小な閉空間34を真空引きするので極めて簡素である。
【0027】
このように、本実施態様の熱電変換装置1は従来と比較して熱電変換の効率が向上し、装置構成を簡素化することが可能となっている。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0028】
1 熱電変換装置
10 第1の配管
11 内部空間
12 多角形面
20 第2の配管
21 前板
22 後板
23 セパレータ
24 円環状閉空間
25 圧力調整手段
25a 加圧部
25b 測定部
25c 制御部
25d 配管
30 熱電変換素子
31 配線
32 フィードスルー
33 カラー
33a 端部カラー
33b 中央カラー
34 閉空間
40 第3の配管
41 円環状空間
HG 高熱媒体(高温ガス)
TG 非圧縮性流体(高熱伝導性グリース)
W 冷却媒体(水)
図1
図2
図3
図4