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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160321
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】締固め機械
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/41 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
E01C19/41
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070615
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000182384
【氏名又は名称】酒井重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】眞壁 淳
(72)【発明者】
【氏名】若松 亨
【テーマコード(参考)】
2D052
【Fターム(参考)】
2D052BB10
2D052BC01
(57)【要約】
【課題】転圧対象物の締固め度を高めることができる締固め機械を提供することを課題とする。
【解決手段】車体フレーム2と、車体フレーム2の前側に設けられた前側締固め装置3と、車体フレーム2の後側に設けられた後側締固め装置4と、バッテリ部32の電力によって回転駆動する回転駆動部33と、回転駆動部33の動力を前側締固め装置3に伝達する前側伝達装置6と、回転駆動部33の動力を後側締固め装置4に伝達する後側伝達装置7と、車体フレーム2に設けられ当該締固め機械を操作する管理部と通信可能な通信装置8と、通信装置8が受信した信号に基づいて各部位を制御する制御部31と、を備え、前側締固め装置3は左右方向軸に対して回転することで転圧対象物を締め固め、後側締固め装置4は転圧対象物を叩いて締め固めることを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームと、
前記車体フレームの前側に設けられた前側締固め装置と、
前記車体フレームの後側に設けられた後側締固め装置と、
バッテリ部の電力によって回転駆動する回転駆動部と、
前記回転駆動部の動力を前記前側締固め装置に伝達する前側伝達装置と、
前記回転駆動部の動力を前記後側締固め装置に伝達する後側伝達装置と、
前記車体フレームに設けられ当該締固め機械を操作する管理部と通信可能な通信装置と、
前記通信装置が受信した信号に基づいて各部位を制御する制御部と、を備え、
前記前側締固め装置は左右方向軸に対して回転することで転圧対象物を締め固め、前記後側締固め装置は転圧対象物を叩いて締め固めることを特徴とする締固め機械。
【請求項2】
前記前側締固め装置は振動可能なクローラ式であり、前記後側締固め装置はランマ式であることを特徴とする請求項1に記載の締固め機械。
【請求項3】
前記バッテリ部は、前記車体フレームの外部に設けられた充電装置を含んで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の締固め機械。
【請求項4】
前記車体フレームの前方及び後方の少なくとも一方に設けられ、撮像された画像データを前記制御部に送信する視認装置を備えていることを特徴とする請求項1に記載の締固め機械。
【請求項5】
進行方向を操作する操向装置を備えていることを特徴とする請求項1に記載の締固め機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締固め機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、地面等の締め固めを行う締固め機械が開示されている。当該締固め機械は、前輪が鉄輪であり、後輪がタイヤローラになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-149784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の締固め機械は、いずれも左右方向軸に対して鉄輪及びタイヤローラが回転することで転圧対象物を締め固めるというものであるが、さらなる締固め度の向上が求められている。
【0005】
そこで本発明は、転圧対象物の締固め度を高めることができる締固め機械を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の締固め機械は、車体フレームと、前記車体フレームの前側に設けられた前側締固め装置と、前記車体フレームの後側に設けられた後側締固め装置と、バッテリ部の電力によって回転駆動する回転駆動部と、前記回転駆動部の動力を前記前側締固め装置に伝達する前側伝達装置と、前記回転駆動部の動力を前記後側締固め装置に伝達する後側伝達装置と、前記車体フレームに設けられ当該締固め機械を操作する管理部と通信可能な通信装置と、前記通信装置が受信した信号に基づいて各部位を制御する制御部と、を備え、前記前側締固め装置は左右方向軸に対して回転することで転圧対象物を締め固め、前記後側締固め装置は転圧対象物を叩いて締め固めることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、前輪と後輪とで締め固める機構が異なるため、両者の良い部分を享受して、転圧対象物の締固め度を高めることができる。
【0008】
また、前記前側締固め装置は振動可能なクローラ式であり、前記後側締固め装置はランマ式であることが好ましい。
【0009】
本発明によれば、過剰な力を地盤に与えることなく深層まで締め固めることができる。また、表層から深層まで均一な締固め品質を確保できる。
【0010】
また、前記バッテリ部は、前記車体フレームの外部に設けられた充電装置を含んで構成されていることが好ましい。
【0011】
充電装置としては、例えば、ソーラーパネルを用いることができる。本発明によれば、充電することで電力を確保することができる。
【0012】
また、前記車体フレームの前方及び後方の少なくとも一方に設けられ、撮像された画像データを前記制御部に送信する視認装置を備えていることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、車体フレームの周囲の画像データを取得しつつ、締固め制御を行うことができる。
【0014】
また、進行方向を操作する操向装置を備えていることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、操作性を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の締固め機械によれば、転圧対象物の締固め度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る締固め機械の前方上側から見た全体斜視図である。
図2】本実施形態に係る締固め機械の後方上側から見た一部破断全体斜視図である。
図3】本実施形態に係る締固め機械の前方下側から見た一部破断全体斜視図である。
図4】本実施形態に係る締固め機械のブロック図である。
図5】本実施形態に係る締固め機械の充電装置の動作図である。
図6】本実施形態に係る締固め機械の充電装置の動作図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の締固め機械について、図面を参照して詳細に説明する。以下に記載する実施形態等は、あくまで例示であって、本発明を限定するものではない。説明における、上下、左右、前後は締固め機械の進行方向に従う。
【0019】
図1図2及び図4に示すように、本実施形態に係る締固め機械1は、車体フレーム2と、前側締固め装置3と、後側締固め装置4と、動力部5と、前側伝達装置6と、後側伝達装置7と、通信装置8と、操向装置9と、視認装置10と、を備えている。締固め機械1は、道路、舗装体、地面、月面等の転圧対象物を締め固める機械である。また、締固め機械1は、有人で操作してもよいが、本実施形態では無人で走行可能な自走式になっている。
【0020】
車体フレーム2は、各装置を保持するとともに各装置を覆う金属製のフレームである。車体フレーム2は、本実施形態では、後側車体フレーム2Aと、前側車体フレーム2Bとを備えている。後側車体フレーム2Aは、内部に中空部を備えた箱状体である。後側車体フレーム2Aは、動力部5、後側締固め装置4、後側伝達装置7等を保持している。前側車体フレーム2Bは、内部に中空部を備えた箱状体である。前側車体フレーム2Bは、後側車体フレーム2Aの前側に設けられ、前側締固め装置3、前側伝達装置6及び操向装置9等を保持している。
【0021】
前側締固め装置3は、前側車体フレーム2Bの内部に設置され、転圧対象物を締め固める装置である。前側締固め装置3は、左右方向軸に対して回転することで前進又は後進しながら転圧対象物を締め固める。前側締固め装置3は、本実施形態では、クローラ式であって側面視三角形状を呈し振動可能になっている。
【0022】
前側締固め装置3は、図2に示すように、クローラベルト11と、駆動ローラ12と、従動ローラ13,13と、を備えている。クローラベルト11は、無端の帯状部材であって、駆動ローラ12及び従動ローラ13,13の外側に亘って巻き掛けられ、側面視三角形の経路を周回するように構成されている。
【0023】
駆動ローラ12は、三角形の上部の頂点部分に位置し、従動ローラ13,13は、三角形の底辺側の頂点部分に位置している。駆動ローラ12及び従動ローラ13,13の回転軸は、いずれも左右方向軸に対して平行になっている。駆動ローラ12は、動力部5の動力によって回転する回転体である。従動ローラ13,13は、駆動ローラ12の回転に伴って回転する回転体である。クローラベルト11の外面には、複数の凸部14が設けられている。前側締固め装置3は、三角形の底面部分が転圧対象物と面接触しながら締め固めることができる。また、前側締固め装置3は、具体的な図示は省略するが、起振軸を内装しており、振動させながら締め固めることができる。
【0024】
なお、凸部14は、本実施形態では錐台形状としたが、どのような形状であってもよいし、省略してもよい。また、前側締固め装置3は、クローラ式ではなく、円筒状のローラで締め固める構成としてもよい。
【0025】
後側締固め装置4は、後側車体フレーム2Aの後部に設置され、転圧対象物を締め固める装置である。後側締固め装置4は、転圧対象物を叩いて締め固める。後側締固め装置4は、本実施形態ではランマ式になっている。
【0026】
後側締固め装置4は、左右方向に並設された左後側締固め装置4Aと、右後側締固め装置4Bと、で構成されている。図2に示すように、左後側締固め装置4Aは、ロッド21と、弾性部材22と、転圧板23と、を備えている。ロッド21の上端は、左後側伝達装置7Aに連結され、下端は転圧板23に固定されている。弾性部材22は、ロッド21の下端側に設けられており、転圧対象物からの衝撃を吸収する部位である。転圧板23は、鉛直方向軸に対して垂直になっている。一方、ロッド21は、鉛直方向軸に対して前側に傾斜するように配設されている。右後側締固め装置4Bは、左後側締固め装置4Aと左右対称の構造になっている。後側締固め装置4は、ロッド21を前側に傾斜させることにより、転圧対象物を締め固めつつ、締め固めた際の反力によって前方への推進力を生むように構成されている。
【0027】
動力部5は、図4に示すように、制御部31と、バッテリ部32と、回転駆動部33とを備えている。動力部5は、動力源になるとともに、各装置を制御する部位である。制御部31は、演算部(CPU:Central Processing Unit)、記憶部、通信部等を備えている。また、制御部31は、例えば、VCU(Vehicle control unit)を含んで構成されている。VCUは、各装置との間で監視、制御、判定等を行う機器である。制御部31は、自律走行装置と連動させて、遠隔操作による自律走行が実行できるように構成されている。
【0028】
また、制御部31は、GNSS(Global Navigation Satellite System)と連動させて、走行記録、位置情報、運転状況等を取得し、活用するようにしてもよい。また、制御部31は、路面の締固め情報を取得するセンサを備えた締固め管理装置と連動させて、リアルタイムに締固め情報を取得し、活用するようにしてもよい。また、制御部31は、運行情報(運転時間、異常情報、電池状況など)を、締固め機械1を操作する管理部(図示省略)に送信し、その情報を蓄積・管理することができるようにしてもよい。
【0029】
バッテリ部32は、例えば、蓄電池と、バッテリ管理部(例えば、BMU(Battery Management Unit))と、充電装置34と、を含んで構成されている。バッテリ部32は、各装置に電力を供給する部位である。充電装置34は、ソーラーパネルを備えており、太陽光で発電を行えるようになっている。充電装置34は、本実施形態では、左側充電装置34Aと、右側充電装置34Bとを備えている。左側充電装置34A及び右側充電装置34Bは、前側車体フレーム2Bの上面に設置されている。
【0030】
図1及び図5に示すように、左側充電装置34A及び右側充電装置34Bは、制御部31からの信号に基づいて前側車体フレーム2Bに対して回動する(上下方向軸に対して回動する)ように構成されている。また、図6に示すように、左側充電装置34A及び右側充電装置34Bは、制御部31からの信号に基づいて前側車体フレーム2Bに対して所望の角度で傾倒するように構成されている。左側充電装置34A及び右側充電装置34Bが、回動したり、傾倒したりすることで、ソーラーパネルを太陽の向きに正対させることができ、発電効率を高めることができる。
【0031】
回転駆動部33は、バッテリ部32の電力によって回転駆動する装置である。回転駆動部33は、単数又は複数の電気モータで構成することができる。電気モータは、装置ごとに設けてもよいし、一の電気モータから各装置に動力を伝達させてもよい。
【0032】
前側伝達装置6は、動力部5の動力を前側締固め装置3に伝達する装置である。前側伝達装置6は、例えば、ギヤ装置、ベルト装置で構成することができる。
【0033】
後側伝達装置7は、動力部5の動力を後側締固め装置4に伝達する装置である。後側伝達装置7は、例えば、ギヤ装置、ベルト装置で構成することができる。本実施形態では、後側締固め装置4がランマ式になっているため、後側伝達装置7は、回転駆動部33の回転力を鉛直方向の往復動作に変換する。後側伝達装置7は、左後側伝達装置7Aと、右後側伝達装置7Bとを備えている。左後側伝達装置7Aは、動力部5の動力を左後側締固め装置4Aに伝達する。右後側伝達装置7Bは、動力部5の動力を右後側締固め装置4Bに伝達する。
【0034】
通信装置8は、締固め機械1を操作する管理部(図示省略)との通信を行うことができる装置である。また、通信装置8は、GNSSから送信される位置情報及び時刻情報を受信可能になっている。通信装置8は、本実施形態では、パラボラアンテナを用いているが、他の形態のアンテナであってもよい。管理部は、遠隔地で締固め機械1を監視したり、操作したりすることができる。
【0035】
操向装置9は、進行方向を操作する装置である。操向装置9は、図3に示すように、ステアリングヨーク41と、旋回ベアリング42とを備えている。ステアリングヨーク41は、旋回ベアリング42から左側に延設された左アーム41aと、右側に延設された右アーム41bとを備えている。左アーム41a及び右アーム41bの下端は、前側締固め装置3を回転可能に軸支している。操向装置9は、動力部5から信号に基づいて、旋回ベアリング42を中心に鉛直方向軸回りに旋回するように構成されている。なお、例えば、前側締固め装置3を前後方向に沿って分割させて、各部位を逆回転させるなどして旋回するようにしてもよい。
【0036】
視認装置10は、画像又は動画を撮像し、撮像データを制御部31に送信する装置である。視認装置10は、本実施形態では、左前側視認装置10Aと、右前側視認装置10Bと、後側視認装置10Cと、を備えている。左前側視認装置10Aは前方左側、右前側視認装置10Bは前方右側、後側視認装置10Cは後方を撮像する。
【0037】
ここで、締固め装置がローラ式(鉄輪、タイヤローラ等)であると、構造は簡素化でき、表層の締固め度を高めることができるという利点がある。しかし、ローラ式であると、転圧部(転圧対象物との接触部分)が線状になるため、深層まで締め固めるのが困難になるという難点がある。
【0038】
一方、締固め装置がクローラ式であると、構造は複雑化するが、転圧部が面状となるため転圧対象物を広範囲で拘束し、深層まで締め固めることができる。また、クローラ式であると、過剰な力を加えなくても深層まで締め固めることができ、施工効率が高い。しかし、クローラ式であると、表層部分の締固め度を高めることができないという難点がある。
【0039】
他方、締固め装置がランマ式であると、プレートコンパクタやハンドガイドローラ等と比べて転圧面積は小さくなるが、鉛直方向に転圧対象物を叩くため表層から深層に至るまでの締固め能力は非常に優れている。
【0040】
前記した本実施形態の締固め機械1は、前側はクローラ式、後側はランマ式になっているため、両者の良いところが協働し、高い締固め能力を発揮することができる。つまり、本実施形態の締固め機械1であると、比較的広い範囲において、表層から深層に至るまで均一で、高い締固め度を発現できる。
【0041】
また、本実施形態では、充電装置(ソーラーパネル)34を備えているため、太陽光で充電することで電力を確保することができる。
【0042】
また、本実施形態では、視認装置10で車体フレーム2の周囲の画像データを取得することができるため、画像データを活用して締固め制御を行うことができる。また、本実施形態では、操向装置9を備えているため、操作性を高めることができる。
【0043】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。例えば、後側締固め装置4は、転圧板23が1つでもよいし、3つ以上であってもよい。また、本実施形態では、ロッド21を前側に傾斜させたが、鉛直方向軸と平行であってもよい。また、ロッド21を後側にも傾斜可能な機構にすれば、後進させる際にも前進と同様の効果を奏することができる。また、視認装置10は、前側及び後側の少なくとも一方に設置されていればよい。
【符号の説明】
【0044】
1 締固め機械
2 車体フレーム
3 前側締固め装置
4 後側締固め装置
5 動力部
6 前側伝達装置
7 後側伝達装置
8 通信装置
9 操向装置
10 視認装置
31 制御部
32 バッテリ部
33 回転駆動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6