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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160339
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/32 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
F16F9/32 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070649
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 将洋
(72)【発明者】
【氏名】大宮 智徳
【テーマコード(参考)】
3J069
【Fターム(参考)】
3J069AA50
3J069CC15
3J069DD47
(57)【要約】
【課題】ピストンの取り付け強度を調整することが可能となる緩衝器を提供する。
【解決手段】作動流体が封入された筒状のシリンダと、第1端部がシリンダ内に挿入され第2端部がシリンダ外に突出するピストンロッド81と、ピストンロッド81の第1端部に固定され、シリンダ内を摺接可能に配置されるピストン51と、を有し、ピストン51は、ピストン51に挿入される固定部材82により、ピストンロッド81に固定され、固定部材82は、ピストンロッド81と異なる材料で形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動流体が封入された筒状のシリンダと、
第1端部が前記シリンダ内に挿入され第2端部が前記シリンダ外に突出するピストンロッドと、
前記ピストンロッドの前記第1端部に固定され、前記シリンダ内を摺接可能に配置されるピストンと、
を有し、
前記ピストンは、該ピストンに挿入される固定部材により、前記ピストンロッドに固定され、
前記固定部材は、前記ピストンロッドと異なる材料で形成されている緩衝器。
【請求項2】
請求項1に記載の緩衝器であって、
前記固定部材には、前記作動流体が連通する流路が形成されている緩衝器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の緩衝器であって、
前記固定部材は、前記ピストンロッドの前記第1端部側の端面に設けられた孔部に挿入されると共に、前記孔部から径方向内側に突出する突出部により前記ピストンロッドに固定されている緩衝器。
【請求項4】
請求項3に記載の緩衝器であって、
前記突出部は、前記ピストンロッドの径方向外側から押圧されることにより該ピストンロッドの径方向外側に形成された凹部と共に形成されるかしめ部である緩衝器。
【請求項5】
請求項4に記載の緩衝器であって、
前記ピストンロッドは、前記第1端部側に設けられ、該第1端部へ向かうほど径が小さくなるテーパ部を有し、
前記かしめ部は、前記テーパ部の大径側の端部に設けられている緩衝器。
【請求項6】
請求項1に記載の緩衝器であって、
前記ピストンロッドは、前記第1端部から前記第2端部まで連通する中空のピストンロッドである緩衝器。
【請求項7】
請求項2に記載の緩衝器であって、
前記ピストンロッドは、前記第1端部から前記第2端部まで連通する中空のピストンロッドである緩衝器。
【請求項8】
請求項3に記載の緩衝器であって、
前記ピストンロッドは、前記第1端部から前記第2端部まで連通する中空のピストンロッドである緩衝器。
【請求項9】
請求項4に記載の緩衝器であって、
前記ピストンロッドは、前記第1端部から前記第2端部まで連通する中空のピストンロッドである緩衝器。
【請求項10】
請求項5に記載の緩衝器であって、
前記ピストンロッドは、前記第1端部から前記第2端部まで連通する中空のピストンロッドである緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器において、ピストンロッドをロッド本体とボルトとで構成し、これらでピストンを固定するものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2769318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
緩衝器において、ピストンの取り付け強度を調整する要望があった。
【0005】
したがって、本発明は、ピストンの取り付け強度を調整することが可能となる緩衝器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る一態様は、作動流体が封入された筒状のシリンダと、第1端部が前記シリンダ内に挿入され第2端部が前記シリンダ外に突出するピストンロッドと、前記ピストンロッドの前記第1端部に固定され、前記シリンダ内を摺接可能に配置されるピストンと、を有し、前記ピストンは、該ピストンに挿入される固定部材により、前記ピストンロッドに固定され、前記固定部材は、前記ピストンロッドと異なる材料で形成されている、構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ピストンの取り付け強度を調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る第1実施形態の緩衝器を示す断面図である。
図2】本発明に係る第1実施形態の緩衝器の要部を示す断面図である。
図3】本発明に係る第1実施形態の緩衝器の要部を示す分解断面図である。
図4】本発明に係る第2実施形態の緩衝器の要部を示す断面図である。
図5】本発明に係る第3実施形態の緩衝器の要部を断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態の緩衝器について、図面を参照しつつ以下に説明する。
【0010】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態の緩衝器11を示すものである。この緩衝器11は、自動車や鉄道車両等の車両のサスペンション装置に用いられる緩衝器(Shock absorber)である。緩衝器11は、具体的には自動車のサスペンション装置に用いられる油圧緩衝器である。緩衝器11は、内筒15と外筒16とを有するシリンダ17を備えた複筒式の油圧緩衝器である。内筒15は円筒状である。外筒16は内筒15よりも大径の有底円筒状である。外筒16は内筒15の径方向外側に、内筒15と同軸状に設けられている。よって、シリンダ17は筒状である。外筒16と内筒15との間はリザーバ室18となっている。
【0011】
外筒16は胴部20と底部21とを有している。胴部20は円筒状である。底部21は、胴部20の軸方向の一方の端部を閉塞する。胴部20の軸方向における底部21とは反対側は開口部22となっている。外筒16の開口部22は、シリンダ17においても軸方向の一端に設けられる開口部となる。内筒15は、円筒状である。
【0012】
緩衝器11は、ロッドガイド31と、ベースバルブ32とを備えている。
【0013】
ロッドガイド31は、円環状であり、シリンダ17の軸方向の開口部22側に設けられている。ロッドガイド31は、外周部が大径部分とこれよりも小径の小径部分とを有する段差状をなしている。ロッドガイド31は、外周部の大径部分が外筒16の胴部20に嵌合されている。
【0014】
ベースバルブ32は、バルブボディ35を有している。バルブボディ35は、外筒16に対し径方向に位置決めされて外筒16の底部21に載置されている。バルブボディ35は、外周部が大径部分とこれよりも小径の小径部分とを有する段差状をなしている。
【0015】
内筒15は、軸方向の一端部が、バルブボディ35の外周部の小径部分に嵌合されている。内筒15は、軸方向の他端部が、ロッドガイド31の外周部の小径部分に嵌合されている。これにより、内筒15は、外筒16に対し同軸状に配置されている。
【0016】
緩衝器11は、シール部材41を備えている。シール部材41は、シリンダ17の軸方向におけるロッドガイド31の開口部22側に設けられている。シール部材41は、円環状であり、ロッドガイド31と同様に胴部20の内周部に嵌合されている。シール部材41は、外筒16の開口部22側の係止部42とロッドガイド31とに挟持されている。シール部材41は外筒16との隙間を閉塞する。
【0017】
緩衝器11はピストン51を備えている。ピストン51はピストン本体52と摺動部材53とを有している。ピストン本体52は、金属製であり、円環状である。摺動部材53は合成樹脂製であり、円環帯状である。摺動部材53はピストン本体52の外周面に一体的に装着されている。ピストン51は、シリンダ17の内筒15内を摺接可能に配置されている。ピストン51は、摺動部材53が内筒15に接触した状態で内筒15に対して摺動する。
【0018】
ピストン51は、内筒15内を第1室61と第2室62との2室に区画している。第1室61は、内筒15内のピストン51とロッドガイド31との間に設けられている。第2室62は、内筒15内のピストン51とバルブボディ35との間に設けられている。第2室62は、バルブボディ35によって、リザーバ室18と区画されている。シリンダ17内には、第1室61および第2室62に作動流体としての油液Lが封入されている。シリンダ17内には、リザーバ室18に作動流体としての油液LとガスGとが封入されている。
【0019】
ピストン51には、ピストン本体52に通路64および通路65が形成されている。通路64および通路65は、いずれもピストン51を軸方向に貫通している。通路64および通路65は、いずれも第1室61と第2室62とを連通可能である。
【0020】
緩衝器11は、ディスクバルブ67とディスクバルブ68とを備えている。
図2に示すように、ディスクバルブ67は、複数枚の金属製の有孔円板状のディスク71が積層されて構成されている。ディスクバルブ67は、図1に示すように、ピストン51の軸方向における底部21とは反対側に設けられている。ディスクバルブ67は、ピストン51に当接することで通路64を閉塞し、ピストン51から離間するように変形することで通路64を開放する。
【0021】
図2に示すように、ディスクバルブ68は、複数枚の有孔円板状の金属製のディスク72が積層されて構成されている。ディスクバルブ68は、図1に示すように、ピストン51の軸方向における底部21側に設けられている。ディスクバルブ68は、ピストン51に当接することで通路65を閉塞し、ピストン51から離間するように変形することで通路65を開放する。
【0022】
緩衝器11は、変形抑制部材75と、変形抑制部材76とを備えている。変形抑制部材75および変形抑制部材76は、いずれも有孔円板状であり、金属製である。変形抑制部材75は、ディスクバルブ67の開方向の所定以上の変形を抑制する。変形抑制部材76は、ディスクバルブ68の開方向の所定以上の変形を抑制する。
【0023】
緩衝器11は、いずれも金属製の、ピストンロッド81と、固定部材82とを備えている。ピストン51、ディスクバルブ67,68および変形抑制部材75,76は、固定部材82によって、ピストンロッド81に固定されている。
【0024】
ピストンロッド81は、軸方向の一端側の第1端部がシリンダ17の内部に挿入されている。ピストンロッド81には、この第1端部にピストン51、ディスクバルブ67,68および変形抑制部材75,76が固定部材82によって固定されている。
【0025】
ピストンロッド81は、軸方向の第1端部とは反対側の第2端部がシリンダ17外に突出している。ピストンロッド81は、軸方向の中間部が、ロッドガイド31とシール部材41とシリンダ17の開口部22とに挿通されている。ロッドガイド31とシール部材41とはピストンロッド81と摺接する。
【0026】
ピストンロッド81は、主軸部91とテーパ部92とを有している。主軸部91は、円筒面状の外周面部95を有している。ピストンロッド81は、主軸部91においてロッドガイド31およびシール部材41を通ってシリンダ17から外部へと延出している。ロッドガイド31は、ピストンロッド81を径方向に位置決めし軸方向に摺動可能に支持する。ピストンロッド81は、主軸部91の外周面部95においてロッドガイド31に案内される。
【0027】
ピストンロッド81は、主軸部91の外周面部95がシール部材41の内周部に摺接する。その際に、シール部材41はピストンロッド81との隙間を閉塞する。シール部材41は、ロッドガイド31とによって、外筒16の胴部20とピストンロッド81の主軸部91との間をシールして、内筒15内の油液Lと、リザーバ室18内のガスGおよび油液Lとが外部に漏出するのを規制する。ロッドガイド31とシール部材41とが、一端が開口部22とされ他端が閉塞されたシリンダ17の開口部22側に設けられて開口部22を閉塞する蓋となっている。
【0028】
テーパ部92は、ピストンロッド81の軸方向における、シリンダ17の内部に挿入される第1端部側に設けられている。テーパ部92は、外周側に、図2に示すように外周面部95に連続するテーパ面部96を有している。テーパ面部96は、ピストンロッド81の軸方向において第1端部へ向かうほど径が小さくなっている。すなわち、テーパ部92は、ピストンロッド81の軸方向において第1端部へ向かうほど外径が小さくなっている。
【0029】
ピストンロッド81は、テーパ部92の軸方向における主軸部91とは反対側に端面97を有している。端面97は、ピストンロッド81の第1端部側の端面となっている。端面97は、ピストンロッド81の中心軸線に対して垂直に広がる平面状である。端面97は、テーパ面部96のピストンロッド81の軸方向における外周面部95とは反対側の端縁部から、ピストンロッド81の径方向における内方に広がっている。
【0030】
ピストンロッド81には、端面97に孔部101が形成されている。孔部101は、端面97に垂直に形成されている。孔部101は、ピストンロッド81の中心軸線上に形成されている。孔部101は、ピストンロッド81の軸方向において、テーパ部92を貫通しており、主軸部91のテーパ部92側の一部と重なり合う位置まで延びている。
【0031】
孔部101は、大径穴部102と、ネジ穴部103と、下穴部104と、を有している。
【0032】
大径穴部102は、孔部101の軸方向において最も端面97側に設けられている。大径穴部102は、孔部101において最も内径が大径である。ピストンロッド81の軸方向において、大径穴部102の長さは、テーパ部92の長さと同等になっている。
【0033】
ネジ穴部103は、孔部101の軸方向において大径穴部102の端面97とは反対側に設けられており、内周部にメネジ105が形成されている。メネジ105のネジ底径は、大径穴部102の内径よりも小径である。
【0034】
下穴部104は、孔部101の軸方向においてネジ穴部103の大径穴部102とは反対側に設けられている。下穴部104は、孔部101の軸方向において最も端面97とは反対側に設けられている。下穴部104は、その内径が大径穴部102の内径よりも小径であり、メネジ105のネジ山径よりも若干小径である。
【0035】
固定部材82は、ボルト部材であり、頭部111と、嵌合軸部112と、ネジ軸部113とを有している。
【0036】
頭部111は、固定部材82の軸方向における一端部に設けられている。頭部111は、略円板状である。図示は略すが、頭部111の外周部には、平面状の切欠きが180度位置を異ならせて2箇所設けられている。これらの切欠きに工具が係合されて工具による固定部材82への回転入力が行われる。
【0037】
嵌合軸部112は、頭部111の平面状の座面114の中央から座面114に垂直に延出している。嵌合軸部112は、その外径が、頭部111の図示略の切欠きを除く部分の外径よりも小径となっている。嵌合軸部112は、円筒面状の外周面部115を有している。
【0038】
ネジ軸部113は、嵌合軸部112の軸方向における頭部111とは反対側の端部から頭部111とは反対の方向に延出している。ネジ軸部113は、固定部材82の軸方向において頭部111とは反対側の他端部に設けられている。ネジ軸部113には外周部にオネジ116が形成されている。オネジ116のネジ山径は、嵌合軸部112の外径よりも若干小径となっている。
【0039】
ここで、固定部材82の材質はピストンロッド81の材質とは異なっている。言い換えれば、固定部材82は、ピストンロッド81と異なる材料で形成されている。固定部材82は、例えば、ピストンロッド81よりも高強度の材料で形成されている。具体的に、ピストンロッド81は、S25C等の機械構造用炭素鋼で形成され、固定部材82は、S45C等の機械構造用炭素鋼で形成されている。
【0040】
図3に示すように、固定部材82には、頭部111の座面114に、ネジ軸部113および嵌合軸部112を内側に挿通させた状態で、変形抑制部材76、ディスクバルブ68、ピストン51、ディスクバルブ67および変形抑制部材75が、この順に載置される。すると、変形抑制部材76、ディスクバルブ68、ピストン51、ディスクバルブ67および変形抑制部材75は、いずれも、固定部材82の嵌合軸部112に嵌合する。
【0041】
そして、このように、頭部111に、変形抑制部材76、ディスクバルブ68、ピストン51、ディスクバルブ67および変形抑制部材75を載置させた状態の固定部材82が、変形抑制部材75よりも突出するネジ軸部113側の部分において、ピストンロッド81の孔部101に挿入される。その際に、固定部材82は、ネジ軸部113が孔部101のネジ穴部103に螺合される。そして、固定部材82がピストンロッド81に対して締め付けられることで、図2に示すように、固定部材82の座面114と、ピストンロッド81の端面97とで、変形抑制部材76、ディスクバルブ68、ピストン51、ディスクバルブ67、変形抑制部材75が挟持される。これにより、変形抑制部材76、ディスクバルブ68、ピストン51、ディスクバルブ67、変形抑制部材75がピストンロッド81に固定される。すなわち、ピストン51は、ピストン51に挿入される固定部材82により、ピストンロッド81に固定される。
【0042】
ピストンロッド81は、図1に示すシリンダ17に対して、ピストン51と一体に軸方向に移動する。ピストンロッド81がシリンダ17からの突出量を増やす緩衝器11の伸び行程において、ピストン51は第1室61側へ移動する。ピストンロッド81がシリンダ17からの突出量を減らす緩衝器11の縮み行程において、ピストン51は第2室62側へ移動する。
【0043】
ピストンロッド81が内筒15および外筒16内への進入量を増やす縮み側に移動しピストン51が第2室62を狭める方向に移動すると、第2室62の圧力が第1室61の圧力よりも高くなる。すると、ディスクバルブ67が通路64を開いて第2室62の油液Lを第1室61に流すことになる。その際にディスクバルブ67は減衰力を発生させる。ピストンロッド81が内筒15および外筒16からの突出量を増やす伸び側に移動しピストン51が第1室61を狭める方向に移動すると、第1室61の圧力が第2室62の圧力よりも高くなる。すると、ディスクバルブ68が通路65を開いて第1室61の油液Lを第2室62に流すことになる。その際にディスクバルブ68は減衰力を発生させる。
【0044】
図2に示すように、ピストン51およびディスクバルブ67のうちの少なくとも一方には固定オリフィス85が形成されている。この固定オリフィス85は、ディスクバルブ67が通路64を最も閉塞した状態でも通路64を介して、図1に示す第1室61と第2室62とを連通させる。また、図2に示すように、ピストン51およびディスクバルブ68のうちの少なくとも一方にも固定オリフィス86が形成されている。この固定オリフィス86は、ディスクバルブ68が通路65を最も閉塞した状態でも通路65を介して、図1に示す第1室61と第2室62とを連通させる。
【0045】
外筒16の底部21と内筒15との間には、上記したベースバルブ32が設けられている。ベースバルブ32は、上記したバルブボディ35とディスクバルブ131とディスクバルブ132と取付ピン133とを有している。
【0046】
ベースバルブ32は、バルブボディ35が底部21に載置されており、バルブボディ35が内筒15に嵌合している。バルブボディ35は、第2室62とリザーバ室18とを仕切っている。ベースバルブ32には、軸方向の底部21側に径方向に貫通する通路溝135が形成されている。通路溝135によって、ベースバルブ32と底部21との間の室は、内筒15と外筒16の胴部20との間の室に連通している。ベースバルブ32と底部21との間の室と、内筒15と胴部20との径方向の間の室とが、リザーバ室18を構成している。
【0047】
ディスクバルブ131は、バルブボディ35の底部21側すなわちリザーバ室18側に設けられている。ディスクバルブ132は、バルブボディ35の底部21とは反対側すなわち第2室62側に設けられている。取付ピン133は、バルブボディ35にディスクバルブ131およびディスクバルブ132を取り付けている。
【0048】
バルブボディ35は、円環状をなしており、径方向の中央に取付ピン133が挿通される。バルブボディ35には、複数の通路穴137と複数の通路穴138とが形成されている。複数の通路穴137は、第2室62とリザーバ室18との間で油液Lを流通させる。複数の通路穴138は、バルブボディ35の径方向における複数の通路穴137の外側に配置されている。複数の通路穴138は、第2室62とリザーバ室18との間で油液Lを流通させる。リザーバ室18側のディスクバルブ131は、第2室62から通路穴137を介するリザーバ室18への油液Lの流れを許容する。その一方で、ディスクバルブ131はリザーバ室18から第2室62への通路穴137を介する油液Lの流れを抑制する。ディスクバルブ132は、リザーバ室18から通路穴138を介する第2室62への油液Lの流れを許容する。その一方で、ディスクバルブ132は、第2室62からリザーバ室18への通路穴138を介する油液Lの流れを抑制する。
【0049】
ディスクバルブ131は、緩衝器11の縮み行程において開弁して第2室62からリザーバ室18に油液Lを流すとともに減衰力を発生させる。ディスクバルブ132は、緩衝器11の伸び行程において開弁してリザーバ室18から第2室62内に油液Lを流す。その際に、ディスクバルブ132は、主としてピストンロッド81のシリンダ17からの伸び出しにより生じる油液Lの不足分を補うようにリザーバ室18から第2室62に実質的に減衰力を発生することなく油液Lを流す機能を果たす。
【0050】
緩衝器11は、ピストンロッド81のシリンダ17から外部に延出する部分が車両の車体側に連結され、シリンダ17の外筒16が車両の車輪側に連結される。
【0051】
上記した特許文献1には、ピストンロッドをロッド本体とボルトとで構成し、これらでピストンを固定する緩衝器が記載されている。ところで、緩衝器において、ピストンの取り付け強度を調整する要望があった。
【0052】
第1実施形態の緩衝器11は、ピストン51に挿入されてピストン51をピストンロッド81に固定する固定部材82が、ピストンロッド81とは異なる材料で形成されている。したがって、ピストン51の取り付け強度を調整することが可能となる。しかも、ピストン51に挿入される固定部材82の強度を調整することから、ピストン51の取り付け強度を効果的に調整することが可能となる。例えば、固定部材82をピストンロッド81よりも高強度の材料で形成すれば、ピストン51の取り付け強度を効果的に高めることができる。
【0053】
また、第1実施形態の緩衝器11は、固定部材82とピストンロッド81とがネジ締結であるため、これらに溶接が不可な材質を選択することが可能となり、材料選択の自由度が高くなる。
【0054】
また、第1実施形態の緩衝器11は、ピストンロッド81の第1端部に固定される部品が異なっても、固定部材82を変更すれば、ピストンロッド81は共通部品とすることができる(例えば、後述する第3実施形態を参照)。これにより、ピストンロッド81の加工性や生産性を向上させることができ、ピストンロッド81の品質管理が容易となる。
【0055】
また、第1実施形態の緩衝器11は、固定部材82の製造においては鍛造などの塑性加工を用いることで無駄材が発生することを抑制することができる。
【0056】
また、第1実施形態の緩衝器11は、ピストンロッド81にネジ軸部を形成する必要がなく、固定部材82を連結するための加工で済むため、材料歩留まりを向上させることができる。
【0057】
また、第1実施形態の緩衝器11は、コンタミネーションの原因となるねじ締結時に生じる金属屑等を、ピストンロッド81の内部に封じ込めることができるため、油液L中での金属屑の浮遊等を抑制することができる。
【0058】
また、第1実施形態の緩衝器11は、ピストンロッド81に固定される部品を、予め固定部材82に装着してサブアッセンブリ化しておくことができるため、その後の組み付け工程を容易にすることができる。
【0059】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を主に図4に基づいて第1実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第1実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0060】
第2実施形態においては、図4に示すように、ピストンロッド81の孔部101に、ネジ穴部103から径方向内側に突出する突出部151が形成されている。
【0061】
すなわち、ピストンロッド81には、径方向外側から押圧されることによって凹部152が形成される。突出部151は、この凹部152と共にピストンロッド81に形成されるかしめ部である。すなわち、ピストンロッド81に、径方向外側からかしめによって凹部152を塑性変形で形成することによって突出部151が塑性変形で形成される。言い換えれば、突出部151は、ピストンロッド81の径方向外側から押圧されることにより凹部152と共に形成されるかしめ部である。凹部152および突出部151は、固定部材82によってピストン51、ディスクバルブ67,68および変形抑制部材75,76が取り付けられた状態のピストンロッド81に形成される。
【0062】
ここで、凹部152は、ピストンロッド81の円周方向に長い溝状であり、このような凹部152がピストンロッド81の円周方向に間隔をあけて複数形成されている。よって、突出部151もピストンロッド81の円周方向に長いリブ状であり、このような突出部151がピストンロッド81の円周方向に間隔をあけて複数形成されている。勿論、凹部152および突出部151は、それぞれ一箇所ずつであっても良い。また、凹部152および突出部151は、円錐状であっても良い。突出部151は、メネジ105を塑性変形させながら形成されている。
【0063】
ピストンロッド81の突出部151は、固定部材82のネジ軸部113に径方向に食い込んでいる。この突出部151の食い込みによって、固定部材82のネジ軸部113には、径方向内方に凹む食込部155が塑性変形によって形成されている。食込部155は、オネジ116を塑性変形させながら形成されることになる。
【0064】
ピストンロッド81および固定部材82の円周方向に間隔をあけて形成された複数の突出部151が、同様に間隔をあけて形成された複数の食込部155に、それぞれ一対一対応で径方向に入り込むことによって、固定部材82がピストンロッド81に対して回り止めされる。すなわち、固定部材82は、ピストンロッド81の孔部101から径方向内側に突出する突出部151によりピストンロッド81に固定される。また、メネジ105とオネジ116とが塑性変形させられることによっても、固定部材82がピストンロッド81に対して回り止めされる。
【0065】
ここで、凹部152は、テーパ部92の大径側の端部に設けられている。例えば、凹部152は、外周面部95のテーパ面部96側の端部が径方向内方にかしめられることによって形成されている。この位置は、かしめ前のメネジ105およびオネジ116と軸方向の位置を重ね合わせている。
【0066】
以上に述べた第2実施形態によれば、固定部材82は、ピストンロッド81の第1端部側の端面97に設けられた孔部101に挿入されると共に、孔部101から径方向内側に突出する突出部151によりピストンロッド81に固定されている。よって、固定部材82は、ピストンロッド81に対して回り止め、すなわち緩み止めがなされることになる。したがって、固定部材82によるピストン51、ディスクバルブ67,68および変形抑制部材75,76のピストンロッド81への取り付けの信頼性の向上およびディスクバルブ67,68による減衰力特性の安定化を図ることができる。
【0067】
また、第2実施形態によれば、突出部151は、ピストンロッド81の径方向外側から押圧されることによりピストンロッド81の径方向外側に形成された凹部152と共に形成されるかしめ部である。よって、突出部151を容易に形成することができる。したがって、固定部材82によるピストン51、ディスクバルブ67,68および変形抑制部材75,76のピストンロッド81への取り付けの信頼性の向上およびディスクバルブ67,68による減衰力特性の安定化を、容易に図ることができる。また、ねじ締結の軸力に影響を与えずに固定部材82のピストンロッド81に対する回り止めを図ることができることから、ディスクバルブ67,68による減衰力特性を良好に得ることができる。
【0068】
また、第2実施形態によれば、かしめ部である凹部152および突出部151は、ピストンロッド81のテーパ部92の大径側の端部に設けられている。よって、凹部152および突出部151を形成する際の形成位置を容易に把握することができる。したがって、かしめ部である凹部152および突出部151を容易に適正な位置に形成することができる。
【0069】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態を主に図5に基づいて第2実施形態との相違部分を中心に説明する。なお、第2実施形態と共通する部位については、同一称呼、同一の符号で表す。
【0070】
第3実施形態においては、図5に示すように、固定部材82が、これとは一部異なる固定部材82Aに変更されている。固定部材82Aは、嵌合軸部112よりも軸方向に長い嵌合軸部112Aを有している。嵌合軸部112Aには、その中心軸線に沿う方向に平面状に切り欠かれた切欠部171が形成されている。嵌合軸部112Aには、切欠部171が、嵌合軸部112Aの円周方向に間隔をあけて複数箇所形成されている。具体的に、嵌合軸部112Aには、切欠部171が180度位相を異ならせて2箇所形成されている。固定部材82Aも、固定部材82と同様に、ピストンロッド81と異なる材料で形成されている。
【0071】
また、第3実施形態においては、ディスクバルブ68の軸方向におけるピストン51とは反対側に、減衰力可変機構181が設けられており、減衰力可変機構181の軸方向におけるピストン51とは反対側に周波数感応機構182が設けられている。
【0072】
減衰力可変機構181は、ディスクバルブ68の軸方向におけるピストン51とは反対側に当接する押圧バルブ191と、押圧バルブ191との間に背圧室192を形成するケース部材193と、ケース部材193の軸方向におけるピストン51とは反対側に配置されるディスクバルブ194と、を有している。ディスクバルブ194は、複数枚の金属製の有孔円板状のディスク195が積層されて構成されている。
【0073】
周波数感応機構182は、ディスクバルブ194の軸方向におけるピストン51とは反対側に配置されるハウジング201と、ハウジング201の軸方向におけるピストン51とは反対側に配置される支持部材202と、支持部材202の軸方向におけるピストン51とは反対側に配置される蓋部材203と、蓋部材203とハウジング201との間に配置される可変部材204とを有している。可変部材204は、ハウジング201と支持部材202と蓋部材203との間を、蓋部材203とは反対側の可変室207と、蓋部材203側の可変室208とに区画する。支持部材202は、複数枚の金属製の有孔円板状のディスク209が積層されて構成されている。
【0074】
固定部材82Aには、ネジ軸部113および嵌合軸部112Aを内側に挿通させた状態で、頭部111の座面114に、蓋部材203、支持部材202、ハウジング201、ディスクバルブ194、ケース部材193、押圧バルブ191、ディスクバルブ68、ピストン51、ディスクバルブ67および変形抑制部材75が、この順に載置される。その際に、支持部材202および蓋部材203とハウジング201との間に可変部材204が配置される。すると、蓋部材203、支持部材202、ハウジング201、ディスクバルブ194、ケース部材193、押圧バルブ191、ディスクバルブ68、ピストン51、ディスクバルブ67および変形抑制部材75は、いずれも、固定部材82Aの嵌合軸部112Aに嵌合する。その際に、可変部材204は、ハウジング201と支持部材202と蓋部材203とに支持される。
【0075】
食込部155が形成される前の状態であって、頭部111に、蓋部材203、支持部材202、ハウジング201、ディスクバルブ194、ケース部材193、押圧バルブ191、ディスクバルブ68、ピストン51、ディスクバルブ67および変形抑制部材75が、載置された状態の固定部材82Aが、変形抑制部材75よりも突出するネジ軸部113側の部分において、凹部152および突出部151が形成される前の状態のピストンロッド81の孔部101に挿入される。その際に、固定部材82Aは、ネジ軸部113が孔部101のネジ穴部103に螺合される。そして、固定部材82Aがピストンロッド81に対して締め付けられることで、固定部材82Aの座面114と、ピストンロッド81の端面97とで、蓋部材203、支持部材202、ハウジング201、ディスクバルブ194、ケース部材193、押圧バルブ191、ディスクバルブ68、ピストン51、ディスクバルブ67および変形抑制部材75が挟持される。
【0076】
その後、第2実施形態と同様に、ピストンロッド81に凹部152および突出部151が形成されることになり、これにより、固定部材82Aのネジ軸部113に食込部155が形成されることになる。これにより、蓋部材203、支持部材202、ハウジング201、ディスクバルブ194、ケース部材193、押圧バルブ191、ディスクバルブ68、ピストン51、ディスクバルブ67および変形抑制部材75が、ピストンロッド81に固定される。すなわち、ピストン51は、ピストン51に挿入される固定部材82Aによってピストンロッド81に固定される。
【0077】
この状態で、固定部材82Aの切欠部171は、支持部材202、ハウジング201、ディスクバルブ194、ケース部材193、押圧バルブ191、ディスクバルブ68およびピストン51との間に、作動流体である油液Lが連通する流路211を形成する。流路211は、ディスクバルブ68に形成された図示略の通路を介して、ピストン51の通路65すなわち第1室61に常時連通している。
【0078】
また、流路211は、ディスクバルブ194に形成された図示略の通路によって背圧室192に常時連通している。
【0079】
また、流路211は、ハウジング201に形成された図示略の通路によって可変室207に常時連通している。可変室208は、蓋部材203に形成された図示略の通路によって第2室62に常時連通している。
【0080】
減衰力可変機構181は、伸び行程において第1室61から通路65および流路211を介して背圧室192に導入される圧力をディスクバルブ68に閉弁方向に作用させる。ディスクバルブ68は、ピストン51の通路65から受ける圧力と、背圧室192から受ける圧力とのバランスによって開弁して、通路65から油液Lを第2室62に流すことになり、その際に減衰力を発生させる。これにより、減衰力可変機構181は、ディスクバルブ68が通路65から受ける圧力と背圧室192から受ける圧力とのバランスに応じて通路65から第2室62に油液Lを流す際の減衰力を変化させる。また、減衰力可変機構181は、背圧室192の圧力が高くなると、ディスクバルブ194が開いて、背圧室192の油液Lを第2室62に流すことになり、その際に減衰力を発生させる。これにより、背圧室192の圧力が下がる。
【0081】
周波数感応機構182は、伸び行程において第1室61から通路65および流路211を介して可変室207に導入される圧力によって可変部材204が変位して可変室207の容量を変化させる。
【0082】
周波数感応機構182は、伸び行程においてピストン周波数が高い場合、伸び行程の都度、可変部材204が支持部材202を支点として変形して可変室207の容量を拡大させる。よって、第1室61からディスクバルブ68あるいはディスクバルブ194を開いて第2室62に流れる油液Lの液量を減らす。これにより、ピストン周波数が高い場合の伸び行程の減衰力がソフトな特性になる。
【0083】
他方、周波数感応機構182は、伸び行程においてピストン周波数が低い場合、伸び行程の初期に、第1室61の油液Lが通路65および流路211を介して可変室207に大量に導入される。すると、可変部材204が限界まで変形し、それ以上可変室207の容量を拡大できなくなる。よって、その後は、第1室61からディスクバルブ68あるいはディスクバルブ194を開いて第2室62に流れる油液Lの液量が減らない状態になる。これにより、ピストン周波数が低い場合の伸び行程の減衰力がハードな特性になる。
【0084】
ここで、周波数感応機構182は、縮み行程において、第2室62の圧力によって可変部材204の内周部が支持部材202から離れて開くと、第2室62から、可変室208、可変室207、流路211および通路65を介して第1室61に油液Lを流す。
【0085】
以上に述べた第3実施形態によれば、固定部材82Aには、作動流体である油液Lが連通する流路211が形成されている。よって、流路211を固定部材82Aに設けることができるため、流路211の形成が容易となる。
【0086】
なお、第1~第3実施形態において、ピストンロッド81を、軸方向一側の第1端部から軸方向他側の第2端部まで連通する中空としても良い。これにより、ピストンロッド81の軽量化を図ることができる。
【0087】
また、第1~第3実施形態において、かしめ部である凹部152および突出部151で固定部材82,82Aのピストンロッド81に対する回り止めを施すのではなく、固定部材82,82Aをピストンロッド81に対し溶接で回り止めを施しても良い。また、かしめ部と溶接の両方で固定部材82,82Aのピストンロッド81に対する回り止めを施しても良い。
【符号の説明】
【0088】
11…緩衝器、17…シリンダ、51…ピストン、81…ピストンロッド、82,82A…固定部材、92…テーパ部、97…端面、101…孔部、151…突出部、152…凹部。
図1
図2
図3
図4
図5