(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160353
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】粉状燃料バーナ
(51)【国際特許分類】
F23D 1/02 20060101AFI20231026BHJP
F23D 17/00 20060101ALI20231026BHJP
F23C 1/06 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
F23D1/02 Z
F23D17/00 A
F23C1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070677
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武藤 貞行
(72)【発明者】
【氏名】矢原 俊
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 晶大
【テーマコード(参考)】
3K065
3K091
【Fターム(参考)】
3K065QA01
3K065QB03
3K065QB10
3K091AA01
3K091AA20
3K091BB02
3K091BB25
3K091CC12
(57)【要約】
【課題】 石油残渣燃料等の難燃性の粉状燃料が粉砕機から直接供給されても、着火性の向上を図ることができる粉状燃料バーナを提供する。
【解決手段】 ボイラの燃焼室に設置される粉状燃料バーナであって、粉状燃料と搬送用空気とを混合した混合気が搬送され、先端から混合気を燃焼室へ噴出する円筒状の混合気搬送管51と、混合気搬送管51の先端に設置された旋回羽根64と、混合気の搬送方向において旋回羽根64よりも上流寄りの混合気搬送管51の中心軸線5a上に設置され、混合気搬送管51と同心状で中心軸線方向に延びた円筒面62aを有する棒状の中央流れ阻害部62と、中央流れ阻害部62と旋回羽根64との間の混合気搬送管51の内壁面51sに沿って設置され、混合気搬送管51と同心状で中心軸線方向に延びた円筒状の内周面63aを有する筒状の周辺流れ阻害部63と、を備えている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラの燃焼室に設置される粉状燃料バーナであって、
粉状燃料と搬送用空気とを混合した混合気が搬送され、先端から混合気を前記燃焼室へ噴出する円筒状の混合気搬送管と、
前記混合気搬送管の先端に設置された旋回羽根と、
混合気の搬送方向において前記旋回羽根よりも上流寄りの前記混合気搬送管の中心軸線上に設置され、前記混合気搬送管と同心状で前記中心軸線方向に延びた円筒面を有する棒状の中央流れ阻害部と、
前記中央流れ阻害部と前記旋回羽根との間の前記混合気搬送管の内壁面に沿って設置され、前記混合気搬送管と同心状で前記中心軸線方向に延びた円筒状の内周面を有する筒状の周辺流れ阻害部と、
を備えた粉状燃料バーナ。
【請求項2】
前記中央流れ阻害部の前記円筒面の直径が、前記周辺流れ阻害部の前記円筒状の内周面の直径以上である、
請求項1に記載の粉状燃料バーナ。
【請求項3】
前記中央流れ阻害部は、前記円筒面の両端に、前記円筒面の端から前記中心軸線方向に突出し円錐の側面形状をなす曲面を有し、前記曲面と前記中心軸線とのなす角度が20度以下であり、
前記周辺流れ阻害部は、前記円筒状の内周面の両端に、前記内周面の端から前記中心軸線方向に突出して前記混合気搬送管の内壁面に繋がり円錐台の側面形状をなす曲面を有し、前記曲面と前記混合気搬送管の内壁面とのなす角度が20度以下である、
請求項1または2に記載の粉状燃料バーナ。
【請求項4】
前記中央流れ阻害部は、前記中心軸線方向の位置を調整可能に構成された、
請求項1または2に記載の粉状燃料バーナ。
【請求項5】
前記旋回羽根は、
前記混合気搬送管と同心状で前記混合気搬送管の先端にかつ前記混合気搬送管の内側に設置され、前記周辺流れ阻害部の前記円筒状の内周面の直径以上の内径を有する円筒部と、
前記円筒部の外周面に取り付けられた複数の羽根とを備えた、
請求項1または2に記載の粉状燃料バーナ。
【請求項6】
前記粉状燃料は、石油残渣燃料、バイオマス燃料、または、バイオマスと微粉炭との混合燃料である、
請求項1または2に記載の粉状燃料バーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ボイラ等に用いられる粉状燃料バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
ボイラ等に用いられ、粉状燃料を燃焼する粉状燃料バーナ(以下、単に「バーナ」とも言う)として、例えば特許文献1に記載の微粉炭燃焼装置が挙げられる。この微粉炭燃焼装置は、筒状体を微粉炭通路とし、筒状体を囲むように2次空気通路、3次空気通路が設けられ、筒状体内に1以上のベンチュリー部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、微粉炭を燃料にする場合には、粉砕機で石炭を粉砕した微粉炭を搬送用空気と混合し、この混合気を粉砕機から直接バーナへ供給する直接燃焼方式が採用されている。
【0005】
近年、石油コークス等の石油残渣を燃料に利用することが考えられている。石油残渣燃料は固定炭素を多く含むため、微粉炭と比較して燃えにくい難燃性の粉状燃料である。この石油残渣燃料のように難燃性の粉状燃料の良好な着火性を得るためには、バーナからボイラの燃焼室へ供給される混合気の空燃比であるA/F(=燃料搬送用空気量[Nm3/h]/燃料流量[t/h])を微粉炭の場合よりも小さくする必要がある。
【0006】
ところが、従来式の粉砕機から供給される混合気のA/Fは微粉炭には適しているが、難燃性の粉状燃料には適していない。そこで、粉砕機とバーナとの間に、混合気を固気分離して一時的に粉状燃料を貯蔵する貯槽等を設置し、難燃性の粉状燃料に適したA/Fとなるように貯槽から送出される粉状燃料に搬送用空気を加えた混合気を生成してバーナへ供給する間接燃焼方式の構成が考えられる。このような間接燃焼方式の場合には、直接燃焼方式の場合に比べて固気分離装置および貯槽等の追加設備が必要となり、設備コストの増加が避けられない。
【0007】
本開示は上記のような課題を解決するためになされたもので、石油残渣燃料等の難燃性の粉状燃料が粉砕機から直接供給されても、着火性の向上を図ることができる粉状燃料バーナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示のある態様に係る粉状燃料バーナは、ボイラの燃焼室に設置される粉状燃料バーナであって、粉状燃料と搬送用空気とを混合した混合気が搬送され、先端から混合気を前記燃焼室へ噴出する円筒状の混合気搬送管と、前記混合気搬送管の先端に設置された旋回羽根と、混合気の搬送方向において前記旋回羽根よりも上流寄りの前記混合気搬送管の中心軸線上に設置され、前記混合気搬送管と同心状で前記中心軸線方向に延びた円筒面を有する棒状の中央流れ阻害部と、前記中央流れ阻害部と前記旋回羽根との間の前記混合気搬送管の内壁面に沿って設置され、前記混合気搬送管と同心状で前記中心軸線方向に延びた円筒状の内周面を有する筒状の周辺流れ阻害部と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、以上に説明した構成を有し、石油残渣燃料等の難燃性の粉状燃料が粉砕機から直接供給されても、着火性の向上を図ることができる粉状燃料バーナを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る粉状燃料バーナを備えたボイラを含む燃焼システムの一例を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る粉状燃料バーナの一例を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、混合気搬送管の基端側から視た旋回羽根の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、別の旋回羽根を用いた粉状燃料バーナの要部を示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、別の旋回羽根を用いた粉状燃料バーナの要部を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を模式的に示したもので、形状及び寸法比等については正確な表示ではない場合がある。
【0012】
(実施形態)
図1は、本実施形態に係る粉状燃料バーナを備えたボイラを含む燃焼システムの一例を示す概略図である。
【0013】
図1に示す燃焼システムは、燃料供給装置20とボイラ100とを備えている。燃料供給装置20は、燃料貯槽21と計量フィーダ22と粉砕機23とを備える。燃料貯槽21には、例えば石油コークス等の石油残渣等の難燃性の燃料が貯留される。燃料貯槽21に貯留されている燃料は計量フィーダ22に供給され、計量フィーダ22から所定重量の燃料が粉砕機23に供給される。粉砕機23は、計量フィーダ22から供給された燃料を粉砕して粉状にし、この粉状燃料と搬送用空気とを混合した混合気をボイラ100の粉状燃料バーナ5へ供給する。この粉砕機23から粉状燃料バーナ5へ供給される混合気の空燃比であるA/Fは1.8程度である。
【0014】
ボイラ100は、倒立型の堅型炉として構成されている。ボイラ100は、例えば長方形断面の筒状に形成された燃焼室1と、当該燃焼室1にガス流出口11を介して接続される煙道12とを備えている。
【0015】
燃焼室1は、上端部に形成される高温還元燃焼室2と、高温還元燃焼室2の下方に形成される低温酸化燃焼室3と、高温還元燃焼室2と低温酸化燃焼室3とを互いに接続する絞り部4とを有している。絞り部4は、燃焼室1の他の部分に比べて水平断面積を20~50%減少させた流路である。
【0016】
高温還元燃焼室2の壁は、所定の高温の炉内温度に耐えうる耐火材6で覆われている。高温還元燃焼室2の対向する2つの側壁の各々には、複数の粉状燃料バーナ5が配設されている。本例では、粉状燃料バーナ5が8つ設けられている。8つのバーナ5は、それぞれ、火炎軸が正対しないように、且つ、軸平行となるように配されている。高温還元燃焼室2では、バーナ5から供給される燃料が、高温の還元雰囲気中で初期燃焼される。ここで発生する燃焼ガスは、新たに供給される燃料により燃焼ガスが増加するため、高温還元燃焼室2から押し出されて絞り部4を通って低温酸化燃焼室3へ流下する。
【0017】
低温酸化燃焼室3の側壁は水冷壁構造になっており、高温還元燃焼室2から絞り部4を通って流下した高温の燃焼ガスが冷却される。低温酸化燃焼室3には、絞り部4から下方へ離間した炉壁に、二段燃焼用空気を供給する複数の空気ノズル7が単段あるいは複数段配設されている。空気ノズル7より下方の二段燃焼領域10において、空気ノズル7から供給される空気によって、燃焼ガス中の未燃ガスを低温の酸化雰囲気中で二段燃焼させる。炉底に溜まった燃焼灰は、灰排出口8から炉外へ排出される。
【0018】
二段燃焼領域10の下方側面に、煙道12に通じるガス流出口11が設けられている。二段燃焼領域10で生じた燃焼ガスはU字状に流れを反転させて煙道12に流入する。煙道12には、蒸気過熱器管13とエコノマイザ14とが設けられている。煙道12に流入した燃焼ガスは、蒸気過熱器管13及びエコノマイザ14でボイラ水と熱交換を行い、後処理工程に供給される。また、燃焼ガスに同伴する燃焼灰は灰排出口15から排出される。
【0019】
このボイラ100では、粉状燃料バーナ5から供給された燃料が、高温還元燃焼室2において高温還元雰囲気で初期燃焼され、さらに低温酸化燃焼室3において低温酸化雰囲気で二段燃焼されることにより、NOx発生量が低減される。
【0020】
図2は、本実施形態に係る粉状燃料バーナ5の一例を示す概略断面図である。
図3は、
図2におけるA-A断面図である。
【0021】
図2に示す粉状燃料バーナ5は、粉砕機23から供給される混合気が搬送される円筒状の混合気搬送管51および風箱52を備える。風箱52は、2次空気を高温還元燃焼室2へ供給する2次空気供給路53と、旋回ベーン55で旋回された3次空気を高温還元燃焼室2へ供給する3次空気供給路54とを備えている。つまり、混合気搬送管51の先端から混合気が高温還元燃焼室2へ噴出され、混合気搬送管51の先端の周囲から燃焼用空気である2次空気および3次空気が高温還元燃焼室2へ供給される。
【0022】
また、混合気搬送管51の先端には、保炎板51aが混合気搬送管51と一体化して配設されている。混合気搬送管51の先端には旋回羽根64および短い内筒65が設置されている。混合気搬送管51の基端は、エルボ管58を介して粉砕機23からの混合気が供給される混合気供給管57に接続されている。また、混合気搬送管51の中心軸線5a上にガンタイプの重油バーナまたはガスバーナからなる着火用バーナ61が配置されている。
【0023】
旋回羽根64は、着火用バーナ61の先端付近に固定されている。
図4は、混合気搬送管51の基端側から視た旋回羽根64の一例を示す図である。この旋回羽根64は、着火用バーナ61に取り付けられる円筒部64aと、平板よりなる複数の羽根64bとを備えた周知のものであり、内筒65の内側に配置される。内筒65は、混合気搬送管51と同心状で混合気搬送管51の内側に設置されている。複数の羽根64bは、円筒部64aの外周面に等間隔で、円筒部64aの中心線に対して所定の角度を有して取り付けられている。円筒部64aの中心線は中心軸線5aと同一であり、円筒部64aは混合気搬送管51と同心状に設置されている。
【0024】
この粉状燃料バーナ5では、ボイラ100の運転開始時には、まず、着火用バーナ61から噴出される重油またはガスが燃焼される。そして、高温還元燃焼室2が温められてから粉状燃料バーナ5から混合気が噴出され、混合気内の粉状燃料の燃焼が開始される。この後は、適時に着火用バーナ61からの重油またはガスの噴出が停止され、粉状燃料バーナ5から噴出される混合気内の粉状燃料の燃焼が継続される。
【0025】
本実施形態の粉状燃料バーナ5は、混合気の搬送方向において旋回羽根64よりも上流寄りの混合気搬送管51の中心軸線5a上に棒状の中央流れ阻害部62が設置されている。この中央流れ阻害部62は、混合気搬送管51と同心状で中心軸線5a方向に延びた円筒面62aを有している。また、中央流れ阻害部62と旋回羽根64との間の混合気搬送管51の内壁面51sに沿って筒状の周辺流れ阻害部63が設置されている。この周辺流れ阻害部63は、混合気搬送管51と同心状で中心軸線5a方向に延びた円筒状の内周面63aを有している。
【0026】
この粉状燃料バーナ5によれば、混合気搬送管51の内部を流れる混合気は、中央流れ阻害部62によって管内周辺を流れた後、周辺流れ阻害部63によって管内中央方向に向きを変えられて管内中央部分を中心軸線5a方向と同方向に流れる。その後、周辺流れ阻害部63の設置領域を抜け出すと管内全体に広がって流れ、旋回羽根64によって旋回されて燃焼室1へ噴出される。ここで、混合気に含まれる粉状燃料の粒子は、周辺流れ阻害部63の設置領域を中心軸線5a方向と同方向に直進して通過した後も、慣性力によって直進しようとするので、矢印S1で示すように混合気搬送管51の中央部分には粉状燃料の濃度が高い混合気、つまりA/Fが小さい状態の混合気が流れ、旋回羽根64を通過して燃焼室1の着火領域R1へ噴出される。また、矢印S2で示すように混合気搬送管51の管壁近辺には粉状燃料の濃度が低い混合気つまりA/Fが大きい状態の混合気が流れる。よって、A/Fが大きい状態の混合気が本バーナ5へ供給されても、燃焼室1へ噴出する混合気のA/Fを局所的に小さくすることができる。すなわち、石油残渣燃料等の難燃性の粉状燃料がその着火および燃焼に適したA/Fよりも大きい状態で粉砕機23から直接供給されても、燃焼室1へ噴出する混合気のA/Fを局所的に小さくして粉状燃料の着火および燃焼に適したA/Fにすることができる。その結果、着火性の向上が図れ、安定した燃焼が可能になる。ちなみに、本例では、粉砕機23から供給される混合気のA/Fは、1.8程度であるが、難燃性の粉状燃料の一例である石油コークスの着火および燃焼に適したA/Fは、1.5以下が好ましく、1.0程度がより好ましい。
【0027】
さらに、中央流れ阻害部62および周辺流れ阻害部63の詳細について、
図5を参照して説明する。なお、
図5は、上記旋回羽根64とは異なる別の旋回羽根66を用いた粉状燃料バーナ5の要部を示す概略断面図である。この
図5の場合、
図2の旋回羽根64および内筒65に代えて、旋回羽根66を備えた構成であり、旋回羽根66以外の構成は、
図2に示す粉状燃料バーナ5と同様である。
【0028】
図5に示すように、中央流れ阻害部62は円筒面62aの中心軸線5a方向の長さL1が一定値以上の所定長さである。これにより、円筒面62aの表面を通過した混合気に含まれる粉状粒子の流れ方向が中心軸線5aの方向と平行になるようにしている。また、周辺流れ阻害部63は円筒状の内周面63aの中心軸線5a方向の長さL2が一定値以上の所定長さである。これにより、内周面63aの表面を通過した混合気に含まれる粉状粒子の流れ方向が中心軸線5aの方向と平行になるようにしている。
【0029】
また、中央流れ阻害部62の円筒面62aの直径が、周辺流れ阻害部63の円筒状の内周面63aの直径以上である。換言すれば、中央流れ阻害部62の円筒面62aの直径と、混合気搬送管51の内壁面51sから周辺流れ阻害部63の内周面63aまでの距離の2倍との合計が混合気搬送管51の内径以上である。よって、混合気搬送管51内を中心軸線5a方向から視た場合、例えば
図3に示すように、中央流れ阻害部62と周辺流れ阻害部63との間に隙間が無いように見える。これにより、混合気搬送管51内を流れる混合気の全てが、中央流れ阻害部62及び周辺流れ阻害部63によって流れ方向が規制されるので、混合気の流れを所望の流れとすることができ、燃焼室1へ噴出する混合気のA/Fを局所的に小さくすることに寄与する。
【0030】
また、中央流れ阻害部62は、円筒面62aの両端に、円筒面62aの端から中心軸線5a方向に突出し円錐の側面形状をなす曲面62b,62cを有する。この曲面62b,62cと中心軸線5aとのなす角度e,fが20度以下であることが好ましい。これにより、混合気搬送管51内を流れる混合気が中央流れ阻害部62を通過する前後において剥離渦の発生を抑制し、混合気の流れを所望の流れとすることができる。なお、曲面62bは、円筒面62aの混合気の搬送方向における上流側の端から上流寄りに突出して形成され、曲面62cは、円筒面62aの下流側の端から下流寄りに突出して形成されている。
【0031】
また、周辺流れ阻害部63は、円筒状の内周面63aの両端に、内周面63aの端から中心軸線5a方向に突出して混合気搬送管51の内壁面51sに繋がり円錐台の側面形状をなす曲面63b,63cを有する。この曲面63b,63cと混合気搬送管51の内壁面51sとのなす角度g,hが20度以下であることが好ましい。これにより、混合気搬送管51内を流れる混合気が周辺流れ阻害部63を通過する前後において剥離渦の発生を抑制し、混合気の流れを所望の流れとすることができる。このように、混合気搬送管51内の混合気の流れを所望の流れとすることができ、燃焼室1へ噴出する混合気のA/Fを局所的に小さくすることに寄与する。なお、曲面63bは、内周面63aの混合気の搬送方向における上流側の端から上流寄りに突出して形成され、曲面63cは、内周面63aの下流側の端から下流寄りに突出して形成されている。
【0032】
また、中央流れ阻害部62は、中心軸線5a方向の位置を調整可能に構成されていてもよい。この場合、例えば、中央流れ阻害部62を着火用バーナ61に中心軸線5a方向に摺動自在に取り付け、中央流れ阻害部62に操作レバーを接続し、この操作レバーを混合気搬送管51の外部へ引き出して、操作レバーを中心軸線5a方向に移動可能な構成としてもよい。これにより、中央流れ阻害部62を中心軸線5a方向に移動させて中央流れ阻害部62の下流側曲面62cと周辺流れ阻害部63の上流側曲面63bとの間隔を調整することができる。上記間隔を狭くするほど、周辺流れ阻害部63を通過後の混合気中の粉状燃料の濃度が混合気搬送管51のより中央に近い部分が高くなり、適切な濃度分布となるように上記間隔を調整することができる。
【0033】
なお、
図5に示す旋回羽根66は、混合気搬送管51の先端にかつ混合気搬送管51の内側に設置された円筒部66aと、平板よりなる複数の羽根66bとを備えている。複数の羽根66bは、円筒部66aの外周面に等間隔で、円筒部66aの中心線に対して所定の角度を有して取り付けられている。円筒部66aの中心線は中心軸線5aと同一であり、円筒部66aは混合気搬送管51と同心状に設置されている。つまり、旋回羽根66は、概ね、前述の旋回羽根64において円筒部64aの径を大きくした構成である。この旋回羽根66の円筒部66aは、周辺流れ阻害部63の円筒状の内周面63aの直径以上の内径を有している。
【0034】
例えば、
図4に示す旋回羽根64では、その中心に近い中央部分では複数の羽根64bが込み入っている。この中央部分の旋回羽根64によって着火領域R1の外側へ粉状燃料の多くの粒子がはじき飛ばされる場合には、
図5に示す旋回羽根66を用いることで、混合気搬送管51の中心付近から粉状燃料の多くの粒子を着火領域R1へ供給することができる。よって、燃焼室1の着火領域R1へ供給される混合気のA/Fを局所的に小さくすることに寄与する。
【0035】
また、
図6は、上記旋回羽根64,66とは異なる別の旋回羽根67を用いた粉状燃料バーナ5の要部を示す概略断面図である。この旋回羽根67は、概ね、
図2に示す旋回羽根64において、羽根64bの長さを長くすることにより径を大きくした構成であり、内筒65は設置していない。場合によっては、このような旋回羽根67を用いてもよい。
【0036】
なお、本実施形態において、着火用バーナ61が混合気搬送管51の内部ではなく、別途設置される場合には、着火用バーナ61に代えて、中心軸線5a上に中心軸棒を設置し、その中心軸棒に中央流れ阻害部62が取り付けられていてもよい。この場合、
図2、
図6の旋回羽根64,67も上記中心軸棒に取り付けられていてもよい。
【0037】
また、本実施形態における難燃性の粉状燃料は、微粉炭よりも燃えにくい石油残渣燃料、バイオマス燃料、または、バイオマスと微粉炭との混合燃料であってもよい。
【0038】
上記説明から、当業者にとっては、本開示の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本開示を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本開示の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【0039】
(まとめ)
本開示の第1態様に係る粉状燃料バーナは、ボイラの燃焼室に設置される粉状燃料バーナであって、粉状燃料と搬送用空気とを混合した混合気が搬送され、先端から混合気を前記燃焼室へ噴出する円筒状の混合気搬送管と、前記混合気搬送管の先端に設置された旋回羽根と、混合気の搬送方向において前記旋回羽根よりも上流寄りの前記混合気搬送管の中心軸線上に設置され、前記混合気搬送管と同心状で前記中心軸線方向に延びた円筒面を有する棒状の中央流れ阻害部と、前記中央流れ阻害部と前記旋回羽根との間の前記混合気搬送管の内壁面に沿って設置され、前記混合気搬送管と同心状で前記中心軸線方向に延びた円筒状の内周面を有する筒状の周辺流れ阻害部と、を備えている。
【0040】
この構成によれば、混合気搬送管の内部を流れる混合気は、中央流れ阻害部によって管内周辺を流れた後、周辺流れ阻害部によって管内中央方向に向きを変えられて管内中央部分を中心軸線方向と同方向に流れる。その後、周辺流れ阻害部の設置領域を抜け出すと管内全体に広がって流れ、旋回羽根によって旋回されて燃焼室へ噴出される。ここで、混合気に含まれる粉状燃料の粒子は、周辺流れ阻害部の設置領域を中心軸線方向と同方向に直進して通過した後も、慣性力によって直進しようとするので、混合気搬送管の中央部分には粉状燃料の濃度が高く、他の部分の濃度が低い状態となって旋回羽根を通過して燃焼室へ噴出される。よって、A/Fが大きい状態の混合気が本バーナへ供給されても、燃焼室へ噴出する混合気のA/Fを局所的に小さくすることができる。すなわち、石油残渣燃料等の難燃性の粉状燃料がその着火および燃焼に適したA/Fよりも大きい状態で粉砕機から直接供給されても、燃焼室へ噴出する混合気のA/Fを局所的に小さくして粉状燃料の着火および燃焼に適したA/Fにすることができる。その結果、着火性の向上が図れ、安定した燃焼が可能になる。
【0041】
本開示の第2態様に係る粉状燃料バーナは、第1態様に係る粉状燃料バーナにおいて、前記中央流れ阻害部の前記円筒面の直径が、前記周辺流れ阻害部の前記円筒状の内周面の直径以上である。これにより、混合気搬送管内を流れる混合気の全てが、中央流れ阻害部及び周辺流れ阻害部によって流れ方向が規制されるので、混合気の流れを所望の流れとすることができ、燃焼室へ噴出する混合気のA/Fを局所的に小さくすることに寄与する。
【0042】
本開示の第3態様に係る粉状燃料バーナは、第1または第2態様に係る粉状燃料バーナにおいて、前記中央流れ阻害部は、前記円筒面の両端に、前記円筒面の端から前記中心軸線方向に突出し円錐の側面形状をなす曲面を有し、前記曲面と前記中心軸線とのなす角度が20度以下であり、前記周辺流れ阻害部は、前記円筒状の内周面の両端に、前記内周面の端から前記中心軸線方向に突出して前記混合気搬送管の内壁面に繋がり円錐台の側面形状をなす曲面を有し、前記曲面と前記混合気搬送管の内壁面とのなす角度が20度以下である。これにより、混合気搬送管内を流れる混合気が中央流れ阻害部を通過する前後において剥離渦の発生を抑制するとともに、周辺流れ阻害部を通過する前後において剥離渦の発生を抑制する。このように、混合気搬送管内において剥離渦の発生を抑制し混合気の流れを所望の流れとすることができ、燃焼室へ噴出する混合気のA/Fを局所的に小さくすることに寄与する。
【0043】
本開示の第4態様に係る粉状燃料バーナは、第1~第3のいずれかの態様に係る粉状燃料バーナにおいて、前記中央流れ阻害部は、前記中心軸線方向の位置を調整可能に構成されている。これにより、中央流れ阻害部を中心軸線方向に移動させて中央流れ阻害部と周辺流れ阻害部との間隔を調整することができる。上記間隔を狭くするほど、周辺流れ阻害部を通過後の混合気中の粉状燃料の濃度が混合気搬送管のより中央に近い部分が高くなり、適切な濃度分布となるように上記間隔を調整することができる。
【0044】
本開示の第5態様に係る粉状燃料バーナは、第1~第4のいずれかの態様に係る粉状燃料バーナにおいて、前記旋回羽根は、前記混合気搬送管と同心状で前記混合気搬送管の先端にかつ前記混合気搬送管の内側に設置され、前記周辺流れ阻害部の前記円筒状の内周面の直径以上の内径を有する円筒部と、前記円筒部の外周面に取り付けられた複数の羽根とを備えている。これにより、混合気搬送管の中心付近から粉状燃料の多くの粒子を燃焼室へ供給することができ、燃焼室へ噴出する混合気のA/Fを局所的に小さくすることに寄与する。
【0045】
本開示の第6態様に係る粉状燃料バーナは、第1~第5のいずれかの態様に係る粉状燃料バーナにおいて、前記粉状燃料は、石油残渣燃料、バイオマス燃料、または、バイオマスと微粉炭との混合燃料である。
【符号の説明】
【0046】
1 ボイラの燃焼室
5 粉状燃料バーナ
51 混合気搬送管
62 中央流れ阻害部
62a 中央流れ阻害部の円筒面
63 周辺流れ阻害部
63a 周辺流れ阻害部の内周面
64,66,67 旋回羽根
66a 旋回羽根の円筒部
66b 旋回羽根の羽根