(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160354
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】サーマルプリントヘッド、およびサーマルプリンタ
(51)【国際特許分類】
B41J 2/335 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
B41J2/335 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070679
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】仲谷 吾郎
【テーマコード(参考)】
2C065
【Fターム(参考)】
2C065GA01
2C065GB01
2C065JC01
2C065JC13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】主走査方向の印刷長が様々に異なるサーマルプリントヘッドの製造効率を高めることが可能な構造を提供する。
【解決手段】サーマルプリントヘッドA1は、厚さ方向の一方側を向く支持面821を有する支持体82と、前記厚さ方向の一方側および他方側を向く主面および裏面を有し、支持体82に支持された基材10と、基材10に支持され、x方向(主走査方向)に配列された複数の発熱部41を含む抵抗体層4と、基材10に支持され、且つ複数の発熱部41に導通する配線層3と、支持体82および基材10を接合する接合材9と、を備える。基材10は、x方向に並ぶ複数の個片チップ10Aを含む。各個片チップ10Aは、y方向(副走査方向)の一方側を向く第1側面101と、y方向の他方側を向く第2側面102と、を有する。接合材9は、複数の個片チップ10Aの各々の第1側面101と、支持面821とに接する第1部91を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向の一方側を向く支持面を有する支持体と、
前記厚さ方向の一方側を向く主面および前記厚さ方向の他方側を向く裏面を有し、前記支持体に支持された基材と、
前記基材に支持され、主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層と、
前記基材に支持され、且つ前記複数の発熱部に導通する配線層と、
前記支持体および前記基材を接合する接合材と、を備え、
前記基材は、前記主走査方向に並ぶ複数の個片チップを含み、
前記各個片チップは、副走査方向の一方側を向く第1側面と、前記副走査方向の他方側を向く第2側面と、を有し、
前記接合材は、前記複数の個片チップの各々の前記第1側面と、前記支持面とに接する第1部を含む、サーマルプリントヘッド。
【請求項2】
前記第1部は、複数の第1接合部と、第2接合部と、を有し
前記複数の第1接合部は、前記各個片チップの前記第1側面と前記支持面とを個別に接合しており、
前記第2接合部は、前記複数の個片チップの各々の前記第1側面に跨って接し、且つ前記複数の第1接合部を覆う、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項3】
前記接合材は、前記複数の個片チップの各々の前記第2側面と、前記支持面とに接する第2部を含む、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項4】
前記第2部は、前記複数の個片チップの各々の前記第2側面に跨って接する、請求項3に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項5】
前記各発熱部に流す電流を制御する駆動ICを備える、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項6】
前記駆動ICは、前記基材に対して前記副走査方向の他方側に配置されている、請求項5に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項7】
前記抵抗体層は、前記基材の上に配置されており、
前記配線層は、前記抵抗体層の上に配置されている、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項8】
前記配線層は、前記複数の個片チップそれぞれに互いに分離して配置される、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項9】
前記抵抗体層は、前記複数の個片チップそれぞれに互いに分離して配置される、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項10】
前記支持体を支持する放熱部材をさらに備える、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項11】
前記基材は、Si単結晶半導体からなる、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項12】
前記基材は、前記主面から突出し、且つ前記主走査方向に延びており、前記複数の個片チップそれぞれに配置された凸部を有し、
前記複数の発熱部は、前記凸部の上に配置されている、請求項11に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項13】
前記複数の個片チップにおける前記凸部は、前記主走査方向に見て互いに重なっている、請求項12に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項14】
前記支持面と前記裏面とは、互いに接触している、請求項1に記載のサーマルプリントヘッド。
【請求項15】
請求項1ないし14のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドと、
前記複数の発熱部に対向して配置されたプラテンと、を備える、サーマルプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、サーマルプリントヘッド、およびサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、従来のサーマルプリントヘッドの一例が開示されている。サーマルプリントヘッドは一般に、ヘッド基板上に主走査方向に並ぶ多数の発熱部を備えている。各発熱部は、ヘッド基板に形成された抵抗体層上に、抵抗体層の一部を露出させるように電極層を積層することで形成されている。電極層に通電することにより、上記抵抗体層の露出部(発熱部)がジュール熱により発熱する。
【0003】
特許文献1に開示されたサーマルプリントヘッドは、基材としてSi(シリコン)が用いられ、たとえばSiウエハに対して行う半導体プロセスにより、抵抗体層を含む各構成部が形成されている。サーマルプリントヘッドの仕様である主走査方向の印刷長には、様々な種類がある。主走査方向の印刷長が異なるサーマルプリントヘッドを製造するためには、互いに長さが異なる複数種類の個片に、Siウエハを分割する必要がある。印刷長が異なるサーマルプリントヘッドの種類が多いほど、Siウエハからサーマルプリントヘッドを製造する効率が低下することが懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、主走査方向の印刷長が様々に異なるサーマルプリントヘッドの製造効率を高めることが可能な構造を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の側面によって提供されるサーマルプリントヘッドは、厚さ方向の一方側を向く支持面を有する支持体と、前記厚さ方向の一方側を向く主面および前記厚さ方向の他方側を向く裏面を有し、前記支持体に支持された基材と、前記基材に支持され、主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層と、前記基材に支持され、且つ前記複数の発熱部に導通する配線層と、前記支持体および前記基材を接合する接合材と、を備え、前記基材は、前記主走査方向に並ぶ複数の個片チップを含み、前記各個片チップは、副走査方向の一方側を向く第1側面と、前記副走査方向の他方側を向く第2側面と、を有し、前記接合材は、前記複数の個片チップの各々の前記第1側面と、前記支持面とに接する第1部を含む。
【0007】
本開示の第2の側面によって提供されるサーマルプリンタは、本開示の第1の側面に係るサーマルプリントヘッドと、前記複数の発熱部に対向して配置されたプラテンと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、サーマルプリントヘッドの長尺化を図ることが可能である。
【0009】
本開示のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す平面図である。
【
図4】
図4は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
【
図5】
図5は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
【
図7】
図7は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドの製造方法の一例の一工程を示す要部断面図である。
【
図26】
図26は、
図1に示したサーマルプリントヘッドと比べて基材が多数の個片チップにより構成される場合を示す平面図である。
【
図27】
図27は、
図1に示したサーマルプリントヘッドと比べて基材が少数の個片チップにより構成される場合を示す平面図である。
【
図28】
図28は、第1実施形態の変形例に係るサーマルプリントヘッドを示す要部拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
本開示における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単に識別のために用いたものであり、必ずしもそれらの対象物に順列を付することを意図していない。
【0013】
本開示において、「ある物Aがある物Bに形成されている」および「ある物Aがある物B上に形成されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接形成されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに形成されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物Bに配置されている」および「ある物Aがある物B上に配置されている」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに直接配置されていること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物を介在させつつ、ある物Aがある物Bに配置されていること」を含む。同様に、「ある物Aがある物B上に位置している」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bに接して、ある物Aがある物B上に位置していること」、および、「ある物Aとある物Bとの間に他の物が介在しつつ、ある物Aがある物B上に位置していること」を含む。また、「ある物Aがある物Bにある方向に見て重なる」とは、特段の断りのない限り、「ある物Aがある物Bのすべてに重なること」、および、「ある物Aがある物Bの一部に重なること」を含む。また、本開示において「ある面Aが方向B(の一方側または他方側)を向く」とは、面Aの方向Bに対する角度が90°である場合に限定されず、面Aが方向Bに対して傾いている場合を含む。
【0014】
図1~
図4は、本開示の第1実施形態に係るサーマルプリントヘッドを示している。本実施形態のサーマルプリントヘッドA1は、ヘッド基板1、配線基板5、複数のワイヤ61,62,63、複数の駆動IC7、樹脂部78、放熱部材81、支持体82および接合材9を備えている。
【0015】
図1は、サーマルプリントヘッドA1を示す平面図である。
図2は、
図1のII-II線に沿う断面図である。
図3は、サーマルプリントヘッドA1の要部断面図であり、
図2の一部を拡大した断面図である。
図4、
図5は、サーマルプリントヘッドA1を示す要部拡大平面図である。
図6は、サーマルプリントヘッドA1の要部断面図であり、
図3の一部を拡大した断面図である。
図1、
図4および
図5においては、理解の便宜上、後述する保護層2を省略している。
図1、
図4および
図5においては、理解の便宜上、樹脂部78を省略している。また、これらの図において、ヘッド基板1の長手方向(主走査方向)をx方向とし、短手方向(副走査方向)をy方向とし、厚さ方向をz方向として説明する。また、y方向については、
図1、
図4、
図5の下方(
図2、
図3の右方)を印刷媒体が送られてくる「上流」とし、
図1、
図4、
図5の上方(
図2、
図3の左方)を印刷媒体が排出される「下流」とする。また、z方向については、
図2、
図3の上方(z方向を示す矢印が指す方向)を「上方」とし、その反対方向を「下方」とする。以下の図においても同様である。
【0016】
サーマルプリントヘッドA1は、印刷媒体(図示略)に印字を施するサーマルプリンタPr(
図2参照)に組み込まれるものである。サーマルプリンタPrは、サーマルプリントヘッドA1およびプラテンローラ99を備える。プラテンローラ99は、サーマルプリントヘッドA1に正対する。印刷媒体を、サーマルプリントヘッドA1とプラテンローラ99との間に挟まれ、このプラテンローラ99によって、y方向に搬送される。このような印刷媒体としては、たとえばバーコードシールおよびレシートを作成するための感熱紙が挙げられる。プラテンローラ99に替えて、平坦なゴムからなるプラテンを使用してもよい。このプラテンは、大きな曲率半径を有する円柱状のゴムにおける、断面視して弓形状の一部を含む。本開示において、「プラテン」という用語は、プラテンローラ99と平坦なプラテンとの双方を含む。
【0017】
図2に示すように、サーマルプリントヘッドA1において、ヘッド基板1および配線基板5は、放熱部材81上で、y方向に隣接して搭載されている。本実施形態では、ヘッド基板1は、支持体82を介して放熱部材81に支持されている。ヘッド基板1には、後に詳説する構成により、y方向に配列される複数の発熱部41が形成されている。この発熱部41は、配線基板5に搭載された駆動IC7により選択的に発熱駆動され、コネクタ59を介して外部から送信される印字信号にしたがって、プラテンローラ99によって発熱部41に押圧される印刷媒体に印字を行う。
【0018】
ヘッド基板1は、
図1、
図3、
図4に示すように、基材10、絶縁層19、保護層2、配線層3および抵抗体層4を備えている。
【0019】
基材10は、単結晶半導体により構成され、当該単結晶半導体は、たとえばシリコン(Si)である。基材10の構成材料としては、たとえばSiウエハが好適である。
図1に示すように、基材10は、z方向視において、x方向を長手方向とし、y方向を短手方向とする細長矩形状である。基材10は、複数の個片チップ10Aを備えて構成されている。複数の個片チップ10Aは、x方向に並んでいる。各個片チップ10Aは、z方向視において矩形状である。複数の個片チップ10Aは、すべて同じ大きさである。
【0020】
個片チップ10Aは、第1側面101、第2側面102、第3側面103および第4側面104を有する。第1側面101は、y方向一方側(副走査方向一方側、
図1、
図4の上方側)を向く端面である。第2側面102は、y方向他方側(副走査方向他方側、
図1、
図4の下方側)を向く端面である。第4側面104は、x方向一方側(主走査方向一方側、
図1、
図4の左方側)を向く端面である。第3側面103は、x方向他方側(主走査方向他方側、
図1、
図4の右方側)を向く端面である。
【0021】
本実施形態では、x方向に隣接する一対の個片チップ10Aは、互いに密着している。x方向に隣接する一対の個片チップ10Aにおいて、x方向一方側に位置する個片チップ10Aの第3側面103と、x方向他方側に位置する個片チップ10Aの第4側面104とが、互いに密着している。複数の個片チップ10Aそれぞれの第1側面101は、x方向(主走査方向)に一連に延びている。複数の個片チップ10Aそれぞれの第2側面102は、x方向(主走査方向)に一連に延びている。
【0022】
基材10(各個片チップ10A)は、
図2、
図3、
図5に示すように、主面11、裏面12および凸部13を有する。主面11および裏面12は、z方向に離隔し、且つz方向において互いに反対側を向く。主面11は、z方向の上方(z方向一方側)を向く。裏面12は、z方向の下方(z方向他方側)を向く。本開示では、主面11は、x-y平面(x方向とy方向で規定される平面、他の平面も同様)に沿って広がっており、x-y平面に略平行な平面である。
【0023】
凸部13は、主面11からz方向に突出しており、x方向に延びている。図示された例においては、凸部13は、主面11のy方向下流側寄りに配置されている。凸部13は、基材10の一部であることから、単結晶半導体であるシリコン(Si)により構成される。凸部13は、y-z平面に沿う断面の形状が、x方向に一様である。
図6に示すように、凸部13は、頂部130、一対の第1傾斜部131A,131Bおよび一対の第2傾斜部132A,132Bを有する。
【0024】
頂部130は、凸部13のうち、主面11からのz方向に沿う距離が最も大きい部位である。頂部130は、たとえば主面11と略平行な面である。頂部130は、z方向視において、x方向に長く延びる細長矩形状である。
【0025】
一対の第1傾斜部131A,131Bは、
図6に示すように、頂部130のy方向両側に繋がっている。第1傾斜部131Aは、y方向の上流側から頂部130に繋がる。第1傾斜部131Bは、y方向の下流側から頂部130に繋がる。
図6に示すように、一対の第1傾斜部131A,131Bはそれぞれ、主面11に対して、角度α1だけ傾斜している(第1傾斜角度α1を以て傾斜している)。一対の第1傾斜部131A,131Bはそれぞれ、z方向視においてx方向に長く延びる細長矩形状の平面である。
【0026】
一対の第2傾斜部132A,132Bは、
図6に示すように、一対の第1傾斜部131A,131Bに対して、y方向において頂部130と反対側から繋がる。第2傾斜部132Aは、y方向において、第1傾斜部131Aと主面11とに挟まれている。第2傾斜部132Aは、y方向の上流側から第1傾斜部131Aに繋がり、y方向の下流側から主面11に繋がる。第2傾斜部132Bは、y方向において、第1傾斜部131Bと主面11とに挟まれている。第2傾斜部132Bは、y方向の下流側から第1傾斜部131Bに繋がり、y方向の上流側から主面11に繋がる。
図6に示すように、一対の第2傾斜部132A,132Bはそれぞれ、主面11に対して、角度α2だけ傾斜している(第2傾斜角度α2を以て傾斜している)。角度α2は、角度α1よりも大きい。一対の第2傾斜部132A,132Bはそれぞれ、z方向視においてx方向に長く延びる細長矩形状の平面である。一対の第2傾斜部132A,132Bはそれぞれ、主面11に繋がっている。
【0027】
基材10において、主面11は(100)面である。後述の製造方法によって形成された凸部13において、主面11に対する各第1傾斜部131A,131Bの傾斜角度α1(
図6参照)は、たとえば30.1度であり、主面11に対する各第2傾斜部132A,132Bの傾斜角度α2(
図6参照)は、たとえば54.7度である。
【0028】
本実施形態では、凸部13は、複数の個片チップ10Aそれぞれに配置されている。複数の個片チップ10Aにおいて、凸部13のy方向における位置は揃っている。これにより、複数の個片チップ10Aそれぞれにおける凸部13は、x方向に見て重なっている。
【0029】
基材10(x方向に並ぶ複数の個片チップ10A)の大きさは限定されないが、一例を挙げると、x方向の寸法は、たとえば50mm以上400mm以下程度、y方向の寸法は、たとえば3mm以上10mm以下程度、z方向の寸法は、たとえば725μm程度である。このz方向の寸法は、裏面12から頂部130までのz方向に沿う寸法である。凸部13のz方向の寸法は、150μm以上300μm以下であり、一例では、175μmである。また、個片チップ10Aの寸法の一例を挙げると、x方向の寸法は、たとえば5mm以上15mm以下程度である。
【0030】
絶縁層19は、
図3および
図6に示すように、基材10の主面11側に形成され、基材10(各個片チップ10A)を覆う。絶縁層19は、主面11および凸部13(頂部130、頂部130、一対の第1傾斜部131A,131Bおよび一対の第2傾斜部132A,132B)に接する。絶縁層19は、基材10(各個片チップ10A)の主面11側を、抵抗体層4および配線層3に対してより確実に絶縁するためのものである。絶縁層19は、基材10(各個片チップ10A)において抵抗体層4または配線層3が形成される領域に形成されていればよい。絶縁層19は、絶縁性材料からなり、たとえばTEOS(オルトケイ酸テトラエチル)を原料ガスとして成膜されるSiO
2(TEOS-SiO
2)が採用される。TEOS-SiO
2の代わりに、たとえば他の方法によって成膜されたシリコン酸化物あるいはシリコン窒化物が採用されてもよい。絶縁層19の厚さは特に限定されないが、その一例を挙げるとたとえば5μm以上15μm以下(好ましくは5μm以上10μm以下)である。
【0031】
抵抗体層4は、
図3および
図6に示すように、絶縁層19上に形成され、基材10(複数の個片チップ10A)に支持されている。本実施形態では、抵抗体層4は、複数の個片チップ10Aそれぞれに対応して分離して配置されている。
【0032】
抵抗体層4は、
図1、
図3~
図6に示すように、複数の発熱部41を含む。理解の便宜上、
図1および
図4において、複数の発熱部41を模式的に表す。また、
図5において、複数の発熱部41にハッチングを付している。
【0033】
複数の発熱部41は、各々に選択的に通電されることにより、印刷媒体を局所的に加熱する。各発熱部41は、抵抗体層4のうち配線層3から露出した領域である。複数の発熱部41は、x方向に配列されており、x方向において互いに離隔する。各発熱部41の形状は特に限定されず、例えばz方向視においてy方向を長手方向とする矩形状である。抵抗体層4は、配線層3よりも高抵抗な材料からなる。抵抗体層4の構成材料としては、たとえばTaN(窒化タンタル)が採用されるが、TaNの代わりに、TaSiO2、TiON、PolySi、Ta2O5、RuO2、RuTiOあるいはTaSiNなどを採用してもよい。抵抗体層4の形成方法は特に限定されないが、たとえばスパッタリング法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法、めっきなどによって形成され、採用される構成材料により適宜選定される。たとえば、抵抗体層4の構成材料がTaNの場合、抵抗体層4はスパッタリング法により形成される。抵抗体層4の厚さは特に限定されないが、その一例を挙げると0.02μm以上0.1μm以下(好ましくは0.08μm程度)である。
【0034】
各発熱部41は、凸部13上に配置されている。
図6に示す例では、各発熱部41は、第1傾斜部131Bから頂部130に跨って形成されている。各発熱部41のy方向上流側の端縁は、頂部130上に位置し、各発熱部41のy方向下流側の端縁は、第1傾斜部131B上に位置する。各発熱部41は、凸部13上に配置されていれば、
図6に示す例に限定されない。
【0035】
図1、
図4および
図5に示すように、複数の個片チップ10Aには、各々、発熱部41が複数配置されている。本実施形態では、基材10上に配置された複数の発熱部41は、複数の個片チップ10Aのすべてにわたってx方向に一定ピッチで配列されている。また、x方向に隣接する一対の個片チップ10Aの境界は、x方向において隣り合う一対の発熱部41の間に位置する。
【0036】
配線層3は、複数の発熱部41に通電するための通電経路を構成する。本実施形態では、
図3および
図6に示すように、配線層3は、抵抗体層4上に積層されており、基材10(複数の個片チップ10A)に支持されている。本実施形態では、配線層3は、複数の個片チップ10Aそれぞれに対応して分離して配置されている。
【0037】
本実施形態において、
図5に示すように、各個片チップ10Aにおける配線層3は、複数の個別電極31と、共通電極32と、複数の中継電極33と、を含む。
【0038】
共通電極32は、複数の共通電極延出部321と、複数の分岐部322と、基幹部323とを有する。共通電極延出部321は、y方向に沿って延びる帯状である。共通電極延出部321は、発熱部41よりもy方向上流側に配置されている。複数の共通電極延出部321は、x方向(主走査方向)に所定間隔を隔てて配置される。
【0039】
各共通電極延出部321のy方向下流側の端部には、一対の分岐部322が繋がっている。分岐部322は、y方向に延びる帯状である。各分岐部322のy方向下流側の端部は、凸部13上まで延びている。共通電極延出部321に繋がる一対の分岐部322は、x方向に互いに離間し、かつx方向において隣り合う一対の発熱部41と各別に接している。これにより、各共通電極延出部321は、一対の分岐部322を介してx方向に隣り合う一対の発熱部41と導通している。基幹部323は、x方向に延びる帯状であり、y方向において駆動IC7寄りに配置されている。基幹部323には、各共通電極延出部321のy方向上流側の端部が繋がっている。
【0040】
複数の個別電極31は、x方向において互いに分離している。個別電極31は、発熱部41よりもy方向上流側に配置されている。各個別電極31は、個別電極延出部311およびパッド部312を有する。個別電極延出部311は、概ねy方向に沿って延びる帯状である。個別電極延出部311のy方向下流側の端部は、凸部13上まで延びており、発熱部41と接している。パッド部312は、個別電極延出部311のy方向上流側の端部に繋がっている。パッド部312は、ワイヤ61がボンディングされる部分である。
【0041】
各個別電極延出部311は、x方向において共通電極延出部321と離間している。各共通電極延出部321のx方向における両側には、個別電極延出部311が隣接する。すなわち、各共通電極延出部321は、x方向両側に隣接する2つの個別電極延出部311に挟まれている。
【0042】
個別電極延出部311と接する発熱部41は、共通電極延出部321に導通する発熱部41と隣接している。より具体的には、共通電極延出部321を挟む2つの個別電極延出部311の一方と接する発熱部41は、共通電極延出部321と導通する一対の発熱部41の一方と隣接する。共通電極延出部321を挟む2つの個別電極延出部311の他方と接する発熱部41は、共通電極延出部321と導通する一対の発熱部41の他方と隣接する。
【0043】
複数の中継電極33は、x方向に沿って配列されている。複数の中継電極33は、複数の発熱部41よりもy方向下流側に配置されており、複数の発熱部41を挟んで共通電極32および複数の個別電極31とはy方向において反対側に位置する。各中継電極33は、x方向に隣接する一対の発熱部41と接している。複数の中継電極33はそれぞれ、複数の個別電極31のうちの一つと共通電極32との間に電気的に介在する。各中継電極33は、一対の中継電極延出部331と、連結部332と、を有する。
【0044】
図3、
図5に示すように、各中継電極延出部331は、y方向に延びる帯状である。複数の中継電極延出部331は、x方向に互いに離間している。各中継電極延出部331のy方向上流側の端部は、凸部13上まで延びている。各中継電極33を構成する一対の中継電極延出部331は各々、x方向において隣り合う一対の発熱部41と各別に接している。各中継電極33における一対の中継電極延出部331の一方は、y方向において発熱部41を挟んで複数の分岐部322のいずれか一つに対向配置されている。各中継電極33における一対の中継電極延出部331の他方は、y方向において発熱部41を挟んで複数の個別電極延出部311のいずれか一つに対向配置されている。
【0045】
各連結部332は、x方向に沿って延びている。各連結部332は、各中継電極33における一対の中継電極延出部331に繋がる。これにより、各中継電極33における一対の中継電極延出部331どうしが互いに導通している。
【0046】
サーマルプリントヘッドA1においては、
図5に示すように、共通電極32の各共通電極延出部321が、2つの個別電極31の個別電極延出部311に挟まれて配置されている。各中継電極33の2つの中継電極延出部331の一方が接続される発熱部41は、共通電極32に接続しており、当該中継電極33の2つの中継電極延出部331の他方が接続される発熱部41は、複数の個別電極31のいずれかに接続している。したがって、各個別電極31が通電することで、これに接続する発熱部41と、当該発熱部41に中継電極33を介して接続する発熱部41とに電流が流れて、これらの発熱部41が発熱する。つまり、2つの発熱部41が同時に発熱する。サーマルプリントヘッドA1では、各発熱部41が通電したとき、各発熱部41には、y方向に沿って電流が流れる。
【0047】
なお、
図5を参照して配線層3(複数の個別電極31や共通電極32)の具体的な構成例について説明したが、z方向視における各個別電極31および共通電極32の各形状、すなわち、各個別電極31および共通電極32の形成領域は、
図5の例示に限定されない。
【0048】
本実施形態のサーマルプリントヘッドA1では、配線層3(複数の個別電極31、共通電極32および複数の中継電極33)は、
図3および
図6に示すように、z方向に積層された第1導体層301および第2導体層302を含んで構成される。
【0049】
第1導体層301は、抵抗体層4上に形成されている。第1導体層301は、y方向(副走査方向)における単位長さ当たりの抵抗値が、抵抗体層4よりも低抵抗であり、且つ第2導体層302よりも高抵抗な材料からなる。たとえば、第1導体層301の電気伝導率は、たとえば10-6~10-7Ωmである。第1導体層301の構成材料としては、たとえばTi(チタン)が採用されるが、Tiの代わりに、Ta、Ga、Sn、PtIr、Pt、Tl(タリウム)、V(バナジウム)あるいはCrなどを採用してもよい。第1導体層301の形成方法は特に限定されないが、たとえばスパッタリング法やCVD法、めっきなどによって形成され、採用される構成材料により適宜選定される。たとえば、第1導体層301の構成材料がTiの場合、第1導体層301はスパッタリング法により形成される。第1導体層301の厚さは特に限定されないが、その一例を挙げると0.1μm以上0.2μm以下である。
【0050】
第2導体層302は、第1導体層301上に形成されている。第2導体層302は、第1導体層301を部分的に覆っている。よって、第1導体層301は第2導体層302から露出する部分がある。第2導体層302は、y方向(副走査方向)における単位長さ当たりの抵抗値が、抵抗体層4および第1導体層301よりも低抵抗な材料からなる。たとえば、第2導体層302の電気抵抗率は、10-7Ωm以下である。好ましくは、第2導体層302は、第1導体層301よりも熱伝導率が高い材料からなる。第2導体層302の構成材料は、たとえばCuが採用されるが、Cuの代わりに、Cu合金、Al、Al合金、Au、Ag、NiあるいはW(タングステン)などを採用してもよい。第2導体層302の形成方法は特に限定されないが、たとえばスパッタリング法やCVD法、めっきなどによって形成され、採用される構成材料により適宜選定される。たとえば、第2導体層302の構成材料がCuの場合、第2導体層302はスパッタリング法により形成される。なお、第2導体層302の構成材料がAu、Ag、Niである場合、一般的にはめっきにより形成されるが、この場合、第2導体層302は、シード層(たとえばCu)などを含んでいてもよい。第2導体層302は、第1導体層301よりも厚い。第2導体層302の厚さは、使用する材料、配線層3に流れる電流の値などに依存する。第2導体層302の厚さの一例を挙げると0.5μm以上5μm以下である。
【0051】
サーマルプリントヘッドA1においては、
図5および
図6から理解されるように、各個別電極延出部311(各個別電極31)、各分岐部322(共通電極32)、および各中継電極延出部331(各中継電極33)のそれぞれのうちの各発熱部41に繋がる部分は、第2導体層302から露出する第1導体層301によって構成されている。つまり、各個別電極延出部311(各個別電極31)、各分岐部322(共通電極32)、および各中継電極延出部331(各中継電極33)のそれぞれは、第1導体層301のみで構成された部分と、第1導体層301と第2導体層302とが積層された部分とを含む。この構成とは異なり、各発熱部41に繋がる当該部分は、第1導体層301上に第2導体層302が積層された構成であってもよい。この場合、各個別電極延出部311(各個別電極31)、各分岐部322(共通電極32)、および各中継電極延出部331(各中継電極33)のそれぞれは、形成範囲のすべてにおいて、第1導体層301と第2導体層302とが積層されている。
【0052】
保護層2は、配線層3および抵抗体層4を保護する。保護層2は、
図3および
図6に示すように、配線層3および抵抗体層4を覆う。保護層2は、サーマルプリントヘッドA1における表層である。保護層2は、絶縁性の材料からなり、たとえばSiO
2、SiN、SiC(炭化ケイ素)、AlN(窒化アルミニウム)のいずれかあるいはそれら2つ以上の積層体からなる。保護層2の厚さは特に限定されず、たとえば1.0μm以上10μm以下である。
【0053】
保護層2は、
図3に示すように、複数のパッド用開口29を有する。各パッド用開口29は、保護層2をz方向に貫通する。複数のパッド用開口29はそれぞれ、各個別電極31のパッド部312を露出させている。図示された例と異なり、複数のパッド用開口29に導電性材料を充填させてもよい。この場合、この導電性材料上にめっき層を形成してもよい。このめっき層の構成は特に限定されないが、一例を挙げると、導電性材料の表面からNi、Pd(パラジウム)、Auの順に積層されている。
【0054】
配線基板5は、
図1および
図2に示すように、ヘッド基板1に対してy方向上流側に隣接して配置されている。配線基板5は、たとえばPCB基板である。
図1に示すように、配線基板5は、z方向視においてx方向を長手方向とする細長矩形状である。配線基板5には、配線パターン(詳細形状は図示略)が形成されている。当該配線パターンは、
図5に示すように、個別配線部51および共通配線部52を含む。
図2に示すように、配線基板5には、コネクタ59および駆動IC7が搭載されている。
【0055】
コネクタ59は、サーマルプリントヘッドA1をサーマルプリンタPrに接続するために用いられる。コネクタ59は、
図2に示すように、配線基板5に取り付けられており、配線基板5の配線パターンに接続されている。
【0056】
駆動IC7は、
図1および
図2に示すように、配線基板5上に配置されている。駆動IC7は、各個別電極31にそれぞれ電位を付与し、各発熱部41に流す電流を制御するものである。
図1に示すように、本実施形態において、配線基板5上に複数の駆動IC7が搭載されている。当該複数の駆動IC7は、x方向において間隔を隔てて配置される。複数の駆動IC7は、たとえばx方向において隣接する2つの個片チップ10Aに対して1つの駆動IC7が割り当てられるように、配置される。
【0057】
図5に示すように、駆動IC7は、複数のパッド部71を有する。複数のパッド部71は、たとえば、2列に形成されている。
【0058】
図5に示した複数のワイヤ61,62,63は、たとえばAuなどの導体よりなる。ワイヤ61は、駆動IC7におけるパッド部71にボンディングされ、かつ個別電極31のパッド部312にボンディングされている。これにより、駆動IC7と各個別電極31とが導通している。また、ワイヤ61は、基幹部323を跨いでいる。ワイヤ62は、駆動IC7におけるパッド部71にボンディングされ、かつ配線基板5における個別配線部51にボンディングされている。これにより、個別配線部51を介して、駆動IC7とコネクタ59とが導通している。ワイヤ63は、共通電極32(基幹部323)にボンディングされ、かつ配線基板5における共通配線部52にボンディングされている。これにより、共通電極32と共通配線部52とが導通している。
【0059】
駆動IC7には、コネクタ59を介して外部から送信される印字信号、制御信号および複数の発熱部41に供給される電圧が入力される。複数の発熱部41は、印字信号および制御信号にしたがって個別に通電されることにより、選択的に発熱させられる。
【0060】
樹脂部78は、たとえば、黒色の樹脂よりなる。
図2、
図3に示すように、樹脂部78は、ヘッド基板1と配線基板5とに跨るように形成されている。樹脂部78は、駆動IC7、複数のワイヤ61,62,63、および、保護層2の一部を覆っており、駆動IC7および複数のワイヤ61,62,63を保護している。
【0061】
放熱部材81は、
図1、
図2に示すように、ヘッド基板1(基材10、複数の個片チップ10A)および配線基板5を支持している。放熱部材81は、複数の発熱部41により生じた熱の一部を外部へと放熱するために設けられる。放熱部材81は、たとえばアルミニウム等の金属製である。
【0062】
支持体82は、
図1、
図2に示すように、放熱部材81上に配置されており、ヘッド基板1(基材10、複数の個片チップ10A)と放熱部材81との間に介在している。支持体82は、放熱部材81に支持されている。
【0063】
支持体82は、たとえばSi板などの平坦度の高い板材により構成される。支持体82は、支持面821を有する。支持面821は、z方向の上方(z方向一方側)を向く。基材10(複数の個片チップ10A)は、支持体82の支持面821に支持されている。本実施形態では、複数の個片チップ10Aは、接合材9により支持体82に接合されている。
【0064】
接合材9は、
図1、
図2および
図4に示すように、複数の個片チップ10Aの各々と、支持面821とを接合する。本実施形態においては、複数の個片チップ10Aの各々の第1側面101および第2側面102と、支持面821とが、接合材9によって接合される。接合材9は、第1部91および第2部92を含む。複数の個片チップ10Aの各々の第1側面101は、第1部91により支持面821に接合されている。複数の個片チップ10Aの各々の第2側面102は、第2部92により支持面821に接合されている。なお、理解の便宜上、
図1および
図4において、接合材9(第1部91および第2部92)にハッチングを付している。
【0065】
第1部91は、複数の個片チップ10Aの各々の第1側面101と、支持面821とに接する。本実施形態で図示した例では、第1部91は、複数の第1接合部911と、第2接合部912とを有する。複数の第1接合部911は、x方向(主走査方向)において互いに離隔する。複数の第1接合部911は、各個片チップ10Aの第1側面101と支持面821とを、個別に接合している。すなわち、複数の第1接合部911の各々は、いずれか1つの個片チップ10Aの第1側面101と、これに近接する支持面821とを接合する。その一方、第2接合部912は、複数の個片チップ10Aのx方向(主走査方向)の全長にわたって延びており、複数の第2接合部912の各々の第1側面101に跨って接している。また、第2接合部912は、
図2、
図4に示すように、支持面821にも接しており、複数の第1接合部911を覆っている。
【0066】
第2部92は、複数の個片チップ10Aの各々の第2側面102と、支持面821とに接する。第2部92は、複数の個片チップ10Aのx方向(主走査方向)の全長にわたって延びており、複数の第2接合部912の各々の第2側面102に跨って接している。
【0067】
接合材9の構成材料は、特に限定されない。接合材9(第1部91、第2部92)として、絶縁性接合材または導電性接合材のいずれを用いてもよい。接合材9として導電性接合材を用いる場合、接合材9(第1部91、第2部92)の構成材料は、たとえばAgペースト等の金属ペーストが挙げられる。接合材9(第1部91、第2部92)として、たとえば樹脂材料からなる絶縁性接合材を用いてもよい。また、第1部91と第2部92の構成材料を異ならせてもよい。第1部91についても、第1接合部911と第2接合部912の構成材料を異ならせてもよい。この場合、たとえば、第1接合部911として導電性接合材が用いられ、第2接合部912として絶縁性接合材が用いられる。
【0068】
本実施形態においては、
図2に示すように、接合材9は、複数の個片チップ10Aの各々の第1側面101および第2側面102と、これに隣接する支持面821と、に接する。これにより、支持体82の支持面821と基材10(各個片チップ10A)の裏面12との間には、接合材9が介在していない。このため、支持面821と基材10(各個片チップ10A)の裏面12とは、互いに接触している。
【0069】
次に、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一例について、
図7~
図23を参照して、以下に説明する。
図7、
図8、
図10~
図13はそれぞれ、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一工程を示す要部断面図であって、
図3に示す断面に対応する。
図9および
図14は、サーマルプリントヘッドA1の製造方法の一工程を示す要部拡大断面図であって、
図6に示す断面に対応する。
【0070】
まず、
図7に示すように、基材10Kを準備する。基材10Kは、Si単結晶半導体からなり、たとえばSiウエハである。基材10Kは、互いに反対側を向く主面11Kおよび裏面12Kを有する。主面11Kは、略平坦であり、(100)面である。
【0071】
次いで、
図8および
図9に示すように、基材10Kを加工し、基材10Kに凸部13を形成する。凸部13の形成においては、二回のエッチングを行う。
【0072】
一回目のエッチングでは、主面11Kを所定のマスク層で覆った後、たとえばKOH(水酸化カリウム)を用いた異方性エッチングを行う。この異方性エッチングで用いる薬剤は、KOHではなくTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を用いてもよいが、KOHを用いた方が、処理速度(エッチング速度)が速い。その後、マスク層を除去する。これにより、
図8に示すように、基材10Kには凸部13Kが形成される。凸部13Kは、主面11Kから突出しており、x方向(主走査方向)に長く延びる。凸部13Kは、頂部130Kおよび一対の傾斜部132Kを有する。頂部130Kは、主面11Kと平行な面であり、主面11Kと同じ(100)面である。頂部130Kは、上記マスク層で覆われていた部分である。一対の傾斜部132Kは、頂部130Kのy方向両側に位置しており、頂部130Kと主面11Kとの間に介在している。一対の傾斜部132Kはそれぞれ、頂部130Kおよび主面11Kに対して傾斜した平面である。一対の傾斜部132Kのそれぞれと、主面11Kおよび頂部130Kとがなす角度は、54.7度である。
【0073】
二回目のエッチングでは、たとえばTMAHを用いた異方性エッチングを行う。この異方性エッチングで用いる薬剤は、TMAHではなくKOHを用いてもよいが、TMAHを用いた方が、エッチングによって形成される面(たとえば後述の一対の第1傾斜部131A,131B)が平滑な面になる。この異方性エッチングにより、
図9に示すように、基材10Kが、主面11、裏面12および凸部13を有する基材10となる。凸部13は、頂部130、一対の第1傾斜部131A,131Bおよび一対の第2傾斜部132A,132Bを有する。頂部130は、頂部130Kであった部分であり、一対の第2傾斜部132A,132Bは、一対の傾斜部132Kであった部分である。一対の第1傾斜部131A,131Bは、頂部130Kと一対の傾斜部132Kとの境界がTMAHによりエッチングされた部分である。主面11に対する各第1傾斜部131A,131Bの角度α1(
図9参照)は、30.1度であり、主面11に対する各第2傾斜部132A,132Bの角度α2(
図9参照)は、54.7度である。
【0074】
次いで、
図10示すように、絶縁層19を形成する。絶縁層19の形成は、たとえばCVDを用いて、TEOSを原料ガスとして形成されるSiO
2を基材10に堆積させることによって行う。絶縁層19の形成方法は、これに限定されない。形成された絶縁層19は、主面11の全面および凸部13を覆う。
【0075】
次いで、
図11に示すように、抵抗体膜4Kを形成する。抵抗体膜4Kの形成は、たとえばスパッタリング法によって絶縁層19上にTaNの薄膜を形成することによって行う。抵抗体膜4Kの形成方法は、これに限定されない。抵抗体膜4Kは、絶縁層19の略全面を覆うように形成される。
【0076】
次いで、
図12および
図13に示すように、配線膜3Kを形成する。配線膜3Kの形成においては、第1導体膜301Kおよび第2導体膜302Kを順次形成する。まず、
図12に示すように、抵抗体膜4K上に第1導体膜301Kを形成する。第1導体膜301Kは、たとえばスパッタリング法によって成膜される。第1導体膜301Kは、Tiからなる薄膜である。このとき、第1導体膜301Kは、抵抗体膜4Kの略全面を覆っている。
【0077】
次いで、
図13に示すように、第1導体膜301K上に第2導体膜302Kを形成する。第2導体膜302Kは、たとえばめっきあるいはスパッタリング法などによって成膜される。第2導体膜302Kは、たとえばCuからなる。このとき、第2導体膜302Kは、第1導体膜301Kの略全面を覆っている。
【0078】
次いで、第2導体膜302K、第1導体膜301Kおよび抵抗体膜4Kを、それぞれ部分的に適宜除去し、
図14に示すように、配線層3および抵抗体層4を形成する。ここでは、たとえば第2導体膜302K、第1導体膜301Kおよび抵抗体膜4Kに選択的なエッチングを施すことにより、第2導体膜302K、第1導体膜301Kおよび抵抗体膜4Kを部分的に除去する。第2導体膜302Kの部分的な除去により、第2導体層302が形成される。第1導体膜301Kの部分的な除去により、第1導体層301が形成される。抵抗体膜4Kの部分的な除去により、抵抗体層4が形成される。形成された第1導体層301および第2導体層302は、上記配線層3を構成する。形成された抵抗体層4は、複数の発熱部41を有する。ここでは、複数の領域に分離された抵抗体層4と、複数の領域に分離された配線層3と、が形成される。
【0079】
次いで、
図15に示すように、基材10をx方向およびy方向に沿って切断し、複数の個片チップ10A(図示略)に分割する。ここで、レーザ照射により、基材10をx方向に対する垂直面C1およびy方向に対する垂直面C2に沿って切断し、複数の個片チップ10Aに分割する。より具体的には、レーザをSi単結晶半導体からなる基材10の内部に集光することで、基材10は剥離状に個片チップ10Aに分割される。このようなレーザ照射による個片チップ10Aへの分割では、切断幅が殆ど無く、また切断屑も殆ど生じず、切断面も平滑である。
【0080】
図16、
図17に示すように、レーザ照射により複数の個片チップ10Aに分割する工程において、x方向に対する垂直面C1での基材10の切断は、x方向において隣り合う一対の発熱部41に間の位置で行う。なお、
図14に示した配線層3および抵抗体層4の形成において、配線層3は複数の個片チップ10Aそれぞれに対応する領域において互いに分離して形成され、抵抗体層4は複数の個片チップ10Aそれぞれに対応する領域において互いに分離して形成される。これにより、基材10の切断ライン(
図16、
図17に示す、x方向に対する垂直面C1およびy方向に対する垂直面C2)には、抵抗体層4および配線層3が形成されていない。
【0081】
次いで、
図18および
図19に示すように、作業板95および押さえ治具96を準備し、作業板95上に支持体82を配置する。押さえ治具96は、作業板95上に置かれている。押さえ治具96は、支持体82および複数の個片チップ10Aを位置合わせして配置するためのものである。図示した例では、押さえ治具96は、z方向視においてL字状でx方向に延びる帯板部とy方向に延びる帯板部とが繋がった構成であり、z方向視において略L字状である。
図18および
図19に示すように、押さえ治具96には、z方向の下方から凹む凹部961が形成されている。凹部961は、x方向およびy方向に延びており、L字状に形成されている。凹部961のz方向の寸法は、支持体82のz方向の寸法よりも僅かに大きい。作業板95上の支持体82は、凹部961に嵌まるようにして押さえ治具96に宛がう。支持体82の支持面821は、z方向の上方(z方向一方側)を向く。なお、押さえ治具96および支持体82は、図示しない粘着テープを介して作業板95に仮固定される。
【0082】
次いで、
図20および
図21に示すように、支持体82の支持面821上に一つ目の個片チップ10Aを配置する。個片チップ10Aの第2側面102を押さえ治具96に当接させつつ、個片チップ10Aの第1側面101と支持面821とに接するように、第1接合部911を形成する。第1接合部911の形成は、たとえばディスペンサーにより接合材の材料を塗布し、固化させることにより行う。
【0083】
次いで、
図22に示すように、支持体82の支持面821上に二つ目の個片チップ10Aを配置する。二つ目の個片チップ10Aの第2側面102を押さえ治具96に当接させ、且つ、x方向において、二つ目の個片チップ10Aを一つ目の個片チップ10Aに当接させる。この状態で、二つ目の個片チップ10Aの第1側面101と支持面821とに接するように、第1接合部911を形成する。
図23に示すように、三つ目以降の個片チップ10Aも同様にx方向に配列させ、各個片チップ10Aの第1側面101と支持面821とに接する第1接合部911を形成する。このとき、各個片チップ10Aの第1側面101と支持面821とは、第1接合部911により位置決めがなされた状態にある。
【0084】
次に、
図24に示すように、押さえ治具96を作業板95上から取り除き、第2接合部912を形成する。第2接合部912は、複数の個片チップ10Aそれぞれの第1側面101と支持面821とに接するように形成される。第2接合部912の形成は、たとえばディスペンサーにより接合材の材料を塗布し、固化させることにより行う。第2接合部912は、複数の第1接合部911を覆っている。このようにして、複数の第1接合部911、および第2接合部912を有する第1部91が形成される。
【0085】
次に、
図25に示すように、第2部92を形成する。第2部92は、複数の個片チップ10Aそれぞれの第2側面102と支持面821とに接するように形成される。第2部92の形成は、たとえばディスペンサーにより接合材の材料を塗布し、固化させることにより行う。これにより、接合材9(第1部91および第2部92)が形成される。このようにして、支持体82の支持面821上に、複数の個片チップ10Aによって構成された基材10が配置される。ここで、基材10に配置された複数の発熱部41は、複数の個片チップ10Aのすべてにわたってx方向に一定ピッチで配列されている。
【0086】
次いで、保護層2(図示略)を形成する。保護層2の形成は、たとえばCVDを用いて、基材10上の絶縁層19、配線層3および抵抗体層4のそれぞれの上に、所定の材料(たとえばSiN)を堆積させることにより行われる。また、たとえばマスクを利用することにより、基材10上の所定領域に、パッド用開口29(図示略)を有する保護層2が形成される。以上により、支持体82上に配置されたヘッド基板1が得られる。
【0087】
次いで、配線基板5(図示略)上に複数の駆動IC7を搭載する。次いで、ヘッド基板1および配線基板5を放熱部材81に接合し、複数のワイヤ61,62,63のボンディング、樹脂部78の形成等を行う。このようにして、
図1~
図6に示したサーマルプリントヘッドA1が製造される。
【0088】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0089】
サーマルプリントヘッドA1は、支持体82、基材10、抵抗体層4、配線層3および接合材9を備えている。サーマルプリントヘッドA1において、基材10により、抵抗体層4および配線層3が支持されている。抵抗体層4は、x方向(主走査方向)に配列された複数の発熱部41を含む。基材10は、x方向(主走査方向)に並ぶ複数の個片チップ10Aを備えて構成されている。基材10は、支持体82の支持面821に支持されている。各個片チップ10Aは、第1側面101y方向一方側(副走査方向一方側)を向く第1側面101と、y方向他方側(副走査方向他方側)を向く第2側面102と、を有する。接合材9は、支持体82および基材10を接合する。接合材9は第1部91を含み、第1部91は、複数の個片チップ10Aの各々の第1側面101と、支持面821とに接する。このような構成によれば、基材10を構成する複数の個片チップ10Aは、x方向(主走査方向)に沿って適切に配列される。
【0090】
このように基材10が複数の個片チップ10Aにより構成される構造では、個片チップ10Aの数を適宜選択することによって基材10のx方向(主査王方向)における長さを様々に調整することができる。したがって、x方向(主走査方向)の印刷長が異なるサーマルプリントヘッドA1を効率よく製造することが可能である。
【0091】
このように基材10が複数の個片チップ10Aにより構成される構造では、個片チップ10Aの数を適宜選択することによって基材10のx方向(主査王方向)における長さを様々に調整することができる。したがって、x方向(主走査方向)の印刷長が異なるサーマルプリントヘッドA1を効率よく製造することが可能である。
【0092】
図26は、
図1と比べて、基材10がより多くの個片チップ10Aにより構成される場合を示している。このように多数の個片チップ10Aを用いることで、基材10のx方向(主査王方向)における長さを適宜長くすることができる。したがって、基材10の材料であるSiウエハのサイズの制約を受けること無く、x方向(主走査方向)の印刷長を長くすることが可能である。したがって、基材10としてSiが用いられるサーマルプリントヘッドA1の長尺化を図ることが可能である。
【0093】
図27は、
図1と比べて、基材10が少数の個片チップ10Aにより構成される場合を示している。少数の個片チップ10Aにより構成することで、x方向(主走査方向)の印刷長の短いサーマルプリントヘッドA1を容易に製造することができる。また、個片チップ10Aについてx方向の寸法の小さいものを準備すれば、x方向(主走査方向)の印刷長をより細かく設定することができる。
【0094】
接合材9を構成する第1部91は、複数の第1接合部911、および第2接合部912を有する。複数の第1接合部911は、各個片チップ10Aの第1側面101と支持面821とを、個別に接合している。第2接合部912は、複数の第2接合部912の各々の第1側面101に跨って接している。第2接合部912は、複数の第1接合部911を覆っている。このような構成によれば、複数の個片チップ10Aの各々について、適切に位置合わせしつつ支持面821(支持体82)に接合することができる。これにより、x方向に並ぶ複数の個片チップ10Aについて、x方向(主走査方向)およびy方向(副走査方向)における位置のバラツキを抑制することができ、サーマルプリントヘッドA1の印字品質のバラツキを抑制することができる。
【0095】
接合材9は、第2部92を含む。第2部92は、複数の個片チップ10Aの各々の第2側面102と、支持面821とに接する。第2部92は、複数の第2接合部912の各々の第2側面102に跨って接している。複数の個片チップ10Aの各々におけるy方向両側の第1側面101および第2側面102は、第1部91および第2部92によって支持面821に接合される。このような構成によれば、複数の個片チップ10Aをより的確に支持面821(支持体82)に接合することができる。
【0096】
接合材9は、複数の個片チップ10Aの各々の第1側面101および第2側面102と、これに隣接する支持面821と、に接する。支持体82の支持面821と基材10(各個片チップ10A)の裏面12との間には接合材9が介在しておらず、支持面821と、基材10(複数の個片チップ10A)の裏面12とは、互いに接触している。このような構成によれば、支持面821に対する複数の個片チップ10Aのz方向(厚さ方向)の位置のバラツキを抑制すことができ、サーマルプリントヘッドA1の印字品質のバラツキを抑制することができる。
【0097】
基材10(複数の個片チップ10A)は、支持体82に接合されており、支持体82を介して放熱部材81に支持されている。支持体82を平坦度の高い板材とすることで、複数の個片チップ10Aのz方向(厚さ方向)の位置のバラツキを抑制すことができ、サーマルプリントヘッドA1の印字品質のバラツキを抑制することができる。
【0098】
基材10に支持された配線層3は、複数の個片チップ10Aそれぞれに互いに分離して配置される。また、基材10に支持された抵抗体層4は、複数の個片チップ10Aそれぞれに互いに分離して配置される。これにより、配線層3および抵抗体層4の形成領域は、複数の個片チップ10Aを跨っていない。このような構成によれば、複数の発熱部41への導通経路において導通不良の発生を防止することができる。
【0099】
基材10は、凸部13を有する。凸部13は、基材10の主面11から突出し、x方向(主走査方向)に延びている。凸部13は、複数の個片チップ10Aそれぞれに配置されており、凸部13の上に複数の発熱部41が配置されている。このような構成によれば、印刷媒体を、複数の発熱部41が配置された凸部13に的確に接触させることができ、印字品質の向上が期待できる。
【0100】
図28および
図29は、第1実施形態の変形例に係るサーマルプリントヘッドを示している。
図28は、本変形例のサーマルプリントヘッドA11を示す平面図である。
図29は、
図28のXXIX-XXIX線に沿う断面図である。なお、
図28以降の図面において、上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付しており、適宜説明を省略する。
【0101】
本変形例のサーマルプリントヘッドA11において、接合材9の構成が、上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と異なる。サーマルプリントヘッドA11において、接合材9は、第2部92を有さない。複数の個片チップ10Aの各々の第2側面102は、z方向視において、支持体82のy方向他方側(副走査方向他方側)を向く端面と重なっている。
【0102】
本変形例のサーマルプリントヘッドA11は、支持体82、基材10、抵抗体層4、配線層3および接合材9を備えている。基材10は、x方向(主走査方向)に並ぶ複数の個片チップ10Aを備えて構成されている。接合材9は第1部91を含み、第1部91は、複数の個片チップ10Aの各々の第1側面101と、支持面821とに接する。このような構成によれば、基材10を構成する複数の個片チップ10Aは、x方向(主走査方向)に沿って適切に配列される。このように基材10が複数の個片チップ10Aにより構成される構造では、個片チップ10Aの数を適宜選択することによって基材10のx方向(主査王方向)における長さを様々に調整することができる。したがって、x方向(主走査方向)の印刷長が異なるサーマルプリントヘッドA11を効率よく製造することが可能である。その他にも、上記実施形態のサーマルプリントヘッドA1と同様の構成の範囲において、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0103】
本開示に係るサーマルプリントヘッドは、上述した実施形態に限定されるものではない。本開示に係るサーマルプリントヘッドの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0104】
上記実施形態においては、基材10(各個片チップ10A)が主面11から突出する凸部13を有する場合を例に挙げて説明したが、そのような凸部13を有さない構成としてもよい。また、基材10と発熱部41(抵抗体層4)との間に蓄熱層が介在する構成としてもよい。凸部13の形状についても上記実施形態に限定されない。
【0105】
本開示は、以下の付記に関する構成を含む。
【0106】
〔付記1〕
厚さ方向の一方側を向く支持面を有する支持体と、
前記厚さ方向の一方側を向く主面および前記厚さ方向の他方側を向く裏面を有し、前記支持体に支持された基材と、
前記基材に支持され、主走査方向に配列された複数の発熱部を含む抵抗体層と、
前記基材に支持され、且つ前記複数の発熱部に導通する配線層と、
前記支持体および前記基材を接合する接合材と、を備え、
前記基材は、前記主走査方向に並ぶ複数の個片チップを含み、
前記各個片チップは、副走査方向の一方側を向く第1側面と、前記副走査方向の他方側を向く第2側面と、を有し、
前記接合材は、前記複数の個片チップの各々の前記第1側面と、前記支持面とに接する第1部を含む、サーマルプリントヘッド。
〔付記2〕
前記第1部は、複数の第1接合部と、第2接合部と、を有し
前記複数の第1接合部は、前記各個片チップの前記第1側面と前記支持面とを個別に接合しており、
前記第2接合部は、前記複数の個片チップの各々の前記第1側面に跨って接し、且つ前記複数の第1接合部を覆う、付記1に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記3〕
前記接合材は、前記複数の個片チップの各々の前記第2側面と、前記支持面とに接する第2部を含む、付記1または2に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記4〕
前記第2部は、前記複数の個片チップの各々の前記第2側面に跨って接する、付記3に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記5〕
前記各発熱部に流す電流を制御する駆動ICを備える、付記1ないし4のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記6〕
前記駆動ICは、前記基材に対して前記副走査方向の他方側に配置されている、付記5に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記7〕
前記抵抗体層は、前記基材の上に配置されており、
前記配線層は、前記抵抗体層の上に配置されている、付記1ないし6のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記8〕
前記配線層は、前記複数の個片チップそれぞれに互いに分離して配置される、付記1ないし7のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記9〕
前記抵抗体層は、前記複数の個片チップそれぞれに互いに分離して配置される、付記1ないし8のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記10〕
前記支持体を支持する放熱部材をさらに備える、付記1ないし9のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記11〕
前記基材は、Si単結晶半導体からなる、付記1ないし10のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記12〕
前記基材は、前記主面から突出し、且つ前記主走査方向に延びており、前記複数の個片チップそれぞれに配置された凸部を有し、
前記複数の発熱部は、前記凸部の上に配置されている、付記11に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記13〕
前記複数の個片チップにおける前記凸部は、前記主走査方向に見て互いに重なっている、付記12に記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記14〕
前記支持面と前記裏面とは、互いに接触している、付記1ないし13のいずれかに記載のサーマルプリントヘッド。
〔付記15〕
付記1ないし14のいずれかに記載のサーマルプリントヘッドと、
前記複数の発熱部に対向して配置されたプラテンと、を備える、サーマルプリンタ。
【符号の説明】
【0107】
Pr :サーマルプリンタ
A1,A11:サーマルプリントヘッド
1 :ヘッド基板
10,10K:基材
10A :個片チップ
101 :第1側面
102 :第2側面
103 :第3側面
104 :第4側面
11,11K:主面
12,12K:裏面
13,13K:凸部
130,130K:頂部
131A,131B:第1傾斜部
132A,132B:第2傾斜部
132K :傾斜部
19 :絶縁層
2 :保護層
29 :パッド用開口
3 :配線層
3K :配線膜
301 :第1導体層
301K :第1導体膜
302 :第2導体層
302K :第2導体膜
31 :個別電極
311 :個別電極延出部
312 :パッド部
32 :共通電極
321 :共通電極延出部
322 :分岐部
323 :基幹部
33 :中継電極
331 :中継電極延出部
332 :連結部
4 :抵抗体層
4K :抵抗体膜
41 :発熱部
5 :配線基板
51 :個別配線部
52 :共通配線部
59 :コネクタ
61,62,63:ワイヤ
7 :駆動IC7
71 :パッド部
78 :樹脂部
81 :放熱部材
82 :支持体
821 :支持面
9 :接合材
91 :第1部
911 :第1接合部
912 :第2接合部
92 :第2部
95 :作業板
96 :押さえ治具
961 :凹部
99 :プラテンローラ