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特開2023-160357グレープフルーツ果実様アルコール飲料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160357
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】グレープフルーツ果実様アルコール飲料
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/04 20190101AFI20231026BHJP
【FI】
C12G3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070682
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 あゆみ
【テーマコード(参考)】
4B115
【Fターム(参考)】
4B115LH03
4B115LH11
4B115LP02
(57)【要約】
【課題】所定以上のエキス分および酸度を有し、且つ、グレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味が付与または向上され、さらに酸味の角が低減されたグレープフルーツ果実様アルコール飲料を提供する。
【解決手段】グレープフルーツ混濁果汁を含み、エキス分が3.5w/v%以上8.0w/v%以下であり、クエン酸換算の酸度が0.40g/100ml以上1.20g/100ml以下であり、さらにα-ピネンを含有するグレープフルーツ果実様アルコール飲料とすることにより、前記課題を解決する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グレープフルーツ混濁果汁を含むグレープフルーツ果実様アルコール飲料であって、
エキス分が3.5w/v%以上8.0w/v%以下であり、クエン酸換算の酸度が0.40g/100ml以上1.20g/100ml以下であり、さらにα-ピネンを含有する、グレープフルーツ果実様アルコール飲料。
【請求項2】
前記α-ピネンの含有量が0.01mg/L以上10mg/L以下である、請求項1に記載のグレープフルーツ果実様アルコール飲料。
【請求項3】
さらにジヒドロアクチニジオリドを含有する、請求項1または2に記載のグレープフルーツ果実様アルコール飲料。
【請求項4】
前記ジヒドロアクチニジオリドの含有量が0.01mg/L以上10mg/L以下である、請求項3に記載のグレープフルーツ果実様アルコール飲料。
【請求項5】
前記エキス分と前記酸度との比(エキス分/酸度)が6.0以上15.0以下である、請求項1または2に記載のグレープフルーツ果実様アルコール飲料。
【請求項6】
アルコール度数が1v/v%以上9v/v%以下である、請求項1または2に記載のグレープフルーツ果実様アルコール飲料。
【請求項7】
グレープフルーツ混濁果汁を含有させる工程と、α-ピネンを含有させる工程と、エキス分を3.5w/v%以上8.0w/v%以下とする工程と、クエン酸換算の酸度を0.40g/100ml以上1.20g/100ml以下とする工程と、を備える、グレープフルーツ果実様アルコール飲料の製造方法。
【請求項8】
グレープフルーツ混濁果汁を含むグレープフルーツ果実様アルコール飲料において、エキス分を3.5w/v%以上8.0w/v%以下とし、クエン酸換算の酸度を0.40g/100ml以上1.20g/100ml以下とし、さらにα-ピネンを含有させることを特徴とする、グレープフルーツ果実様アルコール飲料におけるグレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味の付与または向上ならびに酸味の角の低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレープフルーツ果実様アルコール飲料、その製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
果実の香味を有するアルコール飲料は、近年需要が高まっているアルコール飲料の1つである。特に、缶チューハイや缶カクテルなどのいわゆるRTD飲料等において、柑橘果実(レモン果実、グレープフルーツ果実、オレンジ果実等)などの香味を有するアルコール飲料が多く製造、販売されている。そして、このようなアルコール飲料では、より果実らしい香味等を付与するために、果汁(混濁果汁、透明果汁など)を含有させているものも多い。
【0003】
例えば特許文献1には、5w/v%以上の果汁と、発酵乳と、を含有する、果汁の劣化臭及び劣化味が抑制されたアルコール飲料が開示され、果汁としてオレンジ果汁やグレープフルーツ果汁などを含有させることができることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-101621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
柑橘果実の中で、グレープフルーツ果実は特徴的な香味を有するものであり、皮などの固形成分を含有しているグレープフルーツ混濁果汁等を含有させることによってグレープフルーツ果実独特の香味を有する飲料とすることができる。ここで、アルコール飲料に飲み応え(アルコール飲料としての飲み応え)を付与する方法として、エキス分や酸度を高くする方法がある。しかしながら、グレープフルーツ混濁果汁を含有するグレープフルーツ果実様アルコール飲料では、所定以上のエキス分または酸度(例えばエキス分3.5w/v%以上、クエン酸換算の酸度0.40g/100ml以上)とした場合、混濁果汁の経時変化(褐変など)を防ぐためにグレープフルーツ混濁果汁を多く含有させることができず、グレープフルーツ混濁果汁独特の果汁感、ピール感、複雑味などを付与するあるいは向上させることが難しいという課題がある。また、酸味の角を感じ易くなってしまう(酸味が鋭くなってしまう)場合があるという課題もある。
【0006】
そこで本発明は、所定以上のエキス分および酸度を有し、且つ、グレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味が付与または向上され、さらに酸味の角が低減されたグレープフルーツ果実様アルコール飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者は鋭意検討し、香気成分であるα-ピネンがグレープフルーツ果実様アルコール飲料の香味などに影響を与えることを明らかにした。そしてこの知見から、グレープフルーツ混濁果汁を含み、エキス分が3.5w/v%以上8.0w/v%以下であり、クエン酸換算の酸度が0.40g/100ml以上1.20g/100ml以下であり、さらにα-ピネンを含有するグレープフルーツ果実様アルコール飲料とすることにより、グレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味が付与または向上され、さらに酸味の角が低減されたものとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は次の<1>~<8>である。
<1>グレープフルーツ混濁果汁を含むグレープフルーツ果実様アルコール飲料であって、エキス分が3.5w/v%以上8.0w/v%以下であり、クエン酸換算の酸度が0.40g/100ml以上1.20g/100ml以下であり、さらにα-ピネンを含有する、グレープフルーツ果実様アルコール飲料。
<2>前記α-ピネンの含有量が0.01mg/L以上10mg/L以下である、<1>に記載のグレープフルーツ果実様アルコール飲料。
<3>さらにジヒドロアクチニジオリドを含有する、<1>または<2>に記載のグレープフルーツ果実様アルコール飲料。
<4>前記ジヒドロアクチニジオリドの含有量が0.01mg/L以上10mg/L以下である、<3>に記載のグレープフルーツ果実様アルコール飲料。
<5>前記エキス分と前記酸度との比(エキス分/酸度)が6.0以上15.0以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載のグレープフルーツ果実様アルコール飲料。
<6>アルコール度数が1v/v%以上9v/v%以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載のグレープフルーツ果実様アルコール飲料。
<7>グレープフルーツ混濁果汁を含有させる工程と、α-ピネンを含有させる工程と、エキス分を3.5w/v%以上8.0w/v%以下とする工程と、クエン酸換算の酸度を0.40g/100ml以上1.20g/100ml以下とする工程と、を備える、グレープフルーツ果実様アルコール飲料の製造方法。
<8>グレープフルーツ混濁果汁を含むグレープフルーツ果実様アルコール飲料において、エキス分を3.5w/v%以上8.0w/v%以下とし、クエン酸換算の酸度を0.40g/100ml以上1.20g/100ml以下とし、さらにα-ピネンを含有させることを特徴とする、グレープフルーツ果実様アルコール飲料におけるグレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味の付与または向上ならびに酸味の角の低減方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、所定以上のエキス分および酸度を有し、且つ、グレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味が付与または向上され、さらに酸味の角が低減されたグレープフルーツ果実様アルコール飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について説明する。
本発明は、グレープフルーツ混濁果汁を含み、エキス分が3.5w/v%以上8.0w/v%以下であり、クエン酸換算の酸度が0.40g/100ml以上1.20g/100ml以下であり、さらにα-ピネンを含有するグレープフルーツ果実様アルコール飲料(以下においては「本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料」という場合もある)、その製造方法等である。
【0011】
ここで、本発明において「アルコール飲料」とは、酒税法(令和元年法律第六十三号)において定義される酒類(例えば、酒税法により定義されるリキュール、スピリッツ、果実酒、甘味果実酒、その他の発泡性酒類等)などの、アルコール度数が1v/v%以上である飲料を意味する。なお、この「アルコール度数(v/v%)」は、国税庁所定分析法(訓令)3清酒3-4アルコール分(振動式密度計法)に基づいて測定される値である(以下においても同様である)。また、本発明において「アルコール」とは、エタノールを意味する。
【0012】
以下、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料を構成する成分等について詳細に説明する。
【0013】
本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料は、少なくともグレープフルーツ混濁果汁を含み、グレープフルーツ果実様の香味を有するアルコール飲料である。この混濁果汁とは、果実の搾汁に清澄処理(固形成分を除去する処理:詳細には、酵素処理を施してペクチンなどの食物繊維を低分子化した後に濾過や遠心分離によって除去する処理)を施して得られる透明果汁と異なり、皮などの固形成分を含有している果汁、あるいはその濃縮液、濃縮還元液、または希釈液であって、ペクチンなどの食物繊維がコロイド状をなして混濁しているものである。したがって、グレープフルーツ混濁果汁とは、グレープフルーツの皮などの固形成分を含有しているグレープフルーツ果汁である。
【0014】
なお、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料は、含まれるグレープフルーツ果実由来成分がグレープフルーツ混濁果汁のみであっても構わないが、グレープフルーツ透明果汁、グレープフルーツ果皮(ピール)、グレープフルーツ抽出エキス等をさらに含有していても良い。また、この飲料がグレープフルーツ果実様の香味を有する限りにおいて、グレープフルーツ以外の果実由来成分(果汁、果皮、抽出エキス等)をさらに含んでいても構わない。例えば、他の柑橘果汁をさらに含む構成であっても良い。
【0015】
また、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料における果汁の使用率は、ストレート果汁に換算した果汁使用率として0.5w/w%以上、さらには1w/w%以上であって良く、また上限は10w/w%以下であって良い。そして、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料は、この果汁使用率が9w/w%以下、さらには8w/w%以下、さらには7w/w%以下、さらには6w/w%以下、さらには5w/w%以下、さらには4w/w%以下であっても上記した効果が十分に発揮される。ここで、ストレート果汁に換算した果汁使用率とは、飲料の総質量に対する、この飲料中に含まれる果汁をJAS(日本農林規格)に準じてストレート果汁に換算した質量の割合である。
なお、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料は、含まれる果汁(使用されている果汁原料)がグレープフルーツ混濁果汁のみである場合には、上記した果汁使用率が実質的にグレープフルーツ混濁果汁のストレート果汁に換算した果汁使用率を意味することとなる。また、含まれる果汁がグレープフルーツ混濁果汁を含むグレープフルーツ果汁のみである場合には、上記した果汁使用率が実質的にグレープフルーツ果汁のストレート果汁に換算した果汁使用率を意味することとなる。例えば、これらの場合などにおいて、この果汁使用率は1w/w%以上5w/w%以下であって良い。
【0016】
そして、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料は、飲み応えなどを付与するために、エキス分が3.5w/v%以上8.0w/v%以下となっている。なお、このエキス分の下限は4.0w/v%以上であるのが好ましく、4.5w/v%以上であるのがより好ましく、5.0w/v%以上であるのがさらに好ましく、5.5w/v%以上であるのがさらに好ましい。また、飲み易さなどの観点から、この上限は7.5w/v%以下であるのがより好ましい。なお、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料のエキス分は、グレーフルーツ混濁果汁だけでなく、他の果汁(例えばグレープフルーツ透明果汁)や、後述する糖類などを含有させて調整することができる。
【0017】
ここで、「エキス分」とは、以下の式(1)により算出される値である。
(1)エキス分(w/v%)=(S-A)×260+0.21
この式(1)中、「S」は本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料の比重(15/4℃)であり、「A」は本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料のアルコール度数を比重(15/15℃)に換算して算出される値である。アルコール度数の比重(15/15℃)への換算は、日本国の国税庁所定分析法(訓令)の第2表「アルコール分と密度(15℃)及び比重(15/15℃)換算表」に基づき行う。また、この式による計算の途中においては小数点以下5けた目を四捨五入し、最終的に得られるエキス分の値については小数点以下2けた目を切り捨てる。また、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料の比重(15/4℃)は、振動式密度計を用いて15℃における密度を測定し、得られた密度の値を0.99997で除することにより算出される。
【0018】
また、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料は、飲み応えなどを付与するために、酸度が0.40g/100ml以上1.20g/100ml以下となっている。この「酸度」とは、クエン酸換算の酸度(クエン酸相当量として換算した酸度の値)であり、果実飲料の日本農林規格(平成28年2月24日農林水産省告示第489号)に定められた方法で求められる値である。具体的には、飲料を水酸化ナトリウム溶液(0.1mol/L)で中和滴定し、中和滴定において必要となった水酸化ナトリウム溶液の「滴定量(ml)」、滴定に使用した飲料の「体積(ml)」、「0.0064」(0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液1mLに相当するクエン酸の重量(g))という定数などを用いて算出すれば良い。
【0019】
この酸度の下限は0.40g/100ml以上であるが、飲み応えなどがより好ましくなり易いことから、0.45g/100ml以上であるのが好ましく、0.50g/100ml以上であるのがより好ましく、0.55g/100ml以上であるのがさらに好ましく、0.60g/100ml以上であるのがさらに好ましく、0.65g/100ml以上であるのがさらに好ましい。また、上限は1.20g/100ml以下であるが、飲み易さなどの観点から、1.10g/100ml以下であるのがより好ましく、1.00g/100ml以下であるのがさらに好ましく、0.90g/100ml以下であるのがさらに好ましく、0.80g/100ml以下であるのがさらに好ましい。なお、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料の酸度は、グレーフルーツ混濁果汁だけでなく、他の果汁や、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、グルコン酸、酒石酸、酢酸、またはこれらの塩を含む酸味料、食品原料などを含有させて調整することができる。
【0020】
そして、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料は、上記構成においてα-ピネン(α-Pinene:C1016)を含有する。これにより、グレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味が付与または向上され、さらに酸味の角が低減されたグレープフルーツ果実様アルコール飲料となる。このα-ピネンは香気成分の1つであって、(2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプタ-2-エンなどとも称され、下記式(2)で表される化合物である。
【0021】
【化1】
【0022】
そして、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料においては、α-ピネンの含有量を0.01mg/L以上とするのが好ましく、0.03mg/L以上とするのがより好ましく、0.05mg/L以上とするのがさらに好ましく、0.07mg/L以上とするのがさらに好ましく、0.08mg/L以上とするのがさらに好ましい。本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料においてグレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味を十分に付与または向上させ易くなるからである。また、酸味の角も十分に低減させ易くなる。さらに、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料にボディ感を付与または向上させることもでき、アルコール臭を低減させることもできる。なお、このα-ピネンの含有量は、市販されているα-ピネン(例えば純品や精製品など)やα-ピネン含有原料(香料など)の使用により調整することができ、これらを複数併用しても良い。
【0023】
また、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料においては、α-ピネンの含有量を、好ましくは10mg/L以下、より好ましくは8mg/L以下、さらに好ましくは5mg/L以下、さらに好ましくは3mg/L以下、さらに好ましくは2mg/L以下、さらに好ましくは1mg/L以下、さらに好ましくは0.8mg/L以下、さらに好ましくは0.5mg/L以下となるように調整すると、グレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味をいずれも高度に維持し且つ酸味の角を十分に低減しつつ、飲料としての香味全体のバランスがより好ましくなるため好適である。例えば、このα-ピネンの含有量は、0.01mg/L以上10mg/L以下であって良い。
【0024】
ここで、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料におけるα-ピネンの含有量は、例えば、溶媒抽出-GC-MS法により測定することができる。具体的には、まず、あらかじめNaClを添加したサンプルに2倍量のジクロロメタンもしくはペンタンと内部標準液とを添加し、15分間振とうして抽出を行う(添加する内部標準成分はα-ピネンと挙動が似ている成分を選択し、特に安定同位体でラベルした成分を用いることが好ましい)。そして、遠心して2層に分離した後、有機溶媒相を回収して硫酸ナトリウムで脱水し、そのままもしくは適宜濃縮したものをGC/MSにより分析する。GC/MSによる分析は、例えば以下のような条件で行うことができる。
・分析機器:8890 GC、5977B MSD(Agilent Technologies社製)
・カラム:InertCap(登録商標) Pure‐WAX、30m(長さ)×0.25mm(内径)、0.25μm(膜厚)(GLサイエンス社製)
・注入量:1μL
・線速度:37cm/sec
・キャリアガス:ヘリウム
・注入口温度:240℃
・注入モード:スプリットレス
・オーブン温度:40℃(3分)→5℃/分→250℃(5分)
・MS検出器:SIMモード
なお、この溶媒抽出-GC-MS法においては、試料にα-ピネンの標準液を別途添加して作成した検量線を使用する標準添加法により定量することが好ましい。また、夾雑物質の影響を受ける場合には、カラムの種類や長さ、オーブンの温度プログラムからなる群より選択される1以上の条件を適宜変更すること、および/または、GC/MS/MSまたは2次元GC/MSを使用することが好ましい。
【0025】
なお、限定されるものではないが、酸味の角をより低減させ易いことなどから、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料では、前述した酸度に対するこのα-ピネンの含有量の比率(α-ピネン含有量(mg/L)/酸度(g/100ml))が0.1以上であるのが好ましく0.13以上であるのがより好ましい。
【0026】
本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料は、さらに、ジヒドロアクチニジオリド(Dihydroactinidiolide:C1116)を含有すると好適である。前述したα-ピネンとの相乗効果により、グレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味をより向上させることができ、さらに酸味の角もより低減させることができるからである。特に、グレープフルーツ混濁果汁のピール感や複雑味についてはこの相乗効果によってより向上させ易く、非常に好ましい状態とし易い。このジヒドロアクチニジオリドも香気成分の1つであって、(R)-5,6,7,7a-テトラヒドロ-4,4,7a-トリメチルベンゾフラン-2(4H)-オンなどとも称され、下記式(3)で表される化合物である。
【0027】
【化2】
【0028】
そして、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料においては、このジヒドロアクチニジオリドの含有量を0.01mg/L以上とするのが好ましく、0.02mg/L以上とするのがより好ましく、0.03mg/L以上とするのがさらに好ましく、0.05mg/L以上とするのがさらに好ましく、0.07mg/L以上とするのがさらに好ましく、0.08mg/L以上とするのがさらに好ましい。α-ピネンとの相乗効果によって、グレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味を十分に向上させ易く、酸味の角も十分に低減させ易いからである。さらに、アルコール臭もより低減させ易く、ボディ感もより向上させ易い。そして、飲料に好ましいパルプ感(果実のじょうのう感など)を付与することもできる。なお、このジヒドロアクチニジオリドの含有量は、市販されているジヒドロアクチニジオリド(例えば純品や精製品など)やジヒドロアクチニジオリド含有原料(香料など)の使用により調整することができ、これらを複数併用しても良い。
【0029】
また、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料においては、このジヒドロアクチニジオリドの含有量を、好ましくは10mg/L以下、より好ましくは8mg/L以下、さらに好ましくは5mg/L以下、さらに好ましくは3mg/L以下、さらに好ましくは2mg/L以下、さらに好ましくは1mg/L以下、さらに好ましくは0.8mg/L以下、さらに好ましくは0.5mg/L以下となるように調整すると、グレープフルーツ混濁果汁の果汁感などを高度に維持しつつ、飲料としての香味全体のバランスがより好ましくなるため好適である。例えば、このジヒドロアクチニジオリドの含有量は、0.01mg/L以上10mg/L以下であって良い。
【0030】
なお、限定されるものではないが、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料では、ジヒドロアクチニジオリドを含有する構成の場合、本発明の効果(α-ピネンとの相乗効果)がより発揮され易くなることから、前述したα-ピネンの含有量に対するこのジヒドロアクチニジオリドの含有量の比率(ジヒドロアクチニジオリド含有量(mg/L)/α-ピネン含有量(mg/L))が1.0以上となるようにするのがより好適である。つまり、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料では、ジヒドロアクチニジオリド含有量がα-ピネン含有量以上であるとより好適である。
【0031】
ここで、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料におけるジヒドロアクチニジオリド含有量の測定は、例えば、溶媒抽出-GC-MS法により測定することができる。具体的には、まず、あらかじめNaClを添加したサンプルに2倍量のジクロロメタンもしくはペンタンと、内部標準液を添加し、15分間振とうして抽出を行う(添加する内部標準成分はジヒドロアクチニジオリドと挙動が似ている成分を選択し、特に安定同位体でラベルした成分を用いることが好ましい)。そして、遠心して2層に分離した後、有機溶媒相を回収して硫酸ナトリウムで脱水し、そのままもしくは適宜濃縮したものをGC/MSにより分析する。GC/MSによる分析は、例えば以下のような条件で行うことができる。
・分析機器:8890 GC、5977B MSD(Agilent Technologies社製)
・カラム:InertCap(登録商標) Pure‐WAX、30m(長さ)×0.25mm(内径)、0.25μm(膜厚)(GLサイエンス社製)
・注入量:1μL
・線速度:37cm/sec
・キャリアガス:ヘリウム
・注入口温度:240℃
・注入モード:スプリットレス
・オーブン温度:40℃(3分)→5℃/分→250℃(5分)
・MS検出器:SIMモード
なお、この溶媒抽出-GC-MS法においては、試料にジヒドロアクチニジオリドの標準液を別途添加して作成した検量線を使用する標準添加法により定量することが好ましい。また、夾雑物質の影響を受ける場合には、カラムの種類や長さ、オーブンの温度プログラムからなる群より選択される1以上の条件を適宜変更すること、および/または、GC/MS/MSまたは2次元GC/MSを使用することが好ましい。
【0032】
さらに、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料では、飲料としての香味全体のバランスや飲み応えがより好ましくなり易いことから、エキス分と酸度との比(エキス分(w/v%)/酸度(g/100ml))が6.0以上15.0以下となるようにするのがより好ましい。この下限は、6.5以上であるのがさらに好ましく、7.0以上であるのがさらに好ましく、7.5以上であるのがさらに好ましく、8.0以上であるのがさらに好ましく、8.5以上であるのがさらに好ましい。また、上限は、14.0以下であるのがさらに好ましく、13.0以下であるのがさらに好ましく、12.5以下であるのがさらに好ましい。
【0033】
また、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料は、甘味料を含有するアルコール飲料であると、飲み応えのあるグレープフルーツ果実様アルコール飲料とし易いため好適である。この甘味料には、糖類(グルコース、フルクトース、ガラクトース、ショ糖、マルトース、ラクトース、オリゴ糖、果糖ぶどう糖液糖、トレハロースなど)、糖アルコール(キシリトール、エリスリトールなど)、高甘味度甘味料(アセスルファムK、スクラロース、アスパルテーム、ステビアなど)等が包含される。特に、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料が糖類を含有するアルコール飲料であると、前述したエキス分の調整等がよりし易く好適である。
【0034】
なお、限定されるものではないが、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料は、甘味値が2超であるのが好ましく、3以上であるのがさらに好ましく、3.4以上であるのがさらに好ましく、4以上であるのがさらに好ましい。この上限は、8以下であって良く、7.5以下であって良く、7以下であっても良い。ここで、この「甘味値」とは、飲料中に含まれる甘味料の含有量をショ糖含有量に換算したものである。具体的には、飲料に含まれる各甘味料について、その含有量(g/100ml) に、その「甘味度」を乗じることにより、ショ糖に換算した時の各甘味料の含有量(g/100ml)が求められる。そして、飲料に含まれる全甘味料についてのショ糖換算含有量の合計値が、この飲料の「甘味値」である。また、この「甘味度」とは、ショ糖と比較した時の各甘味料の甘味の強さを示すパラメータであり、例えば「飲料用語事典、平成11年6月25日発行、株式会社ビバリッジジャパン社」の値を用いる。
【0035】
さらに、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料は、酸味料として有機酸(クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸、グルコン酸、酒石酸、酢酸など)またはその塩を含有するアルコール飲料であると、前述した酸度を所定の範囲内に調整し易く、飲み応えのあるグレープフルーツ果実様アルコール飲料とし易いため好適である。特に、クエン酸またはクエン酸塩を含有する構成とすると非常に好ましい。
【0036】
また、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料は、香料を含有するアルコール飲料であっても良い。香料は、食品の製造または加工の工程で、所定の香気を付与または増強するために添加される添加物であり、グレープフルーツ果実様フレーバーなどが例示されるが、これに限定されるものではない。なお、この香料は、前述したα-ピネンまたはジヒドロアクチニジオリドが含まれるものであっても良い。
【0037】
なお、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料には、本発明の効果に大きな影響を与えない範囲において、上記以外に、その他の塩類(塩化ナトリウム、塩化カリウムなど)、リン酸またはその塩、酒類、炭酸水、水(純水など)、着色料、苦味料、調味料、酸化防止剤、乳化剤等を原料として任意に使用することができる。
【0038】
そして、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料は、前述したように、酒税法において定義される酒類であっても良く、例えば、前述したようなリキュール、スピリッツ、果実酒、甘味果実酒、その他の発泡性酒類などであって良い。また、酵母によるアルコール発酵工程(酵母が糖類などの有機物から代謝産物であるアルコールを生成する工程)を経て製造された発酵アルコール飲料、あるいはアルコール発酵工程を行うことなく製造された非発酵アルコール飲料(例えば蒸留酒等の酒類を原料として用いて調合により製造されたアルコール飲料など)のいずれであっても良い。
【0039】
本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料のアルコール度数は、1v/v%以上であれば特に限定されないが、例えば、下限として2v/v%以上、さらには3v/v%以上、さらには4v/v%以上、さらには5v/v%以上の範囲が示され、上限として20v/v%以下、さらには15v/v%以下、さらには12v/v%以下、さらには10v/v%以下、さらには9v/v%以下、さらには8v/v%以下、さらには7v/v%以下、さらには6v/v%以下の範囲が示される。特に、このアルコール度数が1v/v%以上9v/v%以下であると、本発明の効果がより発揮され易いため好ましい。
このアルコール度数は、その製造工程において使用する酒類(蒸留酒、醸造酒、原料用アルコールなど)のアルコール度数や、その配合割合などによって調整することができる。さらには、発酵アルコール飲料の場合においては、アルコール発酵工程の発酵条件を制御することによりアルコール度数を調整することもできる。
【0040】
そして、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料は、炭酸ガスを含有する発泡性アルコール飲料であると、本発明の効果がより発揮されやすいため好ましい。ここで、「発泡性」とは、20℃における炭酸ガス圧(スニフト有り)が0.05MPa以上であることを意味し、この炭酸ガス圧は0.1MPa以上、さらには0.15MPa以上であっても良い。そして、この炭酸ガス圧の上限は、0.5MPa以下、さらには0.45MPa以下、さらには0.4MPa以下であっても良い。また、この炭酸ガスは、原料として使用する炭酸水由来のものであっても良いし、カーボネーション(炭酸ガス圧入)工程によりアルコール飲料に付与されたものであっても良い。そして、このカーボネーション工程は、バッチ式で行っても良いし、配管路に炭酸ガス圧入システム(カーボネーター)が組み込まれたインライン方式で連続的に行っても良い。また、このカーボネーション工程は、フォーミング(泡噴き)の発生等を避けるために、液の液温を10℃以下(好ましくは4℃以下)として行うのが好適である。
しかしながら、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料は、20℃における炭酸ガス圧(スニフト有り)が0.05MPa未満である非発泡性アルコール飲料であっても構わない。
【0041】
本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料の製造方法は、グレープフルーツ混濁果汁を含有させる工程と、α-ピネンを含有させる工程と、エキス分を3.5w/v%以上8.0w/v%以下とする工程と、クエン酸換算の酸度を0.40g/100ml以上1.20g/100ml以下とする工程と、を含めば、他はアルコール飲料製造における常法にしたがえば良く、特段限定はされない。そして、その製造において、酵母によるアルコール発酵工程を経て発酵アルコール飲料を製造しても良く、あるいは蒸留酒等の酒類を原料として用いた調合工程を経て(アルコール発酵工程を経ないで)非発酵アルコール飲料を製造しても良い。例えば、ウォッカをベース酒としてグレープフルーツ混濁果汁、甘味料、有機酸またはその塩、α-ピネン、炭酸水などを混合し、エキス分および酸度が所定の範囲内となるように調整して、必要であればろ過、殺菌などを行って製品とする方法が例示される。
【0042】
さらに、この製造方法は、必要であれば、ジヒドロアクチニジオリドを含有させる工程、α-ピネンおよび/またはジヒドロアクチニジオリドの含有量を前述した範囲内に調整する工程、エキス分と酸度との比(エキス分/酸度)を前述した範囲内に調整する工程、α-ピネン含有量と酸度との比(α-ピネン含有量/酸度)を前述した範囲内に調整する工程、甘味値を前述した範囲内に調整する工程、果汁使用率を前述した範囲内に調整する工程、アルコール度数を前述した範囲内に調整する工程などを含んでいても良い。
【0043】
そして、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料は、上記のようにして得られた製品が金属製容器(アルミ製容器、スチール製容器など)、ペットボトル容器、ガラス製容器、紙容器、樽容器などに充填された容器詰アルコール飲料とするのが好ましい。このような容器詰アルコール飲料とすることにより、香味などの経時劣化を抑制しやすいだけでなく、流通や販売などにおける利便性がより高まる。例えば、本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料は、栓を開けてそのまま飲める(希釈されずにそのまま飲用される)RTD飲料(Ready to drink飲料)であっても良く、あるいは氷や炭酸水などで割るRTS飲料(Ready to serve飲料)であっても良い。
【0044】
以上のような構成である本発明のグレープフルーツ果実様アルコール飲料は、所定以上のエキス分および酸度を有し(アルコール飲料として一定の飲み応えがあり)、且つ、グレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感(果皮由来成分による苦味など)、および複雑味が付与または向上され、さらに酸味の角が低減されたものとなる。また、アルコール臭が低減されたもの、あるいはボディ感が向上されたものとすることも可能である。
【0045】
なお、本発明は、グレープフルーツ混濁果汁を含むグレープフルーツ果実様アルコール飲料において、エキス分を3.5w/v%以上8.0w/v%以下とし、クエン酸換算の酸度を0.40g/100ml以上1.20g/100ml以下とし、さらにα-ピネンを含有させることを特徴とする、グレープフルーツ果実様アルコール飲料におけるグレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味の付与または向上ならびに酸味の角の低減方法を提供するものであるとも言える。言い換えれば、グレープフルーツ果実様アルコール飲料の香味改善方法を提供するものであるとも言える。さらに、グレープフルーツ果実様アルコール飲料におけるアルコール臭の低減方法やボディ感の向上方法を提供することも可能である。
【0046】
また、本発明は、グレープフルーツ混濁果汁を含むグレープフルーツ果実様アルコール飲料において特に好ましい効果が発揮されるものであるが、本発明の変形例として、前述した構成から選ばれる1以上を変形して、本発明と類似した課題があるグレープフルーツ果実以外の柑橘果実様アルコール飲料(グレープフルーツ果実以外の柑橘果実様の香味を有するアルコール飲料)に適用することも可能である。例えば、柑橘混濁果汁(例えばレモン混濁果汁、オレンジ混濁果汁、ユズ混濁果汁など)を含み、エキス分が3.5w/v%以上8.0w/v%以下であり、クエン酸換算の酸度が0.40g/100ml以上1.20g/100ml以下であり、さらにα-ピネンを含有する柑橘果実様アルコール飲料(例えばレモン果実様アルコール飲料、オレンジ果実様アルコール飲料、ユズ果実様アルコール飲料など)とすることにより、その類似した課題を解決でき、さらにジヒドロアクチニジオリドを含有する柑橘果実様アルコール飲料とすることでその効果をより高めることもできる。そして、この場合も、α-ピネン含有量およびジヒドロアクチニジオリド含有量や、果汁使用率、アルコール度数、炭酸ガス圧、甘味値などを含むその他の構成について、前述した構成を同様に採用することが可能である。
【0047】
さらに、本発明のさらなる変形例として、前述した構成から選ばれる1以上を変形して、グレープフルーツ果実様ノンアルコール飲料(国税庁所定分析法(訓令)3清酒3-4アルコール分(ガスクロマトグラフ分析法)に基づいて測定されるアルコール度数が1v/v%未満であるグレープフルーツ果実様飲料)に適用することも可能である。例えば、商品設計などから、グレープフルーツ果実様ノンアルコール飲料においてクエン酸換算の酸度を0.40g/100ml以上とした場合に、経時変化などの問題からグレープフルーツ混濁果汁を多く含有させることができなかったり酸味の角を感じ易くなってしまったりする場合には、グレープフルーツ混濁果汁を含み、クエン酸換算の酸度が0.40g/100ml以上1.20g/100ml以下であり、さらにα-ピネンを含有するグレープフルーツ果実様ノンアルコール飲料とすることにより、グレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味を付与または向上でき且つ酸味の角を低減でき、さらにジヒドロアクチニジオリドを含有するグレープフルーツ果実様ノンアルコール飲料とすることでその効果をより高めることもできる。そして、この場合において、α-ピネン含有量およびジヒドロアクチニジオリド含有量や、果汁使用率、炭酸ガス圧、甘味値などを含むアルコール度数およびエキス分以外の構成については、前述したアルコール飲料の構成を同様に採用することも可能である。
【0048】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において様々な変形が可能である。
【実施例0049】
<グレープフルーツ果実様アルコール飲料の調製および官能評価I>
ベース酒であるウォッカにグレープフルーツ混濁果汁(濃縮還元果汁)、液糖(果糖ぶどう糖液糖)、および酸味料(クエン酸、クエン酸三ナトリウム)を添加混合し、必要に応じてα-ピネンを添加混合し、さらに炭酸水および純水を添加混合して、アルコール度数が5v/v%、ストレート果汁に換算した果汁使用率が3w/w%、20℃における炭酸ガス圧(スニフト有り)が0.2MPaであり、エキス分、酸度(クエン酸換算の酸度)、およびα-ピネン含有量が下記表1上段に記載の値であるアルコール飲料サンプル(サンプル1~6)を調製した。なお、これらのアルコール飲料サンプルの甘味値はいずれも6である。
【0050】
そして、得られた各サンプルにおけるグレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味と、酸味の角(鋭さ)、アルコール臭、ボディ感、およびアルコール飲料としての総合評価(アルコール飲料としての香味全体のバランス)と、について、訓練され官能的識別能力を備えた6名のパネリストにより、以下に示す評価基準を用いて各サンプルを官能評価した。
【0051】
[グレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味の評価基準]
サンプル1におけるグレープフルーツ混濁果汁の果汁感(混濁果汁感)、ピール感、および複雑味(混濁果汁の複雑味)をいずれも1(全く感じない)とし、このサンプル1との対比として、それぞれ、1(全く感じない:サンプル1と同等)から5(強く感じる)の5段階により比較官能評価を行った。
【0052】
[酸味の角(鋭さ)の評価基準]
サンプル1における酸味の角(鋭さ)を5(強く感じる)とし、このサンプル1との対比として、1(全く感じない)から5(強く感じる:サンプル1と同等)の5段階により比較官能評価を行った。なお、この項目は点数が低いほど評価が高いものとなる。
【0053】
[アルコール臭の評価基準]
サンプル1におけるアルコール臭を4(やや強く感じる)とし、このサンプル1との対比として、1(全く感じない)から5(強く感じる)の5段階により比較官能評価を行った。なお、この項目も点数が低いほど評価が高いものとなる。
【0054】
[ボディ感の評価基準]
サンプル1におけるボディ感を3(感じる)とし、このサンプル1との対比として、1(全く感じない)から5(強く感じる)の5段階により比較官能評価を行った。
【0055】
[アルコール飲料としての総合評価の評価基準]
アルコール飲料としての総合評価(香味全体のバランス)を、1(悪い)から5(良い)の5段階によって絶対評価を行った。
【0056】
この官能評価結果(6名のパネリストの評価平均値)を下記表1下段に示した。この結果から、グレープフルーツ混濁果汁を含み、エキス分が7.0w/v%および酸度が0.75g/100mlであるグレープフルーツ果実様アルコール飲料において、α-ピネンを含有させることにより、α-ピネンを含まない場合(サンプル1)との比較から、グレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味をいずれも付与または向上でき、さらに酸味の角を低減できることが明らかとなった(サンプル2~6)。また、ボディ感を向上できることも明らかとなり(サンプル2~6)、さらにα-ピネンを所定量以上含有させることによりアルコール臭の低減ができることも明らかとなった(サンプル3~6)。
【0057】
【表1】
【0058】
<グレープフルーツ果実様アルコール飲料の調製および官能評価II>
ベース酒であるウォッカにグレープフルーツ混濁果汁(濃縮還元果汁)、液糖(果糖ぶどう糖液糖)、酸味料(クエン酸、クエン酸三ナトリウム)、α-ピネン、およびジヒドロアクチニジオリドを添加混合し、さらに炭酸水および純水を添加混合して、アルコール度数が5v/v%、ストレート果汁に換算した果汁使用率が3w/w%、20℃における炭酸ガス圧(スニフト有り)が0.2MPaであり、エキス分、酸度(クエン酸換算の酸度)、α-ピネン含有量、およびジヒドロアクチニジオリド含有量が下記表2上段に記載の値であるアルコール飲料サンプル(サンプル8~12)を調製した。なお、これらのアルコール飲料サンプルの甘味値はいずれも6である。
【0059】
そして、得られた各サンプルにおけるグレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味と、酸味の角(鋭さ)、アルコール臭、ボディ感、およびアルコール飲料としての総合評価と、について、上記Iと同じ方法および評価基準により官能評価を行った。
【0060】
この官能評価結果(6名のパネリストの評価平均値)を下記表2下段に示した。なお、参考として、上記Iのサンプル3の内容も下記表2に示した。この結果から、グレープフルーツ混濁果汁を含み、エキス分が7.0w/v%、酸度が0.75g/100ml、およびα-ピネン含有量が0.10mg/Lであるグレープフルーツ果実様アルコール飲料において、ジヒドロアクチニジオリドを含有させることにより、グレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味をいずれもより向上でき、さらに酸味の角もより低減できることが明らかとなった(サンプル8~12)。また、アルコール臭をより低減できることも明らかとなり(サンプル8~12)、さらにジヒドロアクチニジオリドを所定量以上含有させることによりボディ感のさらなる向上ができることも明らかとなった(サンプル9~12)。
【0061】
【表2】
【0062】
<グレープフルーツ果実様アルコール飲料の調製および官能評価III>
ベース酒であるウォッカにグレープフルーツ混濁果汁(濃縮還元果汁)、液糖(果糖ぶどう糖液糖)、および酸味料(クエン酸、クエン酸三ナトリウム)を添加混合し、必要に応じてα-ピネンあるいはα-ピネンおよびジヒドロアクチニジオリドを添加混合し、さらに炭酸水および純水を添加混合して、アルコール度数が5v/v%、ストレート果汁に換算した果汁使用率が3w/w%、20℃における炭酸ガス圧(スニフト有り)が0.2MPaであり、エキス分、酸度(クエン酸換算の酸度)、α-ピネン含有量、およびジヒドロアクチニジオリド含有量が下記表3上段に記載の値であるアルコール飲料サンプル(サンプル13~18)を調製した。なお、これらのアルコール飲料サンプルの甘味値は、サンプル13~15がいずれも4.5であり、サンプル16~18がいずれも3.4である。
【0063】
そして、得られた各サンプルにおけるグレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味と、酸味の角(鋭さ)、アルコール臭、ボディ感、およびアルコール飲料としての総合評価と、について、上記Iと同じ方法および評価基準により官能評価を行った。
【0064】
この官能評価結果(6名のパネリストの評価平均値)を下記表3下段に示した。この結果から、グレープフルーツ混濁果汁を含み、エキス分が5.6w/v%および酸度が0.60g/100mlであるグレープフルーツ果実様アルコール飲料や、グレープフルーツ混濁果汁を含み、エキス分が4.2w/v%および酸度が0.45g/100mlであるグレープフルーツ果実様アルコール飲料においても、α-ピネンを含有させることにより、上記Iと同様にグレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味をいずれも付与または向上でき、さらに酸味の角を低減できることが明らかとなった(サンプル14、17)。また、ボディ感の向上やアルコール臭の低減についても同様の傾向であった。そして、これらについて、さらにジヒドロアクチニジオリドを含有させることにより、上記IIと同様にグレープフルーツ混濁果汁の果汁感、ピール感、および複雑味をいずれもより向上でき、酸味の角もより低減できることが明らかとなった(サンプル15、18)。また、ボディ感の向上やアルコール臭の低減についても同様の傾向であった。
【0065】
【表3】