(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160360
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】洗濯機の故障診断システム
(51)【国際特許分類】
D06F 33/47 20200101AFI20231026BHJP
D06F 33/74 20200101ALI20231026BHJP
D06F 105/58 20200101ALN20231026BHJP
【FI】
D06F33/47
D06F33/74
D06F105:58
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070687
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】根本 佳奈子
(72)【発明者】
【氏名】高野 雅樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 剛
【テーマコード(参考)】
3B167
【Fターム(参考)】
3B167AA04
3B167AE04
3B167AE05
3B167AE12
3B167BA76
3B167BA86
3B167BA91
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3B167HA11
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3B167KB02
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3B167LC02
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3B167LE10
3B167LF30
3B167LG11
3B167MA03
3B167MA13
(57)【要約】
【課題】洗濯機の防振部の故障を正確に診断できる故障診断システムを提供する。
【解決手段】本発明の洗濯機の故障診断システムは、筐体と、水を溜める外槽と、前記外槽内にあって衣類を収納する内槽と、前記内槽を駆動する駆動部と、前記外槽に設けられた防振部と、運転中に物理量を検知する物理量検知部と、前記物理量検知部の検知結果に基づいて前記防振部の故障を診断する故障診断部と、を備え、前記内槽内に着脱可能な診断用治具が取り付けられた状態で、前記駆動部が前記内槽を駆動するとともに、前記物理量検知部が物理量を検知することを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
水を溜める外槽と、
前記外槽内にあって衣類を収納する内槽と、
前記内槽を駆動する駆動部と、
前記外槽に設けられた防振部と、
運転中に物理量を検知する物理量検知部と、
前記物理量検知部の検知結果に基づいて前記防振部の故障を診断する故障診断部と、を備え、
前記内槽内に着脱可能な診断用治具が取り付けられた状態で、前記駆動部が前記内槽を駆動するとともに、前記物理量検知部が物理量を検知することを特徴とする、洗濯機の故障診断システム。
【請求項2】
前記故障診断部は、前記外槽が共振する回転数帯で前記内槽が回転しているときに検知される物理量に基づいて、前記防振部の故障を診断することを特徴とする、請求項1に記載の洗濯機の故障診断システム。
【請求項3】
前記洗濯機は、前記外槽が共振する回転数帯で前記内槽を回転させる診断運転モードを有し、
前記故障診断部は、前記診断運転モードのときに検知される物理量に基づいて、前記防振部の故障を診断することを特徴とする、請求項1に記載の洗濯機の故障診断システム。
【請求項4】
前記洗濯機は、洗い及びすすぎを行わずに脱水のみを行う脱水運転モードを有し、
前記故障診断部は、前記脱水運転モードにおいて、前記外槽が共振する回転数帯で前記内槽が回転しているときに検知される物理量に基づいて、前記防振部の故障を診断するものであって、
前記脱水運転モードが、前記診断用治具の取付位置を異ならせて複数回実行されることを特徴とする、請求項1に記載の洗濯機の故障診断システム。
【請求項5】
前記回転数帯では、前記防振部の設置方向に前記外槽が共振することを特徴とする、請求項2乃至4のいずれかに記載の洗濯機の故障診断システム。
【請求項6】
前記故障診断部は、前記診断運転モードにおいて異なる時間に検知された複数の振動変位に基づいて、前記防振部の故障を診断することを特徴とする、請求項3に記載の洗濯機の故障診断システム。
【請求項7】
前記故障診断部と、前記故障診断部の診断結果を表示する表示部と、が洗濯機本体に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の洗濯機の故障診断システム。
【請求項8】
前記検知結果を送信する情報送信部が、洗濯機本体に設けられ、
前記検知結果を受信する情報受信部と、前記故障診断部と、がサーバに設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の洗濯機の故障診断システム。
【請求項9】
前記検知結果を表示する表示部が、洗濯機本体に設けられ、
前記検知結果を入力する情報入力部と、前記検知結果を送信する情報送信部と、前記故障診断部の診断結果を受信する情報受信部と、前記診断結果を表示する表示部と、が携帯端末装置に設けられ、
前記検知結果を受信する情報受信部と、前記故障診断部と、前記診断結果を送信する情報送信部と、がサーバに設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の洗濯機の故障診断システム。
【請求項10】
前記検知結果を表示する表示部が、洗濯機本体に設けられ、
前記検知結果を入力する情報入力部と、前記故障診断部と、前記故障診断部の診断結果を表示する表示部と、が携帯端末装置に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の洗濯機の故障診断システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機の故障診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯機では、脱水のために内槽が高速回転しているときに、振動や騒音が異常に大きくなる場合があり、その原因は、大きく分けて2つ考えられる。
【0003】
1つ目の原因は、洗濯機の使用法に問題がある場合である。使用方法の問題で多いのは、ユーザが衣類を内槽の内周面に均等分散し難い状態で投入することである。このような状態で衣類が投入されると、脱水運転時に負荷の大きな片寄り(アンバランス)が発生して遠心力が大きくなり、その結果、振動等が大きくなる。使用方法の問題については、ユーザが適切に衣類を投入することにより、解決できる。
【0004】
2つ目の原因は、洗濯機を構成する部品のうち、振動等に影響する部品が故障した場合であり、発生頻度が高い部品は、防振部である。防振部の故障の例としては、オイルダンパのオイル漏れが挙げられる。オイル漏れは、シールが経年劣化等により破れることにより発生し、オイルが漏れると、オイルの粘性による減衰力が低減するため、脱水時、外槽が共振する回転数帯で内槽が回転しているときに、振動等が異常に大きくなる。
【0005】
したがって、振動等が大きい場合には、洗濯機の制御のために設置されているセンサで検知した物理量を用いて、防振部の故障の有無を診断し、使用方法の助言や部品の交換等を行うことが有効である。防振部の故障を診断する技術としては、例えば、特許文献1,2が挙げられる。
【0006】
特許文献1には、ユーザが洗濯運転を行っているときに、洗濯機の振動、騒音に非定常性や違和感がある場合、ユーザの所有する情報端末器から洗濯機のデータ通信手段へ診断指令を送信し、その指令を洗濯機の制御手段が受け解読し、診断シーケンス部が保有する診断シーケンスに沿って機器を制御駆動する洗濯機のサービスシステムが開示されている。
【0007】
特許文献2には、コイルの磁場により粘性が変化する磁気粘性流体を用いたダンパを有するサスペンションを備えたドラム式洗濯機であって、コイルに流れる電流を検出する電流センサの検出結果に基づいて、サスペンションの故障を判断することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-50910号公報
【特許文献2】特許第5546956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1,2に開示された技術では、内槽に衣類を収納した状態で行われる脱水運転のときに、物理量を検知し、検知結果に応じて故障の有無を診断している。しかし、検知される物理量は、脱水運転時の衣類の片寄り状態により異なるため、防振部の故障を正確に診断することは難しい。
【0010】
本発明は、このような課題を解決するもので、洗濯機の防振部の故障を正確に診断できる故障診断システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の洗濯機の故障診断システムは、筐体と、水を溜める外槽と、前記外槽内にあって衣類を収納する内槽と、前記内槽を駆動する駆動部と、前記外槽に設けられた防振部と、運転中に物理量を検知する物理量検知部と、前記物理量検知部の検知結果に基づいて前記防振部の故障を診断する故障診断部と、を備え、前記内槽内に着脱可能な診断用治具が取り付けられた状態で、前記駆動部が前記内槽を駆動するとともに、前記物理量検知部が物理量を検知することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、洗濯機の防振部の故障を正確に診断できる故障診断システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】洗濯機の内部構造を示すために筐体の一部を切断して示した右側面断面図。
【
図3】実施例1に係る故障診断システムの構成を示すブロック図。
【
図4】防振部が正常な場合と故障している場合とにおいて、物理量検知部で検知される物理量の推移を示すグラフ。
【
図5】複数の正常品及び故障品を含む洗濯機について、故障診断運転を行ったときの振動変位の代表値V1及び振動変位の傾きの代表値V2の分布を示すグラフ。
【
図6】実施例1における故障診断の手順を示すフローチャート。
【
図7】防振部が故障している洗濯機について、脱水運転を行ったときの振動変位の代表値Vの分布を示すグラフ。
【
図8】実施例2における故障診断の手順を示すフローチャート。
【
図9】実施例3に係る故障診断システムの構成を示す概念図。
【
図10】実施例3に係る故障診断システムの構成を示すブロック図。
【
図11】実施例4に係る故障診断システムの構成を示す概念図。
【
図12】実施例4に係る故障診断システムの構成を示すブロック図。
【
図13】実施例5に係る故障診断システムの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
まず、洗濯機の構造について、
図1及び
図2に基づき説明する。
図1は、洗濯機を示す外観斜視図であり、
図2は、洗濯機の内部構造を示すために筐体の一部を切断して示した右側面断面図である。
【0016】
図1に示すように、洗濯機1の筐体101の前面上部には、洗剤が投入される洗剤投入部12と、運転状況等を表示したり各種設定を操作したりする操作パネル(表示部14)と、が設けられている。また、図示は省略しているが、筐体101の内部には、洗濯機1の運転を制御する制御部を備えた制御基板が設けられており、この制御基板は、後述する、センサ情報記憶部11a、診断情報記憶部11b及び故障診断部32も備えている。
【0017】
図2に示すように、洗濯水を溜める円筒状の外槽102は、衣類を収納する内槽103を同軸状に内包し、前面が開口している。内槽103と外槽102は、略水平又は前面が高くなるように傾いており、外槽102が防振部(サスペンション105や、吊りばね106)を介して筐体101と接続されている。ここで、サスペンション105は、ばね105aと、ダンパ105bと、両端に位置するゴム製のブッシュ105cと、で構成される。サスペンション105は、ダンパ105bの減衰力により外槽の振動を抑え、吊りばね106は、筐体101に外槽102の振動が伝播するのを抑えている。外槽102の下部には、左右方向、上下方向及び前後方向の振動を検知するための振動センサ107が設けられている。
【0018】
内槽103は、外槽102に対して回転可能に支持された円筒状の洗濯兼脱水槽であり、その外周壁および底壁に通水及び通風のための複数の貫通孔を有し、前側端面に衣類を出し入れするための開口部が形成されている。外槽102の後側端面の外側中央には、内槽103を駆動するモータ104(駆動部)が設置されており、モータ104の回転軸104aは、外槽102を貫通し、内槽103と結合している。モータ104には、回転数を検知するために回転センサ108が設けられており、モータ104の回転軸が内槽103に直結されている場合には、回転センサ108で検知されるモータ104の回転数が内槽103の回転数となる。内槽103の開口部の外径側には、流体バランサ103aが取り付けられている。内槽103の外周壁の内径側には軸方向に延びるリフタ103bが複数個設けられており、洗濯時に内槽103が回転すると、衣類はリフタ103bと遠心力で持ち上がり、重力で落下する動きを繰り返す。内槽103の回転軸Azは、略水平又は開口部側がやや高くなるように傾斜している。
【0019】
脱水運転時に、内槽103の回転数が徐々に増加していく際、外槽102が共振する回転数帯に達すると外槽102の振動が大きくなる。このとき、制御部は、振動センサ107の出力と予め記録されている閾値とを比較し、出力が閾値を超えた場合には、振動が過大とならないように、内槽103の回転を停止するよう制御している。
【0020】
また、本実施形態の洗濯機1では、サスペンション105が略上下方向に設置されているため、ダンパ105bの減衰力により、外槽102の鉛直方向の振動を低減させることができる。なお、本明細書では、サスペンション105の設置方向である略上下方向を、防振部の設置方向と呼ぶことがある。
【0021】
サスペンション105を構成するダンパ105bがオイルダンパの場合、オイル漏れが発生すると減衰力が低下する。したがって、ダンパ105bにオイル漏れが発生している洗濯機では、脱水運転時に、外槽102が上下方向に共振する回転数帯で、ダンパ105bが正常な場合と比べ、振動が大きくなる。ただし、振動の原因となる衣類の片寄り状態は、脱水運転毎に異なるため、内槽103に発生する遠心力(負荷)も脱水運転毎に異なることとなる。すなわち、通常どおり内槽103に衣類を収納したまま脱水運転させた状態では、防振部の故障を正確に診断することが難しい。
【0022】
そこで、本実施形態は、大きさや材質が予め決まっている錘200を内槽103内に取り付け、負荷を一定とした状態で、振動の程度を比較することにより、防振部の故障を精度良く診断するようにした。
【0023】
錘200は、ユーザ又は保守員が、防振部の故障を診断するときだけ、衣類に代えて内槽103内に取り付ける、着脱可能な診断用治具である。錘200は、粘着テープやネジ等の特別な固定用治具を用いなくても、内槽103内の所定位置に容易に取り付けが可能であって、錆び難いものが望ましい。例えば、内槽103の底壁から流体バランサ103aまでの軸方向寸法より僅かに大きなゴム等の弾性部材で錘200を構成すれば、内槽103の内径側のうちリフタ103bのない領域に、錘200を簡単に着脱できる。
【0024】
以下、錘200を用いた具体的な故障診断方法に関し、実施例1-実施例5を例に挙げて説明する。
【実施例0025】
実施例1について、
図3-
図6に基づき説明する。
図3は、実施例1に係る故障診断システムの構成を示すブロック図である。本実施例の故障診断システム500は、洗濯機1単体で故障診断を行うものである。
【0026】
図3に示すように、本実施例の洗濯機1は、物理量検知部13と、センサ情報記憶部11aと、診断情報記憶部11bと、故障診断部32と、表示部14と、を備える。物理量検知部13は、洗濯機1の運転中に物理量を検知するものであり、例えば、
図2に示した振動センサ107や回転センサ108である。センサ情報記憶部11aは、物理量検知部13が取得した物理量データを一時的に記憶するものであり、例えば、メモリである。診断情報記憶部は、故障診断に必要となる閾値等の固定されたデータを記憶する。故障診断部32は、センサ情報記憶部11aに記憶された物理量検知部13の検知結果と、診断情報記憶部11bに記憶された閾値等と、に基づいて防振部(例えばサスペンション105)の故障を診断する。表示部14は、故障診断部32による診断結果を表示するものであり、例えば操作パネルである。
【0027】
本実施例では、通常の洗濯運転や脱水運転とは異なり、内槽103内に衣類を収納せず、内槽103に錘200を取り付けた状態で、モータ104が内槽103を駆動するとともに振動センサ107により振動変位を検知する、診断運転モードを実行する。また、通常の洗濯運転や脱水運転では、外槽102が共振する回転数帯は短時間で通過するように内槽103の回転数が増減するが、診断運転モードでは、基本的に、共振する回転数帯で内槽103の回転数が維持される。なお、診断運転モードにおける内槽103の回転数は、モータ104の制御上、外槽102が共振する特定の値そのものに維持できない場合もあるので、その値の前後の一定の幅を有する回転数帯の中に属していれば良い。制御部は、内槽103を所定の回転数帯に維持するために、回転センサ108による検知結果を用いて、モータ104を制御する。
【0028】
図4は、防振部(ダンパ)が正常な場合と故障している場合とにおいて、物理量検知部(振動センサ)で検知される物理量(振動変位)の推移を示すグラフである。なお、
図4に示すグラフを得る際、内槽103の回転数は、防振部の設置方向(上下方向)に外槽102が共振する回転数帯で維持されているものとする。
【0029】
防振部が正常な場合、外槽102の上下方向の振動変位(P-P)は、時刻T1まで増加するが、時刻T1以降は安定していることが分かる。一方、防振部が故障している場合、振動変位(P-P)は、時刻T1で正常の場合よりも大きな値となり、さらに時刻T1以降も増加していることが分かる。本実施例では、時刻T1における振動変位(代表値V1)と、時刻T1から所定時間が経過した時刻T2までの振動変位の傾き(代表値V2)と、の2つの指標に基づき、故障診断を行う。
【0030】
図5は、複数の正常品及び故障品を含む洗濯機について、故障診断運転を行ったときの振動変位の代表値V1及び振動変位の傾きの代表値V2の分布を示すグラフである。なお、第1の閾値は、振動変位の代表値V1に関して故障判定の目安となる閾値であり、第2の閾値は、振動変位の傾きの代表値V2に関して故障判定の目安となる閾値である。
図5によれば、正常品の代表値V1及び代表値V2は、各閾値で仕切られた4つの領域のうち、左下の領域に分布することが分かる。
【0031】
次に、
図6を参照しながら、故障診断の手順を説明する。
図6は、実施例1における故障診断の手順を示すフローチャートである。
【0032】
まず、ユーザ又は保守員が、衣類は収納しないまま、診断用治具である錘200を洗濯機の内槽103に取り付ける(ステップS101)。次に、ユーザ又は保守員が、操作パネルを操作して、故障診断モードを開始させる(ステップS102)。すると、制御部は、外槽102が共振する回転数帯で内槽103が回転するようにモータ104を制御し、このときの物理量を物理量検知部13が検知する(ステップS103)。物理量検知部13が検知した物理量データ、具体的には、振動センサ107が検知した振動変位と、回転センサ108が検知した回転数と、がセンサ情報記憶部11aに記憶される(ステップS104)。なお、故障診断モード中は内槽103が前述の回転数帯で維持されるので、回転数は記憶されなくても良い。
【0033】
次に、故障診断部32が、センサ情報記憶部11aに記憶された物理量データから、時刻T1及び時刻T2における振動変位のデータを抽出し、代表値V1及び代表値V2を算出する(ステップS105)。ここで、時刻T1及び時刻T2における振動変位をそれぞれY1及びY2とすると、代表値V1及び代表値V2は次式で表される。
【0034】
V1=Y1・・・(式1)
V2=(Y2-Y1)/(T2-T1)・・・(式2)
故障診断部32は、診断情報記憶部11bから予め定められた第1の閾値及び第2の閾値を読み出すとともに、(式1)及び(式2)で求めた代表値V1及び代表値V2を読み出した各閾値と比較する。具体的には、故障診断部32が、まず、代表値V1>第1の閾値、かつ、代表値V2>第2の閾値の関係が成立するか否かを判定する(ステップS106)。当該関係が成立する場合、故障診断部32は、防振部に故障ありと判定する。当該関係が成立しない場合、故障診断部32は、次に、代表値V1≦第1の閾値、かつ、代表値V2≦第2の閾値の関係が成立するか否かを判定する(ステップS107)。当該関係が成立する場合、故障診断部32は、防振部が正常であると判定する。当該関係が成立しない場合、故障診断部32は、正常品にも故障品にも該当しない境界領域であると判定する。境界領域であると判定された場合、保守員等による詳細な確認作業が行われる。
【0035】
ここで、
図6に示す例では、境界領域と判定される条件が設けられているが、この条件は設けずに、正常品か故障品のどちらかに必ず割り当てられるようにしても良い。その場合、前述と異なる閾値や関係式が、サンプルデータの代表値の分布状況に基づき、予め定められる。なお、
図5に示す例では、代表値V1>第1の閾値、かつ、代表値V2≦第2の閾値となる場合と、代表値V1≦第1の閾値、かつ、代表値V2>第2の閾値となる場合と、が境界領域ではなく、故障品に割り当てられている。
まず、洗濯機は、脱水運転モードの実行回数が所定の下限値を超えているか否かを判定する(ステップS201)。初回の場合、実行回数k=1であり、下限値は超えていないので、ユーザ又は保守員が、衣類は収納しないまま、診断用治具である錘200を内槽103内の所定位置に取り付ける(ステップS202)。次に、ユーザ又は保守員が、操作パネルを操作して、洗い及びすすぎを行わずに脱水のみを行う脱水運転モードを開始させる(ステップS203)。すると、制御部は、内槽103の回転数を徐々に増加させ、外槽102が共振する回転数帯よりも高い所定の脱水回転数になるまでモータ104を制御し、物理量検知部13は、その間の物理量を検知する(ステップS204)。具体的には、振動センサ107が検知した振動変位と、回転センサ108が検知した回転数と、がセンサ情報記憶部11aに記憶される(ステップS205)。
次に、実行回数として1が加算され(ステップS206)、ステップS201に戻る。ステップS201で下限値を超えていない場合、ユーザ又は保守員は、錘200を前回とは異なる位置にずらして設置する。以降は、ステップS206までが前述と同様の手順が繰り返される。ステップ201で下限値を超えた場合、故障診断部32が、センサ情報記憶部11aに記憶された物理量データから、共振する回転数帯における振動変位のデータを抽出し、代表値Vを算出する(ステップS207)。代表値Vは、前述のように、複数回の振動変位の平均値であっても中央値であっても良い。
故障診断部32は、診断情報記憶部11bから予め定められた第3の閾値及び第4の閾値を読み出すとともに、算出した代表値Vと比較する。具体的には、故障診断部32が、まず、代表値V>第3の閾値の関係が成立するか否かを判定する(ステップS208)。当該関係が成立する場合、故障診断部32は、防振部に故障ありと判定する。当該関係が成立しない場合、故障診断部32は、次に、代表値V≦第4の閾値の関係が成立するか否かを判定する(ステップS209)。当該関係が成立する場合、故障診断部32は、防振部が正常であると判定する。当該関係が成立しない場合、故障診断部32は、正常品にも故障品にも該当しない境界領域であると判定する。境界領域であると判定された場合、保守員等による詳細な確認作業が行われる。
本実施例では、実施例1と異なり、錘200の位置をずらして複数回運転させる必要はあるものの、特別な故障診断モードが存在しない洗濯機であっても精度の高い故障診断が可能である。