(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160367
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】水中航走体
(51)【国際特許分類】
B63C 11/00 20060101AFI20231026BHJP
B63C 11/48 20060101ALI20231026BHJP
B63B 22/00 20060101ALI20231026BHJP
B63B 49/00 20060101ALI20231026BHJP
B63H 25/04 20060101ALI20231026BHJP
G01S 19/18 20100101ALI20231026BHJP
【FI】
B63C11/00 B
B63C11/48 D
B63B22/00 C
B63B49/00 Z
B63H25/04 D
G01S19/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070695
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】高田 昌憲
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062BB07
5J062BB09
5J062CC07
5J062GG02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水中航走体の本体部から分離可能な分離部が、障害物等との接触により破損する可能性を低減することができる水中航走体を提供する。
【解決手段】水中航走体1は、本体部10と、本体部から分離可能な分離部20と、を備える。分離部は、本体部と接続されて本体部の外部との通信を中継する通信アンテナ21を備える。本体部は、外部の音響信号を取得する音響センサ11と、音響センサによって取得された音響信号に基づいて、外部に障害物があるか否かを判定するコントローラ40と、コントローラによって外部に障害物があると判定された場合に、分離部を本体部に回収する回収部15と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と、前記本体部から分離可能な分離部と、を備える水中航走体であって、
前記分離部は、前記本体部と接続されて前記本体部の外部との通信を中継する通信アンテナを備え、
前記本体部は、
前記外部の音響信号を取得する音響センサと、
前記音響センサによって取得された前記音響信号に基づいて、前記外部に障害物があるか否かを判定するコントローラと、
前記コントローラによって前記外部に障害物があると判定された場合に、前記分離部を前記本体部に回収する回収部と、
を備える、水中航走体。
【請求項2】
前記コントローラは、前記音響信号に基づいて算出される信号対雑音比が第1閾値以上である場合に、前記外部に障害物があると判定する、請求項1に記載の水中航走体。
【請求項3】
前記コントローラは、前記音響信号に基づいて算出される信号対雑音比の単位時間当たりの増加量が第2閾値以上である場合に、前記外部に障害物があると判定する、請求項1又は2に記載の水中航走体。
【請求項4】
前記コントローラは、基準となる前記音響信号の信号強度を基準信号強度として設定し、前記基準信号強度と比較して前記音響信号の信号強度の増加量が第3閾値以上である場合に、前記外部に障害物があると判定する、請求項1又は2に記載の水中航走体。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記水中航走体の周囲に船舶が位置する場合の環境音を教師データとする機械学習により、前記水中航走体の周囲に船舶が存在する確率を、前記音響信号に対応づけて算出する学習モデルを生成し、
前記音響信号に基づいて、前記学習モデルが算出した前記確率が第4閾値以上である場合に、前記外部に障害物があると判定する、請求項1又は2に記載の水中航走体。
【請求項6】
前記通信アンテナは、前記水中航走体の位置を決定するための測位信号を受信する、請求項1又は2に記載の水中航走体。
【請求項7】
前記音響センサはパッシブソナーである、請求項1又は2に記載の水中航走体。
【請求項8】
前記分離部は、前記本体部が備える固定翼である、請求項1又は2に記載の水中航走体。
【請求項9】
前記本体部と前記分離部は、ケーブルで接続されている、請求項1又は2に記載の水中航走体。
【請求項10】
前記本体部は自律航行可能である、請求項1又は2に記載の水中航走体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水中航走体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、本体部と、本体部の外部に放出可能なブイと、を備える水中航走体が開示されている。当該水中航走体によれば、本体部を浮上させる場合にブイが本体部の外部に放出され、ブイが備えるセンサの検出信号に基づいて、本体部の浮上予定位置に障害物が検出された場合、本体部の浮上行動は不可であるとの判断が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される技術によれば、本体部を浮上させる場合にブイが本体部の外部に放出される。そのため、ブイが航行する船舶とぶつかったり、ブイが航行する船舶のスクリューに巻き込まれたりして、ブイが破損するおそれがあるという問題がある。
【0005】
本開示は上述の状況を鑑みて成されたものである。即ち、本開示は、水中航走体の本体部から分離可能な分離部が、障害物等との接触により破損する可能性を低減することができる水中航走体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る水中航走体は、本体部と、上記本体部から分離可能な分離部と、を備える。上記分離部は、上記本体部と接続されて上記本体部の外部との通信を中継する通信アンテナを備える。上記本体部は、音響センサと、コントローラと、回収部と、を備える。音響センサは、上記外部の音響信号を取得する。コントローラは、上記音響センサによって取得された上記音響信号に基づいて、上記外部に障害物があるか否かを判定する。回収部は、上記コントローラによって上記外部に障害物があると判定された場合に、上記分離部を上記本体部に回収する。
【0007】
上記コントローラは、上記音響信号に基づいて算出される信号対雑音比が第1閾値以上である場合に、上記外部に障害物があると判定するものであってもよい。
【0008】
上記コントローラは、上記音響信号に基づいて算出される信号対雑音比の単位時間当たりの増加量が第2閾値以上である場合に、上記外部に障害物があると判定するものであってもよい。
【0009】
上記コントローラは、基準となる上記音響信号の信号強度を基準信号強度として設定し、上記基準信号強度と比較して上記音響信号の信号強度の増加量が第3閾値以上である場合に、上記外部に障害物があると判定するものであってもよい。
【0010】
上記コントローラは、上記水中航走体の周囲に船舶が位置する場合の環境音を教師データとする機械学習により、上記水中航走体の周囲に船舶が存在する確率を、上記音響信号に対応づけて算出する学習モデルを生成するものであってもよい。そして、上記コントローラは、上記音響信号に基づいて、上記学習モデルが算出した上記確率が第4閾値以上である場合に、上記外部に障害物があると判定するものであってもよい。
【0011】
上記通信アンテナは、上記水中航走体の位置を決定するための測位信号を受信するものであってもよい。
【0012】
上記音響センサはパッシブソナーであってもよい。
【0013】
上記分離部は、上記本体部が備える固定翼であってもよい。
【0014】
上記本体部と上記分離部は、ケーブルで接続されているものであってもよい。
【0015】
上記本体部は自律航行可能であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、水中航走体の本体部から分離可能な分離部が、障害物等との接触により破損する可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本開示の実施形態に係る水中航走体の構成を示す模式図である。
【
図2】水中航走体の使用状態の一例を示す模式図である。
【
図3】水中航走体の本体部の構成を示すブロック図である。
【
図4】水中航走体の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、いくつかの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
[水中航走体の構成]
図1は、本開示の実施形態に係る水中航走体の構成を示す模式図である。
図1に示すように、水中航走体1は、本体部10と、本体部10から分離可能な分離部20とを備える。
【0020】
分離部20は、本体部10とケーブル30を介して接続され、本体部10の外部との通信を中継する通信アンテナ21を備える。例えば、通信アンテナ21は、水中航走体1の位置を決定するための測位信号を受信するものであってもよい。例えば、通信アンテナ21は、GNSS(Global Navigation Satellite System)アンテナである。その他、通信アンテナ21は、衛星通信アンテナ、無線通信アンテナ等であってもよい。通信アンテナ21は、ケーブル30の内部に設けられた信号線(図示なし)を介して、本体部10に内蔵された各種装置と接続される。
【0021】
分離部20の内部のうち、通信アンテナ21の周囲は、電波透過性のある非導電性物質で充填されていてもよい。通信アンテナ21の周囲が非導電性物質で充填されていることにより、分離部20が水面100に浮上した際に、通信アンテナ21の周囲の水を排除できるものであってもよい。
【0022】
なお、分離部20は、本体部10に設けられた固定翼であってもよい。すなわち、分離部20が本体部10に格納された状態において、分離部20は、水中航走体1が備える固定翼として機能するものであってもよい。
【0023】
本体部10は、音響センサ11とコントローラ40と回収部15とを備える。また、本体部10は、本体部10が位置する深度を計測する深度計を備えるものであってもよい。なお、本体部10は自律航行可能である。そのため、本体部10は、プロペラ等の推進装置および方向舵等を備えるものであってもよい。
【0024】
なお、本体部10は、水面100を航行する船の喫水線と波高を考慮し、船底と衝突しない十分に安全な深度を保持した状態で航行するものであってもよい。その状態で、本体部10は、後述する音響センサ11を用いて、本体部10及び分離部20の近傍における船舶等の障害物の有無を確認する。
【0025】
音響センサ11は、本体部10の外部の音響信号を取得する。例えば、音響センサ11は、対象物が発する音波を捉えるパッシブソナーである。その他、音響センサ11は、水中にパルス状の音波を発射し、音波が対象物に反射して戻ってくるまでの時間や強度から、対象物までの距離等を測定するアクティブソナーであってもよい。
【0026】
回収部15は、コントローラ40によって本体部10の外部に障害物があると判定された場合に、分離部20を本体部10に回収する。例えば、回収部15は、ケーブル30を巻き取ったり、ケーブル30を繰り出したりするためのモータ付きのドラムである。
【0027】
図2は、水中航走体の使用状態の一例を示す模式図である。
図2に示すように、本体部10から分離部20が分離して使用される状況を想定する。この状況において、本体部10は、図示しない深度計により、本体部10から水面100までの距離である深度を取得してもよい。回収部15は、取得された深度に基づいてケーブル30が緩む向きにドラムを回転させ、分離部20を水面100に配置するために必要な長さだけ、ケーブル30を繰り出すものであってもよい。
【0028】
回収部15は、分離部20が水面100に到達している否かの制御信号を分離部20より取得し、制御信号に基づいてケーブル30を繰り出すものであってもよい。
【0029】
分離部20が水面100に到達している否かの制御信号は、分離部20が備える、水面100を検知するための超音波センサの検出信号であってもよい。また、回収部15は、分離部20自体が備える深度計によって得られた深度の情報を制御信号として、制御信号に基づいてケーブル30を繰り出すものであってもよい。
【0030】
分離部20が水面100に浮上している状態で、通信アンテナ21は、水中航走体1の位置を決定するための測位信号を受信する。その他、通信アンテナ21は、水中航走体1の外部との通信を実施するものであってもよい。
【0031】
一方、コントローラ40によって本体部10の外部に障害物があると判定された場合には、回収部15は、ケーブル30が張る向き(本体部10と分離部20の間に張られたケーブル30の長さが短くなる向き)にドラムを回転させる。そして、回収部15は、ケーブル30を引っ張る力によって分離部20を本体部10に引き寄せ、最終的に分離部20を本体部10に設けられた格納位置に格納する。
【0032】
なお、回収部15によってケーブル30を引っ張ることで、分離部20が格納位置に戻るよう、分離部20の形状が構成されていればよい。例えば、分離部20の底部形状は、角錐形状でもよい。
【0033】
コントローラ40(制御部)は、音響センサ11によって取得された音響信号に基づいて、本体部10の外部に障害物があるか否かを判定する。
【0034】
コントローラ40は、例えば、CPU(中央処理装置)、メモリ、及び入出力部を備える汎用のコンピュータである。コントローラ40には、コンピュータプログラム(判定プログラム)がインストールされている。コンピュータプログラムを実行することにより、コントローラ40は、水中航走体1が備える複数の情報処理回路(41、43、45、47)として機能する。なお、コンピュータプログラム(判定プログラム)は、コンピュータによって読み書き可能な記憶媒体に格納されるものであってもよい。
【0035】
本開示では、ソフトウェアによって複数の情報処理回路(41、43、45、47)を実現する例を示す。ただし、以下に示す各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路(41、43、45、47)を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路(41、43、45、47)を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0036】
図3に示すように、コントローラ40は、複数の情報処理回路(41、43、45、47)として、入出力部41、判定基準設定部43、判定部45、データベース47を備える。
【0037】
入出力部41には、音響センサ11が取得した本体部10の外部の音響信号が入力される。また、入出力部41は、判定部45によって行われる判定処理の結果を回収部15に出力する。その他、入出力部41は、データベース47から、判定処理で用いる判定基準を設定するために必要なパラメータ等を取得する。
【0038】
判定部45は、音響センサ11によって取得された音響信号に基づいて、本体部10の外部に障害物があるか否かを判定する。
【0039】
例えば、第1の判定方法として、判定部45は、音響信号に基づいて算出される信号対雑音比が第1閾値以上である場合に、本体部10の外部に障害物があると判定する。ここで、判定部45は、音響信号に含まれる周波数成分のうち、所定周波数帯域の成分を信号をとみなして、所定周波数帯域以外の周波数帯域の成分を雑音とみなすものであってもよい。そして、判定部45は、信号の強度の分散を雑音の強度の分散で割った値を、信号対雑音比として算出するものであってもよい。
【0040】
第1閾値および所定周波数帯域は、後述するデータベース47に格納されるものであってもよい。第1閾値および所定周波数帯域は、判定部45によって行われる判定処理において、対象とする障害物の種別に応じて変更されるものであってもよい。
【0041】
また、第2の判定方法として、判定部45は、音響信号に基づいて算出される信号対雑音比の単位時間当たりの増加量が第2閾値以上である場合に、本体部10の外部に障害物があると判定するものであってもよい。第2閾値は、後述するデータベース47に格納されるものであってよく、第2閾値は、判定部45によって行われる判定処理において、対象とする障害物の種別に応じて変更されるものであってもよい。
【0042】
さらに、第3の判定方法として、判定部45は、基準となる音響信号の信号強度を基準信号強度として設定し、基準信号強度と比較して音響信号の信号強度の増加量が第3閾値以上である場合に、本体部10の外部に障害物があると判定するものであってもよい。
【0043】
ここで、基準信号強度は、本体部10の外部に障害物がない状態(本体部10から所定範囲の距離に障害物がない状態)で取得した音響信号に基づいて、事前に設定されるものであってもよい。第3閾値および基準信号強度は、後述するデータベース47に格納されるものであってよく、第3閾値および基準信号強度は、判定部45によって行われる判定処理において、対象とする障害物の種別に応じて変更されるものであってもよい。
【0044】
また、第4の判定方法として、判定部45は、学習モデルに音響信号を入力した際に、音響信号に対応づけて学習モデルによって算出される確率が、第4閾値以上である場合に、本体部10の外部に障害物があると判定するものであってもよい。
【0045】
ここで、学習モデルは、水中航走体1の周囲に船舶が位置する場合の環境音を教師データとする機械学習により、事前に生成されたモデルである。学習モデルは、水中航走体1の周囲に船舶が存在する確率を、音響信号に対応づけて算出する。
【0046】
なお、第4閾値および学習モデルは、後述するデータベース47に格納されるものであってよく、第4閾値および学習モデルは、判定部45によって行われる判定処理において、対象とする障害物の種別に応じて変更されるものであってもよい。
【0047】
判定部45は、上述した第1~第4の判定方法をそれぞれ単独で用いて、本体部10の外部に障害物があると判定するものであってもよい。また、判定部45は、上述した第1~第4の判定方法を組み合わせて、本体部10の外部に障害物があると判定するものであってもよい。判定部45によって本体部10の外部に障害物があると判定する方法は、上述の例に限定されない。
【0048】
データベース47は、判定部45によって行われる判定(例えば、上述した第1~第4の判定方法)で用いる判定基準を設定するために必要なパラメータ(閾値、所定周波数帯域、学習モデル等)を記憶する。
【0049】
判定基準設定部43は、判定部45によって行われる判定(例えば、上述した第1~第4の判定方法)で用いる判定基準を設定する。すなわち、判定基準設定部43は、データベース47に記憶されたパラメータを読み出し、判定部45で用いる判定基準を設定する。特に、判定部45によって行われる判定の対象として、複数の種別の障害物が想定される場合、判定基準設定部43は、障害物の種別に応じて判定基準を設定するものであってもよい。
【0050】
[水中航走体の処理手順]
次に、本開示に係る水中航走体の処理手順を、
図4を参照して説明する。
図4は、水中航走体の処理手順を示すフローチャートである。
図4に示されるフローチャートの処理は、本体部10から分離部20が分離されている間、繰り返し実行される。その他、
図4に示されるフローチャートの処理は、ユーザの指示に基づいて開始又は終了されるものであってもよい。
【0051】
ステップS101において、音響センサ11は、本体部10の外部の音響信号を取得する。
【0052】
ステップS103において、判定基準設定部43は、判定部45によって行われる判定で用いる判定基準を設定する。なお、
図4に示されるフローチャートの処理とは別に、判定部45によって行われる判定で用いる判定基準が事前に設定されてもよい。判定基準が事前に設定される場合、ステップS103の処理は省略されてもよい。
【0053】
ステップS105において、判定部45は、音響信号に基づいて、本体部10の外部に障害物があるか否かを判定する。本体部10の外部に障害物がないと判定された場合(ステップS105にてNOの場合)、ステップS101に戻る。
【0054】
一方、本体部10の外部に障害物があると判定された場合(ステップS105にてYESの場合)、ステップS107において、回収部15は、分離部20を本体部10に回収する。
【0055】
なお、判定部45によって行われる判定の対象として、複数の種別の障害物が想定される場合、ステップS103、S105の処理は、障害物の種別ごとに実行されるものであってもよい。
【0056】
[実施形態の効果]
以上詳細に説明したように、本開示に係る水中航走体は、本体部と、上記本体部から分離可能な分離部と、を備える。上記分離部は、上記本体部と接続されて上記本体部の外部との通信を中継する通信アンテナを備える。上記本体部は、音響センサと、コントローラと、回収部と、を備える。音響センサは、上記外部の音響信号を取得する。コントローラは、上記音響センサによって取得された上記音響信号に基づいて、上記外部に障害物があるか否かを判定する。回収部は、上記コントローラによって上記外部に障害物があると判定された場合に、上記分離部を上記本体部に回収する。
【0057】
これにより、水中航走体の本体部から分離可能な分離部が、障害物等との接触により破損する可能性を低減することができる。特に、本体部10が浮上することなく音響信号を取得するため、音響信号に水面100の波などの雑音が入り込むことが抑制される。そのため、音響センサ11での信号対雑音比が向上し、障害物等から発せられる音を取得しやすくなる。その結果、障害物があると判定する際の判定精度を向上させることができる。
【0058】
水中航走体1の外部との通信等のため、水中航走体1が浮上した場合には、音響センサ11によって取得する音響信号に水面100の波などの雑音が入り込みやすくなる。そのため、水面100に存在する船舶等の障害物の検出が難しくなり、障害物等との衝突の可能性が増大する。しかしながら、本開示に係る水中航走体によれば、本体部10を浮上させずとも、分離部20に搭載した通信アンテナ21を介して外部との通信が可能である。そのため、障害物等との衝突の可能性を低減することができる。
【0059】
上記コントローラは、上記音響信号に基づいて算出される信号対雑音比が第1閾値以上である場合に、上記外部に障害物があると判定するものであってもよい。これにより、障害物と本体部10の間の距離が小さくなって障害物から発せられる音が増大した状況を検知して、外部に障害物があると判定することができる。
【0060】
上記コントローラは、上記音響信号に基づいて算出される信号対雑音比の単位時間当たりの増加量が第2閾値以上である場合に、上記外部に障害物があると判定するものであってもよい。これにより、本体部10の周囲に存在する障害物から発せられる音が本体部10に届いている状況を検知して、本体部10の外部に障害物があると判定することができる。
【0061】
上記コントローラは、基準となる上記音響信号の信号強度を基準信号強度として設定し、上記基準信号強度と比較して上記音響信号の信号強度の増加量が第3閾値以上である場合に、上記外部に障害物があると判定するものであってもよい。これにより、これにより、障害物と本体部10の間の距離が小さくなって障害物から発せられる音が増大した状況を検知して、外部に障害物があると判定することができる。
【0062】
上記コントローラは、上記水中航走体の周囲に船舶が位置する場合の環境音を教師データとする機械学習により、上記水中航走体の周囲に船舶が存在する確率を、上記音響信号に対応づけて算出する学習モデルを生成するものであってもよい。そして、上記コントローラは、上記音響信号に基づいて、上記学習モデルが算出した上記確率が第4閾値以上である場合に、上記外部に障害物があると判定するものであってもよい。これにより、音響信号に含まれる障害物の音の特徴を反映した学習モデルに基づいて、精度よく、外部に障害物があると判定することができる。
【0063】
上記通信アンテナは、上記水中航走体の位置を決定するための測位信号を受信するものであってもよい。これにより、水中航走体1の位置を測定することができる。さらに、測定した水中航走体1の位置に基づいて、水中航走体1が行う慣性航法によって推定した自己位置を補正してもよい。測定した水中航走体1の位置、及び、慣性航法によって推定した自己位置は、水中航走体1の航行のために用いることができる。
【0064】
上記音響センサはパッシブソナーであってもよい。これにより、本体部10の周囲に存在する障害物から発せられる音を取得することができる。また、障害物の検知のために自ら音を発生させる必要がないため、水中航走体1の航行の際の隠密性を高めることができる。
【0065】
上記分離部は、上記本体部が備える固定翼であってもよい。これにより、水中航走体1の固定翼と分離部20を共通の部材とすることができ、水中航走体1の部品点数が増大することが抑制される。その結果、水中航走体1の製造コストが増加することを抑制できる。
【0066】
上記本体部と上記分離部は、ケーブルで接続されているものであってもよい。これにより、分離部20を回収する際に、ケーブル30を引っ張る力によって分離部20を本体部10に引き寄せ、最終的に分離部20を本体部10に設けられた格納位置に格納することができる。
【0067】
上記本体部は自律航行可能であってもよい。これにより、水中航走体1は、外部からの指示を受けることなく水中を航行することができる。
【0068】
上述の実施形態で示した各機能は、1又は複数の処理回路によって実装されうる。処理回路には、プログラムされたプロセッサ、電気回路等が含まれ、さらには、特定用途向けの集積回路(ASIC)のような装置、又は、記載された機能を実行するよう配置された回路構成要素等も含まれる。
【0069】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 水中航走体
10 本体部
11 音響センサ
15 回収部
20 分離部
21 通信アンテナ
30 ケーブル
40 コントローラ
41 入出力部
43 判定基準設定部
45 判定部
47 データベース