(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160372
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】半導体発光装置及び波長変換部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/60 20100101AFI20231026BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20231026BHJP
【FI】
H01L33/60
H01L33/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070703
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】弁理士法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田辺 麻衣子
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA14
5F142BA02
5F142BA32
5F142CA03
5F142CA13
5F142CD02
5F142CD18
5F142CD44
5F142CD47
5F142CG05
5F142CG24
5F142CG43
5F142DA02
5F142DA14
5F142DA61
5F142DA73
5F142DB16
5F142DB20
5F142DB24
(57)【要約】
【課題】発光装置の出光面とその周囲とのコントラストを向上させた半導体発光装置及びその製造方法を提供する。
【解決手段】
上面に凹部を有する基板構造体と、基板構造体の凹部の底面上に配されかつ発光層を含む半導体構造層を有する発光素子と、発光素子上に配され、上面の周縁に沿って形成された切欠き部を有し、かつ発光層から出射される出射光の波長を変換して蛍光を生成する波長変換部材と、基板構造体上に配されかつ発光素子の側面及び波長変換部材の上面の周縁に端を発する側面を覆う複数の光反射性粒子を含む第1の被覆部材と、を有し、切欠き部の表面には、当該表面を覆うように出射光及び蛍光に対して光反射性を有する反射膜が成膜されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に凹部を有する基板構造体と、
前記基板構造体の前記凹部の底面上に配されかつ発光層を含む半導体構造層を有する発光素子と、
前記発光素子上に配され、上面の周縁に沿って形成された切欠き部を有し、かつ前記発光層から出射される出射光の波長を変換して蛍光を生成する波長変換部材と、
前記基板構造体上に配されかつ前記発光素子の側面及び前記波長変換部材の前記上面の周縁に端を発する側面を覆う複数の光反射性粒子を含む第1の被覆部材と、を有し、
前記切欠き部の表面には、当該表面を覆うように前記出射光及び前記蛍光に対して光反射性を有する反射膜が成膜されている半導体発光装置。
【請求項2】
前記反射膜は、誘電体多層膜からなることを特徴とする請求項1に記載の半導体発光装置。
【請求項3】
前記切欠き部の表面は、曲面を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
【請求項4】
前記第1の被覆部材は、樹脂からなるマトリクス材及び前記マトリクス材に保持された酸化チタン粒子からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
【請求項5】
前記第1の被覆部材は、前記第1の被覆部材の上面から所定の深さまでの領域において、前記酸化チタン粒子よりもバンドギャップが小さい酸化チタン粒子を含むことを特徴とする請求項4に記載の半導体発光装置。
【請求項6】
前記波長変換部材は、前記切欠き部を除く側面が前記第1の被覆部材によって覆われており、前記切欠き部がカーボンブラックを含む第2の被覆部材によって覆われていることを特徴とする請求項4に記載の半導体発光装置。
【請求項7】
前記切欠き部は、前記第1の被覆部材の上面から前記切欠き部の下端までの深さが前記切欠き部の外端を前記出射光又は前記蛍光の入射点とした際の前記第1の被覆部材に対する前記出射光又は前記蛍光の浸透円の半径よりも大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
【請求項8】
前記第1の被覆部材の表面から前記切欠き部の下端までの距離が、前記反射膜で減衰される光の強度比率以下となる浸透円の半径であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
【請求項9】
前記切欠き部の幅が、前記反射膜の膜厚の10倍~24倍であることを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体発光装置。
【請求項10】
波長変換部材の製造方法であって、
板状の波長変換板の上面に対して複数の溝を格子状に形成する溝形成ステップと、
前記波長変換板の上面に亘って光反射性を有する反射膜を形成する反射膜形成ステップと、
前記複数の溝を除く前記波長変換板の上面に形成された前記反射膜を除去する反射膜除去ステップと、
前記複数の溝の各々に沿って前記波長変換板を分割し、前記波長変換板から前記波長変換部材を個片化する個片化ステップと、
を有することを特徴とする波長変換部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体発光素子を含む半導体発光装置及び半導体発光装置を構成する波長変換部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に配された発光素子と当該発光素子の側面を覆う光反射性を有する部材とを有する発光装置が開示されている。例えば、特許文献1には、基板上に配された発光素子と、当該発光素子上に配された光透過部材と、発光素子及び光透過部材の側面を覆って光透過部材の上面を露出する光反射性を有する被覆部材と、を有する発光装置が開示されている。
【0003】
また、例えば、特許文献2には、透光性を有する基板と、当該基板上に配された成長基板上に形成された複数の半導体層と、基板、成長基板及び複数の半導体層の各々の側面を覆う光反射性を有する光反射層と、を有する発光装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-219324号公報
【特許文献2】特開2015-225862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発光装置においては、光透過部材の上縁端の周囲において透光性の樹脂材料と光反射性の材料とからなる被覆部材(特許文献1の0033~0035)の上面から光が滲み出てしまい、光透過部材と被覆部材との間の光のコントラスト比が低くなってしまうことが問題の1つとして挙げられる。
【0006】
また、特許文献2に記載の発光装置においては、発光装置の製造時において基板、成長基板及び複数の半導体層を有する発光装置を製造した後に、当該発光装置に対して光反射層を設ける必要があり、そのための製造に手間が掛かってしまうことが問題の1つとして挙げられる。
【0007】
本発明は、上記した点に鑑みてなされたものであり、発光装置の出光面とその周囲とのコントラストを向上させた半導体発光装置及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る半導体発光装置は、上面に凹部を有する基板構造体と、前記基板構造体の前記凹部の底面上に配されかつ発光層を含む半導体構造層を有する発光素子と、前記発光素子上に配され、上面の周縁に沿って形成された切欠き部を有し、かつ前記発光層から出射される出射光の波長を変換して蛍光を生成する波長変換部材と、前記基板構造体上に配されかつ前記発光素子の側面及び前記波長変換部材の前記上面の周縁に端を発する側面を覆う複数の光反射性粒子を含む第1の被覆部材と、を有し、前記切欠き部の表面には、当該表面を覆うように前記出射光及び前記蛍光に対して光反射性を有する反射膜が成膜されている。
【0009】
本発明に係る半導体発光装置における波長変換部材の製造方法は、板状の波長変換板の上面に対して複数の溝を格子状に形成する溝形成ステップと、前記波長変換板の上面に亘って光反射性を有する反射膜を形成する反射膜形成ステップと、前記複数の溝を除く前記波長変換板の上面に形成された前記反射膜を除去する反射膜除去ステップと、前記複数の溝の各々に沿って前記波長変換板を分割し、前記波長変換板から前記波長変換部材を個片化する個片化ステップと、を有することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】実施例1に係る発光装置を構成する反射膜の光反射特性を示すグラフである。
【
図4】実施例1に係る発光装置の一部分の拡大図である。
【
図5】実施例1に係る発光装置を構成する波長変換部材の製造工程の一部を示す断面図である。
【
図6】実施例1に係る発光装置を構成する波長変換部材の製造工程の一部を示す断面図である。
【
図7】実施例1に係る発光装置を構成する波長変換部材の製造工程の一部を示す断面図である。
【
図8】実施例1に係る発光装置を構成する波長変換部材の製造工程の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施例について詳細に説明する。なお、以下の説明及び添付図面においては、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例0012】
図1及び
図2を参照しつつ、実施例1に係る発光装置10の構成について説明する。
図1は、実施例1に係る発光装置10の上面図である。また、
図2は、
図1に示した発光装置10の2-2線に沿った断面図である。以下、説明の簡便化のために、
図1及び
図2に示すようにXYZ軸を定義する。
図1及び
図2においては、X軸が発光装置10の左右方向、Y軸が発光装置10の前後方向、Z軸が発光装置10の上下方向として説明する。
【0013】
[発光装置の概要]
実施例1に係る発光装置10は、上面に凹部を有する基板構造体12と、当該凹部の底面に配された発光素子25と、発光素子25上に配された波長変換部材41と、発光素子25の側面及び波長変換部材41の側面を覆うように基板構造体12の凹部に充填された被覆部材45とを含んで構成される。また、発光装置10は、基板構造体12の凹部の底面の発光素子25と異なる領域に配された保護素子34を含んで構成される。
図1においては、図の煩雑化を避けるために被覆部材45を省略している。
【0014】
[基板構造体]
基板構造体12は、上面形状が矩形の平板状の平板部12Aと、当該平板部12Aの上面に接合され、当該上面の外縁に沿った枠形状の枠体部12Bとを有している。基板構造体12において、平板部12Aの上面が枠体部12Bの開口12Oによって露出されている。言い換えれば、基板構造体12は、上面形状が矩形でありかつ上面に凹部を有する構造体である。
図1においては、基板構造体12または平板部12Aの矩形の上面形状の長辺に沿った方向をX方向とし、短辺に沿った方向をY方向としている。
【0015】
基板構造体12を構成する平板部12A及び枠体部12Bの基材は、絶縁性を有する材料からなる。本実施例において、平板部12A及び枠体部12Bの基材は、絶縁性を有する窒化アルミニウム(AlN)からなる。なお、平板部12A及び枠体部12Bには、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)や窒化ケイ素(Si3N4)等の絶縁性を有するセラミックスを用いてもよい。
【0016】
また、基板構造体12の平板部12Aの上面には、導電性の第1の配線パッド13、第2の配線パッド14、第3の配線パッド15及び第4の配線パッド16が形成されている。また、平板部12Aの下面(発光装置10の下面)には、導電性の第1の実装電極17、第2の実装電極19及び、第3の実装電極21が形成されている。
【0017】
第1の配線パッド13は、平板部12Aの上面の略中央に形成されている上面形状が矩形の中央部分13Aと、当該中央部分13Aの基板構造体12の短辺と平行な辺から基板構造体12の長辺に沿った一方に拡張している上面形状が矩形の拡張部分13Bを有する配線である。なお、第1の配線パッド13の中央部分13Aは、発光素子25が載置される部分である。
【0018】
第2の配線パッド14は、平板部12Aの上面に第1の配線パッド13の中央部分13Aを挟んで拡張部分13Bと反対側に位置する領域に、第1の配線パッド13と離隔して設けられた配線である。
【0019】
第3の配線パッド15は、平板部12Aの上面に第1の配線パッド13の中央部分13Aを挟んで拡張部分13Bと反対側に位置する領域に、第1の配線パッド13及び第2の配線パッド14と離隔して設けられた配線である。本実施例において、第3の配線パッド15は、平板部12Aの上面の短辺方向において第2の配線パッド14と隣り合って形成されている。
【0020】
第4の配線パッド16は、平板部12Aの上面に第1の配線パッド13の中央部分13Aを挟んで拡張部分13Bと反対側に位置する領域に、第1の配線パッド13、第2の配線パッド14及び第3の配線パッド15と離隔して設けられた配線である。第4の配線パッド16は、平板部12Aの上面の短辺方向において、第3の配線パッド15と隣り合って形成されている。
【0021】
すなわち、第2の配線パッド14、第3の配線パッド15及び第4の配線パッド16は、平板部12Aの上面の短辺方向に沿って、この順に配列されている。
【0022】
本実施例において、第1の配線パッド13、第2の配線パッド14、第3の配線パッド15及び第4の配線パッド16は、銅(Cu)を平板部12Aの上面にパターン形成し、その表面にニッケル(Ni)及び金(Au)をこの順に積層することでそれぞれ形成されている。
【0023】
第1の実装電極17は、平板部12Aの上面の第1の配線パッド13の拡張部分13Bの形成領域と対向する平板部12Aの下面領域に形成されている実装用の電極である。第1の実装電極17は、平板部12Aを上下方向に貫通する貫通孔及び当該貫通孔に充填された導電性材料からなる導通ビア18を介して、第1の配線パッド13に電気的に接続されている。
【0024】
第2の実装電極19は、平板部12Aの上面の第1の配線パッド13の中央部分13Aの形成領域と対向する平板部12Aの下面領域に、第1の実装電極17及び後述する第3の実装電極21と離隔して形成されている実装用の電極である。第2の実装電極19は、枠体部12Bの下面と平板部12Aの上面の間に設けた渡り配線(図示せず)と、平板部12Aを上下方向に貫通する貫通孔及び当該貫通孔に充填された導電性材料からなる導通ビア(図示せず)を介して、第4の配線パッド16及び/又は第1の配線パッド13に電気的に接続されている。
【0025】
第3の実装電極21は、平板部12Aの上面の第2の配線パッド14及び第3の配線パッド15の形成領域と対向する平板部12Aの下面領域に、第2の実装電極19と離隔して形成されている実装用の電極である。第3の実装電極21は、平板部12Aを上下方向に貫通する貫通孔及び当該貫通孔に充填された導電性材料からなる導通ビア22を介して、第2の配線パッド14に電気的に接続されている。また、第3の実装電極21は、平板部12Aを上下方向に貫通する貫通孔及び当該貫通孔に充填された導電性材料からなる導通ビア(図示せず)を介して、第3の配線パッド15に電気的に接続されている。
【0026】
すなわち、第1の実装電極17、第2の実装電極19及び第3の実装電極21は、平板部12Aの下面の長辺方向に沿ってこの順に離間して配列されている。また、第1の実装電極17及び第2の実装電極19は第1の極性であり、第3の実装電極21は第1の極性と異なる第2の極性である。
【0027】
本実施例において、第1の実装電極17、第2の実装電極19及び第3の実装電極21は、Cuを平板部12Aの下面にパターン形成し、その表面にNi及びAuをこの順に積層することでそれぞれ形成されている。また、導通ビア18、22を含む平板部12Aを貫通する導通ビア及び渡り配線はCuで形成されている。
【0028】
[発光素子]
発光素子25は、上面形状が矩形の発光ダイオード(LED:Light Emission Diode)である。発光素子25は、支持基板26、半導体構造層27、アノード電極パッド28及びカソード電極パッド(図示せず)を含んで構成される。
【0029】
発光素子25の支持基板26は、導電性のシリコン(Si)からなり、上面形状が矩形の平板状を有している。支持基板26は、上面に半導体構造層27を備え、下面にカソード電極(図示せず)を備えている。
【0030】
発光素子25の半導体構造層27は、支持基板26の上面をほぼ覆う矩形状の上面形状を有し、かつ支持基板26の外縁の領域において枠状に支持基板26を露出するよう形成されている。すなわち、上面視において、半導体構造層27の面積は、支持基板26の面積よりも支持基板26の枠状の露出領域分だけ小さい。
【0031】
また、半導体構造層27は、上面視において、矩形の上面形状の四隅のうち1の角部が切欠かれた形状を有している。具体的には、半導体構造層27は、
図1に示すように、図中右下の角部が扇状に欠けている形状を有している。言い換えれば、支持基板26の上面の1つの角部の扇状の領域においては、半導体構造層27が形成されておらず、支持基板26の上面が露出している。
【0032】
半導体構造層27は、窒化ガリウム(GaN)等の窒化物系半導体からなり、支持基板26の上面に図示しない絶縁層、導電層及び反射層等を含む層を介してp型半導体層、発光層及びn型半導体層がこの順で積層された発光機能を有する半導体層である。半導体構造層27の発光層からは、450nmをピーク波長とする青色光が放出される。放出された青色光は、半導体構造層27の上面から出射される。
【0033】
発光素子25のアノード電極パッド28は、支持基板26の上面において上記した半導体構造層27が形成されていない扇状の領域に設けられており、カソード電極パッド(図示せず)は、支持基板26のアノード電極パッド28が設けられた面の反対側の面(発光素子25の下面)に設けられている。
【0034】
発光素子25は、カソード電極が第1の配線パッド13の中央部分13Aの上面に金錫(AuSn)からなる導電性を有する素子接合層29を介して電気的に接合され、アノード電極パッド28が第1の接続ワイヤである金(Au)ワイヤを介して第2の配線パッド14と電気的に接続されている。
【0035】
[保護素子]
保護素子34は、第4の配線パッド16に設けられているツェナーダイオード等の逆電圧保護素子である。保護素子34は、下面にアノード電極(図示せず)を備え、当該アノード電極が、第4の配線パッド16の上面にAuSnからなる導電性を有する素子接合層35を介して電気的に接合されている。また、保護素子34は、上面にカソード電極パッド36を備えており、第2の接続ワイヤ37であるAuワイヤを介して第3の配線パッド15と電気的に接続されている。
【0036】
以上の構成により、第1の実装電極17及び第2の実装電極19が外部電源のカソード配線に接続され、第3の実装電極21が外部電源のアノード配線に接続されることで、各々の実装電極に接続された第1の配線パッド13及び第2の配線パッド14を介して発光素子25に電力が供給されて点灯する。
【0037】
なお、外部電源のカソード配線及びアノード配線から逆電位の電力(ノイズ)が印加された場合には、第3の配線パッド15及び第4の配線パッド16に接続された保護素子34によって発光素子25の損傷が回避される。
【0038】
[波長変換部材]
次に、波長変換部材41について説明する。波長変換部材41は、
図1に示すように、上面視において発光素子25と同一な矩形状を有している。詳細には、波長変換部材41は、上面視において発光素子25の支持基板26と同一形状である。
【0039】
波長変換部材41は、発光素子25上に配され、支持基板26の上面及び当該上面に形成された半導体構造層27及びアノード電極パッド28を覆う矩形の上面形状を有している。波長変換部材41は、透光性を有しかつガラス等の球状粒子からなるスペーサ粒子Spを含む接合部材42を介して発光素子25と接合されている。
【0040】
波長変換部材41は、スペーサ粒子Spによって、アノード電極パッド28及び第1の接続ワイヤ31と干渉(接触)しないだけ離間されている。
【0041】
波長変換部材41は、発光素子25から入射される入射光(青色光)によって励起されて蛍光を発する蛍光体粒子を含んでいる。本実施例において、波長変換部材41は、母材としてのAl2O3と、当該母材内に含有されたセリウム(Ce)を発光中心としたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG:Ce)の蛍光体粒子とを含んで構成される。
【0042】
波長変換部材41内の蛍光体粒子の濃度は、蛍光体を励起せずに波長変換部材41の上方に出射される光(青色光)と蛍光(緑黄色光)との混合光が白色光となるように調整されている。
【0043】
なお、波長変換部材41の母材及び蛍光体は、発光装置10において設定した出光色になるように選択できる。例えば、母材をガラスや硬質シリコーン樹脂とすることができる。また、蛍光体をサイアロン蛍光体、CASN(CaAlSiN3)蛍光体、SCASN((Sr,Ca)AlSiN3)蛍光体等とすることもできる。
【0044】
波長変換部材41は、波長変換部材41の上面41Tの周縁に沿って形成された切欠き部41Nを有している。具体的には、波長変換部材41には、断面が曲面を有するように上面41Tの周縁に沿って連続して切欠かれた切欠き部41Nが形成されている。さらに、波長変換部材41の切欠き部41Nの切欠き表面41Sには、当該切欠き表面41Sを覆うように光反射性を有する反射膜43が形成されている。
【0045】
言い換えれば、波長変換部材41は、発光素子25を覆う底面を有する平板状の平板部分41Aと、当該平板部分41Aの上面よりも小さい上面41Tを有する四角錘台状の窄み部分41Bとを有している。そして、窄み部分41Bの側面には反射膜43が形成されている。なお、窄み部分41Bの上面41Tは発光装置10の出光面として機能する(以下、出光面41Tとも称する)。
【0046】
切欠き表面41Sに設けた反射膜43は、上記した発光素子25から出射される出射光(青色光)及び波長変換部材41から出射される蛍光(緑黄色光)に対して光反射性を有するように構成された誘電体多層膜である。
【0047】
反射膜43の誘電体多層膜は、切欠き部41Nの切欠き表面41SからAl2O3と酸化チタン(TiO2)とが交互に成膜されることで形成されている。
【0048】
本実施例では、半導体構造層27から出射される青色光の中心波長が450nmであり、波長変換部材41から出射される緑黄色光の中心波長が550nmであるため、可視光帯域の光を反射する反射膜とした。このような反射膜43は、切欠き表面41S上に下地層(バッファ層)としてのAl2O3を200nm、その上にTiO2を約50nm、以降、互いの膜厚が徐々に大きくなるようにAl2O3及びTiO2を交互に26ペア積層して形成している。なお、反射膜43の総厚は4.7μmである。
【0049】
図3は、反射膜43の分光反射特性を示す図である。反射膜43は、
図3に示すように、波長変換部材41の四角錘台状の窄み部分41Bの側面から出射しようとする光(青色光及び緑黄色光)を80%~90%以上反射する。言い換えれば、窄み部分41Bの側面から出射する光を20%~10%にまで減衰する。
【0050】
なお、反射膜43は、膜厚、積層ペア数を調整することで反射率を向上させることができる。また、材質としては、上記以外に二酸化ケイ素(SiO2)、五酸化タンタル(Ta2O5)、五酸化ニオブ(Nb2O5)を用いることもできる。
【0051】
[被覆部材]
被覆部材45は、基板構造体12の凹部である平板部12Aの上面、枠体部12Bの内側面及び波長変換部材41の側面に囲まれた領域、すなわち開口12O内に波長変換部材41の上面41Tを露出するように配されている光反射性を有する樹脂材料である。
【0052】
被覆部材45は、波長変換部材41の側方から被覆部材45に向かって進行する光を反射させる。よって、被覆部材45で反射された光は、波長変換部材41の上面41T(発光装置10の出光面)から出光される。
【0053】
本実施例において、被覆部材45は、マトリクス材としての透光性のシリコーン樹脂と、当該マトリクス材内に分散された光散乱性粒子である粒径200~300nmの白色の酸化チタン(TiO2)粒子とを含んで構成される。
【0054】
このように構成された被覆部材45は、被覆部材45に入射する可視光帯域の光を反射する。具体的には、被覆部材45の内部へ入射光の一部が浸透しつつ反射する態様をとる。
【0055】
TiO2粒子の含有量は8wt%~40wt%が好ましい。これは、酸化チタン粒子の含有量が8wt%未満になると被覆部材45の内部へ浸透する光量が増大して反射効果が低下するためである。また、40wt%超だと高い反射効果が得られるが被覆部材45にクラックが発生することがあるためである。また、40wt%超だと波長変換部材41との密着性が低下することがあるためである。本実施例においては、TiO2粒子の含有量を25wt%としている。
【0056】
[コントラストの向上]
次に、
図4を用いて、コントラストが向上する態様について説明する。
図4は、
図2における切欠き部41N及びその表面に形成された反射膜32とその周辺を示す領域A(図中一点鎖線)の拡大図である。
【0057】
切欠き部41Nの下端Leは、波長変換部材41を導波する青色光及び緑黄色光が反射膜43を介さないで被覆部材45に入射する上端の入射点である。また、下端Leから被覆部材45へ入射した光の強度比率が所定値まで減衰する距離を半径として描いた円が浸透円Pcである。
図4においては、浸透円Pcの半径を半径Rdとして示し、被覆部材45の上面45Tから切欠き部41Nの下端Leまでの深さを深さDとして示している。
【0058】
図4に示すように、本実施例の波長変換部材41の側面は、切欠き部41Nの切欠き表面41Sに反射膜43を設け、さらに反射膜43の表面(窄み部分41Bの側面)に被覆部材45を配置している。よって、波長変換部材41の切欠き表面41Sから反射膜43を介して被覆部材45へ入射する光の強度は反射膜43によって10%~20%以下に減衰される。従って、波長変換部材41の切欠き部41Nを覆う被覆部材45の上面45Tに達する光(浸透する光)の強度比率を1/5~1/10にまで減衰できる。
【0059】
また、被覆部材45の上面45Tから波長変換部材41の切欠き部41Nの下端Leまでの深さDを浸透円Pcの半径Rd以上に設定している。従って、下端Leから被覆部材45へ入射して波長変換部材41の側面を上方へ延長した被覆部材45の上面45Tに達する光(浸透する光)の強度比率を所定値以下にまで減衰できる。
【0060】
反射膜43の断面形状は、段差や折れがない方が反射特性が均一になるので好ましい。よって、当該断面形状は円弧状又は楕円弧状が好ましい。しかしながら、切欠き部41Nの側面部分が浸透円Pcの半径以上の直線部を有していれば台形や矩形とすることもできる。
【0061】
被覆部材45の上面45Tから切欠き部41Nの下端Leまでの深さDは、下端Leから被覆部材45へ入射した光の強度が上面45Tにおいて浸透円Pcで定めた強度比率以下となる半径Rdより大きいことが好ましい。浸透円Pcで定める強度比率は、反射膜43の減衰比率以下であればよい。例えば、反射膜43で減衰される光の強度比率が1/10ならば、半径Rdは下端Leから被覆部材45へ入射した光が1/10以下に減衰される距離ならばよい。
【0062】
本実施例では、浸透円Pcへ達したときの強度比率を1/100とした。この強度比率における被覆部材45の浸透円Pcの半径Rdは0.1mmなので、被覆部材45の上面45Tから切欠き部41Nの下端Leまでの深さDを0.15mmとしている。
【0063】
切欠き部41Nの幅Wは、反射膜43の総厚の10倍から24倍が好ましい。切欠き部41Nの幅Wが総厚の10倍未満だと反射膜43の形成が困難になる。また、24倍超だと出光面41Tの面積が小さくなるからである。好適には、反射膜43の形成が容易で且つ出光面41Tの面積減少を抑えられる14倍から20倍が好ましい。本実施例においては、反射膜の総厚を4.7μm、切欠き部の幅Wを0.08mmとしている。
【0064】
このように、本実施例によれば、波長変換部材41の切欠き表面41Sから被覆部材45へ入射する光強度と、下端Leから被覆部材45に入射して上面45Tに至る光強度とを減衰することで、波長変換部材41の上面41Tの外周部と、当該外周に接する部分の被覆部材45の上面45Tとの輝度差(コントラスト)を高くすることができる。
【0065】
[波長変換部材の製造方法]
以下に、
図5~
図8を用いて、反射膜43が形成された波長変換部材41の製造方法について説明する。
図5~
図8は、各々が本実施例における波長変換部材41の製造工程の一部を示す断面図である。なお、
図5~
図8においては部材の一部を省略して示している。
【0066】
まず、波長変換部材41を形成する前の状態である平板状の波長変換板41Mを準備し、先端が丸みを帯びているダイシングブレードを備えるダイシングマシンを用いて、波長変換板41Mの上面に複数の溝Grを格子状に形成する(ステップ1、溝形成工程)。本ステップにより、
図5に示すように、断面視において曲面を有する溝Grを形成することができる。本実施例においては、上面形状が1mm角の発光素子25を用いたので溝Grの形成ピッチを1mmとした。また、切欠き部41Nの幅Wが0.08mmとなるように溝Gr幅を0.16mmで形成した。
【0067】
次に、
図6に示すように、スパッタ法又は原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法を用いて、溝Grの表面を含む波長変換板41Mの上面に対して反射膜43Mとしての誘電体多層膜を形成する(ステップ2、反射膜形成工程)。
【0068】
本ステップにおいては、上記したように、青色光及び緑黄色光を含む可視光帯域の光を反射するのに適した多層膜反射鏡を形成するために、波長変換板41Mの上面に下地層としてのAl2O3を200nm成膜し、その上にTiO2及びAl2O3を互いの膜厚が徐々に大きくなるように交互に26ペア積層して、総厚4.7μmの反射膜43Mを形成した。
【0069】
次に、
図7に示すように、複数の溝Grの各々を除く波長変換板41Mの上面に形成されている反射膜43Mを機械研磨して除去する(ステップ3、反射膜除去工程)。本ステップにより、反射膜43Mが複数の溝Grの各々の表面のみに形成されている状態とすることができる。
【0070】
最後に、
図8に示すように、ダイシングマシンを用いて複数の溝Grの各々に沿って波長変換板41Mを格子状にフルダイスし、波長変換部材41を個片化する(ステップ4、個片化工程)。本ステップにより、幅Wが0.08mmの切欠き部41N及び切欠き表面41Sに反射膜43が形成された1mm角サイズの波長変換部材41を製造することができる。
【0071】
上記したステップ1~4によれば、反射膜43Mが切欠き部41Nの切欠き表面41Sのみに形成されており、波長変換部材41を個片化した際の切断側面には当該反射膜43Mが形成されていない波長変換部材41を得ることができる。
【0072】
[発光装置の製造方法]
次に、上記した方法で製造した波長変換部材41を用いた発光装置10の製造方法について
図1及び
図2を基に説明する。
【0073】
まず、種々の配線パッドが形成された平板部12Aと当該平板部12A上に形成された枠体部12Bとを有する基板構造体12を準備し、平板部12A上に発光素子25及び保護素子34を接合する(ステップS1、素子接合工程)。
【0074】
具体的には、まず、素子接合層29及び素子接合層35の原料である、AuSn粒子とフラックスからなるソルダーペーストはんだを、第1の配線パッド13の中央部分13A及び第4の配線パッド16の上面にそれぞれ塗布する。そして、発光素子25及び保護素子34を第1の配線パッド13の中央部分13A及び第4の配線パッド16の上面にそれぞれ載置する。
【0075】
その後、発光素子25及び保護素子34が載置された基板構造体12をリフロー炉にて約300℃で加熱し、ソルダーペーストはんだに含まれるAuSn粒子を溶融させかつ固化させることによって、発光素子25及び保護素子34を基板構造体12の配線パッドに接合する。
【0076】
次に、発光素子25のアノード電極パッド28と第2の配線パッド14とを第1の接続ワイヤ31で接続し、保護素子34のカソード電極パッド36と第3の配線パッド15とを第2の接続ワイヤ37で接続する(ステップS2、ワイヤボンディング工程)。
【0077】
具体的には、発光素子25のアノード電極パッド28上に下駄バンプを形成し、第2の配線パッド14に第1の接続ワイヤ31の一端をボンディングし、アノード電極パッド28の下駄バンプ上に第1の接続ワイヤ31の他端をボンディングすることで、発光素子25と第2の配線パッド14とをワイヤ接続する。
【0078】
また、第3の配線パッド15に第2の接続ワイヤ37の一端をボンディングし、保護素子34のカソード電極パッド36上に第2の接続ワイヤ37の他端をボンディングすることで、保護素子34と第3の配線パッド15とをワイヤ接続する。
【0079】
次に、発光素子25上に波長変換部材41を接合する(ステップS3、波長変換部材接合工程)。本ステップにおいては、発光素子25の半導体構造層27上に接合部材42としての未硬化のシリコーン樹脂を所定量塗布し、当該樹脂に含まれる上記したスペーサ粒子Spが樹脂内で沈降するまで静置する。
【0080】
その後、マウンターを用いて、波長変換部材41の外縁と発光素子25の外縁とが一致するように、シリコーン樹脂が塗布された発光素子25上に波長変換部材41を載せて押圧する。この工程により、上記したように、半導体構造層27の上面と波長変換部材41の下面とをスペーサ粒子Spの外径に応じた間隔で接合できる。これにより、波長変換部材41をアノード電極パッド28及び第1の接続ワイヤ31に干渉しないようクリアランスを保った状態で接合できる。
【0081】
最後に、基板構造体12の開口12Oにおいて発光素子25の側面及び波長変換部材41の側面を覆い、波長変換部材41の上面41Tが露出された被覆部材45を形成する(ステップS4、被覆部材形成工程)。具体的には、波長変換部材41の上面41Tを露出するように、基板構造体12の凹部内にTiO2粒子を分散させた未硬化のシリコーン樹脂からなる被覆部材45の前駆体樹脂を所定量充填する。
【0082】
その後、被覆部材45の前駆体樹脂を充填した基板構造体12を150℃で60分加熱し、シリコーン樹脂を硬化させることで被覆部材45を形成する。
【0083】
以上、上記したステップS1~ステップS4の工程を行うことにより、本実施例における発光装置10を製造することができる。
【0084】
本実施例においては、上記したステップS1~4により、反射膜43を備えた波長変換部材41を簡便に製造することを可能にしている。また切欠き部41Nに反射膜43を備えた波長変換部材41を用いることで、ステップS1~S4において、特別な工程を設けることなく反射膜43を備えた波長変換部材41を組み込んだ発光装置10の製造を可能にしている。
【0085】
[実施例2及び実施例3]
次に、実施例2及び実施例3について説明する。
図9は、実施例2の発光装置50の断面図であり、
図10は、実施例3の発光装置60の断面図である。各々の断面図は実施例1に示した2-2線に沿った断面と同様の位置の断面を示している。
【0086】
実施例2の発光装置50及び実施例3の発光装置60は、実施例1の発光装置10と一部が異なるだけで基板構造体12、発光素子25、波長変換部材41、保護素子34の構成は実施例1と同一である。なお、発光装置50及び60について説明するにあたり、実施例1の発光装置10と同一な部材及び同一な箇所については、同一名称及び同一付番としている。
発光装置50の被覆部材45には、被覆部材45の上面から数μmの深さまでの表層領域SRにおいて、表層領域SR以外に分散しているTiO2粒子のバンドギャップより小さいバンドギャップを有するTiO2粒子を分散している。
具体的には、被覆部材45の表層領域SRに分散しているTiO2粒子は、その各々が可視光のエネルギーよりも小さなバンドギャップエネルギーを有する。言い換えれば、表層領域SRに分散しているTiO2粒子は可視光を吸収する。なお、このような被覆部材45の表層領域は黒色又は灰色を呈している。
本実施例の表層領域SRの厚みは、切欠き部41Nの深さDより十分に薄い。よって、反射膜43を設けていない波長変換部材41の側面と被覆部材45が接する部分の光反射特性は損なわれない。対して、反射膜43が設けてある波長変換部材41の外側面と接する被覆部材45の領域においては、反射膜43で減衰された光が表層領域SRによって吸収されるので、出光面41Tから出光する光を減衰することなく波長変換部材41と被覆部材45との境界におけるコントラストを実施例1以上に向上させることができる。
上記した被覆部材45の構成は、実施例1の発光装置10の製造後に、被覆部材45の表層領域SRに分散しているTiO2粒子の黒色化加工を行うことで得られる(ステップS5:黒色化工程)。具体的には、レーザ光源を用いて、当該被覆部材45の上面に向けてTiO2のバンドギャップ相当以上のエネルギーを有する波長の紫外レーザ光を照射することで、表層領域SRに分散されているTiO2粒子を黒色化でき、表層領域SRに光吸収層を作製することができる。
詳細には、被覆部材45の表層領域SRにおけるTiO2粒子は、紫外レーザ光の照射によって部分的に酸素欠損が生じ、バンドギャップが小さい部分が形成されて可視光を吸収するようになる。このように、極めて簡便な加工工程を加えるだけで発光装置50を製造することが可能である。