(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160380
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】水中電動ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/12 20060101AFI20231026BHJP
F04D 29/08 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
F04D29/12 B
F04D29/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070722
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000150844
【氏名又は名称】株式会社鶴見製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛
(72)【発明者】
【氏名】松本 早登士
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB23
3H130AB60
3H130AC30
3H130BA52F
3H130BA91F
3H130BA91J
3H130BA96F
3H130BA96J
3H130BA97F
3H130BA97J
3H130BA98F
3H130BA98J
3H130DC02X
3H130DG05X
(57)【要約】
【課題】オイルの量を減らすことが可能であるとともに、メンテナンスを容易に行うことが可能な水中電動ポンプを提供する。
【解決手段】この水中電動ポンプ100は、ポンプ本体1とは別体で設けられるオイル貯留タンク2と、メカニカルシール14に沿って回転軸12の軸方向に延びるとともに、メカニカルシール14を取り囲むように配置されている第1流路3と、オイル貯留タンク2と第1流路3とを接続する第2流路4とを備え、第2流路4を介して、第1流路3とオイル貯留タンク2との間でオイルを循環させるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータにより回転する回転軸と、前記回転軸に取り付けられる羽根車と、前記回転軸を取り囲むメカニカルシールと、を含む、ポンプ本体と、
前記ポンプ本体とは別体で設けられるオイル貯留タンクと、
前記メカニカルシールに沿って前記回転軸の軸方向に延びるとともに、前記メカニカルシールを取り囲むように配置されている第1流路と、
前記オイル貯留タンクと前記第1流路とを接続する第2流路とを備え、
前記第2流路を介して、前記第1流路と前記オイル貯留タンクとの間でオイルを循環させるように構成されている、水中電動ポンプ。
【請求項2】
前記回転軸の回転に伴って前記第1流路と前記オイル貯留タンクとの間で前記オイルを循環させる流れを発生させるように構成され、前記第1流路内に配置されている流れ発生部をさらに備える、請求項1に記載の水中電動ポンプ。
【請求項3】
前記流れ発生部は、前記オイルが上昇する流れを形成するガイドベーンを含み、
前記ガイドベーンは、前記オイルを上昇させる流れに加えて、前記オイル貯留タンクと前記第1流路との間で、前記オイルを循環させる流れを形成するように構成されている、請求項2に記載の水中電動ポンプ。
【請求項4】
前記流れ発生部は、前記回転軸に取り付けられるとともに、前記オイルを循環させる流れを発生するための回転部材を含む、請求項2に記載の水中電動ポンプ。
【請求項5】
前記第2流路は、前記第1流路の下部に接続され、前記オイル貯留タンクから前記第1流路に前記オイルを供給する供給路と、前記第1流路の上部に接続され、前記第1流路から前記オイル貯留タンクに前記オイルを排出する排出路とを含み、
前記流れ発生部は、前記供給路から前記排出路に向けて前記オイルが流れるように、前記第1流路において前記オイルを上昇させるように構成されている、請求項2~4のいずれか1項に記載の水中電動ポンプ。
【請求項6】
前記供給路は、前記オイルを抜き出すドレン部を有する、請求項5に記載の水中電動ポンプ。
【請求項7】
前記ポンプ本体は、前記第1流路と前記モータとの間で前記回転軸を取り囲むように周状に配置される浸水溜まり室をさらに備え、
前記浸水溜まり室の容量は、前記第1流路の容量と前記第2流路との容量の合計容量よりも大きい、請求項1~4のいずれか1項に記載の水中電動ポンプ。
【請求項8】
前記オイル貯留タンク内の前記オイルの容量は、前記第1流路の容量と前記第2流路の容量との合計容量よりも大きい、請求項1~4のいずれか1項に記載の水中電動ポンプ。
【請求項9】
前記第1流路の容量と前記第2流路の容量との合計容量は、前記オイル貯留タンクを満量にしたときのオイル膨張分に相当する所定の容量以上に設定されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の水中電動ポンプ。
【請求項10】
前記第1流路は、上部の流路幅が下部の流路幅よりも小さい、請求項1~4のいずれか1項に記載の水中電動ポンプ。
【請求項11】
前記オイル貯留タンクは、透明な部分を有し、外部から内部の液量が確認可能に構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の水中電動ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中電動ポンプに関するものであり、特にメカニカルシールを備える水中電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メカニカルシールを備える水中電動ポンプが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、モータが設けられているモータ室と、ポンプ室と、モータとポンプ室との間に配置され、内部にメカニカルシールが設けられたオイル室と、外付けオイル室とを含む水中ポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のように外付けオイル室と、水中ポンプ本体内に設けられたオイル室とを有する構成の場合、構造上メカニカルシールを潤滑するのに必要な量以上のオイルが封入されるという問題点がある。特に、水中ポンプ(水中電動ポンプ)のサイズが大きくなるほど、水中ポンプ本体内のオイル室も大型化し、ますます封入されるオイルの量が増えるという問題点がある。また、水中ポンプ本体内のオイル室にオイルが貯留されているため、オイルを交換するためにポンプ本体を水中から引き上げた後、水中ポンプを傾けて、または横倒しにしてオイルを抜く必要がある。このため、水中ポンプが配置されている場所では作業ができず、工場などに移動して作業を行っていたため、労力がかかるとともにメンテナンスが容易ではないという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、オイルの量を減らすことが可能であるとともに、メンテナンスを容易に行うことが可能な水中電動ポンプを提供することである。
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における水中電動ポンプは、モータと、モータにより回転する回転軸と、回転軸に取り付けられる羽根車と、回転軸を取り囲むメカニカルシールと、を含む、ポンプ本体と、ポンプ本体とは別体で設けられるオイル貯留タンクと、メカニカルシールに沿って回転軸の軸方向に延びるとともに、メカニカルシールを取り囲むように配置されている第1流路と、オイル貯留タンクと第1流路とを接続する第2流路とを備え、第2流路を介して、第1流路とオイル貯留タンクとの間でオイルを循環させるように構成されている。
【0008】
この発明の一の局面における水中電動ポンプでは、上記のように、ポンプ本体とは別体で設けられるオイル貯留タンクと、メカニカルシールに沿って回転軸の軸方向に延びるとともに、メカニカルシールを取り囲むように配置されている第1流路と、オイル貯留タンクと第1流路とを接続する第2流路とを備え、第2流路を介して、第1流路とオイル貯留タンクとの間でオイルを循環させるように構成されている。これによって、メカニカルシールの潤滑に必要なオイルがオイル貯留タンクから供給されるため、ポンプ本体にオイル室を積極的に設ける必要がなく、オイルの量を減らすことができる。また、オイル貯留タンクがポンプ本体とは別に設けられているため、異なるサイズの水中電動ポンプに取り付けることができ、オイル貯留タンクを共用とすることができる。そのため、水中電動ポンプのサイズが大きくなっても、従来の水中電動ポンプとは異なりポンプ本体内のオイル室が大きくなることがないため、必要以上にオイルの量が増えることを抑制することができる。また、オイル貯留タンクが別体であるため、オイル交換をする際に、オイル貯留タンクを取り外してオイル交換をすればよいため、ポンプ本体を傾ける場合とは異なり、水中電動ポンプが配置されている場所でメンテナンスを容易に行うことができる。これらにより、オイルの量を減らすことができるとともに、メンテナンスを容易に行うことができる。また、水中に配置されるオイル貯留タンクの外壁を介してオイルと水との間で熱交換を行うことができるため、オイルを循環させることによりオイル貯留タンクを熱交換器として機能させることができる。
【0009】
この発明の一の局面における水中電動ポンプにおいて、好ましくは、回転軸の回転に伴って第1流路とオイル貯留タンクとの間でオイルを循環させる流れを発生させるように構成され、第1流路内に配置されている流れ発生部をさらに備える。このように構成すれば、モータによる回転軸の回転(遠心力)によって、オイルを循環させることができるため、オイルを循環させるための駆動源を、回転軸を回転させるモータとは別個に設ける必要がない。そのため、水中電動ポンプの装置構成を簡素化することができる。
【0010】
この場合、好ましくは、流れ発生部は、オイルが上昇する流れを形成するガイドベーンを含み、ガイドベーンは、オイルを上昇させる流れに加えて、オイル貯留タンクと第1流路との間で、オイルを循環させる流れを形成するように構成されている。このように構成すれば、メカニカルシール全体にオイルを供給しつつ、オイルを循環させることができる。また、ガイドベーンがオイルを上昇させる流れと、オイルを循環させる流れとを形成するように構成されているため、オイルを上昇させる流れを形成する部材と、オイルを循環させる部材とを別々に設ける場合と比べて部品点数を減らすことができる。
【0011】
上記流れ発生部を備える水中電動ポンプにおいて、好ましくは、流れ発生部は、回転軸に取り付けられるとともに、オイルを循環させる流れを発生させるための回転部材を含む。このように構成すれば、回転軸の回転に伴い、回転部材も回転するため、第1流路内のオイルに速度エネルギーを与えることができる。これにより、回転部材を回転させるための動力を別途設ける必要がなく、簡単な構成でオイルを循環させることができる。また、回転軸とガイドベーンとに加えて、回転部材を設けることによって、より円滑にオイルを循環させることができる。
【0012】
上記流れ発生部を備える水中電動ポンプにおいて、好ましくは、第2流路は、第1流路の下部に接続され、オイル貯留タンクから第1流路にオイルを供給する供給路と、第1流路の上部に接続され、第1流路からオイル貯留タンクにオイルを排出する排出路とを含み、流れ発生部は、供給路から排出路に向けてオイルが流れるように、第1流路においてオイルを上昇させるように構成されている。このように構成すれば、供給路と、第1流路と、排出路とを一連の流路とすることができるため、オイルの流れを一方向の流れとすることができ、より円滑にオイルを循環させることができる。
【0013】
この場合、好ましくは、供給路からオイルを抜き出すドレン部を有する。このように構成すれば、オイル交換の際には、第1流路と、第2流路と、オイル貯留タンクと第1流路または第2流路とをつなぐ配管とに残ったオイルについても適切に外部に排出することができる。
【0014】
この発明の一の局面における水中電動ポンプにおいて、好ましくは、ポンプ本体は、第1流路とモータとの間で回転軸を取り囲むように周状に配置される浸水溜まり室をさらに備え、浸水溜まり室の容量は、第1流路の容量と第2流路の容量との合計容量よりも大きい。このように構成すれば、浸水溜まり室を設けることにより、モータに水が浸入することを抑制することができる。また、オイル室を設けない構成であるため、浸水溜まり室を従来よりもはるかに大きくすることができる。そのため、従来よりもポンプ本体内に侵入した水がモータに到達するまでの時間を長くすることができ、ポンプ本体をメンテナンスする間隔を長くすることができる。
【0015】
上記一の局面による水中電動ポンプにおいて、好ましくは、オイル貯留タンク内のオイルの容量は、第1流路の容量と第2流路の容量との合計容量よりも大きい。このように構成すれば、オイル貯留タンクに保存できるオイルの容量が大きいため、第1流路および第2流路の容量を必要最小限にすることができる。
【0016】
上記一の局面による水中電動ポンプにおいて、好ましくは、第1流路の容量と第2流路の容量との合計容量は、オイル貯留タンクを満量にしたときのオイル膨張分に相当する所定の容量以上に設定されている。このように構成すれば、オイル貯留タンクとポンプ本体とが接続されたときに、オイル貯留タンク内のオイルが第1流路および第2流路に流れることによって、オイル貯留タンク内に適正な空間が形成されるため、オイル貯留タンク内でオイルが膨張した場合に、オイルの容量がオイル貯留タンクの満量を超えることを抑制することができる。また、オイル貯留タンクを満量にし、ポンプ本体と接続すれば適正なオイル量となるため、オイル補給時の計量などが不要となり、より効率的にメンテナンス作業をすることができる。
【0017】
上記一の局面による水中電動ポンプにおいて、好ましくは、メカニカルシールを取り囲むように配置されている第1流路は、上部の流路幅が下部の流路幅よりも小さい。このように構成すれば、下方からメカニカルシールを取り付けまたはメカニカルシールの取り外しを行う際のスペースを確保しつつ、第1流路全体が大きくなることを抑制することができる。
【0018】
上記一の局面による水中電動ポンプにおいて、好ましくは、オイル貯留タンクは、透明な部分を有し、外部から内部の液量が確認可能に構成されている。このように構成すれば、水中電動ポンプを引き上げた際に、オイル貯留タンク内のオイルの状態を外部から簡単に確認することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のように、オイルの量を減らすことが可能であるとともに、メンテナンスを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】第1実施形態による、流れ発生部の一例を示す図である。
【
図4】浸水溜まり室を説明するための断面図である。
【
図5】第1実施形態による、回転部材の一例を示す図である。
【
図6】第1実施形態による、回転部材の他の例を示す図である。
【
図7】第1実施形態による、水中電動ポンプの他の例を示した図である。
【
図8】第2実施形態による、第1流路と第2流路とを示す図である。
【
図9】変形例による、第1流路と第2流路とを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
図1~
図7を参照して、第1実施形態の水中電動ポンプ100について説明する。
【0022】
図1に示すように、水中電動ポンプ100は、ポンプ本体1と、オイル貯留タンク2と、第1流路3と、第2流路4と、流れ発生部5とを備える。第1実施形態の水中電動ポンプ100は、オイル貯留タンク2を外部に設けるが、ポンプ本体内にオイル室を設けないことにより、ポンプ本体1内にオイル室を設ける場合と比べて使用するオイルの量を減らすことができるとともに、メカニカルシール14にピンポイントでオイルを供給できるため、効果的なオイルの使用となり、資源の利用を減らし、SDGs(持続可能な開発目標)に寄与することができる。
【0023】
ポンプ本体1は、モータ11と、回転軸12と、羽根車13と、メカニカルシール14とを含む。ポンプ本体1は、モータフレーム10と、シールハウジング20と、ポンプ室30とを備える。
【0024】
モータ11は、ポンプ本体1の上方に位置するモータフレーム10内に配置される。モータフレーム10は、回転軸12の回転中心αを中心とする円筒形状である。モータ11は、固定子11aと、回転子11bとを含んでいる。固定子11aは、コイルを有しており、駆動電力が供給されることにより、回転子11bを回転させるための磁界を発生させるように構成されている。回転子11bは、円筒状に形成されており、回転軸12が挿通されている。
【0025】
回転軸12は、モータフレーム10と、シールハウジング20と、ポンプ室30とを貫通するように配置される。シールハウジング20は、回転軸12の回転中心αを中心として略円筒形に形成される。また、回転軸12の他端側には羽根車13が取り付けられる。回転軸12は、上下方向に延びるように配置されている。本明細書では、回転軸12の延びる方向をZ方向とする。また、モータ11が位置する側をZ1側とし、羽根車13が取り付けられる側(下方側)をZ2側とする。
【0026】
羽根車13は、ポンプ本体1の下方に位置するポンプ室30に設けられる。ポンプ室30は、吸水口30aと、吐出口30bとを含む。羽根車13は、回転駆動することにより、水に速度エネルギーを与える。そして、ポンプ室30内にて水の速度エネルギーが圧力エネルギーに変換されることによって、水に圧力が作用されて送られるように構成されている。つまり、羽根車13の回転駆動により、ポンプ室30の吸水口30aから水が吸い上げられて、吐出口30bから吐出される。
【0027】
図2に示すように、メカニカルシール14は、シールハウジング20内に配置されている。メカニカルシール14は、固定環14aと、回転環14bと、ばね部材14cとを含んでいる。固定環14aは、Z1側に配置される上部側固定環140aとZ2側に配置される下部側固定環140bとを含む。上部側固定環140aは、シールハウジング20に固定されている。下部側固定環140bは、シールカバー80に固定されている。また、固定環14aは、回転軸12を囲むように円環状に形成されている。回転環14bは、回転軸12に取り付けられている。つまり、回転環14bは、回転軸12とともに回転するように構成されている。また、回転環14bは、回転軸12を囲むように円環状に形成されている。また、回転環14bは、ばね部材14cにより、固定環14a側に付勢されている。固定環14aおよび回転環14bは、ばね部材14cを挟んでZ1側とZ2側とに設けられている。これにより、第1流路3内に下方から水などの液体が浸入することを防止することができる。また、水などの液体がモータ11側に侵入することを防止することができる。
【0028】
固定環14a(上部側固定環140aおよび下部側固定環140b)と、回転環14bとは、回転軸12の軸方向に対向するように配置されている。また、固定環14a(上部側固定環140aおよび下部側固定環140b)の摺動面と、回転環14bの摺動面との間には、第1流路3からオイルがわずかに入るように構成されている。これにより、固定環14a(上部側固定環140aおよび下部側固定環140b)の摺動面と、回転環14bの摺動面とが潤滑されるとともに、固定環14a(上部側固定環140aおよび下部側固定環140b)の摺動面と、回転環14bの摺動面とが焼きつかないようにオイルにより冷却され、メカニカルシール14とポンプ本体1とが接する部分がシールされるように構成されている。
【0029】
図1に示すように、オイル貯留タンク2は、メカニカルシール14に供給されるオイルを貯留するためのタンクである。オイル貯留タンク2は、たとえば、円筒形である。オイル貯留タンク2は、一例として、蓋を備えている。蓋を設ける場合には、オイルを吸引する吸引管を装着するための連結部が設けられていてもよい。また、オイル貯留タンク2は、蓋を設けない側面と上面とが一体的な構造としてもよい。オイル貯留タンク2は、配管を介してポンプ本体1に取り付けられる。オイル貯留タンク2は、ポンプ本体1からオイルが流入する流入口2aと、ポンプ本体1にオイルが流出する流出口2bとが設けられており、流入口2aと流出口2bとに各々配管(一例としては、ホース)が接続される。なお、
図1では、配管を省略し、オイルが流れる向きを矢印で示している。
【0030】
オイル貯留タンク2は、透明な部分を有している。オイル貯留タンク2は、透明な部分を有していることにより外部から内部の液量および汚れなどの状態が確認可能に構成されている。透明とは、内部が明瞭に見える場合と、内部が明瞭ではないが視認できるいわゆる半透明の場合とを含む。また、オイル貯留タンク全体が透明に構成されている必要はない。たとえば、透明部分は樹脂で構成され、それ以外は熱冷却を考慮して金属製の部品で構成してもよい。オイル貯留タンク2内のオイルの容量は、第1流路3の容量および第2流路4の容量の合計容量よりも大きい。
【0031】
また、第1流路3の容量と第2流路4の容量との合計容量は、オイル貯留タンク2を満量にしたときのオイル膨張分に相当する所定の容量以上に設定されている。そのため、満量のオイル貯留タンク2がポンプ本体1と接続されたとき、オイル貯留タンク2内のオイルが第1流路3および第2流路4に流れることによって、オイル貯留タンク2内には適正な空間が形成される。所定の容量とは、たとえば、オイル貯留タンク2の全容量の10%以上30%以下である。一例として、オイル貯留タンク2にオイルを満杯(100%)まで入れた状態で、オイル貯留タンク2をポンプ本体1に取り付けた場合に、オイル貯留タンク2の全容量のうち2割(20%)程度が第1流路3と第2流路4とに流れるように構成してもよい。これにより、オイル貯留タンク2内のオイルの容量が80%程度となって、オイル貯留タンク2内に空気の層が形成されるため、オイルが温度変化により膨張したとしてもオイル貯留タンク2内のオイルの容量が100%を超えることはなく、オイルの膨張によるオイル貯留タンク2への影響を防止することができる。また、オイル貯留タンク2を満量にし、ポンプ本体1と接続すれば適正なオイル量となるため、オイル補給時の計量などが不要となり、より効率的にメンテナンス作業をすることができる
【0032】
メンテナンス作業時は、オイル貯留タンク2とポンプ本体1とを水中から引き上げ、オイル貯留タンク2をポンプ本体1から外してメンテナンスする。この場合、一例としては、オイル貯留タンク2をポンプ本体1から外さず、オイルをオイル貯留タンク2に設けたドレンから抜き、新しいオイルを封入してもよい。また、別の例としては、オイル貯留タンク2をポンプ本体1から外し、オイル貯留タンク2ごと交換してもよい。この場合、ホースとの連結は、たとえば、ワンタッチカプラが用いられてもよい。
【0033】
図2に示すように、第1流路3は、シールハウジング20内に配置される。第1流路3は、メカニカルシール14に沿って回転軸12の軸方向(Z方向)に延びる。第1流路3の流路幅W1は、メカニカルシール14を回転軸12に下方(Z2側)から取り付け、または取り外す際に、指または取付治具を挿入可能な大きさに形成されている。回転軸12の径方向における第1流路3の流路幅W1は、たとえば、幅20mm程度に形成される。また、第1流路3の流路幅W1は、回転軸12の直径R1よりも小さく形成される。
【0034】
第2流路4は、シールハウジング20内に配置される。第2流路4は、オイル貯留タンク2(
図1参照)と、第1流路3とを接続するように構成されている。第2流路4は、供給路4aと排出路4bとを含む。供給路4aは、第1流路3の下部に接続され、オイル貯留タンク2から第1流路3にオイルを供給するように構成されている。供給路4aは、オイル貯留タンク2の流出口2b(
図1参照)と配管を介して接続される。
図2では、便宜上、供給路4aと排出路4bとが回転中心αを挟んで反対の方向に延びているように記載しているが、方向は限定されない。
【0035】
排出路4bは、第1流路3の上部に接続され、第1流路3からオイル貯留タンク2にオイルを排出するように構成されている。排出路4bは、オイル貯留タンク2の流入口2a(
図1参照)と配管を介して接続される。供給路4aおよび排出路4bは、回転軸12の軸方向と交わる方向に延びるように構成されている。第2流路4は、第1流路3とオイル貯留タンク2との間でオイルを循環させるように構成されている。第2流路4の流路幅W2は、メカニカルシール14の取り付けまたは取り外しの際の作業スペースを考慮する必要がないため、第1流路3の流路幅W1よりも小さく形成されてもよい。
【0036】
図7に示すように、供給路4aは、オイル貯留タンク2の流出口2bと連通する流路上に分岐部4dが取り付けられていてもよい。分岐部4dにより、オイルの流れる先を第1流路3またはドレン部4cに切替えることができる。ドレン部4cは、バルブが設けられており、バルブを開状態にすることにより、オイルを外部に排出することができる。
【0037】
図2に示すように、流れ発生部5は、回転軸12の回転に伴って第1流路3とオイル貯留タンク2との間でオイルを循環させる流れを発生させるように構成されている。なお、流れ発生部5は、
図2では簡略に記載している。
【0038】
図3に示すように、流れ発生部5は、たとえば、オイルリフター(登録商標)により構成される。流れ発生部5は、オイルが上昇する流れを形成するガイドベーン51を有し、軸方向に延びるとともにメカニカルシール14(
図2参照)を取り囲むように配置される。流れ発生部5は、第1流路3(
図2参照)の内部に設けられる。
【0039】
ガイドベーン51は、たとえば、第1流路3の外周面に沿って、回転軸12を取り囲むように下部から上部に向けてシールハウジング20の内周壁に対して斜めに取り付けられている。オイルは、シールハウジング20の下方から流入する。オイルは、回転軸12の回転に伴って遠心力が発生するとともに、ガイドベーン51に沿って上昇する。供給路4aから供給されたオイルは、ガイドベーン51に沿って第1流路3内を上昇しメカニカルシール14(
図2参照)を潤滑し、排出路4bから排出される。
【0040】
また、
図5および
図6に示すように、流れ発生部5は、オイルを循環させる流れを発生するための回転部材52を含んでいてもよい。回転部材52は、ガイドベーン51(
図3参照)とともに設けられていてもよく、ガイドベーン51のかわりに設けられていてもよい。回転部材52は、回転軸12から半径方向外側に突出するように配置される。回転部材52は、
図5のように循環羽根車52aでもよく、
図6のようにリング52bでもよい。また、回転部材52は、回転軸12から半径方向外側に突出する突起であってもよい。なお、ガイドベーン51と回転部材52とがともに設けられる場合、第1流路3の流路幅W1(
図2参照)は、たとえば、ガイドベーン51の幅と回転部材52の幅とを足し合わせた程度の幅に設定される。
【0041】
回転部材52は、回転軸12に取り付けられる。なお、回転部材52は、回転軸12に直接取り付けられても、別部材を介して取り付けられてもよい。すなわち、回転部材52が回転軸12の回転に伴って回転するように取り付けられればよい。循環羽根車52aを設ける場合は、メカニカルシール14のばね部材14cと回転環14bとの間に取り付けられるとともに、回転軸12に直接取り付けられる。リング52bを設ける場合は、メカニカルシール14の回転環14bの外周面に沿って取り付けられる。回転部材52は、一例として、ばね部材14cの押圧力により回転環14bに固定され、回転環14bとともに回転中心αを中心に回転する。回転部材52は、回転軸12とともに回転することにより遠心力を発生させて、オイルをメカニカルシール14に沿って上昇させる。
【0042】
図1および
図2に示すように、オイルは、オイル貯留タンク2から第2流路4の供給路4aを介してポンプ本体1に供給される。そして、第1流路3にオイルが流れ込み、ガイドベーン51(
図3参照)などによって上昇し、排出路4bに流れ込む。そして、オイルが排出路4bからオイル貯留タンク2に流れ込むことにより循環する。
【0043】
図1および
図4に示すように、シールハウジング20と、モータフレーム10との間の空間に、浸水溜まり室40が設けられている。浸水溜まり室40は、シールハウジング20内に水などの液体が侵入し、さらに、侵入した液体がモータ11側へ漏れ出した場合に、侵入した液体を溜めることができる。また、浸水溜まり室40の容量は、第1流路3および第2流路4の容量の合計よりも大きい。浸水溜まり室40の容量を大きくすることにより、モータ11に水などの液体が到達するまでの時間を長くすることができる。
【0044】
また、
図4に示すように、供給路4aおよび排出路4b(第2流路4)は、浸水溜まり室40を横切るように設けられている。浸水溜まり室40は、中央に回転軸12が挿入される貫通孔40aを有しており、貫通孔40aと回転軸12との間から侵入した水などの液体を溜める。
【0045】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0046】
第1実施形態では、上記のように、水中電動ポンプ100は、ポンプ本体1とは別体で設けられるオイル貯留タンク2と、メカニカルシール14に沿って回転軸12の軸方向に延びるとともに、メカニカルシール14を取り囲むように配置されている第1流路3と、オイル貯留タンク2と第1流路3とを接続する第2流路4とを備え、第2流路4を介して、第1流路3とオイル貯留タンク2との間でオイルを循環させるように構成されている。これによって、メカニカルシール14の潤滑に必要なオイルがオイル貯留タンク2から供給されるため、ポンプ本体1にオイル室を積極的に設ける必要がなく、オイルの量を減らすことができる。また、オイル貯留タンク2がポンプ本体1とは別に設けられているため、異なるサイズの水中電動ポンプ100に取り付けることができ、オイル貯留タンク2を共用とすることができる。そのため、水中電動ポンプ100のサイズが大きくなっても、従来の水中電動ポンプ100とは異なりポンプ本体1内のオイル室が大きくなることがないため、必要以上にオイルの量が増えることを抑制することができる。また、オイル貯留タンク2が別体であるため、オイル交換をする際に、オイル貯留タンク2を取り外してオイル交換をすればよいため、ポンプ本体1を傾ける場合とは異なり、水中電動ポンプ100が配置されている場所でメンテナンスを容易に行うことができる。これらにより、オイルの量を減らすことができるとともに、メンテナンスを容易に行うことができる。また、水中に配置されるオイル貯留タンク2の外壁を介してオイルと水との間で熱交換を行うことができるため、オイルを循環させることによりオイル貯留タンク2を熱交換器として機能させることができる。
【0047】
第1実施形態では、上記のように、回転軸12の回転に伴って第1流路3とオイル貯留タンク2との間でオイルを循環させる流れを発生させるように構成され、第1流路3内に配置されている流れ発生部5をさらに備える。これにより、モータ11による回転軸12の回転(遠心力)によって、オイルを循環させることができるため、オイルを循環させるための駆動源を、回転軸12を回転させるモータ11とは別個に設ける必要がない。そのため、水中電動ポンプ100の装置構成を簡素化することができる。
【0048】
第1実施形態では、上記のように、流れ発生部5は、オイルが上昇する流れを形成するガイドベーン51を含み、ガイドベーン51は、オイルを上昇させる流れに加えて、オイル貯留タンク2と第1流路3との間で、オイルを循環させる流れを形成するように構成されている。これにより、メカニカルシール14全体にオイルを供給しつつ、オイルを循環させることができる。また、ガイドベーン51がオイルを上昇させる流れと、オイルを循環させる流れとを形成するように構成されているため、オイルを上昇させる流れを形成する部材と、オイルを循環させる部材とを別々に設ける場合と比べて部品点数を減らすことができる。
【0049】
第1実施形態では、上記のように、流れ発生部5は、回転軸12に取り付けられるとともに、オイルを循環させる流れを発生させるための回転部材52を含む。これにより、回転軸12の回転に伴い、回転部材52も回転するため、第1流路3内のオイルに速度エネルギーを与えることができる。これにより、回転部材52を回転させるための動力を別途設ける必要がなく、簡単な構成でオイルを循環させることができる。また、回転軸12とガイドベーン51とに加えて、回転部材52を設けることによって、より円滑にオイルを循環させることができる。
【0050】
第1実施形態では、上記のように、第2流路4は、第1流路3の下部に接続され、オイル貯留タンク2から第1流路3にオイルを供給する供給路4aと、第1流路3の上部に接続され、第1流路3からオイル貯留タンク2にオイルを排出する排出路4bとを含み、流れ発生部5は、供給路4aから排出路4bに向けてオイルが流れるように、第1流路3においてオイルを上昇させるように構成されている。これにより、供給路4aと、第1流路3と、排出路4bとを一連の流路とすることができるため、オイルの流れを一方向の流れとすることができ、より円滑にオイルを循環させることができる。
【0051】
第1実施形態では、上記のように、供給路4aは、供給路4aからオイルを抜き出すドレン部4cを有する。これにより、オイル交換の際には、第1流路3と、第2流路4と、オイル貯留タンク2と第1流路3または第2流路4とをつなぐ配管とに残ったオイルについても適切に外部に排出することができる。
【0052】
第1実施形態では、上記のように、ポンプ本体1は、第1流路3とモータ11との間で回転軸12を取り囲むように周状に配置される浸水溜まり室40をさらに備え、浸水溜まり室40の容量は、第1流路3の容量と第2流路4の容量との合計容量よりも大きい。これにより、浸水溜まり室40を設けることにより、モータ11に水が浸入することを抑制することができる。また、オイル室を設けない構成であるため、浸水溜まり室40を従来よりもはるかに大きくすることができる。そのため、従来よりもポンプ本体1内に侵入した水がモータ11に到達するまでの時間を長くすることができる。その結果、ポンプ本体1をメンテナンスする間隔を長くすることができる。
【0053】
第1実施形態では、上記のように、オイル貯留タンク2内のオイルの容量は、第1流路3の容量と第2流路4の容量との合計容量よりも大きい。これにより、オイル貯留タンク2に保存できるオイルの容量が大きいため、第1流路3および第2流路4の容量を必要最小限にすることができる。
【0054】
第1実施形態では、上記のように、第1流路3の容量と第2流路4の容量との合計容量は、オイル貯留タンク2を満量にしたときのオイル膨張分に相当する所定の容量以上に設定されている。 これにより、オイル貯留タンク2とポンプ本体1とが接続されたときに、オイル貯留タンク2内のオイルが第1流路3および第2流路4に流れることによって、オイル貯留タンク2内に適正な空間が形成されるため、オイル貯留タンク2内でオイルが膨張した場合に、オイルの容量がオイル貯留タンク2の満量を超えることを抑制することができる。また、オイル貯留タンク2を満量にし、ポンプ本体1と接続すれば適正なオイル量となるため、オイル補給時の計量などが不要となり、より効率的にメンテナンス作業をすることができる。
【0055】
第1実施形態では、上記のように、オイル貯留タンク2は、透明な部分を有し、外部から内部の液量が確認可能に構成されている。これにより、水中電動ポンプ100を引き上げた際に、オイル貯留タンク2内のオイルの状態を外部から簡単に確認することができる。
【0056】
[第2実施形態]
次に、
図8を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、上記第1実施形態とは異なり、第1流路3は、上部の流路幅W4が下方の流路幅W3よりも小さい。
【0057】
図8に示すように、第2実施形態では、第1流路3は、上部の流路幅W4が下方の流路幅W3よりも小さく形成される。下部の流路幅W3は、下方(Z2側)からメカニカルシール14を回転軸12に取り付け、または取り外す際に指または治具が挿入可能な大きさである。また、上部の流路幅W4は、特に限定されず、指または治具が挿入可能な大きさよりも小さく形成されてもよい。なお、
図8では、流れ発生部5とメカニカルシール14とを省略している。第2実施形態の流れ発生部5は、第1実施形態の流れ発生部5のいずれかと同じである。また、メカニカルシール14は、第1実施形態と同じ構造を有している。
【0058】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0059】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、第1実施形態と同様の効果のほか、さらに以下のような効果を得ることができる。すなわち、第2実施形態では、上記のように、メカニカルシール14を取り囲むように配置されている第1流路3は、上部の流路幅W4が下部の流路幅W3よりも小さいため、下方からメカニカルシール14を取り付けまたは取り外しを行う際のスペースを確保しつつ、第1流路全体が大きくなることを抑制することができる。
【0060】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0061】
たとえば、上記第1または第2実施形態では、第2流路の幅が一定である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、第2流路の幅が途中で変化してもよい。その場合、
図9に示すように排出路の第1流路側の流路幅よりもオイル貯留タンク側の流路幅が小さく形成されていてもよい。
【0062】
また、上記第1または第2実施形態では、第2流路の流路幅が、第1流路の流路幅よりも小さい例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2流路の流路幅と、第1流路の流路幅とが同じでもよく、第2流路の流路幅が第1流路の流路幅よりも大きくてもよい。
【0063】
また、上記第1または第2実施形態では、オイル貯留タンクとポンプ本体とを引き上げてメンテナンスをする例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、オイル貯留タンクのみを引き上げてメンテナンスしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 ポンプ本体
2 オイル貯留タンク
3 第1流路
4 第2流路
4a 供給路
4b 排出路
4c ドレン部
5 流れ発生部
11 モータ
12 回転軸
13 羽根車
14 メカニカルシール
40 浸水溜まり室
51 ガイドベーン
52 回転部材
100 水中電動ポンプ