(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160381
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】走路推定方法及び走路推定装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/01 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
G08G1/01 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070726
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】土谷 千加夫
(72)【発明者】
【氏名】武井 翔一
(72)【発明者】
【氏名】酒井 佳奈子
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC14
5H181DD02
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF33
5H181MC18
(57)【要約】
【課題】交差点において、走行軌跡が取得されていない領域でも走路の形状を推定する。
【解決手段】交差点手前の複数の路面矢印標示の位置及び方向を示すデータ取得し、交差点を走行する車両の走行軌跡を示すデータを取得し、走行軌跡から複数の路面矢印標示の各々までの車線幅方向の距離を算出し、距離が第1閾値未満の路面矢印標示である基準路面矢印標示の方向に基づいて、走行軌跡の行き先を判定し、走行軌跡を、走行軌跡の行き先と同一の方向を示し、基準路面矢印標示とは異なる路面矢印標示の位置に平行移動して複製した複製走行軌跡を示すデータを生成し、複製走行軌跡を示すデータに基づいて、交差点内の走路の形状を推定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差点内の走路を推定する走路推定装置の走路推定方法であって
前記交差点手前の複数の路面矢印標示の各々の位置及び方向を示すデータを取得し、
前記交差点を走行する車両の走行軌跡を示すデータを取得し、
前記走行軌跡から前記複数の前記路面矢印標示の各々までの車線幅方向の距離を算出し、
前記距離が第1閾値未満の前記路面矢印標示である基準路面矢印標示の方向に基づいて、前記走行軌跡の行き先を判定し、
前記走行軌跡を、前記走行軌跡の行き先と同一の方向を示し、前記基準路面矢印標示とは異なる前記路面矢印標示の位置に平行移動して複製した複製走行軌跡を示すデータを生成し、
前記複製走行軌跡を示すデータに基づいて、前記交差点内の走路の形状を推定することを特徴とする走路推定方法。
【請求項2】
前記基準路面矢印標示は、前記複数の前記路面矢印標示のうち、前記距離が前記第1閾値未満且つ最短となる路面矢印標示である
ことを特徴とする請求項1に記載の走路推定方法。
【請求項3】
前記複数の前記路面矢印標示の各々に対し、車線幅方向の中心位置を通る基準線分を設定し、
前記走行軌跡から前記基準線分に向かって垂線を引くことが可能な場合には、前記垂線が最短となる前記走行軌跡と前記基準線分との車線幅方向の距離を、前記走行軌跡から前記路面矢印標示までの車線幅方向の距離として算出する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の走路推定方法。
【請求項4】
前記複数の前記路面矢印標示の各々に対し、車線幅方向の中心位置を通る基準線分を設定し、
前記走行軌跡から前記基準線分に向かって垂線を引くことが不可能な場合には、前記走行軌跡を前記基準線分に向かって延長し、
延長した走行軌跡から前記基準線分に下ろした垂線が最短となる前記延長した前記走行軌跡と前記基準線分との車線幅方向の距離を、前記走行軌跡から前記路面矢印標示までの車線幅方向の距離として算出する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の走路推定方法。
【請求項5】
前記延長した走行軌跡と前記基準線分とが成す第1の成す角を算出し、
前記第1の成す角が第2閾値未満である場合に、前記距離が第1閾値未満の前記路面矢印標示である前記基準路面矢印標示の方向に基づいて、前記走行軌跡の行き先を判定する
ことを特徴とする請求項4に記載の走路推定方法。
【請求項6】
前記基準路面矢印標示が示す方向が複数存在する場合には、前記走行軌跡の曲率を算出し、
前記曲率に基づいて、前記走行軌跡の行き先を判定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の走路推定方法。
【請求項7】
前記走行軌跡を平行移動した移動量の分だけ、前記複製走行軌跡の旋回半径を調整する
ことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の走路推定方法。
【請求項8】
前記複数の前記路面矢印標示の各々に対し、車線幅方向の中心位置を通る基準線分を設定し、
前記走行軌跡から前記基準線分に向かって垂線を引くことが不可能な場合には、前記走行軌跡を車線幅方向に平行移動し、
平行移動した前記走行軌跡が他の走行軌跡と接するか否かを判定し、
前記平行移動した前記走行軌跡が前記他の走行軌跡と接する場合には、前記平行移動した前記走行軌跡と前記他の走行軌跡とが成す第2の成す角を算出し、
前記第2の成す角が第3閾値未満の場合には、前記走行軌跡を前記他の走行軌跡と接する位置に平行移動して前記走行軌跡を複製した前記複製走行軌跡を示すデータを生成する
ことを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の走路推定方法。
【請求項9】
交差点内の走路を推定する制御部を備えた走路推定装置であって、
前記制御部は、
前記交差点手前の複数の路面矢印標示の各々の位置及び方向を示すデータを取得し、
前記交差点を走行する車両の走行軌跡を示すデータを取得し、
前記走行軌跡から前記複数の前記路面矢印標示の各々までの車線幅方向の距離を算出し、
前記距離が第1閾値未満の前記路面矢印標示である基準路面矢印標示の方向に基づいて、前記走行軌跡の行き先を判定し、
前記走行軌跡を、前記走行軌跡の行き先と同一の方向を示し、前記基準路面矢印標示とは異なる前記路面矢印標示の位置に平行移動して複製した複製走行軌跡を示すデータを生成し、
前記複製走行軌跡を示すデータに基づいて、前記交差点内の走路の形状を推定することを特徴とする走路推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走路推定方法及び走路推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載されたカメラによって撮像された画像から走行レーンの各々の中心点群を検出し、検出した中心点群を道路ネットワーク上の各リンクに対応付けて記憶し、各リンクに対応する走行レーンの各々の中心線を生成することによって、精度の高いレーンレベルの地図を生成するレーン地図生成装置が開示されている。このレーン地図生成装置は、交差点においては、交差点への入口点と交差点からの出口点の対応をとり、入口点、中間点、及び出口点を結ぶスプライン曲線を用いて、交差点内の走行レーンを推定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のレーン地図生成装置では、交差点の入口点と出口点の対応を取るために、入口点の方向を決定する。入口点の方向を決定するために、入口点及び出口点の双方を経由した走行軌跡を統計解析する場合がある。この場合、交差点内の走行レーンを推定するためには、走行レーンの入口点と出口点の双方を実際に経由した複数の走行軌跡が取得されている必要がある。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みて成されたものであり、交差点において、走行軌跡が取得されていない領域でも走路の形状を推定可能な走路推定方法及び走路推定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様に係る走路推定方法及びその装置は、交差点手前の複数の路面矢印標示の位置及び方向を示すデータを取得し、交差点を走行する車両の走行軌跡を示すデータを取得し、走行軌跡から複数の路面矢印標示の各々までの車線幅方向の距離を算出し、距離が第1閾値未満の路面矢印標示である基準路面矢印標示の方向に基づいて、走行軌跡の行き先を判定し、走行軌跡を、走行軌跡の行き先と同一の方向を示し、基準路面矢印標示とは異なる路面矢印標示の位置に平行移動して複製した複製走行軌跡を示すデータを生成し、複製走行軌跡を示すデータに基づいて、交差点内の走路の形状を推定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、交差点において、走行軌跡が取得されていない領域でも走路の形状を推定できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る走路推定装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、路面矢印標示の例と路面矢印標示の位置について説明するための図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係る走路推定装置の走路推定部による動作の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態に係る走路推定装置の走路推定部による走行軌跡の行き先判定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、走行軌跡の行き先判定方法を説明するための図である。
【
図6】
図6は、走行軌跡の行き先判定方法を説明するための図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係る走路推定装置の走路推定部による走行軌跡の複製処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、走行軌跡の複製方法を説明するための図である。
【
図9】
図9は、走行軌跡の複製方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を適用した実施形態について、図面を参照して説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
[走路推定装置の構成例]
図1を参照して、本実施形態に係る走路推定装置の構成例を説明する。
図1に示すように、走路推定装置1は、認識部10と、記憶部11と、カーナビゲーションシステム12と、走路推定部13と、カメラ20と、LiDAR(Light Detection and Ranging)30と、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機40とを備えており、例えばIC、LSI等によって構成される。
【0011】
なお、走路推定装置1は、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサ、CPU(Central Processing Unit)を含む汎用の電子回路とメモリ等の周辺機器から構成されている。このような走路推定装置1の各機能は、1または複数の処理回路によって実装することができる。処理回路は、例えば電気回路を含む処理装置等のプログラムされた処理装置を含み、また実施形態に記載された機能を実行するようにアレンジされた特定用途向け集積回路(ASIC: Application Specific Integrated Circuit)や従来型の回路部品のような装置も含んでいる。本実施形態に係る走路推定装置1は、車両に搭載される。
【0012】
カメラ20は、CCD(Charge-Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を有する。カメラ20は、自車両に搭載され、所定の時間間隔で自車両の前方を撮像する。カメラ20は、撮像した自車両の前方画像を、認識部10に出力する。
【0013】
LiDAR30は、光センサ技術であるLiDARを用いて車両周囲の環境情報を検出するセンサである。具体的に、LiDAR30は、レーザ光をある角度範囲内で走査し、その時の反射光を受光して、レーザ発射時点と反射光の受光時点との間の時間差を計測して自車両に対する他車両の相対距離や方向(すなわち自車両に対する相対位置)などを検出する。LiDAR30は、検出したデータを認識部10に出力する。なお、LiDER30は、自車両周囲に存在する他車両の、自車両に対する相対位置を検出するセンサであればよく、例えばレーザレーダあるいは音波レーダなどのLiDAR以外のセンサを用いてもよい。また、LiDAR及びLiDAR以外の複数の異なる種類のセンサを用いてもよい。
【0014】
GNSS受信機40は、複数の航法衛星から受信した信号に基づいて、自車両の緯度、経度及び高度を示す位置情報を算出し、地上における自車両の位置を検出する。GNSSは、例えば全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)におけるGPS受信機である。GNSS受信機40は、自車両の位置情報を認識部10及びカーナビゲーションシステム12に出力する。
【0015】
認識部10は、カメラ20、LiDAR30及びGNSS受信機40と接続されており、矢印標示検出部101と、走行軌跡検出部102を備える。
【0016】
矢印標示検出部101は、カメラ20により撮像された画像から、車線の行き先を示す路面矢印標示(以下、単に矢印標示という)を検出する。矢印標示検出部101は、取得した前方画像を、平面(路面)に投影した投影画像を生成する。矢印標示検出部101は、投影画像を生成し、例えば
図2に示すような交差点手前の複数の矢印標示の位置及び方向を特定する。矢印標示の位置及び方向の特定は、テンプレートマッチング等の画像処理により行われる。画像処理による矢印標示の位置及び方向の特定方法については、既知の技術であるため、詳細な説明は省略する。矢印標示検出部101は、複数の矢印標示の各々に対し、車線幅方向の中心位置を通る基準線分を設定する。矢印標示検出部101は、例えば、投影画像上の矢印標示YのテンプレートTの大きさから矢印標示Yの領域を特定し、矢印標示Yの位置として、基準線分BLを設定する。基準線分BLの長さは、テンプレートTの車線方向の長さに応じて設定され、矢印標示Yの長さと一致する。また、ここで言う「矢印標示の方向」とは、「直進」「右折」「左折」のような、矢印標示が存在する車線の行き先を意味する。なお、矢印標示の種類は
図2に示したものに限らないが、矢印標示Yの種類は有限であるため、全ての種類の矢印標示の位置及び方向を検出することが可能である。
【0017】
矢印標示検出部101は、検出した交差点手前の複数の矢印標示の位置及び方向を示すデータを、記憶部11に出力する。
【0018】
走行軌跡検出部102は、LiDAR30により検出された自車両周囲に存在する他車両の位置の時間変化と、GNSS受信機40により検出された自車両の位置情報を用いて、他車両の走行軌跡を検出する。例えば、走行軌跡検出部102は、LiDAR30により検出された自車両周囲に存在する他車両の検出結果から、異なる時刻間における他車両の同一性の検証(対応付け)を行い、かつ、その対応付けを基に、他車両の位置の時間変化を検出する。他車両の走行軌跡の検出方法については、既知の技術であるため、詳細な説明は省略する。
【0019】
走行軌跡検出部102は、検出した他車両の走行軌跡を示すデータを、記憶部11に出力する。
【0020】
記憶部11には、矢印標示検出部101により検出された交差点手前の複数の矢印標示の位置及び方向を示すデータと、走行軌跡検出部102により検出された他車両の走行軌跡を示すデータが記憶される。
【0021】
カーナビゲーションシステム12は、目的地までの自車両が走行する経路を案内する装置である。カーナビゲーションシステム12は、GNSS受信機40に接続されており、目的地が入力されると、自車両の現在地(或いは任意に設定された出発地)から目的地までの案内経路を生成する。生成された案内経路の情報は、ディスプレイ(図示せず)に表示される。
【0022】
カーナビゲーションシステム12は、ロケータ121と、地図情報122とを備える。ロケータ121は、GNSS受信機40から自車両の位置する緯度及び経度情報を取得し、地図情報122の地図上の自車両の現在地を特定する。カーナビゲーションシステム12は、自車両が走行する道路を地図上の道路の中から特定すると同時に、自車両がこれから進入する交差点を検出する。自車両がこれから進入する交差点を検出した場合に、自車両がこれから進入する交差点に関する情報(以下、交差点情報という)を走路推定部13に送信する。交差点情報には、例えば、交差点の位置情報が含まれる。地図情報122は、カーナビゲーションシステム12に記憶されている情報であり、道路の位置を示す、所定間隔に設定されたノードやノード間を接続するリンクや交差点の位置情報、標識情報、信号機情報、車線情報(車線数、右左折専用車線)、物標情報、施設情報などの経路案内に必要となる各種データを含んでいる。なお、地図情報122は、サーバから定期的に最新の地図情報を入手することにより更新されてもよい。
【0023】
走路推定部13は、記憶部11及びカーナビゲーションシステム12と接続されており、カーナビゲーションシステム12のロケータ121が交差点を検出した場合に、認識部10により検出された交差点手前の複数の矢印標示の位置及び方向を示すデータと、走行軌跡検出部102により検出された他車両の走行軌跡を示すデータを取得する。そして、矢印標示の位置及び方向を示すデータと、他車両の走行軌跡を示すデータを用いて、他車両の走行軌跡の行き先を判定する処理(以下、走行軌跡の行き先判定処理という)を行う。また、判定した走行軌跡の行き先と同一の方向を示す矢印標示の位置に、走行軌跡を複製した複製走行軌跡を示すデータを生成する処理(以下、走行軌跡の複製処理という)を行う。そして、複製した走行軌跡を示すデータに基づいて、交差点内の走路の形状を推定する処理を行う。
【0024】
走路推定部13は、これを機能的に捉えた場合、交差点情報取得部131と、矢印標示取得部132と、走行軌跡取得部133と、行き先判定部134と、走行軌跡複製部135と、走路形状推定部136とに分類することができる。以下、走路推定部13の各機能の概要について説明する。
【0025】
交差点情報取得部131は、カーナビゲーションシステム12が、自車両がこれから進入する交差点を検出した場合に、カーナビゲーションシステム12から、交差点情報を取得する。交差点情報取得部131は、例えば、カーナビゲーションシステム12から、自車両がこれから進入する交差点の位置情報を取得する。
【0026】
矢印標示取得部132は、取得された交差点情報に基づいて、記憶部11から、当該交差点手前の複数の矢印標示の各々の位置及び方向を示すデータを取得する。矢印標示取得部132は、例えば、取得された交差点の位置情報に基づいて、記憶部11から、当該交差点手前の複数の矢印標示の位置及び方向を示すデータを取得する。
【0027】
走行軌跡取得部133は、取得された交差点情報に基づいて、記憶部11から、当該交差点を走行する他車両の走行軌跡を示すデータを取得する。走行軌跡取得部133は、例えば、取得された交差点の位置情報に基づいて、記憶部11から、当該交差点を走行する他車両の走行軌跡を示すデータを取得する。
【0028】
行き先判定部134は、走行軌跡の行き先判定処理を行う。行き先判定部134は、他車両の走行軌跡から複数の矢印標示の各々までの車線幅方向の距離を算出する。行き先判定部134は、走行軌跡から矢印標示の基準線分に向かって垂線を引くことが可能な場合には、垂線が最短となる走行軌跡と基準線分との車線幅方向の距離を、走行軌跡から矢印標示までの車線幅方向の距離として算出する。
【0029】
行き先判定部134は、走行軌跡から矢印標示の基準線分に向かって垂線を引くことが不可能な場合には、走行軌跡を基準線分に向かって延長する。そして、延長した走行軌跡から基準線分に下ろした垂線が最短となる延長した走行軌跡と基準線分との車線幅方向の距離を、走行軌跡から路面矢印標示までの車線幅方向の距離として算出する。この場合、行き先判定部134は、延長した走行軌跡と基準線分とがなす角(第1のなす角)を算出し、当該なす角が第2閾値未満である場合に、走行軌跡の行き先を判定する。
【0030】
また、行き先判定部134は、他車両の走行軌跡から矢印標示までの車線幅方向の距離が第1閾値未満の矢印標示を、基準矢印標示として特定する。行き先判定部134は、複数の矢印標示のうち、走行軌跡から矢印標示までの車線幅方向の距離が第1閾値未満且つ最短となる路面矢印標示を、基準矢印標示として特定する。そして、基準矢印標示の方向に基づいて、走行軌跡の行き先を判定する。なお、行き先判定部134は、基準矢印標示が示す方向が複数存在する場合には、走行軌跡の曲率を算出し、曲率に基づいて、走行軌跡の行き先を判定する。
【0031】
走行軌跡複製部135は、他車両の走行軌跡の行き先と同一の方向を示し、基準路面矢印標示とは異なる矢印標示を特定する。そして、他車両の走行軌跡を、特定した矢印標示の位置に平行移動して複製した複製走行軌跡を示すデータを生成する。走行軌跡複製部135は、走行軌跡から矢印標示の基準線分に向かって垂線を引くことが不可能な場合には、走行軌跡を車線幅方向に平行移動し、平行移動した走行軌跡が他の走行軌跡と接するか否かを判定する。そして、平行移動した走行軌跡が他の走行軌跡と接する場合には、平行移動した走行軌跡と他の走行軌跡とがなす角(第2のなす角)を算出し、当該なす角が第3閾値未満の場合には、走行軌跡を他の走行軌跡と接する位置に平行移動して走行軌跡を複製した複製走行軌跡を示すデータ生成する。
【0032】
走路形状推定部136は、走行軌跡複製部135により生成された複製走行軌跡を示すデータに基づいて、交差点内の走路の形状を推定する。走路形状推定部136は、交差点内における複製走行軌跡及び走行軌跡から構成される複数の走行軌跡から、交差点内の走路の形状を推定する。
【0033】
上記構成により、本実施形態に係る走路推定装置1は、交差点の手前を走行中に取得した他車両の走行軌跡及びカーナビゲーションシステム12の地図情報122に基づいて、交差点内の走路の形状を推定することができる。従来のように、交差点の入口点に対応する道路ネットワーク上のリンクにおける出口点の探索、中間点の算出、及び入口点、中間点、出口点を結ぶスプライン曲線の算出などの複雑な処理が不要となる。
【0034】
次に、走路推定部13の各機能部の動作の流れと、走行経路の行き先判定処理及び走行経路の複製処理の詳細について、
図3~
図9を参照して説明する。
【0035】
図3は、走路推定部13の各機能部による動作の流れの一例を示すフローチャートである。まず、
図3のステップS10において、交差点情報取得部131は、カーナビゲーションシステム12から、交差点情報を取得する。
【0036】
処理はステップS11に進み、矢印標示取得部132は、取得された交差点情報に基づいて、記憶部11から、当該交差点手前の複数の矢印標示の位置及び方向を示すデータを取得する。
【0037】
処理はステップS12に進み、走行軌跡取得部133は、取得された交差点情報に基づいて、記憶部11から、当該交差点を走行する他車両の走行軌跡を示すデータを取得する。
【0038】
処理はステップS13に進み、行き先判定部134は、取得した走行軌跡の行き先を判定する処理(走行軌跡の行き先判定処理)を行う。ここで、走行軌跡の行き先判定処理の詳細な方法について、
図4~
図6を参照して説明する。
【0039】
[走行軌跡の行き先判定処理]
図4は、行き先判定部134による走行軌跡の行き先判定処理の処理手順を示すフローチャートである。例えば、
図5において、交差点手前に矢印標示Y1~Y3が存在し、交差点を走行する他車両V1、V2が存在する場合、矢印標示Y1~Y3の各々の位置及び方向が取得されているとする。矢印標示Y1~Y3の位置としては、矢印標示Y1~Y3の各々の基準線分BL1~BL3が取得されているとする。また、他車両V1の走行軌跡501と、他車両V2の走行軌跡502が取得されているとする。
【0040】
図4のステップS1301において、行き先判定部134は、他車両の走行軌跡と、交差点手前の複数の矢印標示の各々までの距離を算出する。例えば
図5において、行き先判定部134は、他車両V1の走行軌跡501から矢印標示Y1~Y3の基準線分BL1~BL3の各々に向かって垂線を引き、垂線が最短となる走行軌跡501と基準線分BL1~BL3との車線幅方向の距離D1~D3を算出する。一方、他車両V2の走行軌跡502は短いため、走行軌跡502から矢印標示Y1~Y3の基準線分BL1~BL3に向かって垂線を引くことができない。この場合には、行き先判定部134は、走行軌跡502から矢印標示までの距離を算出しない。
【0041】
処理はステップS1302に進み、行き先判定部134は、距離判定1を行う。距離判定1では、ステップS1301で算出した走行軌跡から矢印標示までの距離が、第1閾値未満か否かを判定する。第1閾値は、車線幅の半分程度の値に設定されればよく、例えば、車線幅が3mの場合には、1.5mに設定される。距離判定1において、走行軌跡から矢印標示までの距離が第1閾値未満の場合には、行き先判定部134は、走行軌跡から矢印標示までの距離が第1閾値未満となる矢印標示を基準矢印標示として特定する。基準路面矢印標示は、複数の矢印標示のうち、走行軌跡から矢印標示までの距離が第1閾値未満且つ最短となる矢印標示となる。そして、処理はステップS1308に進む。
【0042】
例えば
図5において、行き先判定部134は、距離D1~D3が第1閾値未満か否かを判定する。行き先判定部134は、距離D1が第1閾値未満となる場合には、矢印標示Y1を基準矢印標示として特定する。
【0043】
一方、距離判定1において、走行軌跡から矢印標示までの距離が第1閾値以上の場合には、行き先判定部134は、
図4の処理を終了し、走路推定部13は、
図3の処理を終了する。また、距離判定1において、ステップS1301で走行軌跡から矢印標示までの距離が算出されていない場合には、行き先判定部134は、距離判定が不能と判断し、処理はステップS1303に進む。
【0044】
ステップS1303において、行き先判定部134は、走行軌跡を基準線分に向かって延長する。すなわち、行き先判定部134は、走行軌跡から矢印標示の基準線分に向かって垂線を引くことが不可能な場合には、走行軌跡を基準線分に向かって延長する。具体的には、行き先判定部134は、走行軌跡を基準線分に向かって直線により延長する。例えば
図6に示すように、行き先判定部134は、
図5の他車両V2の走行軌跡502を基準線分BL3に向かって直線70により延長する。
【0045】
処理はステップS1304に進み、行き先判定部134は、延長した走行軌跡から交差点手前の複数の矢印標示の各々までの車線幅方向の距離を算出する。より具体的には、行き先判定部134は、走行軌跡を延長した直線から矢印標示の基準線分に向かって垂線を引き、垂線が最短となる延長した走行軌跡と基準線分との車線幅方向の距離を、走行軌跡から矢印標示までの車線幅方向の距離として算出する。なお、延長した走行軌跡と基準線分とが交わる場合には、行き先判定部134は、走行軌跡から矢印標示までの車線幅方向の距離を0と算出する。例えば
図6に示すように、他車両V2の走行軌跡502を延長した直線70と、矢印標示Y3の基準線分BL3が交わる場合には、行き先判定部134は、走行軌跡502から矢印標示Y3までの車線幅方向の距離を0と算出する。
【0046】
処理はステップS1305に進み、行き先判定部134は、距離判定2を行う。距離判定2では、ステップS1304で算出した延長した走行軌跡から矢印標示までの距離が、第1閾値未満か否かを判定する。また、行き先判定部134は、延長した走行軌跡から矢印標示までの距離が第1閾値未満となる矢印標示を基準矢印標示として特定する。そして、処理はステップS1306に進む。
【0047】
例えば
図6において、行き先判定部134は、距離判定2において、走行軌跡502を延長した直線70から矢印標示Y3までの距離が0であるため、延長した走行軌跡から矢印標示までの距離が第1閾値未満であると判定する。また、行き先判定部134は、矢印標示Y3を基準矢印標示として特定する。
【0048】
一方、距離判定2において、延長した走行軌跡から矢印標示までの距離が第1閾値以上の場合には、行き先判定部134は、
図4の処理を終了し、走路推定部13は、
図3の処理を終了する。
【0049】
ステップS1306において、行き先判定部134は、延長した走行軌跡と基準線分とがなす角(第1のなす角)を算出する。例えば
図6において、行き先判定部134は、他車両V2の走行軌跡502を延長した直線70と、基準線分BL3とがなす角60を算出する。
【0050】
処理はステップS1307に進み、行き先判定部134は、なす角判定を行う。なす角判定では、ステップS1306で算出した延長した走行軌跡と基準線分とがなす角が、第2閾値未満か否かを判定する。第2閾値は、例えば、絶対値が10度に設定される。なす角判定において、延長した走行軌跡と基準線分とがなす角が第2閾値未満の場合には、処理はステップS1308に進む。一方、なす角判定において、延長した走行軌跡と基準線分とがなす角が第2閾値以上の場合には、行き先判定部134は、
図4の処理を終了し、走路推定部13は、
図3の処理を終了する。
【0051】
ステップS1308において、行き先判定部134は、基準矢印標示が示す方向が一意であるか否かを判定する。基準矢印標示の方向が一意であるとは、基準矢印標示が示す方向が1つであることを意味する。また、基準矢印標示が示す方向が一意でないとは、基準矢印標示が示す方向が複数存在することを意味する。基準矢印標示が示す方向が一意である場合には、処理はステップS1309に進む。一方、基準矢印標示が示す方向が一意でない場合には、処理はステップS1310に進む。
【0052】
ステップS1309において、行き先判定部134は、走行軌跡の行き先を基準矢印標示の方向と判定し、
図4の処理を終了する。例えば
図5において、行き先判定部134は、走行軌跡501の行き先を、基準矢印標示として特定した矢印標示Y1の方向と判定する。すなわち、走行軌跡501の行き先を「右折」と判定して、処理を終了する。
【0053】
ステップS1310において、行き先判定部134は、走行軌跡の曲率ρを算出する。処理はステップS1311に進み、行き先判定部134は、走行軌跡の曲率ρが正の閾値θより大きいか、負の閾値-θ以上正の閾値θ以下か、負の閾値-θより小さいかを判定する。ここで、閾値θは、例えば1/100に設定される。閾値θを1/100とすることにより、旋回半径を100mとして、走行軌跡が右折か左折か直進かを判定することができる。曲率ρが正の閾値θより大きい場合には、処理はステップS1312に進み、行き先判定部134は、走行軌跡の行き先を「左折」と判定して、
図4の処理を終了する。曲率ρが負の閾値-θ以上正の閾値θ以下である場合には、処理はステップS1313に進み、行き先判定部134は、走行軌跡の行き先を「直進」と判定して、
図4の処理を終了する。曲率ρが負の閾値-θより小さい場合には、処理はステップS1314に進み、行き先判定部134は、走行軌跡の行き先を「右折」と判定して、
図4の処理を終了する。
【0054】
図3に戻り、ステップS13において走行軌跡の行き先が判定された場合には、処理はステップS14に進み、走行軌跡複製部135は、走行軌跡を複製する処理(走行軌跡の複製処理)を行う。走行軌跡複製部135は、他車両の走行軌跡の行き先と同一の方向を示し、基準路面矢印標示とは異なる矢印標示を特定する。そして、他車両の走行軌跡を、特定した矢印標示の位置に平行移動して複製した複製走行軌跡を示すデータを生成する。ここで、走行軌跡の複製処理の詳細について、
図7~9を参照して説明する。
【0055】
[走行軌跡の複製処理]
図7は、走行軌跡複製部135による走行軌跡の複製処理の処理手順を示すフローチャートである。
図7の処理は、行き先判定部134により、走行軌跡の行き先が判定された場合に実行される。
【0056】
図7のステップS1401において、走行軌跡複製部135は、走行軌跡と矢印標示の距離が算出可能か否かを判定する。走行軌跡複製部135は、行き先判定部134から、他車両の走行軌跡と、交差点手前の複数の矢印標示の各々までの距離を算出できたか否かの情報を取得して、走行軌跡と矢印標示の距離が算出可能か否かを判定する。走行軌跡と矢印標示の距離が算出可能な場合(ステップS1401でYES)には、処理はステップS1402に進む。
【0057】
例えば
図8においては、交差点手前に複数の矢印標示Y5~Y7が存在し、交差点を走行する他車両Vが存在する場合に、矢印標示Y5が基準矢印標示として特定され、他車両Vの走行軌跡504の行き先が「直進」と判定されているとする。
図8に示すように、他車両Vの走行軌跡504の長さが十分長く、走行軌跡504から矢印標示Y5の基準線分(図示せず)に向かって垂線を引くことが可能な場合には、行き先判定部134は、走行軌跡504と矢印標示との距離を算出可能である。したがって、
図8においては、走行軌跡複製部135は、走行軌跡504と矢印標示の距離が算出可能であると判定する。
【0058】
一方、走行軌跡と矢印標示の距離が算出不可能な場合(ステップS1401でNO)には、処理はステップS1403に進む。例えば
図9においては、交差点手前に複数の矢印標示Y8~Y10が存在し、交差点を走行する他車両Vが存在する場合に、矢印標示Y8が基準矢印標示として特定され、他車両Vの走行軌跡505の行き先が「直進」と判定されているとする。
図9に示すように、他車両Vの走行軌跡505の長さが短く、走行軌跡504から矢印標示Y8の基準線分(図示せず)に向かって垂線を引くことが不可能な場合には、行き先判定部134は、走行軌跡505と矢印標示との距離を算出不可能である。したがって、
図9においては、走行軌跡複製部135は、走行軌跡505と矢印標示の距離が算出不可能であると判定する。なお、
図9においては、他車両Vの走行軌跡505とは異なる他車両の走行軌跡(以下、他の走行軌跡という)506、607が存在するとする。ここでは、
図9においては、走行軌跡505に対する処理を行っているものとする。
【0059】
ステップS1402において、走行軌跡複製部135は、走行軌跡の行き先と同一の方向を示し、基準矢印標示とは異なる矢印標示を特定する。そして、走行軌跡を、特定した矢印標示の位置まで平行移動して、処理はステップS1407に進む。例えば
図8において、走行軌跡複製部135は、走行軌跡504の行き先「直進」と同一の方向を示し、基準矢印標示Y5とは異なる矢印標示Y6、Y7を特定する。そして、走行軌跡504を、特定した矢印標示Y6、Y7の車線幅方向の位置まで平行移動する。
【0060】
ステップS1403において、走行軌跡複製部135は、走行軌跡を車線幅方向に平行移動する。処理はステップS1404に進み、走行軌跡複製部135は、平行移動した走行軌跡が他の走行軌跡と交わるか否かを判定する。平行移動した走行軌跡が他の走行軌跡と交わる場合(ステップS1404でYES)には、処理はステップS1405に進む。走行軌跡が他の走行軌跡と交わらない場合(ステップS1404でNO)には、走行軌跡複製部135は
図7の処理を終了し、走路推定部13は、
図3の処理を終了する。
【0061】
例えば
図9において、走行軌跡複製部135は、走行軌跡505を車線幅方向に平行移動し、平行移動した走行軌跡505が他の走行軌跡506、507と接するか否かを判定する。
図9においては、走行軌跡複製部135は、平行移動した走行軌跡505が他の走行軌跡506、507と接すると判定する。
【0062】
ステップS1405において、走行軌跡複製部135は、平行移動した走行軌跡と他の走行軌跡とがなす角(第2のなす角)を算出する。処理はステップS1406に進み、走行軌跡複製部135は、平行移動した走行軌跡と他の走行軌跡とがなす角が第3閾値未満か否かを判定する。第3閾値は、例えば、絶対値が10度に設定される。平行移動した走行軌跡と他の走行軌跡とがなす角が第3閾値未満の場合(ステップS1406でYES)には、処理はステップS1407に進む。一方、平行移動した走行軌跡と他の走行軌跡とがなす角が第3閾値以上(ステップS1406でNO)には、走行軌跡複製部135は、
図7の処理を終了し、走路推定部13は、
図3の処理を終了する。
【0063】
ステップS1407において、走行軌跡複製部135は、走行軌跡を複製した複製走行軌跡を生成して、
図7の処理を終了する。そして、走路形状推定部136は、走行軌跡と、複製走行軌跡とに基づいて、交差点内の走路の形状を推定する。
【0064】
例えば
図8において、走行軌跡複製部135は、走行軌跡504を矢印標示Y6、Y7の位置まで平行移動して複製した複製走行軌跡701、702を生成する。また、例えば
図9において、走行軌跡複製部135は、走行軌跡505を走行軌跡506、507と接する位置まで平行移動して複製した複製走行軌跡703、704を生成する。
【0065】
図3に戻り、ステップS14において、複製走行軌跡を示すデータが生成された場合には、処理はステップS15に進み、走路形状推定部136は、走行軌跡複製部135により生成された複製走行軌跡を示すデータに基づいて、交差点内の走路の形状を推定する。走路形状推定部136は、交差点内における複製走行軌跡及び走行軌跡から構成される複数の走行軌跡から、交差点内の走路の形状を推定する。
【0066】
例えば
図8において、走路形状推定部136は、交差点内における複製走行軌跡701、702及び走行軌跡504から、交差点内の走路の形状を推定する。また、例えば
図9において、走路形状推定部136は、交差点内における複製走行軌跡703、704及び走行軌跡505。506、507から、交差点内の走路の形状を推定する。
【0067】
[本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係る走路推定方法及びその装置は、交差点手前の複数の路面矢印標示の各々の位置及び方向を示すデータを取得する。交差点を走行する車両の走行軌跡を示すデータを取得する。走行軌跡から複数の路面矢印標示の各々までの車線幅方向の距離を算出する。走行軌跡から路面矢印標示までの距離が第1閾値未満の路面矢印標示である基準路面矢印標示の方向に基づいて、走行軌跡の行き先を判定する。走行軌跡を、走行軌跡の行き先と同一の方向を示し、基準路面矢印標示とは異なる路面矢印標示の位置に平行移動して複製した複製走行軌跡を示すデータを生成する。複製走行軌跡を示すデータに基づいて、交差点内の走路の形状を推定する。
【0068】
車両の走行軌跡から車線幅方向の距離が閾値未満の路面矢印標示の行き先を、走行軌跡の行き先と判定できる。走行軌跡の行き先と同一の方向を示し、基準路面矢印標示とは異なる路面矢印標示の位置に、走行軌跡を複製した複製走行軌跡を生成し、複製走行軌跡に基づいて、交差点内の走路の形状を推定できる。これにより、交差点において、走行軌跡が取得されていない領域でも走路の形状を推定できる。
【0069】
本実施形態においては、基準路面矢印標示は、複数の路面矢印標示のうち、走行軌跡から路面矢印標示までの距離が第1閾値未満且つ最短となる路面矢印標示である。
【0070】
車両の走行軌跡から車線幅方向の距離が閾値未満且つ最短となる路面矢印標示の行き先を走行軌跡の行き先と判定する。これにより、走行軌跡の形状や交差点の形状によらず、正確に走行軌跡の行き先を判定できる。
【0071】
本実施形態においては、複数の路面矢印標示の各々に対し、車線幅方向の中心位置を通る基準線分を設定する。走行軌跡から基準線分に向かって垂線を引くことが可能な場合には、垂線が最短となる走行軌跡と基準線分との車線幅方向の距離を、走行軌跡から路面矢印標示までの車線幅方向の距離として算出する。
【0072】
車両の走行軌跡から路面矢印標示の車線幅方向の中心位置を通る基準線分に下ろした垂線が最短となる走行軌跡と基準線分との車線幅方向の距離が閾値未満となる路面矢印標示の方向を、走行軌跡の行き先と判定できる。これにより、走行軌跡の形状や交差点の形状によらず、正確に走行軌跡の行き先を判定できる。
【0073】
本実施形態においては、複数の路面矢印標示の各々に対し、車線幅方向の中心位置を通る基準線分を設定する。走行軌跡から基準線分に向かって垂線を引くことが不可能な場合には、走行軌跡を基準線分に向かって延長する。延長した走行軌跡から基準線分に下ろした垂線が最短となる延長した走行軌跡と基準線分との車線幅方向の距離を、走行軌跡から路面矢印標示までの車線幅方向の距離として算出する。
【0074】
延長した車両の走行軌跡から路面矢印標示の車線幅方向の中心位置を通る基準線分に下ろした垂線が最短となる位置での延長した走行軌跡と基準線分との車線幅方向の距離が閾値未満となる路面矢印標示の行き先を、走行軌跡の行き先と判定できる。これにより、交差点内の途中から検出された短い走行軌跡に対しても、走行軌跡の形状や交差点の形状によらず、正確に走行軌跡の行き先を判定できる。
【0075】
本実施形態においては、延長した走行軌跡と基準線分とが成す第1の成す角を算出する。第1の成す角が第2閾値未満である場合に、走行軌跡から路面矢印標示までの車線幅方向の距離が第1閾値未満の路面矢印標示である基準路面矢印標示の方向に基づいて、走行軌跡の行き先を判定する。
【0076】
延長した走行軌跡と、路面矢印標示の車線幅方向の中心位置を通る基準線分とのなす角が閾値未満となる路面矢印標示の方向を走行軌跡の行き先と判定できる。これにより、交差点内の途中から検出された短い走行軌跡に対しても、走行軌跡の形状や交差点の形状によらず、より正確に走行軌跡の行き先を判定できる。
【0077】
本実施形態においては、基準路面矢印標示が示す方向が複数存在する場合には、走行軌跡の曲率を算出する。曲率に基づいて、走行軌跡の行き先を判定する。
【0078】
基準路面矢印標示が複数の方向を示す場合に、走行軌跡の曲率に基づいて走行軌跡の行き先を判定する。これにより、走行軌跡の行き先を一つに特定することができる。
【0079】
本実施形態においては、複数の路面矢印標示の各々に対し、車線幅方向の中心位置を通る基準線分を設定する。走行軌跡から基準線分に向かって垂線を引くことが不可能な場合には、走行軌跡を車線幅方向に平行移動し、平行移動した走行軌跡が他の走行軌跡と接するか否かを判定する。平行移動した走行軌跡が他の走行軌跡と接する場合には、平行移動した走行軌跡と他の走行軌跡とが成す第2の成す角を算出する。第2の成す角が第3閾値未満の場合には、走行軌跡を他の走行軌跡と接する位置に平行移動して走行軌跡を複製した複製走行軌跡を示すデータを生成する。
【0080】
矢印標示と接しない走行軌跡を他の走行軌跡と交わる位置に平行移動させて複製するので、短い走行軌跡であっても走行軌跡を複製することができる。複製した走行軌跡に基づいて、交差点内の走路を推定できる。
【0081】
なお、走行軌跡複製部135は、複製走行軌跡を生成する際に、走行軌跡を平行移動した移動量の分だけ、複製走行軌跡の旋回半径を調整してもよい。例えば
図10Aにおいては、交差点手前に矢印標示Y11、Y12が存在し、交差点を走行する他車両Vが存在する場合に、矢印標示Y11が基準矢印標示として特定され、他車両Vの走行軌跡508の行き先が「左折」と判定されているとする。そして、走行軌跡508を矢印標示Y12の位置まで平行移動して複製した複製走行軌跡705が生成されるとする。この場合、走行軌跡複製部135は、走行軌跡508を矢印標示Y12の位置まで平行移動した移動量の分だけ、走行軌跡508の曲率を大きくし、走行軌跡508の半径を小さくするように、複製走行軌跡705の旋回半径を調整してもよい。
【0082】
また、例えば
図10Bにおいては、交差点手前に矢印標示Y13、Y14が存在し、交差点を走行する他車両Vが存在する場合に、矢印標示Y13が基準矢印標示として特定され、他車両Vの走行軌跡509の行き先が「右折」と判定されているとする。そして、走行軌跡509を矢印標示Y14の位置まで平行移動して複製した複製走行軌跡706が生成されるとする。この場合、走行軌跡複製部135は、走行軌跡509を矢印標示Y14の位置まで平行移動した移動量の分だけ、走行軌跡509の曲率を小さくし、走行軌跡509の半径を大きくするように、複製走行軌跡706の旋回半径を調整する。
【0083】
走行軌跡の旋回半径を複製の際の移動量の分だけ増加減させることにより、隣接する走路と交錯しない走行軌跡を複製することができる。
【0084】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0085】
1 走路推定装置
501~509 走行軌跡
701~706 複製走行軌跡
D1~D3 距離
Y、Y1~Y14 路面矢印標示(矢印標示)
V、V1~V2 車両(他車両)