(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160384
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】赤外線パスフィルタ、固体撮像素子用フィルタ、固体撮像素子、および赤外線パスフィルタ用組成物
(51)【国際特許分類】
G02B 5/22 20060101AFI20231026BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20231026BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20231026BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20231026BHJP
G03F 7/031 20060101ALI20231026BHJP
C08F 265/06 20060101ALI20231026BHJP
C08F 2/50 20060101ALI20231026BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20231026BHJP
H04N 25/13 20230101ALI20231026BHJP
【FI】
G02B5/22
G02B5/20 101
G03F7/004 505
G03F7/027 502
G03F7/031
C08F265/06
C08F2/50
H01L27/146 D
H04N9/07 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070730
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】田久保 千晴
(72)【発明者】
【氏名】廣田 徹也
【テーマコード(参考)】
2H148
2H225
4J011
4J026
4M118
5C065
【Fターム(参考)】
2H148BD02
2H148BD21
2H148BG11
2H148BH01
2H148CA04
2H148CA09
2H148CA12
2H148CA14
2H148CA17
2H148CA23
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2H225AC33
2H225AC54
2H225AC63
2H225AD06
2H225AM22P
2H225AM32P
2H225AN39P
2H225BA16P
2H225BA35P
2H225CA16
2H225CB06
2H225CC01
2H225CC13
4J011AA05
4J011AC04
4J011CA02
4J011CC10
4J011PA03
4J011PA69
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4J011PC02
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4J011QA24
4J011QB19
4J011SA65
4J011UA01
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4J026AA43
4J026AA45
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4J026BA28
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4J026DA15
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4J026GA10
4M118AB01
4M118BA10
4M118BA14
4M118GC08
4M118GC11
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4M118GC20
4M118GD04
4M118GD07
5C065DD01
5C065EE05
5C065EE20
(57)【要約】
【課題】固体撮像素子の赤外線に対する感度を向上させることができる技術を提供する。
【解決手段】赤外線パスフィルタ12Pは、着色材と、樹脂と、波長300乃至400nmの範囲内における屈折率の最大値Amaxと、波長400乃至800nmの範囲内における屈折率の最小値Bminとの比Amax/Bminが1.1以上である化合物Aとを含んだ組成物からなり、前記組成物に占める前記化合物Aの割合が5乃至38質量%の範囲内にある。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色材と、
樹脂と、
波長300乃至400nmの範囲内における屈折率の最大値Amaxと、波長400乃至800nmの範囲内における屈折率の最小値Bminとの比Amax/Bminが1.1以上である化合物Aと
を含んだ組成物からなり、前記組成物に占める前記化合物Aの割合が5乃至38質量%の範囲内にある赤外線パスフィルタ。
【請求項2】
前記赤外線パスフィルタの高さHと最大幅Wとの比H/Wが0.5乃至1.2の範囲内にある請求項1に記載の赤外線パスフィルタ。
【請求項3】
前記割合が20乃至30質量%の範囲内にある請求項1に記載の赤外線パスフィルタ。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の赤外線パスフィルタと、
前記赤外線パスフィルタに対して各々が並置され、可視光に対する透過スペクトルが互いに異なる第1乃至第3フィルタを含んだカラーフィルタと
を備えた固体撮像素子用フィルタ。
【請求項5】
前記第1乃至第3フィルタは、赤色用フィルタ、緑色用フィルタ、および青色用フィルタである請求項4に記載の固体撮像素子用フィルタ。
【請求項6】
前記カラーフィルタに対し光の入射側に位置した赤外線カットフィルタを更に備えた請求項4に記載の固体撮像素子用フィルタ。
【請求項7】
請求項4に記載の固体撮像素子用フィルタと、
受光面に前記赤外線パスフィルタおよび前記第1乃至第3フィルタがそれぞれ配置された複数の光電変換素子と
を備えた固体撮像素子。
【請求項8】
着色材と、
重合性化合物と、
光重合開始剤と、
バインダ樹脂と、
波長300乃至400nmの範囲内における屈折率の最大値Amaxと、波長400乃至800nmの範囲内における屈折率の最小値Bminとの比Amax/Bminが1.1以上である化合物Aと
を含み、全固形分に占める前記化合物Aの割合が5乃至38質量%の範囲内にある赤外線パスフィルタ用組成物。
【請求項9】
前記重合性化合物として3官能アクリルモノマーを含んだ請求項8に記載の赤外線パスフィルタ用組成物。
【請求項10】
前記光重合開始剤としてオキシム・エステル化合物を含んだ請求項8または9に記載の赤外線パスフィルタ用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線パスフィルタ、固体撮像素子用フィルタ、固体撮像素子、および赤外線パスフィルタ用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサやCCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサなどの固体撮像素子は、光をその強度に対応した大きさの電気信号に変換する光電変換素子を備えている。固体撮像素子としては、複数の光電変換素子の他に、各色用の光電変換素子上に位置するカラーフィルタと、赤外用の光電変換素子上に位置する赤外線パスフィルタとを備えたものがある(特許文献1および2を参照)。
【0003】
赤外線パスフィルタは、赤外用の光電変換素子が検出し得る可視光を遮断して、赤外用の光電変換素子による赤外線の検出精度を高める。赤外線パスフィルタの主要な構成材料は、例えば、ビスベンゾフラノン系顔料、アゾメチン系顔料、ペリレン系顔料、アゾ系染料などの黒色着色材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-177273号公報
【特許文献2】特開2018-119077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、固体撮像素子の赤外線に対する感度を向上させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面によると、着色材と、樹脂と、波長300乃至400nmの範囲内における屈折率の最大値Amaxと、波長400乃至800nmの範囲内における屈折率の最小値Bminとの比Amax/Bminが1.1以上である化合物Aとを含んだ組成物からなり、前記組成物に占める前記化合物Aの割合が5乃至38質量%の範囲内にある赤外線パスフィルタが提供される。
【0007】
本発明の他の側面によると、前記赤外線パスフィルタの高さHと最大幅Wとの比H/Wが0.5乃至1.2の範囲内にある上記側面に係る赤外線パスフィルタが提供される。
【0008】
本発明の更に他の側面によると、前記割合が20乃至30質量%の範囲内にある上記側面の何れかに係る赤外線パスフィルタが提供される。
【0009】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る赤外線パスフィルタと、前記赤外線パスフィルタに対して各々が並置され、可視光に対する透過スペクトルが互いに異なる第1乃至第3フィルタを含んだカラーフィルタとを備えた固体撮像素子用フィルタが提供される。
【0010】
本発明の更に他の側面によると、前記第1乃至第3フィルタは、赤色用フィルタ、緑色用フィルタ、および青色用フィルタである上記側面に係る固体撮像素子用フィルタが提供される。
【0011】
本発明の更に他の側面によると、前記カラーフィルタに対し光の入射側に位置した赤外線カットフィルタを更に備えた上記側面の何れかに係る固体撮像素子用フィルタが提供される。
【0012】
本発明の更に他の側面によると、上記側面の何れかに係る固体撮像素子用フィルタと、受光面に前記赤外線パスフィルタおよび前記第1乃至第3フィルタがそれぞれ配置された複数の光電変換素子とを備えた固体撮像素子が提供される。
【0013】
本発明の更に他の側面によると、着色材と、重合性化合物と、光重合開始剤と、バインダ樹脂と、波長300乃至400nmの範囲内における屈折率の最大値Amaxと、波長400乃至800nmの範囲内における屈折率の最小値Bminとの比Amax/Bminが1.1以上である化合物Aとを含み、全固形分に占める前記化合物Aの割合が5乃至38質量%の範囲内にある赤外線パスフィルタ用組成物が提供される。
【0014】
本発明の更に他の側面によると、前記重合性化合物として3官能アクリルモノマーを含んだ上記側面に係る赤外線パスフィルタ用組成物が提供される。
【0015】
本発明の更に他の側面によると、前記光重合開始剤としてオキシム・エステル化合物を含んだ上記側面の何れかに係る赤外線パスフィルタ用組成物が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、固体撮像素子の赤外線に対する感度を向上させることができる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る固体撮像素子の層構造を示す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る赤外線パスフィルタのパターン形状を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施形態は、上記側面の何れかをより具体化したものである。以下に記載する事項は、単独でまたは複数を組み合わせて、上記側面の各々に組み入れることができる。
【0019】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、下記の構成部材の材質、形状、および構造等によって限定されるものではない。本発明の技術的思想には、請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0020】
なお、同様または類似した機能を有する要素については、以下で参照する図面において同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は模式的なものであり、或る方向の寸法と別の方向の寸法との関係、および、或る部材の寸法と他の部材の寸法との関係等は、現実のものとは異なり得る。
【0021】
<1.赤外線パスフィルタ>
赤外線パスフィルタは、赤色、緑色、および青色フィルタなどのカラーフィルタと並置して固体撮像素子に含まれる場合があり、この場合、各フィルタに対応する塗膜を、フォトリソグラフィ法を用いてパターン形成する。塗膜のパターン形成の際には、紫外領域の光を用いて露光を行うが、黒色着色材は紫外領域の光の吸収が大きく、光重合開始剤による重合反応が進みにくい。このため、赤外線パスフィルタにおいては、パターン形成後に画素の上部の角が丸くなり、パターン形状、特にパターン断面の矩形性が低下する。なお、以下の説明において、パターン断面の矩形性は単に「矩形性」ともいう。
【0022】
このようなケースにおいて、本発明者らは、赤外線パスフィルタの矩形性が、固体撮像素子の赤外線に対する感度へ影響を及ぼすことを見出した。即ち、赤外線パスフィルタの矩形性が低いと、赤外線に対する感度が高い固体撮像素子を実現することが難しい。本発明者らは、その理由を以下のように考えている。赤外線パスフィルタの矩形性が低いと、パターンの高さが低い部分で可視光を十分に遮断できない。また、赤外線パスフィルタの矩形性が低いと、隣接するカラーフィルタの一部が、赤外線用の光電変換素子の上に形成され得る。これらの理由のため、赤外線パスフィルタの矩形性は、固体撮像素子の赤外線に対する感度へ影響を及ぼす。
【0023】
また、本発明者らは、紫外領域における屈折率が大きい化合物を赤外線パスフィルタの材料へ添加すると、赤外線パスフィルタの矩形性を向上させることができることを見出した。本発明者らは、そのメカニズムを以下のように考えている。紫外領域における屈折率が大きい化合物(以下、化合物Aという)を赤外線パスフィルタの材料へ添加すると、この材料からなる塗膜への紫外線の入射率が高まる。また、紫外線が塗膜へ斜め方向に入射したとしても、化合物Aを含んだ塗膜では、紫外線が塗膜中を進行する方向と塗膜の厚さ方向とが成す角度は、化合物Aを含んでいない塗膜と比較してより小さい。即ち、化合物Aを含んだ塗膜では、紫外線の塗膜への入射位置から塗膜下面までの光路長がより短い。それ故、紫外線は、より小さな減衰率で塗膜下面まで到達し得る。これにより、塗膜の紫外線照射位置で厚さ方向の全体にわたって、重合反応によるパターンの硬化が促進され、赤外線パスフィルタの矩形性が向上する。
【0024】
上記発見に基づいて本発明は完成された。すなわち、一実施形態に係る赤外線パスフィルタは、着色材と、樹脂と、波長300乃至400nmの範囲内における屈折率の最大値Amaxと、波長400乃至800nmの範囲内における屈折率の最小値Bminとの比Amax/Bminが1.1以上である化合物Aとを含んだ組成物からなり、前記組成物に占める前記化合物Aの割合が5乃至38質量%の範囲内にある。
【0025】
赤外線パスフィルタは、後述の<2.赤外線パスフィルタ用組成物>の欄で説明する赤外線パスフィルタ用組成物の硬化物である。したがって、着色剤と樹脂と化合物Aとを含んだ上記組成物は、赤外線パスフィルタ用組成物の硬化物を指す。赤外線パスフィルタの各構成成分については、後述の<2.赤外線パスフィルタ用組成物>の欄で詳細に説明する。
【0026】
化合物Aは、波長300乃至400nmの範囲内における屈折率の最大値Amaxと、波長400乃至800nmの範囲内における屈折率の最小値Bminとの比Amax/Bminが1.1以上である。比Amax/Bminは、1.11以上であることが好ましく、1.12以上であることがより好ましい。比Amax/Bminに上限値はないが、化合物Aとして使用可能なものの多くは比Amax/Bminが1.2以下であり、代表的なものは比Amax/Bminが1.15以下である。屈折率は、後述の実施例に記載されるとおり、エリプソメトリ法を用いて測定された値をいう。
【0027】
化合物Aは、比Amax/Bminが1.1以上であり、紫外領域における屈折率が大きい。このため、化合物Aを赤外線パスフィルタの材料へ添加すると、上述のメカニズムにより、塗膜の紫外線照射位置で厚さ方向の全体にわたって、重合反応によるパターンの硬化を促進させることができると考えられる。
【0028】
赤外線パスフィルタを構成する組成物に占める化合物Aの割合は、5乃至38質量%、好ましくは10乃至38質量%、より好ましくは10乃至37質量%、更に好ましくは10乃至36質量%、更に好ましくは15乃至35質量%、更に好ましくは20乃至30質量%、更に好ましくは20乃至25質量%の範囲内にある。
【0029】
化合物Aの割合を小さくすると、化合物Aの添加効果、すなわち、紫外光の吸収効率を高め、重合反応によるパターンの硬化を促進させる効果が小さくなる。化合物Aの割合を大きくすると、可視領域350乃至750nmの分光特性が低下する。加えて、この場合、硬化成分の割合が減少するため、フォトリソグラフィ法による塗膜のパターン形成時に、パターニング特性が低下する可能性がある。
【0030】
赤外線パスフィルタを構成する組成物に占める着色材の割合は、例えば5乃至70質量%、好ましくは10乃至60質量%、より好ましくは20乃至50質量%の範囲内にある。赤外線パスフィルタを構成する組成物に占める樹脂の割合は、例えば1乃至30質量%、好ましくは3乃至15質量%、より好ましくは3乃至8質量%の範囲内にある。
【0031】
赤外線パスフィルタは、可視領域および近赤外領域の一部である波長400乃至800nmの光の平均透過率が30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることが更に好ましい。また、赤外線パスフィルタは、近赤外領域900乃至1100nmの光の平均透過率が75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。赤外線パスフィルタの分光特性が上述の範囲内にあることで可視領域由来のノイズの少ない赤外線パスフィルタとして機能する。
【0032】
次に、赤外線パスフィルタのサイズおよび形状を、
図2を参照して説明する。
図2は、一実施形態に係る赤外線パスフィルタのパターン形状を模式的に示す側面図である。
図2は、赤外線パスフィルタの高さH、赤外線パスフィルタの最大幅W、赤外線パスフィルタの高さHに対して90%の高さ(0.9H)における赤外線パスフィルタの幅T、および赤外線パスフィルタの高さHに対して50%の高さ(0.5H)における赤外線パスフィルタの幅Sを図示する。ここで、最大幅W、幅Tおよび幅Sは、赤外線パスフィルタの同一断面を顕微鏡で観察することにより得られる値である。
【0033】
赤外線パスフィルタの高さHは、0.3乃至5μmの範囲内にあることが好ましく、0.5乃至3μmの範囲内にあることがより好ましい。赤外線パスフィルタの最大幅Wは、0.7乃至20μmの範囲内にあることが好ましく、0.8乃至10μmの範囲内にあることがより好ましく、0.9乃至5μmの範囲内にあることが更に好ましい。
【0034】
赤外線パスフィルタの高さHと最大幅Wとの比H/Wは、0.5乃至1.2の範囲内にあることが好ましく、0.6乃至1.0の範囲内にあることがより好ましく、0.75乃至0.85の範囲内にあることが更に好ましい。比H/Wが上記範囲内にある場合、パターン断面の矩形性が、固体撮像素子の赤外線に対する感度へ特に大きな影響を及ぼす。
【0035】
赤外線パスフィルタの高さが0.9Hである位置における赤外線パスフィルタの幅Tと、赤外線パスフィルタの高さが0.5Hである位置における赤外線パスフィルタの幅Sとの比T/Sは、0.7乃至1の範囲内にあることが好ましく、0.75乃至1の範囲内にあることがより好ましく、0.8乃至1の範囲内にあることが更に好ましい。比T/Sが小さくなるほど、パターン断面の矩形性が低下し、固体撮像素子の赤外線に対する感度が低下する傾向がある。比T/Sが1を超えると、パターン形状が逆テーパ形状となり、この値が更に大きくなると、パターンの密着性が低下する傾向がある。
【0036】
<2.赤外線パスフィルタ用組成物>
一実施形態に係る赤外線パスフィルタ用組成物は、着色材と、重合性化合物と、光重合開始剤と、バインダ樹脂と、波長300乃至400nmの範囲内における屈折率の最大値Amaxと、波長400乃至800nmの範囲内における屈折率の最小値Bminとの比Amax/Bminが1.1以上である化合物Aとを含み、全固形分に占める前記化合物Aの割合が5乃至38質量%の範囲内にある。
【0037】
この赤外線パスフィルタ用組成物からなる塗膜を形成し、フォトリソグラフィ法による塗膜のパターニングを行うことにより、赤外線パスフィルタを形成することができる。したがって、赤外線パスフィルタ用組成物に含まれる重合性化合物は、赤外線パスフィルタにおいて、バインダ樹脂とともに樹脂を構成する。
【0038】
以下、赤外線パスフィルタ用組成物の各構成成分について説明する。なお、本明細書では、「(メタ)アクリル」はアクリルおよび/またはメタクリルを表し、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートおよび/またはメタアクリレートを表し、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸および/またはメタクリル酸を表す。また、本明細書では、「C.I.」はカラーインデックスを表す。
【0039】
(着色材)
着色材としては、1種の着色材を使用してもよく、2種以上の着色材を混合して使用してもよい。例えば、着色材として、黒色着色材を使用することができる。或いは、着色材として、緑、青、赤、黄、紫、マゼンタ、シアン、オレンジ等の着色材の2以上の組み合わせを使用することができる。この場合、例えば、減法混色によって黒色を呈するように着色材を選定する。また、着色材またはその一部として、赤外領域の一部の帯域において高い透過率を示し、赤外領域の他の一部の帯域において低い透過率を示す赤外線吸収色材を使用してもよい。
【0040】
黒色着色材としては、例えばビスベンゾフラノン系顔料、アゾメチン系顔料、ペリレン系顔料、アゾ系染料などの黒色色材を使用することができる。
【0041】
緑色着色材としては、緑色顔料または緑色染料あるいはそれらの中間体が使用可能である。緑色顔料としては、例えば、C.I.Pigment Green 7、36、37、58、緑色染料としては、例えば、C.I.Acid Green 25、41を、それぞれ単独で、または、混合して使用することができる。
【0042】
青色着色材としては、例えば、C.I.Pigment Blue 15、15:3、15:4、15:6、6、22、60等の青色顔料や、C.I.Acid Blue 41、83、90、113、129等の青色染料を使用することができる。
【0043】
赤色着色材としては、例えば、C.I.Pigment Red 123、155、168、177、180、217、220、254等の赤色顔料や、C.I.Acid Red 37、50、111、114、257、266等の赤色染料を使用することができる。
【0044】
黄色着色材としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 138、139、150、185等の黄色顔料や、C.I.Acid Yellow 17、49、67、72、127、110等の黄色染料を使用することができる。
【0045】
紫色着色材としては、例えば、C.I.Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、50等の顔料を使用することができる。
【0046】
マゼンタ色着色材としては、例えば、C.I.Pigment Red 7、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、146、177、178、184、185、187、200、202、208、210、246、254、255、264、270、272等の顔料を使用することができる。
【0047】
シアン色着色材としては、例えば、C.I.Pigment Blue 15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、80等の顔料を使用することができる。
【0048】
オレンジ色着色材としては、例えば、C.I.Pigment Orange 36、43、51、55、59、61、71、73等の顔料を使用することができる。
【0049】
赤外線吸収色材としては、例えば、アントラキノン系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ジチオール系色素、ジイモニウム系色素、スクアリリウム系色素、クロコニウム系色素を使用することができる。
【0050】
赤外線パスフィルタ用組成物の全固形分に占める着色材の割合は、例えば5乃至70質量%、好ましくは10乃至60質量%、より好ましくは20乃至50質量%の範囲内にある。
【0051】
(化合物A)
上述のとおり、化合物Aは、波長300乃至400nmの範囲内における屈折率の最大値Amaxと、波長400乃至800nmの範囲内における屈折率の最小値Bminとの比Amax/Bminが1.1以上である化合物である。比Amax/Bminは、1.11以上であることが好ましく、1.12以上であることがより好ましい。比Amax/Bminに上限値はないが、化合物Aとして使用可能なものの多くは比Amax/Bminが1.2以下であり、代表的なものは比Amax/Bminが1.15以下である。
【0052】
化合物Aとしては、複数の芳香環を有するモノマーや樹脂が好ましい。化合物Aは、例えば、フルオレン構造、ビスフェノール構造、ビフェニル構造、アントラセン構造、ナフタレン構造またはフェノール構造を含むものであることが好適である。その中でも、より高い屈折率を実現させるため、化合物Aは、フルオレン構造またはビスフェノール構造を含むことが好ましい。より好ましくは、化合物Aはフルオレン構造を含む。そのような化合物Aは、波長300乃至400nmの範囲内における屈折率が特に高い。
【0053】
このように、化合物Aは、光重合開始剤の吸収波長である紫外領域、即ち300乃至400nmの波長領域において高い屈折率を示す。したがって、化合物Aは、この波長領域における赤外線パスフィルタ用組成物の屈折率を高める。
【0054】
化合物Aは、アルカリ現像液に溶解するように酸性基を有するものであることが望ましい。酸性基としては、カルボキシル基が主に用いられる。化合物Aにおける、カルボキシル基を含んだ部分としては、例えば、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和トリカルボン酸などの不飽和多価カルボン酸などの分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸が挙げられる。ここで、不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α-クロルアクリル酸、ケイ皮酸などが挙げられる。不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸などが挙げられる。不飽和多価カルボン酸は、その酸無水物、具体的には無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などであってもよい。また、不飽和多価カルボン酸は、そのモノ(2-メタクリロイロキシアルキル)エステルであってもよく、例えば、コハク酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)、コハク酸モノ(2-メタクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2-メタクリロイロキシエチル)などであってもよい。不飽和多価カルボン酸は、その両末端ジカルボキシポリマーのモノ(メタ)アクリレートであってもよく、例えば、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノメタクリレートなどであってもよい。
【0055】
一例によると、化合物Aは、下記一般式(I)で示されるエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物である。
【0056】
【0057】
式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1乃至5のアルキル基、ハロゲン原子またはフェニル基を表し、R5は、水素原子またはメチル基を表し、Aは、-CO-、-SO2-、-C(CF3)2-、-Si(CH3)2-、-CH2-、-C(CH3)2-、-O-、9,9-フルオレニル基または直結合を表し、Xは4価のカルボン酸残基を表し、Y1およびY2は、それぞれ独立して水素原子または-OC-Z-(COOH)mを表す。但し、Zは2価または3価カルボン酸残基を表し、mは1乃至2の数を表す)を表し、nは1乃至20の整数を表す。
【0058】
一般式(I)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物は、ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物に、ジカルボン酸若しくはトリカルボン酸またはその酸一無水物とテトラカルボン酸またはその酸二無水物とを反応させて得られる。
【0059】
一般式(I)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物を与えるビスフェノール類としては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)エーテル、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)フルオレン、4,4'-ビフェノール、3,3'-ビフェノール、およびこれらの誘導体が挙げられる。これらの中では、上記一般式(I)において、Aが9,9-フルオレニル基を有するものが特に好適に利用される。
【0060】
一般式(I)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物を得る次のステップは、上記ビスフェノール類とエピクロルヒドリンを反応させて2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物を得るものである。この反応の際には、一般にジグリシジルエーテル化合物のオリゴマー化を伴うため、下記一般式(II)の化合物を得ることになる。
【0061】
【0062】
ここで、一般式(II)のR1、R2、R3、R4およびAは一般式(I)について上述したものと同義であり、lは0乃至10の整数である。好ましいR1、R2、R3およびR4は水素原子であり、好ましいAは9,9-フルオレニル基である。なお、通常、lが異なる複数の化合物が混在する。この化合物群におけるlの平均値は0乃至10の範囲内にあり(整数とは限らない)、好ましいlの平均値は0乃至3の範囲内にある。lを大きくすると、一般式(I)の化合物を含んだ組成物の粘度が大きくなりすぎて塗工がうまく行かなくなったり、アルカリ可溶性が十分に付与できずアルカリ現像性が非常に悪くなったりする可能性がある。
【0063】
次に、一般式(II)の化合物に(メタ)アクリル酸(アクリル酸若しくはメタクリル酸またはこれらの両方)を反応させ、得られたヒドロキシ基を有する反応生成物に、多塩基酸であるジカルボン酸類またはトリカルボン酸類の少なくとも1種類とテトラカルボン酸類の少なくとも1種類とを反応させてエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物を得る。一般式(I)で示されるエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物は、エチレン性不飽和二重結合とカルボキシル基とを併せ持つため、アルカリ現像型感光性樹脂組成物に優れた光硬化性、良現像性、パターニング特性を与えることができる。
【0064】
一般式(I)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物に利用されるジカルボン酸類としては、鎖式炭化水素ジカルボン酸またはその酸無水物や脂環式ジカルボン酸またはその酸無水物、芳香族ジカルボン酸やその酸無水物が使用される。ここで、鎖式炭化水素ジカルボン酸またはその酸無水物としては、例えば、コハク酸、アセチルコハク酸、マレイン酸、アジピン酸、イタコン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等の化合物があり、更には任意の置換基の導入されたジカルボン酸類またはその酸無水物でもよい。また、脂環式ジカルボン酸またはその酸無水物としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸等の化合物があり、更には任意の置換基の導入されたジカルボン酸類またはその酸無水物でもよい。更に、芳香族ジカルボン酸やその酸無水物としては、例えばフタル酸、イソフタル酸等の化合物があり、更には任意の置換基の導入されたジカルボン酸類またはその酸無水物でもよい。また、ジカルボン酸類の代わりに、トリカルボン酸類またはその酸一無水物を使用してもよく、係る具体例としては、例えばトリメリット酸またはその酸一無水物を挙げることができる。
【0065】
また、一般式(I)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物に利用されるテトラカルボン酸類としては、鎖式炭化水素テトラカルボン酸またはその酸二無水物や脂環式テトラカルボン酸またはその酸二無水物、または、芳香族多価カルボン酸またはその酸二無水物が使用される。ここで、鎖式テトラカルボン酸またはその酸無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸等があり、更には置換基の導入されたテトラカルボン酸類またはその酸二無水物でもよい。また、脂環式テトラカルボン酸またはその酸無水物としては、例えば、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸ノルボルナンテトラカルボン酸等があり、更には置換基の導入されたテトラカルボン酸類またはその酸二無水物でもよい。更に、芳香族テトラカルボン酸やその酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸またはその酸二無水物が挙げられ、更には置換基の導入されたテトラカルボン酸類またはその酸二無水物でもよい。
【0066】
一般式(I)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物に利用される(a)ジカルボン酸類と(b)テトラカルボン酸類との使用割合は、(a)と(b)とのモル比が例えば1:10乃至10:1、好ましくは1:5乃至1:1となる範囲である。一般式(I)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物におけるジカルボン酸類とテトラカルボン酸類との使用割合が上記範囲を逸脱すると最適分子量が得られず、アルカリ現像性、光透過性、耐熱性、耐溶剤性、パターン形状等が劣化するので好ましくない。なお、テトラカルボン酸類の使用割合が大きいほどアルカリ溶解性が大となり、分子量が大となる傾向がある。
【0067】
一般式(I)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物は、重量平均分子量(Mw)が2000乃至10000の範囲内にあることが好ましく、3000乃至7000の範囲内にあることが特に好ましい。重量平均分子量(Mw)が小さいと、現像時のパターンの密着性が維持できず、パターン剥がれが生じ易い。また、重量平均分子量(Mw)が大きいと、基板への密着性が高くなりすぎてしまい、残渣やパターン部の残膜が残り易くなる。
【0068】
一般式(I)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物は、その酸価が30乃至200KOHmg/gの範囲内にあることが望ましい。酸価が小さいと、アルカリ現像がうまくできないかまたは強アルカリ等の特殊な現像条件が必要となる。酸価が大きいと、アルカリ現像液の浸透が速く、剥離現像を生じ易い。
【0069】
一般式(I)のエポキシ(メタ)アクリレート酸付加物は、上述の方法で製造することができる。なお、一般式(II)のエポキシ化合物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させる方法としては、例えば、エポキシ化合物のエポキシ基と当モルの不飽和基含有モノカルボン酸を溶剤中に添加し、触媒(トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、2,6-ジイソブチルフェノール等)の存在下、空気を吹き込みながら90乃至120℃に加熱・攪拌して反応させるという方法がある。また、反応生成物であるエポキシアクリレート化合物の水酸基に酸無水物を反応させる方法としては、エポキシアクリレート化合物と酸二無水物および酸一無水物の所定量を溶剤中に添加し、触媒(臭化テトラエチルアンモニウム、トリフェニルホスフィン等)の存在下、90乃至130℃で加熱・攪拌して反応させるという方法がある。
【0070】
赤外線パスフィルタ用組成物の全固形分に占める化合物Aの割合は、5乃至38質量%、好ましくは10乃至38質量%、より好ましくは10乃至37質量%、更に好ましくは10乃至36質量%、更に好ましくは15乃至35質量%、更に好ましくは20乃至30質量%、更に好ましくは20乃至25質量%の範囲内にある。
【0071】
(重合性化合物)
重合性化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性(n=1)トリアクリレート、トリメチロールプロパンPO変性(n=2)トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性(n=1)トリアクリレート、トリメチロールプロパンEO変性(n=2)トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、イソシアヌル酸EO変性ジアクリレート、イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。重合性化合物として、好ましくは3官能アクリルモノマーを使用することができる。
【0072】
赤外線パスフィルタ用組成物の全固形分に占める重合性化合物の割合は、例えば1乃至20質量%、好ましくは3乃至15質量%、より好ましくは5乃至10質量%の範囲内にある。
【0073】
(バインダ樹脂)
バインダ樹脂は数種類のモノマーやオリゴマーを共重合させて得られる。バインダ樹脂を生成するモノマーおよびオリゴマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレートなどの各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルホルムアミド、アクリロニトリルなどが挙げられる。これらは、単独または2種類以上混合して用いることができる。
【0074】
バインダ樹脂は、アルカリ現像液に溶解するように酸性基を有するモノマーを共重合させたものであることが望ましい。酸性基としてはカルボキシル基が主に用いられ、カルボキシル基含有モノマーとしては、例えば、不飽和モノカルボン酸や、不飽和ジカルボン酸、不飽和トリカルボン酸などの不飽和多価カルボン酸などの分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有する不飽和カルボン酸が挙げられる。ここで、不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α-クロルアクリル酸、ケイ皮酸などが挙げられる。不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸などが挙げられる。不飽和多価カルボン酸は、その酸無水物、具体的には無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸などであってもよい。また、不飽和多価カルボン酸は、そのモノ(2-メタクリロイロキシアルキル)エステルであってもよく、例えば、コハク酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)、コハク酸モノ(2-メタクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2-メタクリロイロキシエチル)などであってもよい。不飽和多価カルボン酸は、その両末端ジカルボキシポリマーのモノ(メタ)アクリレートであってもよく、例えば、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノメタクリレートなどであってもよい。これらのカルボキシル基含有モノマーは、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0075】
バインダ樹脂の重量平均分子量は5000乃至20000の範囲内にあることが好ましい。重量平均分子量が小さいと、組成物中に含まれる化合物が低分子量の化合物のみになってしまい、フォトリソグラフィ法による塗膜のパターン形成時に露光部の硬化が不十分となり良好なパターン形状が得られない可能性がある。重量平均分子量が大きいと、現像液への溶解性が劣り、良好なパターンが得られない可能性がある。
【0076】
バインダ樹脂としては、熱硬化性樹脂を使用することができる。熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0077】
バインダ樹脂は、波長300乃至400nmの範囲内における屈折率の最大値Amaxと、波長400乃至800nmの範囲内における屈折率の最小値Bminとの比Amax/Bminが、1.0以上1.1未満であることが好ましく、1.0乃至1.05の範囲内にあることがより好ましい。
【0078】
赤外線パスフィルタ用組成物の全固形分に占めるバインダ樹脂の割合は、例えば1乃至20質量%、好ましくは1乃至10質量%、より好ましくは1乃至8質量%の範囲内にある。
【0079】
(光重合開始剤)
光重合開始剤としてはオキシム・エステル系開始剤、α-アミノアルキルフェノン系開始剤が好ましく、オキシム・エステル系開始剤がより好ましい。オキシム・エステル系開始剤は、オキシム・エステル化合物である。オキシム・エステル系開始剤としては、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)、α-アミノアルキルフェノン系開始剤としては、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-ジメチルアミノ-2-(4-メチル-ベンジル)-1-(4-モリフォリン-4-イル-フェニル)-ブタン-1-オンが挙げられる。
【0080】
また、他の光重合開始剤も併せて使用することができる。併せて使用できる光重合開始剤としては、例えば、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、および、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オンなどのアセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、および、ベンジルジメチルケタールなどのベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、および、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイドなどのベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサンソン、2-クロルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、および2、4-ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系光重合開始剤、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペロニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-クロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリル-s-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシーナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル(ピペロニル)-6-トリアジン、および2,4-トリクロロメチル(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジンなどのトリアジン系光重合開始剤、ボレート系光重合開始剤、カルバゾール系光重合開始剤、イミダゾール系光重合開始剤、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0081】
重合性化合物に対する光重合開始剤の質量比は、0.01乃至0.5の範囲内にあることが好ましく、0.05乃至0.4の範囲内にあることがより好ましい。重合性化合物に対する光重合開始剤の量が少ない場合、露光部の硬化が不十分となり、良好なパターン形状が得られない可能性がある。この量が多い場合、感度が過剰に高くなり、良好なパターン形状が得られない可能性がある。
【0082】
(溶剤)
溶剤としては、例えば、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ブチルセロソルブアセテート、1-メトキシ-2-プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル-nアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルトルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0083】
(添加剤)
また、赤外線パスフィルタ用組成物には、必要に応じて添加剤を入れてもよい。添加剤としては、例えば、重合禁止剤、界面活性剤、貯蔵安定剤、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0084】
重合禁止剤としては、例えばキノン系、ヒンダードフェノール系、ニトロソアミン系、フェノチアジン系などの重合禁止剤、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0085】
界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ソーダ、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、スチレン-アクリル酸共重合体のアルカリ塩、ステアリン酸ナトリウム、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン-アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、および、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、および、ポリエチレングリコールモノラウレートなどのノニオン性界面活性剤、アルキル4級アンモニウム塩、および、そのエチレンオキサイド付加物などのカオチン性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタインなどのアルキルベタイン、および、アルキルイミダゾリンなどの両性界面活性剤、シリコン系界面活性剤、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
貯蔵安定剤としては、例えば、ベンジルトリメチルクロライド、ジエチルヒドロキシアミンなどの4級アンモニウムクロライド、乳酸およびシュウ酸などの有機酸、そのメチルエーテル、t-ブチルピロカテコール、トリエチルホスフィンおよびトリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン、亜リン酸塩、または、それらの1つ以上を含んだ混合物を使用することができる。
【0086】
(塗膜のパターン形成)
フォトリソグラフィ法による塗膜のパターニングを行うために、ステッパー露光装置等の装置と、所定のパターンを有するフォトマスクとを用いることが好ましい。フォトマスクを介して塗膜を露光したのち、現像液により未露光部を除くことにより、パターンが形成される。
【0087】
現像液にはアルカリ性の現像液を用いることが好ましい。アルカリ性現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の無機アルカリ現像液、またはテトラヒドロキシアンモニウム等の有機アルカリ現像液を使用することができる。また、塗膜への濡れ性を高めるために、界面活性剤を現像液に含むことも好ましい。
【0088】
<3.固体撮像素子用フィルタおよび固体撮像素子>
上述の赤外線パスフィルタは、固体撮像素子用フィルタに用いることができる。
【0089】
すなわち、別の側面によれば、<1.赤外線パスフィルタ>の欄で説明した赤外線パスフィルタと、前記赤外線パスフィルタに対して各々が並置され、可視光に対する透過スペクトルが互いに異なる第1乃至第3フィルタを含んだカラーフィルタとを備えた固体撮像素子用フィルタが提供される。ここで、第1乃至第3フィルタは、例えば、赤色用フィルタ、緑色用フィルタ、および青色用フィルタとすることができる。
【0090】
更に別の側面によれば、上記の固体撮像素子用フィルタと、受光面に前記赤外線パスフィルタおよび前記第1乃至第3フィルタがそれぞれ配置された複数の光電変換素子とを備えた固体撮像素子が提供される。
【0091】
固体撮像素子用フィルタおよび固体撮像素子は、上述の赤外線パスフィルタを含むため、可視光をノイズとして感知しにくく、赤外線に対する感度が高いという効果を奏する。このため、とりわけ、明るい環境で使用した場合に、上記効果を顕著に発揮することができる。
【0092】
以下、
図1を参照して、一実施形態に係る固体撮像素子を説明する。
図1は、一実施形態に係る固体撮像素子の層構造を示す分解斜視図である。
【0093】
<固体撮像素子>
図1に示す固体撮像素子10は、例えば、CCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサである。固体撮像素子10は、互いに交差する二方向へ配列した複数の画素を備えている。各画素は、赤色用サブ画素、緑色用サブ画素、青色用サブ画素、および赤外線用サブ画素を備えている。また、各画素は、固体撮像素子用フィルタ10Fと光電変換素子群11とを備えている。なお、
図1では、図示の便宜上、固体撮像素子10のうち1つの画素に相当する部分のみを示している。
【0094】
光電変換素子群11は、赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11G、青色用光電変換素子11B、および赤外線用光電変換素子11Pを備えている。赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11G、青色用光電変換素子11B、および赤外線用光電変換素子11Pは、シリコンウエハ等の基板上に形成されている。各画素において、赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11G、青色用光電変換素子11B、および赤外線用光電変換素子11Pは、画素の配列方向に対して平行な面内で隣り合うように配置されている。
【0095】
一例によれば、赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11G、青色用光電変換素子11B、および赤外線用光電変換素子11Pは、分光感度が互いに等しい。各画素の赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11G、青色用光電変換素子11B、および赤外線用光電変換素子11Pは、固体撮像素子用フィルタ10Fと組み合わされることにより、それぞれ、この画素に入射した赤色光、緑色光、青色光、および赤外線の強度を検出可能である。赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11G、青色用光電変換素子11B、および赤外線用光電変換素子11Pの1以上と他の1以上とは、分光感度が異なっていてもよい。
【0096】
固体撮像素子用フィルタ10Fは、カラーフィルタ12Cと、赤外線パスフィルタ12Pと、赤外線カットフィルタ13と、平坦化層14と、複数のマイクロレンズ15R、15G、15Bおよび15Pとを備えている。カラーフィルタ12Cは、赤色用フィルタ12R、緑色用フィルタ12G、および青色用フィルタ12Bを備えている。
【0097】
赤色用光電変換素子11R、赤色用フィルタ12R、赤外線カットフィルタ13のうち赤色用フィルタ12Rと向き合った部分、平坦化層14のうち赤色用フィルタ12Rと向き合った部分、およびマイクロレンズ15Rは、赤色用サブ画素を構成している。緑色用光電変換素子11G、緑色用フィルタ12G、赤外線カットフィルタ13のうち緑色用フィルタ12Gと向き合った部分、平坦化層14のうち緑色用フィルタ12Gと向き合った部分、およびマイクロレンズ15Gは、緑色用サブ画素を構成している。青色用光電変換素子11B、青色用フィルタ12B、赤外線カットフィルタ13のうち青色用フィルタ12Bと向き合った部分、平坦化層14のうち青色用フィルタ12Bと向き合った部分、およびマイクロレンズ15Bは、青色用サブ画素を構成している。赤外線用光電変換素子11P、赤外線パスフィルタ12P、平坦化層14のうち赤外線パスフィルタ12Pと向き合った部分、およびマイクロレンズ15Pは、赤外線用サブ画素を構成している。
【0098】
ここでは、カラーフィルタ12Cおよび赤外線パスフィルタ12Pは、光電変換素子群11が形成された基板上に直接設けられている。密着性の向上のために、カラーフィルタ12Cおよび赤外線パスフィルタ12Pのための下地層として、基板上に平坦化層を設けてもよい。
【0099】
以下、カラーフィルタ12C、赤外線パスフィルタ12P、赤外線カットフィルタ13、平坦化層14、マイクロレンズ15R、15G、15Bおよび15Pについて順に説明する。
【0100】
<カラーフィルタ>
カラーフィルタ12Cは、赤色用フィルタ12R、緑色用フィルタ12G、および青色用フィルタ12Bから構成されている。赤色用フィルタ12Rは、赤色用光電変換素子11Rに対して光の入射側に位置している。緑色用フィルタ12Gは、緑色用光電変換素子11Gに対して光の入射側に位置している。青色用フィルタ12Bは、青色用光電変換素子11Bに対して光の入射側に位置している。
【0101】
赤色用フィルタ12R、緑色用フィルタ12G、および青色用フィルタ12Bの各々は、着色性感光性樹脂を含む塗膜の形成、およびフォトリソグラフィ法を用いた塗膜のパターニングによって形成される。例えば、赤色用感光性樹脂を含む塗膜は、赤色用感光性樹脂を含む塗布液の塗布、および塗膜の乾燥によって形成される。赤色用フィルタ12Rは、赤色用感光性樹脂を含む塗膜のうち赤色用フィルタ12Rに相当する領域に対する露光、および現像を経て形成される。なお、緑色用フィルタ12Gおよび青色用フィルタ12Bも赤色用フィルタ12Rと同様の方法によって形成される。
【0102】
赤色用フィルタ12R、緑色用フィルタ12G、および青色用フィルタ12Bの着色性組成物に含有される着色材としては、有機または無機の顔料を、単独でまたは2種類以上混合して用いることができる。顔料は、発色性が高く、且つ耐熱性の高い顔料、特に耐熱分解性の高い顔料が好ましく、通常は有機顔料が用いられる。使用することができる顔料としては、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、キナクリドン系、ジオキサジン系、アンサンスロン系、インダンスロン系、ペリレン系、チオインジゴ系、イソインドリン系、キノフタロン系、ジケトピロロピロール系などの有機顔料が挙げられる。以下に、着色性組成物に使用可能な有機顔料の具体例を、カラーインデックス番号で示す。
【0103】
青色の着色性組成物に用いられる着色材としては、例えばC.I.Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、81等の顔料が挙げられ、中でもC.I.Pigment Blue 15:6が好ましい。
【0104】
赤色の着色性組成物に用いられる着色材としては、例えばC.I.Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、246、254、255、264、272、C.I.Pigment Orange 36、43、51、55、59、61、71、73等の赤色顔料、および必要に応じ調色用として、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、138、139、147、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、198、199、213、214等を用いて得られる組成物である。
【0105】
また、緑色の着色性組成物に用いられる着色材としては、例えばC.I.Pigment Green 7、10、36、37、58、59等の緑色顔料、および必要に応じ調色用として、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、126、127、128、129、138、139、147、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、198、199、213、214等を用いて得られる組成物である。
【0106】
<赤外線パスフィルタ>
赤外線パスフィルタ12Pは、赤外線用光電変換素子11Pに対して光の入射側に位置している。赤外線パスフィルタ12Pの構造および材料は、上記で説明したとおりである。
【0107】
赤外線パスフィルタ12Pは、可視領域の光を遮断し、近赤外領域の光を透過する光学フィルタである。すなわち、赤外線パスフィルタ12Pは、赤外線用光電変換素子11Pが検出し得る赤外線を透過させるとともに、赤外線用光電変換素子11Pが検出し得る可視光をカットする。それによって、赤外線用光電変換素子11Pによる赤外線の検出精度が高められる。赤外線用光電変換素子11Pが検出し得る赤外線は、900nm乃至1100nmの範囲内の波長を有した近赤外線である。
【0108】
赤外線パスフィルタ12Pは、赤色用フィルタ12R、緑色用フィルタ12G、および青色用フィルタ12Bと厚さがほぼ等しい。それらは、厚さが異なっていてもよい。例えば、赤外線パスフィルタ12Pは、赤色用フィルタ12R、緑色用フィルタ12G、および青色用フィルタ12Bよりも厚くてもよい。この構成であれば、赤外線パスフィルタ12Pにおいて可視光の非透過性を向上可能である。
【0109】
<赤外線カットフィルタ>
赤外線カットフィルタ13は、カラーフィルタ12Cに対し光の入射側に位置している。赤外線カットフィルタ13は、赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11Gおよび青色用光電変換素子11Bへ向けて進行する光のうち、それら素子がノイズとして検出し得る波長帯の赤外線を、カットする。それによって、赤色用光電変換素子11R、緑色用光電変換素子11Gおよび青色用光電変換素子11Bの検出精度を高める。
【0110】
赤外線カットフィルタ13は、赤外線パスフィルタ12Pに対する光の入射側には位置していない。ここでは、赤外線カットフィルタ13は、
図1が示すように、赤外線パスフィルタ12Pの位置に貫通孔13Hを有している。
【0111】
また、赤外線カットフィルタ13は、カラーフィルタ12Cに対し光の入射側に位置した部分に加え、赤外線パスフィルタ12Pに対し光の入射側に位置した部分を更に備えていてもよい。この場合、赤外線カットフィルタ13は、例えば、700nm以上900nm未満の波長を有した近赤外線を遮断する構成とする。この構成とすることで、赤外用光電変換素子11Pは、900乃至1100nmの波長を有した近赤外線をより高い感度で検出することができる。
【0112】
赤外線カットフィルタ13の構成材料は、赤外線吸収色材を含む透明樹脂である。赤外線吸収色材は、例えば、アントラキノン系色素、シアニン系色素、フタロシアニン系色素、ジチオール系色素、ジイモニウム系色素、スクアリリウム系色素、クロコニウム系色素である。透明樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノルボルネン系樹脂である。赤外線カットフィルタ13は、塗布法などの液相成膜法を用いた成膜によって形成される。赤外線カットフィルタ13は省略することができる。
【0113】
<平坦化層>
平坦化層14は、赤外線カットフィルタ13上に設けられた連続膜である。平坦化層14は、赤外線カットフィルタ13の上面を被覆するとともに、赤外線カットフィルタ13の貫通孔を埋め込んでいる。平坦化層14は、例えば、透明樹脂などの透明材料からなる。平坦化層14は、マイクロレンズ15R、15G、15Bおよび15Pに対して、略平坦な下地面を提供して、これらの加工精度を高める。平坦化層14は、省略することができる。
【0114】
<マイクロレンズ>
マイクロレンズ15R、15G、15B、および15Pは、平坦化層14上に配置されている。マイクロレンズ15R、15G、15B、および15Pは、ここでは、凸レンズである。マイクロレンズ15R、15G、15B、および15Pは、それぞれ、赤色用フィルタ12R、緑色用フィルタ12G、青色用フィルタ12B、および赤外線パスフィルタ12Pと向き合っている。
【実施例0115】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限られるものではない。
【0116】
<黒色着色材分散体の合成>
着色材、分散剤および溶剤を、下記の配合で攪拌混合して、均質な混合液を得た。
着色材 BASF社製Lumogen Black K0088:12.0質量部
分散剤 ビックケミー・ジャパン社製Disperbyk-2001(固形分46%):17.4質量部
溶剤 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート:70.6質量部
その後、上記の混合液に対し、直径0.1mmのジルコニアビーズと、分散機であるDISPERMAT(登録商標) LC55(英弘精機社製)とを用いた1.5時間の分散処理を行った。その後、この混合液を5μmのフィルタで濾過し、黒色着色材分散体を得た。
【0117】
<バインダ樹脂の合成>
60質量部のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートと、32質量部のメタクリル酸ベンジルと、8質量部のメタクリル酸と、0.60質量部のベンゾイルペルオキシドとを準備した。これらを攪拌装置と還流管とが設置された反応容器に入れ、反応容器に窒素ガスを導入しつつ、80℃に加熱しながら8時間にわたって攪拌および還流した。これにより、バインダ樹脂を得た。
【0118】
<化合物Aの準備>
化合物Aとして、フルオレン骨格を有するエポキシアクリレートの酸無水物重縮合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分濃度=56.1質量%、新日鉄住金化学(株)社製、V259ME)を用いた。
【0119】
<重合性化合物および光重合開始剤の準備>
重合性化合物として、トリメチロールプロパンEO変性(n=1)トリアクリレート(製品名:M-350、東亞合成株式会社)を用いた。光重合開始剤として、オキシム・エステル系開始剤(製品名:OXE-02、BASF社)を用いた。
【0120】
<溶剤の準備>
溶剤として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを用いた。
【0121】
<着色性組成物の調液>
下記表1、表2に示す各成分を、表1、表2に示す質量部で準備し、均一になるように1時間攪拌混合した。攪拌混合後、混合溶液を0.45μmのフィルタで濾過し、着色性組成物1乃至8を得た。
【0122】
【0123】
【0124】
<分光特性を評価するための基板の作製>
着色性組成物1乃至8をガラス基板上にスピンコータにて、ベーク処理後の膜厚が1.5μmになるように塗布した。塗布後、100℃のホットプレートで2分間ベーク処理を行って、例1A乃至8Aのフィルタを得た。
【0125】
<分光特性の評価>
例1A乃至8Aのフィルタの各々について、分光光度計U-4100(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて波長400乃至1100nmの光の透過率を測定した。分光特性の評価は、以下に示す基準で行った。
〇:波長400乃至800nmの光の平均透過率10%未満
×:波長400乃至800nmの光の平均透過率10%以上
表3に、波長400乃至800nmの光の平均透過率と、900乃至1100nmの光の平均透過率と、評価結果とを示す。
【0126】
【0127】
<屈折率特性を評価するための基板の作製>
化合物A、すなわち、フルオレン骨格を有するエポキシアクリレートの酸無水物重縮合物のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液(樹脂固形分濃度=56.1質量%、新日鉄住金化学(株)社製、V259ME)をシリコンウエハ基板上にスピンコータにて、ベーク処理後の膜厚が0.3μmになるように塗布した。塗布後、230℃のホットプレートで3分間ベーク処理を行って、屈折率測定用基板を得た。
【0128】
化合物Aの代わりに、バインダ樹脂、すなわち、上記の<バインダ樹脂の合成>の欄に記載の手順に従って調製したバインダ樹脂を用いて、上記手順と同様の手順で屈折率測定用基板を得た。
【0129】
<屈折率特性の評価>
エリプソメータ(ジェー・エー・ウーラム・ジャパン製:VUV-VASE)を用いて前記基板の屈折率を測定した。表4に、波長300乃至400nmの屈折率の最大値Amaxと、波長400乃至800nmの屈折率の最小値Bminとの比Amax/Bminを示す。
【0130】
【0131】
<矩形性を評価するための基板の作製>
平坦化層を形成したシリコンウエハ上に、着色性組成物1乃至8をスピンコータにて、ベーク後の膜厚が1.5μmになるように塗布した。塗布後、100℃のホットプレートで2分間ベーク処理を行った。その後、一辺の長さが2.0μmまたは1.8μmの正方形状を有している透過部が互いから離間するように設けられたフォトマスクを用いて、露光機(キヤノン株式会社製:FPA-5510iZ)にて、露光量1000乃至10000J/m2の範囲で500J/m2間隔で露光を実施した。その後、水酸化テトラアンモニウム(TMAH)0.2%水溶液にて現像を実施し、水洗、乾燥を行い、例1B乃至8Bの基板を得た。
【0132】
<矩形性の評価>
走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製:S-4800)を用いて、上記方法で得られた各パターン、即ち赤外線パスフィルタの断面について観察を行い、
図2を参照しながら説明した幅Tおよび幅Sを測定し、比T/Sを算出した。矩形性の評価は、以下に示す基準で行った。
◎:T/Sが0.8以上
〇:T/Sが0.75以上、0.8未満
△:T/Sが0.7以上、0.75未満
×:T/Sが0.7未満
-:パターンはがれ
一辺の長さを2.0μmとした場合、赤外線パスフィルタの高さHと最大幅Wとの比H/Wは、0.75であった。一片の長さを1.8μmとした場合、赤外線パスフィルタの高さHと最大幅Wとの比H/Wは、0.83であった。
【0133】
表5に矩形性の評価結果を示す。
【0134】
【0135】
着色性組成物の固形分中の化合物Aの割合が15乃至35質量%である場合、比T/Sは0.7以上であり、パターン断面の矩形性が良好であった(例1B、2B、3B、5B、および6B)。着色性組成物の固形分中の化合物Aの割合が20乃至30質量%である場合、比T/Sは0.75以上であり、パターン断面の矩形性が特に良好であった(例1B、2B、および3B)。
【0136】
これに対し、化合物Aを含まない例4Bの場合、一片の長さを1.8μmとしたときにはパターンはがれが起こり、一片の長さを2.0μmとしたときにはパターン断面の矩形性が低かった。化合物Aを含まない例8Bの場合、着色性組成物中のバインダ樹脂の配合量が多い点で例4Bとは異なるが、一片の長さを1.8μmとしたときにパターン断面の矩形性が低かった。
【0137】
また、着色性組成物の固形分中の化合物Aの割合が40質量%である場合、パターンはがれが起こった(例7B)。
【0138】
以上の結果から、赤外線パスフィルタの材料に化合物Aを所定の配合割合で添加すると、赤外線パスフィルタのパターン断面の矩形性を向上させることができることが分かる。パターン断面の矩形性が良好な赤外線パスフィルタは、画素の角においても可視光を効果的に遮断することができ、また、隣接するカラーフィルタの一部が赤外線用の光電変換素子の上に形成され難い。このため、かかる赤外線パスフィルタは、固体撮像素子の赤外線に対する感度を向上させることができる。
10…固体撮像素子、10F…固体撮像素子用フィルタ、11…光電変換素子群、11R…赤色用光電変換素子、11G…緑色用光電変換素子、11B…青色用光電変換素子、11P…赤外線用光電変換素子、12C…カラーフィルタ、12R…赤色用フィルタ、12G…緑色用フィルタ、12B…青色用フィルタ、12P…赤外線パスフィルタ、13…赤外線カットフィルタ、13H…貫通孔、14…平坦化層、15R…赤色用マイクロレンズ、15G…緑色用マイクロレンズ、15B…青色用マイクロレンズ、15P…赤外線用マイクロレンズ。