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  • 特開-ゴルフボール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160402
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
   A63B 37/00 20060101AFI20231026BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20231026BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
A63B37/00 316
A63B37/00 328
C08L101/00
C08L71/00 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070762
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】新藤 絢香
(72)【発明者】
【氏名】重光 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一喜
(72)【発明者】
【氏名】多羅尾 俊之
(72)【発明者】
【氏名】河村 幸伸
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002BB232
4J002CH022
4J002GC01
(57)【要約】
【課題】反発性を低下させることなく、打球感が良好で、耐久性に優れるゴルフボールを提供する。
【解決手段】
本発明のゴルフボールは、球状コアと、前記球状コアの外側に配置された一層以上のカバーとを有するゴルフボールであって、前記カバーの少なくとも一層が、(A)基材樹脂と、(B)ポリエチレンオキシドとを含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状コアと、前記球状コアの外側に配置された一層以上のカバーとを有するゴルフボールであって、
前記カバーの少なくとも一層が、(A)基材樹脂と、(B)ポリエチレンオキシドとを含有することを特徴とするゴルフボール。
【請求項2】
前記(B)ポリエチレンオキシドの配合量が、(A)基材樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上、30質量部以下である請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
前記(B)ポリエチレンオキシドの数平均分子量が、400以上、700万以下である請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項4】
前記(A)基材樹脂と(B)ポリエチレンオキシドとを含有するカバー層の材料硬度が、ショアD硬度で、59~69である請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項5】
前記(A)基材樹脂が、アイオノマー樹脂を含有するものである請求項1に記載のゴルフボール。
【請求項6】
球状コアと、前記球状コアの外側に配置された一層以上のカバーとを有するゴルフボールであって、
前記カバーの少なくとも一層が、(A)アイオノマー樹脂を含有する基材樹脂100質量部に対して、(B)数平均分子量が、400以上、700万以下であるポリエチレンオキシドを0.1質量部以上、30質量部以下含有することを特徴とするゴルフボール。
【請求項7】
最外層カバーが、(A)基材樹脂と、(B)ポリエチレンオキシドとを含有する請求項1~6のいずれか一項に記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフボールのカバーの改良技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールのカバーや中間層などを構成する樹脂成分として、アイオノマー樹脂やポリウレタンなどの熱可塑性樹脂が使用されている。アイオノマー樹脂は、高剛性であり、ゴルフボールの構成部材として使用すると、反発性が高くなり、飛距離の大きいゴルフボールが得られる。そのため、アイオノマー樹脂は、ゴルフボールを構成する中間層やカバーの材料として広く使用されている。
【0003】
そして、ゴルフボールは、飛距離性能だけでなく、耐久性、打球感といった性能も求められる。
【0004】
特許文献1には、球状コアと、前記球状コアの外側に配置された一層以上のカバーとを有するゴルフボールであって、
前記カバーの少なくとも一層が、(A)基材樹脂と、(B)ポリロタキサンとを含有し、
(A)前記基材樹脂は、(a-1)アイオノマー樹脂を含有し、
(A)前記基材樹脂の材料硬度は、ショアD硬度で、59以上であり、
(B)前記ポリロタキサンは、シクロデキストリンと前記シクロデキストリンの環状構造を串刺し状にする直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され、前記シクロデキストリンの脱離を防止する封鎖基とを有し、前記シクロデキストリンの水酸基の少なくとも一部が、-O-C-O-基を介して、カプロラクトン鎖によって変性されたポリロタキサンであることを特徴とするゴルフボールが開示されている。
【0005】
特許文献2には、球状コアと、前記球状コアの外側に配置された一層以上のカバーとを有するゴルフボールであって、
前記カバーの少なくとも一層が、(A)基材樹脂と、(B)ポリロタキサンとを含有し、
(A)前記基材樹脂は、(a-1)アイオノマー樹脂を含有し、
(A)前記基材樹脂の材料硬度は、ショアD硬度で、58以下であり、
(B)前記ポリロタキサンは、シクロデキストリンと前記シクロデキストリンの環状構造を串刺し状にする直鎖状分子と、この直鎖状分子の両末端に配置され、前記シクロデキストリンの脱離を防止する封鎖基とを有し、前記シクロデキストリンの水酸基の少なくとも一部が、-O-C-O-基を介して、カプロラクトン鎖によって変性されたポリロタキサンであることを特徴とするゴルフボールが開示されている。
【0006】
特許文献3には、少なくとも一つの層のコア、コアの周りに同心円状に配置された少なくとも一つの層のカバーを含むゴルフボールであって、カバー又はコアの少なくとも一つがシリコーン-尿素コポリマーを含むことを特徴とするゴルフボールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-102692号公報
【特許文献2】特開2018-102694号公報
【特許文献3】特開2003-394733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、反発性を低下させることなく、打球感が良好で、耐久性に優れるゴルフボールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決することができた本発明のゴルフボールは、球状コアと、前記球状コアの外側に配置された一層以上のカバーとを有するゴルフボールであって、前記カバーの少なくとも一層が、(A)基材樹脂と、(B)ポリエチレンオキシドとを含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、反発性を低下させることなく、打球感が良好で、耐久性に優れるゴルフボールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された一部切り欠き断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のゴルフボールは、球状コアと、前記球状コアの外側に配置された一層以上のカバーとを有するゴルフボールであって、前記カバーの少なくとも一層が、(A)基材樹脂と、(B)ポリエチレンオキシドとを含有することを特徴とする。
【0013】
まず、カバー層が含有する(A)基材樹脂と(B)ポリエチレンオキシドについて説明する。
【0014】
[(A)基材樹脂]
前記(A)基材樹脂としては、特に限定されないが、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれであってもよいが、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0015】
前記(A)基材樹脂としては、例えば、アイオノマー樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエチレンなどの熱可塑性樹脂;ポリウレタンエラストマー、スチレンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマーなどの熱可塑性エラストマー;エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体などのオレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体;エチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体などのオレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体などが挙げられる。
【0016】
本発明で使用する(A)基材樹脂としては、比較的硬質なものが好ましい。前記(A)基材樹脂の材料硬度は、ショアD硬度で59以上が好ましく、より好ましくは60以上、さらに好ましくは61以上であり、69以下が好ましく、より好ましくは68以下、さらに好ましくは67以下である。(A)基材樹脂の材料硬度が、ショアD硬度で59以上であれば、得られるゴルフボールの反発性がより向上する。また、前記(A)基材樹脂の材料硬度が、ショアD硬度で69以下であれば、繰り返し打撃による耐久性の低下をより抑制することができる。基材樹脂の材料硬度は、基材樹脂をシート状に成形して測定したスラブ硬度である。
【0017】
前記(A)基材樹脂は、特にアイオノマー樹脂を含有することが好ましい。この場合、(A)基材樹脂におけるアイオノマー樹脂の含有率は、40質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。前記含有率が40質量%以上であれば、得られるゴルフボールの反発性がより向上するからである。なお、前記(A)基材樹脂は、アイオノマー樹脂のみを含有することも好ましい態様である。
【0018】
前記アイオノマー樹脂としては、オレフィンと、炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂;オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂;または、これらの混合物を挙げることができる。
【0019】
なお、本発明において、「オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸との二元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂」を単に「二元系アイオノマー樹脂」と称し、「オレフィンと炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸とα,β-不飽和カルボン酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物からなるアイオノマー樹脂」を単に「三元系アイオノマー樹脂」と称する場合がある。
【0020】
前記オレフィンとしては、炭素数が2~8個のオレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン等を挙げることができ、特にエチレンであることが好ましい。前記炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられ、特にアクリル酸またはメタクリル酸が好ましい。また、α,β-不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸等のメチル、エチル、プロピル、n-ブチル、イソブチルエステル等が用いられ、特にアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。
【0021】
前記二元系アイオノマー樹脂としては、エチレン-(メタ)アクリル酸二元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。前記三元系アイオノマー樹脂としては、エチレンと(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸エステルとの三元共重合体の金属イオン中和物が好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸および/またはメタクリル酸を意味する。
【0022】
前記二元系アイオノマー樹脂中の炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸成分の含有率は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、16質量%以上がさらに好ましく、17質量%以上が最も好ましく、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましい。炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸成分の含有率が、5質量%以上であれば、得られる構成部材を所望の硬度にしやすくなるからである。また、炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸成分の含有率が、30質量%以下であれば、得られる構成部材の硬度が高くなり過ぎず、耐久性と打球感がより良好になる。
【0023】
前記二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、15モル%以上が好ましく、20モル%以上が好ましく、90モル%以下が好ましく、85モル%以下がより好ましい。中和度が15モル%以上であれば、得られるゴルフボールの反発性および耐久性が、より良好になる。一方、中和度が90モル%以下であれば、カバーの材料の流動性が良好になる(成形性が良い)。なお、前記二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、下記式で求めることができる。
【0024】
二元系アイオノマー樹脂の中和度(モル%)=100×二元系アイオノマー樹脂中の中和されているカルボキシル基のモル数/二元系アイオノマー樹脂中のカルボキシル基の総モル数
【0025】
前記二元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。前記二元系アイオノマー樹脂としては、ナトリウムで中和された二元系アイオノマー樹脂と、亜鉛で中和された二元系アイオノマー樹脂との混合物を使用することが好ましい。これらの混合物を使用することにより、反発性と耐久性とがさらに向上する。
【0026】
前記二元系アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井・デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミラン1555(Na)、ハイミラン1557(Zn)、ハイミラン1605(Na)、ハイミラン1702(Zn)、ハイミラン1706(Zn)、ハイミラン1707(Na)、ハイミランAM7311(Mg)、ハイミランAM7329(Zn)、ハイミランAM7337(Na)など)」が挙げられる。
【0027】
さらにデュポン社から市販されている「サーリン(Surlyn)(登録商標)(例えば、サーリン8945(Na)、サーリン9945(Zn)、サーリン8140(Na)、サーリン8150(Na)、サーリン9120(Zn)、サーリン9150(Zn)、サーリン6910(Mg)、サーリン6120(Mg)、サーリン7930(Li)、サーリン7940(Li)、サーリンAD8546(Li))」などが挙げられる。
【0028】
またエクソンモービル化学(株)から市販されているアイオノマー樹脂としては、「アイオテック(Iotek)(登録商標)(例えば、アイオテック8000(Na)、アイオテック8030(Na)、アイオテック7010(Zn)、アイオテック7030(Zn))」などが挙げられる。
【0029】
前記二元系アイオノマー樹脂は、例示のものをそれぞれ単独または2種以上の混合物として用いてもよい。前記商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Li、Mgなどは、これらの中和金属イオンの金属種を示している。
【0030】
前記二元系アイオノマー樹脂の曲げ剛性率は、140MPa以上が好ましく、より好ましくは150MPa以上、さらに好ましくは160MPa以上であり、550MPa以下が好ましく、より好ましくは500MPa以下、さらに好ましくは450MPa以下である。曲げ剛性率が上記範囲内であれば、ドライバーショットのスピン量が適正化され飛距離性能に優れるとともに、耐久性も良好となる。
【0031】
前記二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)は、0.1g/10min以上が好ましく、より好ましくは0.5g/10min以上、さらに好ましくは1.0g/10min以上であり、30g/10min以下が好ましく、より好ましくは20g/10min以下、さらに好ましくは15g/10min以下である。前記二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が0.1g/10min以上であれば、カバー材料の流動性が良好となり、例えば、得られるカバーの薄肉化が可能となる。また、前記二元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が30g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0032】
前記三元系アイオノマー樹脂中の炭素数3~8個のα,β-不飽和カルボン酸成分の含有率は、2質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下である。
【0033】
前記三元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、20モル%以上が好ましく、より好ましくは30モル%以上であり、90モル%以下が好ましく、より好ましくは85モル%以下である。中和度が20モル%以上であれば、得られるゴルフボールの反発性および耐久性が良好になり、90モル%以下であれば、カバーの材料の流動性が良好になる(成形性が良い)。なお、アイオノマー樹脂のカルボキシル基の中和度は、下記式で求めることができる。
アイオノマー樹脂の中和度(モル%)=100×アイオノマー樹脂中の中和されているカルボキシル基のモル数/アイオノマー樹脂中のカルボキシル基の総モル数
【0034】
前記三元系アイオノマー樹脂のカルボキシル基の少なくとも一部を中和する金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。
【0035】
前記三元系アイオノマー樹脂の具体例を商品名で例示すると、三井デュポンポリケミカル(株)から市販されている「ハイミラン(Himilan)(登録商標)(例えば、ハイミランAM7327(Zn)、ハイミラン1855(Zn)、ハイミラン1856(Na)、ハイミランAM7331(Na)など)」が挙げられる。さらにデュポン社から市販されている三元系アイオノマー樹脂としては、「サーリン6320(Mg)、サーリン8120(Na)、サーリン8320(Na)、サーリン9320(Zn)、サーリン9320W(Zn)など)」が挙げられる。またエクソンモービル化学(株)から市販されている三元系アイオノマー樹脂としては、「アイオテック7510(Zn)、アイオテック7520(Zn)など)」が挙げられる。なお、商品名の後の括弧内に記載したNa、Zn、Mgなどは、中和金属イオンの種類を示している。前記三元系アイオノマー樹脂は、単独または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
前記三元系アイオノマー樹脂の曲げ剛性率は、10MPa以上が好ましく、より好ましくは11MPa以上、さらに好ましくは12MPa以上であり、100MPa以下が好ましく、より好ましくは97MPa以下、さらに好ましくは95MPa以下である。曲げ剛性率が上記範囲内であれば、ドライバーショットのスピン量が適正化され飛距離性能に優れるとともに、耐久性も良好となる。
【0037】
前記三元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)は、0.1g/10min以上が好ましく、より好ましくは0.3g/10min以上、さらに好ましくは0.5g/10min以上であり、20g/10min以下が好ましく、より好ましくは15g/10min以下、さらに好ましくは10g/10min以下である。前記三元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が0.1g/10min以上であれば、カバー材料の流動性が良好となり、薄い構成部材の成形が可能となる。また、前記三元系アイオノマー樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が20g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0038】
(A)前記基材樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)は、0.1g/10min以上が好ましく、より好ましくは0.3g/10min以上、さらに好ましくは0.5g/10min以上であり、45g/10min以下が好ましく、より好ましくは40g/10min以下、さらに好ましくは35g/10min以下である。(A)前記基材樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が0.1g/10min以上であれば、カバー材料の流動性が良好となり、薄い構成部材の成形が可能となる。また、(A)前記基材樹脂のメルトフローレイト(190℃、2.16kg荷重)が45g/10min以下であれば、得られるゴルフボールの耐久性がより良好となる。
【0039】
[(B)ポリエチレンオキシド]
前記(B)ポリエチレンオキシドは、繰り返し単位として、オキシエチレン(-CHCHO-)を有するポリマーである。前記(B)ポリエチレンオキシドは、(A)基材樹脂に微分散して、得られるゴルフボールの反発性を低下させることなく、耐久性および打球感を高めることができる。
【0040】
前記(B)ポリエチレンオキシドとしては、例えば、活性水素原子を有する基(-NH-又は-OH)を2個以上有する化合物の1種又は2種以上を開始剤として、エチレンオキシドを付加重合させたものが挙げられる。
【0041】
前記開始剤としては、1種又は2種以上を用いることができ、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ビスフェノールA等の水酸基を2個有する化合物;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の水酸基を3個有する化合物などが挙げられる。
【0042】
本発明において、前記(B)ポリエチレンオキシドとしては、エチレンオキシドを開環重合して得られたポリマーであり、両末端にヒドロキシ基を有することが好ましい。
【0043】
前記(B)ポリエチレンオキシドの数平均分子量としては、400以上が好ましく、700以上がより好ましく、1000以上がさらに好ましく、3000以上が特に好ましく、10000以上が最も好ましく、700万以下が好ましく、600万以下がより好ましく、500万以下がさらに好ましく、200万以下が特に好ましく、100万以下が最も好ましい。(B)ポリエチレンオキシドの数平均分子量が前記範囲内であれば、耐久性および打球感がバランスよく向上したゴルフボールが得られる。
【0044】
本発明のゴルフボールのカバーの少なくとも一層は、樹脂成分として、(A)基材樹脂および(B)ポリエチレンオキシドを含有するカバー用組成物から形成される。(A)基材樹脂および(B)ポリエチレンオキシドを含有するカバー層は、(A)基材樹脂100質量部に対して、(B)ポリエチレンオキシドを0.1質量部以上含有することが好ましく、0.5質量部以上含有することがより好ましく、1.0質量部以上含有することがさらに好ましく、30質量部以下含有することが好ましく、20質量部以下含有することが好ましく、10質量部以下含有することがさらに好ましい。(B)ポリエチレンオキシドの含有量が0.1質量部以上であれば、得られるゴルフボールの耐久性および打球感がより向上し、30質量部以下であれば、ゴルフボール成型時の離形性に影響を及ぼさないからである。
【0045】
(A)基材樹脂として、アイオノマー樹脂を使用する場合、カバー層における全樹脂成分に対する(A)アイオノマー樹脂と(B)ポリエチレンオキシドとの合計含有率は、40質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。前記合計含有率が40質量%以上であれば、得られるゴルフボールの反発性がより向上するからである。前記合計含有率の上限は、特に限定されるものではないが、100質量%が好ましい。
【0046】
[(C)添加剤]
(A)基材樹脂および(B)ポリエチレンオキシドを含有するカバー層には、さらに、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などの(C)添加剤を、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0047】
本発明において、(A)基材樹脂および(B)ポリエチレンオキシドを含有するカバー層の材料硬度は、ショアD硬度で、59以上が好ましく、60以上がより好ましく、61以上がさらに好ましく、69以下が好ましく、68以下がより好ましく、67以下がさらに好ましい。前記材料硬度が、ショアD硬度で59以上であれば、得られるゴルフボールの反発低下を抑制できるからである。また、前記材料硬度が、ショアD硬度で69以下であれば、得られるゴルフボールの打球感が良好となるからである。(A)基材樹脂および(B)ポリエチレンオキシドを含有するカバー層の材料硬度は、(A)基材樹脂および(B)ポリエチレンオキシドを含有するカバー用組成物をシート状に成形して測定したスラブ硬度である。
【0048】
本発明のゴルフボールが複数のカバーを有する場合、カバーの少なくとも一層が、前記(A)基材樹脂および(B)ポリエチレンオキシドを含有していればよい。即ち、ゴルフボールが複数のカバーを有する場合、前記カバーの態様としては、すべてのカバー層が前記(A)基材樹脂および(B)ポリエチレンオキシドを含有する態様;一部のカバー層が前記(A)基材樹脂および(B)ポリエチレンオキシドを含有し、その他のカバー層が前記(A)基材樹脂および(B)ポリエチレンオキシドを共に含有しない態様が挙げられる。この場合、最外層カバーが、(A)基材樹脂および(B)ポリエチレンオキシドを含有することが好ましい。なお、2つ以上のカバー層が前記(A)基材樹脂および(B)ポリエチレンオキシドを含有する場合、これらのカバー層は、それぞれの組成が同じでもよく、異なってもよい。
【0049】
その他のカバー層(即ち(A)基材樹脂および(B)ポリエチレンオキシドを共に含有しないカバー層)は、樹脂成分を含有することが好ましい。その他のカバー層が含有する樹脂成分としては、特に限定されないが、例えば、前記(A)基材樹脂として例示される各樹脂成分が挙げられる。その具体例を商品名で例示すると、三井・デュポンポリケミカル(株)から商品名「ハイミラン(Himilan)(登録商標)」で市販されているアイオノマー樹脂、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱ケミカル(株)から商品名「テファブロック」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーまたは商品名「テファブロック」で市販されている熱可塑性ポリエステル系エラストマーなどを挙げることができる。なお、その他のカバー層は、2層以上である場合、それぞれの組成が同じでもよく、異なってもよい。
【0050】
その他のカバー層には、さらに、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などの添加剤を、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0051】
本発明のゴルフボールの球状コアは、樹脂組成物またはゴム組成物から形成されることが好ましく、ゴム組成物から形成されることがより好ましい。前記球状コアは、例えば、基材ゴム、共架橋剤および架橋開始剤を含むゴム組成物(以下、単に「コア用ゴム組成物」という場合がある)を加熱プレスして成形することができる。
【0052】
前記基材ゴムとしては、特に、反発に有利なシス結合が40質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上のハイシスポリブタジエンを用いることが好ましい。前記共架橋剤としては、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸またはその金属塩が好ましく、アクリル酸の金属塩またはメタクリル酸の金属塩がより好ましい。金属塩の金属としては、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、ナトリウムが好ましく、より好ましくは亜鉛である。共架橋剤の使用量は、基材ゴム100質量部に対して15質量部以上50質量部以下が好ましい。架橋開始剤としては、有機過酸化物が好ましく用いられる。具体的には、ジクミルパーオキサイド、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t―ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ-t-ブチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられ、これらのうちジクミルパーオキサイドが好ましく用いられる。架橋開始剤の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であって、3質量部以下が好ましく、より好ましくは2質量部以下である。
【0053】
また、前記コア用ゴム組成物は、さらに、有機硫黄化合物を含有してもよい。前記有機硫黄化合物としては、ジフェニルジスルフィド類(ジフェニルジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド等)、チオフェノール類、或いは、チオナフトール類に属する化合物を挙げることができる。有機硫黄化合物の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.01質量部以上が好ましく、より好ましくは0.05質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.0質量部以下である。前記コア用ゴム組成物は、さらにカルボン酸および/またはその塩を含有してもよい。カルボン酸および/またはその塩としては、炭素数が1~30のカルボン酸および/またはその塩が好ましい。前記カルボン酸としては、脂肪族カルボン酸(カプリル酸等)、芳香族カルボン酸(安息香酸等)のいずれも使用できる。カルボン酸および/またはその塩の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、1質量部以上、40質量部以下であることが好ましい。
【0054】
前記コア用ゴム組成物には、基材ゴム、共架橋剤、架橋開始剤、有機硫黄化合物に加えて、さらに、酸化亜鉛や硫酸バリウムなどの重量調整剤、老化防止剤、色粉などを適宜配合することができる。
【0055】
[ゴルフボール構造]
本発明のゴルフボールの構造は、球状コアと、前記球状コアを被覆する一層以上のカバーとを有するものであれば特に限定されない。例えば、単層の球状コアと、前記球状コアを被覆する単層のカバーとからなるツーピースゴルフボールであって、前記単層カバーが、(A)基材樹脂と(B)ポリエチレンオキシドとを含有する態様;単層の球状コアと、前記球状コアを被覆する内層カバーと、前記内層カバーを被覆する外層カバーとからなるスリーピースゴルフボールであって、内層カバーあるいは外層カバーのいずれか、あるいは、その両方が、(A)基材樹脂と(B)ポリエチレンオキシドとを含有する態様;単層の球状コアと、前記球状コアを被覆する二以上の内層カバーと、前記内層カバーを被覆する最外層カバーとからなるマルチピースゴルフボール(フォーピースゴルフボール、ファイブピースゴルフボールなど)であって、二以上の内層カバーの少なくとも一層が(A)基材樹脂と(B)ポリエチレンオキシドとを含有する態様;単層の球状コアと、前記球状コアを被覆する二以上の内層カバーと、前記内層カバーを被覆する最外層カバーからなるマルチピースゴルフボール(フォーピースゴルフボール、ファイブピースゴルフボールなど)であって、最外層カバーが(A)基材樹脂と(B)ポリエチレンオキシドを含有する態様などが挙げられる。
【0056】
単層の球状コアと、前記球状コアを被覆する二以上の内層カバーと、前記内層カバーを被覆する最外層カバーからなるマルチピースゴルフボール(フォーピースゴルフボール、ファイブピースゴルフボールなど)であって、二以上の内層カバーの少なくとも一層が(A)基材樹脂と(B)ポリエチレンオキシドとを含有する態様では、内層カバーの最外層が、(A)基材樹脂と(B)ポリエチレンオキシドとを含有することが好ましく、内層カバーのすべての層が、(A)基材樹脂と(B)ポリエチレンオキシドとを含有してもよい。
【0057】
単層の球状コアと、前記球状コアを被覆する二以上の内層カバーと、前記内層カバーを被覆する最外層カバーからなるマルチピースゴルフボール(フォーピースゴルフボール、ファイブピースゴルフボールなど)であって、最外層カバーが(A)基材樹脂と(B)ポリエチレンオキシドとを含有する態様において、さらに、二以上の内層カバーの少なくとも一層が(A)基材樹脂と(B)ポリエチレンオキシドとを含有してもよい。この場合、内層カバーの最外層が、(A)基材樹脂と(B)ポリエチレンオキシドとを含有することが好ましく、内層カバーのすべての層が、(A)基材樹脂と(B)ポリエチレンオキシドとを含有してもよい。
【0058】
本発明のゴルフボールの球状コアの直径は、37.0mm以上が好ましく、より好ましくは37.5mm以上、さらに好ましくは38.0mm以上であり、42.2mm以下が好ましく、41.8mm以下がより好ましく、さらに好ましくは41.5mm以下であり、最も好ましくは41mm以下である。前記球状コアの直径が37.0mm以上であれば、カバーの厚みが厚くなり過ぎず、反発性がより良好となる。一方、球状コアの直径が42.2mm以下であれば、カバーが薄くなり過ぎず、カバーの機能がより発揮される。
【0059】
前記球状コアは、直径37.0mm~42.2mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にセンターが縮む量)が、2.0mm以上が好ましく、より好ましくは2.1mm以上、さらに好ましくは2.2mm以上であり、5.0mm以下が好ましく、より好ましくは4.9mm以下、さらに好ましくは4.8mm以下である。前記圧縮変形量が、2.0mm以上であれば打球感がより良好となり、5.0mm以下であれば、反発性がより良好となる。
【0060】
本発明のゴルフボールのカバーの厚みは、0.5mm以上が好ましく、より好ましくは0.7mm以上、さらに好ましくは0.9mm以上であり、4.0mm以下が好ましく、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下である。カバーの厚みが、前記範囲内であれば、カバーの耐久性や耐摩耗性の低下を、より抑制できるからである。カバーが、複数の層を有する場合は、複数層の合計厚みが前記範囲であることが好ましい。
【0061】
本発明のゴルフボールが、二以上の内層カバーと、最外層カバーとを有する場合、前記内層カバーの合計厚みは、0.5mm以上が好ましく、より好ましくは0.6mm以上、さらに好ましくは0.7mm以上であり、4.0mm以下が好ましく、より好ましくは3.5mm以下、さらに好ましくは3.0mm以下である。また、内層カバーの各層の厚みは、0.3mm以上が好ましく、より好ましくは0.4mm以上、さらに好ましくは0.5mm以上であり、2.0mm以下が好ましく、より好ましくは1.8mm以下、さらに好ましくは1.6mm以下である。
【0062】
前記最外層カバーの厚みは、4.0mm以下が好ましく、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下であり、前記最外層カバーの厚みは、0.3mm以上が好ましく、0.4mm以上がより好ましく、さらに好ましくは0.5mm以上である。最外層カバーの厚みが、前記範囲内であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となるからである。
【0063】
カバーに形成されるディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0064】
本発明のゴルフボールの直径は、40mmから45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。また、ゴルフボールの質量は、40g~50gが好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0065】
本発明のゴルフボールは、直径40mm~45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向にゴルフボールの縮む量)は、2.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.4mm以上であり、さらに好ましくは2.5mm以上であり、最も好ましくは2.8mm以上であり、5.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは4.5mm以下であり、さらに好ましくは4.0mm以下である。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を5.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
【0066】
[ゴルボールの製造方法]
本発明のゴルフボールの球状コアは、例えば、球状コア用ゴム組成物を加熱プレスすることにより成形することができる。前記コア用ゴム組成物の加熱プレス成型条件は、ゴム組成に応じて適宜設定すればよいが、通常、130℃~200℃で10分間~60分間加熱するか、あるいは130℃~150℃で20分間~40分間加熱した後、160℃~180℃で5分間~15分間と2段階加熱することが好ましい。
【0067】
本発明のゴルフボールのカバーを成形する方法としては、例えば、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する方法(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、球状コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、あるいは、カバー用組成物を球状コア上に直接射出成形する方法を挙げることができる。本発明のゴルフボールのカバーは、射出成形法により成形されることが好ましい。射出成形法を採用することにより、カバーをより容易に生産することができるからである。
【0068】
圧縮成形法によりカバーを成形する場合、ハーフシェルの成形は、圧縮成形法または射出成形法のいずれの方法によっても行うことができるが、圧縮成形法が好適である。カバー用組成物を圧縮成形してハーフシェルに成形する条件としては、例えば、1MPa以上、20MPa以下の圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、-20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一な厚みをもつハーフシェルを成形できる。ハーフシェルを用いてカバーを成形する方法としては、例えば、球状コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法を挙げることができる。ハーフシェルを圧縮成形してカバーに成形する条件としては、例えば、0.5MPa以上、25MPa以下の成形圧力で、カバー用組成物の流動開始温度に対して、-20℃以上、70℃以下の成形温度を挙げることができる。前記成形条件とすることによって、均一なカバー厚みを有するゴルフボールカバーを成形できる。
【0069】
カバー用組成物を射出成形してカバーを成形する場合、押出して得られたペレット状のカバー用組成物を用いて射出成形しても良いし、あるいは、基材樹脂成分や顔料などのカバー用材料をドライブレンドして直接射出成形してもよい。カバー成形用上下金型としては、半球状キャビティを有し、ピンプル付きで、ピンプルの一部が進退可能なホールドピンを兼ねているものを使用することが好ましい。射出成形によるカバーの成形は、例えば、ホールドピンを突き出し、コアを投入してホールドさせた後、カバー用組成物を注入して、冷却することによりカバーを成形することができ、9MPa~15MPaの圧力で型締めした金型内に、200℃~250℃に加熱したカバー用組成物を0.5秒~5秒で注入し、10秒~60秒間冷却して型開きすることにより行う。
【0070】
射出装置および成形用金型を有する射出成形機を用いてカバーを成形する場合、射出装置のシリンダー(バレル)部分での温度(装置の設定温度)は、200℃以上が好ましく、210℃以上がより好ましく、270℃以下が好ましく、260℃以下が好ましい。シリンダー(バレル)部分での温度を上記範囲にすることにより、カバー用組成物の流動性を維持することができる。
【0071】
カバーが成形されたゴルフボールは、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。前記塗膜の膜厚は、特に限定されないが、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。膜厚が5μm未満になると継続的な使用により塗膜が摩耗消失しやすくなり、膜厚が50μmを超えるとディンプルの効果が低下してゴルフボールの飛行性能が低下するからである。
【0072】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール1が示された一部切り欠き断面図である。ゴルフボール1は、球状コア2と、この球状コア2の外側に配設された内層カバー3と、この内層カバー3の外側に配設された外層カバー4とを有する。前記外層カバー4の表面には、多数のディンプル41が形成されている。この外層カバー4の表面のうち、ディンプル41以外の部分は、ランド42である。本発明の好ましい実施形態においては、外層カバー4または内層カバー3のいずれか一方が、或いは、外層カバー4および内層カバー3の両方が、(A)基材樹脂および(B)ポリエチレンオキシドを含有する。
【実施例0073】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0074】
[評価方法]
(1)圧縮変形量(mm)
コアに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にコアが縮む量)を測定した。
【0075】
(2)材料硬度(ショアD硬度)
カバー用組成物を用いて、射出成形(シリンダー温度230℃)により、厚み約2mmのシートを作製し、23℃で2週間保存した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚以上重ねた状態で、自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて硬度を測定した。検出器は、「Shore D」を用いた。また、カバー用組成物の材料硬度を測定する場合は、(A)基材樹脂に所定の材料((B)ポリエチレンオキシド、二酸化チタンなど)を配合した組成物を用いて測定した。
【0076】
(3)打球感
アマチュアゴルファー(上級者)10人により、ドライバーを用いた実打テストを行って、各人の打撃時のフィーリングを下記基準で評価させた。10人の評価のうち、最も多い評価をそのゴルフボールの打球感とした。
評価基準
◎:衝撃が少なくてフィーリングが良い。
〇:普通。
△:衝撃がやや大きくてフィーリングが良くない。
×:衝撃が大きくてフィーリングが悪い。
【0077】
(4)反発係数
各ゴルフボールに198.4gの金属製円筒物を40m/秒の速度で衝突させ、衝突前後の前記円筒物およびゴルフボールの速度を測定し、それぞれの速度および質量から各ゴルフボールの反発係数を算出した。測定は各ゴルフボールについて12個ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの反発係数とした。なお、反発係数は、ゴルフボールNo.9の反発係数を100として、各ゴルフボールの反発係数を指数化した値で示した。
【0078】
(5)耐久性
エアガンを用いて、各ゴルフボールを45m/秒の速度で金属板に繰り返し衝突させるテストを行い、割れが生じるまでの衝突回数を測定した。このテストを各ゴルフボールについて12個ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの衝突回数とした。各ゴルフボールの耐久性は、以下の基準で評価した。
評価基準
◎:割れが生じるまでの衝突回数は、95回以上である。
○:割れが生じるまでの衝突回数は、85回以上、94回以下である。
△:割れが生じるまでの衝突回数は、75回以上、84回以下である。
×:割れが生じるまでの衝突回数は、74回以下である。
【0079】
[ゴルフボールの作製]
(1)球状コアの作製
表1に示す配合のゴム組成物を混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で、加熱プレスすることにより球状のコアを得た。なお、硫酸バリウムは、得られるゴルフボールの質量が、45.6gとなるように適量加えた。
【0080】
【表1】
【0081】
ポリブタジエンゴム:JSR社製、「BR730(ハイシスポリブタジエン)」
アクリル酸亜鉛:日触テクノファインケミカル社製、「ZNDA-90S」
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製、「銀嶺(登録商標)R」
硫酸バリウム:堺化学社製、「硫酸バリウムBD」
ジクミルパーオキサイド:日油社製、「パークミル(登録商標)D」
ジフェニルジスルフィド:住友精化社製
【0082】
(2)カバーの作製
表2に示した配合で、各材料を二軸混練型押出機によりミキシングして、ペレット状のカバー用組成物をそれぞれ調製した。カバー用組成物の押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160~230℃に加熱された。
【0083】
カバー成形時には、ホールドピンを突き出し、球状コアを投入後ホールドさせ、80トンの圧力で型締めした金型に260℃に加熱したカバー用組成物を0.3秒で注入し、30秒間冷却して型開きしてゴルフボールを取り出した。得られたゴルフボール本体の表面をサンドブラスト処理して、マーキングを施した後、クリアーペイントを塗布し、40℃のオーブンで塗料を乾燥させ、直径42.7mm、質量45.6gのゴルフボールを得た。
【0084】
【表2】
【0085】
ハイミラン1555:三井・デュポンポリケミカル社製、ナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸二元共重合体系アイオノマー樹脂(メルトフローレイト(190℃×2.16kg荷重):10g/10min、曲げ剛性率:240MPa、材料硬度:60(ショアD))
ハイミラン1605:三井・デュポンポリケミカル社製、ナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸二元共重合体系アイオノマー樹脂(メルトフローレイト(190℃×2.16kg荷重):3g/10min、曲げ剛性率:320MPa、材料硬度:65(ショアD))
ハイミランAM7329:三井・デュポンポリケミカル社製、亜鉛イオン中和エチレン-メタクリル酸二元共重合体系アイオノマー樹脂(メルトフローレイト(190℃×2.16kg荷重):5g/10min、曲げ剛性率:221MPa、材料硬度:64(ショアD))
ハイミランAM7337:三井デュポンポリケミカル社製、ナトリウムイオン中和エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー樹脂(メルトフローレイト(190℃×2.16kg荷重):5g/10min、曲げ弾性率:272MPa、ショアD硬度64)
ニュクレルN1560:三井・デュポンポリケミカル社製、エチレン・メタクリル酸共重合体(メルトフローレイト(190℃×2.16kg):60g/10min、曲げ剛性率:81MPa、ショアD硬度:55)
ポリエチレンオキシド3350:シグマアルドリッチ製数平均分子量3,350
ポリエチレンオキシド35000:シグマアルドリッチ製数平均分子量35,000
ポリエチレンオキシド300000:シグマアルドリッチ製数平均分子量300,000
ポリエチレンオキシド2000000:シグマアルドリッチ製数平均分子量2,000,000
酸化チタン:石原産業社製、「A220」
【0086】
得られたゴルフボールについて評価した結果を表2に示した。表2の結果から、球状コアと、前記球状コアの外側に配置された一層以上のカバーとを有するゴルフボールであって、前記カバーの少なくとも一層が、(A)基材樹脂と、(B)ポリエチレンオキシドとを含有する本発明のゴルフボールは、反発性が低下することなく、打球感が良好で、耐久性に優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明のゴルフボールは、反発性が低下することなく、打球感が良好で耐久性に優れる。
【符号の説明】
【0088】
1:ゴルフボール、2:球状コア、3:内層カバー、4:外層カバー、41:ディンプル、42:ランド
【0089】
本発明(1)のゴルフボールは、球状コアと、前記球状コアの外側に配置された一層以上のカバーとを有するゴルフボールであって、前記カバーの少なくとも一層が、(A)基材樹脂と、(B)ポリエチレンオキシドとを含有することを特徴とする。
【0090】
本発明(2)のゴルフボールは、前記(B)ポリエチレンオキシドの配合量が、(A)基材樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上、30質量部以下である本発明(1)に記載のゴルフボールである。
【0091】
本発明(3)のゴルフボールは、前記(B)ポリエチレンオキシドの数平均分子量が、400以上、700万以下である本発明(1)または(2)に記載のゴルフボールである。
【0092】
本発明(4)のゴルフボールは、前記(A)基材樹脂と(B)ポリエチレンオキシドとを含有するカバー層の材料硬度が、ショアD硬度で、59~69である本発明(1)~(3)のいずれか一項に記載のゴルフボールである。
【0093】
本発明(5)のゴルフボールは、前記(A)基材樹脂が、アイオノマー樹脂を含有するものである本発明(1)~(4)のいずれか一項に記載のゴルフボールである。
【0094】
本発明(6)のゴルフボールは、球状コアと、前記球状コアの外側に配置された一層以上のカバーとを有するゴルフボールであって、
前記カバーの少なくとも一層が、(A)アイオノマー樹脂を含有する基材樹脂100質量部に対して、(B)数平均分子量が、400以上、700万以下であるポリエチレンオキシドを0.1質量部以上、30質量部以下含有することを特徴とする。
【0095】
本発明(7)のゴルフボールは、最外層カバーが、(A)基材樹脂と、(B)ポリエチレンオキシドとを含有する本発明(1)~(6)のいずれか一項に記載のゴルフボールである。
図1