(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160403
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】車両の下部車体構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/20 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
B62D25/20 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070765
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】塚本 英行
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼須賀 太一
(72)【発明者】
【氏名】横木 悠二
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB06
3D203BB07
3D203BB08
3D203BB20
3D203BB22
3D203CA25
3D203CA52
3D203CA62
3D203CA73
3D203CB04
3D203CB24
(57)【要約】
【課題】フロア膜振動の十分な抑制が可能な車両の下部車体構造を提供することを目的とする。
【解決手段】下部車体構造は、上下方向に延び、フロアパネル2、3の端部に接合されたクロスメンバ5の車幅方向両側の端部5aと一対のフレーム部材6とが平面視で重複する領域において、クロスメンバ5とフレーム部材6とを各々連結する一対の補強部材8を備える。補強部材8は、クロスメンバ5の下端よりも上方に突出してクロスメンバ5と車両前後方向に重複する第1部分8aと、第1部分8aよりも下方の位置においてフロアパネル2、3とフレーム部材6によって形成された閉断面11の内部に位置する第2部分8bとを有する。補強部材8は、第1部分8aがクロスメンバ5に接合されるとともに第2部分8bがフレーム部材6の内面に接合されることにより、クロスメンバ5とフレーム部材6とを上下方向に連結する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1枚のフロアパネルと、
車幅方向に延び、前記フロアパネルにおける車両前後方向の端部に接合されたクロスメンバと、
車両前後方向に延び、前記フロアパネルの下面における車幅方向の両端部に各々接合されることにより前記フロアパネルと協働して前後方向に伸びる閉断面を形成し、かつ、前記クロスメンバの車幅方向両側の端部に各々下方から重ね合わされた一対のフレーム部材と、
上下方向に延び、前記クロスメンバの車幅方向両側の端部と前記フレーム部材とが平面視で重複する領域において、前記クロスメンバと前記フレーム部材とを各々連結する一対の補強部材と
を備え、
前記補強部材は、前記クロスメンバの下端よりも上方に突出して前記クロスメンバと車両前後方向に重複する第1部分と、前記第1部分よりも下方の位置において前記閉断面の内部に位置する第2部分とを有し、かつ、前記第1部分が前記クロスメンバに接合されるとともに前記第2部分が前記フレーム部材の内面に接合されることにより、前記クロスメンバと前記フレーム部材とを上下方向に連結する
ことを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項2】
請求項1記載の車両の下部車体構造において、
前記クロスメンバの車両前後方向の両側にそれぞれ前記フロアパネルが配置され、かつ、当該フロアパネル同士が異なる高さになるように前記クロスメンバにそれぞれ接合されることにより、前後のフロアパネルの間に段差部が形成されている、
ことを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両の下部車体構造において、
前記クロスメンバは、車両前後方向に互いに離間した前壁および後壁を有し、
前記フレーム部材は、前記閉断面の底面を構成する底壁を有し、
前記補強部材は、前記第1部分が前記クロスメンバの前記前壁または前記後壁に接合されるとともに前記第2部分が前記フレーム部材の前記底壁に接合されることにより、前記クロスメンバと前記フレーム部材とを上下方向に連結する、
ことを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項4】
請求項1または2に記載の車両の下部車体構造において、
前記補強部材は、上下方向の振動入力に対する剛性を高める剛性強化部を有する、
ことを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項5】
請求項4に記載の車両の下部車体構造において、
前記剛性強化部は、上下方向に延びるビードである、
ことを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項6】
請求項5に記載の車両の下部車体構造において、
前記ビードは、前記補強部材の上端まで連続して上下方向に延びる、
ことを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項7】
請求項1または2に記載の車両の下部車体構造において、
前記フレーム部材は、車幅方向に互いに離間する一対の側壁を有し、
前記補強部材の前記第2部分は、前記フレーム部材の前記一対の側壁にそれぞれ接合されている、
ことを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項8】
請求項1または2に記載の車両の下部車体構造において、
車体の車幅方向中央において車両前後方向に延びるフロアトンネルをさらに備え、
前記フロアパネルは、前記フロアトンネルの車幅方向両側の端部にそれぞれ接合され、
前記クロスメンバは、前記フロアトンネル後端に接合されている、
ことを特徴とする車両の下部車体構造。
【請求項9】
請求項1または2に記載の車両の下部車体構造において、
前記補強部材は、前記第1部分と前記第2部分との間で車両前後方向に屈曲する屈曲部を有する
ことを特徴とする車両の下部車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の下部車体構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両走行時におけるフロアパネルの上下振動を抑制するために種々の技術が開発されている。
【0003】
特許文献1に記載されている構造は、フロアパネルの上下振動を抑制するために、フロアトンネルの後端下部において車幅方向に延びる閉断面を備えている。この閉断面は、車幅方向に延びるL字状断面のクロスメンバと、クロスメンバの前方側に位置するフロントフロアパネルと、フロントフロアパネルの後方側に位置するリアフロアパネルとによって形成されている。
【0004】
具体的には、L字状断面のクロスメンバは、略垂直方向に立ち上がる垂直部分と、垂直部分の下端から前方に延びる水平部分とを有する。リアフロアパネルは、フロントフロアパネルよりも高い位置に配置されている。リアフロアパネルは、その前端部において下方に垂れ下がる段差部と、段差部の下端部から前方に逆L字状に張り出す稜線部とを有する。クロスメンバの垂直部分がリアフロアパネルの段差部に接合されるとともに、クロスメンバの水平部分がフロントフロアパネルの後端部および稜線部の下端部に接合されている。これにより、L字状断面のクロスメンバと逆L字状断面のリアフロアパネルの稜線部とによって、車幅方向に延びる上記の閉断面が形成される。
【0005】
この閉断面によって、フロントフロアパネルおよびリアフロアパネルの境界部分の剛性の向上、およびそれによるフロア上下振動の抑制を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の構造では、車幅方向に延びるL字状断面のクロスメンバがフロントフロアパネルおよびリアフロアパネルにそれぞれ接合されることにより車幅方向に延びる閉断面を形成しているが、フロア面積の大きい車両(例えば、車両前後方向にシートを3列並べた3列シート車など)などの場合では、上記の閉断面構造だけでは、フロア上下振動(すなわち、フロア膜振動)を十分に抑制することは困難であり、フロア振動抑制のためにさらなる工夫が要求される。
【0008】
本発明は、前記のような事情に鑑みてなされたものであり、フロア膜振動の十分な抑制が可能な車両の下部車体構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために本発明の車両の下部車体構造は、少なくとも1枚のフロアパネルと、車幅方向に延び、前記フロアパネルにおける車両前後方向の端部に接合されたクロスメンバと、車両前後方向に延び、前記フロアパネルの下面における車幅方向の両端部に各々接合されることにより前記フロアパネルと協働して前後方向に伸びる閉断面を形成し、かつ、前記クロスメンバの車幅方向両側の端部に各々下方から重ね合わされた一対のフレーム部材と、上下方向に延び、前記クロスメンバの車幅方向両側の端部と前記フレーム部材とが平面視で重複する領域において、前記クロスメンバと前記フレーム部材とを各々連結する一対の補強部材とを備え、前記補強部材は、前記クロスメンバの下端よりも上方に突出して前記クロスメンバと車両前後方向に重複する第1部分と、前記第1部分よりも下方の位置において前記閉断面の内部に位置する第2部分とを有し、かつ、前記第1部分が前記クロスメンバに接合されるとともに前記第2部分が前記フレーム部材の内面に接合されることにより、前記クロスメンバと前記フレーム部材とを上下方向に連結することを特徴とする。
【0010】
すなわち、本発明の下部車体構造は、フロアパネルにおける車両前後方向の端部に接合されたクロスメンバと、車両前後方向に延びてフロアパネルと閉断面を構成する一対のフレーム部材を備えた構成において、上下方向に延び、クロスメンバの車幅方向両側の部分とフレーム部材とが平面視で重複する領域において、クロスメンバとフレーム部材とを各々連結する一対の補強部材を備えている。この補強部材は、当該補強部材の第1部分がクロスメンバに接合されるとともに第1部分よりも下側の第2部分が上記閉断面の内部でフレーム部材の内面に接合されることにより、クロスメンバとフレーム部材とを上下方向に連結する。これにより、車両走行時においてフロアパネルが上下方向に振動することにより、フロア膜共振を起因としてクロスメンバがその車幅方向中央部が上下方向に曲げ変形するモードになったときに、補強部材がクロスメンバの車幅方向端部に対して上下方向に突っ張る(押す)、あるいは引っ張ることにより、クロスメンバの上下変位を抑制する。そのため、クロスメンバの上下変形モードを抑制し、フロア膜共振を抑制することが可能になる。その結果、フロア膜振動の十分な抑制が可能になる。
【0011】
上記の下部車体構造において、前記クロスメンバの車両前後方向の両側に前記フロアパネルがそれぞれ配置され、かつ、当該フロアパネル同士が異なる高さになるように前記クロスメンバにそれぞれ接合されることにより、前後のフロアパネルの間に段差部が形成されているのが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、クロスメンバの車両前後方向の両側にそれぞれフロアパネルが接合されることによって段差部を形成することが可能になり、車室内のフロアの高さを車両前後方向の位置で変えることが可能である。
【0013】
上記の車両の下部車体構造において、前記クロスメンバは、車両前後方向に互いに離間した前壁および後壁を有し、前記フレーム部材は、前記閉断面の底面を構成する底壁を有し、前記補強部材は、前記第1部分が前記クロスメンバの前記前壁または前記後壁に接合されるとともに前記第2部分が前記フレーム部材の前記底壁に接合されることにより、前記クロスメンバと前記フレーム部材とを上下方向に連結するのが好ましい。
【0014】
かかる構成によれば、補強部材の第1部分がクロスメンバの前壁または後壁に接合されるとともに第2部分がフレーム部材の底壁に接合されることにより、車両走行時においてフロアパネルの上下振動に伴ってクロスメンバが上下方向へ曲げ変形するモードになる際に、クロスメンバから補強部材の第1部分へ上下方向のせん断荷重が入力されるので、補強部材に曲げ荷重が入力される場合に比べて補強部材は大きな入力荷重に耐えることが可能になり、補強部材の強度面にとって有利である。また、車両側突時(すなわち、車両側方からの車両等の衝突時)には、車幅方向に延びるクロスメンバは、車幅方向からの圧縮荷重の入力によって上下方向へ曲げ変形するモードになるが、この場合も、補強部材を介してクロスメンバからフレーム部材にも入力を分散することが可能であり、クロスメンバの変形を抑制することが可能である。
【0015】
上記の車両の下部車体構造において、前記補強部材は、上下方向の振動入力に対する剛性を高める剛性強化部を有するのが好ましい。
【0016】
かかる構成によれば、剛性強化部により、補強部材の上下方向の振動入力に対する剛性を高めることが可能である。
【0017】
上記の車両の下部車体構造において、前記剛性強化部は、上下方向に延びるビードであるのが好ましい。
【0018】
かかる構成によれば、剛性強化部としてビードを補強部材に設けることにより、補強部材の上下方向の振動入力に対する剛性を容易かつ確実に高めることが可能である。
【0019】
上記の車両の下部車体構造において、前記ビードは、前記補強部材の上端まで連続して上下方向に延びるのが好ましい。
【0020】
かかる構成によれば、補強部材の全高にわたって上下方向の振動入力に対する剛性を高めることが可能である。
【0021】
上記の車両の下部車体構造において、前記フレーム部材は、車幅方向に互いに離間する一対の側壁を有し、前記補強部材の前記第2部分は、前記フレーム部材の前記一対の側壁にそれぞれ接合されているのが好ましい。
【0022】
かかる構成によれば、補強部材の第2部分がフレーム部材の一対の側壁にそれぞれ接合されているので、クロスメンバの上下変位を確実に抑制することが可能であり、フロア膜共振の確実な抑制が可能になる。
【0023】
上記の車両の下部車体構造において、車体の車幅方向中央において車両前後方向に延びるフロアトンネルをさらに備え、前記フロアパネルは、前記フロアトンネルの車幅方向両側の端部にそれぞれ接合され、前記クロスメンバは、前記フロアトンネル後端に接合されているのが好ましい。
【0024】
かかる構成によれば、フロアトンネルが車体の車幅方向中央において車両前後方向に延びるとともに、フロアパネルがフロアトンネルの車幅方向両側の端部にそれぞれ接合されている。クロスメンバは、フロアトンネル後端に接合されているので、車両走行時においてフロアパネルの上下方向の振動がフロアトンネルを介してクロスメンバに円滑に伝達される。これにより生じたクロスメンバの上下変位を上記の補強部材を用いて抑制することにより、フロア膜共振の円滑な抑制が可能になる。
【0025】
上記の車両の下部車体構造において、前記補強部材は、前記第1部分と前記第2部分との間で車両前後方向に屈曲する屈曲部を有するのが好ましい。
【0026】
かかる構成によれば、補強部材の屈曲部が、クロスメンバに接合される第1部分とフレーム部材に接合される第2部分との間で車両前後方向に屈曲している。この屈曲部により、クロスメンバとフレーム部材との間における相対位置の公差を吸収することが可能になり、補強部材における第1部分および第2部分の2か所の接合を容易に行うことが可能である。
【発明の効果】
【0027】
以上のように、本発明の車両の下部車体構造によれば、フロア膜振動の十分な抑制を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両の下部車体構造の全体構成を示す車体のフロアトンネルの後端に接合されたクロスメンバおよびその周辺部の背面図である。
【
図2】
図1のクロスメンバ車幅方向端部とリアサイドフレームの重なり合った部分およびその周辺部の拡大図である。
【
図3】
図1の車体を斜め前上方かつ車外左側から見た図であって、クロスメンバとリアサイドフレームとを連結する左側の補強部材およびその周辺部の拡大断面説明図である。
【
図4】
図1の車体を斜め後上方かつ車外左側から見た図であって、クロスメンバとリアサイドフレームとを連結する左側の補強部材およびその周辺部の拡大断面説明図である。
【
図5】
図4のクロスメンバの右端側に接合される右側の補強部材およびその周辺部を車内後方側から見た状態の断面説明図である。
【
図6】
図3のクロスメンバの右端側に接合される右側の補強部材およびその周辺部を車内前方側から見た状態の断面説明図である。
【
図7】
図6の補強部材およびその周辺部を車外前方側から見た断面説明図である。
【
図8】
図1の車体右側を斜め前上方から見た図であって、クロスメンバの車幅方向端部およびその周辺部の拡大断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態に係る車両の下部車体構造について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
図1~4に示されるように、本発明の実施形態に係る車両の下部車体構造が適用された車体1は、車室9の車両前方側X1の床部を構成する左右一対のフロントフロアパネル2と、車室9の車両後方側X2の床部を構成するリアフロアパネル3と、一対のフロントフロアパネル2の間に配置され、車体1の車幅方向Y中央において車両前後方向Xに延びる半円筒状のフロアトンネル4と、車幅方向Yに延び、フロアトンネル4の後端4aに連結されたリアクロスメンバ5(いわゆるNo.3クロスメンバ)と、車体1の車幅方向Yの両側に互いに離間した位置で車両前後方向Xに延びる一対のリアサイドフレーム6(フレーム部材)と、一対のリアサイドフレーム6の車幅方向Yにおける外側(車外側Y2)に配置された一対のサイドシル7と、リアクロスメンバ5の車幅方向両側の端部5aと一対のリアサイドフレーム6とを各々連結する一対の補強部材8とを備える。なお、本明細書では、車幅方向Yにおける向きについては、車内中央へ向かう側(すなわち、フロアトンネル4に近づく側)を車内側Y1、車内中央から離れる側(すなわち、フロアトンネル4から遠ざかる側)を車外側Y2と呼ぶ。
【0031】
なお、
図3~4には、リアクロスメンバ5よりも車両前方側X1に配置されたクロスメンバとして、フロアトンネル4の車幅方向Yの両側において車幅方向Yに延びる中央クロスメンバ10(いわゆるNo.2.5クロスメンバ)が示されている。
【0032】
リアクロスメンバ5は、
図3~4、
図8~9に示されるように、車幅方向Yに延びる逆L字状断面のフロントメンバ5bおよびL字状断面のリアメンバ5cによって構成されている。フロントメンバ5bおよびリアメンバ5cによって車幅方向Yに延びる閉断面5dが形成される。フロントメンバ5bは、上下方向Zに延びる前壁5b1を有し、リアメンバ5cは、上下方向Zに延びる後壁5c1を有する。これら前壁5b1および後壁5c1は、車両前後方向Xに互いに離間した位置に配置されている。リアクロスメンバ5の車幅方向Yの両端部は、サイドシル7(具体的にはサイドシルインナ7a)に接合されている。
【0033】
図1~4および
図8~9に示されるように、リアクロスメンバ5の車両前後方向Xにおける車両前方側X1の端部は、その中央部においてフロアトンネル4の後端4aに接合され、中央部の両側の部分において一対のフロントフロアパネル2の車両後方側X2の端部に接合されている。一方、リアクロスメンバ5の車両前後方向Xにおける車両後方側X2の端部は、リアフロアパネル3における車両前方側X1の端部に接合されている。
【0034】
なお、本構造における接合は、主にスポット溶接などで行われるが、他の接合方法でもよい。以下の他の接合についても同様である。
【0035】
また、一対のフロントフロアパネル2は、フロアトンネル4の車幅方向Yの両側の端部にもそれぞれ接合されている。したがって、一対のフロントフロアパネル2の振動は、フロアトンネル4を介してリアクロスメンバ5における車幅方向Yの中央部にも伝達される。
【0036】
本実施形態では、
図3~4に示されるように、フロントフロアパネル2およびリアフロアパネル3は、リアクロスメンバ5の車両前後方向Xの両側にそれぞれ配置され、かつ、当該フロントフロアパネル2およびリアフロアパネル3同士が異なる高さになるようにリアクロスメンバ5にそれぞれ接合されることにより、フロントフロアパネル2およびリアフロアパネル3の間に段差部12が形成されている。
【0037】
図1~9に示されるように、一対のリアサイドフレーム6は、車両前後方向Xに延び、フロントフロアパネル2およびリアフロアパネル3の下面における車幅方向Yの両端部に各々接合されることによりフロントフロアパネル2、リアフロアパネル3および後述のサイドシルインナ7aと協働して車両前後方向Xに伸びる閉断面11が形成されている。さらに、一対のリアサイドフレーム6は、リアクロスメンバ5の車幅方向Y両側の端部5aの各々下方Z2から重ね合わされて配置されている。リアサイドフレーム6は、本発明におけるフレーム部材に対応する。
【0038】
一対のリアサイドフレーム6は、それぞれ上方Z1に開放された略U字状断面を有する車両前後方向Xに延びる部材である。具体的には、
図3~7および
図9に示されるように、リアサイドフレーム6は、上記の閉断面11の底面を構成する底壁6aと、車幅方向Yに互いに離間する一対の側壁6b、6c(具体的には、車外側の外側壁6b、車内側の内側壁6c)とを有する。
【0039】
図5に示されるように、内側壁6cの上端部は、リアフロアパネル3の下面に接合されている。さらに、内側壁6cのうちリアクロスメンバ5よりも車両後方側X2の部分の上部には、フランジ部6c1(
図5参照)が設けられている。フランジ部6c1は、リアクロスメンバ5のリアメンバ5cに接合されている。
【0040】
また、外側壁6bは、内側壁6cよりも上下方向Zの幅(高さ)が低く、略筒状のサイドシル7のうち車幅方向内側の部分であるサイドシルインナ7aのみに接合されている。なお、外側壁6bを内側壁6cの上下方向Zの幅(高さ)と同程度にして、当該外側壁6bがサイドシルインナ7aだけでなくリアフロアパネル3の下面にも接合されてもよい。
【0041】
図3~7および
図9に示されるように、一対の補強部材8は、それぞれ、スチールなどの金属板材などの素材をプレス成形するなどして形成された部材である。補強部材8は、上下方向Zに延び、リアクロスメンバ5の車幅方向Y両側の端部5aとリアサイドフレーム6とが平面視で重複する領域Rにおいて、リアクロスメンバ5とリアサイドフレーム6とを連結する構成を有する。
【0042】
具体的には、補強部材8は、リアクロスメンバ5の下端5eよりも上方Z1に突出してリアクロスメンバ5と車両前後方向Xに重複する第1部分8aと、第1部分8aよりも下方Z2の位置において閉断面11の内部に位置する第2部分8bとを有する。
【0043】
第1部分8aは、平板状の部分である。第2部分8bは、リアサイドフレーム6の内面に接合可能な構成を有する。具体的には、第2部分8bは、第1部分8aの下端に連続する平板状の本体部8b1と、本体部8b1の下端から車両前方側X1に延びる下フランジ部8b2と、本体部8b1における車幅方向Yの内側端(車内側Y1の側端)から車両前方側X1に延びる内フランジ部8b3と、本体部8b1における車幅方向Yの外側端(車外側Y2の側端)から車両前方側X1に延びる外フランジ部8b4とを有する。
【0044】
上記の構成の補強部材8では、第1部分8aは、リアクロスメンバ5の前壁5b1または後壁5c1(本実施形態では、リアメンバ5cの後壁5c1)に接合されている。一方、第2部分8bの下フランジ部8b2は、リアサイドフレーム6の底壁6aに接合されている。また、内フランジ部8b3は、リアサイドフレーム6の内側壁6cに接合されている。さらに、外フランジ部8b4は、リアサイドフレーム6の外側壁6bおよびサイドシルインナ7aにそれぞれ接合されている。
【0045】
これにより、補強部材8は、第1部分8aがリアクロスメンバ5に接合されるとともに第2部分8bがリアサイドフレーム6の内面に接合されることにより、リアクロスメンバ5とリアサイドフレーム6とを上下方向Zに連結することが可能である。
【0046】
また、本実施形態の補強部材8は、上下方向Zの振動入力に対する剛性を高める剛性強化部として上下方向Zに延びるビード8fを有する。ビード8fは、補強部材8の上端まで連続して上下方向Zに延び、具体的には、補強部材8の第1部分8aおよび第2部分8bの本体部8b1における幅方向中心の位置で当該第1部分8aおよび本体部8b1の全長にわたって延びている。ビード8fは、車両後方側X2に突出して上下方向Zに延びる形状であり、補強部材8をプレス成形するときに当該補強部材8と一体成形される。
【0047】
さらに本実施形態では、補強部材8は、第1部分8aと第2部分8bとの間で車両前後方向Xに屈曲する屈曲部8eを有する。具体的には、屈曲部8eは、第1部分8aと第2部分8bの本体部8b1の境界部分において車幅方向Yに延びている。第2部分8bの本体部8b1が垂直方向に立てられた状態では、屈曲部8eを起点として、第1部分8aが車両後方側X2に傾斜している。これにより、リアクロスメンバ5の車両後方側X2の後壁5c1が車両後方側X2に若干傾斜していても、補強部材8では、第2部分8bの本体部8b1を垂直方向に立てた状態を維持しながら、第1部分8aは、傾斜する後壁5c1に対して面接触した状態で接合可能である。この屈曲部8eによって、リアクロスメンバ5とリアサイドフレーム6と間における相対位置の公差を吸収することが可能になる。
【0048】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態の車両の下部車体構造は、フロントフロアパネル2およびリアフロアパネル3における車両前後方向Xの端部に接合されたリアクロスメンバ5と、車両前後方向Xに延びてフロアパネル2、3と閉断面11を構成する一対のリアサイドフレーム6を備えた構成において、上下方向Zに延び、リアクロスメンバ5の車幅方向Y両側の端部5aとリアサイドフレーム6とが平面視で重複する領域R(
図2参照)において、リアクロスメンバ5とリアサイドフレーム6とを各々連結する一対の補強部材8を備えている。
【0049】
この補強部材8は、
図3~7および
図9に示されるように、当該補強部材8の第1部分8aがリアクロスメンバ5に接合されるとともに第1部分8aよりも下側の第2部分8bが上記閉断面11の内部でリアサイドフレーム6の内面に接合されることにより、リアクロスメンバ5とリアサイドフレーム6とを上下方向Zに連結する。
【0050】
これにより、車両走行時においてフロアパネルが上下方向Zに振動することにより、フロア膜共振を起因としてリアクロスメンバ5が、その車幅方向Y中央部が上下方向Zに曲げ変形するモードになったときに、補強部材8がリアクロスメンバ5の車幅方向Y端部に対して上下方向Zに突っ張る(押す)、あるいは引っ張ることにより、リアクロスメンバ5の上下変位を抑制する。そのため、リアクロスメンバ5の上下変形モードを抑制し、フロア膜共振を抑制することが可能になる。その結果、フロア面積の大きい車両においてもフロアの上下振動、すなわち、フロア膜振動を十分に抑制することが可能になる。
【0051】
(2)
本実施形態の車両の下部車体構造では、
図3~4に示されるように、リアクロスメンバ5の車両前後方向Xの両側にフロントフロアパネル2およびリアフロアパネル3がそれぞれ配置され、かつ、当該フロントフロアパネル2およびリアフロアパネル3同士が異なる高さになるようにリアクロスメンバ5にそれぞれ接合されることにより、フロントフロアパネル2およびリアフロアパネル3の間に段差部12が形成されている。
【0052】
かかる構成によれば、リアクロスメンバ5の車両前後方向Xの両側にそれぞれフロントフロアパネル2およびリアフロアパネル3が接合されることによって段差部12を形成することが可能になり、車室内のフロアの高さを車両前後方向Xの位置で変えることが可能である。
【0053】
(3)
本実施形態の車両の下部車体構造では、
図9に示されるように、リアクロスメンバ5は、車両前後方向Xに互いに離間した前壁5b1および後壁5c1を有する。リアサイドフレーム6は、閉断面11の底面を構成する底壁6aを有する。補強部材8は、第1部分8aがリアクロスメンバ5の前壁5b1または後壁5c1(本実施形態では、後壁5c1)に接合されるとともに第2部分8bがリアサイドフレーム6の底壁6aに接合されることにより、リアクロスメンバ5とリアサイドフレーム6とを上下方向Zに連結する。
【0054】
かかる構成によれば、補強部材8の第1部分8aがリアクロスメンバ5の後壁5c1に接合されるとともに第2部分8bがリアサイドフレーム6の底壁6aに接合されることにより、車両走行時においてフロアパネルの上下振動に伴ってリアクロスメンバ5が上下方向Zへ曲げ変形するモードになる際に、リアクロスメンバ5から補強部材8の第1部分8aへ上下方向Zのせん断荷重が入力されるので、補強部材8に曲げ荷重が入力される場合に比べて補強部材8は大きな入力荷重に耐えることが可能になり、補強部材8の強度面にとって有利である。
【0055】
また、車両側突時(すなわち、車両側方からの車両等の衝突時)には、車幅方向Yに延びるリアクロスメンバ5は、車幅方向Yからの圧縮荷重の入力によって上下方向Zへ曲げ変形するモードになるが、この場合も、補強部材8を介してリアクロスメンバ5からリアサイドフレーム6にも入力を分散することが可能であり、リアクロスメンバ5の変形を抑制することが可能である。
【0056】
なお、補強部材8の第1部分8aがリアクロスメンバ5の前壁5b1に接合されてもよい。この場合も上記の作用効果を奏することが可能である。
【0057】
(4)
本実施形態の車両の下部車体構造では、補強部材8は、上下方向Zの振動入力に対する剛性を高める剛性強化部としてビード8fを有する。かかる構成によれば、ビード8fにより、補強部材8の上下方向Zの振動入力に対する剛性を高めることが可能である。
【0058】
(5)
本実施形態の車両の下部車体構造では、剛性強化部は、上下方向Zに延びるビード8fである。かかる構成によれば、剛性強化部としてビード8fを補強部材8に設けることにより、補強部材8の上下方向Zの振動入力に対する剛性を容易かつ確実に高めることが可能である。
【0059】
(6)
本実施形態の車両の下部車体構造では、ビード8fは、補強部材8の上端まで連続して上下方向Zに延びる。かかる構成によれば、補強部材8の全高にわたって上下方向Zの振動入力に対する剛性を高めることが可能である。
【0060】
(7)
本実施形態の車両の下部車体構造では、リアサイドフレーム6は、
図5~7に示されるように、車幅方向Yに互いに離間する一対の側壁として外側壁6b、内側壁6cを有する。補強部材8の第2部分8b(具体的には、外フランジ部8b4および内フランジ部8b3)は、リアサイドフレーム6の外側壁6bおよび内側壁6cにそれぞれ接合されている。
【0061】
かかる構成によれば、補強部材8の第2部分8bがリアサイドフレーム6の外側壁6bおよび内側壁6cにそれぞれ接合されているので、リアクロスメンバ5の上下変位を確実に抑制することが可能であり、フロア膜共振の確実な抑制が可能になる。
【0062】
(8)
本実施形態の車両の下部車体構造は、
図1~4に示されるように、車体の車幅方向Y中央において車両前後方向Xに延びるフロアトンネル4を備える。フロントフロアパネル2は、フロアトンネル4の車幅方向Y両側の端部にそれぞれ接合されている。リアクロスメンバ5は、フロアトンネル4の後端4aに接合されている。
【0063】
かかる構成によれば、フロアトンネル4が車体の車幅方向Y中央において車両前後方向Xに延びるとともに、フロントフロアパネル2がフロアトンネル4の車幅方向Y両側の端部にそれぞれ接合されている。リアクロスメンバ5は、フロアトンネル4の後端4aに接合されているので、車両走行時においてフロントフロアパネル2の上下方向Zの振動がフロアトンネル4を介してリアクロスメンバ5に円滑に伝達される。これにより生じたリアクロスメンバ5の上下変位を上記の補強部材8を用いて抑制することにより、フロア膜共振の円滑な抑制が可能になる。
【0064】
(9)
本実施形態の車両の下部車体構造では、
図5~7および
図9に示されるように、補強部材8は、第1部分8aと第2部分8bとの間で車両前後方向Xに屈曲する屈曲部8eを有する。
【0065】
かかる構成によれば、補強部材8の屈曲部8eが、リアクロスメンバ5に接合される第1部分8aとリアサイドフレーム6に接合される第2部分8bとの間で車両前後方向Xに屈曲している。この屈曲部8eにより、リアクロスメンバ5とリアサイドフレーム6との間における相対位置の公差を吸収することが可能になり、補強部材8における第1部分8aおよび第2部分8bの2か所の接合を容易に行うことが可能である。
【0066】
(変形例)
(A)
上記の実施形態では、本発明の下部車体構造におけるクロスメンバの一例として、フロアトンネル4の後端4aに接合されたリアクロスメンバ5(いわゆるNo.3クロスメンバ)を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、フロアトンネルが無い車両(例えば、前輪駆動車(FF車)や電気自動車(EV)など)の場合には、リアクロスメンバ5よりも車両前方側X1のクロスメンバ(フロントクロスメンバ(いわゆるNo.1クロスメンバ)など)にも本発明を適用することが可能であり、その場合も、フロア膜振動に起因するクロスメンバの上下変位を抑制するとともにフロア膜共振を抑制することが可能である。
【0067】
ただし、上記実施形態のように、フロアトンネル4の後端4aに接合されたリアクロスメンバ5であれば、上記(本実施形態の特徴)の(2)のようにフロントフロアパネル2およびリアフロアパネル3によって段差部12を形成できる点、および、(8)のようにフロントフロアパネル2の振動をフロアトンネル4を介して円滑に伝達できる点で好ましい。
【0068】
(B)
上記の実施形態では、剛性強化部として、上下方向Zに延びるビード8fが補強部材8に設けられているが、本発明はこれに限定されるものではない。剛性強化部は、補強部材8の上下方向Zの振動入力に対する剛性を高めることができるものであればよく、ビード8f以外の剛性強化部として、例えば、上下方向に延びる帯状の金属板材などからなるパッチなどを補強部材8に設けてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 車体
2 フロントフロアパネル
3 リアフロアパネル
4 フロアトンネル
5 リアクロスメンバ
5a 車幅方向の端部
5b フロントメンバ
5b1 前壁
5c リアメンバ
5c1 後壁
5d 閉断面
6 リアサイドフレーム(フレーム部材)
6a 底壁
6b 外側壁
6c 内側壁
7 サイドシル
8 補強部材
8a 第1部分
8b 第2部分
8e 屈曲部
8f ビード(剛性強化部)
11 閉断面