(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160409
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】タービンハウジングおよび可変容量型のターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20231026BHJP
F02B 37/24 20060101ALI20231026BHJP
F01D 25/24 20060101ALI20231026BHJP
F01D 17/16 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
F02B39/00 D
F02B37/24
F01D25/24 E
F01D25/24 H
F01D17/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070779
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グプタ ビピン
(72)【発明者】
【氏名】谷口 直
(72)【発明者】
【氏名】中原 優也
【テーマコード(参考)】
3G005
3G071
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA30
3G005GA04
3G005GB71
3G005GB86
3G005GB88
3G005JA28
3G071BA26
3G071DA16
(57)【要約】
【課題】ノズルベーンの信頼性を向上できるタービンハウジングおよび該タービンハウジングを備える可変容量型のターボチャージャを提供する。
【解決手段】タービンハウジングは、スクロール流路の外周端とハブ側流路壁面の外周端とを繋ぐスクロール流路壁面を有する。スクロール流路壁面は、舌部を通過するタービンロータの軸線に沿った断面において、スクロール流路の外周端に接続された外周端からタービンロータの径方向の内側に向かって延びる第1円弧部と、第1円弧部の内周端とハブ側流路壁面の外周端とを繋ぐクリフ部であって、第1円弧部の内周端に接続されるとともに第1円弧部との間の変曲点を形成する第2円弧部を含むクリフ部と、を含む。変曲点は、ハブ側流路壁面の外周端よりタービンロータの軸方向における先端側、且つ、ハブ側流路壁面の外周端より上記径方向の外側にオフセットされて位置する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンロータを収容するためのタービンハウジングであって、
前記タービンロータの軸線回りの周方向に沿って延在するスクロール流路を形成するスクロール流路形成部と、
前記スクロール流路から前記スクロール流路の内周側に配置される前記タービンロータへ排ガスを導くためのノズル流路を形成するノズル流路形成部であって、前記ノズル流路を画定するシュラウド側流路壁面およびハブ側流路壁面を有するノズル流路形成部と、
前記ノズル流路における前記排ガスの流れを調整するための可変ノズルユニットであって、前記ノズル流路に配置される少なくとも1つのノズルベーンを含む可変ノズルユニットと、を備え、
前記スクロール流路形成部は、前記スクロール流路の外周端と前記ハブ側流路壁面の外周端とを繋ぐスクロール流路壁面を含み、
前記スクロール流路壁面は、前記スクロール流路形成部の舌部を通過する前記軸線に沿った断面において、
外周端が前記スクロール流路の前記外周端に接続され、前記外周端から前記タービンロータの径方向の内側に向かって延びる第1円弧部と、
一端が前記第1円弧部の内周端に接続され、他端が前記ハブ側流路壁面の前記外周端に接続されるクリフ部であって、前記第1円弧部の前記内周端に接続されるとともに前記第1円弧部との間の変曲点を形成する第2円弧部を含むクリフ部と、を含み、
前記変曲点は、前記ハブ側流路壁面の前記外周端より前記タービンロータの軸方向における先端側、且つ、前記ハブ側流路壁面の前記外周端より前記タービンロータの前記径方向の外側にオフセットされて位置する
タービンハウジング。
【請求項2】
前記クリフ部は、前記第2円弧部の内周端から前記軸方向の前記先端側とは反対側である後端側、且つ前記径方向の内側に向かって延びる傾斜部であって、前記軸方向の前記後端側に向かうにつれて前記タービンロータの前記軸線からの距離が短くなるように構成された傾斜部をさらに含む、
請求項1に記載のタービンハウジング。
【請求項3】
前記クリフ部は、
前記第2円弧部の内周端から前記軸方向に沿って前記軸方向の前記先端側とは反対側である後端側に延在する延在部と、
前記延在部の前記後端側の端から前記軸方向の前記後端側、且つ前記径方向の内側に向かって延びる第3円弧部と、をさらに含む、
請求項1に記載のタービンハウジング。
【請求項4】
前記クリフ部の前記一端と前記他端との間の前記軸方向における長さをXと定義した場合に、前記長さXは、前記スクロール流路の下流側に向かうにつれて小さくなるように構成された、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のタービンハウジング。
【請求項5】
前記クリフ部の前記一端と前記他端との間の前記軸方向における長さをX、前記クリフ部における前記長さXの最大値をXmax、前記ハブ側流路壁面の前記外周端における前記ノズル流路の前記軸方向における長さをL、と定義した場合に、前記最大値Xmaxは、0.75×L≦Xmax≦1.25×Lの条件を満たす、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のタービンハウジング。
【請求項6】
前記クリフ部の前記一端と前記他端との間の前記径方向における長さをYと定義した場合に、前記長さYは、前記スクロール流路の下流側に向かうにつれて小さくなるように構成された、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のタービンハウジング。
【請求項7】
前記クリフ部の前記一端と前記他端との間の前記径方向における長さをYと定義した場合に、前記長さYは、所定の周方向範囲において一定となるように構成された、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のタービンハウジング。
【請求項8】
前記クリフ部の前記一端と前記他端との間の前記径方向における長さをY、前記クリフ部における前記長さYの最大値をYmax、前記スクロール流路形成部の前記舌部を通過する前記軸線に沿った断面における前記スクロール流路の前記径方向の最大長さをDmaxと定義した場合に、前記最大値Ymaxは、0≦Ymax≦0.7×Dmaxの条件を満たす、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のタービンハウジング。
【請求項9】
前記タービンハウジングの前記周方向における前記舌部の角度位置を0°とし、前記舌部から前記スクロール流路の下流側に向かって徐々に角度が大きくなるように角度位置θを定義した場合に、
前記クリフ部の下流端の角度位置θmaxは、120°≦θmax≦180°の条件を満たす、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のタービンハウジング。
【請求項10】
前記スクロール流路に気体を導くための第1気体導入口と、
前記スクロール流路に気体を導くための第2気体導入口であって、前記第1気体導入口よりも前記径方向における外側に設けられた第2気体導入口と、
前記第1気体導入口により前記タービンハウジングの内部に導かれた前記気体と前記第2気体導入口により前記タービンハウジングの内部に導かれた前記気体とが合流する合流流路であって、前記スクロール流路の上流端に連通する合流流路、を形成する合流流路形成部と、をさらに備える、
請求項1乃至3の何れか1項に記載のタービンハウジング。
【請求項11】
前記合流流路形成部は、前記合流流路の下流側に向かうにつれて前記合流流路の流路面積が減少するように構成された絞り部を含み、
前記絞り部は、前記軸線に直交する断面において、
前記合流流路を形成する内側壁面であって、前記合流流路の下流側に向かうに連れて前記軸線からの距離が大きくなる内側壁面と、
前記内側壁面よりも前記軸線から離れた側に形成されて前記内側壁面との間に前記合流流路を形成する外側壁面であって、前記合流流路の下流側に向かうに連れて前記軸線からの距離が小さくなる外側壁面と、を有する、
請求項10に記載のタービンハウジング。
【請求項12】
請求項1乃至3の何れか1項に記載のタービンハウジングと、
前記タービンハウジングに回転可能に収容されたタービンロータと、を備える、
可変容量型のターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タービンハウジングおよび該タービンハウジングを備える可変容量型のターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン(内燃機関)から排出される排ガスのエネルギを利用してエンジンの吸気を過給するターボチャージャとして、可変容量タービンを備える可変容量型のターボチャージャが知られている(例えば、特許文献1参照)。可変容量タービンは、該タービンのスクロール流路からタービンロータに送るための排ガス流路(ノズル流路)に複数のノズルベーンが周方向に並んで配置されており、これらのノズルベーンの翼角を外部からアクチュエータにより変化させることで、排ガス流路の流路断面積(隣接するノズルベーン間の流路)を調整できるようになっている。可変容量タービンは、排ガス流路の流路断面積を調整することで、タービンロータに導かれる排ガスの流速や圧力を変化させて過給効果を高めるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、エンジンの脈動に伴い可変容量タービンに導入される排ガスの圧力比が変動することで、ノズルベーンに加えられる荷重(排ガスからの流体力)が変化する。ノズルベーンに作用する荷重により、ノズルベーンに固定されたベーンシャフトと、ノズルベーンを支持する他部材との間のクリアランスが狭まり、接触することがある。可変容量タービンの運転中にベーンシャフトと上記他部材との接触が頻繁に生じると、ベーンシャフトに摩耗が生じ損傷の原因となる虞がある。
【0005】
エンジンの脈動1周期程度の短期間において、ベーンシャフトに作用する荷重の作用方向が逆転する場合には、上記接触が頻繁に生じてベーンシャフトに摩耗の生じるリスクが高く、ノズルベーンの信頼性が低下するため、対策を講じる必要がある。特に、スクロール流路の舌部近傍に配置されたノズルベーンは、排ガスの流動時に排ガスの旋回流や舌部で生じるウェイク(流動歪み)の影響により、エンジンの脈動1周期程度の短期間において、ベーンシャフトに作用する荷重の作用方向が逆転することがある。なお、特許文献1は、内燃機関の脈動に伴うベーンシャフトの摩耗を抑制し、ノズルベーンの信頼性を向上させるという課題に着目したものではない。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、ノズルベーンの信頼性を向上できるタービンハウジングおよび該タービンハウジングを備える可変容量型のターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係るタービンハウジングは、
タービンロータを収容するためのタービンハウジングであって、
前記タービンロータの軸線回りの周方向に沿って延在するスクロール流路を形成するスクロール流路形成部と、
前記スクロール流路から前記スクロール流路の内周側に配置される前記タービンロータへ排ガスを導くためのノズル流路を形成するノズル流路形成部であって、前記ノズル流路を画定するシュラウド側流路壁面およびハブ側流路壁面を有するノズル流路形成部と、
前記ノズル流路における前記排ガスの流れを調整するための可変ノズルユニットであって、前記ノズル流路に配置される少なくとも1つのノズルベーンを含む可変ノズルユニットと、を備え、
前記スクロール流路形成部は、前記スクロール流路の外周端と前記ハブ側流路壁面の外周端とを繋ぐスクロール流路壁面を含み、
前記スクロール流路壁面は、前記スクロール流路形成部の舌部を通過する前記軸線に沿った断面において、
外周端が前記スクロール流路の前記外周端に接続され、前記外周端から前記タービンロータの径方向の内側に向かって延びる第1円弧部と、
一端が前記第1円弧部の内周端に接続され、他端が前記ハブ側流路壁面の前記外周端に接続されるクリフ部であって、前記第1円弧部の前記内周端に接続されるとともに前記第1円弧部との間の変曲点を形成する第2円弧部を含むクリフ部と、を含み、
前記変曲点は、前記ハブ側流路壁面の前記外周端より前記タービンロータの軸方向における先端側、且つ、前記ハブ側流路壁面の前記外周端より前記タービンロータの前記径方向の外側にオフセットされて位置する。
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態に係る可変容量型のターボチャージャは、
前記タービンハウジングと、
前記タービンハウジングに回転可能に収容されたタービンロータと、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、ノズルベーンの信頼性を向上できるタービンハウジングおよび該タービンハウジングを備える可変容量型のターボチャージャが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係る可変容量型のターボチャージャの軸線に沿った概略断面図である。
【
図2】一実施形態に係る可変容量型のターボチャージャの軸線に直交する概略断面図である。
【
図3】一実施形態に係る可変容量型のターボチャージャを備える内燃機関システムの概略図である。
【
図4】比較例に係るタービンハウジングの舌部を通過する軸線に沿った概略断面図である。
【
図5】比較例における舌部近傍に位置するノズルベーンの荷重評価結果を説明するための説明図である。
【
図6】一実施形態に係るタービンハウジングの舌部を通過する軸線に沿った概略断面図である。
【
図7】一実施形態に係るタービンハウジングの舌部を通過する軸線に沿った概略断面図である。
【
図8】一実施形態におけるクリフ部の軸方向における長さXおよび径方向における長さYの各々と、角度位置θとの関係を説明するための説明図である。
【
図9】一実施形態におけるクリフ部の軸方向における長さXおよび径方向における長さYの各々と、角度位置θとの関係を説明するための説明図である。
【
図10】一実施形態におけるクリフ部の軸方向における長さXおよび径方向における長さYの各々と、角度位置θとの関係を説明するための説明図である。
【
図11】一実施形態におけるスクロール流路壁面の複数の角度位置における形状を説明するための説明図である。
【
図12】一実施形態におけるクリフ部の一端と他端との間の軸方向における長さの最大値と、クリフ部が形成された周方向範囲におけるスクロール流路からノズル流路への排ガスの流入量との関係を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0012】
図1は、一実施形態に係る可変容量型のターボチャージャ1の軸線LAに沿った概略断面図である。
図2は、一実施形態に係る可変容量型のターボチャージャ1の軸線LAに直交する概略断面図である。幾つかの実施形態に係る可変容量型のターボチャージャ1は、
図1、
図2に示されるように、タービンハウジング2と、タービンハウジング2に回転可能に収容されたタービンロータ3と、を備える。
【0013】
以下、タービンロータ3の軸線LAが延在する方向をタービンロータ3の軸方向と定義し、上記軸方向のうち、タービンロータ3の背面に対して翼面が位置する側を先端側と定義し、先端側とは反対側である、タービンロータ3の翼面に対して背面が位置する側を後端側と定義する。また、タービンロータ3の軸線LAに直交する方向を径方向と定義する。上記径方向のうち、径方向における外側を外周側と定義し、径方向における内側を内周側と定義する。
【0014】
(タービンハウジング)
タービンハウジング2は、
図1、
図2に示されるように、スクロール流路40を形成するスクロール流路形成部4と、ノズル流路50を形成するノズル流路形成部5と、ノズル流路50における排ガスの流れを調整するための可変ノズルユニット6と、を備える。スクロール流路40およびノズル流路50の各々は、タービンハウジング2の内部に形成されている。
【0015】
(スクロール流路)
スクロール流路40は、タービンハウジング2の外部から導入された排ガスをタービンロータ3に導くための渦状流路である。スクロール流路40は、タービンロータ3よりも外周側において、タービンロータ3の軸線LA回りの周方向に沿って延在する。
【0016】
(ノズル流路)
ノズル流路50は、スクロール流路40からスクロール流路40の内周側に配置されるタービンロータ3へ排ガスを導くための流路である。ノズル流路50は、タービンロータ3の外周側を囲むように、スクロール流路40とタービンロータ3との間に形成されている。タービンハウジング2の内部に導入された排ガスは、スクロール流路40を通り、その次にノズル流路50を通った後に、タービンロータ3の外周側からタービンロータ3に導かれる。
【0017】
ノズル流路形成部5は、ノズル流路50を画定するシュラウド側流路壁面51およびハブ側流路壁面52を有する。シュラウド側流路壁面51およびハブ側流路壁面52の各々は、
図1に示されるような軸線LAに沿った断面において、軸線LAに交差(例えば、直交)する方向に沿って延在している。シュラウド側流路壁面51は、ハブ側流路壁面52よりも軸方向における先端側に位置し、ノズル流路50を挟んでシュラウド側流路壁面51に対向している。
【0018】
(ノズル流路形成部)
図1に示される実施形態では、ノズル流路形成部5は、ノズルマウント53と、ノズルマウント53よりも軸方向における先端側に配置されたノズルプレート54と、を含む。ノズル流路形成部5は、ノズルマウント53とノズルプレート54とを互いに離間した状態で支持する少なくとも1つ(図示例では複数)のノズルサポート55をさらに含んでいてもよい。ノズルマウント53、ノズルプレート54および複数のノズルサポート55の各々は、タービンハウジング2の内部に配置され、タービンハウジング2に固定されている。
【0019】
ノズルマウント53は、タービンロータ3の外周側において、タービンロータ3の周方向に沿って延在する第1環状板部56を含む。ノズルマウント53は、第1環状板部56の軸方向における先端側に形成されたハブ側流路壁面52を有する。
【0020】
ノズルプレート54は、タービンロータ3の外周側、且つ第1環状板部56よりも軸方向における先端側において、タービンロータ3の周方向に沿って延在する第2環状板部57を含む。ノズルプレート54は、第2環状板部57の軸方向における後端側に形成されたシュラウド側流路壁面51を有する。
【0021】
ノズルプレート54は、
図1に示されるように、第2環状板部57の内周縁部から軸方向に沿って軸方向における先端側に突出する筒状部58をさらに含んでいてもよい。ノズルプレート54は、シュラウド側流路壁面51に連なり凸状に湾曲するシュラウド面59を有する。シュラウド面59は、第2環状板部57の内周縁部に形成されており、タービンロータ3の翼先端との間に隙間(クリアランス)が形成されている。
【0022】
複数のノズルサポート55は、タービンロータ3の周方向に沿って各々が間隔をあけて配置される。複数のノズルサポート55の各々は、その一端が第1環状板部56に固定され、その他端が第2環状板部57に固定されている。ノズルプレート54は、複数のノズルサポート55により、ノズルマウント53から軸方向に離間して支持されている。
【0023】
(タービンロータ)
タービンロータ3は、ノズル流路50を通じてタービンロータ3の外周側(径方向における外側)から導入される排ガスを軸方向における先端側に導くように構成されている。
【0024】
(可変ノズルユニット)
可変ノズルユニット6は、ノズル流路50における排ガスの流れを調整するように構成されている。可変ノズルユニット6は、ノズル流路50に配置される少なくとも1つ(図示例では複数)のノズルベーン61を含む。複数のノズルベーン61は、
図2に示されるように、ノズル流路50においてタービンロータ3の周方向に沿って各々が間隔をあけて配置される。
【0025】
可変ノズルユニット6は、
図1に示されるように、複数のノズルベーン61の各々を連動させ、各々の回転中心RC回りに回動させるように構成された回動機構部62をさらに含む。可変ノズルユニット6は、回動機構部62により複数のノズルベーン61の翼角を変化させることで、ノズルベーン61間に形成される排ガス流路の流路断面積を増減できる。タービンハウジング2は、可変ノズルユニット6によりノズルベーン61間に形成される排ガス流路の流路断面積を増減させることで、タービンロータ3に導かれる排ガスの流速や圧力、流入角を変化させることができる。
【0026】
図1に示される実施形態では、回動機構部62は、ノズルマウント53に対してタービンロータ3の周方向に沿って回転可能に設けられた環状のドライブリング63と、複数のベーンシャフト64と、複数のレバープレート65と、ドライブリング63をドライブリング63の軸線LB回りに回動させるように構成されたアクチュエータ66と、アクチュエータ66の駆動を制御するように構成されたコントローラ(制御装置)67と、を含む。
【0027】
回動機構部62は、ベーンシャフト64およびレバープレート65の各々を、可変ノズルユニット6が含むノズルベーン61の数と同じ数だけ含んでいる。複数のベーンシャフト64の各々は、その一端が各々異なる(対応する)ノズルベーン61に固定され、その他端が各々異なる(対応する)レバープレート65の一端に機械的に連結されている。複数のレバープレート65の各々の他端は、ドライブリング63に機械的に連結されている。アクチュエータ66は、電動モータやエアシリンダなどを含む。アクチュエータ66は、ドライブリング63に機械的に連結されている。
【0028】
アクチュエータ66から複数のノズルベーン61までの動力伝達経路では、アクチュエータ66とドライブリング63、ドライブリング63と各レバープレート65、各レバープレート65と各ベーンシャフト64、の夫々が互いに連結し合うように構成されている。コントローラ67によりアクチュエータ66が駆動されると、アクチュエータ66の駆動に伴い、ドライブリング63が軸線LBを回転中心として回動される。ドライブリング63が回動されると、各レバープレート65および各ベーンシャフト64を介して、各ノズルベーン61がドライブリング63の回動に連動して各々の回転中心RC回りに回動し、その翼角を変化させる。
【0029】
ドライブリング63を周方向における一方側に回転させると、周方向において隣接するノズルベーン61同士が互いに離れる方向に移動し、ノズルベーン61間の排ガス流路の流路断面積が大きくなる。また、ドライブリング63を周方向における他方側に回転させると、周方向において隣接するノズルベーン61同士が互いに近づく方向に移動し、ノズルベーン61間の排ガス流路の流路断面積が小さくなる。
【0030】
(内燃機関システム、ターボチャージャ)
図3は、一実施形態に係る可変容量型のターボチャージャ1を備える内燃機関システム10の概略図である。内燃機関システム10は、
図3に示されるように、ターボチャージャ1と、複数の気筒12(図示例では4つの気筒12A、12B、12C、12D)を有するエンジン(内燃機関)11と、エンジン11の複数の気筒12から排出された排ガスをターボチャージャ1に導くための排ガスライン13(13A、13B、13C、13D)と、ターボチャージャ1において圧縮された気体(例えば、空気)をエンジン11の複数の気筒12に導くための気体ライン14と、を備える。
【0031】
ターボチャージャ1は、
図1に示されるように、エンジン11から排出された排ガスのエネルギにより駆動するように構成されたタービン15と、タービン15の駆動に連動して駆動し、エンジン11に送られる気体(例えば、空気)を圧縮するように構成された遠心圧縮機16と、を含む。タービン15は、上述したタービンハウジング2と、タービンロータ3と、を含む。遠心圧縮機16は、コンプレッサハウジング161と、コンプレッサハウジング161に回転可能に収容されたインペラ162と、を含む。
【0032】
ターボチャージャ1は、
図3に示されるように、タービンハウジング2と、タービンロータ3と、コンプレッサハウジング161と、インペラ162と、一端側にタービンロータ3が設けられ、且つ他端側にインペラ162が設けられた回転シャフト17と、タービンロータ3とインペラ162の間に配置され、回転シャフト17を回転可能に支持するように構成されたベアリング18と、を備える。インペラ162は、軸方向に沿って導入される気体をインペラ162の径方向における外側に導くように構成されている。
【0033】
コンプレッサハウジング161は、インペラ162を通過した気体を外部に排出するための気体排出口163を有する。気体ライン14は、その上流端(一端)が気体排出口163に接続され、その複数の分岐した下流端(他端)の各々が各々異なる(対応する)気筒12(12A、12B、12C、12D)に接続されている。コンプレッサハウジング161の内部に導かれ、インペラ162において圧縮された気体は、気体ライン14を通じてエンジン11の各気筒12に導かれ、各気筒12における燃焼に供される。
【0034】
タービンハウジング2は、その内部に排ガスを導入するための少なくとも1つ排ガス導入口(気体導入口)80を有する。排ガスライン13(13A、13B、13C、13D)は、その上流端(一端)が各々異なる(対応する)気筒12(12A、12B、12C、12D)に接続され、その下流端(他端)が少なくとも1つの排ガス導入口80に接続されている。
【0035】
図3に示される実施形態では、少なくとも1つ排ガス導入口80は、第1の排ガス導入口(気体導入口)81と、第2の排ガス導入口(気体導入口)82と、を含む。排ガスライン13は、気筒12Aに上流端が接続された排ガスライン13Aと、気筒12Dに上流端が接続された排ガスライン13Dとが合流する第1の合流ライン13Eを含む。換言すると、排ガスライン13Aは、排ガスライン13Dとの間で第1の合流ライン13Eを共用する。第1の合流ライン13Eの下流端は、第1の排ガス導入口81に接続されている。
【0036】
排ガスライン13は、気筒12Bに上流端が接続された排ガスライン13Bと、気筒12Cに上流端が接続された排ガスライン13Cとが合流する第2の合流ライン13Fを含む。換言すると、排ガスライン13Bは、排ガスライン13Cとの間で第2の合流ライン13Fを共用する。第2の合流ライン13Fの下流端は、第2の排ガス導入口82に接続されている。気筒12A、12Dからの排ガスは、第1の排ガス導入口81を通じてタービンハウジング2の内部に導かれる。気筒12B、12Cからの排ガスは、第2の排ガス導入口82を通じてタービンハウジング2の内部に導かれる。タービンハウジング2の内部に導かれた排ガスは、スクロール流路40およびノズル流路50を通過してタービンロータ3に導かれる。
【0037】
ターボチャージャ1のタービン15は、エンジン11からの排ガスのエネルギにより、タービンロータ3を回転させるように構成されている。インペラ162は、回転シャフト17を介してタービンロータ3に機械的に連結されているため、タービンロータ3の回転に連動して回転する。ターボチャージャ1の遠心圧縮機16は、インペラ162の回転により、インペラ162を通過する気体を圧縮し、上記気体の密度を高めてエンジン11に送るように構成されている。
【0038】
(スクロール流路形成部)
スクロール流路形成部4は、
図2に示されるような、タービンロータ3の軸線LAに直交する断面において、スクロール流路40に向かって突出してスクロール流路40の巻き始めと巻き終わりとを区切る舌部42を有する。
図2に示されるように、タービンハウジング2の軸線LA回りの周方向における舌部42の角度位置を0°とし、舌部42からスクロール流路40の下流側に向かって徐々に角度が大きくなるように角度位置θを定義する。
【0039】
(舌部近傍ノズルベーン)
図2に示されるような、タービンロータ3の軸線LAに直交する断面において、舌部42に最も近いノズルベーン61A、および、タービンロータ3の周方向においてノズルベーン61Aに隣接する2つのノズルベーン61B、61Cを舌部近傍ノズルベーンと定義する。
【0040】
(比較例に係るタービンハウジング)
図4は、比較例に係るタービンハウジング02の舌部42(
図3参照)を通過する軸線LAに沿った概略断面図である。
図4では、角度位置θが0°におけるタービンハウジング02の断面が示されている。なお、比較例に係るタービンハウジング02において、タービンハウジング2と共通する箇所には、同じ符号を付すこととし、重複する説明は適宜省略する。
【0041】
比較例に係るタービンハウジング02は、スクロール流路40の外周端401とハブ側流路壁面52の外周端521とを繋ぐスクロール流路壁面041を含む。スクロール流路壁面041には、後述するクリフ部72が形成されていない。スクロール流路壁面041は、スクロール流路40の外周端401からハブ側流路壁面52の外周端521までに亘り軸方向における後端側に向かうにつれて軸線LAからの距離(径方向距離)が小さくなる円弧形状を有する。該円弧形状は、軸方向における後端側に向かって凹む凹湾曲形状になっている。この場合には、スクロール流路壁面041に沿って径方向における内側に向かって流れる排ガスが、そのままノズル流路50に流入するようになっている。
【0042】
図5は、比較例における舌部近傍に位置するノズルベーン61A、61B、61Cの荷重評価結果を説明するための説明図である。エンジン11からの脈動条件を模擬し、エンジン11の1周期中にタービンハウジング2の排ガス導入口80に導かれる排ガスの圧力比が増減するような圧力条件下において、CFD解析を行い、ノズルベーン61に作用する荷重の変化を調べた。舌部近傍ノズルベーン61A、61B、61Cには、
図5に示されるように、エンジン11の1周期中において、或る作用方向(正方向)に作用する荷重VL1と、正方向とは逆方向(負方向)に作用方向に作用する荷重VL2と、が生じることがある。エンジン11の1周期程度の短期間において、ノズルベーン61に作用する荷重の作用方向が逆転する場合には、該ノズルベーン61に固定されたベーンシャフト64が他部材(ノズルマウント53)と衝突する回数が大きなものとなり、該ベーンシャフト64に摩耗が生じるリスクが高くなるので、ノズルベーン61の信頼性が低下する虞がある。エンジン11の1周期中において、ノズルベーン61に作用する正方向の最大荷重VL1maxの絶対値と負方向の最大荷重VL2maxの絶対値との和である荷重振幅ΔVLが大きい程、該ノズルベーン61に固定されたベーンシャフト64の摩耗リスクが高くなり、ノズルベーン61の信頼性が低いものとなる。
【0043】
図6及び
図7の各々は、一実施形態に係るタービンハウジング2の舌部を通過する軸線LAに沿った概略断面図である。
図6及び
図7では、角度位置θが0°におけるタービンハウジング2の断面が示されている。幾つかの実施形態に係るタービンハウジング2は、
図6及び
図7に示されるように、上述したスクロール流路形成部4と、上述したノズル流路形成部5と、上述した可変ノズルユニット6と、を備える。スクロール流路形成部4は、スクロール流路40の外周端401とハブ側流路壁面52の外周端521とを繋ぐスクロール流路壁面41を含む。外周端521は、シュラウド側流路壁面51との間にノズル流路50を形成されるハブ側流路壁面52の、タービンロータ3の径方向における外側の縁である。スクロール流路壁面41は、
図6及び
図7に示されるような、スクロール流路形成部4の舌部42を通過する軸線LAに沿った断面において、第1円弧部71と、クリフ部72と、を含む。
【0044】
第1円弧部71は、その外周端711がスクロール流路40の外周端401に接続され、その外周端711からタービンロータ3の径方向の内側に向かって延在している。第1円弧部71は、軸方向における後端側に向かうにつれて軸線LAからの距離(径方向距離)が小さくなるように、軸方向における後端側に向かって凹む凹湾曲形状を有する。
【0045】
クリフ部72は、その外周端(一端)721が第1円弧部71の内周端712に接続され、その内周端(他端)722がハブ側流路壁面52の外周端521に接続されている。クリフ部72は、第1円弧部71の内周端712に接続される第2円弧部73を含む。第2円弧部73は、軸方向における後端側に向かうにつれて軸線LAからの距離(径方向距離)が小さくなるように、軸方向における先端側に向かった突出する凸湾曲形状を有する。第2円弧部73は、第1円弧部71との間に変曲点P1を形成する。
【0046】
変曲点P1は、ハブ側流路壁面52の外周端521よりタービンロータ3の軸方向における先端側、且つ、ハブ側流路壁面52の外周端521よりタービンロータ3の径方向の外側にオフセットされて位置する。
【0047】
クリフ部72は、
図2に示されるように、その上流端723が舌部42に接続されるように、角度位置θが0°の角度位置に存在している。クリフ部72は、その上流端723からスクロール流路40の下流側に向かってタービンロータ3の周方向に沿って所定の周方向範囲(90°以上)に亘り延在している。
【0048】
上記の構成によれば、スクロール流路形成部4にクリフ部72を設けることで、スクロール流路40の舌部42近傍を流れる大きな旋回を伴いマッハ数が高い排ガスや、排ガスの旋回流により舌部で生じるウェイク(流動歪み)が、舌部42近傍においてノズル流路50に流入することを抑制できる。この場合には、スクロール流路40の下流側まで導かれて舌部42近傍よりもマッハ数が低減した排ガスをノズル流路50に導くことができるため、ノズルベーン61に作用する排ガスからの流体力を低減できる。例えば、エンジン11の1周期中において、舌部近傍ノズルベーン61A、61B、61Cに作用する荷重の作用方向の逆転を抑制したり、エンジン11の1周期中において、舌部近傍ノズルベーン61A、61B、61Cの荷重振幅ΔVLを低減させることができる。ノズルベーン61に作用する排ガスからの流体力を低減させることで、ノズルベーン61を支持するベーンシャフト64の摩耗を抑制できるため、ノズルベーン61の信頼性を向上できる。
【0049】
幾つかの実施形態では、
図6に示されるように、上述したクリフ部72は、第2円弧部73の内周端731から軸方向の後端側、且つ径方向の内側に向かって延びる傾斜部74をさらに含む。傾斜部74は、軸方向の後端側に向かうにつれてタービンロータ3の軸線LAからの距離(径方向距離)が短くなるように構成されている。傾斜部74は、
図6に示されるような軸線LAに沿った断面において、傾きが一定の直線状に形成されている。
【0050】
上記の構成によれば、傾斜部74を含むクリフ部72は、スクロール流路40の舌部42近傍を流れる大きな旋回を伴いマッハ数が高い排ガスや、排ガスの旋回流により舌部42で生じるウェイク(流動歪み)が、舌部42近傍においてノズル流路50に流入することを効果的に抑制できる。また、傾斜部74を含むクリフ部72は、クリフ部72(傾斜部74)に沿ってノズル流路50に向かって流れる排ガスが渦流を形成することを抑制できるため、クリフ部72に面するスクロール流路40における流路損失を抑制できる。
【0051】
幾つかの実施形態では、
図7に示されるように、上述したクリフ部72は、第2円弧部73の内周端731から軸方向に沿って軸方向の後端側に延在する延在部75と、延在部75の後端側の端751から軸方向の後端側、且つ径方向の内側に向かって延びる第3円弧部76と、をさらに含む。
【0052】
第3円弧部76は、軸方向における後端側に向かうにつれて軸線LAからの距離(径方向距離)が小さくなるように、軸方向における後端側に向かって凹む凹湾曲形状を有する。第3円弧部76の内周端は、ハブ側流路壁面52の外周端521に接続されている。
【0053】
上記の構成によれば、延在部75および第3円弧部76含むクリフ部72は、スクロール流路40の舌部42近傍を流れる大きな旋回を伴いマッハ数が高い排ガスや、排ガスの旋回流により舌部で生じるウェイク(流動歪み)が、舌部42近傍においてノズル流路50に流入することを効果的に抑制できる。なお、上述した傾斜部74を含むクリフ部72は、延在部75および第3円弧部76含むクリフ部72に比べて、クリフ部72に沿ってノズル流路50に向かって流れる排ガスが渦流を形成することを効果的に抑制できる。
【0054】
幾つかの実施形態では、
図2に示されるように、タービンハウジング2の周方向における舌部42の角度位置を0°とし、舌部42からスクロール流路40の下流側に向かって徐々に角度が大きくなるように角度位置θを定義した場合に、クリフ部72の下流端724の角度位置θmaxは、120°≦θmax≦180°の条件を満たす。
【0055】
上記の構成によれば、クリフ部72の角度位置θmaxが大きい程、スクロール流路40の下流側までに亘る広範囲において、スクロール流路40からノズル流路50への排ガスの流入の抑制効果を確保でき、スクロール流路40の下流側までに亘り排ガスを送ることができる。しかしながら、スクロール流路40の下流側において、スクロール流路40からノズル流路50への排ガスの流入量を確保する必要がある。クリフ部72の角度位置θmaxを、120°≦θmax≦180°の条件を満たすようにすることで、スクロール流路40の下流側までに亘り排ガスを送ることができ、且つスクロール流路40の下流側において、スクロール流路40からノズル流路50への排ガスの流入量を適切なものにすることができる。
【0056】
(クリフ部の長さX、Y)
図6及び
図7に示されるように、クリフ部72の外周端(一端)721と内周端(他端)722との間の軸方向における長さをXと定義し、クリフ部72の外周端(一端)721と内周端(他端)722との間の径方向における長さをYと定義する。また、クリフ部72の上流端723から下流端724までにおける上記長さXの最大値をXmaxと定義し、クリフ部72の上流端723から下流端724までにおける上記長さYの最大値をYmaxと定義する。
【0057】
図8~
図10の各々は、一実施形態におけるクリフ部72の軸方向における長さXおよび径方向における長さYの各々と、角度位置θとの関係を説明するための説明図である。
図11は、一実施形態におけるスクロール流路壁面41の複数の角度位置θにおける形状を説明するための説明図である。幾つかの実施形態では、
図8~
図10に示されるように、上述したクリフ部72の軸方向における長さXは、スクロール流路40の下流側に向かうにつれて小さくなるように構成されている。角度位置θが0°における長さXが長さXの最大値Xmaxになり、角度位置θがθmaxにおける長さXが長さXの最小値となっている。
【0058】
図11では、スクロール流路壁面41のクリフ部72を含む複数の角度位置θ(θ=20°、80°、140°)における形状と、スクロール流路壁面41のクリフ部72を含まない複数の角度位置θ(θ=200°、260°、320°)における形状とが示されている。
図11に示される実施形態では、スクロール流路壁面41は、クリフ部72が形成された周方向範囲(0°≦θ≦θmax)において、スクロール流路40の下流側に向かう(角度位置θが大きくなる)につれて、クリフ部72の外周端(一端)721が軸方向における後端側に移動するようになっている。なお、スクロール流路壁面41は、クリフ部72が形成されていない周方向範囲(θmax<θ<360°)において、スクロール流路40の下流側に向かう(角度位置θが大きくなる)につれて、径方向における内側に移動するようになっている。
【0059】
上記の構成によれば、クリフ部72の長さXが大きい程、スクロール流路40からノズル流路50への排ガスの流入の抑制効果が高い。クリフ部72の長さXをスクロール流路40の下流側に向かうにつれて小さくなるように構成することで、舌部42近傍などのスクロール流路40の上流側におけるスクロール流路40からノズル流路50への排ガスの流入を抑制しつつ、スクロール流路40の下流側において、スクロール流路40からノズル流路50への排ガスの流入量を適切なものにできる。
【0060】
図6及び
図7に示されるように、ハブ側流路壁面52の外周端521におけるノズル流路50の軸方向における長さをLと定義する。幾つかの実施形態では、上述したクリフ部72の軸方向における長さXの最大値Xmaxは、0.75×L≦Xmax≦1.25×Lの条件を満たす。
【0061】
図12は、一実施形態におけるクリフ部72の外周端(一端)721と内周端(他端)722との間の軸方向における長さXの最大値Xmaxと、クリフ部72が形成された周方向範囲(0°≦θ≦θmax)におけるスクロール流路40からノズル流路50への排ガスの流入量Fとの関係を説明するための説明図である。
図12に示されるように、最大値Xmaxがノズル流路50の軸方向における長さL以下の範囲において、最大値Xmaxが大きくなるにつれて、流入量Fが減少するとともに流入量Fの減少量が小さくなっている。
【0062】
上記の構成によれば、最大値Xmaxが小さすぎると、スクロール流路40からノズル流路50への排ガスの流入の抑制効果が低下する虞がある。また、最大値Xmaxが大きすぎると、クリフ部72に面するスクロール流路40において渦流が生じる可能性が高くなり、クリフ部72に面するスクロール流路40における流路損失が大きくなる虞がある。クリフ部72の最大値Xmaxを、0.75×L≦Xmax≦1.25×Lの条件を満たすようにすることで、クリフ部72に面するスクロール流路40における渦流の発生を抑制しつつ、スクロール流路40からノズル流路50への排ガスの流入の抑制効果を確保できる。
【0063】
幾つかの実施形態では、
図8に示されるように、上述したクリフ部72の径方向における長さYは、スクロール流路40の下流側に向かうにつれて小さくなるように構成されている。角度位置θが0°における長さYが長さYの最大値Ymaxになり、角度位置θがθmaxにおける長さYが長さYの最小値となっている。スクロール流路壁面41は、クリフ部72が形成された周方向範囲(0°≦θ≦θmax)において、スクロール流路40の下流側に向かう(角度位置θが大きくなる)につれて、クリフ部72の外周端(一端)721が径方向における内側に移動するようになっている。
【0064】
上記の構成によれば、クリフ部72の長さYが小さい程、クリフ部72に面してクリフ部72より径方向における内側に位置するスクロール流路40(ノズル流路50に連通する流路)の流路断面積が小さくなるので、スクロール流路40からノズル流路50への排ガスの流入の抑制効果が高い。クリフ部72の長さYをスクロール流路40の下流側に向かうにつれて大きくなるように構成することで、スクロール流路40の下流側までに亘る広範囲において、スクロール流路40からノズル流路50への排ガスの流入の抑制効果を確保できる。
【0065】
幾つかの実施形態では、
図9に示されるように、上述したクリフ部72の径方向における長さYは、所定の周方向範囲において一定となるように構成されている。
図9に示される実施形態では、上述したクリフ部72の径方向における長さYは、クリフ部72が形成された周方向範囲(0°≦θ≦θmax)において一定となるように構成されているが、クリフ部72が形成された周方向範囲の一部において一定となるように構成されていてもよい。
【0066】
上記の構成によれば、クリフ部72の長さYが一定となった所定の周方向範囲におけるスクロール流路40からノズル流路50への排ガスの流入の抑制効果は、クリフ部72の長さXの影響が支配的になるので、クリフ部72の長さXを調整することで、スクロール流路40からノズル流路50への排ガスの流入の抑制効果の容易に調整できる。
【0067】
なお、幾つかの実施形態では、
図10に示されるように、上述したクリフ部72の径方向における長さYは、スクロール流路40の下流側に向かうにつれて大きくなるように構成されていてもよい。
図10に示されるように、角度位置θが0°における長さYが長さYの最小値になり、角度位置θがθmaxにおける長さYが長さYの最大値Ymaxとなっていてもよい。また、
図11に示されるように、スクロール流路壁面41は、クリフ部72が形成された周方向範囲(0°≦θ≦θmax)において、スクロール流路40の下流側に向かう(角度位置θが大きくなる)につれて、クリフ部72の外周端(一端)721が径方向における外側に移動するようになっていてもよい。
【0068】
図6及び
図7に示されるように、スクロール流路形成部4の舌部42を通過する軸線LAに沿った断面(角度位置0°における断面)におけるスクロール流路40の径方向の最大長さをDmaxと定義する。幾つかの実施形態では、上述したクリフ部72の径方向における長さYの最大値Ymaxは、0≦Ymax≦0.7×Dmaxの条件を満たす。
【0069】
上記の構成によれば、最大値Ymaxが小さすぎると、スクロール流路40からノズル流路50への排ガスの流入の抑制効果が過大になり、クリフ部72に面するスクロール流路40に渦流が生じる可能性が高くなり、クリフ部72に面するスクロール流路40における流路損失が大きくなる虞がある。また、最大値Ymaxが大きすぎると、スクロール流路40からノズル流路50への排ガスの流入の抑制効果が低下する虞がある。クリフ部72の最大値Ymaxを、0≦Ymax≦0.7×Dmaxの条件を満たすようにすることで、クリフ部72に面するスクロール流路40における渦流の発生を抑制しつつ、スクロール流路40からノズル流路50への排ガスの流入の抑制効果を確保できる。
【0070】
幾つかの実施形態では、上述したタービンハウジング2は、
図2に示されるように、スクロール流路40に排ガス(気体)を導くための第1の排ガス導入口(気体導入口)81と、スクロール流路40に排ガス(気体)を導くための第2の排ガス導入口(気体導入口)82であって、第1の排ガス導入口81よりもタービンロータ3の径方向における外側に設けられた第2の排ガス導入口82と、合流流路83を形成する合流流路形成部84と、をさらに備える。合流流路83は、第1の排ガス導入口81によりタービンハウジング2の内部に導かれた排ガス(気体)と第2の排ガス導入口82によりタービンハウジング2の内部に導かれた排ガス(気体)とが合流するようになっている。合流流路83は、スクロール流路40の上流端402に連通している。
【0071】
第1の排ガス導入口81又は第2の排ガス導入口82からタービンハウジング2の内部に導かれた排ガスは、合流流路83を通過した後にスクロール流路40に流入する。エンジン11の1周期中において、第1の排ガス導入口81から主に排ガスが導かれる場合と、第2の排ガス導入口82から主に排ガスが導かれる場合と、第1の排ガス導入口81及び第2の排ガス導入口82の双方から排ガスが導かれる場合とが存在する。
【0072】
上記の構成によれば、第1の排ガス導入口81から主に排ガスが導かれる場合と、第2の排ガス導入口82から主に排ガスが導かれる場合とで、スクロール流路40に流入する排ガスの流入角が変化し、ノズル流路50に流入する排ガスの流入角も変化する。上記の構成のような、第1の排ガス導入口81及び第2の排ガス導入口82の各々から排ガスが導かれるような構成では、1つの気体導入口から排ガスが導かれる構成に比べて、エンジン11の1周期中における、ノズル流路50に流入する排ガスの流入角の変動が大きいため、ノズルベーン61に作用する荷重振幅ΔVLが大きくなり、該ノズルベーン(61に固定されたベーンシャフト64の摩耗リスクが高くなる虞がある。上記の構成においても、クリフ部72を設けることで、エンジン11の1周期中において、ノズルベーン61に作用する流体力(荷重振幅ΔVL)を効果的に低減できる。
【0073】
幾つかの実施形態では、
図2に示されるように、上述した合流流路形成部84は、合流流路83の下流側に向かうにつれて合流流路83の流路面積が減少するように構成された絞り部85を含む。
【0074】
絞り部85は、
図2に示されるような、軸線LAに直交する断面において、合流流路83を形成する内側壁面86と、内側壁面86よりも軸線LAから離れた側に形成されて内側壁面86との間に合流流路83を形成する外側壁面87と、を有する。内側壁面86は、合流流路83の下流側に向かうに連れて軸線LAからの距離が大きくなるように構成されている。外側壁面87は、合流流路83の下流側に向かうに連れて軸線LAからの距離が小さくなるように構成されている。
【0075】
上記の構成によれば、合流流路83に内側壁面86及び外側壁面87を有する絞り部85を設けることで、合流流路83からスクロール流路40に流入する排ガスの流速や流入角を安定的なものにできるため、第1の排ガス導入口81から主に排ガスが導かれる場合や第2の排ガス導入口82から主に排ガスが導かれる場合の何れであっても、スクロール流路40の下流側まで排ガスを送ることができる。これにより、スクロール流路40の舌部42近傍を流れる大きな旋回を伴いマッハ数が高い排ガスや、排ガスの旋回流により舌部で生じるウェイク(流動歪み)が、舌部42近傍においてノズル流路50に流入することを効果的に抑制できる。
【0076】
幾つかの実施形態に係る可変容量型のターボチャージャ1は、
図1に示されるように、上述したタービンハウジング2と、上述したタービンロータ3と、を備える。この場合には、タービンハウジング2におけるノズルベーン61の信頼性を向上させることで、ターボチャージャ1の信頼性を向上させることができる。
【0077】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0078】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0079】
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0080】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係るタービンハウジング(2)は、
タービンロータ(3)を収容するためのタービンハウジング(2)であって、
前記タービンロータ(3)の軸線(LA)回りの周方向に沿って延在するスクロール流路(40)を形成するスクロール流路形成部(4)と、
前記スクロール流路(40)から前記スクロール流路(40)の内周側に配置される前記タービンロータ(3)へ排ガスを導くためのノズル流路(50)を形成するノズル流路形成部(5)であって、前記ノズル流路(50)を画定するシュラウド側流路壁面(51)およびハブ側流路壁面(52)を有するノズル流路形成部(5)と、
前記ノズル流路(50)における前記排ガスの流れを調整するための可変ノズルユニット(6)であって、前記ノズル流路(50)に配置される少なくとも1つのノズルベーン(61)を含む可変ノズルユニット(6)と、を備え、
前記スクロール流路形成部(4)は、前記スクロール流路(40)の外周端(401)と前記ハブ側流路壁面(52)の外周端(521)とを繋ぐスクロール流路壁面(41)を含み、
前記スクロール流路壁面(41)は、前記スクロール流路形成部(4)の舌部(42)を通過する前記軸線(LA)に沿った断面において、
外周端(711)が前記スクロール流路(40)の前記外周端(401)に接続され、前記外周端(711)から前記タービンロータ(3)の径方向の内側に向かって延びる第1円弧部(71)と、
一端(721)が前記第1円弧部(71)の内周端(712)に接続され、他端(722)が前記ハブ側流路壁面(52)の前記外周端(521)に接続されるクリフ部(72)であって、前記第1円弧部(71)の前記内周端(712)に接続されるとともに前記第1円弧部(71)との間の変曲点(P1)を形成する第2円弧部(73)を含むクリフ部(72)と、を含み、
前記変曲点(P1)は、前記ハブ側流路壁面(52)の前記外周端(521)より前記タービンロータ(3)の軸方向における先端側、且つ、前記ハブ側流路壁面(52)の前記外周端(521)より前記タービンロータ(3)の前記径方向の外側にオフセットされて位置する。
【0081】
上記1)の構成によれば、スクロール流路形成部(4)にクリフ部(72)を設けることで、スクロール流路(40)の舌部(42)近傍を流れる大きな旋回を伴いマッハ数が高い排ガスや、排ガスの旋回流により舌部で生じるウェイク(流動歪み)が、舌部(42)近傍においてノズル流路(50)に流入することを抑制できる。この場合には、スクロール流路(40)の下流側まで導かれて舌部(42)近傍よりもマッハ数が低減した排ガスをノズル流路(50)に導くことができるため、ノズルベーン(61)に作用する排ガスからの流体力を低減できる。ノズルベーン(61)に作用する排ガスからの流体力を低減させることで、ノズルベーン(61)を支持するベーンシャフト(64)の摩耗を抑制できるため、ノズルベーン(61)の信頼性を向上できる。
【0082】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のタービンハウジング(2)であって、
前記クリフ部(72)は、前記第2円弧部(73)の内周端(731)から前記軸方向の前記先端側とは反対側である後端側、且つ前記径方向の内側に向かって延びる傾斜部(74)であって、前記軸方向の前記後端側に向かうにつれて記タービンロータ(3)の前記軸線(LA)からの距離が短くなるように構成された傾斜部(74)をさらに含む。
【0083】
上記2)の構成によれば、傾斜部(74)を含むクリフ部(72)は、スクロール流路(40)の舌部(42)近傍を流れる大きな旋回を伴いマッハ数が高い排ガスや、排ガスの旋回流により舌部で生じるウェイク(流動歪み)が、舌部(42)近傍においてノズル流路(50)に流入することを効果的に抑制できる。また、傾斜部(74)を含むクリフ部(72)は、クリフ部(72)に沿ってノズル流路(50)に向かって流れる排ガスが渦流を形成することを抑制できるため、クリフ部(72)に面するスクロール流路(40)における流路損失を抑制できる。
【0084】
3)幾つかの実施形態では、上記1)に記載のタービンハウジング(2)であって、
前記クリフ部(72)は、
前記第2円弧部(73)の内周端(731)から前記軸方向に沿って前記軸方向の前記先端側とは反対側である後端側に延在する延在部(75)と、
前記延在部(75)の前記後端側の端(751)から前記軸方向の前記後端側、且つ前記径方向の内側に向かって延びる第3円弧部(76)と、をさらに含む。
【0085】
上記3)の構成によれば、延在部(75)および第3円弧部(76)を含むクリフ部(72)は、スクロール流路(40)の舌部(42)近傍を流れる大きな旋回を伴いマッハ数が高い排ガスや、排ガスの旋回流により舌部で生じるウェイク(流動歪み)が、舌部(42)近傍においてノズル流路(50)に流入することを効果的に抑制できる。
【0086】
4)幾つかの実施形態では、上記1)から上記3)までの何れかに記載のタービンハウジング(2)であって、
前記クリフ部(72)の前記一端(721)と前記他端(722)との間の前記軸方向における長さをXと定義した場合に、前記長さXは、前記スクロール流路(40)の下流側に向かうにつれて小さくなるように構成された。
【0087】
上記4)の構成によれば、クリフ部(72)の長さXが大きい程、スクロール流路(40)からノズル流路(50)への排ガスの流入の抑制効果が高い。クリフ部(72)の長さXをスクロール流路(40)の下流側に向かうにつれて小さくなるように構成することで、舌部(42)近傍などのスクロール流路(40)の上流側におけるスクロール流路(40)からノズル流路(50)への排ガスの流入を抑制しつつ、スクロール流路(40)の下流側において、スクロール流路(40)からノズル流路(50)への排ガスの流入量を適切なものにできる。
【0088】
5)幾つかの実施形態では、上記1)から上記4)までの何れかに記載のタービンハウジング(2)であって、
前記クリフ部(72)の前記一端(721)と前記他端(722)との間の前記軸方向における長さをX、前記クリフ部(72)における前記長さXの最大値をXmax、前記ハブ側流路壁面(52)の前記外周端(521)における前記ノズル流路(50)の前記軸方向における長さをL、と定義した場合に、前記最大値Xmaxは、0.75×L≦Xmax≦1.25×Lの条件を満たす。
【0089】
上記5)の構成によれば、最大値Xmaxが小さすぎると、スクロール流路(40)からノズル流路(50)への排ガスの流入の抑制効果が低下する虞がある。また、最大値Xmaxが大きすぎると、クリフ部(72)に面するスクロール流路(40)において渦流が生じる可能性が高くなり、クリフ部(72)に面するスクロール流路(40)における流路損失が大きくなる虞がある。クリフ部(72)の最大値Xmaxを、0.75×L≦Xmax≦1.25×Lの条件を満たすようにすることで、クリフ部(72)に面するスクロール流路(40)における渦流の発生を抑制しつつ、スクロール流路(40)からノズル流路(50)への排ガスの流入の抑制効果を確保できる。
【0090】
6)幾つかの実施形態では、上記1)から上記5)までの何れかに記載のタービンハウジング(2)であって、
前記クリフ部(72)の前記一端(721)と前記他端(722)との間の前記径方向における長さをYと定義した場合に、前記長さYは、前記スクロール流路(40)の下流側に向かうにつれて小さくなるように構成された。
【0091】
上記6)の構成によれば、クリフ部(72)の長さYが小さい程、クリフ部(72)に面してクリフ部(72)より径方向における内側に位置するスクロール流路(40、ノズル流路50に連通する流路)の流路断面積が小さくなるので、スクロール流路(40)からノズル流路(50)への排ガスの流入の抑制効果が高い。クリフ部(72)の長さYをスクロール流路(40)の下流側に向かうにつれて大きくなるように構成することで、スクロール流路(40)の下流側までに亘る広範囲において、スクロール流路(40)からノズル流路(50)への排ガスの流入の抑制効果を確保できる。
【0092】
7)幾つかの実施形態では、上記1)から上記6)までの何れかに記載のタービンハウジング(2)であって、
前記クリフ部(72)の前記一端(721)と前記他端(722)との間の前記径方向における長さをYと定義した場合に、前記長さYは、所定の周方向範囲において一定となるように構成された。
【0093】
上記7)の構成によれば、クリフ部(72)の長さYが一定となった所定の周方向範囲におけるスクロール流路(40)からノズル流路(50)への排ガスの流入の抑制効果は、クリフ部(72)の長さXの影響が支配的になるので、クリフ部(72)の長さXを調整することで、スクロール流路(40)からノズル流路(50)への排ガスの流入の抑制効果の容易に調整できる。
【0094】
8)幾つかの実施形態では、上記1)から上記7)までの何れかに記載のタービンハウジング(2)であって、
前記クリフ部(72)の前記一端(721)と前記他端(722)との間の前記径方向における長さをY、前記クリフ部(72)における前記長さYの最大値をYmax、前記スクロール流路形成部(4)の前記舌部(42)を通過する前記軸線(LA)に沿った断面における前記スクロール流路(40)の前記径方向の最大長さをDmaxと定義した場合に、前記最大値Ymaxは、0≦Ymax≦0.7×Dmaxの条件を満たす。
【0095】
上記8)の構成によれば、最大値Ymaxが小さすぎると、スクロール流路(40)からノズル流路(50)への排ガスの流入の抑制効果が過大になり、クリフ部(72)に面するスクロール流路(40)に渦流が生じる可能性が高くなり、クリフ部(72)に面するスクロール流路(40)における流路損失が大きくなる虞がある。また、最大値Ymaxが大きすぎると、スクロール流路(40)からノズル流路(50)への排ガスの流入の抑制効果が低下する虞がある。クリフ部(72)の最大値Ymaxを、0≦Ymax≦0.7×Dmaxの条件を満たすようにすることで、クリフ部(72)に面するスクロール流路(40)における渦流の発生を抑制しつつ、スクロール流路(40)からノズル流路(50)への排ガスの流入の抑制効果を確保できる。
【0096】
9)幾つかの実施形態では、上記1)から上記8)までの何れかに記載のタービンハウジング(2)であって、
前記タービンハウジング(2)の前記周方向における前記舌部(42)の角度位置を0°とし、前記舌部(42)から前記スクロール流路(40)の下流側に向かって徐々に角度が大きくなるように角度位置θを定義した場合に、
前記クリフ部(72)の下流端(724)の角度位置θmaxは、120°≦θmax≦180°の条件を満たす。
【0097】
上記9)の構成によれば、クリフ部(72)の角度位置θmaxが大きい程、スクロール流路(40)の下流側までに亘る広範囲において、スクロール流路(40)からノズル流路(50)への排ガスの流入の抑制効果を確保でき、スクロール流路(40)の下流側までに亘り排ガスを送ることができる。しかしながら、スクロール流路(40)の下流側において、スクロール流路(40)からノズル流路(50)への排ガスの流入量を確保する必要がある。クリフ部(72)の角度位置θmaxを、120°≦θmax≦180°の条件を満たすようにすることで、スクロール流路(40)の下流側までに亘り排ガスを送ることができ、且つスクロール流路(40)の下流側において、スクロール流路(40)からノズル流路(50)への排ガスの流入量を適切なものにすることができる。
【0098】
10)幾つかの実施形態では、上記1)から上記9)までの何れかに記載のタービンハウジング(2)であって、
前記スクロール流路(40)に気体を導くための第1気体導入口(81)と、
前記スクロール流路(40)に気体を導くための第2気体導入口(82)であって、前記第1気体導入口(81)よりも前記径方向における外側に設けられた第2気体導入口(82)と、
前記第1気体導入口(81)により前記タービンハウジング(2)の内部に導かれた前記気体と前記第2気体導入口(82)により前記タービンハウジング(2)の内部に導かれた前記気体とが合流する合流流路(83)であって、前記スクロール流路(40)の上流端(402)に連通する合流流路(83)、を形成する合流流路形成部(84)と、をさらに備える。
【0099】
上記10)の構成によれば、第1気体導入口(81)から主に排ガスが導かれる場合と、第2気体導入口(82)から主に排ガスが導かれる場合とで、スクロール流路(40)に流入する排ガスの流入角が変化し、ノズル流路(50)に流入する排ガスの流入角も変化する。上記10)の構成のような、第1気体導入口(81)及び第2気体導入口(82)の各々から排ガスが導かれるような構成では、1つの気体導入口から排ガスが導かれる構成に比べて、エンジン11の1周期中における、ノズル流路(50)に流入する排ガスの流入角の変動が大きいため、ノズルベーン(61)に作用する荷重振幅ΔVLが大きくなり、該ノズルベーン(61)に固定されたベーンシャフト(64)の摩耗リスクが高くなる虞がある。上記10)の構成においても、クリフ部(72)を設けることで、エンジン11の1周期中において、ノズルベーン(61)に作用する流体力(荷重振幅ΔVL)を効果的に低減できる。
【0100】
11)幾つかの実施形態では、上記10)に記載のタービンハウジング(2)であって、
前記合流流路形成部(84)は、前記合流流路(83)の下流側に向かうにつれて前記合流流路(83)の流路面積が減少するように構成された絞り部(85)を含み、
前記絞り部(85)は、前記軸線(LA)に直交する断面において、
前記合流流路(83)を形成する内側壁面(86)であって、前記合流流路(83)の下流側に向かうに連れて前記軸線(LA)からの距離が大きくなる内側壁面(86)と、
前記内側壁面(86)よりも前記軸線(LA)から離れた側に形成されて前記内側壁面(86)との間に前記合流流路(83)を形成する外側壁面(87)であって、前記合流流路(83)の下流側に向かうに連れて前記軸線(LA)からの距離が小さくなる外側壁面(87)と、を有する。
【0101】
上記11)の構成によれば、合流流路(83)に内側壁面(86)及び外側壁面(87)を有する絞り部(85)を設けることで、合流流路(83)からスクロール流路(40)に流入する排ガスの流速や流入角を安定的なものにできるため、第1気体導入口(81)から主に排ガスが導かれる場合や第2気体導入口(82)から主に排ガスが導かれる場合の何れであっても、スクロール流路(40)の下流側まで排ガスを送ることができる。これにより、スクロール流路(40)の舌部(42)近傍を流れる大きな旋回を伴いマッハ数が高い排ガスや、排ガスの旋回流により舌部で生じるウェイク(流動歪み)が、舌部(42)近傍においてノズル流路(50)に流入することを効果的に抑制できる。
【0102】
12)本開示の少なくとも一実施形態に係る可変容量型のターボチャージャ(1)は、
上記1)から上記11)までの何れかに記載のタービンハウジング(2)と、
前記タービンハウジングに回転可能に収容されたタービンロータ(3)と、を備える。
【0103】
上記12)の構成によれば、タービンハウジング(2)におけるノズルベーン(61)の信頼性を向上させることで、ターボチャージャ(1)の信頼性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0104】
1 ターボチャージャ
2 タービンハウジング
3 タービンロータ
4 スクロール流路形成部
5 ノズル流路形成部
6 可変ノズルユニット
10 内燃機関システム
11 エンジン
12,12A,12B,12C,12D 気筒
13,13A,13B,13C,13D 排ガスライン
13E,13F 合流ライン
14 気体ライン
15 タービン
16 遠心圧縮機
17 回転シャフト
18 ベアリング
40 スクロール流路
41 スクロール流路壁面
42 舌部
50 ノズル流路
51 シュラウド側流路壁面
52 ハブ側流路壁面
53 ノズルマウント
54 ノズルプレート
55 ノズルサポート
56 第1環状板部
57 第2環状板部
58 筒状部
59 シュラウド面
61 ノズルベーン
61A,61B,61C 舌部近傍ノズルベーン
62 回動機構部
63 ドライブリング
64 ベーンシャフト
65 レバープレート
66 アクチュエータ
67 コントローラ
71 第1円弧部
72 クリフ部
73 第2円弧部
74 傾斜部
75 延在部
76 第3円弧部
80 排ガス導入口
81 第1の排ガス導入口
82 第2の排ガス導入口
83 合流流路
84 合流流路形成部
85 絞り部
86 内側壁面
87 外側壁面
161 コンプレッサハウジング
162 インペラ
163 気体排出口
F 流入量
LA 軸線
P1 変曲点
VL1max,VL2max 最大荷重
VL1,VL2 荷重
Xmax,Ymax 最大値