(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160410
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】サーモスタットの故障判定装置
(51)【国際特許分類】
F01P 11/16 20060101AFI20231026BHJP
F01P 7/16 20060101ALI20231026BHJP
F01P 3/20 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
F01P11/16 E
F01P7/16 504E
F01P3/20 H
F01P3/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070780
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 鈴菜
(57)【要約】
【課題】車型や仕様などに応じて車両ごとに水温評価モデルを評価・作成する必要がなく、より少ない工数にて、冷却水の循環経路を切り替えるサーモスタットの故障を適切に判定することができる、サーモスタットの故障判定装置を提供する。
【解決手段】冷却水の循環経路にはラジエター経路とバイパス経路とがあり、サーモスタットは、冷却水の温度に応じてバイパス経路とラジエター経路を切り替えている。故障判定装置は、車両の製品出荷状態からの所定期間であってサーモスタットは正常とみなすことができる正常みなし期間では、冷却水の実際の温度上昇状態に基づいて、故障判定用の温度上昇状態である水温評価モデルに関連する水温評価モデル関連量を車両ごとに学習して記憶し、正常みなし期間の経過後では、冷却水の実際の温度上昇状態と、記憶した水温評価モデル関連量に基づいた車両ごとの水温評価モデルに基づいて、サーモスタットの故障を判定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された内燃機関の冷却水の循環経路に設けられたサーモスタットの故障を判定する、サーモスタットの故障判定装置であって、
前記循環経路は、
前記内燃機関から吐出された前記冷却水をラジエターで冷却して前記内燃機関に戻すラジエター経路と、前記内燃機関から吐出された前記冷却水を前記ラジエターを経由させることなく前記内燃機関に戻すバイパス経路と、があり、
前記サーモスタットは、
前記冷却水の温度が暖機完了温度未満の場合には前記循環経路を前記バイパス経路に設定し、前記冷却水の温度が前記暖機完了温度以上の場合には前記循環経路を前記ラジエター経路に設定するように前記循環経路を切り替えており、
前記故障判定装置は、
前記車両の製品出荷状態からの所定期間であって前記サーモスタットが正常であるとみなすことができる正常みなし期間の間では、前記サーモスタットが正常であるとみなして、前記内燃機関の始動後の前記冷却水の実際の温度上昇状態に基づいて、前記サーモスタットの故障を判定するための前記温度上昇状態である水温評価モデルに関連する水温評価モデル関連量を、前記車両ごとに学習して不揮発性記憶装置に記憶する、水温評価モデル関連量記憶部と、
前記正常みなし期間の経過後では、前記内燃機関の始動後の前記冷却水の実際の前記温度上昇状態と、記憶している前記水温評価モデル関連量に基づいた前記車両ごとの前記水温評価モデルに基づいて、前記サーモスタットの故障を判定する、サーモスタット故障判定部と、
を有する、
サーモスタットの故障判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のサーモスタットの故障判定装置であって、
前記水温評価モデルは、
前記冷却水の温度が前記暖機完了温度未満、かつ、前記サーモスタットが正常であって前記循環経路が前記バイパス経路に設定されている状態、からの前記内燃機関の始動の場合における前記冷却水の前記温度上昇状態である正常温度上昇状態と、
前記冷却水の温度が前記暖機完了温度未満、かつ、前記サーモスタットが故障であって前記循環経路が前記ラジエター経路に設定されている状態、からの前記内燃機関の始動の場合における前記冷却水の前記温度上昇状態であって前記正常温度上昇状態よりも緩やかな傾きで温度が上昇していく故障温度上昇状態と、
を区別可能な前記温度上昇状態であって、前記正常温度上昇状態と前記故障温度上昇状態との間となる前記温度上昇状態であり、
前記故障判定装置には、
前記内燃機関の始動後の前記冷却水の前記温度上昇状態の基準となる基準水温評価モデルが記憶されており、
前記故障判定装置は、
前記水温評価モデル関連量記憶部にて、前記内燃機関の始動後の前記冷却水の実際の前記温度上昇状態に基づいて、前記基準水温評価モデルを、自身が搭載されている前記車両に応じた前記水温評価モデルへ近づけるための前記水温評価モデル関連量を学習して前記不揮発性記憶装置に記憶し、
前記サーモスタット故障判定部にて、前記基準水温評価モデルと前記水温評価モデル関連量とに基づいて、自身が搭載されている前記車両に応じた前記水温評価モデルを作成して前記サーモスタットの故障を判定する、
サーモスタットの故障判定装置。
【請求項3】
請求項2に記載のサーモスタットの故障判定装置であって、
前記故障判定装置は、前記水温評価モデル関連量記憶部にて、
前記冷却水の温度が前記暖機完了温度未満の状態にて前記内燃機関を始動した計測開始時の前記冷却水の温度と、前記計測開始時から所定時間が経過後の計測終了時の前記冷却水の温度と、に基づいた前記計測開始時から前記計測終了時までの期間における前記バイパス経路の前記冷却水の温度上昇量と、
前記計測開始時から前記計測終了時までの期間の前記内燃機関への燃料噴射量の積算量に基づいた熱量である投入熱量と、
に基づいて前記バイパス経路で循環する前記冷却水の量であるバイパス経路水量を求め、求めた前記バイパス経路水量に基づいて前記水温評価モデル関連量を学習する、
サーモスタットの故障判定装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のサーモスタットの故障判定装置であって、
前記車両には、
前記車両の車室内の乗員へ暖気を吐出する乗員用ヒータが設けられている場合があり、
前記乗員用ヒータが設けられている場合には、
前記ラジエター経路および前記バイパス経路には、前記冷却水を前記乗員用ヒータへ経由させるヒータ経路が追加され、
前記故障判定装置には、前記乗員用ヒータの使用の有無を検出可能なヒータ使用状態が入力されており、
前記故障判定装置は、
前記ヒータ使用状態に基づいて、自身が搭載されている前記車両に前記乗員用ヒータが有ると判定した場合、
前記水温評価モデル関連量記憶部にて、前記乗員用ヒータを使用している場合での前記水温評価モデル関連量と、前記乗員用ヒータを使用していない場合での前記水温評価モデル関連量と、を別々に学習して別々に記憶し、
前記サーモスタット故障判定部にて、前記乗員用ヒータを使用している場合では前記乗員用ヒータを使用している場合での前記水温評価モデル関連量に基づいて前記車両ごとの前記水温評価モデルを作成し、前記乗員用ヒータを使用していない場合では前記乗員用ヒータを使用していない場合での前記水温評価モデル関連量に基づいて前記車両ごとの前記水温評価モデルを作成する、
サーモスタットの故障判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された内燃機関を冷却する冷却水の循環経路を切り替えるサーモスタットの故障を判定する、サーモスタットの故障判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に搭載された内燃機関を冷却する冷却水の循環経路には、内燃機関から吐出された冷却水をラジエターで冷却して内燃機関に戻すラジエター経路と、内燃機関から吐出された冷却水をラジエターを経由させることなく内燃機関に戻すバイパス経路と、が設定されている。そして循環経路にはサーモスタットが設けられており、当該サーモスタットは、冷却水の温度に応じて、循環経路を切り替えている。
【0003】
冷却水の温度が暖機完了温度(例えば70[℃])未満の場合では、サーモスタットは、循環経路をバイパス経路に設定して(ラジエターをバイパスして)冷却水を短時間で暖機完了温度へと昇温している。また冷却水の温度が暖機完了温度以上となった場合では、サーモスタットは、循環経路をラジエター経路に設定して、オーバーヒートとならないように内燃機関を適切に冷却している。
【0004】
このサーモスタットが故障して、冷却水の温度が暖機完了温度未満であるにもかかわらず循環経路がラジエター経路に設定されてしまった場合、暖機時間が必要以上に長くなり、例えば排気浄化装置の触媒の活性化が遅れて排気ガスが充分浄化されずに車外に排出される可能性がある。従って、サーモスタットの故障を適切に判定することが求められている。
【0005】
例えば特許文献1には、冷間始動時におけるエンジンの暖機性能を監視してサーモスタットの故障発生の有無を検知し得る、サーモスタット故障判定装置が開示されている。当該サーモスタット故障判定装置は、エンジンを経た冷却水の温度を検出する水温センサと、冷間始動時における冷却水の温度上昇を監視し、かつ、始動開始からのエンジンの予測水温を計算し、予測水温がサーモスタットの開弁温度に達した時の冷却水の温度が閾値を超えていない時にサーモスタットの故障と判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されたサーモスタット故障判定装置では、「予測水温」がサーモスタットの開弁温度に達したタイミングにて、実際の車両の水温が水温閾値を超えているか否かを判定するため、その車両に応じた「予測水温」を、予め故障判定装置に記憶させておく必要がある。エンジンの発熱量や冷却水の循環経路の水量は、車両に応じて異なるので、「予測水温」も車両に応じて異なるものになる。なお、車両には、車型と仕様(一般向け、寒冷地向けなど)などが有り、同じ車型でも、仕様が違うと循環経路の水量が異なる場合がある。つまり、車型と仕様に応じた、それぞれの「予測水温」を、実際の車型と仕様に応じて予め作成する必要がある。
【0008】
例えば
図3は、ある車両(例えば、車型A、仕様x)において、サーモスタットが正常な場合における内燃機関の始動後の冷却水の温度上昇状態(サーモスタット正常時)と、サーモスタットが故障の場合における内燃機関の始動後の冷却水の温度上昇状態(サーモスタット故障時)と、を示している。この車両の場合、「サーモスタット正常時」の温度上昇状態と、「サーモスタット故障時」の温度上昇状態と、の間となる「水温評価モデル」(予測水温)を予め作成しておき、実際の車両の温度上昇状態の温度が「水温評価モデル」よりも高い温度であるか否かにて、サーモスタットが故障であるか否かを判定できる。しかし、上述したように、車型と仕様に応じて、「サーモスタット正常時」「サーモスタット故障時」「水温評価モデル」のそれぞれが異なるので、車両に応じた「水温評価モデル」を作成する必要があり、そのために膨大な工数が必要となっている。
【0009】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、車型や仕様などに応じて車両ごとに水温評価モデルを作成する必要がなく、より少ない工数にて、冷却水の循環経路を切り替えるサーモスタットの故障を適切に判定することができる、サーモスタットの故障判定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、車両に搭載された内燃機関の冷却水の循環経路に設けられたサーモスタットの故障を判定する、サーモスタットの故障判定装置である。前記循環経路は、前記内燃機関から吐出された前記冷却水をラジエターで冷却して前記内燃機関に戻すラジエター経路と、前記内燃機関から吐出された前記冷却水を前記ラジエターを経由させることなく前記内燃機関に戻すバイパス経路と、がある。前記サーモスタットは、前記冷却水の温度が暖機完了温度未満の場合には前記循環経路を前記バイパス経路に設定し、前記冷却水の温度が前記暖機完了温度以上の場合には前記循環経路を前記ラジエター経路に設定するように前記循環経路を切り替えている。そして前記故障判定装置は、前記車両の製品出荷状態からの所定期間であって前記サーモスタットが正常であるとみなすことができる正常みなし期間の間では、前記サーモスタットが正常であるとみなして、前記内燃機関の始動後の前記冷却水の実際の温度上昇状態に基づいて、前記サーモスタットの故障を判定するための前記温度上昇状態である水温評価モデルに関連する水温評価モデル関連量を、前記車両ごとに学習して不揮発性記憶装置に記憶する、水温評価モデル関連量記憶部と、前記正常みなし期間の経過後では、前記内燃機関の始動後の前記冷却水の実際の前記温度上昇状態と、記憶している前記水温評価モデル関連量に基づいた前記車両ごとの前記水温評価モデルに基づいて、前記サーモスタットの故障を判定する、サーモスタット故障判定部と、を有する、サーモスタットの故障判定装置である。
【0011】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係るサーモスタットの故障判定装置であって、前記水温評価モデルは、前記冷却水の温度が前記暖機完了温度未満、かつ、前記サーモスタットが正常であって前記循環経路が前記バイパス経路に設定されている状態、からの前記内燃機関の始動の場合における前記冷却水の前記温度上昇状態である正常温度上昇状態と、前記冷却水の温度が前記暖機完了温度未満、かつ、前記サーモスタットが故障であって前記循環経路が前記ラジエター経路に設定されている状態、からの前記内燃機関の始動の場合における前記冷却水の前記温度上昇状態であって前記正常温度上昇状態よりも緩やかな傾きで温度が上昇していく故障温度上昇状態と、を区別可能な前記温度上昇状態であって、前記正常温度上昇状態と前記故障温度上昇状態との間となる前記温度上昇状態である。また前記故障判定装置には、前記内燃機関の始動後の前記冷却水の前記温度上昇状態の基準となる基準水温評価モデルが記憶されている。そして前記故障判定装置は、前記水温評価モデル関連量記憶部にて、前記内燃機関の始動後の前記冷却水の実際の前記温度上昇状態に基づいて、前記基準水温評価モデルを、自身が搭載されている前記車両に応じた前記水温評価モデルへ近づけるための前記水温評価モデル関連量を学習して前記不揮発性記憶装置に記憶し、前記サーモスタット故障判定部にて、前記基準水温評価モデルと前記水温評価モデル関連量とに基づいて、自身が搭載されている前記車両に応じた前記水温評価モデルを作成して前記サーモスタットの故障を判定する、サーモスタットの故障判定装置である。
【0012】
次に、本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係るサーモスタットの故障判定装置であって、前記故障判定装置は、前記水温評価モデル関連量記憶部にて、前記冷却水の温度が前記暖機完了温度未満の状態にて前記内燃機関を始動した計測開始時の前記冷却水の温度と、前記計測開始時から所定時間が経過後の計測終了時の前記冷却水の温度と、に基づいた前記計測開始時から前記計測終了時までの期間における前記バイパス経路の前記冷却水の温度上昇量と、前記計測開始時から前記計測終了時までの期間の前記内燃機関への燃料噴射量の積算量に基づいた熱量である投入熱量と、に基づいて前記バイパス経路で循環する前記冷却水の量であるバイパス経路水量を求め、求めた前記バイパス経路水量に基づいて前記水温評価モデル関連量を学習する、サーモスタットの故障判定装置である。
【0013】
次に、本発明の第4の発明は、上記第2の発明または第3の発明に係るサーモスタットの故障判定装置であって、前記車両には、前記車両の車室内の乗員へ暖気を吐出する乗員用ヒータが設けられている場合があり、前記乗員用ヒータが設けられている場合には、前記ラジエター経路および前記バイパス経路には、前記冷却水を前記乗員用ヒータへ経由させるヒータ経路が追加され、前記故障判定装置には、前記乗員用ヒータの使用の有無を検出可能なヒータ使用状態が入力されている。そして前記故障判定装置は、前記ヒータ使用状態に基づいて、自身が搭載されている前記車両に前記乗員用ヒータが有ると判定した場合、前記水温評価モデル関連量記憶部にて、前記乗員用ヒータを使用している場合での前記水温評価モデル関連量と、前記乗員用ヒータを使用していない場合での前記水温評価モデル関連量と、を別々に学習して別々に記憶し、前記サーモスタット故障判定部にて、前記乗員用ヒータを使用している場合では前記乗員用ヒータを使用している場合での前記水温評価モデル関連量に基づいて前記車両ごとの前記水温評価モデルを作成し、前記乗員用ヒータを使用していない場合では前記乗員用ヒータを使用していない場合での前記水温評価モデル関連量に基づいて前記車両ごとの前記水温評価モデルを作成する、サーモスタットの故障判定装置である。
【発明の効果】
【0014】
第1の発明によれば、車両の製品出荷状態からの所定期間であってサーモスタットが正常であるとみなすことができる正常みなし期間の間に、その車両に応じた水温評価モデルを作成するための水温評価モデル関連量を学習して不揮発性記憶装置に記憶しておく。そして正常みなし期間の経過後には、学習した水温評価モデル関連量に基づいて、その車両に応じた水温評価モデルを作成してサーモスタットの故障判定に使用する。これにより、車型や仕様などに応じて車両ごとに水温評価モデルを作成する必要がなく、より少ない工数にて、サーモスタットの故障を適切に判定することができる。
【0015】
第2の発明によれば、基準水温評価モデルを記憶しているので、その車両に応じた水温評価モデルの全体を学習して記憶する必要は無く、例えばその車両に応じた補正係数としての水温評価モデル関連量を記憶しておくだけで、その車両に応じた水温評価モデルを作成することができるので便利である。
【0016】
上述したように、車型や仕様に応じてバイパス経路の水量であるバイパス経路水量が異なっているため、従来では、車両ごとに水温評価モデルを作成する必要が有った。第3の発明によれば、その車両のバイパス経路水量を推定することで、車型や仕様を特定することが可能となり、より適切に水温評価モデル関連量を学習することができる。
【0017】
例えば仕様に応じて、冷却水の温度を利用した乗員用ヒータの有無が設定されている車両が有る。このような車両では、サーモスタットが正常であっても、乗員用ヒータの使用/非使用で冷却水の温度上昇状態が異なる。第4の発明によれば、乗員用ヒータを使用している場合の水温評価モデルと、乗員用ヒータを使用していない場合の水温評価モデルを、別々に作成することで、サーモスタットの故障を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1の実施の形態における、内燃機関の冷却水の循環経路(バイパス経路)と故障判定装置の概略を説明する図である。
【
図2】第1の実施の形態における、内燃機関の冷却水の循環経路(ラジエター経路)と故障判定装置の概略を説明する図である。
【
図3】サーモスタットが正常の場合の冷却水の温度上昇状態と、サーモスタットが故障の場合の温度上昇状態と、水温評価モデルと、の例を説明する図である。
【
図4】第1の実施の形態における、故障判定装置による[サーモスタットの故障判定の全体処理]の処理手順の例を説明するフローチャートである。
【
図5】故障判定装置が積算噴射量を算出する処理の例を説明するフローチャートである。
【
図6】
図4のフローチャートにおける[水温評価モデル関連量を学習]の詳細を説明するフローチャートである。
【
図7】
図4のフローチャートにおける[水温評価モデルの算出とサーモスタットの故障判定]の詳細を説明するフローチャートである。
【
図8】第1の実施の形態における[水温評価モデル情報]の例を説明する図である。
【
図9】基準水温評価モデル、(車型A、仕様x)の水温評価モデル関連量を用いて作成した水温評価モデル、(車型A、仕様y)の水温評価モデル関連量を用いて作成した水温評価モデル、の例を説明する図である。
【
図10】第1の実施の形態において、故障判定装置が水温評価モデル関連量を学習する際の動作の例を説明する図である。
【
図11】第2の実施の形態における、内燃機関の冷却水の循環経路(バイパス経路)と故障判定装置の概略を説明する図である。
【
図12】第2の実施の形態における、内燃機関の冷却水の循環経路(ラジエター経路)と故障判定装置の概略を説明する図である。
【
図13】乗員用ヒータがONの場合とOFFの場合のそれぞれに対して、サーモスタットが正常の場合の冷却水の温度上昇状態と、サーモスタットが故障の場合の温度上昇状態と、水温評価モデルと、の例を説明する図である。
【
図14】第2の実施の形態における、故障判定装置による[サーモスタットの故障判定の全体処理]の処理手順の例を説明するフローチャートである。
【
図15】
図14のフローチャートにおける[水温評価モデル関連量を学習]の詳細を説明するフローチャートである。
【
図17】
図14のフローチャートにおける[水温評価モデルの算出とサーモスタットの故障判定]の詳細を説明するフローチャートである。
【
図18】第2の実施の形態における[水温評価モデル情報]の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明し、第1、第2の実施の形態を順に説明する。
【0020】
●●[第1の実施の形態(
図1~
図10)]
●[冷却水の循環経路と故障判定装置の構成(
図1、
図2)]
図1及び
図2は、第1の実施の形態のサーモスタットの故障判定装置50を有する内燃機関システム1の全体構成の例を示している。内燃機関システム1は、内燃機関10、ラジエター20、サーモスタット40、故障判定装置50等を有している。なお
図1及び
図2に示す内燃機関システム1では、冷却水の循環経路以外のものについては記載を省略している。
【0021】
内燃機関10は、例えば車両に搭載されたディーゼルエンジンである。内燃機関10は、冷却水が流入され、冷却後の冷却水が吐出される。内燃機関10における冷却水の吐出口には、内燃機関吐出配管61の一方端(流入側)が接続されている。また内燃機関10における冷却水の流入口には、内燃機関流入配管65の他方端(流出側)が接続されている。また内燃機関10における冷却水の吐出口の近傍には、内燃機関10を冷却後の冷却水の温度を検出する冷却水温度検出装置31が設けられている。冷却水温度検出装置31は、例えば温度センサであり、冷却水の温度に応じた検出信号を故障判定装置50に出力する。また内燃機関10には、クランクシャフトの回転状態を検出するクランク回転検出装置32が設けられている。クランク回転検出装置32は、例えば回転センサであり、クランクシャフトの回転角度に応じた検出信号を故障判定装置50に出力する。また内燃機関10には、冷却水を循環させるウォーターポンプ34が設けられている。
【0022】
内燃機関10の冷却水の循環経路は、内燃機関吐出配管61、バイパス配管62、ラジエター流入配管63、ラジエター20、ラジエター吐出配管64、サーモスタット40、内燃機関流入配管65等にて構成されている。以下、各配管の説明にて、「一方端」は、その配管における冷却水の流入側を示し、「他方端」は、その配管における冷却水の流出側を示す。
【0023】
内燃機関吐出配管61の一方端は、内燃機関10における冷却水の吐出口に接続されている。内燃機関吐出配管61の他方端は、バイパス配管62の一方端とラジエター流入配管63の一方端に接続されている。バイパス配管62の一方端は、内燃機関吐出配管61の他方端とラジエター流入配管63の一方端に接続されている。バイパス配管62の他方端は、サーモスタット40におけるバイパス流入口に接続されている。
【0024】
ラジエター流入配管63の一方端は、内燃機関吐出配管61の他方端とバイパス配管62の一方端に接続されている。ラジエター流入配管63の他方端は、ラジエター20における冷却水の流入口に接続されている。ラジエター吐出配管64の一方端は、ラジエター20における冷却水の吐出口に接続されている。ラジエター吐出配管64の他方端は、サーモスタット40におけるラジエター流入口に接続されている。
【0025】
内燃機関流入配管65の一方端は、サーモスタット40における冷却水の吐出口に接続されている。内燃機関流入配管65の他方端は、内燃機関10における冷却水の流入口に接続されている。
【0026】
サーモスタット40は、冷却水の温度に応じて移動する弁体41を有している。サーモスタット40は、冷却水の温度が暖機完了温度未満(例えば70[℃]未満)の場合には、
図1に示すように、ラジエター吐出配管64との接続部を閉口するとともにバイパス配管62との接続部を開口するように、弁体41移動させ、冷却水の循環経路を「バイパス経路」に設定する。またサーモスタット40は、冷却水の温度が暖機完了温度以上(例えば70[℃]以上)の場合には、
図2に示すように、ラジエター吐出配管64との接続部を開口するとともにバイパス配管62との接続部を閉口するように、弁体41を移動させ、冷却水の循環経路を「ラジエター経路」に設定する。
【0027】
図1に示す「バイパス経路」では、サーモスタット40の弁体41が、ラジエター吐出配管64との接続部を閉口するとともにバイパス配管62との接続部を開口している。このため、内燃機関10から吐出された冷却水は、
図1に点線矢印にて示すように、内燃機関吐出配管61からバイパス配管62へと流れてサーモスタット40内に流入し、内燃機関流入配管65から内燃機関10へと戻る。「バイパス経路」ではラジエター20を経由せず、ラジエター20をバイパスするので、冷却水の温度が比較的短時間で上昇する。
【0028】
図2に示す「ラジエター経路」では、サーモスタット40の弁体41が、ラジエター吐出配管64との接続部を開口するとともにバイパス配管62との接続部を閉口している。このため、内燃機関10から吐出された冷却水は、
図2に点線矢印で示すように、内燃機関吐出配管61からラジエター流入配管63へ流れてラジエター20に流入する。そしてラジエター20から吐出された冷却水は、ラジエター吐出配管64からサーモスタット40内に流入し、内燃機関流入配管65から内燃機関10へと戻る。「ラジエター経路」ではラジエター20を経由することで、内燃機関10から吐出された冷却水の温度上昇量を抑えることができる。
【0029】
ラジエター20は、ラジエター流入配管63から流入してきた冷却水を放熱させて温度を低下させ。ラジエター吐出配管64から吐出する。
【0030】
故障判定装置50は、CPU51、RAM52、ROM53(例えばFlash-ROM)、タイマ54、不揮発性記憶装置55等を有する、いわゆる制御装置である。故障判定装置50には、冷却水温度検出装置31からの検出信号が入力され、クランク回転検出装置32からの検出信号が入力され、イグニションスイッチ33からの信号が入力されている。また、水温評価モデル関連量記憶部51A、サーモスタット故障判定部51Bについては、説明を後述する。なお、故障判定装置50は、内燃機関10の運転状態を検出する種々の信号が入力され、内燃機関10を制御する種々のアクチュエータを制御する信号が出力されているが、これらについては説明を省略する。
【0031】
●[サーモスタット正常時/故障時の温度上昇状態と、水温評価モデルの例(
図3)]
図3は、冷却水の温度が暖機完了温度よりも充分低い状態から、時刻Z1(計測開始時刻Z1)にて内燃機関10を始動した場合(冷間始動した場合)の、冷却水の温度上昇状態の例を示している。
【0032】
サーモスタット40が正常時の場合では、実線の「サーモスタット正常時」に示すように、冷却水の温度が暖機完了温度未満である時刻Z1(計測開始時刻Z1)から時刻ZT(暖気完了温度に達した時刻)では、循環経路がバイパス経路(
図1参照)に設定されているので冷却水の温度は比較的短時間に上昇し、冷却水の温度が暖機完了温度以上となった時刻ZT以降では、循環経路がラジエター経路(
図2参照)に切り替えられるので冷却水の温度の上昇は緩やかになり、安定した温度となる。
【0033】
サーモスタット40が故障時(ラジエター経路で固定される故障時)では、点線の「サーモスタット故障時」に示すように、冷却水の温度にかかわらず、循環経路がラジエター経路(
図2参照)に固定され、冷却水の温度が、サーモスタット正常時よりも緩やかに上昇していく。
【0034】
なお故障判定装置50には、
図3に示すサーモスタット正常時の温度上昇状態である正常温度上昇状態(
図3中の実線)と、サーモスタット故障時の温度上昇状態である故障温度上昇状態(
図3中の点線)と、の間となる温度上昇状態である水温評価モデル(
図3中の一点鎖線)が設定されている。水温評価モデルは、正常温度上昇状態と故障温度上昇状態とを区別可能な温度上昇状態である。故障判定装置50は、内燃機関10の始動後の実際の冷却水の温度上昇状態と、水温評価モデルと、を用いて、サーモスタット40が故障しているか否かを判定する。
【0035】
なお、正常温度上昇状態や故障温度上昇状態は、時刻(投入熱量)に対する温度上昇量が、バイパス経路の水量、ラジエター経路の水量とラジエター20の放熱能力など、車両に応じて異なる。このため従来では、車両ごとの水温評価モデルを、実際の車両を用いた実験やシミュレーションなどにて作成しており、多大な工数を必要としている。しかも、同じ車型の車両であっても、仕様(一般仕様、寒冷地仕様など)に応じて配管の経路や水量が異なり、それぞれの車両で水温評価モデルを作成する必要があり、多大な工数を必要としている。本願では、以降に説明するように、この車両毎の手間を低減する。
【0036】
●[故障判定装置50による、サーモスタットの故障判定の処理手順(
図4~
図10)]
次に
図4~
図10を用いて、故障判定装置50による[サーモスタットの故障判定]の処理手順の例について説明する。故障判定装置50は、所定時間間隔(例えば、数10[ms]~数100[ms]の間隔)にて
図4に示す処理を起動し、ステップS030へ処理を進める。
【0037】
ステップS030にて故障判定装置50は、内燃機関が始動時であるか否かを判定する。故障判定装置50は、内燃機関10の回転数が所定回転数未満の場合では始動時であると判定し、始動時であると判定した場合(Yes)はステップS090へ処理を進め、始動時でないと判定(始動後と判定)した場合(No)はステップS035へ処理を進める。
【0038】
ステップS090へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、始動時水温に冷却水温度(冷却水温度検出装置を用いて検出した冷却水温度)を代入し、今回学習実行中フラグをOFFに設定し、今回学習終了フラグをOFFに設定し、今回故障判定終了フラグをOFFに設定し、噴射積算量を0(ゼロ)に設定し、暖機中タイマを停止して初期化し、
図4に示す処理を終了する。
【0039】
なお、始動時水温は、
図6のステップS125等にて使用する、始動時の冷却水温度である。また今回学習実行中フラグは、今回の内燃機関の始動に対して、
図4のステップS080の[水温評価モデル関連量を学習]の実行中にONに設定されるフラグである。また今回学習終了フラグは、今回の内燃機関の始動に対して、
図4のステップS080の[水温評価モデル関連量を学習]の実行が終了した場合にONに設定されるフラグである。また今回故障判定終了フラグは、今回の内燃機関の始動に対して、
図4のステップS085の[水温評価モデルの算出とサーモスタットの故障判定]を実行した場合にONに設定されるフラグである。
【0040】
ステップS035へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、内燃機関10が搭載された車両の累積走行距離を取得し、ステップS040へ処理を進める。例えば故障判定装置50は、車両に搭載された他の種々の制御装置等と通信回線に接続され、当該通信回線を介して種々の制御装置と情報を送受信可能であり、累積走行距離を受信して取得する。
【0041】
ステップS040にて故障判定装置50は、累積走行距離が正常みなし距離以下であるか否かを判定する。故障判定装置50は、累積走行距離が正常みなし距離以下である場合(Yes)はステップS080へ処理を進め、累積走行距離が正常みなし距離より長い場合(No)はステップS045へ処理を進める。なお累積走行距離は、この車両の製品出荷状態からの走行距離の累積値であり、正常みなし距離は、予め設定された距離であり、例えば数100[km]~1000[km]程度に設定されている。累積走行距離が正常みなし距離以下の場合は、車両の製品出荷状態からの期間が短く、サーモスタットが正常であるとみなすことができる正常みなし期間内であるとしている。故障判定装置50は、この正常みなし期間では、サーモスタットが正常であるとみなして、ステップS080にて、車両ごとに水温評価モデル関連量を学習する。
【0042】
ステップS045へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、学習完了フラグがOFFであるか否かを判定する。故障判定装置50は、学習完了フラグがOFFである場合(Yes)はステップS080へ処理を進め、学習完了フラグがOFFでない場合(No)はステップS085へ処理を進める。なお、学習完了フラグは、不揮発性記憶装置に記憶しているフラグであり、
図4のステップS080の[水温評価モデル関連量を学習]を実行(完了)した場合にONに設定されるフラグである。故障判定装置50は、累積走行距離が正常みなし距離よりも長い場合であっても(正常みなし期間を経過した後であっても)、[水温評価モデル関連量を学習]が実行(完了)されていない場合は、[水温評価モデル関連量の学習]を実行する。
【0043】
ステップS080へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、[水温評価モデル関連量を学習]の処理を実行して、
図4に示す処理を終了する。なお[水温評価モデル関連量を学習]の詳細については後述する。
【0044】
ステップS085へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、[水温評価モデルの算出とサーモスタットの故障判定]の処理を実行して、
図4に示す処理を終了する。なお[水温評価モデルの算出とサーモスタットの故障判定]の詳細については後述する。
【0045】
●[積算噴射量の算出(
図5)]
次に
図5を用いて、
図6のステップS150等にて使用する「積算噴射量」を求める処理について説明する。積算噴射量は、内燃機関10に設けられてインジェクタから噴射された燃料量の積算値である。
図5に示す処理は、既存の燃料噴射処理のステップSZ010の後に、ステップSZ020の処理を追加している。
【0046】
ステップSZ020にて故障判定装置50は、積算噴射量に今回の燃料噴射量を加算して、積算噴射量を更新し、
図5に示す処理を終了する。
【0047】
●[水温評価モデル関連量を学習(
図6)]
次に
図6を用いて、
図4のフローチャートにおけるステップS080の[水温評価モデル関連量を学習]の処理の詳細について説明する。故障判定装置50は、
図4のステップS080の処理を実行する場合、
図6のステップS110へ処理を進める。
【0048】
ステップS110にて故障判定装置50は、今回学習終了フラグがONであるか否かを判定する。今回学習終了フラグは、今回の内燃機関の始動後に対して、水温評価モデル関連量の学習をすでに終了した場合に、
図6のステップS170にてONに設定されるフラグである。故障判定装置50は、今回学習終了フラグがONである場合(Yes)は
図6に示す処理を終了し、
図4のステップS080の下へ処理を戻し、
図4に示す処理を終了する。故障判定装置50は、今回学習終了フラグがONでない場合(No)はステップS115へ処理を進める。
【0049】
ステップS115へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、今回学習実行中フラグがONであるか否かを判定する。今回学習実行中フラグは、今回の内燃機関の始動後に対して、水温評価モデル関連量の学習を現在実行中の場合に、
図6のステップS130にてONに設定されるフラグである。故障判定装置50は、今回学習実行中フラグがONである場合(Yes)はステップS140へ処理を進め、今回学習実行中フラグがONでない場合(No)はステップS120へ処理を進める。
【0050】
ステップS120へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、車両のソーク時間(内燃機関の運転を停止している時間)が、ソーク充分時間以上であるか否かを判定する。ソーク充分時間は、例えば10[時間]程度に設定されている。故障判定装置50は、ソーク時間がソーク充分時間以上である場合(Yes)はステップS125へ処理を進め、そうでない場合(No)は
図6に示す処理を終了し、
図4のステップS080の下へ処理を戻し、
図4に示す処理を終了する。
【0051】
ステップS125へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、始動時水温(
図4のステップS090にて代入した、始動時の冷却水の温度)が所定温度範囲内であるか否かを判定する。例えば所定温度範囲は、
図10に示す暖機完了温度よりも充分低い温度の中で、水温評価モデル関連量の学習に適した温度範囲(所定温度範囲)が予め設定されている。故障判定装置50は、始動時水温が所定温度範囲内である場合(Yes)はステップS130へ処理を進め、そうでない場合(No)は
図6に示す処理を終了し、
図4のステップS080の下へ処理を戻し、
図4に示す処理を終了する。
【0052】
ステップS130へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、今回学習実行中フラグをONに設定して(
図10参照)ステップS135へ処理を進める。
【0053】
ステップS135にて故障判定装置50は、暖機中タイマを初期化して起動し、冷却水温度(計測開始温度T1)と時刻(計測開始時刻Z1)を取得して記憶する(
図10参照)。そして故障判定装置50はステップS140へ処理を進める。
【0054】
ステップS140に処理を進めた場合、故障判定装置50は、暖機中タイマで計測した時間が計測終了時間以上であるか否かを判定する。なお計測終了時間は、例えば数10[秒]から数[分]程度の時間が設定されている。故障判定装置50は、暖機中タイマで計測した時間が計測終了時間以上である場合(Yes)はステップS145へ処理を進め、そうでない場合(No)は
図6に示す処理を終了し、
図4のステップS080の下へ処理を戻し、
図4に示す処理を終了する。
【0055】
ステップS145へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、冷却水温度(計測終了温度T2)と時刻(計測終了時刻Z2)を取得して記憶する(
図10参照)。そして故障判定装置50はステップS150へ処理を進める。
【0056】
ステップS150にて故障判定装置50は、積算噴射量に基づいて計測期間中(今回学習実行中フラグがONの期間であり、
図10における計測開始時刻Z1から計測終了時刻Z2の期間)の、内燃機関への投入熱量Qinを算出し、ステップS155へ処理を進める。故障判定装置50は、所定の演算式に基づいて、積算噴射量から投入熱量Qinを算出する。
【0057】
ステップS155にて故障判定装置50は、投入熱量Qinと、(計測開始温度T1、計測開始時刻Z1)と、(計測終了温度T2、計測終了時刻Z2)とに基づいて、冷却水の温度上昇状態(傾き)と、バイパス経路の冷却水の水量を推定し、ステップS160へ処理を進める。なお故障判定装置50は、温度上昇状態(傾き)を推定する際、例えば「(計測終了温度T2-計測開始温度T1)/投入熱量Qin」に基づいて(投入熱量に対する温度上昇量に基づいて)推定する。また故障判定装置50は、バイパス水量を推定する際、例えば「投入熱量Qin/(計測終了温度T2-計測開始温度T1)」に基づいて(温度上昇量に対する投入熱量に基づいて)推定する。
【0058】
ステップS160にて故障判定装置50は、推定したバイパス水量や温度上昇状態(傾き)に基づいて、自身が搭載されている車両の車型や仕様を特定し、ステップS165へ処理を進める。例えば故障判定装置50の記憶装置(ROM)には、
図8に示す水温評価モデル情報が予め記憶されている。
図8に示す水温評価情報における「車型」には、車型の名称(
図8の例では、車型A、車型B)などが記憶されている。また「仕様」には、仕様の名称(
図8の例では、仕様x、仕様y、仕様z)などが記憶されている。また「バイパス経路基準冷却水量」には、その車型と仕様でのバイパス経路の冷却水の基準となる水量が記憶されている。また「基準放熱量」には、その車型と仕様でのバイパス経路の単位時間あたりの冷却水の大気中への基準となる放熱量が記憶されている。また「温度上昇量/投入熱量」には、その車型と仕様でのバイパス経路において基準となる「(計測終了温度T2-計測開始温度T1)/投入熱量Qin」(傾き)が記憶されている。また「水温評価モデル基準補正係数」には、その車型と仕様でのバイパス経路での基準となる水温評価モデル補正係数(水温評価モデル関連量)が記憶されている。
【0059】
なお、故障判定装置50の記憶装置(ROM)には、
図9に示す基準水温評価モデルが記憶されている。基準水温評価モデルは、故障判定装置50が、自身が搭載されている車両ごとに水温評価モデルを算出する際の基準となる水温評価モデルである。例えば(車型A、仕様x)の車両に搭載されている故障判定装置50は、水温評価モデル補正係数(水温評価モデル関連量に相当)を学習して記憶し、この水温評価モデル補正係数を用いることで、
図9の点線にて示す「(車型A、仕様x)の水温評価モデル関連量を用いて作成した水温評価モデル」を作成することができる。また例えば(車型A、仕様y)の車両に搭載されている故障判定装置50は、水温評価モデル補正係数(水温評価モデル関連量に相当)を学習して記憶し、この水温評価モデル補正係数を用いることで、
図9の一点鎖線にて示す「(車型A、仕様y)の水温評価モデル関連量を用いて作成した水温評価モデル」を作成することができる。
【0060】
ステップS165にて故障判定装置50は、水温評価モデル関連量を学習して不揮発性記憶装置に記憶し、ステップS170へ処理を進める。例えば故障判定装置50は、推定した「温度上昇量/投入熱量」と「バイパス経路水量」と、
図8に示す[水温評価モデル情報]とを比較して、(車型A、仕様x)を特定した場合、推定した「温度上昇量/投入熱量」と、[水温評価モデル情報]の「温度上昇量/投入熱量」との偏差と、[水温評価モデル情報]の「水温評価モデル基準補正係数」とに基づいて、その車両での水温評価モデル関連量KG(水温評価モデル補正係数)を学習して不揮発性記憶装置に記憶する。
【0061】
ステップS170にて故障判定装置50は、今回学習実行中フラグをOFFに設定し、今回学習終了フラグをONに設定し、学習完了フラグをONに設定して不揮発性記憶装置に記憶し(
図10参照)、
図6に示す処理を終了し、
図4のステップS080の下へ処理を戻し、
図4に示す処理を終了する。
【0062】
●[水温評価モデルの算出とサーモスタットの故障判定(
図7)]
次に
図7を用いて、
図4のフローチャートにおけるステップS085の[水温評価モデルの算出とサーモスタットの故障判定]の処理の詳細について説明する。故障判定装置50は、
図4のステップS085の処理を実行する場合、
図7のステップS210へ処理を進める。
【0063】
ステップS210にて故障判定装置50は、今回故障判定終了フラグがONであるか否かを判定する。故障判定終了フラグは、
図7のステップS250にて、今回の内燃機関の始動後に対して、サーモスタットの故障判定を終了した場合にONに設定されるフラグである。故障判定装置50は、今回故障判定終了フラグがONの場合(Yes)は
図7に示す処理を終了し、
図4のステップS085の下へ処理を戻し、
図4に示す処理を終了し、そうでない場合(No)はステップS215へ処理を進める。
【0064】
ステップS215へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、車両のソーク時間(内燃機関の運転を停止している時間)が、ソーク充分時間以上であるか否かを判定する。ソーク充分時間は、例えば10[時間]程度に設定されている。故障判定装置50は、ソーク時間がソーク充分時間以上である場合(Yes)はステップS225へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップS220へ処理を進める。
【0065】
ステップS220へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、基準水温評価モデル(
図9参照)を外気温に応じて下方に(冷却水温度が低い側へ)オフセットさせて、補正前基準水温評価モデルに代入してステップS230へ処理を進める。
【0066】
ステップS225へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、基準水温評価モデル(
図9参照)を補正前基準水温評価モデルに代入してステップS230へ処理を進める。
【0067】
ステップS230へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、始動時水温(
図4のステップS090にて代入した、始動時の冷却水の温度)が所定温度範囲内であるか否かを判定する。例えば所定温度範囲は、
図10に示す暖機完了温度よりも充分低い温度の中で、水温評価モデル関連量の学習に適した温度範囲が予め設定されている。故障判定装置50は、始動時水温が所定温度範囲内である場合(Yes)はステップS235へ処理を進め、そうでない場合(No)は
図7に示す処理を終了し、
図4のステップS085の下へ処理を戻し、
図4に示す処理を終了する。
【0068】
ステップS235へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、不揮発性記憶装置から、学習した水温評価モデル関連量KG(水温評価モデル補正係数)を読み出し、ステップS240へ処理を進める。
【0069】
ステップS240にて故障判定装置50は、補正前基準水温評価モデルと、水温評価モデル関連量(水温評価モデル補正係数)に基づいて、
図9に示すように、自身が搭載されている車両ごとの水温評価モデルを算出(作成)してステップS245へ処理を進める。
【0070】
ステップS245にて故障判定装置50は、算出(作成)した水温評価モデルと、実際の車両の冷却水の温度上昇状態とに基づいて、サーモスタットが正常であるか故障であるかを判定し、ステップS250へ処理を進める。なおステップS245の処理は、既存の処理であるので詳細については省略する。
【0071】
ステップS250にて故障判定装置50は、今回故障判定終了フラグをONに設定し、
図7に示す処理を終了し、
図4のステップS085の下へ処理を戻し、
図4に示す処理を終了する。
【0072】
●●[第2の実施の形態(
図11~
図18)]
●[冷却水の循環経路と故障判定装置の構成(
図11、
図12)]
図11及び
図12は、第2の実施の形態のサーモスタットの故障判定装置50を有する内燃機関システム2の全体構成の例を示している。第2の実施の形態の内燃機関システム2は、
図1及び
図2に示す第1の実施の形態の内燃機関システム1に対して、乗員用ヒータ70、ヒータスイッチ71、ヒータファン72、ヒータ流入配管73、ヒータ吐出配管74等が追加されている点が異なる。例えば年間を通して気温が高い熱帯地方向けの車両には乗員用ヒータは設けられておらず、冬季の気温が比較的低い地方向けの車両には乗員用ヒータが設けられている。以下、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0073】
乗員用ヒータ70は、車室内の乗員へ暖気を吐出するためのヒータである。乗員が自席の前方等に設けられたヒータスイッチ71をONにすると、乗員用ヒータ70に設けられたヒータファン72が駆動されて暖気が乗員に向けて吐出される。なお、内燃機関10の冷却水から熱を取り出すので、ヒータスイッチ71をONにした場合には、乗員用ヒータ70で放熱する分、冷却水の温度上昇が緩やかになる。なお故障判定装置50には、乗員用ヒータの使用の有無を検出可能なヒータ使用状態(ヒータスイッチ71のON/OFF状態)が入力されている。
【0074】
またヒータ流入配管73の一方端は、内燃機関10のヒータ用吐出口に接続されている。ヒータ流入配管73の他方端は、乗員用ヒータ70における冷却水の流入口に接続されている。またヒータ吐出配管74の一方端は、乗員用ヒータ70における冷却水の吐出口に接続されている。ヒータ吐出配管74の他方端は、内燃機関吐出配管61に接続されている。
【0075】
図11に示す第2の実施の形態の「バイパス経路」は、
図1に示す第1の実施の形態の「バイパス経路」に対して、ヒータ流入配管73、乗員用ヒータ70、ヒータ吐出配管74にて形成された「ヒータ経路」が追加されている。同様に、
図12に示す第2の実施の形態の「ラジエター経路」は、
図2に示す第1の実施の形態の「ラジエター経路」に対して、ヒータ流入配管73、乗員用ヒータ70、ヒータ吐出配管74にて形成された「ヒータ経路」が追加されている。
【0076】
●[サーモスタット正常時/故障時の温度上昇状態と、水温評価モデルの例(
図13)]
図13に示す第2の実施の温度上昇状態の例は、
図3に示す第1の実施の形態の温度上昇状態の例に対して、「[ヒータ有、ヒータ非使用]の場合の正常温度上昇状態/故障温度上昇状態/水温評価モデル」と、「[ヒータ有、ヒータ使用]の場合の正常温度上昇状態/故障温度上昇状態/水温評価モデル」と、を示している。なお「ヒータ非使用」はヒータOFFを示し、「ヒータ使用」はヒータONを示している。「[ヒータ有、ヒータ使用]の場合の正常温度上昇状態/故障温度上昇状態/水温評価モデル」のほうが、乗員用ヒータからの放熱量の増加により、「[ヒータ有、ヒータ非使用]の場合の正常温度上昇状態/故障温度上昇状態/水温評価モデル」よりも温度上昇が緩やかになっている。
【0077】
●[故障判定装置50による、サーモスタットの故障判定の処理手順(
図14~
図18)]
次に
図14~
図18を用いて、第2の実施の形態の、故障判定装置50による[サーモスタットの故障判定]の処理手順の例について説明する。第2の実施の形態では、乗員用ヒータ70が追加された車両もあるので、乗員用ヒータの有無、及び、乗員用ヒータのON/OFFに応じて、水温評価モデル関連量と水温評価モデルを求める。故障判定装置50は、所定時間間隔(例えば、数10[ms]~数100[ms]の間隔)にて
図14に示す処理を起動し、ステップS010へ処理を進める。
【0078】
なお
図14に示す第2の実施の形態の[サーモスタットの故障判定の全体処理]は、
図4に示す第1の実施の形態の[サーモスタットの故障判定の全体処理]に対して、ステップS010~S020が追加され、ステップSA105~SA185が変更等されている。以下では、第1の実施の形態との相違点について主に説明する。
【0079】
ステップS010にて故障判定装置50は、過去に1度でも乗員用ヒータがONになったか否か(ヒータスイッチがONになったか否か)を判定する。故障判定装置50は、乗員用ヒータがONとされた場合、その履歴を不揮発性記憶装置に記憶し、当該ステップS010にて利用する。故障判定装置50は、過去に1度でも乗員用ヒータがONになった場合(Yes)はステップS015へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップS020へ処理を進める。
【0080】
ステップS015に処理を進めた場合、故障判定装置50は、乗員用ヒータに「有」を代入(記憶)してステップS030へ処理を進める。
【0081】
ステップS020へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、乗員用ヒータに「無」を代入(記憶)してステップS030へ処理を進める。
【0082】
ステップS030、ステップS035、ステップS090は、
図4に示す第1の実施の形態と同じであるので説明を省略する。
【0083】
ステップSA105にて故障判定装置50は、累積走行距離が正常みなし距離以下であるか否かを判定する。故障判定装置50は、累積走行距離が正常みなし距離以下である場合(Yes)はステップSA140へ処理を進め、累積走行距離が正常みなし距離より長い場合(No)はステップSA110へ処理を進める。なお累積走行距離は、この車両の製品出荷状態からの走行距離の累積値であり、正常みなし距離は、予め設定された距離であり、例えば数100[km]~1000[km]程度に設定されている。累積走行距離が正常みなし距離以下の場合は、車両の製品出荷状態からの期間が短く、サーモスタットが正常であるとみなすことができる正常みなし期間内であるとしている。故障判定装置50は、この正常みなし期間では、サーモスタットが正常であるとみなして、ステップSA140へ処理を進める。
【0084】
ステップSA110に処理を進めた場合、故障判定装置50は、乗員用ヒータが「有」か否かを判定する。故障判定装置50は、乗員用ヒータが「有」の場合(Yes)はステップSA115へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップSA135へ処理を進める。
【0085】
ステップSA115へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、ヒータON学習完了フラグがOFFであるか否かを判定する。なおヒータON学習完了フラグは、不揮発性記憶装置に記憶するフラグであり、乗員用ヒータが有る車両において、ヒータONの場合の水温評価モデル関連量を学習した場合にONに設定するフラグである。故障判定装置50は、ヒータON学習完了フラグがOFFの場合(Yes)はステップSA120へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップSA125へ処理を進める。
【0086】
ステップSA120へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、ヒータ(ヒータスイッチ)がONであるか否かを判定する。故障判定装置50は、ヒータがONである場合(Yes)はステップSA150へ処理を進め、ヒータがOFFである場合(No)はステップSA125へ処理を進める。累積走行距離が正常みなし距離を超えた場合であっても、まだヒータONの場合の水温評価モデル関連量を学習していない場合(ヒータON学習完了フラグ=OFF)では、現在ヒータがONならば、ヒータONの場合の水温評価モデル関連量を学習するチャンスであるので、学習する。
【0087】
ステップSA125へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、ヒータOFF学習完了フラグがOFFであるか否かを判定する。なおヒータOFF学習完了フラグは、不揮発性記憶装置に記憶するフラグであり、乗員用ヒータが有る車両において、ヒータOFFの場合の水温評価モデル関連量を学習した場合にONに設定するフラグである。故障判定装置50は、ヒータOFF学習完了フラグがOFFの場合(Yes)はステップSA130へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップSA185へ処理を進める。
【0088】
ステップSA130へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、ヒータ(ヒータスイッチ)がOFFであるか否かを判定する。故障判定装置50は、ヒータがOFFである場合(Yes)はステップSA155へ処理を進め、ヒータがONである場合(No)はステップSA185へ処理を進める。累積走行距離が正常みなし距離を超えた場合であっても、まだヒータOFFの場合の水温評価モデル関連量を学習していない場合(ヒータOFF学習完了フラグ=OFF)では、現在ヒータがOFFならば、ヒータOFFの場合の水温評価モデル関連量を学習するチャンスであるので、学習する。
【0089】
ステップSA135へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、学習完了フラグがOFFであるか否かを判定する。なお学習完了フラグは、不揮発性記憶装置に記憶するフラグであり、乗員用ヒータが無い車両において、水温評価モデル関連量を学習した場合にONに設定するフラグである。故障判定装置50は、学習完了フラグがOFFの場合(Yes)はステップSA180へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップSA185へ処理を進める。
【0090】
ステップSA140へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、乗員用ヒータが「有」か否かを判定する。故障判定装置50は、乗員用ヒータが「有」の場合(Yes)はステップS145へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップSA180へ処理を進める。
【0091】
ステップSA145へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、ヒータ(ヒータスイッチ)がONであるか否かを判定する。故障判定装置50は、ヒータがONである場合(Yes)はステップSA150へ処理を進め、ヒータがOFFである場合(No)はステップSA155へ処理を進める。
【0092】
ステップSA150へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、ヒータON学習開始フラグをONに設定し、ヒータOFF学習開始フラグをOFFに設定してステップSA180へ処理を進める。乗員用ヒータが「有」の車両、かつ、ヒータONで学習を開始した場合、ヒータON学習開始フラグをONに設定する。
【0093】
ステップSA155へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、ヒータON学習開始フラグをOFFに設定し、ヒータOFF学習開始フラグをONに設定してステップSA180へ処理を進める。乗員用ヒータが「有」の車両、かつ、ヒータOFFで学習を開始した場合、ヒータOFF学習開始フラグをONに設定する。
【0094】
ステップSA180へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、[水温評価モデル関連量を学習]の処理を実行して、
図14に示す処理を終了する。なお[水温評価モデル関連量を学習]の詳細については後述する。
【0095】
ステップSA185へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、[水温評価モデルの算出とサーモスタットの故障判定]の処理を実行して、
図14に示す処理を終了する。なお[水温評価モデルの算出とサーモスタットの故障判定]の詳細については後述する。
【0096】
●[水温評価モデル関連量を学習(
図15~
図16)]
次に
図15を用いて、
図14のフローチャートにおけるステップSA180の[水温評価モデル関連量を学習]の処理の詳細について説明する。故障判定装置50は、
図14のステップSA180の処理を実行する場合、
図15のステップS110へ処理を進める。なお
図15のステップS110~S130は、
図6に示す第1の実施の形態のステップS110~S130と同様であるので説明を省略し、ステップSB110以降の処理について説明する。
【0097】
ステップSB110にて故障判定装置50は、暖機中タイマを初期化してステップSB115へ処理を進める。なお暖機中タイマの用途等は第1の実施の形態と同じである。
【0098】
ステップSB115にて故障判定装置50は、乗員用ヒータが「有」であるか否かを判定する。故障判定装置50は、乗員用ヒータが「有」の場合(Yes)はステップSB120へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップSB135へ処理を進める。
【0099】
ステップSB120へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、ヒータON学習開始フラグがONであるか否かを判定する。故障判定装置50は、ヒータON学習開始フラグがONである場合(Yes)はステップSB125へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップSB130へ処理を進める。
【0100】
ステップSB125へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、冷却水温度(ON計測開始温度T21)と時刻(ON計測開始時刻Z21)を取得して記憶する。そして故障判定装置50はステップSB140へ処理を進める。
【0101】
ステップSB130へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、冷却水温度(OFF計測開始温度T31)と時刻(OFF計測開始時刻Z31)を取得して記憶する。そして故障判定装置50はステップSB140へ処理を進める。
【0102】
ステップSB135へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、冷却水温度(計測開始温度T1)と時刻(計測開始時刻Z1)を取得して記憶する。そして故障判定装置50はステップSB140へ処理を進める。
【0103】
ステップSB140へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、暖機中タイマで計測した時間が計測終了時間以上であるか否かを判定する。なお計測終了時間は、例えば数10[秒]から数[分]程度の時間が設定されている。故障判定装置50は、暖機中タイマで計測した時間が計測終了時間以上である場合(Yes)は
図16のステップSC110へ処理を進め、そうでない場合(No)は
図15に示す処理を終了し、
図14のステップSA180の下へ処理を戻し、
図14に示す処理を終了する。
【0104】
ステップSC110に処理を進めた場合、故障判定装置50は、乗員用ヒータが「有」であるか否かを判定する。故障判定装置50は、乗員用ヒータが「有」の場合(Yes)はステップSC115へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップSE130へ処理を進める。
【0105】
ステップSC115へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、ヒータ(ヒータスイッチ)がONであるか否かを判定する。故障判定装置50は、ヒータがONである場合(Yes)はステップSC120へ処理を進め、ヒータがOFFである場合(No)はステップSD120へ処理を進める。
【0106】
ステップSC120へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、ヒータON学習開始フラグがONであるか否かを判定する。故障判定装置50は、ヒータON学習開始フラグがONである場合(Yes)はステップSC130へ処理を進め、そうでない場合(No)は
図16に示す処理を終了し、
図14のステップSA180の下へ処理を戻し、
図14に示す処理を終了する。故障判定装置50は、ヒータONで学習(計測)を開始した場合、学習(計測)終了時もヒータONである場合に、ステップSC130以降の「ヒータON時の水温評価モデル関連量KG(ON)の学習を実行する。
【0107】
ステップSC130へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、冷却水温度(ON計測終了温度T22)と時刻(ON計測終了時刻Z22)を取得して記憶する。そして故障判定装置50はステップSC135へ処理を進める。
【0108】
ステップSC135にて故障判定装置50は、積算噴射量に基づいて計測期間中(今回学習実行中フラグがONの期間であり、ON計測開始時刻Z21からON計測終了時刻Z22の期間)の、内燃機関への投入熱量Qinを算出し、ステップSC140へ処理を進める。故障判定装置50は、所定の演算式に基づいて、積算噴射量から投入熱量Qinを算出する。
【0109】
ステップSC140にて故障判定装置50は、投入熱量Qinと、(ON計測開始温度T21、ON計測開始時刻Z21)と、(ON計測終了温度T22、ON計測終了時刻Z22)とに基づいて、冷却水の温度上昇状態(傾きA2)と、バイパス経路の冷却水の水量を推定し、ステップSC145へ処理を進める。なお故障判定装置50は、温度上昇状態(傾きA2)を推定する際、例えば「(ON計測終了温度T22-ON計測開始温度T21)/投入熱量Qin」に基づいて(投入熱量に対する温度上昇量に基づいて)推定する。また故障判定装置50は、バイパス水量を推定する際、例えば「投入熱量Qin/(ON計測終了温度T22-ON計測開始温度T21)」に基づいて(温度上昇量に対する投入熱量に基づいて)推定する。
【0110】
ステップSC145にて故障判定装置50は、推定したバイパス水量や温度上昇状態(傾きA2)に基づいて、自身が搭載されている車両の車型や仕様を特定し、ステップSC150へ処理を進める。例えば故障判定装置50の記憶装置(ROM)には、
図18に示す水温評価モデル情報が予め記憶されている。
図18に示す水温評価情報における「車型」には、車型の名称(
図18の例では、車型A、車型D)などが記憶されている。また「仕様」には、仕様の名称(
図8の例では、仕様x、仕様y、仕様u、仕様v)などが記憶されている。また「乗員用ヒータ」には、乗員用ヒータの「設定なし」、「無し」、「有り」が記憶されている。また「乗員用ヒータ使用状態」には、乗員用ヒータがONの場合の「バイパス経路基準冷却水量」以降と、乗員用ヒータがOFFの場合の「バイパス経路基準冷却水量」以降と、を区別するための「ON」または「OFF」が記憶されている。また「バイパス経路基準冷却水量」には、その車型と仕様でのバイパス経路の冷却水の基準となる水量が記憶されている。また「基準放熱量」には、その車型と仕様での単位時間あたりの冷却水の大気中への基準となる放熱量(ヒータのON/OFFで異なる)が記憶されている。また「温度上昇量/投入熱量」には、その車型と仕様でのバイパス経路において基準となる「(計測終了温度T2-計測開始温度T1)/投入熱量Qin」(傾き)(ヒータのON/OFFで異なる)が記憶されている。また「水温評価モデル基準補正係数」には、その車型と仕様でのバイパス経路での基準となる水温評価モデル補正係数(ヒータのON/OFFで異なる)(水温評価モデル関連量)が記憶されている。
【0111】
ステップSC150にて故障判定装置50は、乗員用ヒータ「有」、かつ、ヒータONの場合の水温評価モデル関連量KG(ON)を学習して不揮発性記憶装置に記憶し、ステップSC155へ処理を進める。例えば故障判定装置50は、推定した「温度上昇量/投入熱量」と「バイパス経路水量」と、
図18に示す[水温評価モデル情報]とを比較して、(車型D、仕様u、ヒータON)と特定した場合、推定した「温度上昇量/投入熱量」と、[水温評価モデル情報]の「温度上昇量/投入熱量」との偏差と、[水温評価モデル情報]の「水温評価モデル基準補正係数」とに基づいて、その車両での水温評価モデル関連量KG(ON)(水温評価モデル補正係数)を学習して不揮発性記憶装置に記憶する。
【0112】
ステップSC155にて故障判定装置50は、今回学習実行中フラグをOFFに設定し、今回学習終了フラグをONに設定し、ヒータON学習完了フラグをONに設定して不揮発性記憶装置に記憶し、
図16に示す処理を終了し、
図14のステップSA180の下へ処理を戻し、
図14に示す処理を終了する。
【0113】
ステップSD120へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、ヒータOFF学習開始フラグがONであるか否かを判定する。故障判定装置50は、ヒータOFF学習開始フラグがONである場合(Yes)はステップSD130へ処理を進め、そうでない場合(No)は
図16に示す処理を終了し、
図14のステップSA180の下へ処理を戻し、
図14に示す処理を終了する。故障判定装置50は、ヒータOFFで学習(計測)を開始した場合、学習(計測)終了時もヒータOFFである場合に、ステップSD130以降の「ヒータOFF時の水温評価モデル関連量KG(OFF)の学習を実行する。
【0114】
ステップSD130へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、冷却水温度(OFF計測終了温度T32)と時刻(OFF計測終了時刻Z32)を取得して記憶する。そして故障判定装置50はステップSD135へ処理を進める。
【0115】
ステップSD135にて故障判定装置50は、積算噴射量に基づいて計測期間中(今回学習実行中フラグがONの期間であり、OFF計測開始時刻Z31からOFF計測終了時刻Z32の期間)の、内燃機関への投入熱量Qinを算出し、ステップSD140へ処理を進める。故障判定装置50は、所定の演算式に基づいて、積算噴射量から投入熱量Qinを算出する。
【0116】
ステップSD140にて故障判定装置50は、投入熱量Qinと、(OFF計測開始温度T31、OFF計測開始時刻Z31)と、(OFF計測終了温度T32、OFF計測終了時刻Z32)とに基づいて、冷却水の温度上昇状態(傾きA3)と、バイパス経路の冷却水の水量を推定し、ステップSD145へ処理を進める。なお故障判定装置50は、温度上昇状態(傾きA3)を推定する際、例えば「(OFF計測終了温度T32-OFF計測開始温度T31)/投入熱量Qin」に基づいて(投入熱量に対する温度上昇量に基づいて)推定する。また故障判定装置50は、バイパス水量を推定する際、例えば「投入熱量Qin/(OFF計測終了温度T32-OFF計測開始温度T31)」に基づいて(温度上昇量に対する投入熱量に基づいて)推定する。
【0117】
ステップSD145にて故障判定装置50は、推定したバイパス水量や温度上昇状態(傾きA3)に基づいて、自身が搭載されている車両の車型や仕様を特定し、ステップSD150へ処理を進める。例えば故障判定装置50の記憶装置(ROM)には、
図18に示す水温評価モデル情報が予め記憶されている。なお
図18に示す水温評価モデル情報については、すでに説明しているので説明を省略する。
【0118】
ステップSD150にて故障判定装置50は、乗員用ヒータ「有」、かつ、ヒータOFFの場合の水温評価モデル関連量KG(OFF)を学習して不揮発性記憶装置に記憶し、ステップSD155へ処理を進める。例えば故障判定装置50は、推定した「温度上昇量/投入熱量」と「バイパス経路水量」と、
図18に示す[水温評価モデル情報]とを比較して、(車型D、仕様u、ヒータOFF)と特定した場合、推定した「温度上昇量/投入熱量」と、[水温評価モデル情報]の「温度上昇量/投入熱量」との偏差と、[水温評価モデル情報]の「水温評価モデル基準補正係数」とに基づいて、その車両での水温評価モデル関連量KG(OFF)(水温評価モデル補正係数)を学習して不揮発性記憶装置に記憶する。
【0119】
ステップSD155にて故障判定装置50は、今回学習実行中フラグをOFFに設定し、今回学習終了フラグをONに設定し、ヒータOFF学習完了フラグをONに設定して不揮発性記憶装置に記憶し、
図16に示す処理を終了し、
図14のステップSA180の下へ処理を戻し、
図14に示す処理を終了する。
【0120】
ステップSE130へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、冷却水温度(計測終了温度T2)と時刻(計測終了時刻Z2)を取得して記憶する。そして故障判定装置50はステップSE135へ処理を進める。
【0121】
ステップSE135にて故障判定装置50は、積算噴射量に基づいて計測期間中(今回学習実行中フラグがONの期間であり、計測開始時刻Z1から計測終了時刻Z2の期間)の、内燃機関への投入熱量Qinを算出し、ステップSE140へ処理を進める。故障判定装置50は、所定の演算式に基づいて、積算噴射量から投入熱量Qinを算出する。
【0122】
ステップSE140にて故障判定装置50は、投入熱量Qinと、(計測開始温度T1、計測開始時刻Z1)と、(計測終了温度T2、計測終了時刻Z2)とに基づいて、冷却水の温度上昇状態(傾きA1)と、バイパス経路の冷却水の水量を推定し、ステップSE145へ処理を進める。なお故障判定装置50は、温度上昇状態(傾きA1)を推定する際、例えば「(計測終了温度T2-計測開始温度T1)/投入熱量Qin」に基づいて(投入熱量に対する温度上昇量に基づいて)推定する。また故障判定装置50は、バイパス水量を推定する際、例えば「投入熱量Qin/(計測終了温度T2-計測開始温度T1)」に基づいて(温度上昇量に対する投入熱量に基づいて)推定する。
【0123】
ステップSE145にて故障判定装置50は、推定したバイパス水量や温度上昇状態(傾きA1)に基づいて、自身が搭載されている車両の車型や仕様を特定し、ステップSE150へ処理を進める。例えば故障判定装置50の記憶装置(ROM)には、
図18に示す水温評価モデル情報が予め記憶されている。なお
図18に示す水温評価モデル情報については、すでに説明しているので説明を省略する。
【0124】
ステップSE150にて故障判定装置50は、乗員用ヒータ「無」の水温評価モデル関連量KGを学習して不揮発性記憶装置に記憶し、ステップSE155へ処理を進める。例えば故障判定装置50は、推定した「温度上昇量/投入熱量」と「バイパス経路水量」と、
図18に示す[水温評価モデル情報]とを比較して、(車型D、仕様x)と特定した場合、推定した「温度上昇量/投入熱量」と、[水温評価モデル情報]の「温度上昇量/投入熱量」との偏差と、[水温評価モデル情報]の「水温評価モデル基準補正係数」とに基づいて、その車両での水温評価モデル関連量KG(水温評価モデル補正係数)を学習して不揮発性記憶装置に記憶する。
【0125】
ステップSE155にて故障判定装置50は、今回学習実行中フラグをOFFに設定し、今回学習終了フラグをONに設定し、学習完了フラグをONに設定して不揮発性記憶装置に記憶し、
図16に示す処理を終了し、
図14のステップSA180の下へ処理を戻し、
図14に示す処理を終了する。
【0126】
●[水温評価モデルの算出とサーモスタットの故障判定(
図17)]
次に
図17を用いて、
図14のフローチャートにおけるステップSA185の[水温評価モデルの算出とサーモスタットの故障判定]の処理の詳細について説明する。故障判定装置50は、
図14のステップSA185の処理を実行する場合、
図17のステップS210へ処理を進める。なお
図17のステップS210~S230、ステップS240~S250は、
図7に示す第1の実施の形態のステップS210~S230、ステップS240~S250と同様であるので説明を省略し、ステップSF110~ステップSF130の処理について説明する。
【0127】
ステップSF110に処理を進めた場合、故障判定装置50は、乗員用ヒータが「有」であるか否かを判定する。故障判定装置50は、乗員用ヒータが「有」の場合(Yes)はステップSF115へ処理を進め、そうでない場合(No)はステップSF130へ処理を進める。
【0128】
ステップSF115に処理を進めた場合、故障判定装置50は、ヒータ(ヒータスイッチ)がONであるか否かを判定する。故障判定装置50は、ヒータがONである場合(Yes)はステップSF120へ処理を進め、ヒータがOFFである場合(No)はステップSF125へ処理を進める。
【0129】
ステップSF120へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、乗員用ヒータ=「有」かつヒータ=ON、に対応する水温評価モデル関連量KG(ON)を不揮発性記憶装置から読み出してステップS240へ処理を進める。
【0130】
ステップSF125へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、乗員用ヒータ=「有」かつヒータ=OFF、に対応する水温評価モデル関連量KG(OFF)を不揮発性記憶装置から読み出してステップS240へ処理を進める。
【0131】
ステップSF130へ処理を進めた場合、故障判定装置50は、乗員用ヒータ=「無」、に対応する水温評価モデル関連量KGを不揮発性記憶装置から読み出してステップS240へ処理を進める。
【0132】
なお、
図4のステップS040及びステップS080(
図6の[水温評価モデル関連量を学習])、及び、
図14のステップSA105及びステップSA180(
図15及び
図16の[水温評価モデル関連量を学習])、の処理を実行している故障判定装置50(CPU51)は、車両の製品出荷状態からの所定期間であってサーモスタットが正常であるとみなすことができる正常みなし期間の間では、サーモスタットが正常であるとみなして、内燃機関の始動後の冷却水の実際の温度上昇状態に基づいて、サーモスタットの故障を判定するための温度上昇状態である水温評価モデルに関連する水温評価モデル関連量を、車両ごとに学習して不揮発性記憶装置に記憶する、水温評価モデル関連量記憶部51A(
図1、
図2、
図11、
図12参照)に相当している。
【0133】
また、
図4のステップS040及びステップS085(
図7の[水温評価モデルの算出とサーモスタットの故障判定])、及び、
図14のステップSA105及びステップSA185(
図17の[水温評価モデルの算出とサーモスタットの故障判定])、の処理を実行している故障判定装置50(CPU51)は、正常みなし期間の経過後では、内燃機関の始動後の冷却水の実際の温度上昇状態と、記憶している水温評価モデル関連量に基づいた車両ごとの水温評価モデルに基づいて、サーモスタットの故障を判定する、サーモスタット故障判定部51B(
図1、
図2、
図11、
図12参照)に相当している。
【0134】
なお第2の実施の形態では、乗員用ヒータが1つ(前席のみに)設けられている例で説明したが、乗員用ヒータが2つ(前席と後席のそれぞれに)設けられている車両もある。乗員用ヒータが前席と後席に設けられている場合、
図11及び
図12の構成に対して、さらに、後席用の乗員用ヒータ70、ヒータスイッチ71、ヒータファン72、ヒータ流入配管73、ヒータ吐出配管74が追加される。
【0135】
乗員用ヒータが1つ(前席のみに)設けられる場合があることを想定した第2の実施の形態の処理手順では、乗員用ヒータ(無)/乗員用ヒータ(有)かつヒータOFF/乗員用ヒータ(有)かつヒータON、で場合分けを行った。従って、乗員用ヒータが2つ(前席と後席のそれぞれに)設けられる場合があることを想定した処理手順では、乗員用ヒータ(無)/乗員用ヒータ(有)かつ前席ヒータOFFかつ後席ヒータOFF/乗員用ヒータ(有)かつ前席ヒータONかつ後席ヒータOFF/乗員用ヒータ(有)かつ前席ヒータOFFかつ後席ヒータON/乗員用ヒータ(有)かつ前席ヒータONかつ後席ヒータON、で処理手順の場合分けを行えばよいが、詳細については説明を省略する。
【0136】
以上、第1及び第2の実施の形態にて説明した故障判定装置50によれば、故障判定装置50が、車型や仕様などに応じて車両ごとに水温評価モデルを作成するので、より少ない工数にて、サーモスタットの故障を適切に判定することができる。
【0137】
●[その他]
本発明の、サーモスタットの故障判定装置50は、本実施の形態で説明した外観、構成、構造、処理手順等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば故障判定装置50の処理手順は、
図4~
図7、
図14~
図17に示すフローチャートの処理に限定されるものではない。
【0138】
本実施の形態の説明では、車両の製品出荷状態からの累積走行距離が正常みなし距離以下の期間を正常みなし期間としたが、これに限定されるものではない。例えば、車両の製品出荷状態から所定日数以下の期間を正常みなし期間としてもよいし、水温評価モデル関連量をN回(例えば20回)学習するまで、を正常みなし期間としてもよい。
【0139】
また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0140】
1、2 内燃機関システム
10 内燃機関
20 ラジエター
31 冷却水温度検出装置
32 クランク回転検出装置
33 イグニションスイッチ
34 ウォーターポンプ
40 サーモスタット
41 弁体
50 故障判定装置
51 CPU
51A 水温評価モデル関連量記憶部
51B サーモスタット故障判定部
52 RAM
53 ROM
54 タイマ
55 不揮発性記憶装置
61 内燃機関吐出配管
62 バイパス配管
63 ラジエター流入配管
64 ラジエター吐出配管
65 内燃機関流入配管
70 乗員用ヒータ
71 ヒータスイッチ
72 ヒータファン
73 ヒータ流入配管
74 ヒータ吐出配管