(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160423
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】LFP系リチウムイオン二次電池の管理装置およびLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/392 20190101AFI20231026BHJP
G01R 31/378 20190101ALI20231026BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20231026BHJP
G01R 31/387 20190101ALI20231026BHJP
G01R 31/3828 20190101ALI20231026BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20231026BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20231026BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/378
G01R31/367
G01R31/387
G01R31/3828
H01M10/48 P
H01M4/58
H02J7/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070799
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】712006374
【氏名又は名称】CONNEXX SYSTEMS株式会社
(72)【発明者】
【氏名】的場 智彦
(72)【発明者】
【氏名】塚本 壽
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
5H050
【Fターム(参考)】
2G216BA02
2G216BA22
2G216BA65
2G216CB52
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503EA09
5H030AA09
5H030AA10
5H030AS20
5H030FF42
5H050BA17
5H050CA07
5H050CB08
5H050HA18
(57)【要約】
【課題】LFP系リチウムイオン二次電池に対して並列接続する補助電池の容量が小さくてもLFP系リチウムイオン二次電池を完全放電させずにその状態を高精度に推定することが可能なLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置およびその二次電池の状態推定方法を提供する。
【解決手段】LFP系リチウムイオン二次電池の管理装置10は、補助電池12とCPU20とを有する。CPU20は、LFP系リチウムイオン二次電池22が満充電の時点から補助電流値の逆数がピークを示す時点までまたは補助電流値がボトムを示す時点までの特定時間範囲の特定主積算値および特定補助積算値に基づいて、LFP系リチウムイオン二次電池22の状態を推定する。補助電池12は、OCVが3.0~3.5Vの範囲においてDODが1.0%増加した時にOCVが最低でも0.010V以上の割合で低下する放電特性を持つ二次電池、または放電特性を持つコンデンサである。
【選択図】
図3(a)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LFP系リチウムイオン二次電池に対して並列接続して複合電池を構成する補助電池と、
前記複合電池の放電時に前記LFP系リチウムイオン二次電池を流れる電流の主電流値を連続的に測定する主電流測定部と、
前記複合電池の放電時に前記補助電池を流れる電流の補助電流値を連続的に測定する補助電流測定部と、
前記LFP系リチウムイオン二次電池の放電に伴って満充電の時点から累積する前記主電流値および前記補助電流値を互いに同じ測定タイミングで数値化してから積算して主積算値および補助積算値をそれぞれ算出する電流値積算部と、
前記LFP系リチウムイオン二次電池の状態を推定するCPUと、を有し、
前記CPUは、
前記LFP系リチウムイオン二次電池が満充電の時点から前記補助電流値の逆数がピークを示す時点までまたは前記補助電流値がボトムを示す時点までの特定時間範囲の前記主積算値である特定主積算値を算出する特定主積算値演算部と、
前記特定時間範囲の前記補助積算値である特定補助積算値を算出する特定補助積算値演算部と、
前記特定主積算値および前記特定補助積算値に基づいて、前記LFP系リチウムイオン二次電池の状態を推定する主電池状態推定部と、を備え、
前記補助電池は、OCVが3.0~3.5Vの範囲においてDODが1.0%増加した時にOCVが最低でも0.010V以上の割合で低下する放電特性を持つ二次電池、または前記放電特性を持つコンデンサであるLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置。
【請求項2】
LFP系リチウムイオン二次電池に対して並列接続して複合電池を構成する補助電池と、
前記複合電池の放電時に前記LFP系リチウムイオン二次電池を流れる電流の主電流値を連続的に測定する主電流測定部と、
前記複合電池の放電時に前記補助電池を流れる電流の補助電流値を連続的に測定する補助電流測定部と、
前記主電流値および前記補助電流値を互いに同じ測定タイミングで数値化してからそれぞれ記憶する電流値記憶部と、
前記LFP系リチウムイオン二次電池の状態を推定するCPUと、を有し、
前記CPUは、
前記LFP系リチウムイオン二次電池の放電に伴って満充電の時点から累積する前記主電流値を積算して主積算値を算出するとともに、前記LFP系リチウムイオン二次電池が満充電の時点から前記補助電流値の逆数がピークを示す時点までまたは前記補助電流値がボトムを示す時点までの特定時間範囲の前記主積算値である特定主積算値を算出する主積算値演算部と、
前記LFP系リチウムイオン二次電池の放電に伴って満充電の時点から累積する前記補助電流値を積算して補助積算値を算出するとともに、前記特定時間範囲の前記補助積算値である特定補助積算値を算出する補助積算値演算部と、
前記特定主積算値および前記特定補助積算値に基づいて、前記LFP系リチウムイオン二次電池の状態を推定する主電池状態推定部と、を備え、
前記補助電池は、OCVが3.0~3.5Vの範囲においてDODが1.0%増加した時にOCVが最低でも0.010V以上の割合で低下する放電特性を持つ二次電池、または前記放電特性を持つコンデンサであるLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置。
【請求項3】
前記特定時間範囲は、前記LFP系リチウムイオン二次電池が満充電の時点から前記補助電流値の逆数が第1ピークを示す時点までまたは前記補助電流値が第1ボトムを示す時点までの第1時間範囲、および前記LFP系リチウムイオン二次電池が満充電の時点から前記補助電流値の逆数が前記第1ピークと異なる第2ピークを示す時点までまたは前記補助電流値が前記第1ボトムと異なる第2ボトムを示す時点までの第2時間範囲からなり、
前記特定主積算値は、前記第1時間範囲の前記主積算値である第1主積算値、および前記第2時間範囲の前記主積算値である第2主積算値からなり、
前記特定補助積算値は、前記第1時間範囲の前記補助積算値である第1補助積算値、および前記第2時間範囲の前記補助積算値である第2補助積算値からなる請求項1または2に記載のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置。
【請求項4】
前記主電池状態推定部は、
前記特定主積算値および前記特定補助積算値から前記LFP系リチウムイオン二次電池の最新主電池容量を算出する最新主電池容量演算部と、
前記最新主電池容量から前記LFP系リチウムイオン二次電池のSOCを求める主電池SOC演算部と、
前記最新主電池容量から前記LFP系リチウムイオン二次電池のSOHを求める主電池SOH演算部と、を備える請求項1または2に記載のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置。
【請求項5】
前記主電池SOC演算部は、前記最新主電池容量演算部が前記最新主電池容量を算出してから、前記複合電池の新たな充電および放電によって新たに算出された前記特定主積算値および前記特定補助積算値から前記最新主電池容量演算部が新たな最新主電池容量の値を算出するまでの間、前記主積算値を前記最新主電池容量で除算して算出した主DODを100%から減算して前記LFP系リチウムイオン二次電池のSOCを求める請求項4に記載のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置。
【請求項6】
前記主電池SOH演算部は、前記最新主電池容量を、あらかじめ記憶した前記LFP系リチウムイオン二次電池の初期主電池容量で除算して前記LFP系リチウムイオン二次電池のSOHを求める請求項4に記載のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置。
【請求項7】
LFP系リチウムイオン二次電池に対して補助電池を互いに並列接続して複合電池を構成する第1工程と、
前記複合電池の放電時に前記LFP系リチウムイオン二次電池を流れる電流の主電流値と前記補助電池を流れる電流の補助電流値とをそれぞれ連続的に測定する第2工程と、
前記LFP系リチウムイオン二次電池の放電に伴って満充電の時点から累積する前記主電流値および前記補助電流値を互いに同じ測定タイミングで数値化してから積算して主積算値および補助積算値をそれぞれ算出する第3工程と、
前記LFP系リチウムイオン二次電池が満充電の時点から前記補助電流値の逆数がピークを示す時点までまたは前記補助電流値がボトムを示す時点までの特定時間範囲の前記主積算値である特定主積算値、および前記特定時間範囲の前記補助積算値である特定補助積算値をCPUがそれぞれ算出する第4工程と、
前記特定主積算値および前記特定補助積算値に基づいて、前記CPUが前記LFP系リチウムイオン二次電池の状態を推定する主電池状態推定工程と、を含み、
前記補助電池は、OCVが3.0~3.5Vの範囲においてDODが1.0%増加した時にOCVが最低でも0.010V以上の割合で低下する放電特性を持つ二次電池、または前記放電特性を持つコンデンサであるLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法。
【請求項8】
前記主電池状態推定工程は、
前記CPUが前記特定主積算値および前記特定補助積算値から前記LFP系リチウムイオン二次電池の最新主電池容量を算出する第5工程と、
前記CPUが前記最新主電池容量から前記LFP系リチウムイオン二次電池のSOCを求める第6工程と、
前記CPUが前記最新主電池容量から前記LFP系リチウムイオン二次電池のSOHを求める第7工程と、を含む請求項7に記載のLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法。
【請求項9】
前記第6工程は、前記CPUが前記第5工程において前記最新主電池容量を算出してから、前記複合電池の新たな充電および放電によって新たに算出された前記特定主積算値および前記特定補助積算値から前記CPUが前記第5工程において新たな最新主電池容量の値を算出するまでの間、前記CPUが前記主積算値を前記最新主電池容量で除算して算出した主DODを100%から減算して前記LFP系リチウムイオン二次電池のSOCを求める請求項8に記載のLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法。
【請求項10】
前記第7工程は、前記CPUが前記最新主電池容量を、あらかじめ記憶した前記LFP系リチウムイオン二次電池の初期主電池容量で除算して前記LFP系リチウムイオン二次電池のSOHを求める請求項8または9に記載のLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LFP系リチウムイオン二次電池の状態推定を行うLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置およびLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法に関し、特に、SOC推定およびSOH推定を行うLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置およびLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フラットなOCV-SOC特性を有する二次電池のSOCを推定する時に、この二次電池と種類が異なる補助二次電池を並列に接続してその補助二次電池の端子電圧に基づいて推定する方法が開示されている。例えば、特許文献1には、フラットなOCV-SOC特性を有する二次電池としてニッケル水素電池が例示され、補助二次電池としてリチウムイオン二次電池が例示されている。一方、二次電池のSOCを推定する時に、端子電圧以外の指標に基づいて推定する方法が開示されている。例えば、特許文献2には、Q-dQ/dV曲線に基づいて推定する方法が開示され、特許文献3には、Q-dV/dQ曲線に基づいて推定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-190728
【特許文献2】WO2021/191993
【特許文献3】特開2009-252381
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の方法では、フラットなOCV-SOC特性を有する二次電池の容量に対して補助二次電池の容量を小さくすればするほどSOCの推定精度が悪化し、その容量比率が1/10以下では推定精度が悪すぎて使用できないという問題があった。また、特許文献2の方法では、LFP系リチウムイオン二次電池のSOCが90~70%付近および60~40%付近、すなわちDODが10~30%付近および40~60%付近でdQ/dVの値が無限大になり、dQ/dVの値からSOCを推定できなくなるので、LFP系リチウムイオン二次電池のSOCの推定に使用できないという問題があった。
【0005】
さらに、特許文献3の方法では、LFP系リチウムイオン二次電池のSOCおよびDODがそれぞれ上記付近でdV/dQの値がフラットになり、dV/dQの値からSOCを推定できなくなるので、LFP系リチウムイオン二次電池のSOCの推定に使用できないという問題があった。これらの問題に加えて、特許文献1~3の方法では、SOHの推定について考慮されていないので、完全放電の状態から満充電の状態までに流れる充電電流の積算値または満充電の状態から完全放電の状態までに流れる放電電流の積算値を測定しない限りSOHを算出できないという問題があった。
【0006】
本発明は、従来のこのような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、LFP系リチウムイオン二次電池に対して並列接続する補助電池の容量が小さくてもLFP系リチウムイオン二次電池を完全放電させずにその状態を高精度に推定することが可能なLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置およびLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記目的に加え、使用中のLFP系リチウムイオン二次電池に対して比較的簡単に追加することが可能なLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するために、鋭意研究を重ねた結果、まず、LFP系リチウムイオン二次電池のDOD0~100%に対して補助電流値の逆数が単調増加または単調減少するわけではないので、補助電流値の逆数だけからLFP系リチウムイオン二次電池のSOCおよびSOHを推定することは難しいものの、補助電池の容量が小さくても、LFP系リチウムイオン二次電池のDODが10~30%付近および40~60%付近で、補助電池を流れる電流の補助電流値の逆数が第1ピークおよび第2ピークを示すこと、および第1ピークと第2ピークとの間の各二次電池の電流積算値からLFP系リチウムイオン二次電池の最新主電池容量を算出できることを見出した。
【0008】
また、本発明者は、主積算値を最新主電池容量で除算してLFP系リチウムイオン二次電池のDODを算出し、その値からLFP系リチウムイオン二次電池のSOCを求めること、および最新主電池容量を初期主電池容量で除算してLFP系リチウムイオン二次電池のSOHを求めることによって、LFP系リチウムイオン二次電池に対して並列接続する補助電池の容量が小さくてもLFP系リチウムイオン二次電池を完全放電させずにその状態を高精度に推定することができることを見出し、本発明に至ったものである。
【0009】
即ち、本発明の第1実施形態は、第1態様としてLFP系リチウムイオン二次電池に対して並列接続して複合電池を構成する補助電池と、複合電池の放電時にLFP系リチウムイオン二次電池を流れる電流の主電流値を連続的に測定する主電流測定部と、複合電池の放電時に補助電池を流れる電流の補助電流値を連続的に測定する補助電流測定部と、LFP系リチウムイオン二次電池の放電に伴って満充電の時点から累積する主電流値および補助電流値を互いに同じ測定タイミングで数値化してから積算して主積算値および補助積算値をそれぞれ算出する電流値積算部と、LFP系リチウムイオン二次電池の状態を推定するCPUと、を有し、CPUは、LFP系リチウムイオン二次電池が満充電の時点から補助電流値の逆数がピークを示す時点までまたは補助電流値がボトムを示す時点までの特定時間範囲の主積算値である特定主積算値を算出する特定主積算値演算部と、特定時間範囲の補助積算値である特定補助積算値を算出する特定補助積算値演算部と、特定主積算値および特定補助積算値に基づいて、LFP系リチウムイオン二次電池の状態を推定する主電池状態推定部と、を備え、補助電池は、OCVが3.0~3.5Vの範囲においてDODが1.0%増加した時にOCVが最低でも0.010V以上の割合で低下する放電特性を持つ二次電池、または放電特性を持つコンデンサであるLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置を提供するものである。
【0010】
また、本発明の第1実施形態は、第2態様としてLFP系リチウムイオン二次電池に対して並列接続して複合電池を構成する補助電池と、複合電池の放電時にLFP系リチウムイオン二次電池を流れる電流の主電流値を連続的に測定する主電流測定部と、複合電池の放電時に補助電池を流れる電流の補助電流値を連続的に測定する補助電流測定部と、主電流値および補助電流値を互いに同じ測定タイミングで数値化してからそれぞれ記憶する電流値記憶部と、LFP系リチウムイオン二次電池の状態を推定するCPUと、を有し、CPUは、LFP系リチウムイオン二次電池の放電に伴って満充電の時点から累積する主電流値を積算して主積算値を算出するとともに、LFP系リチウムイオン二次電池が満充電の時点から補助電流値の逆数がピークを示す時点までまたは補助電流値がボトムを示す時点までの特定時間範囲の主積算値である特定主積算値を算出する主積算値演算部と、LFP系リチウムイオン二次電池の放電に伴って満充電の時点から累積する補助電流値を積算して補助積算値を算出するとともに、特定時間範囲の補助積算値である特定補助積算値を算出する補助積算値演算部と、特定主積算値および特定補助積算値に基づいて、LFP系リチウムイオン二次電池の状態を推定する主電池状態推定部と、を備え、補助電池は、OCVが3.0~3.5Vの範囲においてDODが1.0%増加した時にOCVが最低でも0.010V以上の割合で低下する放電特性を持つ二次電池、または放電特性を持つコンデンサであるLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置を提供するものである。
【0011】
ここで、上記においては、特定時間範囲は、LFP系リチウムイオン二次電池が満充電の時点から補助電流値の逆数が第1ピークを示す時点までまたは補助電流値が第1ボトムを示す時点までの第1時間範囲、およびLFP系リチウムイオン二次電池が満充電の時点から補助電流値の逆数が第1ピークと異なる第2ピークを示す時点までまたは補助電流値が第1ボトムと異なる第2ボトムを示す時点までの第2時間範囲からなり、特定主積算値は、第1時間範囲の主積算値である第1主積算値、および第2時間範囲の主積算値である第2主積算値からなり、特定補助積算値は、第1時間範囲の補助積算値である第1補助積算値、および第2時間範囲の補助積算値である第2補助積算値からなるのが好ましい。
【0012】
さらに、上記においては、主電池状態推定部は、特定主積算値および特定補助積算値からLFP系リチウムイオン二次電池の最新主電池容量を算出する最新主電池容量演算部と、最新主電池容量からLFP系リチウムイオン二次電池のSOCを求める主電池SOC演算部と、最新主電池容量からLFP系リチウムイオン二次電池のSOHを求める主電池SOH演算部と、を備えるのが好ましい。
主電池SOC演算部は、最新主電池容量演算部が最新主電池容量を算出してから、複合電池の新たな充電および放電によって新たに算出された特定主積算値および特定補助積算値から最新主電池容量演算部が新たな最新主電池容量の値を算出するまでの間、主積算値を最新主電池容量で除算して算出した主DODを100%から減算してLFP系リチウムイオン二次電池のSOCを求めるのが好ましい。
主電池SOH演算部は、最新主電池容量を、あらかじめ記憶したLFP系リチウムイオン二次電池の初期主電池容量で除算してLFP系リチウムイオン二次電池のSOHを求めるのが好ましい。
【0013】
また、本発明の第2実施形態は、LFP系リチウムイオン二次電池に対して補助電池を互いに並列接続して複合電池を構成する第1工程と、複合電池の放電時にLFP系リチウムイオン二次電池を流れる電流の主電流値と補助電池を流れる電流の補助電流値とをそれぞれ連続的に測定する第2工程と、LFP系リチウムイオン二次電池の放電に伴って満充電の時点から累積する主電流値および補助電流値を互いに同じ測定タイミングで数値化してから積算して主積算値および補助積算値をそれぞれ算出する第3工程と、LFP系リチウムイオン二次電池が満充電の時点から補助電流値の逆数がピークを示す時点までまたは補助電流値がボトムを示す時点までの特定時間範囲の主積算値である特定主積算値、および特定時間範囲の補助積算値である特定補助積算値をCPUがそれぞれ算出する第4工程と、特定主積算値および特定補助積算値に基づいて、CPUがLFP系リチウムイオン二次電池の状態を推定する主電池状態推定工程と、を含み、補助電池は、OCVが3.0~3.5Vの範囲においてDODが1.0%増加した時にOCVが最低でも0.010V以上の割合で低下する放電特性を持つ二次電池、または放電特性を持つコンデンサであるLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法を提供するものである。
【0014】
ここで、上記においては、主電池状態推定工程は、CPUが特定主積算値および特定補助積算値からLFP系リチウムイオン二次電池の最新主電池容量を算出する第5工程と、CPUが最新主電池容量からLFP系リチウムイオン二次電池のSOCを求める第6工程と、CPUが最新主電池容量からLFP系リチウムイオン二次電池のSOHを求める第7工程と、を含むのが好ましい。
第6工程は、CPUが第5工程において最新主電池容量を算出してから、複合電池の新たな充電および放電によって新たに算出された特定主積算値および特定補助積算値からCPUが第5工程において新たな最新主電池容量の値を算出するまでの間、CPUが主積算値を最新主電池容量で除算して算出した主DODを100%から減算してLFP系リチウムイオン二次電池のSOCを求めるのが好ましい。
第7工程は、CPUが最新主電池容量を、あらかじめ記憶したLFP系リチウムイオン二次電池の初期主電池容量で除算してLFP系リチウムイオン二次電池のSOHを求めるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置および本発明の第2実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法によれば、LFP系リチウムイオン二次電池に対して並列接続する補助電池の容量が小さくてもLFP系リチウムイオン二次電池を完全放電させずにその状態を高精度に推定することができる。
また、本発明の第1実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置によれば、上記効果に加え、使用中のLFP系リチウムイオン二次電池に対して比較的簡単に追加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置の第1態様を示すブロック図である。
【
図2】
図1の管理装置を構成する補助電池のDODに対するOCVを示すグラフである。
【
図3(a)】LFP系リチウムイオン二次電池を流れる電流の主積算値に対するLFP系リチウムイオン二次電池の放電電圧および補助電流値の逆数を示すグラフである。
【
図3(b)】LFP系リチウムイオン二次電池を流れる電流の主積算値と補助電池を流れる電流の補助積算値との関係を示すグラフである。
【
図3(c)】
図3(a)の補助電流値の逆数の代わりに補助電流値を示すグラフである。
【
図4】LFP系リチウムイオン二次電池の差分容量比率とLFP系リチウムイオン二次電池の補正容量比率との関係を示すグラフである。
【
図5(a)】LFP系リチウムイオン二次電池の補正容量比率と第1主DODの推測値との関係を示すグラフである。
【
図5(b)】LFP系リチウムイオン二次電池の補正容量比率と第2主DODの推測値との関係を示すグラフである。
【
図6】本発明の第1実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置の第2態様を示すブロック図である。
【
図7(a)】本発明の第2実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法を示すフローチャートである。
【
図7(b)】
図7(a)のLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法のステップS18を詳細に示すフローチャートである。
【
図8】複合電池A~Dを構成する補助電池のDODに対するOCVを示すグラフである。
【
図9(a)】複合電池Aの主積算値に対するLFP系リチウムイオン二次電池の放電電圧および補助電流値の逆数を示すグラフである。
【
図9(b)】複合電池Aの主積算値と補助積算値との関係を示すグラフである。
【
図10(a)】複合電池Bの主積算値に対するLFP系リチウムイオン二次電池の放電電圧および補助電流値の逆数を示すグラフである。
【
図10(b)】複合電池Bの主積算値と補助積算値との関係を示すグラフである。
【
図11(a)】複合電池Cの主積算値に対するLFP系リチウムイオン二次電池の放電電圧および補助電流値の逆数を示すグラフである。
【
図11(b)】複合電池Cの主積算値と補助積算値との関係を示すグラフである。
【
図12(a)】複合電池Dの主積算値に対するLFP系リチウムイオン二次電池の放電電圧および補助電流値の逆数を示すグラフである。
【
図12(b)】複合電池Dの主積算値と補助積算値との関係を示すグラフである。
【
図12(c)】
図12(a)の補助電流値の逆数の代わりに補助電流値を示すグラフである。
【
図13】LFP系リチウムイオン二次電池の充電電圧および補助電池のQ-dQ/dV曲線を示すグラフである。
【
図14】LFP系リチウムイオン二次電池の充電電圧および補助電池のQ-dV/dQ曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を添付の図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。まず、本発明の第1実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置について詳細に説明する。
図1は、本発明の第1実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置の第1態様を示すブロック図であり、
図2は、
図1の管理装置を構成する補助電池のDODに対するOCVを示すグラフである。
【0018】
本発明のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置10は、補助電池12と主電流測定部14と補助電流測定部16と電流値積算部18とCPU20とを有する。補助電池12は、LFP系リチウムイオン二次電池22(以下、主電池ともいう)に対して並列接続して複合電池を構成する。主電流測定部14は、複合電池の放電時にLFP系リチウムイオン二次電池22を流れる電流の主電流値を連続的に測定する。補助電流測定部16は、複合電池の放電時に補助電池12を流れる電流の補助電流値を連続的に測定する。電流値積算部18は、LFP系リチウムイオン二次電池22の放電に伴って満充電の時点から累積する主電流値および補助電流値を互いに同じ測定タイミングで数値化してから積算して主積算値および補助積算値をそれぞれ算出する。CPU20は、LFP系リチウムイオン二次電池22の状態を推定する。
【0019】
ここで、LFP系リチウムイオン二次電池とは、正極材料としてLiFePO4、LiMnPO4などの内のいずれか1つのオリビン型リチウム金属リン酸化合物を使用し、負極材料としてグラファイトなどの黒鉛系炭素材料を使用したリチウムイオン二次電池である。また、主電流測定部14は、例えば、主電流検出用のシャント抵抗であり、補助電流測定部16は、例えば、補助電流検出用のシャント抵抗であり、電流値積算部18は、例えば、クーロンカウンタである。補助電池12は、放電に伴ってDODが0%から100%まで変化した時に放電電圧が単調減少する特性を持ち、放電電圧がフラットになる領域を持たない二次電池である。これに対して、LFP系リチウムイオン二次電池22は、放電に伴ってDODが0%から100%まで変化した時に放電電圧がフラットになる領域を持つ二次電池である。
【0020】
CPU20は、特定主積算値演算部24と特定補助積算値演算部26と主電池状態推定部28と記憶部30とを備える。特定主積算値演算部24は、特定時間範囲の主積算値である特定主積算値を算出する。特定補助積算値演算部26は、特定時間範囲の補助積算値である特定補助積算値を算出する。特定時間範囲は、LFP系リチウムイオン二次電池22が満充電の時点から補助電流値の逆数がピークを示す時点まで、またはLFP系リチウムイオン二次電池22が満充電の時点から補助電流値がボトムを示す時点までの時間範囲である。主電池状態推定部28は、特定主積算値および特定補助積算値に基づいて、LFP系リチウムイオン二次電池22の状態を推定する。
【0021】
ここで、ピーク(極大ともいう)とは、XY平面上で逆V字状の頂点に対応するX軸の値とその付近のX軸の値とからなる局所的なX軸の範囲においてY軸の値が最も大きい状態を意味する。これに対して、ボトム(極小ともいう)とは、XY平面上でV字状の頂点に対応するX軸の値とその付近のX軸の値とからなる局所的なX軸の範囲においてY軸の値が最も小さい状態を意味する。
【0022】
補助電池12は、所定の放電特性を持つ二次電池またはコンデンサであり、その所定の放電特性は、OCVが3.0~3.5Vの範囲においてDODが1.0%増加した時にOCVが最低でも0.010V以上の割合で低下する放電特性である。
ここで、OCV(Open circuit voltage、開回路電圧、開放電圧ともいう)とは、電池に電流を流していない状態における端子間電圧である。また、DOD(Depth Of Discharge、放電深度ともいう)とは、放電状態を表す指標であり、電池が満充電された状態から放電した電気量の満充電容量に対する比率であり、満充電状態では0%、完全放電状態では100%になる。
【0023】
そのような条件に該当する補助電池12は、例えば、ナトリウムイオン二次電池、コンデンサ、NCM系リチウムイオン二次電池、NCA系リチウムイオン二次電池および正極にリチウム金属酸化物またはオリビン型リチウム金属リン酸化合物を使用し、負極にハードカーボンを使用したリチウムイオン二次電池からなる群から選択される少なくとも1種の二次電池である。
【0024】
ここで、ナトリウムイオン二次電池とは、正極材料としてナトリウム金属酸化物を使用し、負極材料としてグラファイトなどの黒鉛系炭素材料を使用した二次電池である。コンデンサ(キャパシタともいう)とは、誘電体を2個の金属板で挟み込んだ構造を持ち、電気を蓄えたり放出したりする電子部品である。NCM系リチウムイオン二次電池とは、正極材料として三元系、すなわちLiNiO2、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiCoMnO2などの内のいずれか1つのリチウム金属酸化物を使用し、負極材料としてグラファイトなどの黒鉛系炭素材料を使用した二次電池である。NCA系リチウムイオン二次電池とは、正極材料としてLiNiCoAlMO2(ここで、Mは、Na、Sr、Baの内の少なくとも1つである)を使用し、負極材料としてグラファイトなどの黒鉛系炭素材料を使用した二次電池である。
【0025】
また、リチウム金属酸化物とは、LiNiO2、LiCoO2、LiMn2O4、LiNiCoMnO2およびLiNiCoAlMO2(ここで、Mは、Na、Sr、Baの内の少なくとも1つである)の内のいずれか1つである。オリビン型リチウム金属リン酸化合物とは、LiFePO4、LiMnPO4などの内のいずれか1つである。ハードカーボンとは、3000℃の高温でも熱処理によってグラファイトに変化しない固体状の炭素であり、炭素質の前駆体を嫌気条件で約1000℃に加熱することで製造される。
【0026】
すなわち、まず、主電流測定部14と補助電流測定部16と電流値積算部18が、互いに並列接続した一方のLFP系リチウムイオン二次電池22を流れる放電電流の主電流値の測定とその主電流値を満充電の時点から積算した主積算値の算出、ならびに他方の補助電池12を流れる放電電流の補助電流値の測定とその補助電流値を満充電の時点から積算した補助積算値の算出をそれぞれ実行する。次に、特定時間範囲の始点として、LFP系リチウムイオン二次電池22が満充電の時点を設定し、特定時間範囲の終点として、補助電流値の逆数がピークを示す時点または補助電流値がボトムを示す時点を設定し、特定主積算値演算部24および特定補助積算値演算部26が、その特定時間範囲の主積算値である特定主積算値およびその特定時間範囲の補助積算値である特定補助積算値をそれぞれ算出し、主電池状態推定部28が、特定主積算値および特定補助積算値に基づいて、LFP系リチウムイオン二次電池22の状態を推定する。また、補助電池12の放電特性は、3.0~3.5Vの範囲におけるOCVの低下割合が1.0%のDOD増加に対して最低でも0.010V以上である。
【0027】
このような構成とすることで、本発明の第1実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置は、容量が小さい補助電池をLFP系リチウムイオン二次電池に対して並列接続しても、放電に伴って主積算値が増加した時に補助電流値およびその逆数が大きく変化するため特定主積算値および特定補助積算値を高精度に算出することができ、しかも、特定主積算値が算出される時点までLFP系リチウムイオン二次電池を放電させるだけでその状態を推定することができるので、LFP系リチウムイオン二次電池に対して並列接続する補助電池の容量が小さくてもLFP系リチウムイオン二次電池を完全放電させずにその状態を高精度に推定すること、および使用中のLFP系リチウムイオン二次電池に対して比較的簡単に追加することができる。
【0028】
次に、特定時間範囲、特定主積算値および特定補助積算値について説明する。
図3(a)は、LFP系リチウムイオン二次電池を流れる電流の主積算値に対するLFP系リチウムイオン二次電池の放電電圧および補助電流値の逆数を示すグラフであり、
図3(b)は、LFP系リチウムイオン二次電池を流れる電流の主積算値と補助電池を流れる電流の補助積算値との関係を示すグラフである。
【0029】
特定時間範囲は、第1時間範囲および第2時間範囲からなるのが好ましい。その場合には、第1時間範囲は、LFP系リチウムイオン二次電池22が満充電の時点から補助電流値の逆数が第1ピークを示す時点までまたは補助電流値が第1ボトムを示す時点までの時間範囲であり、第2時間範囲は、LFP系リチウムイオン二次電池22が満充電の時点から補助電流値の逆数が第1ピークと異なる第2ピークを示す時点までまたは補助電流値が第1ボトムと異なる第2ボトムを示す時点までの時間範囲である。また、特定主積算値は、第1時間範囲の主積算値である第1主積算値Ap1、および第2時間範囲の主積算値である第2主積算値Ap2からなる。さらに、特定補助積算値は、第1時間範囲の補助積算値である第1補助積算値As1、および第2時間範囲の補助積算値である第2補助積算値As2からなる。
【0030】
図3(a)は、LFP系リチウムイオン二次電池を流れる電流の主積算値を横軸とし、LFP系リチウムイオン二次電池22の放電電圧を縦軸とした曲線A、および補助電流値の逆数を縦軸とした曲線Bを示す。主積算値は、主電流測定部14が測定した主電流値を電流値積算部18が満充電の時点から積算したものである。LFP系リチウムイオン二次電池22の放電に伴って主積算値が増加すると、曲線Bに1番目のピーク(以下、第1ピークという)および2番目のピーク(以下、第2ピークという)が生じる。
【0031】
LFP系リチウムイオン二次電池22が満充電の時点から補助電流値の逆数がピークを示す時点までの特定主積算値を算出する手順として、第1ピークとその付近、例えば第1ピークの縦軸の値に対して90~100%の時に第1ピークの横軸の値を中央に挟んだ横軸Xの範囲を設定し、その範囲で曲線Bを近似した二次多項式:A1X2+B1X+C1を求め、その二次多項式の係数から二次多項式がピークになる横軸の値:-B1/2A1、すなわち第1主積算値Ap1を求める。
【0032】
同様にして、第2ピークとその付近、例えば第2ピークの縦軸の値に対して90~100%の時に第2ピークの横軸の値を中央に挟んだ横軸Xの範囲で曲線Bを近似した二次多項式:A2X2+B2X+C2を求め、その二次多項式がピークになる横軸の値:-B2/2A2、すなわち第2主積算値Ap2を求める。この場合、過去に求めた第1ピークの横軸の値および第2ピークの横軸の値がある場合には、それらの横軸の値に対して例えば±5%の範囲で曲線Bを近似した二次多項式を求めても良い。
【0033】
図3(b)は、LFP系リチウムイオン二次電池を流れる電流の主積算値を横軸とし、補助電池を流れる電流の補助積算値を縦軸とした両者の関係を示す。補助積算値は、補助電流測定部16が測定した補助電流値を電流値積算部18が満充電の時点から積算したものである。LFP系リチウムイオン二次電池22が満充電の時点から補助電流値の逆数がピークを示す時点までの特定補助積算値を算出する手順として、第1ピークの横軸の値Ap1に対応する縦軸の値As1、および第2ピークの横軸の値Ap2に対応する縦軸の値As2を求める。
【0034】
次に、特定主積算値を算出する別の手順について説明する。
図3(c)は、
図3(a)の補助電流値の逆数の代わりに補助電流値を示すグラフである。
図3(c)の曲線Cは、LFP系リチウムイオン二次電池22を流れる電流の主積算値に対する補助電流値を示す。LFP系リチウムイオン二次電池22の放電に伴って主積算値が増加すると、曲線Cに1番目のボトム(以下、第1ボトムという)および2番目のボトム(以下、第2ボトムという)が生じる。次に、第1ピークの時のように、第1ボトムとその付近で曲線Cを近似した二次多項式を求め、その二次多項式の係数から第1主積算値Ap1を求める。次に、第2ピークの時のように、第2ボトムとその付近で曲線Cを近似した二次多項式を求め、その二次多項式の係数から第2主積算値Ap2を求める。
【0035】
LFP系リチウムイオン二次電池22の状態を推定する時に、第1の方法および第2の方法が可能になる。なお、以下の説明において第1ピーク、第2ピークおよび補助電流値の逆数を、第1ボトム、第2ボトムおよび補助電流値にそれぞれ読み替えても意味は同じである。第1の方法は、第1ピークおよび第2ピークの両方のピークに関する特定主積算値および特定補助積算値を各測定値から算出する方法であり、LFP系リチウムイオン二次電池22が満充電の時点から放電電圧が急速に低下して完全放電する時点までの電流値を積算して得た主電池容量に対して主積算値が約13~20%の時に補助電流値の逆数が第1ピークを示し、主積算値が約42~56%の時に補助電流値の逆数が第2ピークを示すため、LFP系リチウムイオン二次電池22を約56%まで放電させるだけでその状態を推定することができる。第2の方法は、第1ピークに関する特定主積算値および特定補助積算値のみを各測定値から算出し、第2ピークに関する特定主積算値および特定補助積算値をあらかじめ記憶するまたは第1ピークに関する各測定値から推定する方法であり、LFP系リチウムイオン二次電池22の主電池容量に対して主積算値が約13~20%の時に補助電流値の逆数が第1ピークを示すため、LFP系リチウムイオン二次電池22を約20%まで放電させるだけでその状態を推定することができる。
【0036】
このような構成とすることで、本発明の第1実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置は、LFP系リチウムイオン二次電池を最大でも約56%まで放電させるだけで特定主積算値および特定補助積算値を高精度に算出することができるので、LFP系リチウムイオン二次電池を完全放電させずにその状態を高精度に推定することができる。
【0037】
次に、主電池状態推定部28について説明する。
主電池状態推定部28は、最新主電池容量演算部28aと主電池SOC演算部28bと主電池SOH演算部28cとを備えるのが好ましい。その場合には、最新主電池容量演算部28aは、特定主積算値(第1主積算値Ap1、第2主積算値Ap2)および特定補助積算値(第1補助積算値As1、第2補助積算値As2)からLFP系リチウムイオン二次電池22の最新主電池容量Cpを算出する。主電池SOC演算部28bは、最新主電池容量CpからLFP系リチウムイオン二次電池22のSOCを求める。主電池SOH演算部28cは、最新主電池容量CpからLFP系リチウムイオン二次電池22のSOHを求める。
【0038】
ここで、SOC(States Of Charge、充電率ともいう)とは、充電状態を表す指標であり、電池が満充電された状態から放電した電気量を除いた残容量の満充電容量に対する比率であり、満充電状態では100%、完全放電状態では0%になる。また、SOH(State Of Health、劣化率ともいう)とは、初期の満充電容量に対する劣化時の満充電容量の比率である。
【0039】
次に、最新主電池容量演算部28aについて説明する。
図4は、LFP系リチウムイオン二次電池の差分容量比率とLFP系リチウムイオン二次電池の補正容量比率との関係を示すグラフであり、
図5(a)は、LFP系リチウムイオン二次電池の補正容量比率と第1主DODの推測値との関係を示すグラフであり、
図5(b)は、LFP系リチウムイオン二次電池の補正容量比率と第2主DODの推測値との関係を示すグラフである。
【0040】
まず、最新主電池容量演算部28aは、特定主積算値演算部24が算出した第1主積算値Ap1と第2主積算値Ap2との差として差分主積算値Apを算出する。次に、最新主電池容量演算部28aは、特定補助積算値演算部26が算出した第1補助積算値As1と第2補助積算値As2との差として差分補助積算値Asを算出する。次に、最新主電池容量演算部28aは、差分主積算値Apと差分補助積算値Asとの合計で差分主積算値Apを除算して差分容量比率Rdを算出する。次に、最新主電池容量演算部28aは、
図4に示すように、記憶部30があらかじめ記憶した表または式を使用して、差分容量比率RdからLFP系リチウムイオン二次電池22の補正容量比率Ruを求める。その表または式は、差分容量比率Rdと補正容量比率Ruとの関係を示すものであり、補助電池の種類によって異なる。なお、
図4は、補助電池が、正極にNaFe
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2を使用し、負極にハードカーボンを使用したナトリウムイオン二次電池の場合の一例として示すものであり、これに限定されるものではない。
【0041】
次に、最新主電池容量演算部28aは、
図5(a)および
図5(b)に示すように、記憶部30があらかじめ記憶した表または式を使用して、補正容量比率Ruから第1主DODの推測値Dp1および第2主DODの推測値Dp2を求める。その表または式は、補正容量比率Ruと第1主DODの推測値Dp1との関係、および補正容量比率Ruと第2主DODの推測値Dp2との関係を示すものであり、補助電池の種類によって異なる。なお、
図5(a)および
図5(b)は、補助電池が、正極にNaFe
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2を使用し、負極にハードカーボンを使用したナトリウムイオン二次電池の場合の一例として示すものであり、これに限定されるものではない。次に、最新主電池容量演算部28aは、第1主DODの推測値Dp1と第2主DODの推測値Dp2との差として差分主DOD:Dpを算出する。次に、最新主電池容量演算部28aは、差分主積算値Apを差分主DOD:Dpで除算してLFP系リチウムイオン二次電池22の最新主電池容量Cpを算出する。それらの数式を以下に示す。なお、以下の数4~6は、補助電池が、正極にNaFe
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2を使用し、負極にハードカーボンを使用したナトリウムイオン二次電池の場合の一例として示すものであり、これに限定されるものではない。
【0042】
[数1] Ap(Ah)=Ap2-Ap1
[数2] As(Ah)=As2-As1
[数3] Rd(%)=Ap/(Ap+As)
[数4] Ru(%)=(Rd-0.9218)/0.0784
[数5] Dp1(%)=Ru×0.33778-0.15139
[数6] Dp2(%)=Ru×0.65615-0.12343
[数7] Dp(%)=Dp2-Dp1
[数8] Cp(Ah)=Ap/Dp
【0043】
このような構成とすることで、本発明の第1実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置は、特定主積算値の高精度な差分および特定補助積算値の高精度な差分から最新主電池容量を算出し、その最新主電池容量からSOCおよびSOHを求めるので、LFP系リチウムイオン二次電池のSOCおよびSOHを高精度に推定することができる。
【0044】
次に、主電池SOC演算部28bについて説明する。
主電池SOC演算部28bは、最新主電池容量演算部28aが最新主電池容量Cpを算出してから、複合電池の新たな充電および放電によって新たに算出された特定主積算値および特定補助積算値から最新主電池容量演算部28aが新たな最新主電池容量の値を算出するまでの間、主積算値Ap0を最新主電池容量Cpで除算して主DOD:Dp0を算出し、主DOD:Dp0を100%から減算してLFP系リチウムイオン二次電池22のSOCを求めるのが好ましい。それらの数式を以下に示す。
【0045】
[数9] Dp0(%)=Ap0/Cp
[数10] SOC(%)=1-Dp0
【0046】
このような構成とすることで、本発明の第1実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置は、初期主電池容量からではなく、劣化した状態の主電池容量からLFP系リチウムイオン二次電池のSOCを算出しているので、劣化した状態のLFP系リチウムイオン二次電池のSOCを高精度に推定することができる。
【0047】
次に、主電池SOH演算部28cについて説明する。
記憶部30は、LFP系リチウムイオン二次電池22の初期主電池容量Cpiをあらかじめ記憶し、主電池SOH演算部28cは、最新主電池容量CpをLFP系リチウムイオン二次電池22の初期主電池容量Cpiで除算してLFP系リチウムイオン二次電池22のSOHを求めるのが好ましい。その数式を以下に示す。
【0048】
[数11] SOH(%)=Cp/Cpi
【0049】
このような構成とすることで、本発明の第1実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置は、LFP系リチウムイオン二次電池の高精度な最新主電池容量からSOHを求めるので、LFP系リチウムイオン二次電池のSOHを高精度に推定することができる。
【0050】
次に、本発明の第1実施形態の別構成のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置について詳細に説明する。
図6は、本発明の第1実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置の第2態様を示すブロック図である。
【0051】
本発明のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置40は、LFP系リチウムイオン二次電池の管理装置10に対して、電流値積算部18と異なる電流値記憶部42を有する点、特定主積算値演算部24と異なる主積算値演算部44を有する点、および特定補助積算値演算部26と異なる補助積算値演算部46を有する点以外は同一の構成を有するものであるので、同一の構成要素の説明を省略する。
【0052】
電流値記憶部42は、主電流値および補助電流値を互いに同じ測定タイミングで数値化してからそれぞれ記憶する。主積算値演算部44は、LFP系リチウムイオン二次電池22の放電に伴って満充電の時点から累積する主電流値を積算して主積算値を算出するとともに、LFP系リチウムイオン二次電池22が満充電の時点から補助電流値の逆数がピークを示す時点までまたは補助電流値がボトムを示す時点までの特定時間範囲の主積算値である特定主積算値を算出する。補助積算値演算部46は、LFP系リチウムイオン二次電池22の放電に伴って満充電の時点から累積する補助電流値を積算して補助積算値を算出するとともに、特定時間範囲の補助積算値である特定補助積算値を算出する。ここで、電流値記憶部42は、例えば、データロガーである。
【0053】
このような構成とすることで、本発明の第1実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置は、LFP系リチウムイオン二次電池の管理装置10(第1態様)と同様に、LFP系リチウムイオン二次電池に対して並列接続する補助電池の容量が小さくてもLFP系リチウムイオン二次電池を完全放電させずにその状態を高精度に推定すること、および使用中のLFP系リチウムイオン二次電池に対して比較的簡単に追加することができる。
本発明の第1実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置は、基本的に以上のように構成される。
【0054】
次に、本発明の第2実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法について詳細に説明する。
図7(a)は、本発明の第2実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法を示すフローチャートである。
【0055】
本発明のLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法は、第1~4工程と主電池状態推定工程とを含む。第1工程は、ステップS10に示すように、LFP系リチウムイオン二次電池22に対して補助電池12を互いに並列接続して複合電池を構成する。第2工程は、ステップS12に示すように、複合電池の放電時にLFP系リチウムイオン二次電池22を流れる電流の主電流値と補助電池12を流れる電流の補助電流値とをそれぞれ連続的に測定する。第3工程は、ステップS14に示すように、LFP系リチウムイオン二次電池22の放電に伴って満充電の時点から累積する主電流値および補助電流値を互いに同じ測定タイミングで数値化してから積算して主積算値および補助積算値をそれぞれ算出する。
【0056】
第4工程は、ステップS16に示すように、LFP系リチウムイオン二次電池22が満充電の時点から補助電流値の逆数がピークを示す時点までまたは補助電流値がボトムを示す時点までの特定時間範囲の主積算値である特定主積算値、および特定時間範囲の補助積算値である特定補助積算値をCPU20がそれぞれ算出する。主電池状態推定工程は、特定主積算値および特定補助積算値に基づいて、CPU20がLFP系リチウムイオン二次電池22の状態を推定する。
【0057】
補助電池12は、所定の放電特性を持つ二次電池またはコンデンサであり、その所定の放電特性は、OCVが3.0~3.5Vの範囲においてDODが1.0%増加した時にOCVが最低でも0.010V以上の割合で低下する放電特性である。
【0058】
このような構成とすることで、本発明の第2実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法は、LFP系リチウムイオン二次電池の管理装置10の構成における説明と同じように作用するので、LFP系リチウムイオン二次電池に対して並列接続する補助電池の容量が小さくてもLFP系リチウムイオン二次電池を完全放電させずにその状態を高精度に推定することができる。
【0059】
次に、主電池状態推定工程について説明する。
主電池状態推定工程は、第5~7工程を含むのが好ましい。その場合には、第5工程は、ステップS18に示すように、CPU20が特定主積算値および特定補助積算値からLFP系リチウムイオン二次電池22の最新主電池容量Cpを算出する。第6工程は、ステップS20に示すように、CPU20が最新主電池容量CpからLFP系リチウムイオン二次電池22のSOCを求める。第7工程は、ステップS22に示すように、CPU20が最新主電池容量CpからLFP系リチウムイオン二次電池22のSOHを求める。
【0060】
次に、第5工程について説明する。
図7(b)は、
図7(a)のLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法のステップS18を詳細に示すフローチャートである。
第5工程は、まず、ステップS18aに示すように、ステップS16において算出した第1主積算値Ap1と第2主積算値Ap2との差としてCPU20が差分主積算値Apを算出する。次に、ステップS18bに示すように、ステップS16において算出した第1補助積算値As1と第2補助積算値As2との差としてCPU20が差分補助積算値Asを算出する。次に、ステップS18cに示すように、CPU20が差分主積算値Apと差分補助積算値Asとの合計で差分主積算値Apを除算して差分容量比率Rdを算出する。次に、ステップS18dに示すように、記憶部30があらかじめ記憶した表または式を使用して、CPU20が差分容量比率RdからLFP系リチウムイオン二次電池22の補正容量比率Ruを求める。その表または式は、差分容量比率Rdと補正容量比率Ruとの関係を示すものであり、補助電池の種類によって異なる。
【0061】
次に、ステップS18eに示すように、記憶部30があらかじめ記憶した表または式を使用して、CPU20が補正容量比率Ruから第1主DODの推測値Dp1および第2主DODの推測値Dp2を求める。その表または式は、補正容量比率Ruと第1主DODの推測値Dp1との関係、および補正容量比率Ruと第2主DODの推測値Dp2との関係を示すものであり、補助電池の種類によって異なる。次に、ステップS18fに示すように、CPU20が第1主DODの推測値Dp1と第2主DODの推測値Dp2との差として差分主DOD:Dpを算出する。次に、ステップS18gに示すように、CPU20が差分主積算値Apを差分主DOD:Dpで除算してLFP系リチウムイオン二次電池22の最新主電池容量Cpを算出する。それらの数式は、上述の数1~8の通りである。
【0062】
このような構成とすることで、本発明の第2実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法は、特定主積算値の高精度な差分および特定補助積算値の高精度な差分から最新主電池容量を算出し、その最新主電池容量からSOCおよびSOHを求めるので、LFP系リチウムイオン二次電池のSOCおよびSOHを高精度に推定することができる。
【0063】
次に、第6工程について説明する。
第6工程は、ステップS20に示すように、CPU20が第5工程において最新主電池容量Cpを算出してから、複合電池の新たな充電および放電によって新たに算出された特定主積算値および特定補助積算値からCPU20が第5工程において新たな最新主電池容量の値を算出するまでの間、CPU20が主積算値Ap0を最新主電池容量Cpで除算して主DOD:Dp0を算出し、主DOD:Dp0を100%から減算してLFP系リチウムイオン二次電池22のSOCを求めるのが好ましい。それらの数式は、上述の数9~10の通りである。
【0064】
このような構成とすることで、本発明の第2実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法は、初期主電池容量からではなく、劣化した状態の主電池容量からLFP系リチウムイオン二次電池のSOCを算出しているので、劣化した状態のLFP系リチウムイオン二次電池のSOCを高精度に推定することができる。
【0065】
次に、第7工程ついて説明する。
第7工程は、ステップS22に示すように、記憶部30がLFP系リチウムイオン二次電池22の初期主電池容量Cpiをあらかじめ記憶し、CPU20が最新主電池容量CpをLFP系リチウムイオン二次電池22の初期主電池容量Cpiで除算してLFP系リチウムイオン二次電池22のSOHを求めるのが好ましい。その数式は、上述の数11の通りである。
【0066】
このような構成とすることで、本発明の第2実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法は、LFP系リチウムイオン二次電池の高精度な最新主電池容量からSOHを求めるので、LFP系リチウムイオン二次電池のSOHを高精度に推定することができる。
本発明の第2実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法は、基本的に以上のように構成される。
【実施例0067】
次に、本発明の具体的実施例を挙げ、本発明についてより詳細に説明する。
図8は、複合電池A~Dを構成する補助電池のDODに対するOCVを示すグラフである。
(工程1)まず、LFP系リチウムイオン二次電池(HUAXING製6Ah)に対して補助電池として、正極にNaFe
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2を使用し、負極にハードカーボンを使用したナトリウムイオン二次電池(Natrium New Energy製1Ah)を並列接続して複合電池Aを構成した。補助電池12の放電特性は、3.0~3.5Vの範囲におけるOCVの低下割合がほぼ一定であり、1.0%のDOD増加に対して約0.013Vであった。
【0068】
(工程2)次に、2個のLFP系リチウムイオン二次電池(HUAXING製6Ah)を並列接続し、さらに複合電池Aと同じ補助電池を並列接続して複合電池Bを構成した。
(工程3)次に、4個のLFP系リチウムイオン二次電池(HUAXING製6Ah)を並列接続し、さらに複合電池Aと同じ補助電池を並列接続して複合電池Cを構成した。
(工程4)次に、LFP系リチウムイオン二次電池(HIGEE製120Ah)に対して複合電池Aと同じ補助電池を並列接続して複合電池Dを構成した。
【0069】
<SOHの推定>
(手順1)実施例1として、複合電池Aに対して2つのシャント抵抗を使用してLFP系リチウムイオン二次電池を流れる電流の主電流値と補助電池を流れる電流の補助電流値とをそれぞれ連続的に測定し、データロガーGL240(グラフテック製)を使用して主電流値と補助電流値とを互いに同じ測定タイミングで数値化してからそれぞれ記憶し、CPUがそれぞれ積算してLFP系リチウムイオン二次電池が満充電の時点から累積する主電流値の主積算値および補助電流値の補助積算値をそれぞれ算出した。
(手順2)次に、主積算値を横軸とし、補助電流値の逆数を縦軸としたグラフを作成した。
図9(a)は、複合電池Aの主積算値に対するLFP系リチウムイオン二次電池の放電電圧および補助電流値の逆数を示すグラフである。次に、第1ピークとその付近で曲線Bを近似した二次多項式がピークになる横軸の値、すなわち第1主積算値Ap1、および第2ピークとその付近で曲線Bを近似した二次多項式がピークになる横軸の値、すなわち第2主積算値Ap2を求めた。それらの数式を以下に示す。
【0070】
[数12] 二次多項式:-198.61X2+338.14X-73.937
[数13] Ap1(Ah)=338.14/(198.61×2)=0.851
[数14] 二次多項式:-68.815X2+369.19X-379.25
[数15] Ap2(Ah)=369.19/(68.815×2)=2.682
【0071】
(手順3)次に、主積算値を横軸とし、補助積算値を縦軸としたグラフを作成した。
図9(b)は、複合電池Aの主積算値と補助積算値との関係を示すグラフである。次に、第1ピークの時点での第1補助積算値As1:0.166Ah、および第2ピークの時点での第2補助積算値As2:0.187Ahを読み取った。
(手順4)次に、上述の数1~8および数11に従って、Ap:1.831Ah、As:0.020Ah、Rd:98.9%、Ru:85.7%、Dp1:13.8%、Dp2:43.9%、Dp:30.1%、Cp:6.1Ah、SOH:97.6%を算出した。測定結果および計算結果を表1に示す。なお、初期主電池容量Cpiは、測定値が存在しないので、仕様の値6Ahに対して4%を乗じた6.24Ahとした。
【0072】
【0073】
(手順5)実施例2として、複合電池Bに対して手順1と同様に主電流値の主積算値および補助電流値の補助積算値をそれぞれ測定した。
(手順6)次に、主積算値を横軸とし、補助電流値の逆数を縦軸としたグラフを作成した。
図10(a)は、複合電池Bの主積算値に対するLFP系リチウムイオン二次電池の放電電圧および補助電流値の逆数を示すグラフである。次に、手順2と同様に第1ピークの二次多項式と第1主積算値Ap1、ならびに第2ピークの二次多項式と第2主積算値Ap2を求めた。それらの数式を以下に示す。
【0074】
[数16] 二次多項式:-49.555X2+196.03X-96.811
[数17] Ap1(Ah)=196.03/(49.555×2)=1.978
[数18] 二次多項式:-21.679X2+252.71X-626.91
[数19] Ap2(Ah)=252.71/(21.679×2)=5.828
【0075】
(手順7)次に、主積算値を横軸とし、補助積算値を縦軸としたグラフを作成した。
図10(b)は、複合電池Bの主積算値と補助積算値との関係を示すグラフである。次に、第1ピークの時点での第1補助積算値As1:0.134Ah、および第2ピークの時点での第2補助積算値As2:0.157Ahを読み取った。
(手順8)次に、上述の数1~8および数11に従って、Ap:3.851Ah、As:0.023Ah、Rd:99.4%、Ru:92.3%、Dp1:16.0%、Dp2:48.2%、Dp:32.2%、Cp:12.0Ah、SOH:95.9%を算出した。測定結果および計算結果を表1に示す。なお、初期主電池容量Cpiは、測定値が存在しないので、仕様の値12Ahに対して4%を乗じた12.48Ahとした。
【0076】
(手順9)実施例3として、複合電池Cに対して手順1と同様に主電流値の主積算値および補助電流値の補助積算値をそれぞれ測定した。
(手順10)次に、主積算値を横軸とし、補助電流値の逆数を縦軸としたグラフを作成した。
図11(a)は、複合電池Cの主積算値に対するLFP系リチウムイオン二次電池の放電電圧および補助電流値の逆数を示すグラフである。次に、手順2と同様に第1ピークの二次多項式と第1主積算値Ap1、ならびに第2ピークの二次多項式と第2主積算値Ap2を求めた。それらの数式を以下に示す。
【0077】
[数20] 二次多項式:-14.055X2+106.36X-107.39
[数21] Ap1(Ah)=106.36/(14.055×2)=3.784
[数22] 二次多項式:-7.2386X2+165.35X-811.55
[数23] Ap2(Ah)=165.35/(7.2386×2)=11.421
【0078】
(手順11)次に、主積算値を横軸とし、補助積算値を縦軸としたグラフを作成した。
図11(b)は、複合電池Cの主積算値と補助積算値との関係を示すグラフである。次に、第1ピークの時点での第1補助積算値As1:0.137Ah、および第2ピークの時点での第2補助積算値As2:0.158Ahを読み取った。
(手順12)次に、上述の数1~8および数11に従って、Ap:7.638Ah、As:0.022Ah、Rd:99.7%、Ru:96.1%、Dp1:17.3%、Dp2:50.7%、Dp:33.4%、Cp:22.9Ah、SOH:91.6%を算出した。測定結果および計算結果を表1に示す。なお、初期主電池容量Cpiは、測定値が存在しないので、仕様の値24Ahに対して4%を乗じた24.96Ahとした。
【0079】
(手順13)実施例4として、複合電池Dに対して手順1と同様に主電流値の主積算値および補助電流値の補助積算値をそれぞれ測定した。
(手順14)次に、主積算値を横軸とし、補助電流値の逆数を縦軸としたグラフを作成した。
図12(a)は、複合電池Dの主積算値に対するLFP系リチウムイオン二次電池の放電電圧および補助電流値の逆数を示すグラフである。次に、手順2と同様に第1ピークの二次多項式と第1主積算値Ap1、ならびに第2ピークの二次多項式と第2主積算値Ap2を求めた。それらの数式を以下に示す。
【0080】
[数24] 二次多項式:-0.4298X2+19.984X-92.393
[数25] Ap1(Ah)=19.984/(0.4298×2)=23.248
[数26] 二次多項式:-0.2884X2+38.021X-1122
[数27] Ap2(Ah)=38.021/(0.2884×2)=65.917
【0081】
(手順15)次に、主積算値を横軸とし、補助積算値を縦軸としたグラフを作成した。
図12(b)は、複合電池Dの主積算値と補助積算値との関係を示すグラフである。次に、第1ピークの時点での第1補助積算値As1:0.079Ah、および第2ピークの時点での第2補助積算値As2:0.102Ahを読み取った。
(手順16)次に、上述の数1~8および数11に従って、Ap:42.669Ah、As:0.023Ah、Rd:99.9%、Ru:99.1%、Dp1:18.3%、Dp2:52.7%、Dp:34.3%、Cp:124.3Ah、SOH:99.6%を算出した。測定結果および計算結果を表1に示す。なお、初期主電池容量Cpiは、測定値が存在しないので、仕様の値120Ahに対して4%を乗じた124.8Ahとした。
【0082】
(手順17)実施例5として、複合電池Dに対して手順1と同様に主電流値の主積算値および補助電流値の補助積算値をそれぞれ測定した。
(手順18)次に、主積算値を横軸とし、補助電流値の逆数ではなく補助電流値を縦軸としたグラフを作成した。
図12(c)は、
図12(a)の補助電流値の逆数の代わりに補助電流値を示すグラフである。次に、第1ボトムの二次多項式と第1主積算値Ap1、ならびに第2ボトムの二次多項式と第2主積算値Ap2を求めた。それらの数式を以下に示す。
【0083】
[数28] 二次多項式:0.000045231X2-0.0021231X+0.0316002046
[数29] Ap1(Ah)=0.0021231/(0.000045231×2)=23.470
[数30] 二次多項式:0.000029638X2-0.0039231X+0.1372060944
[数31] Ap2(Ah)=0.0039231/(0.000029638×2)=66.184
【0084】
その結果、第1ピークから求めた第1主積算値Ap1:23.248Ahとの誤差は1%未満であり、第2ピークから求めた第2主積算値Ap2:65.917Ahとの誤差も1%未満であったので、次のグラフ作成から最後のSOH算出までの工程を省略した。
【0085】
(手順19)
比較例1として、複合電池Dに対して手順1と同様に主電流値の主積算値および補助電流値の補助積算値をそれぞれ測定した。次に、LFP系リチウムイオン二次電池のSOCを横軸とし、補助電流値のdQ/dVを縦軸としたグラフを作成した。
図13は、LFP系リチウムイオン二次電池の充電電圧および補助電池のQ-dQ/dV曲線を示すグラフである。このグラフにおいて、横軸が約30~85%の範囲でdVが微小な値またはゼロになり、dQ/dVが計算エラーを生じたため作業を中止した。
【0086】
(手順20)
比較例2として、複合電池Dに対して手順1と同様に主電流値の主積算値および補助電流値の補助積算値をそれぞれ測定した。次に、LFP系リチウムイオン二次電池のSOCを横軸とし、補助電流値のdV/dQを縦軸としたグラフを作成した。
図14は、LFP系リチウムイオン二次電池の充電電圧および補助電池のQ-dV/dQ曲線を示すグラフである。このグラフにおいて、横軸が約30~85%の範囲でdV/dQがわずかに変化するだけであり、二次電池のSOCを推定する時に補助電池の端子電圧に基づいて推定する従来の方法と大差ないため作業を中止した。
【0087】
したがって、比較例1および2のLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法では、LFP系リチウムイオン二次電池を完全放電させずにその状態を高精度に推定することができなかった。これに対して、実施例1~5のリチウムイオン二次電池の状態推定方法では、LFP系リチウムイオン二次電池の最新主電池容量Cpを高精度に算出すること、およびLFP系リチウムイオン二次電池のSOHを高精度に推定することができた。
この結果から、実施例1~5のLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法、およびその機能を有するLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置は、LFP系リチウムイオン二次電池に対して並列接続する補助電池の容量が小さくてもLFP系リチウムイオン二次電池を完全放電させずにその状態を高精度に推定することができるのは明らかである。
【0088】
以上、本発明の第1実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置および本発明の第2実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法について実施例を挙げて詳細に説明したが、本発明は上記記載に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしても良いのはもちろんである。
本発明の第1実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の管理装置および本発明の第2実施形態のLFP系リチウムイオン二次電池の状態推定方法は、LFP系リチウムイオン二次電池に対して並列接続する補助電池の容量が小さくてもLFP系リチウムイオン二次電池を完全放電させずにその状態を高精度に推定することができるという効果に加え、LFP系リチウムイオン二次電池の管理装置は、使用中のLFP系リチウムイオン二次電池に対して比較的簡単に追加することができるという効果もあるので、産業上有用である。