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特開2023-160425自律神経機能評価システム及び自律神経機能評価方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160425
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】自律神経機能評価システム及び自律神経機能評価方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/352 20210101AFI20231026BHJP
   A61B 5/02 20060101ALI20231026BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
A61B5/352 100
A61B5/02 310Z
A61B5/0245 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070803
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000153546
【氏名又は名称】ロジスティード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李 云
(72)【発明者】
【氏名】三幣 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 毅
(72)【発明者】
【氏名】堀田 奈桜
(72)【発明者】
【氏名】栗山 裕之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公則
【テーマコード(参考)】
4C017
4C127
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA09
4C017BC21
4C017BD06
4C017FF05
4C127AA02
4C127CC01
4C127FF09
4C127GG02
4C127GG05
4C127GG11
4C127GG13
4C127GG15
(57)【要約】
【課題】装着性、即応性と信頼性を考慮した自律神経機能評価を実現する。
【解決手段】自律神経機能評価システムであって、プロセッサと、記憶装置と、を有し、記憶装置は、所定の長さの時間に計測された生体データと、所定の長さの時間より前に計測された生体データに基づいて算出された自律神経機能指標と、を保持し、プロセッサは、所定の長さの時間に計測された生体データと、所定の長さの時間より前に計測された生体データに基づいて算出された自律神経機能指標と、に基づいて、所定の長さの時間に計測された生体データの妥当性を判定し、所定の長さの時間に計測された生体データのうち、妥当であると判定されたデータに基づいて、自律神経機能指標を算出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自律神経機能評価システムであって、
プロセッサと、記憶装置と、を有し、
前記記憶装置は、所定の長さの時間に計測された生体データと、前記所定の長さの時間より前に計測された生体データに基づいて算出された自律神経機能指標と、を保持し、
前記プロセッサは、
前記所定の長さの時間に計測された生体データと、前記所定の長さの時間より前に計測された生体データに基づいて算出された自律神経機能指標と、に基づいて、前記所定の長さの時間に計測された生体データの妥当性を判定し、
前記所定の長さの時間に計測された生体データのうち、妥当であると判定されたデータに基づいて、自律神経機能指標を算出することを特徴とする自律神経機能評価システム。
【請求項2】
請求項1に記載の自律神経機能評価システムであって、
前記生体データは、心拍間隔データであり、
前記プロセッサは、前記所定の長さの時間に計測された心拍間隔のローレンツプロットに基づいて、前記所定の長さの時間に計測された心拍間隔データの妥当性を判定することを特徴とする自律神経機能評価システム。
【請求項3】
請求項2に記載の自律神経機能評価システムであって、
前記プロセッサは、
前記所定の長さの時間に計測された心拍間隔のローレンツプロット上に設定した楕円領域の範囲内の前記心拍間隔データを妥当であると判定し、
前記楕円領域の中心を、前記所定の長さの時間に計測された心拍間隔の平均値又は中央値と、前記所定の長さの時間より前に計測された生体データに基づいて算出された自律神経機能指標のうち、心拍間隔の平均値又は中央値と、に基づいて算出し、
前記楕円領域の径を、前記所定の長さの時間に計測された心拍間隔のローレンツプロット上の標準偏差と、前記所定の長さの時間より前に計測された生体データに基づいて算出された自律神経機能指標のうち、心拍間隔のローレンツプロット上の標準偏差と、に基づいて算出することを特徴とする自律神経機能評価システム。
【請求項4】
請求項3に記載の自律神経機能評価システムであって、
前記プロセッサは、
前記所定の長さの時間に計測された心拍間隔の平均値又は中央値と、前記所定の長さの時間より前に計測された生体データに基づいて算出された自律神経機能指標のうち、心拍間隔の平均値又は中央値と、の重み付け平均を前記楕円領域の中心として算出し、
前記所定の長さの時間に計測された心拍間隔のローレンツプロット上の標準偏差と、前記所定の長さの時間より前に計測された生体データに基づいて算出された自律神経機能指標のうち、心拍間隔のローレンツプロット上の標準偏差と、の重み付け平均に所定の係数を乗じた値を前記楕円領域の径として算出することを特徴とする自律神経機能評価システム。
【請求項5】
請求項4に記載の自律神経機能評価システムであって、
より新しい前記生体データに基づいて算出された自律神経機能指標から抽出された値に、より大きい重みが付されることを特徴とする自律神経機能評価システム。
【請求項6】
請求項2に記載の自律神経機能評価システムであって、
前記プロセッサは、
前記所定の長さの時間に計測された心拍間隔データのうち、ローレンツプロットに基づいて妥当でないと判定されたデータの区間が所定の基準より短い場合、当該区間の前後の前記心拍間隔データに基づいて、当該区間の心拍間隔データを補間し、
前記ローレンツプロットに基づいて妥当であると判定されたデータ及び前記補間されたデータを良好データと判定することを特徴とする自律神経機能評価システム。
【請求項7】
請求項6に記載の自律神経機能評価システムであって、
前記プロセッサは、前記所定の長さの時間に計測された心拍間隔データのうち、前記良好データが連続する1以上の区間から、信頼区間を抽出し、
前記良好データが連続する区間の長さ、及び、前記良好データが連続する複数の区間の長さの合計の少なくともいずれかに基づいて、前記信頼区間の信頼性を評価する信頼性スコアを算出することを特徴とする自律神経機能評価システム。
【請求項8】
請求項7に記載の自律神経機能評価システムであって、
前記プロセッサは、前記良好データが連続する区間から、第1の抽出方法、第2の抽出方法及び第3の抽出方法の少なくともいずれかに基づいて前記信頼区間を抽出し、
前記第1の抽出方法は、所定の第1の連続区間長さより長い1区間を前記信頼区間として抽出する方法であり、
前記第2の抽出方法は、前記良好データが連続する区間のうち、所定の第2の連続区間長さより長い2以上の区間であって、それらの長さの合計が所定の第3の連続区間長さより長い2以上の区間を前記信頼区間として抽出する方法であり、
前記第3の抽出方法は、前記良好データが連続する区間のうち、長さの合計が前記第3の連続区間長さより長い2以上の区間を前記信頼区間として抽出する方法であり、
前記第2の連続区間長さは、前記第1の連続区間長さより短く、
前記第3の連続区間長さは、前記第1の連続区間長さより長く、
前記プロセッサは、前記第1の抽出方法、前記第2の抽出方法及び前記第3の抽出方法のうち2以上の抽出方法によって前記信頼区間を抽出した場合、前記抽出した2以上の信頼区間のうち前記信頼性スコアが最も高い信頼区間の前記心拍間隔データに基づいて、前記自律神経機能指標を算出することを特徴とする自律神経機能評価システム。
【請求項9】
請求項8に記載の自律神経機能評価システムであって、
前記プロセッサは、前記所定の長さの時間に対する前記信頼区間の長さの割合に、前記信頼区間の抽出方法に応じた信頼性重みを乗じることによって、前記信頼性スコアを算出し、
前記第1の抽出方法に応じた前記信頼性重みが最も大きく、前記第3の抽出方法に応じた前記信頼性重みが最も小さいことを特徴とする自律神経機能評価システム。
【請求項10】
請求項2に記載の自律神経機能評価システムであって、
前記記憶装置は、前記生体データを計測したセンサに関する情報を保持し、
前記プロセッサは、前記所定の長さの時間に計測された生体データに対して前記センサに応じた整形処理を行い、整形処理された生体データの妥当性を判定することを特徴とする自律神経機能評価システム。
【請求項11】
請求項2に記載の自律神経機能評価システムであって、
前記プロセッサは、
算出した前記自律神経機能指標を、前記心拍間隔データの計測対象である人物の識別情報、当該人物の年齢、当該人物の性別、当該人物が乗車する車両の識別情報、当該人物の業務内容を示す情報、前記心拍間隔データの取得のために使用されたセンサに関する情報及び計測時刻の少なくともいずれかと対応付けて、自律神経機能指標統合データとして前記記憶装置に格納し、
指定された抽出条件に基づいて前記自律神経機能指標統合データから抽出された前記自律神経機能指標を、前記所定の長さの時間に計測された生体データの妥当性の判定に使用することを特徴とする自律神経機能評価システム。
【請求項12】
請求項2に記載の自律神経機能評価システムであって、
前記心拍間隔データは、心電の計測値に基づくR波の間隔のデータを含むことを特徴とする自律神経機能評価システム。
【請求項13】
請求項2に記載の自律神経機能評価システムであって、
前記心拍間隔データは、脈波の計測値のピーク間隔のデータを含むことを特徴とする自律神経機能評価システム。
【請求項14】
自律神経機能評価システムが実行する自律神経機能評価方法であって、
前記自律神経機能評価システムは、プロセッサと、記憶装置と、を有し、
前記記憶装置は、所定の長さの時間に計測された生体データと、前記所定の長さの時間より前に計測された生体データに基づいて算出された自律神経機能指標と、を保持し、
前記自律神経機能評価方法は、
前記プロセッサが、前記所定の長さの時間に計測された生体データと、前記所定の長さの時間より前に計測された生体データに基づいて算出された自律神経機能指標と、に基づいて、前記所定の長さの時間に計測された生体データの妥当性を判定する手順と、
前記プロセッサが、前記所定の長さの時間に計測された生体データのうち、妥当であると判定されたデータに基づいて、自律神経機能指標を算出する手順と、を含むことを特徴とする自律神経機能評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通機関の安全運行推進に際し短時間に計測される生体データの信頼性を向上するために利用される即応型(リアルタイム)生体データ評価技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、運輸業のドライバーの健康起因事故の予防へ向け、生体状態の定量評価が行われている。生体状態のうち、計測が簡便な各種形態の心拍センサによる、心拍の間隔である心拍間隔(Beat-to-Beat Interval,BBI)データの計測に基づく自律神経機能評価が実施されている。業務中における自律神経機能評価は解析の即応性やデータの信頼性が重要である。
【0003】
例えば、特開2020-130335号公報(特許文献1)では、計測異常などによって生じた欠損区間のある周期性を有する生体信号の時系列データを対象として、任意時間内で計測した周期性を有する生体信号の変化傾向に着目した時間特徴量を精度良く算出する。具体的には、瞬時心拍異常値を隣接する二つのR波の計測状態から認識して時系列データから除外し、一定時間内で計測されたR波の間隔(R-R Interval,RRI)の変動傾向を近似した一次関数などを用いた補間を行ったのち、時間特徴量(平均心拍数、平均RRI、隣接するRRIのローレンツプロット(LP)が描く形状の長辺の長さL及び短辺の長さTなど)から求められる副交感神経の活動指標を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-130335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
業務中の自律神経機能評価を実時刻に管理できることが重要であり、センサの装着性、解析の即応性、結果の信頼性を総合的に考慮した計測と評価システムが必要である。
【0006】
運転を伴う業務中などにおいて、評価対象の人物(例えばドライバー)が安静状態とは限らない。また、装着性を重視したウェアラブルセンサを使用して心拍間隔データを計測する場合には計測不良が発生しやすい。特許文献1に記載された方法では、短い計測時間内のデータでは計測した瞬間心拍間隔が異常か否か適切に判断できない場合がある。計測時間を長く設定する場合、評価の即応性が低下する。また、ウェアラブルセンサ側において、膨大な心拍間隔データを長時間保持するには記憶容量の問題が発生する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題の少なくとも一つを解決するため、本発明は、自律神経機能評価システムであって、プロセッサと、記憶装置と、を有し、前記記憶装置は、所定の長さの時間に計測された生体データと、前記所定の長さの時間より前に計測された生体データに基づいて算出された自律神経機能指標と、を保持し、前記プロセッサは、前記所定の長さの時間に計測された生体データと、前記所定の長さの時間より前に計測された生体データに基づいて算出された自律神経機能指標と、に基づいて、前記所定の長さの時間に計測された生体データの妥当性を判定し、前記所定の長さの時間に計測された生体データのうち、妥当であると判定されたデータに基づいて、自律神経機能指標を算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
したがって、本発明の一態様によれば、短時間で取得した心拍間隔データに対しても、適切にデータの妥当性を判定でき、装着性、即応性と信頼性を考慮した自律神経機能評価が可能となる。
【0009】
本明細書において開示される主題の、少なくとも一つの実施の詳細は、添付されている図面と以下の記述の中で述べられる。開示される主題のその他の特徴、態様、効果は、以下の開示、図面、請求項により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係る生体データ評価システムの主要な構成の一例を示すブロック図である。
図2】本発明の実施例に係る即応型自律神経機能評価システムの構成の一例を示す機能ブロック図である。
図3】本発明の実施例に係る補正処理部の処理の一例を示すフローチャートである。
図4A】本発明の実施例において測定される心拍間隔及びそれに基づく自律神経機能指標の一例を示す説明図である。
図4B】本発明の実施例において測定される心拍間隔及びそれに基づく自律神経機能指標の一例を示す説明図である。
図4C】本発明の実施例において測定される心拍間隔及びそれに基づく自律神経機能指標の一例を示す説明図である。
図4D】本発明の実施例において測定される心拍間隔及びそれに基づく自律神経機能指標の一例を示す説明図である。
図5】本発明の実施例において測定される多変量の自律神経機能指標の一覧の一例を示す説明図である。
図6A】本発明の実施例に係る即応型自律神経機能評価システムが保持する心拍間隔データの一例を示す説明図である。
図6B】本発明の実施例に係る即応型自律神経機能評価システムが保持する多変量の自律神経機能を含めた自律神経機能指標データの一例を示す説明図である。
図6C】本発明の実施例に係る即応型自律神経機能評価システムが保持するANF指標統合DBの内部構成の一例を示す説明図である。
図7A】本発明の実施例における所定解析窓内のLPに基づく妥当性判定の一例を示す説明図である。
図7B】本発明の実施例における所定解析窓内のLPに基づく妥当性判定の一例を示す説明図である。
図7C】本発明の実施例における所定解析窓内のLPに基づく妥当性判定の一例を示す説明図である。
図8A】本発明の実施例における、ANF指標統合DBから参照ANF指標を抽出できる場合の妥当領域の算出方法の一例を示す説明図である。
図8B】本発明の実施例における、ANF指標統合DBから参照ANF指標を抽出できる場合の妥当領域の算出方法の一例を示す説明図である。
図9】本発明の実施例に係る信頼区間抽出部が解析時間のデータの信頼性評価を行い、信頼区間を抽出する処理の一例を示す説明図である。
図10】本発明の実施例に係る即応型自律神経機能評価システムによる現在時刻の評価結果の表示の一例を示す説明図である。
図11】本発明の実施例に係る即応型自律神経機能評価システムによる時系列の評価結果の表示の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【0012】
<システム構成>
図1は、本発明の実施例に係る生体データ評価システムの主要な構成の一例を示すブロック図である。
【0013】
本実施例の生体データ評価システムは、ネットワークを介して1以上の車両7から受信する生体データを処理する即応型自律神経機能評価システム1を含む。
【0014】
車両7は、車両7の位置を計測するGNSS(Global Navigation Satellite System)8A、車両7とその前後を走行する車両との距離を計測する車間距離センサ8B、車両7の速度を計測する速度計8C、車両7の加速度を計測する加速度センサ8D、車両7の周囲を撮影するカメラ8E、及び、それらから計測結果のデータ及び撮影結果のデータを収集して即応型自律神経機能評価システム1に送信する車載情報収集装置10を有する。
【0015】
さらに、車両7には、生体センサ11、生体データ収集装置12、センサ情報入力部13、センサ情報収集装置14、ユーザ情報設定部15、ユーザ情報収集装置16、業務内容設定部17及び業務情報収集装置18が搭載される。これらは、車両7に取り付けられてもよいし、ユーザ(例えば車両7のドライバー)が所持し、車両7を運転するときに車両7に持ち込んでもよい。
【0016】
生体センサ11は、心電、脈波または心音などに基づき心拍(RRIまたはPPI)を検出するセンサを含む。
【0017】
生体センサ11は、心拍センサの他に、発汗量、体温、まばたき、眼球運動、筋電または脳波等を検出するセンサを採用することができる。生体センサ11としては、ドライバーが装着可能なウェアラブルデバイスの他、ハンドル、シート、シートベルト等、車両7内のいずれかの部位に付属したセンシングデバイス、または、ドライバーの表情もしくは挙動を撮像して画像を解析する画像認識システム等を用いることができる。
【0018】
生体データ収集装置12は、生体センサ11が計測した情報を収集して、即応型自律神経機能評価システム1に送信する。
【0019】
センサ情報入力部13は、生体センサ11に関する情報の入力を受け付ける機能を有する。生体センサ11に関する情報は、例えば、生体センサ11の種類、機種、バージョン、仕様及び設定値等に関する情報を含んでもよい。センサ情報収集装置14は、センサ情報入力部13に入力された情報を収集して、即応型自律神経機能評価システム1に送信する。
【0020】
ユーザ情報設定部15は、ユーザに関する情報の設定を受け付ける機能を有する。ユーザに関する情報は、例えば、ユーザの名前、識別情報、年齢、性別、所属及び担当業務等の情報を含んでもよい。ユーザ情報収集装置16は、ユーザ情報設定部15に設定された情報を収集して、即応型自律神経機能評価システム1に送信する。
【0021】
業務内容設定部17は、ユーザの業務に関する情報の設定を受け付ける機能を有する。ユーザの業務に関する情報は、例えば、ユーザが行う業務の内容(例えば運転、荷積み、荷卸し及び休憩のいずれかなど)及び業務を行った時間帯等の情報を含んでもよい。業務情報収集装置18は、業務内容設定部17に設定された情報を収集して、即応型自律神経機能評価システム1に送信する。
【0022】
なお、生体センサ11、生体データ収集装置12、センサ情報入力部13、センサ情報収集装置14、ユーザ情報設定部15、ユーザ情報収集装置16、業務内容設定部17及び業務情報収集装置18は、それぞれ独立した装置であってもよいが、それらの少なくともいくつかが一つの装置によって実現されてもよい。典型的な一例を挙げると、生体センサ11はユーザが装着するセンサ装置であり、生体データ収集装置12はユーザが持ち歩く端末装置(ユーザ端末)又は車両7に取り付けられた端末装置(車載端末)であってもよい。また、センサ情報入力部13、センサ情報収集装置14、ユーザ情報設定部15、ユーザ情報収集装置16、業務内容設定部17及び業務情報収集装置18は、ユーザ端末又は車載端末のアプリケーションとして実現されてもよい。
【0023】
図1には一つの車両7及び一組の生体センサ11~業務情報収集装置18のみを示したが、実際の生体データ評価システムは複数の車両7と、複数のユーザに対応する複数組の生体センサ11~業務情報収集装置18とを含んでもよい。ユーザ毎に使用する生体センサ11の種類が異なる場合があり、同一のユーザであっても日によって生体センサ11の種類が異なる場合がある。
【0024】
即応型自律神経機能評価システム1は、プロセッサ2と、メモリ3と、ストレージ装置4と、入出力装置5と、通信装置6と、を含む計算機である。メモリ3は、センサ情報に応じた単位時間内の心拍間隔を取得する心拍間隔取得部21と、心拍間隔データの信頼性を向上するための補正処理を行う補正処理部22と、補正処理した心拍間隔データに対し、自律神経機能(ANF)指標を算出するANF指標算出部23と、ANF指標データとユーザ情報及びセンサ情報業務情報等とを統合するデータ統合部24と、を有する。統合したデータはANF指標統合DB48に蓄積される。メモリ3は、さらに、統合したANF指標を総合的に評価し、評価結果を表示する評価結果表示部25を有する。また、メモリ3は、さらに、評価結果の表示項目や設定する設定部26(図2参照)を有する。
【0025】
補正処理部22は、ANF指標統合DB48から参照するANF指標を抽出する参照ANF指標抽出部31と、ローレンツプロット(LP)に基づいて心拍間隔データの妥当性を判定する妥当性判定部32(図2参照、以下同様)と、判定結果に基づき心拍間隔データのノイズ除去及び補間を行うノイズ除去・補間処理部33と、処理したデータを用いて所定時間内のデータの信頼性を評価し、信頼区間を抽出する信頼区間抽出部34と、を有する。
【0026】
なお、本実施例における心拍間隔取得部21、補正処理部22、ANF指標算出部23、データ統合部24、評価結果表示部25及び設定部26の機能は、実際にはプロセッサ2がメモリ3に格納されたプログラムに記述された命令を実行することによって実現される。すなわち、以下の説明において上記の各部が実行する処理は、実際にはプロセッサ2によって実行される。
【0027】
ストレージ装置4には、心拍センサ計測データ41、ユーザ情報42、センサ情報43、業務情報44、車載情報45、短時間BBIデータ46、ANF指標データ47及びANF指標統合DB48が格納される。心拍センサ計測データ41は、生体センサ11によって計測され、生体データ収集装置12によって送信されたデータを含む。ユーザ情報42は、ユーザ情報設定部15によって設定され、ユーザ情報収集装置16によって送信されたデータを含む。センサ情報43は、センサ情報入力部13に入力され、センサ情報収集装置14によって送信されたデータを含む。業務情報44は、業務内容設定部17によって設定され、業務情報収集装置18によって送信されたデータを含む。車載情報45は、車載情報収集装置10によって収集され、送信された情報を含む。この情報は、例えば、GNSS8A、車間距離センサ8B、速度計8C、加速度センサ8D及びカメラ8Eから取得された情報を含む。
【0028】
短時間BBIデータ46は、短時間(例えば2分間)のBBIデータを含む。このデータは、例えば、生体データ収集装置12から送信されたデータから心拍間隔取得部21が取得した2分間ごとの心拍間隔(BBI)データを含む。ANF指標データ47は、BBIデータを対象として補正処理部22による補正処理及びANF指標算出部23によるANF指標の算出を行った結果のデータを含む。ANF指標統合DB48は、ANF指標と、ユーザに関する情報及び業務に関する情報等とを統合したデータを含む。
【0029】
<処理詳細>
図2は、本発明の実施例に係る即応型自律神経機能評価システム1の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0030】
ユーザ端末側及び車両7側で取得した心拍センサ計測データ、センサ情報、ユーザ情報、業務情報及び車載情報は、ネットワーク19を介して即応型自律神経機能評価システム1に送信される。業務中の実時刻の自律神経機能評価するため、即応性を持つように、センサ計測データの取得時間を短時間とする。一例として、2分間のセンサ計測データが取得されるごとに、生体データ収集装置12から即応型自律神経機能評価システム1に送信され、心拍センサ計測データ41としてストレージ装置4に格納される。同様に、センサ情報収集装置14、ユーザ情報収集装置16、業務情報収集装置18及び車載情報収集装置10から送信されたデータが、それぞれ、センサ情報43、ユーザ情報42、業務情報44及び車載情報45としてストレージ装置4に格納される。
【0031】
心拍間隔取得部21は、心拍センサ計測データ41に対し、そのデータに対応するセンサ情報42を参照して当該データを計測した心拍センサの種類を特定し、特定した心拍センサの種類に応じた整形処理を実施し、単位解析時間のBBIデータの共通形式に変換する。補正処理部22は、取得した心拍間隔データに対して、データの妥当性判定、ノイズ除去・補間処理、及び、信頼性が高い区間の抽出処理を実施する。
【0032】
補正処理部22において、新たに取得された短時間の心拍センサ計測データ41の解析を行う時刻までの間に蓄積したANF指標統合DB48から、参照対象となるANF指標を抽出する参照ANF指標抽出部31を有することが本実施例の特徴である。ノイズが入りやすい短時間で取得した心拍間隔データに対し、蓄積した参照ANF指標を用いて計測データの妥当領域(すなわち妥当であると判定されるデータの領域)を判定することで、短時間データの信頼性を向上する。
【0033】
具体的には、補正処理部22は妥当性判定部32を有する。妥当性判定部32がLP上のデータ領域の妥当性判定を行い、妥当であると判定されたデータを時系列に戻すことで、計測した心拍間隔データ毎の妥当性を判定する。
【0034】
補正処理部22のノイズ除去・補間処理部33は、妥当であると判定されたデータに対し、取得データの傾向に基づいて補間可能なデータに対し補間処理を実施し、補間不可のデータをノイズとして除去する。さらに、補正処理部22は信頼区間抽出部34を有する。信頼区間抽出部34は、ノイズ除去・補間処理を行ったデータに対し、時系列上の欠損の発生位置を確認し、欠損がない(または少ない)良好区間の連続性を確認し、連続性と使用可能なデータの時間長さとを考慮した信頼性スコアを算出し、ANF指標算出に適した信頼区間を抽出する。
【0035】
また、ANF指標算出部23は、補正処理した心拍間隔データに基づいて、該当解析時間のANF指標を算出する。データ統合部24は、ANF指標、ユーザ情報、業務情報及び車載情報を統合して、ANF指標統合DB48に蓄積していく。
【0036】
ユーザまたは管理者は、評価結果表示部25を介して、解析したANF指標データを総合評価し、現在時刻の評価結果、または時系列上の変化傾向を確認できる。また、評価結果表示部25は設定部26と接続され、ユーザ入力等により、表示項目、基本情報変更及び解析条件等を変更してもよい。
【0037】
図3は、本発明の実施例に係る補正処理部22の処理の一例を示すフローチャートである。
【0038】
心拍間隔取得部21は、心拍センサ計測データ41から取得した短時間BBI301と、センサ情報43から取得した当該データを計測した心拍センサに関する情報302と、に応じて、データ整形処理処理を行い(ステップ303)、所定短時間区間(例えば2分間)の標準時間の心拍間隔データ(BBI)を取得する。一つのBBI(すなわちある1拍とその次の1拍との間隔)のみで心拍変動を解析することは難しく、所定の長さの解析時間窓を要する。即応性を重視する場合には当該所定時間が短いことが好ましい一方、解析の信頼性を重視する場合には当該所定時間が心拍変動解析に要求される時間幅以上であることが好ましい。
【0039】
補正処理部22の妥当性判定部32は、所定短時間入力された心拍センサ情報と、取得したデータの品質とに応じて、高度なノイズ除去が必要か否かを判断し(ステップ304)、高度な除去が必要でないと判定した場合、外れ値基本判定を行う(ステップ305)。一方、高度なノイズ除去が必要と判定した場合、参照ANF指標抽出部31が解析時刻まで蓄積したANF指標統合DB48にアクセスし(ステップ306)、一定の抽出条件を満たした参照対象のANF指標を抽出する。抽出条件の一例として、同一ユーザの現解析時刻と同じ業務状態の直近の所定時間(例えば30分)のデータを参照対象のANF指標として抽出してもよい。例えば、所定短時間が2分、直近の所定時間が30分とすると、15セットのANF指標が抽出される。
【0040】
なお、上記の「同一ユーザの現解析時刻と同じ業務状態の直近の所定時間」とは、抽出条件の一例であり、他の抽出条件を設定することもできる。例えば、解析対象のユーザと近い年齢のユーザのデータ、または同一の性別のユーザのデータを抽出してもよい。あるいは、同一のユーザの安静状態のデータを抽出してもよいし、同一のユーザ(または他のユーザ、または年齢、性別等の条件が類似するユーザ)を対象として計測精度が高い生体センサ11を使用して計測したデータを抽出してもよい。
【0041】
また、参照ANF指標の一例として、RRIの平均値、LPに関連するY=-X方向の標準偏差SD1、及び、Y=X方向の標準偏差SD2等が挙げられる。
【0042】
LPは、時系列データT[t]について、x軸に先行する時刻t(t=0、1、2、…)の時系列データT[t]を、y軸に時刻tから期間dt(dt=1、2、3、…)だけ経過した時刻t+dtにおける時系列データT[t+dt]をプロットすることで描かれるカオス解析を行うための二次元プロットである。本実施例では、T[t]をx軸に、T[t+dt]をy軸に対応付けてプロットしたLPを例として示す。
【0043】
LPに描かれる幾何学図形を解析することで時系列データT[t]の特性を分析することができる。特に連続する期間のRRIデータについてLPを描くと、その幾何学的特徴から、所定期間において計測されたデータがどの程度不整脈または計測不良を含んでいるかといった計測特性を評価可能であることが知られている。本実施例では、dt=1時刻とした場合のLPについての例を示す。また、時系列データとして、測定したRRIデータの原系列RRI[t]を用いる場合を示す。
【0044】
参照ANF指標を抽出可能の場合(ステップ307:Yes)、妥当性判定部32は、参照指標と解析対象データのLPとに基づき、取得したBBIの妥当性判定を行う(ステップ308)。具体的な妥当性判定は後に図7A図8Bを用いて説明する。一方、所定抽出条件を満たす参照対象のANF指標を抽出出来ない場合の一例として、ユーザの初期のセンサ装着時に、ANF指標統合DB48から該当ユーザのデータを抽出できない場合が挙げられる。参照指標を抽出できない場合(ステップ307:No)、妥当性判定部32は、所定の解析窓のBBIデータのみを参照し、LP上の幾何学的な領域を確認し、データの妥当性判定を行う(ステップ309)。具体的な算出方法は後に図7A図7Cを参照して説明する。
【0045】
次に、ノイズ除去・補間処理部33は、妥当性が判定された後のデータについて補間処理を行い、その結果として残った異常データをノイズとして除去する(ステップ310)。具体的には、ノイズ除去・補間処理部33は、LP上での妥当性が判定されたたデータを、時系列上のRRIデータに戻し、時系列上の異常データ(すなわちLP上で妥当でないと判定されたデータ)の発生状況及び発生区間を確認する。異常データ発生区間の時間が短く、解析区間内の前後のRRIデータの変化傾向から正常範囲の数拍分のRRIデータに基づいて補間可能と判定される場合、ノイズ除去・補間処理部33は、補間処理を実施する。ノイズ除去・補間処理部33は、補間処理の後に異常値として残った区間のデータをノイズとして除去し、時系列上の欠損区間とする。
【0046】
その後、信頼区間抽出部34は、欠損区間の発生状況に応じて、ANF指標を算出するための信頼区間を抽出する(ステップ311)。信頼区間算出の具体的な方法の一例については図9を参照して後述する。
【0047】
参照ANF指標抽出(ステップ306)、LPによる妥当性判定(ステップ308または309)、ノイズ除去・補間処理(ステップ310)及び信頼区間抽出(ステップ311)の一連の処理を介して補正処理を行ったBBIデータを用いて、ANF指標算出部23が該当解析時刻のANF指標を算出し、ANF指標データ47として保持する(ステップ312)。データ統合部24は、算出したANF指標と、ユーザ情報42、センサ情報43、業務情報44及び車載情報45等とを統合し、ANF指標統合DB48に蓄積する(ステップ313)。即応型自律神経機能評価システム1は、統合したANF指標統合DB48に基づいて総合的な評価を行い、解析の実時刻の評価結果、または時系列上の評価結果を、評価結果表示部25を介して、入出力装置5に表示する。
【0048】
図4A図4Dは、本発明の実施例において測定される心拍間隔及びそれに基づく自律神経機能指標の一例を示す説明図である。
【0049】
図4Aは、心電のR波とR波の間隔を測定するRRI(R-R Interval)の一例を示す。図4Bは、脈波のピークとピークの間隔を測定するPPI(Peak-to-Peak Interval)の一例を示す。本実施例でANF指標の算出に使用する心拍間隔BBIは、上記のRRI及びPPIのいずれであってもよい。ただし、一般に、RRIは、心拍そのものを計測するため精度が高いものの、測定するためには例えば電極の付いたベルト又は肌着を着用する必要があるなど、ユーザの負担が大きい。これに対して、PPIは、例えば腕時計型の脈拍センサ等によって計測することも可能であり、ユーザの負担は少ないが、ノイズ等の計測不良が多いなど、精度は低くなる傾向がある。
【0050】
図4Cは、時間軸における心拍間隔BBI(RRIまたはPPI)の変化の一例を示す。図4Dは、図4Cの所定の解析時間窓(例:2分)のBBIデータをベースに周波数解析し、ANF指標の一部である周波数領域の低周波成分LF、高周波成分HF、トータルパワーTPを示す。ここで、LFは所定の比較的低い周波数帯域(例えば0.04Hz~0.15Hz)のパワースペクトルであり、HFは所定の比較的高い周波数帯域(例えば0.15Hz~0.4Hz)のパワースペクトルであり、トータルパワーTPはLFとHFの和である。
【0051】
図5は、本発明の実施例において測定される多変量の自律神経機能指標の一覧の一例を示す説明図である。
【0052】
解析時間窓内のBBIデータをベースに、周波数領域、時間領域、または非線形領域等の多くの指標を算出し、自律神経機能を総合評価することができる。ここでは、代表的ないくつかの指標について説明する。
【0053】
周波数領域指標のうちLF、HF及びTPは、図4Dを参照して説明した通りであり、LF/HFはLFとHFとの比率である。LF及びHFはそれぞれ交感神経及び副交感神経に関連する指標として使用される。時間領域指標のうちRRIは既に説明した心電のR波の間隔である。非線形領域指標のうちSD1は、LPのY=-X方向の標準偏差、SD2はLPのY=X方向の標準偏差、SD1/SD2はそれらの比率である。
【0054】
図6Aは、本発明の実施例に係る即応型自律神経機能評価システム1が保持する心拍間隔データの一例を示す説明図である。
【0055】
具体的には、図6Aに示す心拍間隔データは、短時間BBIデータ46に含まれるデータの一例を示すものである。計測時刻で測定したRRIデータは、ユーザID601、車両ID602、心拍センサ603、計測時刻604及びRRI605の組み合わせのリストを含む。ここでは心拍間隔データがRRI605を含む例を示しているが、これはBBIデータの一例であり、RRIの代わりにPPIが保持されてもよい。
【0056】
ユーザID601及び車両ID602は、測定対象のユーザを識別する情報及びそのユーザが乗車する車両7を識別する情報である。心拍センサ603は、測定に使用した心拍センサを特定する情報(例えば心拍センサの種類、機種又は個体の少なくともいずれかを識別する情報)である。心拍間隔データの1行(1レコード)が一つの心拍に相当し、計測時刻604は各心拍(例えばR波又は脈波のピーク等)の出現時刻であり、RRI605は前回の心拍から今回の心拍までの時間間隔を示す。ここで、RRI605は約数百ミリ秒スケールのデータである。
【0057】
例えば、図6Aの1行目は、あるR波が2020年4月1日の10:00:00.000に計測され、そのR波とその前のR波との間隔が750ミリ秒であったことを示している。2行目は、1行目のR波の次のR波が2020年4月1日の10:00:00.755に計測され、そのR波とその前のR波(すなわち1行目のR波)との間隔が755ミリ秒であったことを示している。
【0058】
図6Bは、本発明の実施例に係る即応型自律神経機能評価システム1が保持する多変量の自律神経機能を含めた自律神経機能指標データの一例を示す説明図である。
【0059】
具体的には、図6Bに示す単位時間内の自律神経機能(ANF)指標データは、ANF指標データ47に含まれるデータの一例を示すものである。図6Bに示す単位時間内のANF指標データの1行(1レコード)が一つの所定短時間(図6Bの例では2分)のBBIデータから算出されたANF指標を含む。ユーザID611、車両ID612及び心拍センサ613は、それぞれ図6Aに示したユーザID601、車両ID602及び心拍センサ603に対応する。日時614は、各所定短時間を代表する時刻(例えば始点の時刻)を示す。
【0060】
自律神経機能指標615は、各所定短時間のBBIデータから算出されたANF指標であり、例えば図5に示したANF指標の少なくともいずれかを含んでもよい。信頼性スコア616は、各所定短時間のBBIデータから算出されたANF指標に信頼性を評価する指標である信頼性スコアの値を示す。信頼性スコアの算出方法は、図9を参照して後述する。参照時間617は、BBIデータの妥当性判定のために参照した過去のANF指標データの時間長さを示す。例えば過去のANF指標データを参照しなかった場合、参照時間617の値は0となる。また、過去の30分間のANF指標データを参照した場合、参照時間617の値は30となる。
【0061】
ノイズ除去手法618は、BBIデータの妥当性判定のために使用した手法を示す。例えば後述のようにLPに基づく妥当性判定を行った場合、ノイズ除去手法618の値はLPとなる。補間手法619は、妥当でない(すなわちノイズである)と判定されて除去されたBBIデータを補間するために使用した手法(例えば移動平均等)を示す。
【0062】
図6Cは、本発明の実施例に係る即応型自律神経機能評価システム1が保持するANF指標統合DB48の内部構成の一例を示す説明図である。
【0063】
ANF指標統合DB48は、ユーザ情報621、車両情報622、心拍センサ情報623、時刻情報624、業務情報625、自律神経機能指標626、信頼性スコア627、及び適用手法628を統合的にリスト化したデータ構成を示す。
【0064】
ここで、ユーザ情報621、車両情報622、心拍センサ情報623及び時刻情報624は、それぞれ、図6Bに示すユーザID611、車両ID612、心拍センサ613及び日時614に対応する。業務情報625は、業務情報44から抽出された、各ユーザが各時刻に行っていた業務に関する情報である。自律神経機能指標626及び信頼性スコア627は、それぞれ、図6Bに示す自律神経機能指標615及び信頼性スコア616に対応する。適用手法628は、図6Bに示すノイズ除去手法618及び補間手法619に対応する。
【0065】
図7A図7Cは、本発明の実施例における所定解析窓内のLPに基づく妥当性判定の一例を示す説明図である。
【0066】
具体的には、図7A図7Cは、図3のステップ309において実行される処理を説明するものである。この場合、妥当性判定部32は、所定時間内のBBIデータについて、前後のBBIのデータをペアとして、LPを生成し、基本外れ値除去を行い、初期正常範囲内のデータ分布を確認する。初期正常範囲の一例として、該当時間内のBBIデータの中央値を算出し、中央値×0.75~中央値×1.75の範囲を初期正常範囲としてもよい。その場合、初期正常範囲外のBBIデータが外れ値として除去される。
【0067】
また、LP上のデータ妥当領域の一例として、データが集中的に分布しているY=Xの方向に沿った楕円形状を当該LP上に仮想的に形成し、その内部領域(楕円領域)を妥当領域と設定してもよい。データの集中状態に基づいて楕円領域を定めるために、楕円中心、楕円の縦軸、及び楕円の横軸を指定する。ここでは、楕円のy=-x方向の軸を縦軸、y=x方向の軸を横軸と記載する。初期正常範囲内の全ての点をy=x軸とy=-x軸に投影する。y=x軸の投影点と原点の距離の平均をmとし、y=x軸上に原点から距離mの位置を楕円の中心位置とする。BBIの平均を
【0068】
【数1】
【0069】
とすると、y=x方向の中心mは
【0070】
【数2】
【0071】
に相当する。
【0072】
また、楕円横軸(y=x方向)aの一例として、y=x方向の標準偏差:std2を2倍した値とする。正規分布に従うデータの場合、約96%のデータが入った範囲に相当する。楕円縦軸(y=-x方向)bの一例として、y=-x方向の標準偏差:std1を2倍した値とする。楕円横軸(y=x方向)のaは縦軸(y=-x方向)のbより必ず大きいと限らない。
【0073】
y=x方向の標準偏差は、対象データ群をy=xの直線に投影する場合のデータの標準偏差を指す。
【0074】
y=-x方向の標準偏差は、対象データ群をy=-xの直線に投影する場合のデータの標準偏差を指す。
【0075】
図7Bは、BBIデータのLPの一例であり、図7Bの平面上の各点がBBIデータをプロットしたものである。例えば図6Aに示す心拍間隔データが得られた場合、1行目と2行目のデータに基づいて、横軸PPIの値が750ミリ秒、縦軸PPIt+1の値が755ミリ秒となる点がプロットされる。楕円701は上記の方法によって決定した中心、横軸の長さ及び縦軸の長さを有する。この楕円701の内側が妥当領域となる。図7Cには、楕円701の外側のBBIデータを妥当でないものとして除去した後の状態を示している。
【0076】
図8A及び図8Bは、本発明の実施例における、ANF指標統合DB48から参照ANF指標を抽出できる場合の妥当領域の算出方法の一例を示す説明図である。
【0077】
具体的には、図8A及び図8Bは、図3のステップ308において実行される処理を説明するものである。過去に遡り抽出条件に満たしたANF指標、例えば同一ユーザの同じ業務状態のn点(例えばn=15)の単位時間のANF指標を参照する。妥当領域の形状は図7A図7Cと同様に楕円とする。参照ANF指標の一例として、図5のANF指標一覧におけるRRIの平均値を表すMeanNN、Poincare SD1、及びPoincare SD2が参照される。
【0078】
妥当性判定部32は、解析対象時間内のBBIデータのLP上の分布と、抽出したANF指標とを融合して、新たな妥当領域を決定する。一例として、楕円の中心は次のように算出される。すなわち、n点のMeanNNの重み付き平均を算出し、係数をかけて解析対象時間内のBBIの平均値(すなわち上記の数値(1))との平均を算出し、算出した平均に√2をかけて、y=xの中心位置を算出する(数式(3))。
【0079】
【数3】
【0080】
楕円横軸(y=x方向)について、n点のSD2の重み付き平均を算出し、係数をかけて解析対象時間内のstd2との平均を算出する(数式(4))。
【0081】
【数4】
【0082】
楕円縦軸(y=-x方向)について、n点のSD1の重み付き平均を算出し、係数をかけて解析対象時間内のstd1との平均を算出する(数式(5))。
【0083】
【数5】
【0084】
参照対象の重みwは、n点の全てについて同じ値としてもよいし、解析対象の現時刻に対し、近い時刻の点(言い換えると新しい計測データ)である程大きい重みをつけてもよい。前者は移動平均に相当し、後者は重み付き移動平均に相当する。また、解析対象の現時刻の重みαについて、0.0~1.0の値とし、この値が小さいほど、過去の参照ANF指標の傾向を重視することになる。
【0085】
中心、横軸、縦軸について、同じ傾向の重みセットをつけてもよいし、項目ごとに異なる重みセットをつけてもよい。
【0086】
妥当性判定部32は、妥当領域の範囲を決定した後に、領域内のデータを良好データとし、領域外のデータを異常値とする。
【0087】
図8Aには、ANF指標統合DB48から抽出した参照ANF指標を使用せずに、所定短時間内のBBIデータのみを使用して妥当性を判定した結果の一例を示す。これに対して、図8Bには、図8Aの場合と同一の所定短時間内のBBIデータに加えて、ANF指標統合DB48から抽出した参照ANF指標を使用して妥当性を判定した結果の一例を示す。
【0088】
所定短時間内のBBIデータのみを使用した場合、得られるサンプル数が少ないため、図8Aの楕円801に示すように少数のノイズによって全体の分布が大きく偏り、その結果、本来はANF指標の算出に使用すべきBBIデータを異常値として除去してしまったり、本来はANF指標の算出に使用すべきでないBBIデータを妥当なデータとしてANF指標の算出に使用してしまったりすることがある。これに対して、参照ANF指標を使用した場合、過去のある程度の長さにわたって取得されたBBIデータに基づくANF指標の値が使用されるため、楕円802に示すように、所定短時間内の少数のノイズの影響が少ない妥当領域を設定することができる。その結果、ANF指標の算出に適したBBIデータを取得することができる。
【0089】
なお、上記の例では妥当領域の楕円の中心をBBIデータの平均値に基づいて算出しているが、平均値の代わりに中央値を使用してもよい。
【0090】
ノイズ除去・補間処理部33は、LP上で妥当性を判定した良好データを時系列上のRRIデータに戻し、時系列上の異常データの発生状況及び発生区間を確認する。ノイズ除去・補間処理部33は、異常値発生区間の時間が短く、解析区間内の前後のRRIデータの変化傾向に基づいて、正常範囲の数拍分のRRIデータを用いて補間可能な場合、補間処理を実施する(図3のステップ310)。ノイズ除去・補間処理部33は、異常値として残った区間のデータをノイズとして除去し、その区間を時系列上の欠損区間とする。
【0091】
図9は、本発明の実施例に係る信頼区間抽出部34が解析時間のデータの信頼性評価を行い、信頼区間を抽出する処理の一例を示す説明図である。
【0092】
具体的には、図9は、図3のステップ311において実行される処理を説明するものである。LPによる妥当性判定及びノイズ除去・補間処理によって、解析対象時間内の欠損の発生位置が明確になる。信頼区間抽出部34は、欠損の状況に応じて、良好データ(すなわち、LP上で妥当であると判定されたデータ、及び、補間処理によって補間されたデータ)の連続区間を探索し、信頼性スコアを評価することで、ANF指標算出に適した信頼区間データを抽出し、ANF指標の信頼性を向上する。
【0093】
具体的な探索手法として、解析窓幅を2分とした例を説明する。2分間のBBIデータのすべてが良好に取得されることが最も望ましいが、異常値または欠損を含む場合、一般的に良好データの連続区間が60秒以上であれば、ANF指標を算出する際に、元の良好データと比較して80%以上の相関性を持つ。このケース、すなわち、2分間のBBIデータが60秒以上の良好データの連続区間を含む場合にその連続区間のデータを信頼区間データとして抽出する手法を、短縮手法1とする。
【0094】
その次に、欠損の発生位置によって、一つの長い連続区間を抽出できない場合、30秒以上の短い連続区間を二つ以上有していれば、それらを繋ぎ合わせることによって、短縮手法1と近い精度のANF指標を算出できることを実験で確認した。このケース、すなわち、30秒以上60秒未満の良好データの連続区間を二つ以上繋ぎ合わせた区間のデータを信頼区間データとして抽出する手法を短縮手法2とする。
【0095】
さらに、欠損点が散らばっていて、短縮手法1及び短縮手法2のいずれの条件を満たす区間も抽出することが難しい場合、断続的な正常RRIデータの繋ぎ合わせで、80秒以上のデータを得ることができれば、短縮手法1に近い精度を有する。この手法、すなわち、30秒未満の良好データの連続区間を複数繋ぎ合わせた80秒以上の区間のデータを信頼区間データとして抽出する手法を短縮手法3とする。
【0096】
良好データの時間長さの合計が同じであっても、短縮手法1を適用できた場合、短縮手法1を適用できずに短縮手法2を適用した場合、及び、短縮手法1、2のいずれも適用できずに短縮手法3を適用した場合では、その順に信頼性が少しずつ低下する(すなわち短縮手法1を適用できた場合が最も信頼性が高い)。信頼区間抽出部34は、欠損の発生状況と利用可能なデータの量とを考慮し、適用した短縮手法に応じた信頼性重みと抽出した信頼区間の合計時間とを掛け算し、その値を解析窓幅の時間で割ることで、解析対象区間の信頼性を表す信頼性スコアを算出する。信頼性重みの値は、短縮手法1に対応するものが最も大きく、短縮手法3に対応するものが最も小さい。例えば短縮手法1、2及び3の信頼性重みをそれぞれ1.0、0.9及び0.8等としてもよいが、それ以外の値を使用してもよい。
【0097】
ANF指標算出部23は、信頼性スコアが最も高い短縮手法によって抽出した信頼区間のデータを用いてANF指標を算出する(図3のステップ312)。ステップ312以降の処理は図3を参照して説明した通りである。
【0098】
図10は、本発明の実施例に係る即応型自律神経機能評価システム1による現在時刻の評価結果の表示の一例を示す説明図である。
【0099】
本実施例では、表示モードとして、現在時刻と時系列を選択できる。図10は現在時刻を選択した場合の例を示す。
【0100】
基本情報表示部1001において、表示した対象の基本データとして、ユーザID、車両ID、心拍センサ、現在時刻の業務状態、及び多変量のANF指標に基づき総合評価したストレスレベルが表示される。また、現在時刻で取得した解析データの区間の信頼性スコアが表示される。さらに、データの補正処理に関する情報として、過去のANF指標の参照の有無、参照する際の参照時間、LPの適用の有無及び補間処理の有無が表示される。
【0101】
グラフ表示部1002において、現在時刻及び直近の総合評価したストレス・リラックスレベルが表示される。
【0102】
設定変更部1003において、入力設定によるユーザIDの設定変更、センサ変更、業務情報変更、ANF指標参照変更、参照時間変更、ノイズ除去手法の変更、補間手法変更等を行うことで、基本設定を変更できる。
【0103】
ANF指標一覧表示1004をクリックすると、現在時刻における多変量のANF指標の値の一覧がテーブル形式で表示される。図10では省略するが、例えば図6Bに示すテーブルの情報が表示されてもよい。
【0104】
グラフ表示項目指定1005をクリックすると、総合評価のストレスレベルの他、各ANF指標を指定して、指定したANF指標の現在時刻と直近の変化傾向を表示できる。
【0105】
図11は、本発明の実施例に係る即応型自律神経機能評価システム1による時系列の評価結果の表示の一例を示す説明図である。
【0106】
本例は、一日単位の時系列表示を示す。表示モードとして時系列を選択すると例えば図11に示す情報が表示される。
【0107】
基本情報表示部1101は、現在時刻表示モードにおける基本情報表示部1001とほぼ同じである。ただし、基本情報表示部1101では、ストレスレベルとして所定の比較的長い期間(例えば1日)の平均値が表示される。
【0108】
設定変更1102、ANF指標一覧表示1103及びグラフ表示項目指定1104は、それぞれ、現在時刻表示モードにおける設定変更部1003、ANF指標一覧表示1004及びグラフ表示項目指定1005と同様である。
【0109】
グラフ表示部1105において、所定の期間(例えば一日)単位の自律神経機能指標の推移が表示される。
【0110】
また、時系列上における業務状態1106、例えば運行、荷積、荷卸、休息、休憩等があわせて表示される。さらに、所定短時間単位で取得したデータの信頼性スコアに基づき、時系列上の取得データ及びそれに基づいて算出したANF指標の信頼性レベル1107が表示される。
【0111】
カーソル1108をグラフ上の表示点に合わせることによって、その表示点に該当する時刻の詳細表示も確認することができる。図11では詳細表示を省略するが、例えば該当時刻における図6Bに示すテーブルの情報が表示されてもよい。
【0112】
また、本発明の実施形態のシステムは次のように構成されてもよい。
【0113】
(1)自律神経機能評価システムであって、プロセッサ(例えばプロセッサ2)と、記憶装置(例えばメモリ3及びストレージ装置4の少なくともいずれか)と、を有し、記憶装置は、所定の長さの時間に計測された生体データ(例えばBBIデータ)と、所定の長さの時間より前に計測された生体データに基づいて算出された自律神経機能指標(例えばANF指標統合DB48に含まれるANF指標)と、を保持し、プロセッサは、所定の長さの時間に計測された生体データと、所定の長さの時間より前に計測された生体データに基づいて算出された自律神経機能指標と、に基づいて、所定の長さの時間に計測された生体データの妥当性を判定し(例えばステップ308)、所定の長さの時間に計測された生体データのうち、妥当であると判定されたデータに基づいて、自律神経機能指標を算出する(例えばステップ312)。
【0114】
これによって、例えば業務中に装着したウェアラブルセンサから計測された心拍間隔データなどの生体データに対し、動的に算出したANF指標をANF指標統合DBに蓄積し、参照ANF指標を抽出することにより、短時間で取得した生体データに対しても、適切に妥当性を判定でき、装着性、即応性と信頼性を考慮した自律神経機能評価が可能となる。
【0115】
(2)上記(1)において、生体データは、心拍間隔データ(例えばBBIデータ)であり、プロセッサは、所定の長さの時間に計測された心拍間隔のローレンツプロットに基づいて、所定の長さの時間に計測された心拍間隔データの妥当性を判定する。
【0116】
これによって、心拍間隔データの妥当性を適切に判定することができる。
【0117】
(3)上記(2)において、プロセッサは、所定の長さの時間に計測された心拍間隔のローレンツプロット上に設定した楕円領域(例えば楕円802)の範囲内の心拍間隔データを妥当であると判定し、楕円領域の中心を、所定の長さの時間に計測された心拍間隔の平均値又は中央値と、所定の長さの時間より前に計測された生体データに基づいて算出された自律神経機能指標のうち、心拍間隔の平均値又は中央値と、に基づいて算出し(例えば数式(3))、楕円領域の径を、所定の長さの時間に計測された心拍間隔のローレンツプロット上の標準偏差と、所定の長さの時間より前に計測された生体データに基づいて算出された自律神経機能指標のうち、心拍間隔のローレンツプロット上の標準偏差と、に基づいて算出する(例えば数式(4)、(5))。
【0118】
すなわち、ローレンツプロット上において仮想的に楕円領域を設定し、当該楕円領域を生体データの集中状態に基づいて描画し、その範囲内の前記心拍間隔データが妥当であると判定することによって、短時間で取得した生体データに対しても、心拍間隔データの妥当性範囲を適切に設定することができる。
【0119】
(4)上記(3)において、プロセッサは、所定の長さの時間に計測された心拍間隔の平均値又は中央値と、所定の長さの時間より前に計測された生体データに基づいて算出された自律神経機能指標のうち、心拍間隔の平均値又は中央値と、の重み付け平均を楕円領域の中心として算出し(例えば数式(3))、所定の長さの時間に計測された心拍間隔のローレンツプロット上の標準偏差と、所定の長さの時間より前に計測された生体データに基づいて算出された自律神経機能指標のうち、心拍間隔のローレンツプロット上の標準偏差と、の重み付け平均に所定の係数(例えば2)を乗じた値を楕円領域の径として算出する(例えば数式(4)、(5))。
【0120】
これによって、短時間で取得した生体データに対しても、心拍間隔データの妥当性範囲を適切に設定することができる。
【0121】
(5)上記(4)において、より新しい生体データに基づいて算出された自律神経機能指標から抽出された値に、より大きい重みが付される。
【0122】
これによって、短時間で取得した生体データに対しても、心拍間隔データの妥当性範囲を適切に設定することができる。
【0123】
(6)上記(2)において、プロセッサは、所定の長さの時間に計測された心拍間隔データのうち、ローレンツプロットに基づいて妥当でないと判定されたデータの区間が所定の基準より短い場合、当該区間の前後の心拍間隔データに基づいて、当該区間の心拍間隔データを補間し(例えばステップ310)、ローレンツプロットに基づいて妥当であると判定されたデータ及び補間されたデータを良好データと判定する。
【0124】
これによって、取得されたデータを有効に利用して、信頼性のある自律神経指標の評価を行うことができる。
【0125】
(7)上記(6)において、プロセッサは、所定の長さの時間に計測された心拍間隔データのうち、良好データが連続する1以上の区間から、信頼区間を抽出し(例えばステップ311、図9)、良好データが連続する区間の長さ、及び、良好データが連続する複数の区間の長さの合計の少なくともいずれかに基づいて、信頼区間の信頼性を評価する信頼性スコアを算出する(例えばステップ312)。
【0126】
これによって、取得されたデータを有効に利用して、信頼性のある自律神経指標の評価を行うことができる。
【0127】
(8)上記(7)において、プロセッサは、前記良好データが連続する区間から、第1の抽出方法、第2の抽出方法及び第3の抽出方法の少なくともいずれかに基づいて信頼区間を抽出し、第1の抽出方法は、所定の第1の連続区間長さより長い1区間を信頼区間として抽出する方法であり、第2の抽出方法は、良好データが連続する区間のうち、所定の第2の連続区間長さより長い2以上の区間であって、それらの長さの合計が所定の第3の連続区間長さより長い2以上の区間を信頼区間として抽出する方法であり、第3の抽出方法は、良好データが連続する区間のうち、長さの合計が第3の連続区間長さより長い2以上の区間を信頼区間として抽出する方法であり、第2の連続区間長さは、第1の連続区間長さより短く、第3の連続区間長さは、第1の連続区間長さより長く、プロセッサは、第1の抽出方法、第2の抽出方法及び第3の抽出方法のうち2以上の抽出方法によって信頼区間を抽出した場合、抽出した2以上の信頼区間のうち信頼性スコアが最も高い信頼区間の心拍間隔データに基づいて、自律神経機能指標を算出する。
【0128】
これによって、取得されたデータを有効に利用して、信頼性のある自律神経指標の評価を行うことができる。
【0129】
(9)上記(8)において、プロセッサは、所定の長さの時間に対する信頼区間の長さの割合に、信頼区間の抽出方法に応じた信頼性重みを乗じることによって、信頼性スコアを算出し、第1の抽出方法に応じた信頼性重みが最も大きく、第3の抽出方法に応じた信頼性重みが最も小さい。
【0130】
これによって、取得されたデータの信頼性を適切に評価することができる。
【0131】
(10)上記(2)において、記憶装置は、生体データを計測したセンサに関する情報(例えばセンサ情報43)を保持し、プロセッサは、所定の長さの時間に計測された生体データに対してセンサに応じた整形処理を行い(例えばステップ303)、整形処理された生体データの妥当性を判定する。
【0132】
これによって、センサの種類等に応じて、自律神経指標の評価に使用するデータを適切に生成することができる。
【0133】
(11)上記(2)において、プロセッサは、算出した自律神経機能指標を、心拍間隔データの計測対象である人物の識別情報、当該人物の年齢、当該人物の性別、当該人物が乗車する車両の識別情報、当該人物の業務内容を示す情報、前記心拍間隔データの取得のために使用されたセンサに関する情報及び計測時刻の少なくともいずれかと対応付けて、自律神経機能指標統合データ(例えばANF指標統合DB48)として記憶装置に格納し、指定された抽出条件に基づいて自律神経機能指標統合データから抽出された前記自律神経機能指標(例えばステップ306で参照される指標)を、所定の長さの時間に計測された生体データの妥当性の判定に使用する。
【0134】
これによって、短時間で取得した生体データに対しても、適切に妥当性を判定することができる。
【0135】
(12)上記(2)において、心拍間隔データは、心電の計測値に基づくR波の間隔のデータ(例えば図4A)を含む。
【0136】
これによって、精度の高い心拍間隔データを得ることができる。
【0137】
(13)上記(2)において、心拍間隔データは、脈波の計測値のピーク間隔のデータ(例えば図4B)を含む。
【0138】
これによって、計測時に計測対象の人物の負担を軽減することができる。
【0139】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0140】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によってハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによってソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、不揮発性半導体メモリ、ハードディスクドライブ、SSD(Solid State Drive)等の記憶デバイス、または、ICカード、SDカード、DVD等の計算機読み取り可能な非一時的データ記憶媒体に格納することができる。
【0141】
また、制御線及び情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線及び情報線を示しているとは限らない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0142】
1 即応型自律神経機能評価システム
2 プロセッサ
3 メモリ
4 ストレージ装置
5 入出力装置
6 通信装置
7 車両
11 生体センサ
19 ネットワーク
21 心拍間隔取得部
22 補正処理部
23 ANF指標算出部
24 データ統合部
25 評価結果表示部
26 設定部
31 参照ANF指標抽出部
32 妥当性判定部
33 ノイズ除去・補間処理部
34 信頼区間抽出部
41 心拍センサ計測データ
42 ユーザ情報
43 センサ情報
44 業務情報
45 車載情報
46 短時間BBIデータ
47 ANF指標データ
48 ANF指標統合DB
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10
図11