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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160464
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】腕サポータ
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/08 20060101AFI20231026BHJP
   A61F 13/10 20060101ALI20231026BHJP
   A61F 5/02 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
A41D13/08
A61F13/10 S
A61F5/02 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070867
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593065110
【氏名又は名称】イイダ靴下株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】細江 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】飯田 拓二
(72)【発明者】
【氏名】堀田 進
【テーマコード(参考)】
3B011
3B211
4C098
【Fターム(参考)】
3B011AA09
3B011AB18
3B011AC17
3B211AA09
3B211AB18
3B211AC17
4C098BB09
4C098BC03
4C098BC15
(57)【要約】      (修正有)
【課題】着用者の腕全体に着圧を掛けて筋疲労を軽減させつつ、腕全体や肘関節の動きをサポートするテーピングラインを有する腕サポータを提供する。
【解決手段】筒状生地の一端を周回して編成され、着用者の手首近傍に締着させる第1のアンカー部4と、他端を腕の付け根近傍に締着させる第2のアンカー部5と、第1のアンカー部に連結して前腕伸筋群に沿って肘部近傍まで延在する伸筋サポート部6aと、前腕屈筋群に沿って肘部近傍まで延在する屈筋サポート部6bとが肘部の近傍で連結して形成される第1の支持部6と、肘頭の全周領域をサポートする第2の支持部7と、第2の支持部に連結して上腕二頭筋と上腕三頭筋の内側境界に沿って延在して第2のアンカー部に連結する内側上腕支持部8aと、上腕二頭筋と上腕三頭筋の外側境界に沿って延在して第2のアンカー部に連結する外側上腕支持部8bとで形成される第3の支持部8と、ベース生地部2とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状生地からなり、着用者の肘関節を補助する腕サポータにおいて、
前記筒状生地の一端を周回して編成され、前記着用者の手首近傍に前記筒状生地を締着させる第1のアンカー部と、
前記筒状生地の他端を周回して編成され、前記着用者の腕の付け根近傍に前記筒状生地を締着させる第2のアンカー部と、
前記第1のアンカー部に連結して前記着用者の前腕伸筋群に沿って肘部近傍まで延在する前腕伸筋サポート部と、前記第1のアンカー部に連結して前記着用者の前腕屈筋群に沿って肘部近傍まで延在する前腕屈筋サポート部とが、前記肘部の近傍で連結して形成される第1の支持部と、
前記第1の支持部に連結して前記肘部における肘頭の全周領域をサポートする第2の支持部と、
前記第2の支持部に連結して前記着用者の上腕二頭筋と上腕三頭筋の内側境界に沿って延在して前記第2のアンカー部に連結する第1の上腕支持部と、前記第2の支持部に連結して前記着用者の上腕二頭筋と上腕三頭筋の外側境界に沿って延在して前記第2のアンカー部に連結する第2の上腕支持部とで形成される第3の支持部と、
前記筒状生地における前記第1のアンカー部、前記第2のアンカー部、前記第1の支持部、前記第2の支持部及び前記第3の支持部以外のベース生地部とを備えることを特徴とする腕サポータ。
【請求項2】
請求項1に記載の腕サポータにおいて、
前記筒状生地の長さ方向及び/又は周方向における前記各支持部の伸縮抵抗が前記ベース生地部の伸縮抵抗よりも大きいことを特徴とする腕サポータ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の腕サポータにおいて、
前記筒状生地における前記着用者の腕の内側に前記第1のアンカー部と前記第2のアンカー部とを前記ベース生地部のみで連結している領域を有することを特徴とする腕サポータ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の腕サポータにおいて、
前記第2の支持部の肘頭上部に対応する領域であって、前記着用者の上腕二頭筋上に対応する領域において前記第2の支持部と前記第3の支持部とが連結しており、
前記第2の支持部と前記第3の支持部との連結部分から前記第1の上腕支持部と前記第2の上腕支持部とが前記第2のアンカー部に向かってV字状に延在することを特徴とする腕サポータ。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の腕サポータにおいて、
前記第1の支持部における前腕伸筋サポート部が、前記第1のアンカー部から前記第2の支持部まで前腕伸筋群に沿って直線状に連結して形成される共に、前記第1の支持部における前腕屈筋サポート部が、前記第1のアンカー部から前記第2の支持部まで前腕屈筋群に沿って直線状に連結して形成され、
前記前腕伸筋サポート部と前記前腕屈筋サポート部とが平行に形成されていることを特徴とする腕サポータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の前腕から上腕に掛けて腕全体をサポートする腕サポータに関し、特に腕全体を着圧しながら筋肉や脂肪のブレを抑制する腕サポータに関する。
【背景技術】
【0002】
着用することで体に掛かる圧力を着圧又は衣服圧といい、スパッツ、タイツ、靴下、シャツなどに採用されている。これらの衣服は、体への圧迫により疲労などを軽減することが可能となっている。
【0003】
また、機能性を有する衣服やサポータとして、例えば特許文献1~3に示す技術が開示されている。特許文献1に係る技術は、肘関節サポータが、筒状生地の一端を周回して編成され、着用者の上腕に当該筒状生地を締着させる第1のアンカー部と、筒状生地の他端を周回して編成され、着用者の前腕に当該筒状生地を締着させる第2のアンカー部と、着用者の肘窩で交差する略X字形状に編成され、当該略X字形状の生地における二つの端部を第1のアンカー部にそれぞれ連結し、当該略X字形状の生地における他の二つの端部を第2のアンカー部にそれぞれ連結して、当該着用者の肘関節を支持する支持部と、を備え、筒状生地の周方向における第1のアンカー部及び第2のアンカー部の伸縮抵抗が、筒状生地の周方向におけるベース生地部の伸縮抵抗より大きく、筒状生地の長さ方向における支持部の伸縮抵抗が、筒状生地の長さ方向におけるベース生地部の伸縮抵抗より大きいものである。
【0004】
特許文献2に係る技術は、サポータが、膝関節の外側を通るように配置される第1サポート部と、第1長辺から膝蓋の上縁部に沿って斜め上方向へ延伸して第2長辺に至る第2サポートと、第1長辺から膝蓋の下縁部に沿って斜め下方向へ延伸して第2長辺に至る第3サポート部とを備えるものである。
【0005】
特許文献3に係る技術は、肘関節用サポータが、縦・横2方向に伸縮するトリコット生地で構成され、両端部を手のひらを回内させる際の腕部の肘関節を中心とする内旋運動方向に傾斜させて裁断するとともに、両端部を逢着して形成し、その肘部分にレーヨン生地で構成される肘当て片を逢着し、更に肘当て片内には緩衝材を装着するとともに、緩衝材に腕部の肘関節を中心とした内旋運動方向にスリットを設けるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2011/090195号
【特許文献2】特開2016-132829号公報
【特許文献3】実用新案登録第3123048号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1~3に示す技術は、いずれも肘関節の部分をサポートする機能を有するものであるが、腕全体をサポートできるものではない。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、着用者の腕全体に着圧を掛けて筋疲労を軽減させつつ、腕全体や肘関節の動きをサポートするテーピングラインを有する腕サポータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る腕サポータは、筒状生地からなり、着用者の肘関節を補助する腕サポータにおいて、前記筒状生地の一端を周回して編成され、前記着用者の手首近傍に前記筒状生地を締着させる第1のアンカー部と、前記筒状生地の他端を周回して編成され、前記着用者の腕の付け根近傍に前記筒状生地を締着させる第2のアンカー部と、前記第1のアンカー部に連結して前記着用者の前腕伸筋群に沿って肘部近傍まで延在する前腕伸筋サポート部と、前記第1のアンカー部に連結して前記着用者の前腕屈筋群に沿って肘部近傍まで延在する前腕屈筋サポート部とが、前記肘部の近傍で連結して形成される第1の支持部と、前記第1の支持部に連結して前記肘部における肘頭の全周領域をサポートする第2の支持部と、前記第2の支持部に連結して前記着用者の上腕二頭筋と上腕三頭筋の内側境界に沿って延在して前記第2のアンカー部に連結する第1の上腕支持部と、前記第2の支持部に連結して前記着用者の上腕二頭筋と上腕三頭筋の外側境界に沿って延在して前記第2のアンカー部に連結する第2の上腕支持部とで形成される第3の支持部と、前記筒状生地における前記第1のアンカー部、前記第2のアンカー部、前記第1の支持部、前記第2の支持部及び前記第3の支持部以外のベース生地部とを備えるものである。
【0010】
このように、本発明に係る腕サポータにおいては、手首近傍から腕の付け根近傍までの腕全体を着圧で適度に圧迫することで筋肉や脂肪の無駄な動きやブレを抑制して疲労感を軽減することができると共に、前腕部、上腕部のそれぞれの筋肉や肘関節に沿った最適化されたテーピングラインで腕の動きをサポートすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1の実施形態に係る腕サポータの構造を示す外観図である。
図2】第1の実施形態に係る腕サポータの六面図である。
図3】腕の筋肉の構造を示す模式図である。
図4】第1の実施形態に係る腕サポータを着用した状態を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る腕サポータの編み立て構造の一例を示す図である。
図6】第1の実施形態に係る腕サポータにおいて衣服圧の測定箇所を示す図である。
図7】第1の実施形態に係る腕サポータの引張試験で用いた試験片の図である。
図8】第1の実施形態に係る腕サポータの引張試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る腕サポータについて、図1ないし図4を用いて説明する。本実施形態に係る腕サポータは、着用者の手首から腕の付け根部分までの腕全体を圧迫する筒状生地で形成される。腕サポータ1は、例えば靴下編機(例えば、ロナティ社製の編み機種)により丸編で編み立てられる筒状編地からなり、着用者の腕全体を適度に圧迫して筋肉や脂肪のブレを抑制すると共に、腕の筋肉に沿ったテーピングラインを形成して腕の動作を補助する。
【0013】
なお、以下の説明において伸縮抵抗とは、「巾3.0cmの試験片を用意し、巾方向の全幅をつかみ、引張試験機(エー・アンド・デイ製、RTF-1250)にセットした後、10cm間隔(L0)に印を付け、35.0Nの荷重を加え、1分間保持後の印間の長さ(L1)を、L0で除した値」とする。
【0014】
図1は本実施形態に係る腕サポータの構造を示す外観図であり、図1(A)は正面から見た場合の外観、図1(B)は背面から見た場合の外観、図1(C)は側面から見た場合の外観を示している。図2は本実施形態に係る腕サポータの六面図であり、図2(A)は正面図、図2(B)は背面図、図2(C)は左側面図、図2(D)は右側面図、図2(E)は平面図、図2(F)は底面図である。図3は腕の筋肉の構造を模式的に示した模式図である。図4は本実施形態に係る腕サポータを着用者が着用した状態を示す図であり、図4(A)は腕を伸ばした状態、図4(B)は腕を曲げた状態を示している。
【0015】
腕サポータ1は、表糸、裏糸及びゴム糸を編糸とし、平編、リブ編、タック編、浮き編又はパイル編などで編成される編地であるベース生地部2に対して、当該ベース生地部2とは異なる編み立てを所定の箇所に施すことで、テーピング機能などの所望の機能性を具備する。なお、本実施形態に係る腕サポータ1においては、ベース生地部2をタック編により編成される編地(以下、タック編地と称す)を用いるものとする。
【0016】
なお、本実施形態においては、腕サポータ1が丸編で編み立てられる筒状編地により形成される場合について説明するが、丸編以外にも経編や縫製により形成されてもよく、また筒状編地は、編地以外にも織地でもよく、これらに使用する糸は天然繊維の他、化学繊維などで形成されてもよい。
【0017】
腕サポータ1は、筒状編地の一端(下端3a)を周回して編成され、着用者の手首部分に腕サポータ1を締着させる第1のアンカー部4と、筒状編地の他端(上端3b)を周回して編成され、着用者の腕の付け根部分に腕サポータ1を締着させる第2のアンカー部5とを有する。この第1のアンカー部4及び第2のアンカー部5は、腕サポータ1(筒状編地)の周方向Hにおける伸縮抵抗が、腕サポータ1のベース生地部2における周方向Hの伸縮抵抗より大きく編成されている。すなわち、素材に伸長を与えない状態から一定の伸長を与えた場合の張力をFとして、ベース生地部2における周方向Hの張力をFH1、第1のアンカー部4における周方向Hの張力をFH2、第2のアンカー部5における周方向Hの張力をFH3とした場合に、第1のアンカー部4及び第2のアンカー部5がベース生地部2と比較して、周方向Hに強い締付力を持つようなFH2≒FH3>FH1という大小関係を有する。
【0018】
具体的には、第1のアンカー部4及び第2のアンカー部5は袋編の二重構造とすることにより、又は鹿の子編で編成された編地(以下、鹿の子編地と称す)にすることにより、タック編地のベース生地部2に対して、周方向Hにおける伸縮抵抗を大きくすることができる。
【0019】
なお、鹿の子編地とは、コース方向及びウェール方向に平編タック(あるコースで編み目を脱出させずに、その後のコースで複数ループを脱出させる組織)又はフロートとが交互に、又は数コースごとに表れる編地である。このため、第1のアンカー部4及び第2のアンカー部5には平編とタックとを併用することで、編地の表面に隆起や透かし目を作ることができ、鹿の子のような網目柄が表れる。
【0020】
このように、第1のアンカー部4は、着用者の手首部分を周回して編成され、周方向Hにおける伸縮抵抗がベース生地部2の伸縮抵抗より大きいことにより、着用者の手首部分に腕サポータ1を固定し、肘関節の屈伸動作における腕サポータ1の下端3aのずり下がりやずり上がりを抑制することができる。また、第2のアンカー部5は、着用者の腕の付け根部分を周回して編成され、周方向Hにおける伸縮抵抗がベース生地部2の伸縮抵抗より大きいことにより、着用者の腕の付け根部分に腕サポータ1を固定し、腕を下したリラックス状態や肘関節の屈伸動作において腕サポータ1がズレてしまうことを抑制することができる。
【0021】
なお、第1のアンカー部4及び第2のアンカー部5による着用者の手首及び腕の付け根に対する締付力を強くしすぎると、上腕及び前腕における血流阻害を生じさせ、着用者に不快感を起こさせる。特に、この不快感は、前腕に比べ上腕において顕著である。このため、腕サポータ1は、第1のアンカー部4に比べて第2のアンカー部5の体表への接触面積を広げ、第2のアンカー部5による体表にかかる圧力を分散させると共に、第2のアンカー部5の一部において度目を調整(例えば、第1のアンカー部4に対して締付力を10%程度小さく)することで、着用者に与える不快感を緩和している。すなわち、本実施形態に係る腕サポータ1は、周方向Hに適度な締付力を持つように、FH2>FH3>FH1という大小関係を有することが好ましい。
【0022】
着用者の前腕部分に対応する前腕領域Xは、ベース生地部2と第1の支持部6とで形成されており、着用者の前腕部分を全体的に着圧しながら前腕の筋肉をサポートする部分である。第1の支持部6は、第1のアンカー部4における着用者の左腕親指側の位置で連結し前腕伸筋群P1に沿って肘部近傍まで延在する伸筋サポート部6aと、第1のアンカー部4における着用者の左腕小指側の位置で連結し前腕屈筋群P2に沿って肘部近傍まで延在する屈筋サポート部6bとを有する。伸筋サポート部6aと屈筋サポート部6bは、それぞれが着用者の手首部から肘部まで延在し、肘部近傍で後述する第2の支持部7に連結することで、当該第2の支持部7を介して相互間でも連結している。伸筋サポート部6a及び屈筋サポート部6b以外の領域(前腕領域Xにおける着用者の内側領域と外側領域)は、それぞれベース生地部2a,2bとして形成されている。なお、図1図2及び図4に示す腕サポータ1はいずれも左腕用のものとして記載しており、右腕用の場合は符号が左右反転したものとする。
【0023】
このような第1の支持部6により、着用者の前腕領域Xに全体的に適度な圧迫を掛けて筋肉や脂肪の無駄なブレを防止し、疲労感を低減することができると共に、伸筋サポート部6a及び屈筋サポート部6bがそれぞれ前腕伸筋群P1や前腕屈筋群P2に沿ったテーピングラインを形成し、前腕伸筋群P1と前腕屈筋群P2とを両側から押すようにして及び/又は長さ方向に引っ張ることで筋肉を支持し、無駄な回旋の動きを抑制したり筋肉の動きをサポートすることができる。また、伸筋サポート部6a及び屈筋サポート部6bがが、前腕伸筋群P1及び前腕屈筋群P2に沿ってそれぞれ形成されることで、手首の動きに伴うような前腕伸筋群P1及び前腕屈筋群P2の動作を相補的に支持し、着用者の前腕部分を全体的にサポートすることができる。
【0024】
なお、例えば伸筋サポート部6a及び屈筋サポート部6bをタック編と添え糸編とを併用した編地(以下、タック編・添え糸編地と称す)にすることにより、タック編地のベース生地部2に対して、第1の支持部6の伸縮抵抗を大きくするようにしてもよい。また、タック編・添え糸編地では、タック編の地編糸の他に他の編糸(例えば、ウーリーナイロン糸)を添えて給糸することで、伸筋サポート部6a及び屈筋サポート部6bの伸縮を適度に抑えるようにしてもよい。
【0025】
ここで、第1の支持部6の伸縮抵抗は1.1ないし2であることが好ましく、1.2ないし1.8がより好ましく、1.3ないし1.7が特に好ましい。また、ベース生地部2の伸縮抵抗は1.5ないし3.5であることが好ましく、1.8ないし3であることがより好ましく、2ないし2.5であることが特に好ましい。さらに、第1の支持部6の伸縮抵抗は、ベース生地部2の伸縮抵抗を1とした場合、1.1ないし2であることが好ましく、1.2ないし1.8がより好ましく、1.3ないし1.7が特に好ましい。
【0026】
着用者の肘部分に対応する肘領域Yは、ベース生地部2と第2の支持部7とで形成されており、着用者の肘部分を全体的に着圧しながら肘関節を保護して安定した動作を促す部分である。第2の支持部7は、着用者の肘頭B1の全周領域を支持する。具体的には、肘頭B1が当接する領域と肘窩の領域はベース生地部2で形成されており、肘頭B1の周囲を取り囲むように第2の支持部7が形成されている。肘頭B1の部分や肘窩の領域は肘を屈伸したときに伸縮が大きい領域であるため、その動きをスムーズに行うために比較的伸縮抵抗が小さいベース生地部2が接触するように形成され、その周囲のじん帯群B2(外側側副じん帯、内側側副じん帯、橈骨輪状じん帯等のじん帯群)は伸縮抵抗が大きい第2の支持部7がサポートすることで、肘の屈伸動作をサポートすることができる。第2の支持部7における肘下に対応する箇所では、第1の支持部6である伸筋サポート部6a及び屈筋サポート部6bと連結しており、第1のアンカー部4の手首の位置から肘部までを第1の支持部6及び第2の支持部7で連続的に支持して前腕及び肘の動きをサポートすることが可能となっている。
【0027】
このような第2の支持部7により、肘関節の動きをできるだけスムーズにしつつ、着用者の肘に適度な圧迫を掛けながらじん帯群B2を支持することで、屈伸や回旋の動作によるじん帯の損傷を防止することができる。
【0028】
なお、第1の支持部6の場合と同様に、例えば第2の支持部7をタック編・添え糸編地にすることにより、タック編地のベース生地部2に対して、第2の支持部7の伸縮抵抗を大きくするようにしてもよい。また、タック編・添え糸編地では、タック編の地編糸の他に他の編糸(例えば、ウーリーナイロン糸)を添えて給糸することで、第2の支持部7の伸縮を適度に抑えるようにしてもよい。
【0029】
ここで、第2の支持部7の伸縮抵抗は1.1ないし2であることが好ましく、1.2ないし1.8がより好ましく、1.3ないし1.7が特に好ましい。また、第2の支持部7の伸縮抵抗は、ベース生地部2の伸縮抵抗を1とした場合、1.1ないし2であることが好ましく、1.2ないし1.8がより好ましく、1.3ないし1.7が特に好ましい。
【0030】
着用者の上腕部分に対応する上腕領域Zは、ベース生地部2と第3の支持部8とで形成されており、着用者の上腕部分を全体的に着圧しながら上腕の筋肉をサポートする部分である。第3の支持部8は、一端側が第2の支持部7における肘上に相当する箇所に連結し、着用者の左腕の上腕三頭筋P3と上腕二頭筋P4との内側(前側)境界に沿って延在し、他端側が第2のアンカー部5に連結する内側上腕支持部8aと、一端側が第2の支持部7における肘上に相当する箇所に連結し、着用者の左腕の上腕三頭筋P3と上腕二頭筋P4との外側(後側)境界に沿って延在し、他端側が第2のアンカー部5に連結する外側上腕支持部8bとを有する。上腕領域Zにおける内側上腕支持部8a及び外側上腕支持部8b以外の領域はベース生地部2で形成されている。なお、図1図2及び図4において右腕用の場合は符号が左右反転したものとする。
【0031】
内側上腕支持部8a及び外側上腕支持部8bは、第2の支持部7に連結している肘上の箇所から第2のアンカー部5に向かってV字状に広がりながら上腕三頭筋P3と上腕二頭筋P4との境界に沿ったテーピングラインで形成される。すなわち、V字状の内部領域に上腕三頭筋P3が配置するように着用されるため、腕を伸ばした状態では上腕三頭筋P3を安定して支持することができると共に、腕を曲げた状態では上腕三頭筋P3の動きに応じてV字状の頂点部分から内側上腕支持部8a及び外側上腕支持部8bに沿って下方向から持ち上げるように支持することができる(図4を参照)。
【0032】
着用者の上腕三頭筋P3に対応する位置には、内側上腕支持部8aと外側上腕支持部8bとで形成されるV字状の内部領域が相当し、この内部領域はベース生地部2で形成される。また、着用者の上腕二頭筋P4に対応する位置には、内側上腕支持部8aと外側上腕支持部8bとで形成されるV字状の外側領域が相当し、この外側領域もベース生地部2で形成される。すなわち、上腕二頭筋P4と上腕三頭筋P3の直上位置にはテーピングラインが配置されないため、腕の屈伸動作を行う場合に上腕二頭筋P4と上腕三頭筋P3とがテーピングラインによる抵抗を受けることがなく、上腕二頭筋P4と上腕三頭筋P3とを動かしやすい状態となっている。
【0033】
このような第3の支持部8により、着用者の上腕領域Zに適度な圧迫を掛けて筋肉や脂肪の無駄なブレを防止し、疲労感を低減することができると共に、内側上腕支持部8a及び外側上腕支持部8bで上腕三頭筋P3を下方向から長さ方向に収縮して保持して安定させつつ、上腕二頭筋P4や上腕三頭筋P3を曲げやすい状態にして上腕部分の動きをサポートすることができる。
【0034】
なお、第1の支持部6及び第2の支持部7の場合と同様に、例えば第3の支持部8をタック編・添え糸編地にすることにより、タック編地のベース生地部2に対して、第3の支持部8の伸縮抵抗を大きくするようにしてもよい。また、タック編・添え糸編地では、タック編の地編糸の他に他の編糸(例えば、ウーリーナイロン糸)を添えて給糸することで、第3の支持部8の伸縮を適度に抑えるようにしてもよい。
【0035】
ここで、第3の支持部8の伸縮抵抗は1.1ないし2であることが好ましく、1.2ないし1.8がより好ましく、1.3ないし1.7が特に好ましい。また、第3の支持部8の伸縮抵抗は、ベース生地部2の伸縮抵抗を1とした場合、1.1ないし2であることが好ましく、1.2ないし1.8がより好ましく、1.3ないし1.7が特に好ましい。
【0036】
第1の支持部6、第2の支持部7及び第3の支持部8が上記で説明したようなテーピングラインを形成していることから、着用者の腕の内側(すなわち、着用者の腕の内側における前腕屈筋群及び前腕伸筋群の境界、肘窩、上腕二頭筋に沿った腕の内側領域)には、図1(B)や図2(B)に示す通り、第1のアンカー部4と第2のアンカー部5との間をベース生地部2のみで連結している領域を有する。つまり、このような腕の内側領域にはテーピングラインが形成されておらず、伸縮抵抗が小さいベース生地部2のみであることから、肘の屈伸動作において可動しやすくなっている。
【0037】
また、図1図2に示すように、第1の支持部6における前腕伸筋サポート部6aは、第1のアンカー部4から第2の支持部7(具体的には、第2の支持部7において手のひらを上にした場合に肘の外側に相当する領域近傍)まで前腕伸筋群P1に沿って直線状に連結して形成されている。また、第1の支持部6における前腕屈筋サポート部6bは、第1のアンカー部4から第2の支持部7(具体的には、第2の支持部7において掌の上にした場合に肘の内側に相当する領域近傍)まで前腕屈筋群P2に沿って直線状に連結して形成されている。そして、前腕伸筋サポート部6aと前腕屈筋サポート部6bとは略平行に形成されており、手のひらを上にした場合に外側になる前腕伸筋群P1と内側になる前腕屈筋群P2とを前腕伸筋サポート部6a及び前腕屈筋サポート部6bが相互に対向する方向から圧迫することとなり、適度な圧力で前腕伸筋群P1と前腕屈筋群P2と支持して安定しつつ、筋肉や脂肪などのブレをなくして疲労を低減することが可能となっている。
【0038】
ここで、上記で説明した腕サポータ1について、身体に掛かる圧力の測定及び伸縮性に関する測定を行った。図5は、測定に用いた腕サポータの編み立て構造を示す図である。図5(A)は第1のアンカー部4の編み立て構造を示す図、図5(B)は第2のアンカー部5の編み立て構造を示す図、図5(C)はベース生地部2の編み立て構造を示す図、図5(D)は第1の支持部6、第2の支持部7及び第3の支持部8の編み立て構造を示す図である。図5において、〇はニット編、×はミス(編み立てない)、△はタック編を示している。
【0039】
第1のアンカー部4は、図5(A)に示すように、奇数コースがタック編とミスを交互に組み合わせた構造となっており、偶数コースがニット編のみの構造となっている。第2アンカー部5は、図5(B)に示すように、奇数コースがニット編とミスを交互に組み合わせた構造となっており、偶数コースがニット編のみの構造となっている。ベース生地部2は、図5(C)に示すように、奇数コースがニット編とミスを交互に組み合わせた構造となっており、偶数コースがニット編のみの構造となっている。奇数コースについては交互に1ウェール分シフトさせた構造となっている。第1の支持部6、第2の支持部7及び第3の支持部8が形成するテーピングラインは、図5(D)に示すように、1コース目と3コース目がタック編とミスを組み合わせた構造、2コース目がニット編とミスを組み合わせた構造、4コース目がニット編のみとなっており、この4コースに対して次の4コースは、2ウェール分シフトさせた構造となっている。
【0040】
図5に示すような編み立てが施された腕サポータ1を用いて、実際に着用した場合に身体に掛かる圧力のデータ測定を行った結果を以下に示す。測定は、20代平均の寸法のマネキンに対して図6に示す箇所に圧力センサを貼り付け、その上からマネキンに腕サポータ1(サイズM~L)を着用させて行った。測定結果は以下の通りである(単位はいずれもkpa)。なお、図6の番号が表の列番号に対応している。
【0041】
【表1】
【0042】
表1の結果から、他社製品と比較して図6に示す全ての箇所で高い衣服圧が得られた。すなわち、本実施形態に係る腕サポータが、着圧により筋肉や脂肪のブレを十分に抑えることが可能であることが明らかとなった。
【0043】
次に、腕サポータ1について、伸縮性に関して腕サポータ1の長さ方向の引張試験を行った結果を以下に示す。引張試験は、腕サポータ1を図7に示すように、試験用に複数にカットして部分ごとに行った。具体的には、(1)筒前腕(図7(A)に示す前腕部分全体の筒状生地に相当)、(2)1枚前腕(内側)(図7(B)に示す前腕内側半分の生地に相当)、(3)1枚前腕(外側)(図7(C)に示す前腕外側半分の生地に相当)、(4)テーピング前腕(図7(D)に示す前腕半身部分の生地に相当)、(5)テーピング上腕(図7(E)に示す上腕半身部分の生地に相当)に対して行った。測定結果を以下の表に示すと共に、最大点伸度を図8のグラフに示す。図8におけるグラフの各データの番号は、下記の表における行データの番号に対応している。
【0044】
【表2】
【0045】
上記表2の結果及び図8のグラフから、テーピング部分(第1の支持部6や第3の支持部8)はベース生地部2に比べて伸縮抵抗が大きく過度な動きや回旋の抑制が期待できることが明らかとなった。また、図8に示すように、(4)の前腕部分と(5)の上腕部分とで伸縮抵抗には差がある。これは支持部(第1の支持部6や第3の支持部8)とベース生地部2との比率に因ることもあるが、上腕部分の方が比較的大きい筋肉を支持したり安定にする必要があることから、上腕部分の方の伸縮抵抗を強くする、又は第3の支持部8のテーピングラインを太くすることが望ましい。
【符号の説明】
【0046】
B1 肘頭
B2 じん帯群
P1 前腕伸筋群
P2 前腕屈筋群
P3 上腕三頭筋
P4 上腕二頭筋
1 腕サポータ
2 ベース生地部
3a 下端
3b 上端
4 第1のアンカー部
5 第2のアンカー部
6 第1の支持部
6a 伸筋サポート部
6b 屈筋サポート部
7 第2の支持部
8 第3の支持部
8a 内側上腕支持部
8b 外側上腕支持部
X 前腕領域
Y 肘領域
Z 上腕領域


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8