(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160498
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】環状カーボネート、及び環状カーボネートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 64/02 20060101AFI20231026BHJP
C07D 317/46 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C08G64/02
C07D317/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070904
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】米田 久成
(72)【発明者】
【氏名】中田 卓人
(72)【発明者】
【氏名】福岡 大嗣
(72)【発明者】
【氏名】戸田 達朗
(72)【発明者】
【氏名】堀 開史
【テーマコード(参考)】
4J029
【Fターム(参考)】
4J029AA09
4J029AB01
4J029AC01
4J029HC06
4J029HE04
4J029KE09
(57)【要約】
【課題】新規環状カーボネートと、それらの製造方法を提供する。
【解決手段】下記式(1):(式(1)中、Aは、置換されていてもよい脂環式部位であり、Lは、直接結合、又は、連結基であり、R
1は、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、又は、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。)で表される、環状カーボネート。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
(式(1)中、
Aは、置換されていてもよい脂環式部位であり、
Lは、直接結合、又は、連結基であり、
R
1は、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、又は、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。)
で表される、環状カーボネート。
【請求項2】
前記Aが、シクロヘキサン-1,2-ジイル基である、請求項1に記載の環状カーボネート。
【請求項3】
前記Lが、エチレン基、ノルボルニレン基、又は、デカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフチレン基である、請求項1に記載の環状カーボネート。
【請求項4】
前記R1が、シクロヘキシル基、アダマンチル基、又は、デシル基である、請求項1に記載の環状カーボネート。
【請求項5】
下記式(1):
【化2】
(式(1)中、
Aは、置換されていてもよい脂環式部位であり、
Lは、直接結合、又は、連結基であり、
R
2は、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、又は、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。)
で表される、環状カーボネートの製造方法であって、
下記式(2):
【化3】
(式(2)中、Aは、置換されていてもよい脂環式部位であり、Eは、置換されていてもよい炭素数1~20のアルケニル基である。)
で表される環状カーボネート、又は
下記式(2’):
【化4】
(式(2’)中、A’は、置換されていてもよい不飽和脂環式部位である。)
で表される環状カーボネートと、
下記式(3):
H-S-R
1 (3)
(式(3)中、R
1は、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、又は、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。)
で表されるチオール化合物と
を含む混合物を混合攪拌する工程を有する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状カーボネート、及び環状カーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は耐熱性に優れるエンジニアリングプラスチックであり、その軽量化や低コスト化とともに、優れた耐熱性や光学特性を兼ね備えるものが要求されている。そのような要求を満たすことを目的として、芳香族骨格をベースとした特殊ポリカーボネート樹脂の開発が盛んに行われている。
【0003】
他方、芳香族ポリカーボネートに代わる樹脂として、脂肪族、特に脂環式構造を有するポリカーボネート樹脂の開発も行われている。脂環式ポリカーボネートは、ビスフェノールAなどの芳香環を有するポリカーボネート樹脂と比べて耐光性や光学特性に優れる傾向がある。例えば、特許文献1では透明性、耐熱性、色調に優れる多環脂環式ポリカーボネート樹脂が開示されている。また、石油原料のみならず、植物などのバイオマス由来の原料を用いたポリカーボネートの開発も行われている。例えば、特許文献2において、でんぷんから誘導可能なイソソルバイドを原料に用いたポリカーボネート樹脂が開示されている。
【0004】
このような脂環式ポリカーボネート樹脂のうち、シクロヘキサンカーボネート構造を有するポリ(シクロヘキセンカーボネート)は、ベンゼン環に対応する飽和の炭素六員環を有する最も単純なポリカーボネートである。ポリ(シクロヘキセンカーボネート)は、例えば特許文献3に示されているように、シクロヘキセンオキシドと二酸化炭素との反応によって合成できることが広く知られている。また、特許文献4及び非特許文献1に記載されているように、1,2-シクロヘキセンカーボネートの開環重合によりポリ(シクロヘキセンカーボネート)が得られることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4774610号公報
【特許文献2】特許第6507495号公報
【特許文献3】特許第5403537号公報
【特許文献4】特開2019-108547号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Macromolecules 2014, 47, 4230-4235.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリカーボネート樹脂は、種々の物性が求められ、当該樹脂の原料として用いられる環状カーボネートについて新規物質が求められる。
【0008】
本発明は、新規環状カーボネートと、それらの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
<1>
下記式(1):
【化1】
(式(1)中、
Aは、置換されていてもよい脂環式部位であり、
Lは、直接結合、又は、連結基であり、
R
1は、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、又は、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。)
で表される、環状カーボネート。
<2>
前記Aが、シクロヘキサン-1,2-ジイル基である、<1>に記載の環状カーボネート。
<3>
前記Lが、エチレン基、ノルボルニレン基、又は、デカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフチレン基である、<1>又は<2>に記載の環状カーボネート。
<4>
前記R
1が、シクロヘキシル基、アダマンチル基、又は、デシル基である、<1>~<3>のいずれかに記載の環状カーボネート。
<5>
下記式(1):
【化2】
(式(1)中、
Aは、置換されていてもよい脂環式部位であり、
Lは、直接結合、又は、連結基であり、
R
2は、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、又は、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。)
で表される、環状カーボネートの製造方法であって、
下記式(2):
【化3】
(式(2)中、Aは、置換されていてもよい脂環式部位であり、Eは、置換されていてもよい炭素数1~20のアルケニル基である。)
で表される環状カーボネート、又は
下記式(2’):
【化4】
(式(2’)中、A’は、置換されていてもよい不飽和脂環式部位である。)
で表される環状カーボネートと、
下記式(3):
H-S-R
1 (3)
(式(3)中、R
1は、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、又は、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。)
で表されるチオール化合物と
を含む混合物を混合攪拌する工程を有する、製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、新規環状カーボネートと、それらの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1における環状カーボネートの
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図2】実施例2における環状カーボネートの
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図3】実施例3における環状カーボネートの
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図4】実施例4における環状カーボネートの
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図5】実施例5における重合体の
1H-NMRスペクトルを示す。
【
図6】実施例6における重合体の
1H-NMRスペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」ともいう。)について詳細に説明する。なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
[環状カーボネート]
本実施形態に係る環状カーボネートは、下記式(1)で表される。
【0014】
【0015】
式(1)中、
Aは、置換されていてもよい脂環式部位であり、
Lは、直接結合、又は、連結基であり、
R1は、置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、又は、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。
【0016】
本実施形態に係る環状カーボネートは、上記の構成を備えることにより、優れた耐熱性を示す材料が得れられる。この要因は、以下のように考えられるが、要因はこれに限定されない。
【0017】
従来の脂環式構造を有する環状カーボネートは、環状骨格を有するが、その剛直性の高い構造に起因して、比較的安定性の低いカーボネート基周りが立体的に空くため、加水分解等の影響を受けやすい。
これに対し、本実施形態の環状カーボネート及びこれを重合したポリカーボネート樹脂はスルフィド基を有するため、分子間でカーボネート基とスルフィド基が相互作用することで、カーボネート基周りが立体的に込み合うことで加水分解等の影響を受けにくくなった結果、耐熱性が向上したと推察される。
【0018】
式(1)中、Aは置換されていてもよい2価の脂環式部位である。脂環式部位としては、特に限定されないが、例えば、シクロプパン-1,2-ジイル基、シクロブタン-1,2-ジイル基、シクロペンタン-1,2-ジイル基、シクロヘキサン-1,2-ジイル基、シクロヘプタン-1,2-ジイル基、シクロオクタン-1,2-ジイル基、シクロノナン-1,2-ジイル基、シクロデカン-1,2-ジイル基が挙げられる。これらのAの中でも、シクロブタン-1,2-ジイル基、シクロペンタン-1,2-ジイル基、シクロヘキサン-1,2-ジイル基、シクロヘプタン-1,2-ジイル基、シクロオクタン-1,2-ジイル基が好ましく、シクロブタン-1,2-ジイル基、シクロペンタン-1,2-ジイル基、シクロヘキサン-1,2-ジイル基、シクロヘプタン-1,2-ジイル基がより好ましく、シクロヘキサン-1,2-ジイル基が更に好ましい。
【0019】
脂環式部位Aは任意の位置に不飽和結合を有していてもよい。Aの不飽和結合は複数あってもよい。
【0020】
また、脂環式部位Aは任意の置換基によって置換されていてもよい。置換基としては、特に限定されないが、例えば、水酸基、リン酸基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアラルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~30のシリル基、炭素数1~30のシリルアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~30のアルキル基である。Aの置換基は複数あってもよく、その場合、各々の置換基は同一でも異なってもよい。
【0021】
脂環式部位Aの置換基は、好ましは、水酸基、リン酸基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のアラルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~30のシリル基、炭素数1~30のシリルアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~30のアルキル基であり、より好ましくは、水酸基、炭素数1~20のアルコキシ基、炭素数1~11のエステル基、炭素数1~11のアシル基、又は、直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~30のアルキル基であり、更に好ましくは、水酸基、炭素数1~20のアルコキシ基、又は、直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~30のアルキル基であり、更に好ましくは、炭素数1~20のアルコキシ基、又は、直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~30のアルキル基である。
【0022】
リン酸基は、非置換であってもよく、置換されていてもよい。すなわち、1置換のリン酸基であってもよく、2置換のリン酸基であってもよい。本発明の効果をより有効かつ確実に奏する観点から、リン酸基が置換されている場合、置換基は、非置換の直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~30のアルキル基であることが好ましい。同様の観点から、本実施形態におけるリン酸基は、非置換であることが好ましい。
【0023】
炭素数6~20のアリール基としては、特に限定されないが、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、テトラメチルフェニル基、ペンタメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ジイソプロピルフェニル基等の、無置換又はアルキル基を有するアリール基や、例えば、4-メトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基等のアルコキシ基を有するアリール基や、例えば、ビフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基が挙げられる。
【0024】
炭素数6~20のアラルキル基としては、特に限定されないが、例えば、ベンジル基、4-メチルベンジル基、フェネチル基等の、無置換又はアルキル基を有するアラルキル基や、例えば、4-メトキシベンジル基、3,5-ジメトキシベンジル基などのアルコキシ基を有するアラルキル基や、例えば、ジフェニルメチル基、ナフチルメチル基、アントラセニルメチル基などが挙げられる。
【0025】
炭素数1~20のアルコキシ基としては、特に限定されないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノナニルオキシ基、デシルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、ビニルオキシ基、及びアリルオキシ基が挙げられる。
【0026】
炭素数1~30のシリル基としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、ジ-tert-ブチルイソブチルシリル基、及びtert-ブチルジフェニルシリル基が挙げられる。
【0027】
炭素数1~30のシリルアルコキシ基としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルシリルメトキシ基、トリメチルシリルエトキシ基、トリメチルシリルフェノキシ基、トリメチルシリルベンジルオキシ基、トリエチルシリルメトキシ基、トリエチルシリルエトキシ基、トリエチルシリルフェノキシ基、トリエチルシリルベンジルオキシ基、トリイソプロピルシリルメトキシ基、トリイソプロピルシリルエトキシ基、トリイソプロピルシリルフェノキシ基、トリイソプロピルシリルベンジルオキシ基、トリフェニルシリルメトキシ基、トリフェニルシリルエトキシ基、トリフェニルシリルフェノキシ基、トリフェニルシリルベンジルオキシ基、tert-ブチルジメチルシリルメトキシ基、tert-ブチルジメチルシリルエトキシ基、tert-ブチルジメチルシリルフェノキシ基、tert-ブチルジメチルシリルベンジルオキシ基、ジ-tert-ブチルイソブチルシリルメトキシ基、ジ-tert-ブチルイソブチルシリルエトキシ基、ジ-tert-ブチルイソブチルシリルフェノキシ基、ジ-tert-ブチルイソブチルシリルベンジルオキシ基、tert-ブチルジフェニルシリルメトキシ基、tert-ブチルジフェニルシリルエトキシ基、tert-ブチルジフェニルシリルフェノキシ基、及びtert-ブチルジフェニルシリルベンジルオキシ基が挙げられる。
【0028】
炭素数1~11のエステル基としては、特に限定されないが、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、プロピルエステル基、ブチルエステル基、ペンチルエステル基、シクロペンチルエステル基、ヘキシルエステル基、シクロヘキシルエステル基、ヘプチルエステル基、オクチルエステル基、ノナニルエステル基、デシルエステル基、フェニルエステル基、ベンジルエステル基、ビニルエステル基、及びアリルエステル基が挙げられる。
【0029】
炭素数1~11のアシル基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、及びベンゾイル基が挙げられる。
【0030】
直鎖状、分岐状、若しくは環状の炭素数1~30のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、1-ノルボルニル基、2-ノルボルニル基、n-オクチル基、1-ビシクロ[2.2.2]オクチル基、2-ビシクロ[2.2.2]オクチル基、n-ノナニル基、n-デシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、デカヒドロナフチル基、及びテトラシクロドデシル基が挙げられる。
【0031】
式(1)中、Lは直接結合、又は、連結基である。連結基としては、直鎖、分岐、又は環状のいずれでもよい2価のアルキレン基が挙げられる。連結基の炭素数は、好ましくは1~30であり、より好ましくは1~20である。2価のアルキレン基としては、特に限定されないが、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、ノルボルニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、デカヒドロナフチレン基、デカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフチレン基が挙げられる。これらの中でも、Lは、好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、ノルボルニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、デカヒドロナフチレン基、デカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフチレン基であり、より好ましくは、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロへキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、ノルボルニレン基、ビシクロ[2.2.2]オクチレン基、デカヒドロナフチレン基、デカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフチレン基であり、更に好ましくはエチレン基、ノルボルニレン基、又は、デカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフチレン基である。
【0032】
式(1)中、R1は置換されていてもよい炭素数1~20の脂肪族炭化水素基、又は、置換されていてもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基である。R1としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、デカヒドロナフチル基、デカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフチル基、フェニル基、ベンジル基、3-(2-メチルテトラヒドロ)フリル基が挙げられる。R1は、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ビシクロ[2.2.2]オクチル基、デカヒドロナフチル基、デカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフチル基、フェニル基、ベンジル基、3-(2-メチルテトラヒドロ)フリル基であり、より好ましくはシクロヘキシル基、アダマンチル基、又は、デシル基である。
【0033】
本実施形態に係る環状カーボネートは、好ましくは下記式(X1)で表される。
【0034】
【0035】
式(X1)中の好ましいL及びR1は式(1)中のものと同様である。
【0036】
本実施形態に係る環状カーボネートは、下記式(X1-1)、(X1-2)、(X1-3)、又は(X1-4)で表される化合物であることが好ましい。
【0037】
【0038】
式(X1-1)中、mは0~18の整数であり、R1は式(1)中のものと同様である。
【0039】
【0040】
式(X1-2)中、mは0~18の整数であり、R1は式(1)中のものと同様である。
【0041】
【0042】
式(X1-3)中、nは0~3の整数であり、R1は式(1)中のものと同様である。
【0043】
【0044】
式(X1-4)中、nは0~3の整数であり、R1は式(1)中のものと同様である。
【0045】
式(X1-1)、及び(X1-2)において、mは、好ましくは0~5の整数であり、より好ましくは1である。
【0046】
式(X1-3)、及び(X1-4)において、nは0~2の整数であり、好ましくは0又は1である。
【0047】
[環状カーボネートの製造方法]
本実施形態に係る環状カーボネートの製造方法は、下記式(2)で表される環状カーボネート(B1)又は下記式(2’)で表される環状カーボネート(B2’)と、下記式(3)で表されるチオール化合物(B2)とを少なくとも含む混合物を、混合攪拌する工程を有すると好ましい。
【0048】
【0049】
式(2)中、Aは、置換されていてもよい脂環式部位であり、Eは、置換されていてもよい炭素数1~20のアルケニル基である。
【0050】
【0051】
式(2’)中、A’は、置換されていてもよい不飽和脂環式部位である。
【0052】
H-S-R1 (3)
【0053】
式(3)中、R1は式(1)中のものと同様である。
【0054】
環状カーボネート(B1)は、1種類であってもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。式(2)中、A、及びR1は、前記式(1)において説明したとおりである。
【0055】
式(2)中、Eは、置換されていてもよい炭素数1~20のアルケニル基である。アルケニル基は、直鎖、分岐、又は環状のいずれであってもよい。炭素数1~20のアルケニル基としては、特に限定されないが、例えば、メチレン基、エテニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘブテニル基、シクロオクテニル基、シクロノネニル基、シクロデセニル基、ノルボルネニル基、ビシクロ[2.2.2]オクテニル基、オクタヒドロナフタレニル基、オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレニル基が挙げられる。式(2)におけるアルケニル基は、好ましくは、ビニリデン基、エテニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘブテニル基、シクロオクテニル基、シクロノネニル基、シクロデセニル基、ノルボルネニル基、ビシクロ[2.2.2]オクテニル基、オクタヒドロナフタレニル基、オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレニル基であり、より好ましくは、ビニリデン基、エテニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘブテニル基、シクロオクテニル基、シクロノネニル基、シクロデセニル基、ノルボルネニル基、ビシクロ[2.2.2]オクテニル基、オクタヒドロナフタレニル基、オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレニル基である。
【0056】
式(2’)中、A’は、置換されていてもよい不飽和脂環式部位である。不飽和脂環式部位としては、脂環式部位中に炭素炭素二重結合を有することが好ましい。
【0057】
本実施形態に係る環状カーボネートの製造方法において、環状カーボネート(B1)は、下記式(Y1)で表されることが好ましい。
【0058】
【0059】
本実施形態に係る環状カーボネートの製造方法において、式(Y1)中のEは式(2)中のものと同様である。
【0060】
本実施形態に係る環状ポリカーボネートの製造方法において、環状カーボネート(B1)は、下記式(Y1―1)、及び(Y1―2)で表される化合物であることが好ましい。
【0061】
【0062】
式(Y-1)において、mは、式(X1-1)と同様である。
【0063】
式(Y-2)において、nは、式(X1-3)と同様である。
【0064】
式(3)中、R1は、式(1)と同様である。チオール化合物(B2)は、1種類であってもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
環状カーボネート(B1)と、チオール化合物(B2)とを含む混合物における、環状カーボネート(B1)とチオール化合物(B2)との質量比は、1:100~100:1であることが好ましく、1:50~50:1であることがより好ましい。
【0066】
環状カーボネート(B1)と、チオール化合物(B2)とを含む混合物を混合攪拌する際、溶媒を添加してもよい。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジフェニルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、及びプロピレングリコールノモノメチルエーテルアセテート等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、及びトリクロロエタン等のハロゲン系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、シクロヘキサン、及びメチルシクロヘキサン等の飽和炭化水素系溶媒、トルエン、キシレン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、及びクレゾール等の芳香族炭化水素系溶媒、並びに、アセトン、2-ブタノン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、及びメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒が挙げられる。
【0067】
環状カーボネート(B1)と、チオール化合物(B2)と含む混合物を、混合攪拌する際の環状カーボネート(B1)と溶媒との質量比は、100:1~1:100であることが好ましく、90:1~1:90であることがより好ましい。
【0068】
環状カーボネート(B1)とチオール化合物(B2)と含む混合物を混合攪拌する際、ラジカル開始剤を添加してもよい。ラジカル開始剤とは、熱、光、あるいはレドックス反応などによりラジカルを発生させるものを指す。このようなものとしては、有機過酸化物、アゾ化合物及びレドックス開始剤、光開始剤等が挙げられる。
【0069】
有機過酸化物としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジtert-ブチルパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド及びジクミルパーオキサイドが挙げられる。
【0070】
アゾ化合物としては、特に限定されないが、例えば、2,2’-アゾビスプロパン、2,2’-ジクロロ-2,2’-アゾビスプロパン、1,1’-アゾ(メチルエチル)ジアセテート、2,2’-アゾビスイソブタン、2,2’-アゾビスイソブチルアミド、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’-アゾビス-2-メチルプロピオン酸メチル、2,2’-ジクロロ-2,2’-アゾビスブタン、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、3,5-ジヒドロキシメチルフェニルアゾ-2-メチルマロノジニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルバレロニトリル、4,4’-アゾビス-4-シアノ吉草酸ジメチル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリルが挙げられる。
【0071】
レドックス開始剤としては、特に限定されないが、例えば、過酸化水素-鉄(II)塩、有機化酸化物-ジメチルアニリン、セリウム(IV)塩-アルコールなどの組み合わせが挙げられる。
【0072】
光開始剤としては、特に限定されないが、例えば、アルキルフェノン系光開始剤、αアミノアルキルケトン系光開始剤、ホスフィンオキサイド系光開始剤が挙げられる。
【0073】
環状カーボネート(B1)とチオール化合物(B2)とを含む混合物を混合攪拌する際のチオール化合物(B2)とラジカル開始剤とのモル比は、10:1~10000:1であることが好ましく、20:1~5000:1であることがより好ましい。
【0074】
環状カーボネート(B1)とチオール化合物(B2)とを含む混合物を混合攪拌する際の温度は、好ましくは0℃~150℃であり、より好ましくは20℃~120℃である。
【0075】
混合攪拌する際の雰囲気は、大気雰囲気、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等のいずれであってもよい。これらの中でも、窒素雰囲気、又はアルゴン雰囲気が好ましく、窒素雰囲気がより好ましい。
【0076】
[環状カーボネートの用途]
本実施形態に係る環状カーボネートは、ポリカーボネート樹脂の原料として使用することができる。ポリカーボネート樹脂は、環状カーボネートをアニオン重合開始剤などの開始剤を用いて開環重合することで得られる。そのほか、環状カーボネートの用途としては、リチウムイオン二次電池などの電解液、電解液への添加剤として利用することができる。
【実施例0077】
本発明を実施例及び比較例を用いて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例等により何ら限定されるものではない。
【0078】
本明細書において、各種物性の測定は以下のように行った。
【0079】
[1H-NMR測定]
日本電子株式会社製NMR装置(製品名:ECZ400S)、及びTFHプローブを用いてNMR測定をすることで、環状カーボネートの1H-NMRスペクトルを得た。なお、重溶媒の基準ピークは、クロロホルム-dを用いた場合はδH=7.26ppmであるとし、積算回数は32回として測定を行った。
【0080】
[熱分解開始温度の測定]
島津社製TG-DTA装置(製品名:DTG-60A)、及びアルミクリプトンセルを用いて、空気気流中、10℃/分の速度でポリカーボネート樹脂、及びポリカーボネート樹脂組成物を加熱した。ポリカーボネート樹脂及びポリカーボネート樹脂組成物の熱分解(TGA)を測定し、TGA曲線の接線交点より熱分解開始温度を得た。
【0081】
[合成例1:NORT]
3Lオートクレーブへ、4-ビニル-trans-1,2-シクロヘキセンカーボネート(501g、3mol)、ジシクロペンタジエン(2484g、18mol)を加えた。内温が200℃となるように加熱し、3日間反応を継続した。内温60℃まで放冷した後、内容物を回収し、クロロホルム(5.5L)中へ投じて溶解させた。この溶液をメタノール(20L)中へゆっくりと注ぎ入れ、1時間撹拌した後、減圧濾過により析出物を除去し、メタノール(1.5L)でリンスした。ろ液を減圧濃縮した後、濃縮物についてシリカゲルカラムクロマトグラフィーを行い、2つのフラクションA、Bに分け、Aからは490g、Bからは231gの濃縮物を得た。フラクションAの濃縮物(490g)について、再度シリカゲルクロマトグラフィーを行い、目的物含有のフラクションを濃縮した。濃縮途中で白色固体が析出し始めたため、濃縮を途中で止め、減圧濾過で固体を除去した。白色固体除去後のろ液を減圧濃縮して得た濃縮物(144g)と、フラクションBの濃縮物(231g)とを合一し、220℃/0.6-2hPaで減圧蒸留し、168gの留出物を得た。得られた留出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、50℃で減圧乾燥することで、4-(5-ノルボルネン-2-イル)-trans-1,2-シクロヘキセンカーボネート(以下、NORTとも表記する;102g)を得た。
【0082】
[実施例1:CSVT]
50mL3つ口フラスコへ、4-ビニル-trans-1,2-シクロヘキセンカーボネート(7.64g、45.42mol)、シクロヘキサンチオール(7.93g、63.81mmоl)を量り取り、フラスコ内を窒素置換した。2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(0.08g、0.46mmоl)を量り取って前記フラスコに添加し、フラスコを80℃のオイルバスに浸漬してマグネチックスターラーで攪拌しながら3時間加熱した。放冷後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物を含むフラクションを回収し、減圧濃縮後、60℃で減圧乾燥することで、式:
【化16】
で表される化合物、及び
式:
【化17】
で表される化合物の混合物(10.31g)を得た。
1H-NMRスペクトルを
図1に示す。
【0083】
[実施例2:DSVT]
50mL3つ口フラスコへ、4-ビニル-trans-1,2-シクロヘキセンカーボネート(5.03g、29.90mol)、1-デカンチオール(7.79g、44.66mmоl)を量り取り、フラスコ内を窒素置換した。2,2‘-アゾビスイソブチロニトリル(0.05g、0.30mmоl)を量り取って前記フラスコに添加し、フラスコを80℃のオイルバスに浸漬してマグネチックスターラーで攪拌しながら3時間加熱した。放冷後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物を含むフラクションを回収し、減圧濃縮後、60℃で減圧乾燥することで、下式:
【化18】
で表される化合物、及び
【化19】
で表される化合物の混合物(9.88g)を得た。
1H-NMRスペクトルを
図2に示す。
【0084】
[実施例3:ASNT]
50mL3つ口フラスコへ、合成例1で合成したNORT(2.02g、8.61mmоl)、1-アダマンタンチオール(1.52g、9.04mmоl)を量り取り、フラスコ内を窒素置換した。トルエン(富士フイルム和光純薬製脱酸素グレード;4g)、2,2‘-アゾビスイソブチロニトリル(0.03g、0.18mmоl)を量り取って前記フラスコに添加し、フラスコを80℃のオイルバスに浸漬してマグネチックスターラーで攪拌しながら6時間加熱した。放冷後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物を含むフラクションを回収し、減圧濃縮後、60℃で減圧乾燥することで、
下式:
【化20】
で表される化合物
【化21】
で表される化合物の混合物(2.68g)を得た。
1H-NMRスペクトルを
図4に示す。
【0085】
[実施例4:CSNT]
50mL3つ口フラスコへ、合成例1で合成したNORT(5.40g、23.05mmоl)、シクロヘキサンチオール(2.77g、23.86mmоl)を量り取り、フラスコ内を窒素置換した。トルエン(富士フイルム和光純薬製、脱酸素グレード;4g)、2,2‘-アゾビスイソブチロニトリル(0.05g、0.30mmоl)を量り取って前記フラスコに添加し、フラスコを80℃のオイルバスに浸漬してマグネチックスターラーで攪拌しながら3時間加熱した。放冷後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、目的物を含むフラクションを回収し、減圧濃縮後、60℃で減圧乾燥することで、
下式:
【化22】
で表される化合物、及び
【化23】
で表される化合物の混合物(以下、CSNTとも表記する;7.70g)を得た。
1H-NMRスペクトルを
図4に示す。
【0086】
[実施例5:p(CSVT)]
50mLフラスコへ、実施例1で合成したCVNT(9.92g、34.88mmоl)、脱水m-キシレン(39.70g)を量り取り、モレキュラーシーブ4Aを用いて脱水した(モノマー溶液)。別の50mL3つ口フラスコ内を窒素で置換した後、前記モノマー溶液(26.42g)を抜き取って添加した。フラスコを25℃の恒温槽に浸漬し、合成例4で合成した重合開始剤溶液(300μL)を加え、25℃で1時間攪拌した。酢酸(0.01g)を加えて反応を停止させた(重合液)。
続いて、前記重合液にアセトン(50g)を加えて希釈した。希釈液をメタノール1460g中へ加えてポリマーを析出させた。析出させたポリマーを減圧濾過によって回収し、メタノールで洗浄した。得られたポリマーを100℃で2時間減圧乾燥させ、CSVTの重合体(以下、p(CSVT)とも表記する;4.84g)を得た。
1H-NMRスペクトルを
図5に示す。上述の方法により、熱分解開始温度の測定を行った結果、熱分解温度は、302℃であった。
【0087】
[実施例6:p(CSNT)]
50mLフラスコへ、実施例4で合成したCSNT(6.98g、19.91mmоl)、脱水m-キシレン(28.91g)を量り取り、モレキュラーシーブ4Aを用いて脱水した(モノマー溶液)。別の50mL3つ口フラスコ内を窒素で置換した後、前記モノマー溶液(28.53g)を抜き取って添加した。フラスコを25℃の恒温槽に浸漬し、合成例4で合成した重合開始剤溶液(400μL)を加え、25℃で1時間攪拌した。酢酸(0.01g)を加えて反応を停止させた(重合液)。
続いて、前記重合液にアセトン(25g)を加えて希釈した。希釈液をメタノール960g中へ加えてポリマーを析出させた。析出させたポリマーを減圧濾過によって回収し、メタノールで洗浄した。得られたポリマーを100℃で2時間減圧乾燥させ、CSNTの重合体(以下、p(CSNT)とも表記する;5.21g)を得た。
1H-NMRスペクトルを
図6に示す。上述の方法により、熱分解開始温度の測定を行った結果、熱分解温度は、304℃であった。