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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160508
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/42 20060101AFI20231026BHJP
   B60N 2/64 20060101ALI20231026BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
B60N2/42
B60N2/64
B60N2/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070924
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100123696
【弁理士】
【氏名又は名称】稲田 弘明
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】長澤 勇
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD04
3B087CD04
3B087DA06
(57)【要約】
【課題】衝突時の乗員保護性能を向上した車両用シートを提供する。
【解決手段】座面部20、及び、バックレスト部30を有する車両用シート1であって、バックレスト部の下部に設けられた下部フレーム110と、バックレスト部の上部に設けられ下部フレームに対してバックレスト部の幅方向に沿った回転軸回りに回動可能に連結された上部フレーム120と、下部フレームに設けられたバドル130と、受圧部材への自席乗員Pの背部からの押圧に応じて、上部フレームを上端部が前進する方向に前記下部フレームに対して回動させる連動機構140とを備える構成とする。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自席乗員の大腿部及び臀部が載せられる座面部、及び、前記座面部から上方へ張り出し、前記自席乗員の背部と接するバックレスト部を有する車両用シートであって、
前記バックレスト部の下部に設けられた下部フレームと、
前記バックレスト部の上部に設けられ前記下部フレームに対して前記バックレスト部の幅方向に沿った回転軸回りに回動可能に連結された上部フレームと、
下部フレームに設けられた受圧部材と、
前記受圧部材への前記自席乗員の背部からの押圧に応じて、前記上部フレームを上端部が前進する方向に前記下部フレームに対して回動させる連動機構と
を備えることを特徴とする車両用シート。
【請求項2】
前記連動機構は、
前記上部フレームの前記回転軸に沿って設けられた被駆動ボビンと、
一方の端部が前記被駆動ボビンに巻き掛けられた状態で前記被駆動ボビンに接続されるとともに、他方の端部が前記受圧部材に連結された牽引部材とを有し、
前記受圧部材は、前記自席乗員の背部からの押圧に応じて、前記牽引部材を牽引すること
を特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記受圧部材は、前記下部フレームに対して前記被駆動ボビンと平行な回転軸回りに回動可能であり、
前記連動機構は、
前記受圧部材の前記回転軸に沿って設けられた駆動ボビンを有し、
前記牽引部材の他方の端部が前記駆動ボビンに巻き掛けられた状態で前記駆動ボビンに接続されること
を特徴とする請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記連動機構は、前記駆動ボビンと前記被駆動ボビンとの間で前記牽引部材を案内するガイド部を有すること
を特徴とする請求項2又は請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記連動機構は、前記受圧部材への後席乗員からの押圧に応じて、前記上部フレームを上端部が前進する方向に前記下部フレームに対して回動させること
を特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両に設けられる車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に設けられるシートにおける衝突時の乗員保護に関する技術として、例えば、特許文献1には、後面衝突時におけるヘッドレストの作動タイミングを早めるため、回転装置を介してヘッドレストを回動軸に対し回動自在かつ摺動可能に設けること、回転装置を介して可動プレートを回動軸に対し回動自在に設けること、各回転装置の間にGセンサが接続された電磁石を配置することが記載されている。
特許文献2には、衝突時に速やかにヘッドレストを確実に作動させるため、車両用シートが、ヘッドレストを作動させるヘッドレスト駆動機構と、受圧部材の動きを増速してワイヤを引く方向に駆動する増速ユニットを備えることが記載されている。
特許文献3には、後部シートに着座している乗員の頭部が受ける衝撃を緩和し、かつ、前部シートのシートバックと頭部との干渉を回避するため、前部シートのシートバックが下部シートバックと上部シートバックとに分割され、前突時に後部シートに着座している乗員B前方へ移動し、その膝で下部シートバックに設けられているレバー部材を押圧すると、上部シートバックが前傾されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002- 67763号公報
【特許文献2】特開2006- 82773号公報
【特許文献3】特開2010-208481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両が乗員の背部側から衝突を受ける後面衝突においては、乗員がシートのバックレスト部に強く押しつけられる。衝突のエネルギが大きい場合、乗員はさらに座席シートのバックレストを押し込もうとする。
しかし、バックレストを後方側へ押込み可能な量には、シートの構造上限界がある。限界に達した後は、バックレスト部が後傾する方向に倒れ込む挙動が生じ、乗員はバックレスト部の傾斜に沿って上方側かつ斜め後方側へずり上がる挙動を示す。
このようなずり上がり挙動は、後面衝突時に乗員傷害を軽減する安全装置であるヘッドレストから、乗員の頭部及び頸部が離脱する原因となる。
乗員の頭部及び頸部がヘッドレストから離脱すると、頸部や脳幹への傷害が悪化することが懸念される。
上述した問題に鑑み、本発明の課題は、衝突時の乗員保護性能を向上した車両用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明の車両用シートは、自席乗員の大腿部及び臀部が載せられる座面部、及び、前記座面部から上方へ張り出し、前記自席乗員の背部と接するバックレスト部を有する車両用シートであって、前記バックレスト部の下部に設けられた下部フレームと、前記バックレスト部の上部に設けられ前記下部フレームに対して前記バックレスト部の幅方向に沿った回転軸回りに回動可能に連結された上部フレームと、下部フレームに設けられた受圧部材と、前記受圧部材への前記自席乗員の背部からの押圧に応じて、前記上部フレームを上端部が前進する方向に前記下部フレームに対して回動させる連動機構とを備えることを特徴とする。
これによれば、自席乗員の身体がバックレスト側に押し付けられる衝突態様(典型的には後面衝突)の場合に、受圧部材への押圧に応じて、上部フレーム及びその周囲のバックレスト部の上部が、上端部が前進する方向に回動する。
このため、自席乗員の上体がバックレスト部の表面に沿ってずり上がる挙動が抑制され、前席乗員の頭部、頸部等がバックレスト部の上部に設けられるヘッドレストから離脱して乗員の傷害が悪化することを防止できる。
【0006】
本発明において、前記連動機構は、前記上部フレームの前記回転軸に沿って設けられた被駆動ボビンと、一方の端部が前記被駆動ボビンに巻き掛けられた状態で前記被駆動ボビンに接続されるとともに、他方の端部が前記受圧部材に連結された牽引部材とを有し、前記受圧部材は、前記自席乗員の背部からの押圧に応じて、前記牽引部材を牽引する構成とすることができる。
この場合、前記受圧部材は、前記下部フレームに対して前記被駆動ボビンと平行な回転軸回りに回動可能であり、前記連動機構は、前記受圧部材の前記回転軸に沿って設けられた駆動ボビンを有し、前記牽引部材の他方の端部が前記駆動ボビンに巻き掛けられた状態で前記駆動ボビンに接続される構成とすることができる。
これらの各発明によれば、簡単な構成により適切に上述した効果を得ることができる。
また、各ボビンの径の設定により、受圧部材の変位量に対する上部フレームの変位量を容易に設定することができる。
さらにこの場合、前記連動機構は、前記駆動ボビンと前記被駆動ボビンとの間で前記牽引部材を案内するガイド部を有する構成とすることができる。
これによれば、作動の確実性、信頼性を確保することができる。
【0007】
本発明において、前記連動機構は、前記受圧部材への後席乗員からの押圧に応じて、前記上部フレームを上端部が前進する方向に前記下部フレームに対して回動させる構成とすることができる。
これによれば、前席乗員の後方側から後席乗員が前進してくる衝突態様(典型的には前面衝突)の場合に、後席乗員の膝部等がバックレストの背面側から受圧部材を押圧することに応じて、バックレストの上部が前方側へ回動するため、前席のバックレスト部の上部が後席乗員の頭部を回避することで後席乗員の傷害を抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、衝突時の乗員保護性能を向上した車両用シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明を適用した車両用シートの実施形態の模式的側面視図であって、非衝突時の状態を示す図である。
図2】実施形態の車両用シートのバックレストに設けられるバックレストフレームの模式的外観斜視図である。
図3図2のIII-III部矢視図である。
図4】車両が後面衝突を受けた場合の連動機構の状態を示す模式図である。
図5】実施形態の車両用シートの模式的側面視図であって、後面衝突時の状態を示す図である。
図6】車両が前面衝突を受けた場合の連動機構の状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を適用した車両用シートの実施形態について説明する。
実施形態の車両用シートは、例えば、乗用車等の自動車の車室内に設けられる。
図1は、実施形態の車両用シート(以下「シート」と称する)を側方から見た状態を示す模式図であって、通常時(非衝突時)の状態を示す図である。
シート1は、一例として前後2列のシートを有する乗用車の前席用のものである。
【0011】
図1に示すように、シート1に着座する自席の乗員Pは、頭部H、頸部N、上体UB、腕A、脚L、大腿部F、臀部B等を有する。
乗員Pは、一例として、車両前方側に上体UBの正面を向けて着座するものとする。
シート1は、ベース部10、シートクッション20、バックレスト30、ヘッドレスト40等を有する。
ベース部10は、シート1の下部に設けられる基部である。
ベース部10は、車室の床面部を構成する図示しないフロアパネルに、図示しないシートレールを介して、前後方向にスライド可能に取り付けられる。
【0012】
シートクッション20は、乗員Pの臀部B及び大腿部Fが載せられる座面部である。
シートクッション20は、ベース部10の上部に取り付けられる。
シートクッション20は、乗員Pの前後方向及び肩幅方向に沿って延在する上面部を有する。
乗員Pの脚Lのうち下肢部分は、シートクッション20の前端部から前方側へ投げ出された状態となる。
シートクッション20は、図示しないフレーム、シートパンなどの例えば金属等の硬質材料によって構成される芯材の周囲に、例えば多孔質ウレタンフォームなどの弾性、可撓性を有するクッション材を配置して構成されている。
【0013】
バックレスト30は、乗員Pの上体UBの背部と対向して設けられた背もたれ部分(シートバックとも称される)である。
バックレスト30は、シートクッション20の後端部近傍から、上方側かつ斜め後方側へ張り出している。
バックレスト30の上端部は、車両の通常使用時において、乗員Pの肩部の後方側に配置されている。
バックレスト30は、下端部近傍に設けられた支軸31回りに、ベース部10及びシートクッション20に対して、バックレスト30の上端部が前後する方向に回動(リクライニング)可能となっている。
バックレスト30は、後述するバックレストフレーム100の周囲に、例えば多孔質ウレタンフォームなどの弾性、可撓性を有するクッション材を配置して構成されている。
【0014】
ヘッドレスト40は、図示しないフレームなどの例えば金属等の硬質材料によって構成される芯材の周囲に、例えば多孔質ウレタンフォームなどの弾性、可撓性を有するクッション材を配置して構成されている。
シートクッション20、バックレスト30、ヘッドレスト40のクッション材の表面部には、例えば織物、編物、天然又は人工皮革などのシート表皮が被せられている。
【0015】
バックレスト30は、以下説明するバックレストフレーム100を有する。
図2は、実施形態の車両用シートのバックレストに設けられるバックレストフレームの模式的外観斜視図である。
バックレストフレーム100は、下部フレーム110、上部フレーム120、バドル130、連動機構140等を有する。
【0016】
下部フレーム110は、バックレスト30の下部32の内部に配置される構造部材である。
下部フレーム110は、左右一対のサイドメンバ111を有する。
サイドメンバ111は、バックレスト30の下部32における側部に沿って、上下方向に延在する梁状の部材である。
サイドメンバ111の下部には、バックレスト30をリクライニングさせる支軸31が挿通される開口112が設けられている。
【0017】
サイドメンバ111の上部には、上部フレーム120を回動可能に支持する支軸113が設けられている。
支軸113は、左右のサイドメンバ111にわたして、乗員Pの肩幅方向(車両の車幅方向)に沿って延在している。
【0018】
サイドメンバ111の支軸113に隣接する下部には、バドル130を回動可能に支持する支軸114が設けられている。
支軸114は、左右のサイドメンバ111にわたして、支軸113と平行に設けられている。
支軸113と支軸114との間には、後述する連動機構140が配置される間隔が設けられている。
【0019】
上部フレーム120は、バックレスト30の上部33の内部に配置される構造部材である。
上部フレーム120は、サイドメンバ121、アッパメンバ122、パネル部123等を有する。
サイドメンバ121は、バックレスト30の上部33における側部に沿って、上下方向に延在する梁状の部材である。
サイドメンバ121は、左右一対設けられ、下部フレーム110の左右のサイドメンバ111の内側にそれぞれ配置されている。
サイドメンバ121は、支軸113回りに下部フレーム110に対して回動可能に支持されている。
【0020】
アッパメンバ122は、左右のサイドメンバ121の上部の間にわたして設けられた梁状の部材である。
パネル部123は、左右のサイドメンバ121の中間部から下部にかけてわたして設けられた平板状の部分である。
【0021】
バドル130は、後面衝突時に乗員Pの背部がバックレスト30に押し込まれることにより、後方側へ押圧される受圧部材である。
また、バドル130は、前面衝突時に、図示しない後席乗員の膝部等により、前方側へ押圧される部材である。
バドル130は、乗員Pの背部に対向するパネル状に形成されている。
バドル130は、下部フレーム110の左右のサイドメンバ111の間に配置されている。
バドル130は、支軸114回りに下部フレーム110に対して回動可能に支持されている。
バドル130は、後面衝突時には、下端部が支軸114に対して後退する方向に回動し、後席乗員が乗車している状態の前面衝突時には、下端部が支軸114に対して前進する方向に回動する。
【0022】
連動機構140は、上述したパドル130の下端部が後退する方向への回動、及び、前進する方向への回動と連動して、上部フレーム120を上端部(アッパメンバ122側)が前進する方向に、下部フレーム110に対して回動させるものである。
図3は、図2のIII-III部矢視図である。図3は、連動機構140を、車幅方向と直交する平面で切って見た状態を示している。
連動機構140は、駆動ボビン141、被駆動ボビン142、テンションロッド143,144,145,146,147、ワイヤ148,149等を有する。
【0023】
駆動ボビン141は、ワイヤ148,149の下部が巻き掛けられるとともに、下端部148L,149Lが固定されるドラム状の部材である。
駆動ボビン141は、支軸114と同心に設けられ、バドル130の上端部に固定されている。
駆動ボビン141は、バドル130とともに、支軸114回りに下部フレーム110に対して回動(揺動)可能となっている。
【0024】
被駆動ボビン142は、ワイヤ148,149の上部が巻き掛けられるとともに、上端部148U,149Uが固定されるドラム状の部材である。
被駆動ボビン142は、支軸113と同心に設けられ、上部フレーム120のサイドメンバ121、及び、パネル部123に固定されている。
被駆動ボビン142は、上部フレーム120とともに、支軸113回りに下部フレーム110に対して回動(揺動)可能となっている。
【0025】
テンションロッド143乃至147は、駆動ボビン141と被駆動ボビン142との間に設けられ、中立状態におけるワイヤ148,149の弛みを抑制しつつ、牽引時のワイヤ148,149の走行(通過)を案内するガイド部である。
また、テンションロッド143乃至147は、パドル130が回動した際には、ワイヤ148,149の一方の弛緩を許容することで、パドル130及び上部フレーム120の回動を妨げないようになっている。この点については後に詳しく説明する。
テンションロッド143乃至147は、それぞれ支軸113,114と平行に延在する円柱状の部材であって、下部フレーム110の左右のサイドメンバ111の間にわたして配置されている。
【0026】
図3に示すように、テンションロッド143は、駆動ボビン141と被駆動ボビン142との中間部に配置されている。
テンションロッド144は、テンションロッド143の中心軸に対して、車両前方側かつ上方側にオフセットした位置に配置されている。
テンションロッド145は、テンションロッド143の中心軸に対して、車両前方側かつ下方側にオフセットした位置に配置されている。
テンションロッド146は、テンションロッド143の中心軸に対して、車両後方側かつ上方側にオフセットした位置に配置されている。
テンションロッド147は、テンションロッド143の中心軸に対して、車両後方側かつ下方側にオフセットした位置に配置されている。
テンションロッド144乃至147は、テンションロッド143に対して小径となっている。
【0027】
ワイヤ148,149は、駆動ボビン141及び被駆動ボビン142にそれぞれ接続された牽引部材(動力伝達部材)である。
ワイヤ148,149は、パドル130の支軸114回りの回動に応じて、駆動ボビン141により巻き上げられ、被駆動ボビン142を牽引して回動させる
ワイヤ148,149は、例えば、金属製の細線を撚り合わせたストリング状に構成された可撓性を有する線状あるいは紐状の部材である。
【0028】
ワイヤ148は、後面衝突時に、バドル130の下端部が後退する方向への回動に応じて牽引される。
ワイヤ148の下端部148Lは、駆動ボビン141の下部であって車両前方側の領域に接続されている。
ワイヤ148の上端部148Uは、被駆動ボビン142の上部であって車両前方側の領域に接続されている。
ワイヤ148は、下端部148L側から順に、駆動ボビン141の前方側、テンションロッド145とテンションロッド147との間、テンションロッド143の後方側、テンションロッド144とテンションロッド146との間、被駆動ボビン142の前方側を順次経由して上端部148Uに至る。
【0029】
ワイヤ149は、前面衝突時に、バドル130の下端部が前進する方向への回動に応じて牽引される。
ワイヤ149の下端部149Lは、駆動ボビン141の下部であって車両後方側の領域に接続されている。
ワイヤ149の上端部149Uは、被駆動ボビン142の上部であって車両前方側の領域に接続されている。
ワイヤ149は、下端部149L側から順に、駆動ボビン141の後方側、テンションロッド145とテンションロッド147との間、テンションロッド143の前方側、テンションロッド144とテンションロッド146との間、被駆動ボビン142の前方側を順次経由して上端部148Uに至る。
【0030】
以下、シート1において、車両が乗員Pの後方側から衝突を受ける後面衝突時の動作について説明する。
図4は、車両が後面衝突を受けた場合の連動機構の状態を示す模式図である。
車両が後面衝突を受けた場合、車体には前進方向の速度が急激に増加する加速度が発生し、乗員Pの背部は、慣性力によってバックレスト30を後方側へ押圧する。
この押圧により、バドル130は、支軸114回りに、下端部が後退する方向(図4の場合には反時計回り)に下部フレーム110に対して相対的に回動する。
このとき、駆動ボビン141は、ワイヤ148を巻き上げ、牽引することになる。
ワイヤ148の張力は、被駆動ボビン142に伝達され、被駆動ボビン142を上部フレーム120の上端部が前進する方向(図4の場合には反時計回り)に回動させる。
この場合、ワイヤ149は弛緩するため、上述した動作を妨げることがない。
【0031】
図5は、実施形態の車両用シートの模式的側面視図であって、後面衝突時の状態を示す図である。
上部フレーム120が下部フレーム110に対して回動することにより、バックレスト30の上部33は、下部32に対して、上端部が前進する方向(図5における反時計回り)に回動する。
これにより、乗員Pの身体がバックレスト30の表面をずり上がる挙動が抑制され、乗員Pの頭部H、頸部Nなどがヘッドレスト40から離脱して乗員Pの傷害が悪化することを防止できる。
【0032】
次に、実施形態の車両用シートにおいて、乗員の前方側から衝突を受ける前面衝突時の動作について説明する。
図6は、車両が前面衝突を受けた場合の連動機構の状態を示す模式図である。
車両が前面衝突を受けた場合、車体には前進方向の速度が急激に減少する加速度(減速度)が発生し、シート1の後方側に配置される図示しない後席シートに着座していた図示しない後席乗員が、車体に対して相対的に前進する。
このとき、後席乗員の身体の一部(典型的には膝部等)がバックレスト30を後方側から押圧すると、バドル130は、支軸114回りに、下端部が前進する方向(図6の場合には時計回り)に下部フレーム110に対して相対的に回動する。
このとき、駆動ボビン141は、ワイヤ149を巻き上げ、牽引することになる。
ワイヤ149の張力は、被駆動ボビン142に伝達され、被駆動ボビン142を上部フレーム120の上端部が前進する方向(図6の場合には反時計回り)に回動させる。
この場合、ワイヤ148は弛緩するため、上述した動作を妨げることがない。
【0033】
この場合にも、図5と同様に、バックレスト30の上部33は、下部32に対して、上端部が前進する方向に回動する。
これにより、バックレスト30、ヘッドレスト40を後席乗員の頭部等から退避させ、後席乗員の傷害を抑制することができる。
【0034】
以上説明した実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)乗員Pの背部がバックレスト30に押し付けられる後面衝突の場合に、バドル130への押圧に応じて上部フレーム120及びバックレスト部の上部33が、上端部が前進する方向に回動することにより、乗員Pの上体UBがバックレスト30の表面に沿ってずり上がる挙動が抑制され、乗員Pの頭部H、頸部N等がヘッドレスト40から離脱して乗員Pの傷害が悪化することを防止できる。
(2)バドル130に設けられた駆動ボビン141によって、ワイヤ148,149を牽引し、上部フレーム120に設けられた被駆動ボビン142を回転駆動する構成としたことにより、簡単な構成により適切に上述した効果を得ることができる。
また、駆動ボビン141、被駆動ボビン142の径の設定により、バドル130の変位量に対する上部フレーム120の変位量を容易に設定することができる。
(3)駆動ボビン141と被駆動ボビン142との間に、ガイド部として機能するテンションロッド143乃至147を設けたことにより、作動の確実性、信頼性を確保することができる。
(4)連動機構140がバドル130への後席乗員からの押圧に応じて、上部フレーム120を上端部が前進する方向に下部フレーム110に対して回動させることにより、前面衝突の場合に、後席乗員の膝部等がバックレスト30の背面側からバドル130を押圧したときに、バックレスト30の上部33が前方側へ回動するため、シート1のバックレスト30の上部が後席乗員の頭部を回避することで、後席乗員の傷害を抑制することができる。
【0035】
(変形例)
本発明は、以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の技術的範囲内である。
(1)車両用シート及び車両の構成は、上述した実施形態に限定されず、適宜変更することが可能である。
例えば、車両用シートを構成する各部材の形状、構造、材質、製法、配置、数量などは適宜変更することができる。
(2)実施形態において、連動機構は両端部がボビンに巻き掛けられたワイヤを有する構成であったが、連動機構の構成はこれに限らず適宜変更することができる。
例えば、複数の歯車を組み合わせたギヤ列や、リンク機構、チェーンなど、他の動力伝達機構を有する構成としてもよい。
(3)実施形態において、車両用シートは一例として前後2列のシートを有する乗用車の前席シートであったが、本発明はこれに限らず、3列以上のシートを有する車両の最後列以外のシートにも適用することができる。また、最後列のシートや、単列のシートを有する車両にも適用することは可能であるが、この場合、後席乗員からの押圧に応じてバックレスト上部を前傾させる構成は不要である。なお、複数列のシートを有する場合の最後列以外のシートにおいても、後席乗員の保護性能を他の手法により確保可能な場合には、後席乗員からの押圧に応じてバックレスト上部を前傾させる構成を省略することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 シート 10 ベース部
20 シートクッション 30 バックレスト
31 支軸 32 下部
33 上部 40 ヘッドレスト
100 バックレストフレーム 110 下部フレーム
111 サイドメンバ 112 開口
113 支軸 114 支軸
120 上部フレーム 121 サイドメンバ
122 アッパメンバ 123 パネル部
130 パドル 140 連動機構
141 駆動ボビン 142 被駆動ボビン
143~147 テンションロッド 148 ワイヤ
148L 下端部 148U 上端部
149 ワイヤ 149L 下端部
149U 上端部
P 乗員 H 頭部
N 頸部 UB 上体
A 腕 B 臀部
F 大腿部 L 脚

図1
図2
図3
図4
図5
図6