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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160524
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】塗布具
(51)【国際特許分類】
   A45D 24/22 20060101AFI20231026BHJP
   A45D 19/02 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
A45D24/22 B
A45D19/02 B
A45D24/22 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070941
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】霜島 千尋
【テーマコード(参考)】
3B040
【Fターム(参考)】
3B040AE05
3B040AE08
(57)【要約】
【課題】吐出容器に装着されて用いられ、複数の櫛歯を有する塗布具において、毛髪の根元部分に選択的に塗布剤を塗布しやすくするための技術を提供する。
【解決手段】塗布具は、吐出容器に装着されて用いられる。塗布具は、内部に流路が形成され、先端部に吐出口が形成された複数の櫛歯を有する櫛部を備える。複数の櫛歯のそれぞれは、湾曲しつつ延びる形状である。複数の櫛歯における先端部の並びが、先端部側から見てアーチ状である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出容器に装着されて用いられる塗布具であって、
内部に流路が形成され、先端部に吐出口が形成された複数の櫛歯を有する櫛部を備え、
前記複数の櫛歯のそれぞれは、湾曲しつつ延びる形状であり、
前記先端部の並びが、前記先端部側から見てアーチ状である、塗布具。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布具であって、
前記複数の櫛歯のそれぞれは、延び方向における中心軸上の前記先端部側の端点と基端部側の端点とを通る直線に沿った寸法が25mm以上である、塗布具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の塗布具であって、
前記複数の櫛歯は、中央ほど高さが高い、塗布具。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の塗布具であって、
前記複数の櫛歯は、各々の延び方向が放射状に広がるように配置されている、塗布具。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の塗布具であって、
前記櫛部は、
溝部が形成された第1部材と、
前記溝部の開放部を覆い、前記第1部材と共に前記流路を形成する第2部材と、
を有する、塗布具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吐出容器に装着されて用いられる塗布具に関する。
【背景技術】
【0002】
吐出容器に装着されて用いられる塗布具がある。例えば特許文献1には、ヘアカラーリング剤が充填された吐出容器に装着されて用いられる塗布具として、内部に流路が形成された複数の櫛歯を有する塗布具が記載されている。染毛処理に際し、使用者は、このような塗布具を用いて、各櫛歯に形成された吐出口からヘアカラーリング剤を吐出しつつ複数の櫛歯で毛髪を梳かす。これにより、毛髪にヘアカラーリング剤が塗布される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5060908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
染毛処理から一定の期間が経過した場合、毛髪における染毛処理で染められた部分と染毛処理以後に伸びた根元部分との色味の差が目立ってくるため、伸びた根元部分のみを染める、いわゆるリタッチを行いたいという要望が生じ得る。この場合、毛髪の根元部分のみにヘアカラーリング剤を塗布することが求められる。しかしながら、特許文献1に記載の塗布具では、毛髪の根元部分に限定してヘアカラーリング剤を塗布することが難しかった。また、このような課題は、ヘアカラーリング剤のような毛髪用の塗布剤の他、育毛剤や頭皮用の保湿剤といった頭皮用の塗布剤でも同様に生じ得る。
【0005】
本開示の一局面は、吐出容器に装着されて用いられ、複数の櫛歯を有する塗布具において、毛髪の根元部分に選択的に塗布剤を塗布しやすくするための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、吐出容器に装着されて用いられる塗布具である。塗布具は、内部に流路が形成され、先端部に吐出口が形成された複数の櫛歯を有する櫛部を備える。複数の櫛歯のそれぞれは、湾曲しつつ延びる形状である。複数の櫛歯の先端部の並びが、先端部側から見てアーチ状である。
このような構成によれば、毛髪の根元部分に選択的に塗布剤を塗布しやすくすることができる。
【0007】
本開示の一態様では、複数の櫛歯のそれぞれは、延び方向における中心軸上の先端部側の端点と基端部側の端点とを通る直線に沿った寸法が25mm以上であってもよい。
このような構成によれば、毛髪の根元部分に一層選択的に塗布剤を塗布しやすくすることができる。
【0008】
本開示の一態様では、複数の櫛歯は、中央ほど高さが高くてもよい。
このような構成によれば、塗布剤の塗布効率を高めることができる。
【0009】
本開示の一態様では、複数の櫛歯は、各々の延び方向が放射状に広がるように配置されていてもよい。
このような構成によれば、櫛通りのよさを実現しつつ、複数の櫛歯の基端部側をコンパクトにすることが可能になる。
【0010】
本開示の一態様では、櫛部は、第1部材と、第2部材と、を有してもよい。第1部材には、溝部が形成される。第2部材は、第1部材の溝部の開放部を覆い、第1部材と共に流路を形成する。
このような構成によれば、流路の洗浄しやすさを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】塗布具付き吐出容器の斜視図である。
図2】櫛部の正面図である。
図3】櫛部の右側面図である。
図4】櫛歯の先端部側から櫛部を見た図である。
図5】櫛部の分解上面図である。
図6】櫛部の分解下面図である。
図7】櫛部の断面図である。
図8】塗布具付き吐出容器を用いた塗布方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
図1に示す塗布具付き吐出容器1は、吐出容器2と、吐出容器2に着脱可能な塗布具3と、を備える。
【0013】
吐出容器2は、塗布剤を内部に収容し、収容された塗布剤を外部に吐出する容器である。具体的には、吐出容器2は、毛髪用の塗布剤の一例である2剤式のヘアカラー剤を収容する。吐出容器2は、第1収容部21、第2収容部22、図示しない連結部、及び外装部23を備える。以下の説明では、2剤式のヘアカラー剤の第1剤及び第2剤のように、他の製剤と混合されることで塗布剤としての機能を発揮する製剤についても、塗布剤と表記する。
【0014】
第1収容部21及び第2収容部22は、内部に塗布剤を収容する周知のエアゾール容器である。第1収容部21及び第2収容部22は、有底筒状(本実施形態では有底円筒状)である。第1収容部21は、ヘアカラー剤の第1剤を収容する。第2収容部22は、ヘアカラー剤の第2剤を収容する。第1収容部21及び第2収容部22の上部(つまり軸方向における一方の端部)には、図示しないステムがそれぞれ設けられている。第1収容部21及び第2収容部22に収容された塗布剤は、各ステムが押し下げられることにより、各ステムから外部へ吐出される。
【0015】
図示しない連結部は、第1収容部21及び第2収容部22が横並びに配置された状態において、これらの上部(つまりステムが位置する端部)同士を連結する部材である。連結部には、第1収容部21及び第2収容部22からそれぞれ吐出された塗布剤を1つに合流させる合流流路が形成されている。合流流路は、塗布具3における後述する櫛部50の内部流路53に接続される。
【0016】
外装部23は、横並びに配置された状態の第1収容部21及び第2収容部22を束ねるように、これらの外周をひとまとめに被覆する部材である。外装部23は、例えば樹脂製のフィルムにより構成されている。
【0017】
塗布具3は、吐出容器2に装着される装着具である。塗布具3は、吐出容器2に収容された塗布剤を毛髪に塗布するために用いられる。塗布具3は、装着部40と、櫛部50と、操作部60と、を備える。装着部40、櫛部50及び操作部60は、例えば樹脂製である。
【0018】
装着部40は、吐出容器2における連結部を少なくとも覆うように吐出容器2に装着可能に構成されている。装着部40は、筒状(本実施形態では外形が長円形状の筒状)である。例えば、装着部40は、吐出容器2における連結部の外径とほぼ同一の内径を有し、連結部を内側に嵌め込み可能に構成されている。
【0019】
櫛部50は、装着部40の軸方向における一方の端部に着脱可能に構成されている。櫛部50は、基部51と、基部51に立設された複数の櫛歯52と、を備える。本実施形態の櫛部50は、5本の櫛歯52を備える。
【0020】
基部51は、装着部40の筒状の一方の開口を塞ぐ壁状の部分である。本実施形態の基部51の表面、すなわち複数の櫛歯52が立設される立設面511は、平面状である。
【0021】
図1図3に示すように、複数の櫛歯52のそれぞれは、立設面511から延びる、外形が棒状の部分である。以下では、各櫛歯52の延び方向における立設面511側の端部を基端部521、反対側の端部を先端部522という。本実施形態の複数の櫛歯52の太さは、いずれも、先端部522を除き一定である。各櫛歯52の先端部522は、先細り形状に形成されている。先端部522の先端角は、鋭角である。また、複数の櫛歯52のそれぞれは、湾曲しつつ延びる形状である。各櫛歯52の延び方向における中心軸A(図3参照)は、いずれも湾曲している。本実施形態の複数の櫛歯52は、中央の櫛歯52ほど中心軸Aの湾曲度合いが緩い。複数の櫛歯52は、それぞれの先端部522の全てが同一平面上には位置しないように構成されている。
【0022】
複数の櫛歯52のそれぞれは、次の基準直線Bに沿った寸法Mが25mm以上である。基準直線Bは、櫛歯52における中心軸A上の基端部521側の端点P1と先端部522側の端点P2とを通る直線である。基端部521側の端点P1は、櫛歯52の中心軸Aと立設面511との交点である。先端部522側の端点P2は、櫛歯52の中心軸Aと櫛歯52の先端部522側の端面との交点である。毛髪の根元部分への塗布剤の塗布しやすさの観点から、各櫛歯52の基準直線Bに沿った寸法Mは、30mm以上であることが好ましい。
【0023】
複数の櫛歯52は、直線状の並列方向線C(図1参照)上に並ぶように配置されている。複数の櫛歯52が並列方向線C上に並んでいることとは、当該複数の櫛歯52の基端部521における中心軸Aが並列方向線Cとそれぞれ交わることを意味する。
【0024】
図4に示すように、複数の櫛歯52は、先端部522の並びが、先端部522側から見て(具体的には中央の櫛歯52の先端部522と対向する位置から見て)アーチ状である。言い換えれば、各櫛歯52の先端部522側の端点P2を櫛歯52の並び順に通る線である先端接線Dは、先端部522側から見てアーチ状である。更に言い換えれば、次の基準直線Eと、各櫛歯52の先端部522側の端点P2と、の先端部522側から見たときの最短距離Sは、中央の櫛歯52ほど遠い。基準直線Eは、両外側の2つの櫛歯52における先端部522側の端点P2をそれぞれ通る直線である。
【0025】
図2に示すように、複数の櫛歯52は、各々の延び方向が放射状に広がるように配置されている。したがって、本実施形態では、隣り合う櫛歯52同士の間隔は、先端部522側ほど広い。隣り合う櫛歯52同士の間隔は、毛髪への塗布操作において各櫛歯52が毛髪に引っかかりにくい程度に広く、後述する吐出口55から吐出された塗布剤が毛髪における櫛歯52間に挟まれた部分に行き渡る程度に狭く設計されている。
【0026】
また、複数の櫛歯52は、中央ほど高さHが高い。ここでいう櫛歯52の高さHとは、次の基準平面Fを基準とした(つまり基準平面Fを高さ0とした場合における)櫛歯52の高さHである。基準平面Fとは、複数の櫛歯52における基端部521側の端点P1のうち、基部51の厚み方向に最も低い位置の端点P1を通る平面であって、基部51の厚み方向と垂直な平面である。本実施形態では、基準平面Fが立設面511を包含するため、上記の櫛歯52の高さHは、立設面511を基準とした櫛歯52の高さHとも言い換えられる。
【0027】
櫛部50には、内部流路53が形成されている。内部流路53は、基部51に形成された流入口54から、複数の櫛歯52のそれぞれに形成された吐出口55まで続いている。流入口54及び吐出口55は、内部流路53と外部とを連通する連通孔である。流入口54は、基部51の裏面、つまり立設面511と反対の面に形成されている。吐出口55は、各櫛歯52の先端部522に形成されている。具体的には、吐出口55は、複数の櫛歯52それぞれの先端部522において、両側面に1つずつ、つまり計2つ形成されている。各櫛歯52の側面とは、各櫛歯52の中心軸A回りの外面のうち、複数の櫛歯52の並び方向と交わる方向(つまり並列方向線Cと交わる方向)に延びる外面を指す。言い換えれば、両隣を他の櫛歯52に挟まれている櫛歯52の場合、櫛歯52の側面とは、櫛歯52の外面のうち、両隣の他の櫛歯52にそれぞれ面する外面を指す。また、最も外側の櫛歯52、つまり片側のみ他の櫛歯52と隣り合う櫛歯52の場合、櫛歯52の側面とは、櫛歯52の外面のうち、他の櫛歯52に面する外面及びこれと反対側の外面を指す。
【0028】
塗布具3が吐出容器2に装着された状態において、内部流路53は、流入口54にて前述した合流流路に接続している。このため、吐出容器2から吐出された塗布剤は、合流流路を介して流入口54から内部流路53に流入される。そして、塗布剤は、内部流路53を通って吐出口55から吐出される。
【0029】
ここで、櫛部50は、複数の櫛歯52それぞれの中心軸Aにより規定される仮想曲面に概ね沿って、図5及び図6に示す第1部材50a及び第2部材50bの2つの部材に分割可能に構成されている。図6に示すように、第1部材50aの内面には、溝部56が形成されている。第2部材50bは、第1部材50aの溝部56の開放部を覆い、第1部材50aと共に内部流路53を形成する。
【0030】
本実施形態では、第2部材50bにおける各櫛歯52を構成する部分の内面に、2つの内壁部57が設けられている。2つの内壁部57は、間隔を空けて互いに対向する壁状の部分である。2つの内壁部57は、図7に示すように第1部材50aの溝部56の内側に嵌まり込むように、配置や高さが設計されている。これにより、複数の櫛歯52は、各櫛歯52の両側面を構成する部分が二重壁となるため、内部流路53の密閉性が保たれやすい。
【0031】
図1に戻り、操作部60は、第1板状部60aと、第2板状部60bと、を備える。第1板状部60a及び第2板状部60bは、装着部40における互いに対向する2つの壁部にそれぞれ延設された板状の部分である。第1板状部60a及び第2板状部60bは、装着部40における櫛部50が装着される側と反対側へ延びている。装着部40に櫛部50が装着された状態において、第1板状部60a及び第2板状部60bは、前述した並列方向線Cと平行である。また、第1板状部60a及び第2板状部60bは、外力により互いに接近するように、装着部40に対して変位可能に構成されている。
【0032】
塗布具3が吐出容器2に装着された状態において、吐出容器2は、第1板状部60aと第2板状部60bとの間に、これらと間隔を空けて位置するように構成されている。また、装着部40及び櫛部50は、第1板状部60a及び第2板状部60bが外側から押圧されたときに、装着部40に対する第1板状部60a及び第2板状部60bの変位に伴って、操作部60側(つまり吐出容器2側)に位置が下がるように構成されている。これにより、第1収容部21及び第2収容部22の各ステムが押し下げられて、吐出容器2から塗布剤が吐出される。吐出容器2から吐出された塗布剤は、前述したように、合流流路及び内部流路53を通って櫛部50の吐出口55から外部へ吐出される。
【0033】
[2.作用]
図8に示すように、使用者は、塗布具付き吐出容器1から塗布剤を吐出しつつ毛髪をかき上げることにより、毛髪の根元部分に塗布剤を塗布することができる。なお、図8では、毛髪の図示を省略している。
【0034】
具体的には、使用者は、塗布具付き吐出容器1における吐出容器2及び操作部60を把持し、櫛部50側を頭頂に向けて、複数の櫛歯52の先端部522を生え際に沿わせる。そして、使用者は、操作部60を押圧して各櫛歯52の吐出口55から塗布剤を吐出しつつ、各櫛歯52の先端部522を頭皮に沿わせたまま頭頂に向かって櫛部50を移動させる。つまり、使用者は、塗布剤を吐出しつつ毛髪をかき上げる。
【0035】
この操作により、複数の櫛歯52は、毛髪をかき分けつつ頭頂に向かって移動する。複数の櫛歯52の移動過程において、吐出口55から吐出された塗布剤が、毛髪における櫛歯52間に挟まれた部分に塗布される。より詳細には、吐出口55が各櫛歯52の先端部522に形成されていることから、毛髪における櫛歯52の先端部522間に挟まれた部分に塗布剤が塗布される。したがって、先端部522を頭皮に沿わせたまま櫛部50が移動されると、毛髪の根元部分に選択的に塗布剤が塗布される。
【0036】
塗布具付き吐出容器1は、複数の櫛歯52の先端部522の並びが先端部522側から見てアーチ状である。このため、各先端部522が頭部の丸みに沿いやすく、複数の櫛歯52の移動過程で各先端部522が頭皮から浮きにくい。特に、それぞれの先端部522の全てが同一平面上には位置しないような複数の櫛歯52の形状や配置であることにより、頭部の丸み度合いの個人差にも対応しやすい。各先端部522が頭皮からより浮きにくくなるため、毛髪の根元部分に選択的に塗布剤を塗布しやすくなる。
【0037】
また、塗布具付き吐出容器1は、複数の櫛歯52のそれぞれが湾曲しつつ延びる形状である。このため、吐出容器2を頭皮に対して寝かせた状態で、各櫛歯52の先端部522を頭皮に沿わせることが可能である。さらに、毛髪をかき上げる過程では、各櫛歯52における先端部522側が基端部521側よりも先行して頭皮に沿って進む。これらにより、生え際から頭頂まで毛髪をかき上げる途中で複数の櫛歯52が毛髪に引っかかり止まってしまうことが抑制される。
【0038】
さらに、塗布具付き吐出容器1は、複数の櫛歯52の前述した寸法Mが25mm以上であり、一般的な塗布具と比べて櫛歯52が長く設計されている。これにより、櫛歯52間の面積が広くなり、櫛歯52間に一層多くの毛髪を保持することが可能になる。毛髪をかき上げる操作においては、複数の櫛歯52が生え際から頭頂に進むほど櫛歯52間に保持される毛髪量が増え、櫛歯52間に保持可能な毛髪量を上回ると、各櫛歯52の先端部522が頭皮から浮きやすくなったり、複数の櫛歯52が毛髪に引っかかって止まりやすくなったりする。しかし、塗布具付き吐出容器1では、上記のとおり櫛歯52間で保持可能な毛髪量が多くなるように複数の櫛歯52の寸法Mが設計されている。このため、生え際から頭頂まで継続して、各櫛歯52の先端部522を頭皮に沿わせた状態を維持しやすい。
【0039】
頭部の全周の生え際から(つまり前頭部、両側頭部及び後頭部それぞれの生え際から)頭頂に向かって上記の塗布操作を繰り返すことにより、頭部の全体にわたって毛髪の根元部分に塗布剤を塗布することができる。
【0040】
[3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(3a)塗布具3において、複数の櫛歯52のそれぞれは、湾曲しつつ延びる形状である。複数の櫛歯52の先端部522の並びは、先端部522側から見てアーチ状である。
【0041】
このような構成によれば、塗布具3が吐出容器2に装着された状態において、使用者が塗布剤を塗布しつつ毛髪をかき上げる操作を行うことにより、毛髪の根元部分に塗布剤を塗布することができる。特に、複数の櫛歯52の先端部522の並びが先端部522側から見てアーチ状であることにより、毛髪をかき上げる操作において各先端部522を頭皮から浮きにくくすることができる。したがって、毛髪の根元部分に選択的に塗布剤を塗布しやすくすることができる。
【0042】
加えて、複数の櫛歯52のそれぞれが湾曲しつつ延びる形状であることにより、毛髪をかき上げる途中で複数の櫛歯52が毛髪に引っかかって止まってしまうことを抑制することができる。したがって、塗布効率を高めることができる。
【0043】
(3b)複数の櫛歯52のそれぞれは、基準直線Bに沿った寸法Mが25mm以上である。このような構成によれば、従来の塗布具と比較して各櫛歯52が長いため、櫛歯52間に保持可能な毛髪量を多くすることができる。櫛歯52間に保持可能な毛髪量が多い場合、毛髪をかき上げる操作において頭皮から各先端部522が浮いてしまうことを一層抑制することができる。したがって、毛髪の根元部分に一層選択的に塗布剤を塗布しやすくすることができる。また、櫛歯52間に保持可能な毛髪量が多い場合、毛髪をかき上げる途中で複数の櫛歯52が毛髪に引っかかって止まってしまうことを一層抑制することもできる。したがって、塗布効率を一層高めることもできる。
【0044】
(3c)複数の櫛歯52は、中央の櫛歯52ほど高さHが高い。このような構成によれば、従来の塗布具のように複数の櫛歯の高さが同一である構成と比較して、丸みを帯びた頭部に対して生え際から頭頂に向かって塗布剤を塗布する操作において、各ストロークで塗布可能な領域の重複を低減することができる。したがって、塗布効率をより一層高めることができる。
【0045】
(3d)複数の櫛歯52は、各々の延び方向が放射状に広がるように配置されている。このような構成によれば、先端部522においては櫛歯52同士の間隔を一定以上確保して櫛通りのよさを実現しつつ、基端部521側をコンパクトにすることが可能になる。
【0046】
(3e)本実施形態の塗布具3は、櫛歯52の本数が5本である。このような構成によれば、櫛部50から人の手を連想させやすいため、塗布具3の使用方法(具体的には、毛髪をかき上げる操作により塗布剤を塗布することや、その際の塗布具3の向き等)を使用者に直感的に理解させやすくすることができる。上記(3c)の中央の櫛歯52ほど高さHが高い構成や、上記(3d)の複数の櫛歯52が放射状に広がるように配置される構成も、櫛部50から人の手をより連想させやすい方向に寄与する。
【0047】
(3f)塗布具3は、吐出口55からの塗布剤の吐出性を向上させる観点では、各櫛歯52における内部流路53の流路断面積が大きい方が好ましい。しかし、各櫛歯52において内部流路53の流路断面積を大きくしようとすると各櫛歯52が太くなり、毛髪をかき上げるときの櫛通りが悪くなることも考えられる。
【0048】
これに対して、本実施形態の塗布具3は、複数の櫛歯52の先端部522が先細り形状である。このような構成によれば、内部流路53の流路断面積を確保しつつ、櫛通りのよさも実現することができる。
【0049】
(3g)塗布具3では、吐出容器2における第1収容部21及び第2収容部22の各軸方向と、塗布剤を吐出するための操作部60の押圧方向と、が交わるように(本実施形態では垂直となるように)、吐出容器2及び操作部60が配置されている。第1収容部21及び第2収容部22は横並びに配置されており、本実施形態では、これらの軸方向は互いに平行である。
【0050】
このような構成によれば、毛髪をかき上げる操作のために吐出容器2を把持した向きのまま、操作部60を併せて押圧しやすい。このため、毛髪をかき上げる操作中に特に持ち替えなくても塗布剤を吐出することができる。この点は、特に、前頭部や側頭部と比較して自身では塗布操作を行いにくい後頭部のリタッチを行う際に有用である。
【0051】
(3h)塗布具3は、主にリタッチに用いられることが想定されている。リタッチでは、毛髪の根元部分しか染毛しないため、毛髪の全ての部分を染毛する場合と比較して塗布剤の使用量が少ない。したがって、吐出容器2に充填された塗布剤が一度に使い切られることは稀であり、一般的に当該塗布剤は何度かに分けて使用される。塗布具3も再使用される。このため、内部流路53内に残った塗布剤が固化して内部流路53を詰まらせてしまうことを抑制するために、塗布具3は1回の染毛ごとに洗浄される。
【0052】
そこで、櫛部50は、第1部材50a及び第2部材50bの2つの部材に分解可能に構成されている。第1部材50aには、溝部56が形成されている。第2部材50bは、溝部56の開放部を覆い、第1部材50aと共に内部流路53を形成する。
【0053】
このような構成によれば、櫛部50を第1部材50aと第2部材50bとに分解することにより、内部流路53を流通方向に沿って外部に開放することができる。このため、内部流路53の洗浄しやすさを向上させることができる。
【0054】
(3i)特に、本実施形態の第2部材50bには、各櫛歯52を構成する部分の内面に、2つの内壁部57が設けられている。2つの内壁部57は、溝部56の内側に嵌まり込むように構成されている。
【0055】
このような構成によれば、各櫛歯52の両側面を構成する部分が二重壁となる。したがって、櫛部50の分解容易性と、内部流路53の密閉性と、を両立することも可能になる。
【0056】
[4.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0057】
(4a)上記実施形態では、湾曲しつつ延びる形状である櫛歯の一例として、基端部521から先端部522までの全ての領域が湾曲している櫛歯52を説明した。この他に、延び方向における一部の領域が直線状である櫛歯も、湾曲しつつ延びる形状である櫛歯の一例に相当する。すなわち、延び方向における中心軸が湾曲している湾曲部と、当該中心軸が直線状である直線部と、を備える櫛歯も、湾曲しつつ延びる形状である櫛歯の一例に相当する。
【0058】
(4b)上記実施形態では、複数の櫛歯52は、中央の櫛歯52ほど高さHが高い。上記実施形態のように櫛歯の本数が奇数である場合には、中央の櫛歯ほど高さが高いこととは、中央の1本の櫛歯の高さが最も高く、当該1本の櫛歯から両外側の櫛歯に向けて徐々に高さが低くなるように形成されることを意味する。一方、櫛歯の本数が偶数である場合には、中央の櫛歯ほど高さが高いこととは、中央の2本の櫛歯のうち少なくとも一方の櫛歯の高さが最も高く、当該2本の櫛歯から両外側の櫛歯に向けて徐々に高さが低くなるように形成されることを意味する。なお、複数の櫛歯は、必ずしも中央の櫛歯ほど高さが高くなくてもよい。
【0059】
(4c)上記実施形態では、複数の櫛歯52は、各々の延び方向が放射線状に広がるように配置されている。しかし、複数の櫛歯は、必ずしもこのように放射線状に配置されなくてもよく、例えば、少なくとも一部の櫛歯が互いに平行に配置されてもよい。
【0060】
(4d)上記実施形態では、複数の櫛歯52は、直線状の並列方向線C上に並ぶように配置されている。しかし、複数の櫛歯は、少なくとも一部が湾曲した並列方向線上に並ぶように配置されてもよい。
【0061】
(4e)上記実施形態では、櫛部50は、内部流路53を形成する第1部材50a及び第2部材50bを備える。具体的には、第2部材50bは、2つの内壁部57が第1部材50aの溝部56の内側に嵌まり込むように溝部56の開放部を覆うことにより、第1部材50aと共に内部流路53を形成する。
【0062】
このように第2部材における2つの内壁部が第1部材の溝部の内側に嵌まり込むように当該溝部の開放部を覆うことにより内部流路が形成される構成である場合に、例えば、2つの内壁部それぞれの外側の面及び第1部材の内面の一方にリブが設けられ、他方に当該リブに対応する切り欠き及びストッパが設けられてもよい。そして、第1部材及び第2部材を嵌合させる操作において、リブがストッパを乗り越えて切り欠きに嵌合することで、第2部材における2つの内壁部が第1部材の溝部の内側に嵌まり込むように構成してもよい。
【0063】
このような構成によれば、リブがストッパを乗り越えて切り欠きに嵌合したときに、使用者にクリック感(感触及び音)を与えることができる。使用者は、クリック感により第1部材及び第2部材がきちんと嵌合されたことを知ることができるため、これらが十分に嵌合されていない状態のまま塗布具を使用してしまうことを回避することができる。
【0064】
(4f)また例えば、第1部材と共に内部流路を形成する第2部材の内面には、上記実施形態のような2つの内壁部に代えて、溝部が形成されてもよい。そして、第2部材は、第1部材の溝部と自身の溝部との開放部同士を対向させた状態で第1部材の溝部の開放部を覆うことにより、第1部材と共に内部流路を形成してもよい。
【0065】
(4g)上記実施形態では、櫛部50は、第1部材50a及び第2部材50bの2つの部材に分解可能に構成されているが、櫛部は、例えば3つ以上の部材に分解可能に構成されてもよい。また例えば、櫛部は、このように複数の部材に分解可能に構成されなくてもよい。
【0066】
(4h)上記実施形態では、吐出容器2に収容される毛髪用の塗布剤として、ヘアカラー剤(永久染毛剤)を例示した。毛髪用の塗布剤には、ヘアカラー剤に加え、ブリーチ剤(脱色剤・脱染剤)、ヘアマニキュア剤(半永久染毛料)、一時着色料(毛髪着色料)等の他のヘアカラーリング剤も含まれる。また、毛髪用の塗布剤には、ヘアトリートメント剤も含まれる。さらに、吐出容器に収容される塗布剤は、毛髪用の塗布剤に限定されず、例えば育毛剤や頭皮用の保湿剤といった頭皮用の塗布剤であってもよい。
【0067】
(4i)上記実施形態では、吐出容器2に毛髪用の塗布剤が収容されている。このため、毛髪への塗布しやすさの観点から、各櫛歯52の側面に吐出口55が設けられている。しかし、例えば、吐出容器に頭皮用の塗布剤が収容される場合には、頭皮への塗布しやすさの観点から、各櫛歯における塗布操作時に頭皮と対向する面に吐出口が設けられてもよい。
【0068】
(4j)上記実施形態では、吐出容器2における第1収容部21及び第2収容部22は、エアゾール容器である。しかし、塗布剤を収容する収容部は、エアゾール容器に限定されず、例えば、周知のデラミ容器やスクイズ容器等であってもよい。
【0069】
(4k)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0070】
[5.本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
吐出容器に装着されて用いられる塗布具であって、
内部に流路が形成され、先端部に吐出口が形成された複数の櫛歯を有する櫛部を備え、
前記複数の櫛歯のそれぞれは、湾曲しつつ延びる形状であり、
前記先端部の並びが、前記先端部側から見てアーチ状である、塗布具。
【0071】
[項目2]
項目1に記載の塗布具であって、
前記複数の櫛歯のそれぞれは、延び方向における中心軸上の前記先端部側の端点と基端部側の端点とを通る直線に沿った寸法が25mm以上である、塗布具。
【0072】
[項目3]
項目1又は項目2に記載の塗布具であって、
前記複数の櫛歯は、中央ほど高さが高い、塗布具。
【0073】
[項目4]
項目1から項目3までのいずれか1項に記載の塗布具であって、
前記複数の櫛歯は、各々の延び方向が放射状に広がるように配置されている、塗布具。
【0074】
[項目5]
項目1から項目4までのいずれか1項に記載の塗布具であって、
前記櫛部は、
溝部が形成された第1部材と、
前記溝部の開放部を覆い、前記第1部材と共に前記流路を形成する第2部材と、
を有する、塗布具。
【符号の説明】
【0075】
1…塗布具付き吐出容器、2…吐出容器、3…塗布具、40…装着部、50…櫛部、50a…第1部材、50b…第2部材、51…基部、52…櫛歯、521…基端部、522…先端部、53…内部流路、54…流入口、55…吐出口、56…溝部、57…内壁部、60…操作部。
図1
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図8