(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160525
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】ゴルフクラブ用グリップおよびゴルフクラブ
(51)【国際特許分類】
A63B 53/14 20150101AFI20231026BHJP
A63B 60/08 20150101ALI20231026BHJP
C08L 9/02 20060101ALI20231026BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20231026BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20231026BHJP
【FI】
A63B53/14 Z
A63B60/08
C08L9/02
C08L15/00
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070942
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】郷司 翔
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一喜
【テーマコード(参考)】
2C002
4J002
【Fターム(参考)】
2C002AA06
2C002GG07
2C002MM01
2C002MM03
2C002PP05
4J002AC071
4J002AC07W
4J002AC11X
4J002GC00
(57)【要約】
【課題】へたりにくく、耐候性に優れる内層を有するゴルフクラブ用グリップを提供する。
【解決手段】本発明のゴルフクラブ用グリップは、円筒状の内層と、前記内層の外側に設けられた円筒状の外層とを有する円筒部を有し、前記内層は、(A1)基材ゴムとして、アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムを含有する内層用ゴム組成物から形成されたものであって、前記内層用ゴム組成物は、165℃、振幅角度1度で測定した加硫曲線の最大トルク値が0.5N・m以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の内層と、前記内層の外側に設けられた円筒状の外層とを有する円筒部を有し、
前記内層は、(A1)基材ゴムとして、アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムを含有する内層用ゴム組成物から形成されたものであって、前記内層用ゴム組成物は、165℃、振幅角度1度で測定した加硫曲線の最大トルク値が0.5N・m以上であることを特徴とするゴルフクラブ用グリップ。
【請求項2】
前記内層は、多孔質層である請求項1に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項3】
前記多孔質層の密度は、0.20g/cm3~0.60g/cm3である請求項2に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項4】
前記内層は、マイクロバルーンを含有する内層用ゴム組成物を加熱して、マイクロバルーンを発泡させてなる多孔質層である請求項1に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項5】
前記内層は、引張試験における破断伸びが730%以下である請求項1に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項6】
前記内層は、トルエン膨潤試験における膨潤率が200%以下である請求項1に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項7】
前記アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムは、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)と水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)とを含有する請求項1に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項8】
(A1)前記基材ゴム中のアクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)の含有率は、10質量%~90質量%である請求項7に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項9】
前記外層が、(A2)基材ゴムとして、カルボキシル変性アクリロニトリル-ブタジエンゴム、水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム、および、カルボキシル変性水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴムよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項1に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項10】
シャフトと、前記シャフトの一端に取り付けられたヘッドと、前記シャフトの他端に取り付けられたグリップとを備え、前記グリップが、請求項1~9のいずれか一項に記載のグルフクラブ用グリップであることを特徴とするゴルフクラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層構造のゴルフクラブ用グリップの内層の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブに装着されるグリップとして、多層構造のグリップが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、円筒状内層と、前記内層を被覆する円筒状外層とからなる円筒部を有するスポーツ用品用グリップであって、前記内層が、多孔質ゴム層または多孔質樹脂層であり、前記外層が、アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムを含有するゴム組成物から成形されたものであり、前記アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムが、カルボキシル変性水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(以下、「HXNBR」と称する。)であることを特徴とするスポーツ用品用グリップが開示されている。
【0004】
特許文献2には、最表層が、(A)基材ゴムおよび(B)軟化点が5℃~120℃である樹脂を含有し、前記(A)基材ゴムが、アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムを含有し、前記アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムが、カルボキシル変性水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(以下、「HXNBR」と称する。)であり、前記(B)樹脂が、水素添加ロジンエステル、不均化ロジンエステル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、クマロン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂およびスチレン樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種である表層用ゴム組成物から形成されていることを特徴とするスポーツ用品用グリップが開示されている。
【0005】
前記スポーツ用品用グリップは、円筒状内層と、前記内層を被覆する円筒状外層とからなる円筒部を有し、前記内層の密度(Din)が、前記外層の密度(Dout)よりも小さく、前記内層の密度(Din)が、0.20g/cm3~0.50g/cm3である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-093332号公報
【特許文献2】特開2017-113388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
多層構造を有するグルフクラブ用グリップにおいて、特に発泡構造を有する内層はへたりやすく(変形しやすい)、かつ、空気中のオゾンにより劣化しやすいという問題がある。本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、へたりにくく、耐候性に優れる内層を有するゴルフクラブ用グリップおよびこれを用いたゴルフクラブを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することができた本発明のゴルフクラブ用グリップは、円筒状の内層と、前記内層の外側に設けられた円筒状の外層とを有する円筒部を有し、前記内層は、(A1)基材ゴムとして、アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムを含有する内層用ゴム組成物から形成されたものであって、前記内層用ゴム組成物は、165℃、振幅角度1度で測定した加硫曲線の最大トルク値が0.5N・m以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、へたりにくく、耐候性に優れる内層を有するゴルフクラブ用グリップおよびこれを用いたゴルフクラブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ゴルフクラブ用グリップの一例を示す斜視図である。
【
図2】ゴルフクラブ用グリップの一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のゴルフクラブ用グリップは、円筒状の内層と、前記内層の外側に設けられた円筒状の外層とを有する円筒部を有し、前記内層は、(A1)基材ゴムとして、アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムを含有する内層用ゴム組成物から形成されたものであって、前記内層用ゴム組成物は、165℃、振幅角度1度で測定した加硫曲線の最大トルク値が0.5N・m以上であることを特徴とする。内層用ゴム組成物の基材ゴムとして、アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムを使用し、かつ、165℃、振幅角度1度で測定した加硫曲線の最大トルク値が0.5N・m以上であるものを使用することにより、へたりにくく、耐候性に優れる内層が得られる。
【0012】
本発明のゴルフクラブ用グリップは、円筒状の内層と、前記内層の外側に設けられた円筒状の外層とからなる円筒部を有する。
【0013】
前記内層は、例えば、(A1)基材ゴムを含有する内層用ゴム組成物から形成される。前記外層は、例えば、(A2)基材ゴムを含有する外層用ゴム組成物から形成される。内層用ゴム組成物および外層用ゴム組成物はそれぞれ、さらに、樹脂、架橋剤、加硫促進剤、加硫活性剤、補強材、老化防止剤、軟化剤、スコーチ防止剤、着色剤などを含有してもよい。
【0014】
まず、内層用ゴム組成物および外層用組成物がそれぞれ含有する基材ゴム(A1,A2)について説明する。
【0015】
内層用ゴム組成物は、(A1)基材ゴムとして、アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムを含有する。前記アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムとしては、例えば、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴム(XNBR)、水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)、カルボキシ変性水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HXNBR)などを挙げることができる。
【0016】
前記XNBRとは、カルボキシ基を有する単量体と、アクリロニトリルと、ブタジエンとの共重合体である。前記HNBRとは、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)の水素添加物である。前記HXNBRとは、カルボキシ基を有する単量体と、アクリロニトリルと、ブタジエンとの共重合体の水素添加物である。
【0017】
本発明において、内層用ゴム組成物の(A1)基材ゴムとして使用するアクリロニトリル-ブタジエン系ゴムは、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)と水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)とを含有することが好ましい。
【0018】
前記アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)において、アクリロニトリル含有率は、10質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。アクリロニトリル含有率が10質量%以上であれば、外層材料への粘着性が良好となり、50質量%以下であれば、加工性が損なわれることがない。
【0019】
前記アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)のムーニー粘度(ML1+4(100℃))は、30以上が好ましく、より好ましくは35以上、さらに好ましくは40以上であり、80以下が好ましく、より好ましくは75以下、さらに好ましくは70以下である。前記ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が、前記範囲内であれば、加工性に問題が生じないからである。
【0020】
前記水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)において、アクリロニトリル含有率は、10質量%以上が好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。アクリロニトリル含有率が10質量%以上であれば、外層材料との接着性が良好となり、50質量%以下であれば、加工性に問題が生じないからである。
【0021】
前記水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)において、二重結合含有量は、0.09mmol/g以上が好ましく、より好ましくは0.2mmol/g以上であり、2.5mmol/g以下が好ましく、より好ましくは2.0mmol/g以下、さらに好ましくは1.5mmol/g以下である。二重結合含有量が0.09mmol/g以上であれば、ブレンドしたNBRと硫黄による共加硫が可能となり、2.5mmol/g以下であれば、耐候性を発揮することが可能となる。二重結合含有量は、共重合体中のブタジエン含有率や、共重合体への水素添加量により調整できる。
【0022】
前記水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)のムーニー粘度(ML1+4(100℃))は、20以上が好ましく、より好ましくは25以上、さらに好ましくは30以上であり、70以下が好ましく、より好ましくは65以下、さらに好ましくは60以下である。前記ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が、前記範囲内であれば、加工性に問題が生じないからである。
【0023】
(A1)前記基材ゴムが、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)と水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)とを含有する場合、前記アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)のムーニー粘度(ML1+4(100℃))が、前記水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)のムーニー粘度(ML1+4(100℃))よりも高いことが好ましい。前記アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)のムーニー粘度(ML1+4(100℃))が、前記水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)のムーニー粘度(ML1+4(100℃))よりも高ければ、添加時の圧縮永久歪みの改善効果が大きくなるからである。
【0024】
この観点から、前記アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)のムーニー粘度(ML1+4(100℃))と、前記水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)のムーニー粘度(ML1+4(100℃))との差(MVNBR-MVHNBR)は、1以上が好ましく、10以上がより好ましく、50以下が好ましく、30以下がより好ましい。
【0025】
(A1)前記基材ゴム中のアクリロニトリル-ブタジエン系ゴムの含有率は、30質量%以上が好ましく、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。また、内層用ゴム組成物が、(A1)基材ゴムとしてアクリロニトリル-ブタジエン系ゴムのみを含有することも好ましい。なお、(A1)基材ゴム中のアクリロニトリル-ブタジエン系ゴムの含有率とは、例えば、(A1)基材ゴムとして、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)と水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)とを含有する場合、(A1)基材ゴム中のアクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)と水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)との合計含有率である。
【0026】
(A1)前記基材ゴム中のアクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)の含有率は、30質量%以上が好ましく、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上であり、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。(A1)基材ゴム中のアクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)の含有率が、前記範囲内であれば、圧縮永久歪みと耐候性を両立できるからである。
【0027】
外層用ゴム組成物が含有する(A2)前記基材ゴムとしては、天然ゴム(NR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ブチルゴム(IIR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)、カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴム(XNBR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリウレタンゴム(PU)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン-プロピレンゴム(EPM)などが挙げられる。これらの基材ゴムは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
前記外層用ゴム組成物中の(A2)基材ゴムの含有率は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0029】
(A2)前記基材ゴムは、アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムを含有することが好ましい。前記アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムとしては、例えば、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴム(XNBR)、水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)、カルボキシ変性水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HXNBR)よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0030】
(A2)前記基材ゴム中のアクリロニトリル-ブタジエン系ゴムの含有率は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。また、ゴム組成物が、(A)基材ゴムとしてアクリロニトリル-ブタジエン系ゴムのみを含有することも好ましい。
【0031】
前記NBR、XNBR、HNBR、HXNBRにおいて、アクリロニトリル含有率は、15質量%以上が好ましく、より好ましくは18質量%以上、さらに好ましくは21質量%以上であり、50質量%以下が好ましく、より好ましくは45質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下である。アクリロニトリル含有率が15質量%以上であれば耐摩耗性が良好となり、50質量%以下であれば寒冷地や冬場におけるグリップの触感が良好となる。
【0032】
前記HNBR、HXNBRにおいて、二重結合含有量は、0.09mmol/g以上が好ましく、より好ましくは0.2mmol/g以上であり、2.5mmol/g以下が好ましく、より好ましくは2.0mmol/g以下、さらに好ましくは1.5mmol/g以下である。二重結合含有量が0.09mmol/g以上であれば成形時に加硫しやすくなりグリップの引張強度がより向上し、2.5mmol/g以下であればグリップの耐久性(耐候性)および引張強さがより良好となる。二重結合含有量は、共重合体中のブタジエン含有率や、共重合体への水素添加量により調整できる。
【0033】
前記XNBR、HXNBRにおいて、カルボキシ基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸などが挙げられる。前記XNBR、HXNBRにおいて、カルボキシ基を含有する単量体の含有率は、1.0質量%以上が好ましく、より好ましくは2.0質量%以上、さらに好ましくは3.5質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。カルボキシ基を含有する単量体の含有率が1.0質量%以上であれば耐摩耗性がより良好となり、30質量%以下であれば寒冷地や冬場におけるグリップの触感が良好となる。
【0034】
前記XNBR、HXNBRにおいて、カルボキシ基含有量は、1.0質量%以上が好ましく、より好ましくは2.0質量%以上、さらに好ましくは3.5質量%以上であり、30質量%以下が好ましく、より好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。カルボキシ基含有量が1.0質量%以上であれば耐摩耗性がより良好となり、30質量%以下であれば寒冷地や冬場におけるグリップの触感が良好となる。
【0035】
(A2)前記基材ゴムは、XNBR、HNBRおよびHXNBRよりなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、特にHXNBRが好ましい。つまり、外層が、カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴム(XNBR)、水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)、カルボキシ変性水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HXNBR)よりなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、HXNBRを含有することがより好ましい。外層が基材ゴムとしてこれらのゴムを含有することで、グリップの耐摩耗性および耐候性が向上する。
【0036】
前記HXNBRのムーニー粘度(ML1+4(100℃))は、60以上が好ましく、より好ましくは64以上、さらに好ましくは68以上であり、95以下が好ましく、より好ましくは90以下、さらに好ましくは85以下である。前記ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が60以上であればグリップの耐摩耗性が向上し、95以下であればゴム組成物の加工性が良好となる。
【0037】
以下、内層用ゴム組成物および外層用ゴム組成物がそれぞれ含有してもよい成分について説明する。各成分の好ましい含有量は、特に断りにない限り、内層用ゴム組成物または外層用ゴム組成物がそれぞれ含有する(A1,A2)基材ゴムに対する量である。
【0038】
(B)樹脂
前記内層用ゴム組成物および外層用ゴム組成物は、それぞれ(B)樹脂を含有することができる。(B)前記樹脂は、内層用ゴム組成物および外層用ゴム組成物のムーニー粘度を低下させる成分である。(B)前記樹脂としては、ロジンエステル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、クマロン樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0039】
(B)前記樹脂の配合量は、(A1,A2)基材ゴム100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、より好ましくは8質量部以上、さらに好ましくは12質量部以上であり、45質量部以下が好ましく、より好ましくは42質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。(B)樹脂の配合量が、5質量部以上であればグリップのフィーリングがより良好となり、45質量部以下であればグリップの耐摩耗性がより向上する。
【0040】
(B1)前記エチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有率は、10質量%以上が好ましく、より好ましくは12質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、80質量%以下が好ましく、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下である。酢酸ビニル含有率が10質量%以上であればグリップのフィーリングがより良好となり、80質量%以下であればグリップの耐摩耗性がより向上する。
【0041】
(B1)前記エチレン-酢酸ビニル共重合体のムーニー粘度(ML1+4(100℃))は、20以上が好ましく、より好ましくは23以上、さらに好ましくは25以上であり、50以下が好ましく、より好ましくは45以下、さらに好ましくは40以下である。前記ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が20以上であればゴム組成物の加工性がより良好となり、50以下であればグリップのフィーリングが良好となる。
【0042】
(B1)前記エチレン-酢酸ビニル共重合体の配合量は、(A1,A2)基材ゴム100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは8質量部以上であり、40質量部以下が好ましく、より好ましくは35質量部以下、さらに好ましくは30質量部以下である。(B1)エチレン-酢酸ビニル共重合体の配合量が、3質量部以上であればグリップのフィーリングがより良好となり、40質量部以下であればグリップの耐摩耗性がより向上する。
【0043】
(B2)前記ロジンエステルとは、前記ロジンとアルコール類とを反応させて得られるエステル化合物である。ロジンとは、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、デヒドロアビエチン酸を含有する天然樹脂である。前記アルコール類としては、n-オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコールなどの1価のアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの2価のアルコール;グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価のアルコール;ペンタエリスリトール、ジグリセリンなどの4価のアルコール;ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどの6価のアルコールが挙げられる。これらの中でも2価以上の多価アルコールが好ましく、グリセリンがより好ましい。
【0044】
前記ロジンエステルには、水素添加ロジンエステル、不均化ロジンエステルが含まれる。前記水素添加ロジンエステルおよび不均化ロジンエステルは、いわゆる安定化ロジンエステルである。
【0045】
前記水素添加ロジンエステルは、ロジエンエステルのロジンに由来する部分が水素添加されているエステル化合物である。水素添加ロジンエステルは、ロジンを水素添加した後、この水素添加ロジンとアルコール類とを反応させるか、あるいは、ロジンとアルコール類とを反応させた後、得られたロジンエステルを水素添加することで得られる。
【0046】
前記不均化ロジンエステルは、ロジンエステルのロジンに由来する部分が不均化されているエステル化合物である。不均化ロジンエステルは、ロジンを不均化した後、この不均化ロジンとアルコール類とを反応させるか、あるいは、ロジンとアルコール類とを反応させた後、得られたロジンエステルを不均化することで得られる。
【0047】
前記ロジンエステルの酸価は、2mgKOH/g以上が好ましく、より好ましくは4mgKOH/g以上、さらに好ましくは6mgKOH/g以上であり、200mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは180mgKOH/g以下、さらに好ましくは160mgKOH/g以下である。酸価が2mgKOH/g以上であればアクリロニトリル-ブタジエン系ゴムとの相溶性が良好となり、200mgKOH/g以下であればロジンエステルが有するカルボキシ基は、基材ゴムの加硫反応にほとんど影響しない。
【0048】
(B2)前記ロジンエステルの配合量は、(A1,A2)基材ゴム100質量部に対して、2質量部以上が好ましく、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは7質量部以上であり、15質量部以下が好ましく、より好ましくは12質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下である。(B2)ロジンエステルの配合量が、2質量部以上であればゴム組成物がより柔らかくなり、15質量部以下であればゴム組成物の加工性がより良好となる。
【0049】
前記クマロン樹脂は、単量体成分としてクマロン類を含有する樹脂である。前記クマロン樹脂としては、クマロン・インデン樹脂が好ましい。前記クマロン・インデン樹脂は、単量体成分としてクマロン類およびインデン類を含有し、全単量体成分中のクマロン類およびインデン類の合計含有率が50質量%以上の共重合体である。前記クマロン類としては、クマロン、メチルクマロンなどが挙げられる。全単量体成分中のクマロン類の含有率は1質量%~20質量%が好ましい。前記インデン類としては、インデン、メチルインデンなどが挙げられる。全単量体成分中のインデン類の含有率は40質量%~95質量%が好ましい。前記クマロン・インデン樹脂は、クマロン類、インデン類以外の他の単量体成分を含有してもよい。前記他の単量体成分としては、スチレン、ビニルトルエン、ジシクロペンタジエンなどが挙げられる。
【0050】
前記フェノール樹脂としては、例えば、フェノール類とホルムアルデヒドの縮合物が挙げられる。フェノール類としては、フェノール、m-クレゾール等が挙げられる。また、前記フェノール樹脂には、フェノール類とホルムアルデヒドとをアルカリ触媒で付加反応させたレゾール;酸触媒で縮合反応させて得られるノボラック等が含まれる。さらに、前記フェノール樹脂には、ロジンにフェノール類を酸触媒で付加させ熱重合することにより得られるロジンフェノール樹脂等も含まれる。
【0051】
前記内層用ゴム組成物は、(B)前記樹脂として、(B2)ロジンエステルを含有することが好ましい。
【0052】
前記外層用ゴム組成物は、(B)前記樹脂として、(B1)エチレン-酢酸ビニル共重合体および(B2)ロジンエステルを含有することが好ましい。これらの(B1)エチレン-酢酸ビニル共重合体および(B2)ロジンエステルを含有することで、これらが加工時に融解しゴム組成物が柔らかくなり、変形時の応力を小さくできる。
【0053】
前記外層用ゴム組成物が(B1)エチレン-酢酸ビニル共重合体および(B2)ロジンエステルを含有する場合、前記(B1)エチレン-酢酸ビニル共重合体および(B2)ロジンエステルとの質量比(B1/B2)は0.8以上が好ましく、より好ましくは1.0以上、さらに好ましくは1.2以上、特に好ましくは1.5以上であり、5.0以下が好ましく、より好ましくは4.8以下、さらに好ましくは4.5以下である。
【0054】
前記外層用ゴム組成物が(B1)エチレン-酢酸ビニル共重合体および(B2)ロジンエステルを含有する場合、前記(B1)エチレン-酢酸ビニル共重合体および(B2)ロジンエステルの合計含有量(B1+B2)は、(A2)基材ゴム100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、より好ましくは8質量部以上、さらに好ましくは12質量部以上であり、45質量部以下が好ましく、より好ましくは42質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。
【0055】
(C)架橋剤
内層用ゴム組成物および外層用ゴム組成物は、基材ゴムを架橋する架橋剤を含有することが好ましい。前記架橋剤としては、硫黄系架橋剤、有機過酸化物を使用できる。前記硫黄系架橋剤としては単体硫黄、硫黄ドナー型化合物が挙げられる。前記単体硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド状硫黄、不溶性硫黄が挙げられる。前記硫黄ドナー型化合物としては、4,4’-ジチオビスモルホリンなどが挙げられる。前記有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-ジイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサンなどが挙げられる。前記架橋剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記架橋剤としては、硫黄系架橋剤が好ましく、単体硫黄がより好ましい。
【0056】
前記架橋剤の使用量は、(A1,A2)基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.4質量部以上、さらに好ましくは0.6質量部以上であり、4.0質量部以下が好ましく、より好ましくは3.5質量部以下、さらに好ましくは3.0質量部以下である。
【0057】
前記内層用ゴム組成物および外層用ゴム組成物は、さらに加硫促進剤、加硫活性剤を含有することが好ましい。
【0058】
(D)加硫促進剤
前記加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィドなどのチウラム系;ジフェニルグアニジン(DPG)などのグアニジン系;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛(ZnPDC)、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛などのジチオカルバミン酸塩系;トリメチルチオ尿素、N,N'-ジエチルチオ尿素などのチオウレア系;メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ベンゾチアゾールジスルフィドなどのチアゾール系;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(BBS)などのスルフェンアミド系;などが挙げられる。これらの加硫促進剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
前記加硫促進剤の合計使用量は、(A1,A2)基材ゴム100質量部に対して、0.4質量部以上が好ましく、より好ましくは0.8質量部以上、さらに好ましくは1.2質量部以上であり、9.0質量部以下が好ましく、より好ましくは8.0質量部以下、さらに好ましくは7.0質量部以下である。
【0060】
(E)加硫活性剤
前記加硫活性剤としては、金属酸化物、金属過酸化物、脂肪酸などが挙げられる。前記金属酸化物としては、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化鉛などが挙げられる。前記金属過酸化物としては、過酸化亜鉛、過酸化クロム、過酸化マグネシウム、過酸化カルシウムなどが挙げられる。前記脂肪酸としては、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸などが挙げられる。これらの加硫活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0061】
前記加硫活性剤の合計使用量は、(A1,A2)基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは0.6質量部以上、さらに好ましくは0.7質量部以上であり、10.0質量部以下が好ましく、より好ましくは9.5質量部以下、さらに好ましくは9.0質量部以下である。
【0062】
前記内層用ゴム組成物および外層用ゴム組成物は、さらに必要に応じて補強材、老化防止剤、軟化剤、スコーチ防止剤、着色剤などを配合してもよい。
【0063】
前記補強材としては、カーボンブラック、シリカなどが挙げられる。前記補強材の使用量は、(A1,A2)基材ゴム100質量部に対して、2.0質量部以上が好ましく、より好ましくは3.0質量部以上、さらに好ましくは4.0質量部以上であり、50質量部以下が好ましく、より好ましくは45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。
【0064】
前記老化防止剤としては、イミダゾール類、アミン類、フェノール類、チオウレア類などが挙げられる。前記イミダゾール類としては、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(NDIBC)、2-メルカプトベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズイミダゾールの亜鉛塩などが挙げられる。アミン類としては、フェニル-α-ナフチルアミンなどが挙げられる。フェノール類としては、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)(MBMBP)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールなどが挙げられる。チオウレア類としては、トリブチルチオ尿素、1,3-ビス(ジメチルアミノプロピル)-2-チオ尿素などが挙げられる。これらの老化防止剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0065】
前記老化防止剤の使用量は、(A1,A2)基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.3質量部以上、さらに好ましくは0.4質量部以上であり、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは4.8質量部以下、さらに好ましくは4.6質量部以下である。
【0066】
前記軟化剤としては、鉱物油、可塑剤が挙げられる。前記鉱物油としては、パラフィンオイル、ナフテンオイル、アロマチックオイルなどが挙げられる。前記可塑剤としては、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルセパケート、ジオクチルアジペートなどが挙げられる。
【0067】
前記スコーチ防止剤としては、有機酸、ニトロソ化合物などが挙げられる。前記有機酸としては、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、安息香酸、サリチル酸、リンゴ酸などが挙げられる。前記ニトロソ化合物としては、N-ニトロソ・ジフェニルアミン、N-(シクロヘキシルチオ)フタルイミド、スルホンアミド誘導体、ジフェニルウレア、ビス(トリデシル)ペンタエリスルトールジホスファイト、2-メルカプトベンズイミダゾールなどが挙げられる。
【0068】
前記内および外層はそれぞれ、中実層でもよいし、多孔質層でもよい。前記内層または外層を多孔質層とすれば、ゴルフクラブ用グリップを軽量化できる。多孔質層は、基材となるゴムに多数の細孔(空隙)が形成されている層である。多数の細孔が形成されていることにより、層の見掛け密度が小さくなり、軽量化を図ることができる。
【0069】
多孔質層を作製する方法としては、バルーン発泡法、化学発泡法、超臨界二酸化炭素射出成型法、塩抽出法、溶剤除去法などが挙げられる。前記バルーン発泡法では、ゴム組成物にマイクロバルーンを含有させ、加熱によりマイクロバルーンを膨張させて、発泡させる。なお、ゴム組成物に膨張済みのマイクロバルーンを配合し、それを成形してもよい。前記化学発泡法では、ゴム組成物に発泡剤(アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p-トルエンスルホニルヒドラジン、p-オキシビス(ベンゼンスルホヒドラジド)など)や発泡助剤を含有させ、化学反応により気体(炭酸ガス、窒素ガスなど)を発生させて発泡させる。前記超臨界二酸化炭素射出成型では、高圧力下で超臨界状態にある二酸化炭素をゴム組成物に含侵させ、このゴム組成物を常圧下に射出し、二酸化炭素を気化させて発泡させる。前記塩抽出法では、ゴム組成物に易溶解性塩(ホウ酸、塩化カルシウムなど)を含有させ、成形後に塩を溶解抽出して細孔を形成する。前記溶剤除去法では、ゴム組成物に溶剤を含有させ、成形後に溶剤を除去し細孔を形成する。
【0070】
前記内層または外層を多孔質層とする場合、発泡剤を含有するゴム組成物から成形された発泡層が好ましい。特に、バルーン発泡法により作製された発泡層とすることが好ましい。
【0071】
前記マイクロバルーンとしては、有機マイクロバルーン、無機マイクロバルーンのいずれも使用できる。有機マイクロバルーンとしては、熱可塑性樹脂からなる中空粒子、熱可塑性樹脂の殻に低沸点炭化水素が内包された樹脂カプセルなどが挙げられる。前記樹脂カプセルの具体例としては、Akzo Nobel社製のエクスパンセル、松本油脂製薬社製のマツモトマイクロスフェアー(登録商標)などが挙げられる。無機マイクロバルーンとしては、中空ガラス粒子(シリカバルーン、アルミナバルーンなど)、中空セラミックス粒子などが挙げられる。
【0072】
前記樹脂カプセル(膨張前)の体積平均粒子径は、5μm以上が好ましく、より好ましくは6μm以上、さらに好ましくは9μm以上であり、90μm以下が好ましく、より好ましくは70μm以下、さらに好ましくは60μm以下である。
【0073】
前記内層は、多孔質層が好ましく、バルーン発泡法により作製された発泡層が好ましい。バルーン発泡法により内層を作製する場合、内層用組成物中のマイクロバルーンの含有量は、基材ゴム100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、より好ましくは8質量部以上、さらに好ましくは12質量部以上であり、20質量部以下が好ましく、より好ましくは18質量部以下、さらに好ましくは15質量部以下である。前記マイクロバルーンの含有量が5質量部以上であればグリップの軽量化の効果がより大きくなり、20質量部以下であれば内層の機械的強度の低下を抑制できる。
【0074】
また、バルーン発泡法により作製される内層の発泡倍率は、1.2以上が好ましく、より好ましくは1.5以上、さらに好ましくは1.8以上であり、5.0以下が好ましく、より好ましくは4.5以下、さらに好ましくは4.0以下である。発泡倍率が1.2以上であればグリップの軽量化の効果が大きくなり、5.0以下であれば内層の機械的強度の低下を抑制できる。
【0075】
バルーン発泡法により外層を作製する場合、前記外層用ゴム組成物中のマイクロバルーンの含有量は、基材ゴム100質量部に対して、1.0質量部以上が好ましく、より好ましくは1.2質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、10質量部以下が好ましく、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下である。前記マイクロバルーンの含有量が1.0質量部以上であれば多孔質層を形成する際の発泡がより均一となり、10質量部以下であれば多孔質層の軽量化と機械的強度を両立できる。
【0076】
前記内層用ゴム組成物の材料硬度(ショアA硬度)は、30以上が好ましく、より好ましくは35以上、さらに好ましくは40以上であり、60以下が好ましく、より好ましくは55以下、さらに好ましくは50以下である。内層用ゴム組成物の材料硬度(ショアA硬度)が30以上であれば内層が軟らかくなりすぎず、掴んだ時にしっかりと固定できる感触が得られ、60以下であれば内層が硬くなりすぎず、掴んだ時のグリップ感がより良好となる。
【0077】
本発明において、前記内層用ゴム組成物は、165℃、振幅角度1度で測定した加硫曲線の最大トルク値が0.5N・m以上であることが好ましく、0.6N・m以上であることがより好ましく、0.7N・m以上であることがさらに好ましく、1.3N・m以下であることが好ましく、1.2N・m以下であることがより好ましく、1.1N・m以下であることがさらに好ましい。本規定は、内層用ゴム組成物が含有する二重結合による加硫特性を規定するものである。165℃、振幅角度1度で測定した加硫曲線の最大トルク値が、0.5N.m以上であれば、作製したグリップは使用時のへたりに耐えることができるからである。また、165℃、振幅角度1度で測定した加硫曲線の最大トルク値が、1.3N.m以下であれば、発泡不良が起こりにくくなる。
【0078】
前記内層用ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4(100℃))は、35以上が好ましく、より好ましくは37以上、さらに好ましくは39以上であり、55以下が好ましく、より好ましくは53以下、さらに好ましくは50以下である。前記ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が、前記範囲内であれば、内層用ゴム組成物の加工性がより良好となる。
【0079】
前記外層用ゴム組成物の材料硬度(ショアA硬度)は、25以上が好ましく、より好ましくは28以上、さらに好ましくは30以上であり、60以下が好ましく、より好ましくは55以下、さらに好ましくは50以下である。外層用ゴム組成物の材料硬度(ショアA硬度)が25以上であれば外層の機械的強度がより向上し、60以下であれば外層が硬くなりすぎず、掴んだ時のグリップ感がより良好となる。
【0080】
[グリップの製造方法]
前記内層用ゴム組成物および外層用ゴム組成物は、従来公知の方法で調製できる。例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、オープンロールなどの混練機を用いて、各原料を混練りすることで調製できる。なお、内層用ゴム組成物または外層用ゴム組成物が、マイクロバルーンを含有する場合は、マイクロバルーン以外の成分を予め混練した後、この混練物とマイクロバルーンとを混練することが好ましい。前記混練物とマイクロバルーンとを混練する際の材料温度は、マイクロバルーンの膨張開始温度未満の温度に設定することが好ましい。
【0081】
ゴルフクラブ用グリップは、前記内層用ゴム組成物または外層用ゴム組成物を、金型内で成形することで得られる。成型方法としては、プレス成形、射出成形が挙げられる。内層と外層とを有するゴルフクラブ用グリップは、例えば、前記外層用ゴム組成物から形成した未加硫のゴムシートと、前記内層用ゴム組成物から形成した未加硫のゴムシートとの積層物を、金型内でプレス成形することで得られる。プレス成形を採用する場合、金型温度は140℃~200℃が好ましく、成形時間は5分間~40分間が好ましく、成形圧力は0.1MPa~100MPaが好ましい。
【0082】
[グリップの構造]
本発明のゴルフクラブ用グリップは、円筒状の内層と、前記内層の外側に設けられた円筒状の外層とからなる円筒部を有する。前記円筒部は、内層と外層とを有する少なくとも2層構造であればよい。円筒部は、例えば、1層の内層と1層の外層からなる2層構造でもよいし、2層の内層と1層の外層を有する3層構造であってもよい。本発明のゴルフクラブ用グリップは、円筒状の内層と、前記内層を被覆する外層とからなる2層構造である円筒部を有することが好ましい。
【0083】
前記外層と内層の組合せとしては、中実外層と中実内層、中実外層と多孔質内層、多孔質外層と多孔質内層が挙げられる。これらの中でも、中実外層と多孔質内層、多孔質外層と多孔質内層の組合せが好ましい。本発明によれば、多孔質の内層であっても、へたりがなく機械的強度が良好な内層が得られる。
【0084】
前記円筒部の厚さは、0.5mm以上が好ましく、より好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは1.5mm以上であり、17.0mm以下が好ましく、より好ましくは10.0mm以下、さらに好ましくは8.0mm以下である。前記円筒部の厚さは、軸方向に一定となるように形成してもよいし、先端部から後端部に向かって徐々に厚くなるように形成してもよい。
【0085】
前記外層の厚さおよび内層の厚さは、均一としてもよいし、変化をつけてもよい。例えば、円筒状グリップの軸方向に、一方端から他方端に向かって徐々に厚くなるように形成してもよい。前記外層の厚さは、均一であることが好ましい。
【0086】
前記円筒部の厚さが0.5mm~17.0mmの場合、前記外層の厚さは、0.5mm以上が好ましく、より好ましくは0.6mm以上、さらに好ましくは0.7mm以上であり、2.5mm以下が好ましく、より好ましくは2.3mm以下、さらに好ましくは2.1mm以下である。前記外層の厚さが0.5mm以上であれば外層素材による補強効果がより大きくなり、2.5mm以下であれば相対的に内層を厚くすることができ、グリップの軽量化の効果が大きくなる。
【0087】
前記円筒部の厚さに対する外層の厚さの百分率((外層厚さ/円筒部厚さ)×100)は、0.5%以上が好ましく、より好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは1.5%以上であり、99.0%以下が好ましく、より好ましくは98.0%以下、さらに好ましくは97.0%以下である。前記百分率が0.5%以上であれば外層素材による補強効果がより大きくなり、99.0%以下であれば相対的に内層を厚くすることができ、グリップの軽量化の効果が大きくなる。
【0088】
前記内層は、引張試験における破断伸びが730%以下であることが好ましく、710%以下であることがより好ましく、690%以下であることがさらに好ましく、300%以上であることが好ましく、350%以上であることがより好ましく、400%以上であることがさらに好ましい。内層の引張試験における破断伸びが730%以下であれば、へたりを抑制する上で十分な架橋密度が得られているからである。また、内層の引張試験における破断伸びが300%以上であれば、シャフトをグリップに挿入する際に、内層の破壊が生じにくくなる。
【0089】
前記内層のトルエン膨潤試験における膨潤率は、200%以下であることが好ましく、180%以下であることがより好ましく、160%以下であることがさらに好ましく、100%以上であることが好ましく、110%以上であることがより好ましく、120%以上であることがさらに好ましい。前記内層のトルエン膨潤試験における膨潤率は、200%以下であれば、へたりを抑制する上で十分な架橋密度が得られているからである。前記内層のトルエン膨潤試験における膨潤率が100%以上であれば、シャフト挿入時に使用する溶剤をグリップが吸収することができ、グリップとシャフトとの接着性が良好になる。
【0090】
前記内層を多孔質層とする場合、内層の密度(Din)は、0.20g/cm3以上が好ましく、より好ましくは0.22g/cm3以上、さらに好ましくは0.25g/cm3以上であり、0.6g/cm3以下が好ましく、より好ましくは0.55g/cm3以下、さらに好ましくは0.5g/cm3以下である。前記内層の密度が0.20g/cm3以上であれば、内層の変形量が大きくなりすぎず、しっかりとした打感が得られ、0.6g/cm3以下であれば多孔質層によるグリップの軽量化の効果が大きくなる。
【0091】
ゴルフクラブ用グリップの形状としては、例えば、シャフトが挿嵌される円筒部と、前記円筒部の後端の開口を覆うように一体形成されたキャップ部とを有する形状が挙げられる。そして、前記円筒部は内層と外層との積層構造を有している。また、円筒部とキャップ部とを別々に成形して、両者を接着するようにしてもよい。
【0092】
前記円筒部の厚みは、軸方向に一定となるように形成してもよいし、先端部から後端部に向かって徐々に厚くなるように形成してもよい。また、円筒部の厚みは、径方向に一定となるように形成してもよいし、一部に凸条部分(いわゆるバックライン)を設けてもよい。また、円筒部の表面には溝を設けてもよい。溝により、ゴルファーの手とグリップとの間の水膜形成が抑制され、ウェット状態でのグリップ性能がより向上する。さらに、グリップの防滑性能および耐摩耗性の観点から、グリップ内に補強コードを配設してもよい。
【0093】
前記ゴルフクラブグリップの質量は、16g以上が好ましく、より好ましくは18g以上、さらに好ましくは20g以上であり、35g以下が好ましく、より好ましくは32g以下、さらに好ましくは30g以下である。
【0094】
[ゴルフクラブ]
本発明には、前記ゴルフクラブ用グリップを用いたゴルフクラブも含まれる。前記ゴルフクラブは、シャフトと、前記シャフトの一端に取り付けられたヘッドと、前記シャフトの他端に取り付けられたグリップとを備え、前記グリップが前記ゴルフクラブ用グリップである。前記シャフトは、ステンレス鋼製や炭素繊維強化樹脂製が使用できる。前記ヘッドとしては、ウッド型、ユーティリティ型、アイアン型が挙げられる。前記ヘッドを構成する材料は、特に限定されるものではなく、例えばチタン、チタン合金、炭素繊維強化プラスチック、ステンレス鋼、マルエージング鋼、軟鉄などが挙げられる。
【0095】
以下、図面を参照して、ゴルフクラブ用グリップおよびゴルフクラブについて説明する。
図1は、ゴルフクラブ用グリップの一例を示す斜視図である。グリップ1は、シャフトが挿嵌される円筒部2と、前記円筒部の後端の開口を覆うように一体形成されたキャップ部3とを有する。
【0096】
図2は、ゴルフクラブ用グリップの一例を示す断面模式図である。前記円筒部2は、内層2aと外層2bから構成されている。そして、前記外層2bは先端部から後端部にわたり厚さが均一に形成されている。前記内層2aの厚みは、先端部から後端部に向かって徐々に厚くなるように形成されている。
図2に示したグリップ1では、キャップ部3は外層2bと同様のゴム組成物から形成されている。
【0097】
図3は、本発明のゴルフクラブの一例を示す斜視図である。ゴルフクラブ4は、シャフト5と、前記シャフト5の一端に取り付けられたヘッド6と、前記シャフト4の他端に取り付けられたグリップ1とを備えている。グリップ1の円筒部2にシャフト5の後端が嵌入されている。
【実施例0098】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0099】
[評価方法]
(1)アクリロニトリル含有率
アクリロニトリル含有率は、水素添加前のアクリロニトリル-ブタジエンゴムについて、ISO 24698-1(2008)により測定した。
【0100】
(2)二重結合含有量(mmol/g)
二重結合含有量は、共重合体中のブタジエン含有率(質量%)と残存二重結合量(%)から算出した。前記残存二重結合量とは、水素添加前の共重合体中の二重結合と水素添加後の共重合体中の二重結合との質量比(水素添加後の二重結合量/水素添加前の二重結合量)であり、赤外分光法により測定できる。アクリロニトリル-ブタジエンゴムが、アクリロニトリル-ブタジエン2元共重合体の場合、共重合体中のブタジエン含有率は100からアクリロニトリル含有率(質量%)を減ずることで求められる。
二重結合量={ブタジエン含有率/54}×残存二重結合量×10
【0101】
(3)ムーニー粘度(ML1+4(100℃))
ゴム組成物のムーニー粘度は、JIS K6300-1(2013)に準拠して測定した。測定は、L形ロータを用いて行った。
【0102】
(4)材料硬度(ショアA硬度)
ゴム組成物を用いて、160℃で8~20分間プレスして、厚み2mmのシートを作製した。なお、ゴム組成物がマイクロバルーンを含有する場合は、グリップを形成した際と同様の発泡倍率となるようにマイクロバルーンを膨張させてシートを作製した。このシートを、23℃で2週間保存し、測定基板などの影響が出ないように、3枚重ねた状態で、自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて硬度を測定した。検出器は、「Shore A」を用いた。
【0103】
(5)切断時引張伸び(EB)
切断時引張伸びは、JIS K 6251(2017)に準拠して測定した。具体的には、内層用ゴム組成物を用いて、160℃で8~20分間プレスして、厚み1mmのシートを作製した。なお、内層用ゴム組成物がマイクロバルーンを含有する場合は、グリップを形成した際と同様の発泡倍率となるようにマイクロバルーンを膨張させてシートを作製した。これをダンベル形状(ダンベル状3号形)に打ち抜いて試験片を作製した。引張試験測定装置(島津製作所社製、オートグラフAGS-D)を用いて物性を測定した(測定温度23℃、引張速度500mm/分)。そして、試験片が切断したときの伸びを記録した。
【0104】
(6)加硫特性試験
JIS K6300-2 「未加硫ゴム-物理特性-第2部:振動式加硫試験機による加硫特性の求め方」に準じて、キュラストメーター(登録商標)を用いて、165℃、振幅角度1度で測定した加硫曲線から最大トルク値(N・m)を求めた。
【0105】
(7)トルエン膨潤率(%)
内層用ゴム組成物を用いて、160℃で8~20分間プレスして、厚み1mmのシートを作製した。なお、内層用ゴム組成物がマイクロバルーンを含有する場合は、グリップを形成した際と同様の発泡倍率となるようにマイクロバルーンを膨張させてシートを作製した。厚み1mmのシートから2mm角の試験片を切り出した。前記試験片を40℃のトルエンに22時間浸漬した。浸漬前後の試験片の体積に基づいて、以下の式によりトルエン膨潤率(%)を算出した。
トルエン膨潤率(%)=100×(V2-V1)/V1
V2:トルエン浸漬後の試験片の体積、V1:トルエン浸漬前の試験片の体積
【0106】
(8)圧縮永久歪み
内層用ゴム組成物を用いて、160℃で8~20分間プレスして、直径29mm、厚み12.5mmの試験片を作製した。なお、内層用ゴム組成物がマイクロバルーンを含有する場合は、グリップを形成した際と同様の発泡倍率となるようにマイクロバルーンを膨張させてシートを作製した。この試験片を25℃、25%圧縮し、22時間放置した。試験前の試験片の厚み(t0)と、試験(22時間放置)終了から30分後の試験片の厚み(t2)を測定し、以下の式により圧縮永久歪みを算出した。
圧縮永久歪み(CS)=(t0-t2)/(t0-t1)×100
t0:圧縮前の試験片の厚み
t2:試験終了30分後の試験片の厚み
t1:圧縮率を制御するスペーサの厚み(9.38mm)
【0107】
(9)グリップのへたり
ドライバーにて、3000回の耐久試験(人による実打試験)を実施し、以下の基準で評価した。
1:グリップ全体にへたりあり
2:バット部と右手親指で握る部分にへたりあり
3:バット部にへたりあり
4:へたりなし
【0108】
(10)耐候性評価
グリップから内層および外層を含む試験片を作製し、作製した試験片に10%の伸長をかけ、オゾン濃度50pphm、40℃の環境下に24時間放置した。試験後の試験片(内層)を目視観察し、以下の基準で耐候性を評価した。
1:深い亀裂あり
2:多数の浅い亀裂あり
3:少数の浅い亀裂あり
4:亀裂なし
【0109】
[グリップの作製]
表1、2に示す配合で各原料を混練し、外層用ゴム組成物および内層用ゴム組成物を調製した。なお、外層用ゴム組成物は、全ての原料をバンバリーミキサーで混練した。内層用ゴム組成物は、マイクロバルーン以外の原料をバンバリーミキサーで混練し、その後、ロールを用いてマイクロバルーンを配合した。内層用ゴム組成物のバンバリーミキサーの混練時の材料温度およびロールによりマイクロバルーンを配合する際の材料温度は、マイクロバルーンの膨張開始温度未満とした。
【0110】
【0111】
【0112】
表1、2で用いた材料は下記のとおりである。
HXNBR:水素添加カルボキシ変性アクリロニトリル-ブタジエンゴム(ARANXEO社製、Therban XT VPKA 8889(残存二重結合量3.5%、アクリロニトリル含有率33.0質量%、二重結合含有量0.40mmol/g、カルボキシ基含有単量体含有率5.0質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))77))
HNBR:水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(ARANXEO社製、Therban AT3443VP(残存二重結合量4%、アクリロニトリル含有率34質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃)39)
NBR1:日本ゼオン社製Nipol DN401LL(アクリロニトリル含有率18質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃)33)
NBR2:JSR社製N240S(アクリロニトリル含有率26質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃)56)
NBR3:JSR社製N231L(アクリロニトリル含有率34質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃)45)
EVA:エチレン-酢酸ビニル共重合体(ARANXEO社製、Levapren500(酢酸ビニル含有率50質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))27)
sylvatac RE 5S:Arizona Chemical製、ロジンエステル
シースト(SEAST)(登録商標)3:東海カーボン社製、カーボンブラック
struktol ZP 1014:struktol社製過酸化亜鉛(過酸化亜鉛含有量29質量%)
酸化亜鉛:東邦亜鉛社製「銀嶺R」
硫黄:鶴見化学工業社製、5%油入微粉硫黄(200メッシュ)
サンセラー(登録商標)TBzTD:三新化学工業社製、テトラベンジルチウラムジスルフィド
ノクセラー(登録商標)TOT-N:大内新興化学工業社製、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド
ノクセラーEUR:大内新興化学工業社製、N,N'-ジエチルチオ尿素
マイクロバルーン:Akzo Nobel社製、「エクスパンセル(登録商標)909-80DU」(熱可塑性樹脂の殻に低沸点炭化水素が内包された樹脂カプセル、体積平均粒子径18μm~24μm、膨張開始温度120℃~130℃)
【0113】
前記外層用ゴム組成物を用いて、扇台形状の未加硫のゴムシートおよびキャップ部材を作製した。なお、外層用ゴムシートは一定の厚さとなるように成形した。前記内層用ゴム組成物を用いて、長方形状の未加硫のゴムシートを作製した。なお、内層用ゴムシートは、一方端から他方端に向かって徐々に厚くなるように形成した。マンドレルに内層用ゴムシートを巻き付け、この上に外層用ゴムシートを重ねて巻き付けた。これらのゴムシートを巻き付けたマンドレルおよびキャップ部材を、キャビティ面に溝パターンを備えた金型に投入した。そして、金型温度160℃、加熱時間15分間で熱処理を行い、ゴルフクラブ用グリップを得た。得られたゴルフクラブ用グリップの円筒部の厚さは、最薄部(ヘッド側端部)が1.5mm、最厚部(グリップエンド側端部)が6.7mmであった。また、得られたグリップの表面は、研磨紙(#80)でバフ研磨を行った。
【0114】
【0115】
表3の結果から、円筒状の内層と、前記内層の外側に設けられた円筒状の外層とを有する円筒部を有し、前記内層は、(A1)基材ゴムとして、アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムを含有する内層用ゴム組成物から形成されたものであって、前記内層用ゴム組成物は、165℃、振幅角度1度で測定した加硫曲線の最大トルク値が0.5N・m以上である本発明のゴルフクラブ用グリップは、へたりがなく、耐候性に優れていることが分かる。
本発明(1)のゴルフクラブ用グリップは、円筒状の内層と、前記内層の外側に設けられた円筒状の外層とを有する円筒部を有し、前記内層は、(A1)基材ゴムとして、アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムを含有する内層用ゴム組成物から形成されたものであって、前記内層用ゴム組成物は、165℃、振幅角度1度で測定した加硫曲線の最大トルク値が0.5N・m以上であることを特徴とする。
本発明(4)のゴルフクラブ用グリップは、前記内層は、マイクロバルーンを含有する内層用ゴム組成物を加熱して、マイクロバルーンを発泡させてなる多孔質層である本発明(2)または(3)に記載のゴルフクラブ用グリップである。
本発明(5)のゴルフクラブ用グリップは、前記内層は、引張試験における破断伸びが730%以下である本発明(1)~(4)のいずれか一項に記載のゴルフクラブ用グリップである。
本発明(6)のゴルフクラブ用グリップは、前記内層は、トルエン膨潤試験における膨潤率が200%以下である本発明(1)~(5)のいずれか一項に記載のゴルフクラブ用グリップである。
本発明(7)のゴルフクラブ用グリップは、前記アクリロニトリル-ブタジエン系ゴムは、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)と水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム(HNBR)とを含有する本発明(1)~(6)のいずれか一項に記載のゴルフクラブ用グリップである。
本発明(8)のゴルフクラブ用グリップは、(A1)前記基材ゴム中のアクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)の含有率は、10質量%~90質量%である本発明(7)に記載のゴルフクラブ用グリップである。
本発明(9)のゴルフクラブ用グリップは、前記外層が、(A2)基材ゴムとして、カルボキシル変性アクリロニトリル-ブタジエンゴム、水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴム、および、カルボキシル変性水素添加アクリロニトリル-ブタジエンゴムよりなる群から選択される少なくとも1種を含有する本発明(1)~(8)のいずれか一項に記載のゴルフクラブ用グリップである。
本発明(10)のゴルフクラブは、シャフトと、前記シャフトの一端に取り付けられたヘッドと、前記シャフトの他端に取り付けられたグリップとを備え、前記グリップが、本発明(1)~(9)のいずれか一項に記載のグルフクラブ用グリップであることを特徴とする。